2026年05月04日
霧のごとく(原題:大濛)
監督・脚本:チェン・ユーシェン『1秒先の彼女』
出演:ケイトリン・ファン(阿月)、ウィル・オー(趙公道)、9m88(姉)、ツェン・ジンホア(兄)
1950年代の台湾。両親を亡くした阿月の家に叔父一家が越してきた。居心地の悪い阿月は「白色テロ」の犠牲になった兄・阿雲の遺体を引き取りに一人家を出る。なけなしの金と形見の時計を手に、台北へ向かうが役所の場所さえわからない。右往左往する阿月は騙されて売り飛ばされそうになる。すんでのところを車夫の趙公道に救われる。公道も戦友を亡くし、故郷の広東へ帰れずに仕事を点々としていた。行きがかり上、公道は阿月と一緒に、引き取り費用の金策、養女に出された阿月の姉探しをする。
一途で無防備な阿月、粗暴で無茶だけれど情のある公道をハラハラしながら見守りました。権力をかさに威張る警察、逆らえない民衆、みんなが困窮していた戦後は生きるのがやっとです。騙される方が悪いと言わんばかりの人間もいます。そんな中でも日差しのような暖かい交流はありました。自分の運命を知りつつ妹を気遣う兄役のツェン・ジンホアは登場したシーンは少ないものの、印象的です。やっと見つけた姉役は9m88(ジョウエムバーバー)はNYでジャズを学んだミュージシャン。里子に出されていたため、このたび初めて会った妹と阿雲の遺体探しをします。離れて暮らしても家族でした。
たまたま出逢った阿月と公道は、一生忘れることのない体験をしました。公道は後ろ暗いところもある元軍人ですが、悪人とは言い切れません。
若いキャストたちの心のこもった演技に泣かされます。背景になる当時を丁寧に再現した農村、賑わう市場、込み合ったバラックや憩いの場であっただろう歌舞劇団の公演など、美術の見どころもたくさんです。亡き兄が遺した物語が、辛いできごとをやさしく包みます。「白色テロの時代を描くなんて!」と当初反対されながらも映画は完成し、多くの観客の心をゆさぶりました。金馬賞では作品賞、脚本賞など最多4冠!(白)
2025年/台湾/カラー/134分
配給:JAIHO、Stranger
(C)2025 Mandarin Vision Co,, Ltd. All Rights Reserved.
https://www.afoggytale.com/
★2026年5月8日(金)ほか全国ロードショー
2026年04月25日
【特集上映】台湾Filmake——映画に恋した3つの人生—— 『台湾ハリウッド』『超低予算ムービー大作戦』『めぐる面影、今、祖父に会う』
日本未公開作品を含む台湾映画3作品の特集「台湾Filmake——映画に恋した3つの人生——」で、下記3本が上映されます。
『台湾ハリウッド』
『超低予算ムービー大作戦』
『めぐる面影、今、祖父に会う』
3作品に共通するのは、“映画を作る人々”の物語を描いた映画であること。
青春時代を映画制作とともに駆け抜けた人々、超低予算の作品制作で一発逆転を狙う人々、そして関わった映画と自分自身が重なっていく経験をする人々——スクリーンの裏側で、不思議な出来事が作り手たちに巻き起こる。
本特集では、台湾映画史に残る大ヒットホラー『紅い服の少女』や、Netflix非英語ドラマ部門で世界2位を記録した「模仿犯」を手がけた“グリーナー・グラス”の初期作品に加え、台湾BLドラマ『奇蹟』で注目を集めたカイ・シュー出演作、さらに台湾ニューシネマの巨匠ホウ・シャオシェンのもとで長年美術監督を務めてきたホアン・ウェンインの長編初監督作を上映。
『超低予算ムービー大作戦』は日本初公開、『台湾ハリウッド』『めぐる面影、今、祖父に会う』はいずれも日本では鑑賞機会の限られていた作品。
映画の作り手たちが映画、現実に人生を動かされていく、「事実は映画より奇なり」な台湾映画ファン必見の3作品!
配給:ライツキューブ
公式サイト:https://rightscube.co.jp/movies/taiwan-filmake/
★2026年4月25日(土)よりケイズシネマほか全国順次開催
台湾ハリウッド 原題:阿嬤的夢中情人
©2012 All rights reserved.
監督:シャオ・リーショウ、北村豊晴
出演:ラン・ジェンロン、アン・シンヤ、ワン・ボージエ
2013年/台湾/シネスコ/5.1ch/124分/台湾語、中国語
1960年代、台湾語映画の黄金時代。“台湾のハリウッド”と呼ばれた温泉街・北投には、映画に人生を賭けた人々の青春があった。若手監督のシャオ・リーショウが、台湾で活躍する日本人監督の北村豊晴とタッグを組み、その日々を笑いと涙たっぷりに描くロマンスコメディ。第15回台北映画祭・脚本賞受賞作。
入院中の祖父を見舞いに来た孫。脚本家だった祖父は、女優だった祖母との出会いを彼女に語り始める……。
時代は遡り、1960年代。台湾の北投で売れっ子脚本家の劉奇生(ラン・ジェンロン)は、自身が脚本を執筆した映画の初公開を迎え、宣伝に協力させられ劇場へ。そこで、満員の劇場に入れず、登壇するスターに会いたい一心で潜り込もうとする美月(アンバー・アン)に偶然遭遇し……。
「夢は月と共に」が口癖のおじいちゃん。かつては、売れっ子の脚本家だった。そこから始まるおじいちゃんの回想。運命が変わったのは、人類が月面着略に成功した1969年7月12日。この日、映画の撮影中に監督が急死。脚本家の彼に急きょ監督をせよとプロデューサー。おばあちゃんは、当時、女優を夢見てオーディションに。そうして出会った二人の物語。順風満帆とはいかず、二人の前には大波が。それが逆に二人の絆を強めました。
1956年に誕生した台湾映画。1970年代半ばには、標準語映画の時代が訪れ、台湾語映画は廃れてしまいました。1000本ほど作られた台湾語映画のうち、残っているのは、200本程。台湾語映画へのオマージュとして作られた、映画を愛する二人の出会いとその後を描いた物語。(咲)
超低予算ムービー大作戦 原題:導演你有病
©2024 All Rights Reserved.
監督:リー・ヨウチアオ
出演:カイ・シュー、タン・ツォンシェン、マリオ
2024年/台湾/シネスコ/5.1ch/98分/中国語
ある有名映画会社の撮影中に、監督が謎の失踪を遂げる…!?広告界の奇才リー・ヨウチアオの最新作。ある低予算映画の制作過程でバカバカしくて奇妙な事態が次々と巻き起こる、ジェットコースター・コメディ。台湾発のBLドラマ『奇蹟』に出演し注目を集めたカイ・シュー、『カップルズ』出演のタン・ツォンシェンほか個性豊かなキャストがドタバタ劇を繰り広げる。
新作映画のため、プロデューサー(タン・ツォンシェン)は監督探しに奔走する。しかし、超低予算の企画を引き受ける監督は誰ひとりいない。藁をもすがる思いで採用したのは、自ら志願してきた怪しげな新人監督(カイ・シュー)。企画、出資元からの無理難題、そして撮影現場。スタッフたちは、予算の壁に翻弄されながら映画づくりに挑むことになるが……。
スマホで映画が撮れる時代。監督は新人でもというプロデューサー。
「お金をかければいい映画が出来るわけじゃない。映画は人々に影響を与えるもの」という新人監督の言葉に拍手♪ (咲)
めぐる面影、今、祖父に会う 原題:車頂上的玄天上帝
©2023 All rights reserved.
監督:ホアン・ウェンイン
プロデューサー:ホウ・シャオシェン
出演:アリエル・リン、ヴィック・チョウ 特別出演:イーサン・ルアン
2023年/台湾/ビスタ/5.1ch/129分/台湾語、中国語、日本語
台湾ニューシネマの巨匠、ホウ・シャオシェンと長年タッグを組んできたホアン・ウェンインの長編初監督作品。プロデューサーをホウ・シャオシェンが務める。父の介護のため実家に戻ったアートディレクターが、故郷で過ごすうち、日本の統治時代を生きた祖父に思いを馳せていく、家族ドラマ。台湾ドラマ版「イタズラなKiss」のアリエル・リン、ヒロインが惹かれていく建築士、そして祖父役をヴィック・チョウが演じる。
映画美術の仕事に携わるフーユェ(アリエル・リン)は、体調を崩した父を支えるため、撮影現場を一時的に離れ、故郷へ戻る。父の介護のため故郷で過ごすうち、そして撮影セット制作のため、連絡を取った建築士(ヴィック・チョウ)と語り合うなかで、彼女の心は祖父が生きた時間へと、重なっていく——。
台北で映画製作で美術を担当するフーユェが帰る故郷は、台湾中部の嘉義。
映画『KANO 1931海の向こうの甲子園』で、日本統治下の1931年、台湾代表として全国高校野球選手権に出場し、準優勝を果たした嘉義農林学校のことが描かれたことで知った町です。
フーユェの祖父が、嘉義の駅前に立派な旅館を建てたのは、1941年に嘉義を襲った大地震の後のことでした。1945年、空襲で嘉義の町は焼け野原となり、旅館も焼失。嘉義が空襲でやられたことを知らなかったので、当時、日本だった台湾も空襲の対象だったのだとあらためて思いました。
冒頭、玄天上帝という道教の神様の像を避難させる場面。日本の統治下で、天照大御神を拝まなければならなくなったという次第。
満州から仕事で台湾に来ていた中国人は、戦争が終わって帰る場所がないとつぶやきます。
50年間の日本統治がもたらしたものを考えさせられましたが、そうした祖父が過ごした時代を背負いながら今を生きる主人公の気持ちに寄り添う素敵な映画です。(咲)
2026年04月05日
万博追跡 2Kレストア版 原題:博追踪 英題:Tracing to Expo '70
監督:廖祥雄(リャオ・シャンション)
出演:翁倩玉(ジュディ・オング)、馮海、魏蘇、傅碧輝、陳國鈞、喬松、張莉、曾玉、原田玄、川名美彌、衫森麟、小山八千代
特邀出演:林海峯
カメオ出演:周祥賡 莊文華
1970年大阪万博の台湾パビリオンのコンピニオンに選ばれた日本育ちの台湾人の雪子(ジュディ・オング)は、同級生の藤本哲男と一緒に大阪に向かう。母は雪子にふたつの使命を授ける。台湾から生活費を送ってくれている謎の人物・陳春木を探すこと、そして、終戦直前に父親が上海で命を落としたことの真相をつきとめるというものだった。
手あたり次第、パビリオンで聞き込みをする雪子。ようやく陳春木を知っているという人を見つけ、彼の情報で陳春木の妹に会いに神戸に向かう。彼女は自分が台湾にいる兄に仕送りを依頼したが、それも別の誰かに頼まれた事だという。しかしそれが誰なのかは口止めされていて語ろうとしない…
昨年9月、大阪アジアン映画祭で上映された折に拝見。
まずは、タイトルや監督・出演者など、漢字が右から縦書きで書かれていて、かつての日本映画もそうだったと、感慨深いものがありました。
(この度の公開バージョンは、横書きに変わっています)
賑やかな踊りで始まり、ジュディ・オングさんが登場し、2曲歌って、なんだか歌謡ショーのような様相。実は番組収録でした。収録が終わって、ジュディさん演じる雪子(日本生まれの台湾人)が、応募した中華民国パビリオンの万博ホステスに選ばれた通知を受け取ったことを大喜びで恋人の藤本哲雄に伝えます。二人はどうやら大学生。哲雄も万博に行きたいけれどお金が足りないので、父親に無心するのですが、行くこと自体にいい顔をしない父。万博会場の食堂でのバイトを見つけて哲雄も大阪へ。
雪子には、実は万博に参加したい目的がありました。まだ雪子が母のお腹の中にいた終戦直前、雪子の父は上海で日本軍に殺されたらしいのですが、その後、母娘がお金に困っていると、台湾から支援のお金が届いていて、父の死の真相や誰が支援してくれているのか、万博のパビリオンで働けば、台湾から来る人と知り合って、手がかりを得ることができるのではないかと思ったのです。
恩人の山崎さんに確認するも、支援しているのは自分ではないといわれたます。万博会場で山崎さんが案内していた台湾人のワンさんに声をかける雪子。台湾に帰ったら調べてみるといわれます。そして、ワンさんから日本人を二人紹介する手紙が届きます。雪の残る地方の村に訪ねていく雪子と哲雄。あちこち奔走するうち、思いもかけない真相が判明します。雪子の父(台湾人)は、スパイと疑われて殺されたらしいと。
これ以上は、ネタバレになるので、伏せておきますが、70年万博を舞台にした映画には、思いもかけず重い背景がありました。思えば、戦争が終わって、まだ25年しか経っていない時期でした。日本が復興を遂げたことを世界にアピールする万博だったのだと思いました。
「蒋介石が日本をお許しになったので(この繁栄が)」という言葉が何度か出てきて、当時の台湾では、そういう認識だったのかと!
実際の万博会場がたっぷり映っていて、高校生だった当時、夏休みに一度だけ同級生たちと訪れた万博を懐かしく思い出しました。
3時頃に映画が終わって、余韻に浸りながら大阪・関西万博に夜間券で入場。3度目でしたので、見損ねていた噴水ショーとドローンショーを楽しんできました。(咲)
私も大阪アジアン映画祭で観ました。8月29日、初日のオープニング作品でした。ジュディ・オングさんもゲストで来て、上映後はトークショーもありました。
キーパーソンの山崎という人と知り合い、その人と一緒だった人を訪ね、だんだんに真相に近づいて行きます。観光案内のような万博パピリオ巡りや、サスペンスのような人探しなどのあと、雪子の父は上海で日本軍にスパイとみなされて殺されたという思いがけない事実がわかります。雪子は20歳というのに、1970年は戦後25年だから、時代考証など突っ込みどころはいくつかあるのだけど、ま、そのへんはおいとくとして、あの当時の台湾映画を観ることができました。
蒋介石の時代で、「蒋介石のおかげで今日の台湾がある」なんて言葉が出てきたり、加害者の日本と被害者の台湾という話の展開で、加害と贖罪を巡る話になっていく。アイドルのエンターテイメント映画だと思っていたら、思わぬ展開。ジュディ・オングさんの存在感が光る作品でした。それにしてもジュディ・オングさん、日本でも台湾でも大活躍だったんですね。
当時も今も、万博なんて国威高揚のようなイベントには興味がない私なので、どんな国が参加しているかなんて知らなかったけど、1970年の万博の様子を見ることができた。そして、当時は中国の代表として台湾が出展していたということを知った。中国との国交回復は1972年で、まだ中国との国交は回復していなかった。今回も大阪には行ったけど万博には参加せず。
私が子供の頃(小学校4年生くらい)、ジュディさんが出演したTVドラマ「おらあ三太だ」を見た記憶があります。ジュディさんの役は小学校6年生くらいだったと思います。日本語を話しているのにジュディ・オングという名前で、子供ながらなんでかなと思ったけど、彼女が台湾の人だと知ったのはだいぶたってから。このドラマの正式題名は「三太物語」でした。三太の役は渡辺篤史さん。番組が始まる冒頭で「おらあ三太だ」と言って始まるので、ずっと「おらあ三太だ」というタイトルだと思っていました。63年も(笑)。ジュディさんは、元気な女の子の役でした。そして、なんとこれは生放送だったそう。それを知ってびっくり。1962年頃の番組だったと思う。当時、私の家にはTVはまだなくて、近所の家か、学校で見たような気がする。その頃からずっと活躍してきたジュディさん。絵を描いたり、今も芸能人としてだけでなく、アーティスト、そして福祉活動もしている。「三太物語」の話は、大阪アジアン映画祭初日、この作品上映後のトークショーの中で出てきた。
そして現在。台湾で2025年年末に公開されたジュディ・オングさん出演の『陽光女子合唱団』という作品が興行収入5億4500万新台湾ドル(約26億6000万円)を突破し、台湾の興行収入史上最高額を記録したそうです。これは韓国映画『ハーモニー心をつなぐ歌』をリメークした映画で、ジュディさんが「時間之歌」というテーマソングも歌っているそうです。これも日本公開されるといいなあ(暁)。
1970年/台湾/97分
配給:ハーク
公式サイト:https://hark3.com/expo/
★2026年4月10日(金)シネマート新宿、池袋シネマ・ロサほか全国順次公開
2026年04月02日
XiXi、私を踊る 原題:XiXi
4/4㊏よりユーロスペースほか全国順次公開
人生を力強く“踊る”ダンサー・XiXi(シィシィ)
自由を求めて躍動するシスターフッド・ドキュメンタリー
監督:吳璠(ウー・ファン)
撮影:ウー・ファン、ベニス・デ・カストロ・アティエンザ
編集:アンナ・マグダレーナ・シュレンカー
音響:コ・ウンハ/音楽:グレッチェン・ジュード
プロデューサー:ベニス・デ・カストロ・アティエンザ、ウー・ファン、ジョ・ソナ、ハ・ヨンス
製作:スヴェミルコ・オーディオビジュアル・アートプロダクションズ
出演:XiXi(シィシィ)、ウー・ファン(監督)、ニナ(XiXiの娘)、メデリック(XiXiの元夫)
「私は愛を畏れない生きることを愛しているから」
台湾出身のウー・ファン監督が、ベルリンで偶然出会った個性的な中国人ダンサー・XiXi(シィシィ)との絆を描き、2人の女性のみずみずしい生の在り様をとらえた本作が長編初監督となるドキュメンタリー。
台湾からヨーロッパに留学していたウー・ファン監督が、ベルリンで偶然出会った中国人のコンテンポラリーダンサーXiXi(シィシィ)。まるで自由な鳥のように踊っていた彼女の姿に強烈に惹かれた監督は、彼女の日常を撮影し始める。XiXiはヨーロッパを放浪しながら、ダンサーとして自由な魂を探す旅をし続けていた。ファンの眼には彼女の行動は羽ばたくことを恐れぬ野生の鳥のように美しく映った。一方で彼女は離婚した元夫のメデリックと連絡を取り、会うことが許されている娘・ニナに対しては母として、惜しみなく愛情を注いでいた。しかし過去の人生には癒されぬ深い疵が潜むのをカメラは捉え始めていく。それは、ファン監督自らの家族のトラウマとも向き合うきっかけにも…。
7年をかけて製作された本作は、ウー・ファン監督の初長編作品としてホットドックス国際ドキュメンタリー映画祭や台湾金馬奨といった映画祭で共感と感動が拡がり、日本に上陸。一人の表現者として、女性として、母として、様々な社会的役割の狭間でもがくXiXiの姿は、現代社会を生きる女性たちの悩みや迷いだけでなく、これからの時代を生き抜こうとする力強いアイコンとして強烈な印象を与える。XiXiとウー・ファン監督の絆から生まれた本作は、世界中で再度燃え上がり始めたフェミニズムの運動や女性観の意識が高まりつつある今、生まれた瑞々しいシスターフッド・ドキュメンタリー。
この作品は、多国籍な女性スタッフが終結し、文化や国境を越えた共有感で作り上げられた作品。台湾出身のウー・ファン監督を支えたのは、フィリピン出身のプロデューサー、ベニス・デ・カストロ・アティエンザ。ファン監督とヨーロッパの映画大学で知り合ったベニスは、本作の企画段階から携わり撮影にも参加。主人公であるXiXiとも信頼関係を築きながら、本作の完成、その後の世界展開に導いた。作品の製作過程でスタッフも徐々に集まり、韓国からはプロデューサーのジョ・ソナとハ・ヨンス、そして音響のコ・ウンハ。編集のアンナ・マグダレーナ・シュレンカーはコロンビア出身、音楽を担当したグレッチェン・ジュードはアメリカ出身。XiXiという個性的だけど、普遍的なテーマも抱える女性を主人公とした本作は、文化や国境を越えた女性たちのチームが紡いだ結集ともいえる。
自由な魂を求めて旅を続けるXiXiの日常を通して、監督自らのトラウマにも向き合った7年間。ふたりは家族、住んでいた場所などのしがらみから抜け出すためにヨーロッパに行ったのかもと思う。私自身、自分の思いややりたいことは、自分が生まれ育った場所では制約があって自由に行動できないと感じていた。私は家を出て一人暮らしを始めたことで、少しクリアできた。でも仕事場ではかなり自分を押し殺していた。自由に自分の思いを話したり伝えることはできなかった。時代も違うけど、この二人はよりグローバルに活動するため国を飛び出した。
XiXiは、フランス人と結婚することで中国を飛び出し、さらに夫と離婚することで、自分の表現を広げた。事実、夫は彼女のパフォーマンスに対して、いろいろ言いたいこと、娘に悪影響があると考えていたりする。でも、XiXiは自分の身体を使い、自分の意志をダンスに込め、自分の行動を進める。娘もそれに対してけっこう冷静にみている。二人は中華圏の、ひいてはアジアの家父長制、あるいは男性から見た女性観から自由になる。2人の女性のみずみずしい生の在り様をとらえたドキュメンタリー。
XiXiの表現スタイルを観て、「イトー・ターリ」というパフォーマンス・アーティストのことを思いだした。XiXiと同じように世界のあちこちで身体を使ってパフォーマンスしていた。1951年生まれで、東京出身。彼女は2021年に亡くなってしまったが、1973年から身体表現、「身体が介入するアート[」に関心を持ち、パントマイムを学ぶ。1982年から1986年にオランダでパフォーマンスを学んだ。その期間から、フェミニズムやセクシャル・マイノリティの人権について考えはじめ、1996年にはパフォーマンス《自画像》でレズビアンとカムアウトし、公演を続けていた。「越境する女たち21」展というのも実施している。(ウイキペディアより) 彼女は筋萎縮性側索硬化症(ALS)を発症し、70歳で亡くなったが、日本にもこのような方がいたというのを知ってもらいたい(暁)。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%88%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%AA
山上千恵子監督が『ディア ターリ』(2000)というドキュメンタリーを製作している。
https://wan.or.jp/article/show/6902
https://sisterwave.exblog.jp/4731920/
公式HP https://xixi-movie.com/
2024/台湾、フィリピン、韓国/中国語、英語、フランス語/100分/カラー/5.1ch/DCP
配給・宣伝:テレザ、ノンデライコ
人生を力強く“踊る”ダンサー・XiXi(シィシィ)
自由を求めて躍動するシスターフッド・ドキュメンタリー
監督:吳璠(ウー・ファン)
撮影:ウー・ファン、ベニス・デ・カストロ・アティエンザ
編集:アンナ・マグダレーナ・シュレンカー
音響:コ・ウンハ/音楽:グレッチェン・ジュード
プロデューサー:ベニス・デ・カストロ・アティエンザ、ウー・ファン、ジョ・ソナ、ハ・ヨンス
製作:スヴェミルコ・オーディオビジュアル・アートプロダクションズ
出演:XiXi(シィシィ)、ウー・ファン(監督)、ニナ(XiXiの娘)、メデリック(XiXiの元夫)
「私は愛を畏れない生きることを愛しているから」
台湾出身のウー・ファン監督が、ベルリンで偶然出会った個性的な中国人ダンサー・XiXi(シィシィ)との絆を描き、2人の女性のみずみずしい生の在り様をとらえた本作が長編初監督となるドキュメンタリー。
台湾からヨーロッパに留学していたウー・ファン監督が、ベルリンで偶然出会った中国人のコンテンポラリーダンサーXiXi(シィシィ)。まるで自由な鳥のように踊っていた彼女の姿に強烈に惹かれた監督は、彼女の日常を撮影し始める。XiXiはヨーロッパを放浪しながら、ダンサーとして自由な魂を探す旅をし続けていた。ファンの眼には彼女の行動は羽ばたくことを恐れぬ野生の鳥のように美しく映った。一方で彼女は離婚した元夫のメデリックと連絡を取り、会うことが許されている娘・ニナに対しては母として、惜しみなく愛情を注いでいた。しかし過去の人生には癒されぬ深い疵が潜むのをカメラは捉え始めていく。それは、ファン監督自らの家族のトラウマとも向き合うきっかけにも…。
7年をかけて製作された本作は、ウー・ファン監督の初長編作品としてホットドックス国際ドキュメンタリー映画祭や台湾金馬奨といった映画祭で共感と感動が拡がり、日本に上陸。一人の表現者として、女性として、母として、様々な社会的役割の狭間でもがくXiXiの姿は、現代社会を生きる女性たちの悩みや迷いだけでなく、これからの時代を生き抜こうとする力強いアイコンとして強烈な印象を与える。XiXiとウー・ファン監督の絆から生まれた本作は、世界中で再度燃え上がり始めたフェミニズムの運動や女性観の意識が高まりつつある今、生まれた瑞々しいシスターフッド・ドキュメンタリー。
この作品は、多国籍な女性スタッフが終結し、文化や国境を越えた共有感で作り上げられた作品。台湾出身のウー・ファン監督を支えたのは、フィリピン出身のプロデューサー、ベニス・デ・カストロ・アティエンザ。ファン監督とヨーロッパの映画大学で知り合ったベニスは、本作の企画段階から携わり撮影にも参加。主人公であるXiXiとも信頼関係を築きながら、本作の完成、その後の世界展開に導いた。作品の製作過程でスタッフも徐々に集まり、韓国からはプロデューサーのジョ・ソナとハ・ヨンス、そして音響のコ・ウンハ。編集のアンナ・マグダレーナ・シュレンカーはコロンビア出身、音楽を担当したグレッチェン・ジュードはアメリカ出身。XiXiという個性的だけど、普遍的なテーマも抱える女性を主人公とした本作は、文化や国境を越えた女性たちのチームが紡いだ結集ともいえる。
自由な魂を求めて旅を続けるXiXiの日常を通して、監督自らのトラウマにも向き合った7年間。ふたりは家族、住んでいた場所などのしがらみから抜け出すためにヨーロッパに行ったのかもと思う。私自身、自分の思いややりたいことは、自分が生まれ育った場所では制約があって自由に行動できないと感じていた。私は家を出て一人暮らしを始めたことで、少しクリアできた。でも仕事場ではかなり自分を押し殺していた。自由に自分の思いを話したり伝えることはできなかった。時代も違うけど、この二人はよりグローバルに活動するため国を飛び出した。
XiXiは、フランス人と結婚することで中国を飛び出し、さらに夫と離婚することで、自分の表現を広げた。事実、夫は彼女のパフォーマンスに対して、いろいろ言いたいこと、娘に悪影響があると考えていたりする。でも、XiXiは自分の身体を使い、自分の意志をダンスに込め、自分の行動を進める。娘もそれに対してけっこう冷静にみている。二人は中華圏の、ひいてはアジアの家父長制、あるいは男性から見た女性観から自由になる。2人の女性のみずみずしい生の在り様をとらえたドキュメンタリー。
XiXiの表現スタイルを観て、「イトー・ターリ」というパフォーマンス・アーティストのことを思いだした。XiXiと同じように世界のあちこちで身体を使ってパフォーマンスしていた。1951年生まれで、東京出身。彼女は2021年に亡くなってしまったが、1973年から身体表現、「身体が介入するアート[」に関心を持ち、パントマイムを学ぶ。1982年から1986年にオランダでパフォーマンスを学んだ。その期間から、フェミニズムやセクシャル・マイノリティの人権について考えはじめ、1996年にはパフォーマンス《自画像》でレズビアンとカムアウトし、公演を続けていた。「越境する女たち21」展というのも実施している。(ウイキペディアより) 彼女は筋萎縮性側索硬化症(ALS)を発症し、70歳で亡くなったが、日本にもこのような方がいたというのを知ってもらいたい(暁)。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%88%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%AA
山上千恵子監督が『ディア ターリ』(2000)というドキュメンタリーを製作している。
https://wan.or.jp/article/show/6902
https://sisterwave.exblog.jp/4731920/
公式HP https://xixi-movie.com/
2024/台湾、フィリピン、韓国/中国語、英語、フランス語/100分/カラー/5.1ch/DCP
配給・宣伝:テレザ、ノンデライコ
2026年03月08日
96分(原題:96分鐘)
監督:ホン・ズーシュアン
脚本:ホン・ズーシュアン、 イボンヌ・チェン、 ヤン・ワンジュ
出演:リン・ボーホン、ヴィヴィアン・スン、ワン・ポーチエ、リー・リーレン
台北から南部・高雄へ向かう台湾新幹線(高鉄)の車内。爆弾処理専門家のカンレンは母親と妻と乗車していた。3年前の爆破事件の追悼式に出席した帰りで多くの遺族も一緒だ。在職していたころの元上司から「列車に爆弾が仕掛けられている」と知らされる。しかも列車を停めると爆発するという。台北から高雄までは96分。カンレンはこの96分の間に爆弾を見つけ出し、危機を解除しなければならない。犯人の目的は一体何なのか、
台湾の新幹線に爆発物がしかけられ、台北から高雄までノンストップで走る96分の間に見つけ出さねば、乗客の命にかかわります。乗車していた警官たちが必死で犯人と爆弾を探します。冒頭のシーンから爆発物処理で緊張しますが、リン・ボーホンりりしくて良いです。この事件の犯人にもそれなりの事情はあるのですが、巻き込まれる乗客には罪はありません。車内での処理や乗客をどうやって助けるか、観ていてドキドキでした。
列車に爆弾が仕掛けられるという映画はいくつかありました。昨年の『新幹線大爆破』は1975年の同名作品のリメイク。高倉健主演で”こだま”を時速80km以下にできないというものでした。新しいほうは、”はやぶさ”で時速100km、JRの全面協力で鉄ヲタさんも嬉しかったはず。(白)
2025年/台湾/カラー/スコープサイズ/120分
配給:ハーク
https://hark3.com/archives/2264
★2026年3月13日(金)よりシネマート新宿ほか全国順次公開


