2026年03月14日

決断するとき 原題:Small Things Like These

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監督:ティム・ミーランツ
脚本:エンダ・ウォルシュ
原作:クレア・キーガン「ほんのささやかなこと」(鴻巣友季子 訳/早川書房 刊) 製作総指揮:ベン・アフレック マイケル・ジョー ケヴィン・ハローラン
製作:マット・デイモン キリアン・マーフィー アラン・モロニー キャサリン・マギー ドリュー・ビントン
撮影:フランク・バン・デン・エーデン
編集:アラン・デソバージュ
音楽:センヤン・ヤンセン
出演:キリアン・マーフィー、アイリーン・ウォルシュ、ミシェル・フェアリー、クレア・ダン、ヘレン・ビーハン、エミリー・ワトソン

1985年、アイルランドの小さな町。炭鉱商人として生計を立てているビル・ファーロング(キリアン・マーフィー)。妻のアイリーンと5人の娘たちと慎ましく暮らしていた。クリスマスが近づいたある日、石炭を届けに訪れた地元の修道院で、目を背けたくなる現実を目撃する。そこに身を置く少女から「ここから出してほしい」と懇願される。行き場もなく苦しんでいる現実を目の前にしても、見て見ぬふりをすることが賢明だと思う自分がいて、良心の呵責に悩むビル。はたして、最後に彼が下す決断は・・・。

本作は、アイルランドに実在した「マグダレン洗濯所」の人権問題を背景に描かれる人間ドラマ。
「マグダレン洗濯所」は、19世紀から20世紀後半にかけて、主にアイルランドに存在していた女性収容施設で、カトリック修道会により運営されていました。収容されたのは、未婚で妊娠した女性、性的被害を受けた女性、家庭や社会から素行が悪いとされた若い女性たちでした。表向きは、「保護」「更生」「慈善」を目的とした施設でしたが、本人の意思とは無関係に収容され、外出や外部との通信の自由を奪われ、洗濯作業を中心とする長時間の無償労働を強いられていました。
性暴力などで妊娠させた側の男性には罪を問わず、一方的に少女たちにふしだらだという刻印を押して、このような収容所に閉じ込めたことに涙が出ます。
本作の主人公ビルは、少年時代に経験した母のことが頭によぎって、少女のことが他人事とは思えないのです。さて、最後にくだした決断とは?
『オッペンハイマー』では、原爆を作ってしまった科学者の苦悩を演じたキリアン・マーフィーが、本作では、少女たちが人権蹂躙されている姿に苦悩するという、ごく普通の実直な男を静かに演じています。
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また、第74回ベルリン国際映画祭で助演俳優賞を受賞したエミリー・ワトソンの演じる修道院の院長シスター・メアリーのマグダレン洗濯所」を正当化する姿に圧倒されました。女性であるシスターが、若い女性たちの味方になれなかったことにも憤りを感じさせてくれる名演技でした。(咲)


2024年/98分/アイルランド/カラー/1.85:1/5.1ch
日本語字幕:山下美紗
配給:アンプラグド
公式サイト:https://unpfilm.com/ketsudan/
★2026年3月20日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国順次公開




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2026年02月08日

ブゴニア(英題:Bugonia)

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監督:ヨルゴス・ランティモス
脚本:ウィル・トレイシー
撮影:ロビー・ライアン
音楽:イェルスキン・フェンドリックス
出演:エマ・ストーン(ミシェル・フラー)、ジェシー・プレモンス(テディ)、エイダン・デルビス(ドン)、スタブロス・ハルキアス(警官ケイシー)、アリシア・シルバーストーン(サンディ)

人気絶頂のカリスマ経営者として脚光を浴びるミシェル・フラーがが誘拐された。犯人は”陰謀論”に心酔するテディとドンの2人組。ミシェルが地球を侵略しにきた宇宙人だと信じてやまない彼らの要求はただ一つ。「地球から手を引け」彼らの馬鹿げた要望を一蹴するミシェルだが、事態は思わぬ方向へと加速していく。

韓国映画『地球を守れ!』(2003年/監督・脚本:チャン・ジュナン)をリメイクした作品。『女王陛下のお気に入り』(2019)『哀れなるものたち』(2024)など次々話題作を送り出してきたヨルゴス・ランティモス監督がエマ・ストーンを主演にメガホンを取りました。お察しのとおりなかなかエグイ仕上がりです。狂信的なテディに従うドンがちょっと気の毒なのですが、真実はどこに?と気になっていきます。
宇宙人と疑われたミシェルは、髪が通信手段だからと丸坊主に(作中で本当にバリカンで剃られています)。エマ・ストーンは製作にも名を連ねていて、並々ならぬ注力っぷり。身体を鍛えているミシェルのアクションも観られます。アカデミー賞にノミネートされているので、3月16日の授賞式での髪型が気になります。(白)


2025年/アイルランド・イギリス・カナダ・韓国・アメリカ合作/カラー/118分
配給:ギャガ
(C)2025 FOCUS FEATURES LLC.
https://gaga.ne.jp/bugonia/
★2026年2月13日(金)より全国ロードショー
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2025年09月25日

キス・ザ・フューチャー  原題:Kiss the Future

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監督:ネナド・チチン=サイン
プロデューサー:マット・デイモン、ベン・アフレック、サラ・アンソニー
登場人物:クリスティアン・アマンプール、ボノ、ビル・カーター、アダム・クレイトン、ビル・クリントン、ジ・エッジ他

「戦争中のサラエボに U2 を呼びたい」
一人のクレイジーなアイデアが不可能を現実に


「過去を忘れて、未来にキスを、サラエボ万歳!」。U2が1997年9月23日、4万5千人を前にサラエボで行ったライブは、今も語り継がれている。かつてサラエボの人々は民族・宗教に関係なく共存していたが、紛争は人々を引き裂いていた。ライブはそんな人々を音楽の力で再び一つにするものだった。本作は、U2がボスニア紛争終結後にサラエボでライブする約束を果たすまでを追ったベン・アフレックとマット・デイモンがプロデュースしたドキュメンタリー。

<4.5万人が感涙した伝説のサラエボ・ライブの舞台裏が初めて明らかに!>/span>

銃弾が飛び交う危険なボスニア紛争中、若者たちは解放を求め夜な夜な地下で行われていたパンクロックライブに熱狂していた。そんな彼らにとって世界的アーティストで戦争や人権など社会的なメッセージを発信していたU2は憧れの存在だった。ある日、アメリカの援助活動家のビル・カーターはU2をサラエボに招くことを思いつく。U2はサラエボ行きを決意するが、安全面の観点から断念。であればと、ビルは衛星中継で戦火のサラエボからの様子をU2のZOO TVツアーに届けることに成功する。そして約束通り、戦後しばらくしてU2がボスニアで行った平和と民族の融和のためのライブは、人々に強烈な印象を残すことになる。世界各地で戦争が絶えない今、U2のメッセージは時代を超えて私たちの心を震わせる。

教会とモスクが並んで立つサラエボの街角が大写しにされます。
かつては、宗教や民族の違う人たちが共存していたことを示す光景。
その均衡が崩れて内戦に。
その最中に、人気ロックグループであるU2を招いてのライブを行ったとは!
人々の気持ちを一つにしようという試み。 ライブの一瞬のひと時だけでも、様々なルーツの人たちが心が一つになったなら、それはそれで大成功だったと思います。
U2のことは、名前しか知らなかったのですが、彼ら自身の原点がアイルランド紛争だったと知りました。内戦による心の痛みを知る彼らだからこそ、サラエボの人たちの心に響くものがあったのだと思いました。
今なお、世界の各地で絶えない紛争。 音楽で心を一つにできたならと願います。(咲)


2023年/ドキュメンタリー/アメリカ・アイルランド/103分
制作:Fifth Season 
配給:ユナイテッドピープル
公式サイト:https://unitedpeople.jp/kiss/
★2025年9月26日(金)キノシネマ新宿 ほか全国順次ロードショー


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2025年09月04日

九月と七月の姉妹(英題:September Says)

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監督・脚本:アリアン・ラベド
原作:デイジー・ジョンソン「九月と七月の姉妹」(東京創元社刊/市田泉訳)
音楽:ジョニー・バーン
出演:ミア・サリア(ジュライ)、パスカル・カン(セプテンバー)、ラキー・タクラー(母・シーラ)、ニーヴ・モリアーティ(ジェニファー)、スージー・ベンバ(ダンスのインストラクター)

生まれたのはわずか10か月違い、一心同体のセプテンバーとジュライ。攻撃的な姉は妹を支配し、内気な妹はそれを受け入れ、強い絆で結ばれている。シングルマザーの母が入るすきまはないくらいだ。二人が通うオックスフォードの学校でのいじめをきっかけに、一家はアイルランドの海辺近くにある亡き父の一族の家へと引っ越すことになった。長年放置されていた<セトルハウス>での生活は何かを変えるのか?

同じドレスで並ぶ少女二人に『シャイニング』のワンシーンを思い出します。これから不穏なことが起こりそうな・・・。
セプテンバーは父親似、ジュライは母親似のようです。父親は影も形も出てきません。
「おバカなジュライ」と妹を呼ぶ姉は”September Says”といつも妹を操り、服従させています。英語圏の子どもたちがよく遊ぶ”Saimon Says”というゲームで、「サイモン」役の命令には必ず従います。ただしこの”Saimon Says”の一言がないのに動いたらアウトです。セプテンバーの命令にそんな逃げ道はなく、だんだんひどくなります。可愛がっているように見せて支配し、おとなしい妹ジュライは従うことで安心している共依存のように見えます。母親は娘たちより自分のことでいっぱい、自分の部屋にこもりがちで手に余る問題がおきればそこから逃げ出しています。姉妹という密接な関係、家という閉鎖的な空間での主従関係やトラウマを描いていますが、後味がうむむです…
アリアン・ラベド監督はギリシャ系フランス人女優・監督で、ヨルゴス・ランティモス監督のパートナーでもあります。原作のデイジー・ジョンソンは、デビュー作でブッカー賞の候補になり、こちらは2作目。(白)


2024年/アイルランド、イギリス、ドイツ合作/カラー/100分
配給:SUNDAE
(C)Sackville Film and Television Productions Limited / MFP GmbH / CryBaby Limited, British Broadcasting Corporation, ZDF/arte 2024
https://sundae-films.com/september-says/
★2025年9月5日(金)全国ロードショー
posted by shiraishi at 23:06| Comment(0) | アイルランド | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年05月25日

パフィンの小さな島(原題:Puffin Rock and the New Friends)

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監督:ジェレミー・パーセル
助監督:ロレイン・ローダン
脚本:サラ・ダディ
声の出演:新田恵海(ウーナ)、田所あずさ(イザベル)、上野樹里(ママ)、西垣俊作(パパ)、高野麻里佳(ババ)

パフィン(ニシツメドリ)の女の子ウーナと弟のババは、アイルランドの西にある小さな”トンガリ島”に住んでいる。ある日嵐が吹き荒れ、故郷を失った動物たちが島に逃れてきました。パフィンの仲間のエトピリカのイザベルもその一人です。ウーナは何かと声をかけますが、イザベルはなかなかうちとけることができません。けれどもみんなの仲間に入りたいのです。ある日、イサベルが誰にも相談せず自分一人でしたことが、思いがけないことになってしまいました。

『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』『ウルフウォーカー』を送り出したアニメ・スタジオ カートゥーン・サルーンの最新作がやってきました。監督はジェレミー・パーセル。ヒロインのウーナは絶滅危惧種に指定されているパフィンという海鳥。ペンギンのように白と黒の羽色、黄色とオレンジの嘴が大きくて目立ちます。足も嘴とお揃いのオレンジ。
あとからやってくるエトピリカのイザベルも同じ仲間で、やはり絶滅危惧種だそうです。そんな珍しい鳥が生息しているアイルランドにちょっと行って見たくなります。
映画は絵本のように、美しい色使いとやさしい言葉で島の動物たちや植物たちを見せていきます。人間界でこのごろ問題になっている「多様性を認めて、仲良く暮らしている」姿がありました。新しい暮らしに飛び込み、居場所を探すイザベルの寂しさは、故郷を離れて生きねばならない人たちと同じでしょう。
声高に何かを訴えるわけではありませんが、あとからじんわりとしみてくる映画でした。小さなお子様もぜひご一緒に。(白)


2023年/アイルランド、イギリス/カラー/80分
配給:チャイルド・フィルム
© 2023 Puffin Rock and The New Friends
提供:チャイルド・フィルム/代々木アニメーション学院/チャンス イン/ミッドシップ 
後援:アイルランド大使館
https://child-film.com/puffin/
X:@cartoonsaloonjp 
★2025年5月30日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショー

posted by shiraishi at 14:33| Comment(0) | アイルランド | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする