2026年07月03日

MOTHERLAND マザーランド   原題:GIMTINE

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© 2019 Studio Uljana Kim / Locomotive Productions

監督・脚本:トーマス・ヴェングリス
出演:マータス・メトレフスキ、セヴィリヤ・ヤノシャウスカイテ、ダーリウス・グマウスカス、バルボラ・バレイキテ

母が生まれたリトアニアで過ごす夏。
12歳の少年の成長物語。


1992年、夏。アメリカ育ちの12歳のコヴァスは、母に連れられ、初めて母の故郷リトアニアを訪れる。母ヴィクトリアは、離婚をきっかけに、かつて暮らしていた土地を取り戻し、息子とともに新しい生活を始めようとしていた。
ソ連が崩壊し、新しい国として歩み始めたリトアニア。親戚たちが久しぶりに帰国したヴィクトリアのために集まる。口数少ないコヴァスは、同年代の子どもたちにアメリカのチューインガムを配るものの、なかなか溶け込めない。
やがて、ふたりはヴィクトリアの昔からの友人ロマスと、その娘マリアの家で過ごすことになる。ロマスが家を取り戻す手伝いをしてくれるからと母は言うが、コヴァスは、母とロマスの仲の良さが気になって落ち着かない。一方で、マリアと次第に打ち解け、車の運転を教えてもらったりする。
やがて、ヴィクトリアが取り戻そうとしている昔の家は空き家のはずだったが、別の家族が暮らしていて私有化の申請をしていることを知る。住みついている住人は喧嘩腰で話にならない。そんな大人たちを、コヴァスはただ見ていることしかできない。少しずつ、これまで知らなかった母の秘めた一面と、その故郷リトアニアに息づく時間に触れていく…。

リトアニアに着き、母から「英語で話さないで」と言われるコヴァス。アメリカ育ちながら、母からリトアニア語は教わっていたらしいことに、故郷を大切に思っている母ヴィクトリアの気持ちが伝わってきます。
ヴィクトリアは、まだ幼い頃に両親がソ連に連行され、家はソ連軍に兵舎として撤収され、ドイツ兵捕虜の収容所とされていました。ソ連が崩壊したとはいえ、ソ連に奪われた土地を自分の土地であると証明するのに、皆が苦慮していることをヴィクトリアは聞かされます。やっと独立を手にしても、前途多難だったことが伺えます。
ロマスの友人男性の家の壁に飾ってある勲章の数々。そのうちの一つは、友人本人が1980年、アフガニスタン侵攻の折に貰った勲章。ほかのたくさんの勲章は父親が第二次世界大戦の折に貰ったと語る場面がありました。リトアニアの人たちもソ連の一員として、戦争に加担させられたことを思い起させられました。

トーマス・ヴェングリス監督自身がワシントンD.C.でリトアニア移民の息子として育った経験をもとに、生み出された初長編劇映画。
母ヴィクトリヤ役は、リトアニアを代表する俳優セヴィリヤ・ヤノシャウスカイテ。少年コヴァス役マータス・メトレフスキは、彼自身もアメリカ生まれで、家族のルーツであるリトアニアを身近に感じて育っています。
コヴァスの目線で語られる、自身のルーツであるリトアニアで過ごした一夏の物語。アイデンティティと向き合いながら成長していく姿が眩しいです。(咲)


2019年/リトアニア、ラトビア、ドイツ、ギリシャ/96分/シネマスコープ
配給:太秦
公式サイト:https://motherland-gimtine.com/
★ 2026年7月4日よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開 ·


posted by sakiko at 21:17| Comment(0) | リトアニア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年11月27日

ミスター・ランズベルギス  原題:Mr. Landsbergis

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監督:セルゲイ・ロズニツァ

ソ連崩壊に繋がったリトアニア独立運動を指導したミスター・ランズベルギスとは?

ヴィータウタス・ランズベルギス氏。
ピアニストであり、国立音楽院の教授である彼は、1989年から1991年にかけて起きたリトアニア独立運動の中心人物。
リトアニアの主権とソ連邦からの独立を訴える政治組織サユディス(=運動の意味)を創設し、独立運動を牽引。
1990年3月11日、第一回リトアニア最高会議で議⻑に選出され、同日、ソ連に対して独立を宣言。ゴルバチョフと対峙し、非暴力で勝利する。

ロズニツァ監督は、ヴィータウタス・ランズベルギス氏にインタビューを敢行。
彼が30年前の熾烈な文化的抵抗と政治的闘争を穏やかに語る姿を映し出すと共に、1980年代後半から1991年9月の独立まで各地で撮影されてきた断片的なアーカイヴ映像を用いて、リトアニア側からの視点でソ連からの独立とその先のソ連崩壊を描いた4時間8分の大長編ドキュメンタリー。

冒頭、1990年1月、ソ連の最高会議議長ゴルバチョフがリトアニアを訪れ、民衆から「ミスター、なぜリトアニアの独立を認めないのですか?」と問われ、「私は“ミスター”じゃない」と反論します。西側の権力者ではないという次第。続いて、出てくるのが、タイトル「ミスター・ランズベルギス」。見事な幕開けです。
これまでのロズニツァ監督作品と同じく、余計なナレーションや説明はありませんが、バルト海の小国リトアニアが、いかにして非暴力で独立を成し得たかが伝わってきます。ソ連が戦車で攻め込んできても屈しません。乗り込んできたソ連検察庁の官僚が、リトアニア検察庁の新検事による人事が無効だと威嚇しても、もうソ連検察庁の管轄ではないと堂々と対峙する姿には、なるほど!と感嘆しました。

バルト海3国のソ連からの独立で思い出すのは、「人間の鎖」です。独立を願って、リトアニア、ラトビア、エストニアの3国の人たち200万人が約600キロにわたって手をつなぎ、歌を歌った出来事。1989年8月23日のことでした。歌を通じて独立を願うという国民に支えられて、非暴力の独立が実現したのだと思いました。

かつて商社に勤めていた時に、モスクワに駐在していた方から聞いた話を思い出しました。まだソ連邦だったラトビアのリガに出張し、夜の9時過ぎにレストランに入り、ロシア語で「席はありますか?」と聞いたところ、「ない」と言われ、ほかの店を探すも、どこも開いてなくて、もう一度同じ店に入り、今度は英語で尋ねたところ、「さっきはなぜロシア語で聞いた?」と言いながら、席に案内してもらえたそうです。そこまでロシアを嫌うのかと思ったのでした。

今また、ウクライナに侵攻するロシア。実害にあわれているウクライナの人々はもとより、国境を接する元ソ連邦の一員だった国の人々も不安な気持ちでいることを思うといたたまれません。平和共存できる世界が、早く実現するよう祈るばかりです。(咲)


☆公開初日を記念して、配給を担当したサニーフィルムの有田氏が11月18日にヴィリニュスのヴィータウタス・ランズベルギス氏を訪ねた際撮影した、日本向けの特別コメントと氏によるチュルリョーニスのピアノ演奏の動画を公開初日12月3日・初回上映後に特別上映!

☆サニーフィルム 有田浩介様より
日本にとっては知られざる人ですが、現地のヴィリニュスでは本物の英雄でした。
先月、ヴィリニュスの氏を尋ねてきましたが、彼は映画は自分の話ではなく、
リトアニアの人々の話であり、そのことを日本の方に知ってもらいたいと言っていました。
大勢の人が集まってソ連軍から守ろうとした最高会議ビルの前には当時のブロックやバリケードが大切に保存されています。
そういうところからも国としてソ連からの独立を誇りに思ってることが伝わってきました。
写真は当時のバリケードです。ブロックには「ヴィータウタス、ありがとう」と書かれています。

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撮影:サニー・フィルム

2021年/リトアニア=オランダ製作/リトアニア語、ロシア語、英語/248分/モノクロ・カラー
日本語字幕:守屋愛
配給:サニーフィルム
公式サイト:https://www.sunny-film.com/mrlandsbergis
★2022年12月3日(土)よりシアター・イメージフォーラムにて公開




posted by sakiko at 03:36| Comment(0) | リトアニア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする