2026年04月29日
幸せの、忘れもの。 原題:Deaf
監督:エバ・リベルタ
出演:ミリアム・ガルロ、アルバーロ・セルバンテス、エレナ・イルレタ、ホアキン・ノタリオ
ベルリン国際映画祭2冠/スペインマラガ映画祭5冠 世界の映画祭が賞賛!
悲しみの静寂が胸に迫る、優しさに包まれた、大切な家族の物語。
聴こえない世界に生きるアンヘラと、優しく寄り添う夫エクトル。二人は手話というかけがえのない言葉で、心を通わす。アンヘラは陶芸工房で働き、優しい土の匂いと仲間たちにも見守られ、静かで平穏な日々を過ごしていた。しかし、ある “幸せな出来事”を境いに、何かが少しずつ揺らぎ始める…。やがて再び“疎外の世界”に引き戻されるアンヘラ。聴こえない世界とその外側で、時々見え隠れする“本当の幸せ”をアンヘラは、つかまえることができるのだろうか…。
主演のミリアム・ガルロは、ろう者の俳優でエバ・リベルタ監督の実の妹。
数年前、ミリアムが母親になろうと考え始めた時、「聴者による、聴者のための世界」で母親になることへの不安や期待を打ち明けてくれたことから、短編映画『Sorda(原題)』を作った監督。ろう者の世界と健聴者の世界との複雑なつながり方をさらに深く探求したいという思いから生まれたのが、本作。健聴者である夫のエクトルのキャラクターは、自身の投影でもあると監督は語っています。
母性というテーマに深く踏み込むために、ろう者の女性たちにインタビューを行い、妊娠、出産、育児にまつわる体験を聴いたとのこと。
ろう者であるが故に思うように気持ちを表現できないという葛藤は、健聴者である私自身は想像するしかありませんが、健聴者であっても気持ちが通じないことは多々あること。さらにもどかしいことと思います。
どんな状況にあっても、お互いを思いやることが幸せに暮らす秘訣でしょうか。(咲)
第75回ベルリン国際映画祭にて観客賞、アート・シネマ賞受賞
2025年/スペイン映画/スペイン語・スペイン手話(LSE)/99分/ビスタ
配給:スターキャットアルバトロス・フィルム
公式サイト:https://shiawase-film.com/
★2026年5月1日(金)より新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座ほか全国公開
2026年02月01日
両親が決めたこと 原題:Polvo serán 英題:THEY WILL BE DUST
監督:カルロス・マルセット
脚本:カルロス・マルセット、クララ・ロケ、コーラル・クルス
出演:アンヘラ・モリーナ、アルフレード・カストロ、モニカ・アルミラル・バテット、パトリシア・バルガロ、アルバン・プラド
スペイン、バルセロナ。80歳の舞台女優クラウディア(アンヘラ・モリーナ)は末期がんで錯乱や半身麻痺と自我の喪失が近づくなか、人生の最後は“自分で幕を閉じる”ことを決意する。演出家の夫フラビオ(アルフレード・カストロ)は、愛する妻の願いを知って、自分も一緒に人生を終えることを決める。だが、スペインで安楽死はできるが、デュオ安楽死(★注)はできない。ふたりはデュオ安楽死ができるスイスへ行くことを子供たちに告げる。
舞台女優の母、演出家の父という波乱な人生を送る両親からの最後で最大級のサプライズに3人の子どもたちは戸惑い、反発し、涙する・・・
★デュオ安楽死
夫婦の同時安楽死は"デュオ安楽死" や "ジョイント型"と呼ばれている。
スイス連邦裁判所は〝高齢夫婦のどちらかが終末期に安楽死するとき、そのパートナーは健康であっても共に安楽死することができる。と認めている。
母親の末期がんを機に、同居している末娘のヴィオレッタ。家庭を持ち実家に寄り付かない兄と姉を、母に合わせようと、ヴィオレッタは両親の結婚記念パーティーを企画。やっと3人の子が揃ったところで、両親からの爆弾発言。父親は、まだまだ元気。それが連れ添って旅立つというのですから、子どもとしては納得できません。先立たれるよりは一緒に逝く選択をするほど、妻を愛していることが羨ましくもありました。さて、自分だったら? 独り身ですから、一緒にという選択はできませんが、安楽死が許されるなら、余命宣告を受けた時には、苦しまずに逝くのもいいかなと。(咲)
死ぬまで「女優」だったアンヘラは、この上ない理解者の夫が並走してくれました。夫は妻亡き後の一人の人生など考えられません。これが夫が病を得たのだとしたら、妻は夫を送って一人新しい人生を楽しんだはず。
仕事を続けながら3人の子どもを育てたアンヘラですが、上の二人が寄り付かないのは、彼らには母親の手が十分にかけられなかったからな。子育ては親も慣れがあって、下の子ほど余裕ができたんでしょう。末っ子だけが親身に心配しています。
安楽死を選んで施設に入ってからのやりとりは、なかなか興味深かったです。日本でも『安楽死特区』のような映画ができましたが、欧米の映画と遺族の対応が違います。本作のラストには「ええっ!」とびっくりでした。(白)
2024年/スペイン、イタリア、スイス/英語、スペイン語/106分/16:9
配給:百道浜ピクチャーズ
公式サイト:https://www.m-pictures.net/futarigakimeta/
★2026年2月6日(金)よりシネマート新宿、キネカ大森、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開
2025年12月14日
チャップリン 原題:Chaplin: Spirit of the Tramp
(C)The Caravan Trail, A.I.E, Kwanon Films Limited, and Submarine Sublime 2024
Charlie Chaplin TM (C) Bubbles Incorporated S
監督・脚本:カルメン・チャップリン
出演:マイケル・チャップリン、ジェラルディン・チャップリン、ジョニー・デップ、トニー・ガトリフ、エミール・クストリッツァ、ストーケロ・ローゼンバーグ、リタ・カベルト、ファルキート
ロマの血を引いていることを楽しんでいたチャーリー・チャップリン
家族が語る映画の神様の素顔
ユダヤ人、共産主義者などのレッテルを貼られてきたチャップリンだが、実は自身が「ロマ(ジプシー)」の血を引いていることを誇りに思っていた。笑いや悲しみ、優しさや怒りで世界中の観客の心をつかんだ“放浪紳士チャーリー”はどこから生まれたのか。
チャップリンの足跡を辿るのは息子マイケル・チャップリン。父の名声と親の七光りという重圧に苦しんだマイケルが父子断絶を経て、その関係を見つめ直す。監督を務めたのは、孫カルメン・チャップリン。
チャップリンが、米国を追い出されたことは、知っていましたが、ロマの血を引いていることは、初めて知りました。
イギリスで、ロマの伯母のトレーラハウスで生まれたらしいですが、これは確証なし。チャップリンいわく、8分の1 ロマの血を引いているので、子どもたちは、16分の1と、言われたと、息子のマイケル・チャップリンは語っています。
チャップリン一家が米国を追い出されたのは、マイケルが6歳の時のこと。ロンドンでサヴォイホテルに泊まったのを覚えているそうで、裕福だったことがわかります。
その後、スイスに移り住みますが、両親は米国を追放されたことは何も言わなかったとのこと。家族思いのチャップリンの素顔が垣間見えるマイケルの話に、じ〜んとさせられました。それなのに、16歳の時に家を出て、それきり帰らなかったというマイケル。チャップリンは、どんな思いだったことでしょう。(咲)
2024年/スペイン・ベネルクス・イギリス・フランス/94分/カラー&モノクロ/5.1ch/1.85:1
日本語字幕:渡邉一治
配給:アンプラグド
公式サイトhttps://unpfilm.com/chaplin/
★2025年12月19日(金)から角川シネマ有楽町ほか全国順次公開
2025年09月19日
ムガリッツ(原題:Mugaritz. Sin pan ni postre/英題:MUGARITZ NO BREAD NO DESSERT)
監督:パコ・プラサ
脚本:パコ・プラサ、マパ・パストール
スペイン・バスク地方。ミシュランガイドに「レストランを超えた存在」と評され、2つ星を獲得したガストロノミーの名店<ムガリッツ>がある。もともと<ムガリッツ>の熱心なファンだったパコ・プラサ監督が、ムガリッツの研究開発チームに密着、メニュー開発の舞台裏を追ったドキュメンタリー。
オーナーシェフのアンドニ・L・アドゥリスは、革新的な料理法や「分子ガストロノミー」を先駆けて取り入れ、世界中の料理界に大きな影響を与えた有名な三つ星レストラン<エル・ブジ>など、名だたるレストランで修行後、1998年3月にムガリッツを開店。今や世界中の美食家から羨望の眼差しを受けるムガリッツを育て上げた。
今年のテーマ「目に見えぬ物」にそって、革新的な料理38皿が誕生するまでの舞台裏を追ったドキュメンタリーです。ガストロノミー(食事と文化の関係を考察すること)は、21世紀に入る頃からバスク地方を中心に注目を浴び始めました。
『REC』シリーズなどのホラー作品で知られたパコ・プラサ監督ですが、もともと<ムガリッツ>の熱心なファンだったそうです。厨房やスタッフ会議、試食会にもカメラが入り、その創造の秘密を解き明かすべく迫りました。
オーナーシェフのアンドニ・L・アドゥリスは開発チームと、気になる単語をいくつも書きだします。創造性や意外性に富んでいるかなどの大きなカテゴリーを作り、スタッフたちは思い思いに新しいメニューを考え、みんなで意見を出し合ってヒントにし、さらに研究します。納豆、茶道、昆布茶とか日本の単語が聞こえてきたり、日本から荷物が届いたりしていました。
調理の様子はまるで科学実験のようです。選び抜いた食材にいくつもの手間と時間をかけて、革新的な料理を生み出していきます。試行錯誤の末、新しく決まったメニューは38種類。試食しているのはきっと美食家の面々なのでしょう。一皿ずつサーブされるたびに驚き、ためつすがめつ見て、味わってまた驚き…コメントも「美味しい!」というばかりではありません。困惑する方もいます。私には縁がなさそうだけれど、すべて平らげて楽しかった~と言ってみたいなあ。(白)
2024年/スペイン/カラー/96分/字幕翻訳:比嘉世津子
提供:ティー ワイ リミテッド
配給:ギャガ
https://gaga.ne.jp/mugaritzmovie/
☆第72回サン・セバスティアン国際映画祭カリナリーシネマ部門・ベストフィルムを受賞
★2025 年9月19日(金)よりシネスイッチ銀座ほか全国順次公開
2025年07月27日
入国審査(原題:UPON ENTRY)
監督・脚本:アレハンドロ・ロハス、フアン・セバスティアン・バスケス
撮影:フアン・セバスティアン・バスケス
音楽:ラケル・トラス
出演:アルベルト・アンマン(ディエゴ)、ブルーナ・クシ(エレナ)、ローラ・ゴメス(バスケス審査官)、ベン・テンプル(バレット審査官)
移住のために、バルセロナからNYへと降り立った、ディエゴとエレナ。エレナがグリーンカードの抽選で移民ビザに当選、事実婚のパートナーであるディエゴと共に、憧れの新天地で幸せな暮らしを夢見ていた。ところが入国審査で状況は一転。パスポートを確認した職員になぜか別室へと連れて行かれる。「入国の目的は?」密室ではじまる問答無用の尋問。やがて、ある質問をきっかけにエレナはディエゴに疑念を抱き始める──。
低予算(65万ドル)&短期間(17日間)で撮影した、それも監督デビュー作!!
各地の映画賞を席巻しました。新生活にわくわくするカップルが飛行機で飛び立ったものの、ニューヨークの玄関口で止められてしまいます。なんで!? 77分間、観客は二人と一緒にドキドキとハラハラすることになります。こんな目に遭いたくない・・・
このストーリーテリングの上手さよ、新人監督?と資料を見直しました。お二人とも長編作品監督こそ初ですが、数多の制作に携わり、ロハス監督は映画ジャーナリストでもありました。バスケス監督は撮影分野から脚本、出演へと足場を広げ、シッチェス映画祭の審査員でもあります。観客としての目も肥えているのでしょう。緊張が続いてのあのラストにやられました。濃密な77分間です。お楽しみに!(白)
別室に呼ばれて、あれこれ質問攻めにあう二人。果たして、入国できるの?と、観ている私も緊張。事実婚の仲ながら、へ~そうだったの?と、知らなかった相手の過去も出てきて、あらあらと。
緊張の77分が終わって、観た人と一緒に絶対語りたくなる物語。
ロハス監督自身の故郷ベネズエラからスペインに移住した際に、実際に体験したことからインスピレーションを受けて作ったとのこと。私自身、別室に呼ばれての尋問ではないけれど、イスラエルのエルアル航空のチャーター便で出国前に、しつこく質問攻めにあったのを思い出します。パスポートには中東の国の出入国記録がたくさんあったので、根掘り葉掘り、何しに行った? 知り合いは?と。途中で係官が交代して、また同じような質問をされました。整合性のない人物は怪しまれる??? 移民受け入れに厳しくなったトランプ政権。アメリカに行きたいとは思わないけれど、移住したい人にとっては厳しい入国審査が待ってそうですね。(咲)
2024年/スペイン/カラー/77分
配給:松竹
(C)2022 ZABRISKIE FILMS SL BASQUE FILM SERVICES SL SYGNATIA SL UPON ENTRY AIE
https://movies.shochiku.co.jp/uponentry/
★2025年8月1日(金)全国ロードショー


