2026年04月21日
月の犬
監督・脚本・編集:横井健司
撮影:松本貴之
音楽:遠藤浩二
出演:萩原聖人(東島)、渋田そらじ(将吾)、やべきょうすけ、中村映里子、原日出子、大後寿々花、沖山翔也、寺島進、深水元基(南)、黒谷友香(沙織)
愛妻を病気で亡くし、生きる気力を失ってしまった東島。仕事にかまけて妻の病気に気づかなかった自分を責めずにいられない。それまで生きてきた場所を離れ、すべて処分して知らない町に流れ着いた。たまたま入ったのは、ぼったくりバーだったが言われるままに大金を払う。女主人の沙織はそんな東島に興味を持ち、店で働かないかと持ちかけた。裏社会の一員の南は、沙織から男の話を聞いて、飽き飽きしていた日常が動き出すのを感じる。東島は沙織の指示通り、部屋に一人でいる少年将吾の面倒を見る。日の差さない部屋で、口も利かずにいる将吾にはある役目があった。
香港映画あたりでありそうな設定ですが、日本の裏社会のストーリー。寡黙な男、東島を萩原聖人さん、酷薄な南を深水元基さん、大河ドラマに出ていたときは髭の武将役、今回はつるりとしたお肌の2枚目で同じ俳優さんとは思いませんでした。生きることに何の楽しみも、将来の計画もない人が出てきてどんよりしますが、闘う場面はすごみと迫力があります。したたかに前を向くのは沙織だけ。そんなに強いなら将吾をなんとかしてと、怒っては筋違いでしょうか。ひどい。(白)
2025年/日本/カラー/シネスコ/101分
配給:渋谷プロダクション
(C)PYRODIVE
https://tsukinoinu.com/
★2026年4月24日(金)シネマート新宿ほかにて全国順次公開
ARCO/アルコ
監督・脚本:ウーゴ・ビアンヴニュ
声の出演:フランス語版/オスカル・トレサニーニ(アルコ)、マーゴット・リンガード・オルドラ(イリス)、ヴァンサン・マケーニュ(ドゥギー)、ウィリアム・レブギル(フランキー)、アルマ・ホドロフスキー(イリスの母/ミッキ)、スワン・アルロー(イリスの父/ミッキ)
日本語吹き替え版 黒川想矢(アルコ)、堀越麗禾(イリス)、梶裕貴(ミッキ)、山里亮太(ドゥギー)、前野智昭(ストゥイー)、落合福嗣(フランキー)、伊駒ゆりえ(クリフォード)、日向未南(アルコの母)
2075年、気候変動で荒廃している地球。10歳のイリスはロボットのミッキと弟のピーターと暮らしている。両親は町で働き、いつもは立体映像で話して週末に帰宅する。教室を抜け出したある日、イリスは森の中に落ちた虹の先っぽを探しにいく。そこには虹色のマントを着た少年が倒れていた。少年の名はアルコ、タイムトラベルが可能になったはるか先の未来からやってきたのだった。
森も自然もまだ残されている地球で、ちょっとホッとしました。50年も先となると砂漠化している想像ばかりしてしまうので。ウーゴ・ビアンヴニュ監督の描く未来では、働くロボットが様々な作業をしています。イリスはいつもいない両親より、10年そばにいたロボットのミッキを頼りにしているようです。
空から落ちてきたアルコに出逢って、彼を元の世界に帰すために様々なことを試します。ほんとはもっと一緒にいたいんですが。なぜかアルコを追いかけてくる赤、青、黄色のファッションの三人組がさらに事態をややこしくします。お笑い担当の彼らにも相応の事情がありました。
人間の造形が実写に近く、日本の可愛い系アニメではあまり描かれない鼻の穴もちゃんと二つ描かれています。下から見上げるシーンが多いせいかも。「Boy Meets Girl」未来版。(白)
●アヌシー国際アニメーション映画祭長編部門グランプリ(クリスタル賞)受賞
2025年/フランス/カラー/88分
配給:AMGエンタテインメント、ハーク
(C)2025 Remembers / mountainA / France 3 CINEMA
https://arco-movie.jp/
★2026年4月24日(金)全国ロードショー
2026年04月19日
オールド・オーク 原題:The Old Oak
(C)Sixteen Oak Limited, Why Not Productions, Goodfellas, Les Films du Fleuve, British Broadcasting Corporation, France 2 Cinéma and The British Film Institute 2023
監督:ケン・ローチ
脚本:ポール・ラヴァティ
出演:
TJ ・バランタイン:デイヴ・ターナー
ヤラ:エブラ・マリ
ローラ:クレア・ロッジャーソン
チャーリー:トレヴァー・フォックス
2016年、イングランド北東部のとある町に、シリアからの難民家族を載せた車が着く。
車の中から町の人たちにカメラを向けていた若いシリア女性ヤラ。その姿を見た町の男がカメラを奪い壊してしまう。居合わせたパブ「オールド・オーク」の店主 TJ・ バランタインが助けの手を差し伸べてくれる。町で唯一のパブには、今は使っていない奥の部屋があって、そこにはかつて炭鉱で賑わった時代の写真が飾ってあった。事故があって炭鉱は閉じられてしまい町は活気を失っていた。TJの父は炭鉱事故で亡くなったという。
ヤラから、荒れ果てた奥の部屋を整備して、町の引き籠りの子どもたちやシリア難民のための無料食堂を開くことを提案され、町の人たちも協力して週に数回、美味しい料理振る舞う。だが、ある日、厨房が使えなくなる事故が起こる・・・
シリアからの難民受け入れを快く思わない人たちが、「アリババと40人の盗賊かよ」などと心無い言葉をあびせます。「国に帰れ!」と言われたヤラ。「帰れるものなら帰りたい」と返します。誰しも好んで難民になったわけではありません。ヤラやシリアの家族が語るシリアの実情に涙が出ます。映画のエンドロールには、匿名でシリアのことを語ってくださった方たちへの謝辞も述べられていました。これまで一貫して社会の弱者に寄り添う映画を作り続けてきたケン・ローチ監督。また一つ、心に沁みる作品を届けてくださいました。言葉や民族や宗教の違う人たちの共生についても考えさせてくれました。これを最後のメッセージと言わずに、まだまだ作り続けてほしいです。(咲)
オーク(oak)はドングリをつける木で、樹形や板に加工しても美しく、ワインの樽や家具、船の建造に使われます。TJが守ってきた店の名前が「オールド・オーク」。この映画では、町の人々のよりどころでもあります。
街がさびれつつあるところに、多くの難民が加わり、自分たちより優遇されているのではと疑心暗鬼にかられます。街の子どもが寄付の品々を欲しそうに眺めているのに胸をつかれました。家族をなくして心を閉じていたTJがヤラと交流することで、少しずつ変わっていきます。古くからの友人は、自分たちよりも難民を選んだ気がしてしまったのでしょう。生活が苦しく、気持ちに余裕がないことがこの諍いの底にあります。
2016年を舞台にした物語ですが、10年経った今状況は良くなっているでしょうか?(白)
2023/イギリス、フランス、ベルギー/英語・アラビア語/113分/カラー
配給:ファインフィルムズ
後援:ブリティッシュ・カウンシル
公式サイト:https://oldoak-movie.com/
★2026年4月24日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷、新宿武蔵野館他全国ロードショー
これって生きてる? (原題:IS THIS THING ON?)
監督:ブラッドリー・クーパー『アリー/スター誕生』『マエストロ:その音楽と愛と』
脚本:ブラッドリー・クーパー、ウィル・アーネット、マーク・チャペル
音楽:ジェームズ・ニューベリー
出演:ウィル・アーネット(アレックス)、ローラ・ダーン(テス)、アンドラ・デイ ほか
ニューヨークで暮らしている中年夫婦に結婚生活の危機が訪れた。この20年順調だとばかり思っていたのは、夫のアレックス。妻のテスは長年の不満が積もっていた。二人は話し合いの末、離婚へ。二人の息子たちはかわるがわる両方の家を行き来する。
テスが新しい生活をはじめ、生き生きしているのにひきかえ、アレックスはなんだこうなった?と失意の日々。気分転換にコメディクラブに入ってみようとしたら、ポケットの現金が足りない。出演すればいい、と言われて舞台に立つことになってしまった。
俳優でもあるブラッドリー・クーパー、最新の監督作品。なんだか描写が細かいところまで、と観ていたらこれは監督の友人の実話を元にしたのだそうです。コメディクラブで、赤裸々な夫婦の愚痴を笑いに落とし込んで話したら、なんとウケてしまいました。その手ごたえが忘れられず、続けるうちにアレックスの憂鬱はどこかへ飛んでいきます。新しい生きがいを見つけ、ノリノリで話していたら、なんと元妻が客席で聞いていたという…まさかの展開へ。
元ネタの男性は今やプロのコメディアンになったとか。人生、いつどこへ方向転換するのか、しないのか先のことはわかりません。ベテラン俳優が夫婦あるあるを演じ、脇にも芸達者が揃ってNYの空気を伝えてくれます。(白)
2025年/アメリカ/カラー/120分
配給:ウオルト・ディズニー・ジャパン
(C)2025 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.
https://www.searchlightpictures.jp/movies/isthisthingon
★2026年4月17日(金)全国ロードショー
ツイッギー 原題:Twiggy
監督:サディ・フロスト(『マリー・クワント スウィンギング・ロンドンの伝説』)
出演:ツイッギー、ダスティン・ホフマン、ブルック・シールズ、ポール・マッカートニー、ステラ・マッカートニー、シエナ・ミラー
小柄で華奢、ツイッギー(小枝)の愛称で一世風靡した元祖スーパーモデル。マリー・クワントのミニスカートを着こなして「ミニの女王」と呼ばれ、世界中でミニスカートブームを巻き起こし、1967年10月に初来日した時はビートルズと並ぶほど日本を熱狂の渦に巻き込んだ。VOGUEはじめ数々のファッション誌の表紙も飾り、著名な写真家やデザイナーを魅了。デヴィッド・ボウイの歌詞にも登場し、アルバムのジャケットも飾った。女性のキャリアを切り拓き、結婚、出産、別れを経て、今もなお輝き続けている。
そんな1960年代を象徴する存在であるツイッギーの人生と魅力をひもとく、初の公認ドキュメンタリー。ブルック・シールズやダスティン・ホフマン、ポール・マッカートニーらツイッギーと親交のある各界のスターたちも出演。
私がツイッギーに持っていたイメージは、ボーイッシュなショートヘアに人形のようなアイメイクで、感情を表さない女性。どこかぶっ飛んだ雰囲気でした。1960年代当時のことは、よく覚えていますが、その後の彼女のことは全く知りませんでした。
サディ・フロスト監督がツイッギーのpodcast 番組「Tea with Twiggy」にゲスト出演した時に、「次の作品は?」と聞かれ、「あなたのドキュメンタリー」と冗談で答えたことから生まれた映画と、解説にあって、冠番組も持っているのだと驚いた次第。
16 歳の時に彗星のごとくデビューした彼女がモデルとして活動したのは、実はたった4年間。ケン・ラッセル監督に出会い、ミュージカル映画『ボーイフレンド』(71)に出演。第29回ゴールデングローブ賞 新人女優賞と映画部門主演女優賞を受賞しています。自分が本当にやりたかったのは演技だと気づかせてくれたとツィッギー。歌手としても活躍しています。2019年にはその功績が称えられ、大英帝国勲章も授与。
今年、デビュー60周年。76歳の今も現役! 自分らしく生きる彼女に元気を貰いました。(咲)
来日したときの大騒ぎは覚えていますが、(咲)さんと同じくその後女優として活躍していたとはこの作品で初めて知りました。そうそうたるスターたちとの交流にもへえ~と驚きましたが、世界でもトップクラスのモデルで屈託ない明るい性格、自分の意見もちゃんと持っているというのに印象が変わりました。
売れっ子のツィッギーを「コメディアン」の肩書のウディ・アレンがインタビューするシーンがありました。小馬鹿にしているのがまるわかりのアレンが「哲学者」について話を振ります。ツィッギーは正直に誰も知らない、と答え、「やっぱりな」という風のアレン。そこで「あなたは誰を知ってる?名前をあげて」と逆に質問されてアタフタするのがおかしいったら。ツィッギーの友人で美少女モデルから女優になったブルック・シールズの批判も痛快。(白)
2024年/97分/イギリス/英語/カラー/5.1ch/1.85:1
日本語字幕:クアーク亮子
配給:アンプラグド
公式サイト:https://unpfilm.com/twiggy/
★2026年4月24日(金)より新宿武蔵野館ほか全国順次公開


