2026年05月10日
ボタニスト 植物を愛する少年 原題:植物学家 英題:The Botanist
監督・脚本:ジン・イー
出演:イェスル・ジャセレフ、レン・ズーハン、ジャレン・ヌルダオレット、サルヘト・エラマザン、ソンハト・ジョマジャン
第75回ベルリン国際映画祭ジェネレーションKplus部門
国際審査員グランプリ(最高賞)受賞
中国の新疆西北部、カザフスタン国境まで5キロの草原地帯にある小さな村。カザフ族の少年、13歳のアルシンは、叔父イェルケンが教えてくれた植物採集の仕方を踏襲して観察し記録することで、一人静かに日々を過ごしている。その叔父は、3年前の大雪の日、行方不明になった。
ある日、アルシンは山で出会った少女の指に刺さった棘をピンセントで取ってあげる。その漢民族の少女メイユーが村の商店で店番をしていて、再会したアルシンを森に誘う。明るく自由な彼女の存在は、アルシンの静かな日常に変化をもたらす。二人は草原を歩き、植物を探し、言葉にならない緩やかで暖かな時間を過ごす。友情から、淡い初恋へと距離が縮まる中、メイユーは上海の全寮制の学校に行くことを母親が決めたという。アルシンは再び孤独と向き合うことになる。詩を語る馬、根を離れて歩き出す木、祖先の記憶を宿すかのような植物 ― 現実と幻想が静かに交錯する中で、アルシンは自分が何を探しているのかを少しずつ知り始める。それは失われた誰かではなく、時間そのものなのかもしれない・・・
アラビア文字のウィグル語かカザフ語の雑誌のページに採集した植物を貼り付けるアルシン。植物採集の手ほどきしてくれた叔父さんは、結婚を親に反対されるも恋人と結婚。一緒になる前、逢瀬の時には山に登って懐中電灯の灯りで合図を送ったのですが、叔父さんが行方不明になったあとも、叔母さんは懐中電灯を山に向けているというエピソードが素敵です。
カザフ族には長子を祖父母に託すという伝統があって、祖父母の子となっているアルシンの兄のことを、叔父さんと呼ぶように言われるのですが、行方不明になった叔父さんのことを思って、叔父さんとは呼べないアルシンが愛おしいです。
詩情溢れる作品で長編デビューをしたジン・イー監督。
中国西北部・新疆の小さな村で育ち、幼少期に触れた映画は国営テレビで放送される限ら れた作品のみだったそうです。 転機は高校時代、友人から渡されたハードディスク。 「そこにはチャン・イーモウ、チェン・カイコー、ウォン・カーウァイ、ジョニー・トーといった中国語圏の監督だけでなく、アッバス・キアロスタミ、テレンス・マリック、サタジット・レイの作品が入っていました。それまで映画は物語を語るものだと思っていたのですが、彼らの作品を観て、映画は時間や感覚、記憶の層そのものを表現できると知りました。世界の見え方が変わった瞬間でした。」
その後、北京電影学院へ進学。
自身の故郷の記憶と精神的風景をもとに制作した本作は、ベルリン国際映画祭ジェネレーションKplus部門でワールドプレミア上映され、グランプリを受賞。その後も東京国際映画祭、釜山国際映画祭など数々の映画祭に招待され国際的な注目を集めました。
詩情豊かな音楽を担当したのは、イランのペイマン・ヤズダニアン。
アッバス・キアロスタミ監督(『そして人生はつづく』『風が吹くまま』)、ジャファル・パナヒ監督(『クリムゾン・ゴールド』『オフサイド・ガールズ』)、アスガル・ファルハーディー監督(『別離』)、サイード・ルスタイ監督(『ジャスト6.5 闘いの証』)など数々のイラン映画だけでなく、中国ではロウ・イエ監督(『天安門、恋人たち』『二重生活』『パリ、ただよう花』)、ペマ・ツェテン監督(『羊飼いと風船』)、リー・ルイジュン監督(『僕たちの家(うち)に帰ろう』『小さき麦の花』)などでも音楽を担当しています。
『ボタニスト 植物を愛する少年』は、映像詩のように幻想的な面もありながら、少女が遠く離れた上海の学校に進学するという、中国辺境の優秀な子どもたちの現状や、兄が北京の職場で問題を起こして逃げ帰り、追手が来るのではと怯えて暮らしているという、あり得そうな現実も描き出しています。
スマホの地図で上海までの距離が、14792キロと検索したアルシン。飲まず食わずで休ます歩いても、1657時間20分。約69日。馬なら? バスと列車なら?と計算するアルシン。叔父さんが話してくれたという、「太陽と月が恋したけれど、絶対会うことはない」という物語が切ないです。(咲)
2025年/中国/カザフ語・中国語/96分/アスペクト比4:3/5.1ch/DCP & Blu-ray
日本語字幕翻訳 : 長夏実
配給:リアリーライクフィルムズ
公式サイト:https://www.reallylikefilms.com/botanist
★2026年5月15日(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町他にて全国縦断ロードショー
2026年02月08日
パンダのすごい世界 The Panda Adventure(英題)
2026年2月6日(金)よりTOHOシネマズシャンテほか全国順次公開
劇場情報 https://theater-list.com/pandas/
愛くるしいパンダがいっぱい! パンダの一生に迫るドキュメンタリー
監督:ビボ・リャン
出演:シエンシエン、ルイルイ、シアオルー、シアオジアン、ホワホワ
ジャイアントパンダの一生に迫る物語。世界中の人々を虜にする姿から大自然の中で暮らす知られざる姿まで、パンダのユニークな生態を記録した貴重な映像。中国四川省、北京、香港で暮らすパンダに密着し、誕生から育成、野生復帰の訓練、国際的な文化交流、老後の生活など、知られざるパンダの一生に迫る。
大自然に囲まれたジャイアントパンダ保護研究センターで野生生活に取り組むシエンシエンと子供たち。双子のシアオルーとシアオジアン。パンダ界で世界一の人気を誇るというファーファーなど、個性あふれるたくさんのパンダたちを記録。2023年まで上野動物園で過ごした人気パンダのシャンシャンもチラリと登場。あちこちで暮らすパンダたちが登場し、絶滅の危機から脱しつつあるパンダと人間が共に生きる姿が映し出される。
2024年に中国のTVで放送されたパンダのドキュメンタリー番組がSNS総再生回数11億回超えを記録するなど話題沸騰。それを基に映画化が行われた。第38回金鶏賞では最優秀ドキュメンタリー映画/教育映画賞にノミネートを果たした。
上野動物園のシャオシャオとレイレイが中国に返還されるタイミングでの公開となり、日本からパンダがいなくなりましたが、パンダロスの寂しさをこの映画で埋めてくださいね。
白黒模様にまるまるとした見た目と愛くるしい仕草で世界中の人々を虜にするジャイアントパンダ。中国語では熊猫と書く。熊のような姿だけど、獰猛ではないようだ。日本には1972年の日中国交正常化を記念し、カンカンとランランが来日して以来、いくつかの動物園にパンダが貸与された。
冒頭、パンダの骨や化石が、たくさん埋蔵されている洞窟がでてきてびっくりしたが、800万年にも及ぶ歴史があるらしい。
四川省に点在するジャイアントパンダの保護研究センターやジャイアントパンダ保護区が出てきて、野生復帰を目指す親子パンダや、年をとり晩年を過ごすパンダたちも出てくる。人間の年齢にすると100歳くらい相当というパンダも何頭かいた。きっと自然の中では、そんなには長生きはできないでしょう。深い絆で結ばれたパンダと飼育員の関係も画かれ、根気強く育て、彼らの献身的な努力がパンダたちを絶滅危機から救ったのだろう。1980年代に1100頭だった野生のパンダは、現在、1900頭に増加したという(暁)。
この映画を観て、パンダに双子が生まれた場合、お母さんパンダは、一匹ずつしか母乳をあげられないので、2週間ごとに交代して、飼育員さんに預けられるということを知りました。その直後に、和歌山白浜のアドベンチャーワールドでは、2匹同時に母乳をあげることに成功していたというニュース。日本からパンダはいなくなってしまいましたが、この貴重な技術を中国やパンダのいる国に伝授できればいいなと思いました。(咲)
公式HP https://unpfilm.com/pandas/
2025年製作/84分/G/中国
配給:アンプラグド
劇場情報 https://theater-list.com/pandas/
愛くるしいパンダがいっぱい! パンダの一生に迫るドキュメンタリー
監督:ビボ・リャン
出演:シエンシエン、ルイルイ、シアオルー、シアオジアン、ホワホワ
ジャイアントパンダの一生に迫る物語。世界中の人々を虜にする姿から大自然の中で暮らす知られざる姿まで、パンダのユニークな生態を記録した貴重な映像。中国四川省、北京、香港で暮らすパンダに密着し、誕生から育成、野生復帰の訓練、国際的な文化交流、老後の生活など、知られざるパンダの一生に迫る。
大自然に囲まれたジャイアントパンダ保護研究センターで野生生活に取り組むシエンシエンと子供たち。双子のシアオルーとシアオジアン。パンダ界で世界一の人気を誇るというファーファーなど、個性あふれるたくさんのパンダたちを記録。2023年まで上野動物園で過ごした人気パンダのシャンシャンもチラリと登場。あちこちで暮らすパンダたちが登場し、絶滅の危機から脱しつつあるパンダと人間が共に生きる姿が映し出される。
2024年に中国のTVで放送されたパンダのドキュメンタリー番組がSNS総再生回数11億回超えを記録するなど話題沸騰。それを基に映画化が行われた。第38回金鶏賞では最優秀ドキュメンタリー映画/教育映画賞にノミネートを果たした。
上野動物園のシャオシャオとレイレイが中国に返還されるタイミングでの公開となり、日本からパンダがいなくなりましたが、パンダロスの寂しさをこの映画で埋めてくださいね。
白黒模様にまるまるとした見た目と愛くるしい仕草で世界中の人々を虜にするジャイアントパンダ。中国語では熊猫と書く。熊のような姿だけど、獰猛ではないようだ。日本には1972年の日中国交正常化を記念し、カンカンとランランが来日して以来、いくつかの動物園にパンダが貸与された。
冒頭、パンダの骨や化石が、たくさん埋蔵されている洞窟がでてきてびっくりしたが、800万年にも及ぶ歴史があるらしい。
四川省に点在するジャイアントパンダの保護研究センターやジャイアントパンダ保護区が出てきて、野生復帰を目指す親子パンダや、年をとり晩年を過ごすパンダたちも出てくる。人間の年齢にすると100歳くらい相当というパンダも何頭かいた。きっと自然の中では、そんなには長生きはできないでしょう。深い絆で結ばれたパンダと飼育員の関係も画かれ、根気強く育て、彼らの献身的な努力がパンダたちを絶滅危機から救ったのだろう。1980年代に1100頭だった野生のパンダは、現在、1900頭に増加したという(暁)。
この映画を観て、パンダに双子が生まれた場合、お母さんパンダは、一匹ずつしか母乳をあげられないので、2週間ごとに交代して、飼育員さんに預けられるということを知りました。その直後に、和歌山白浜のアドベンチャーワールドでは、2匹同時に母乳をあげることに成功していたというニュース。日本からパンダはいなくなってしまいましたが、この貴重な技術を中国やパンダのいる国に伝授できればいいなと思いました。(咲)
公式HP https://unpfilm.com/pandas/
2025年製作/84分/G/中国
配給:アンプラグド
2026年02月01日
射鵰英雄伝(原題:射鵰英雄伝 侠之大者)
監督:脚本:ツイ・ハーク
原作:金庸
出演:シャオ・ジャン(郭靖)、ジュアン・ダーフェイ(黄蓉)、レオン・カーフェイ(欧陽鋒/西毒)、フー・ジュン(洪七公/北乞)、チャン・ウェンシン(コジン)、バヤルトゥ(チンギス・ハーン)、アールナー(トゥルイ)、エイダ・チョイ(リペイ/郭靖の母)、ウー・シンクォ(一灯大師/南帝)
北宋末期、金の侵攻により国は滅び、南宋が建国されるも屈辱の従属を強いられていた。その頃、蒙古ではチンギス・ハーンが勢力を拡大し、金との戦いが激化。蒙古で育った宋人の青年・郭靖は、黄蓉と出会い桃が咲き乱れる桃花島での修行を経て成長していく。いつしか愛し合う二人だったが、陰謀と戦乱が二人を引き裂き、試練が次々と襲う。郭靖は国と民族、そして黄蓉のため、信念の拳で宿命に立ち向かう。
二人は再び巡り合うことができるのか。愛と戦乱が激しく交錯する、切なくも熱い宿命の物語(公式サイトより)
郭靖(かく・せい)は不器用で物覚えは悪いし、進捗も遅い、しかし勤勉、誠実、優しさがそれを補ってあまりある青年です。黄蓉(こう・よう)は「東邪/黄薬師」の娘。利発で人をまとめるリーダーの素質も備わっています。この上なくお似合いの二人が出会い、さまざまな困難に遭いながらも互いを信じ、成長していく物語。香港のドラマをわからないなりに見ながら日本語訳の本の出版を心待ちにしていました。岡崎由美さんの訳で「射鵰英雄伝」「神鵰剣俠」「倚天屠龍記」3部作をわくわくしながら読みました。
ツイ・ハーク監督は製作、脚本、出演とマルチに活躍し、私たち香港映画ファンはおおいに楽しませてもらいました。久々の監督作は監督が大好きな金庸原作、鉄板の武侠映画です。中国ではとてもよく知られた小説ですが、登場人物が多いので新しい香港映画ファンの方々は混乱するかもしれません。私は懐かしさいっぱいで鑑賞しました。もっと詳しく知りたい方は日本語訳の小説やコミックなどもありますので、探してみて。
劇伴に香港の歌手ロマン・タム(羅文)とジェニー・ツェン(甄妮)が歌う名曲「鐵血丹心」、「世間始終你好」が流れます。(白)
2025年/中国/カラー/147分
配給:ツイン
(C)2025 CHINA FILM CO.,LTD.ALL Rights Reserved.
https://shachoeiyuden.com/
★2026年2月6日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー
2026年01月11日
長安のライチ 原題:長安的荔枝 英題:The Lychee Road
1月16日(金)より シネマート新宿、グランドシネマサンシャイン 池袋、Strangerほか 全国順次公開 他の上映館情報

2025©Aim Media Co., Ltd. Tianjin Maoyan Weying Cultural Media Co., Ltd. Shanghai CMC Pictures Co., Ltd.. All rights reserved
楊貴妃の伝説を元に描く、ライチをめぐる壮大な旅路
ワン・イーボー主演作『熱烈』の監督であり、『無名』での出演でも知られるダーポンが監督・脚本・主演を務める。 人気作家馬伯庸(マー・ボーヨン)による同名小説を原作に、唐の天宝年間に実在した“ライチ使”の伝説を題材にした歴史エンタテインメント。楊貴妃の誕生日に合わせて、南方の嶺南から数千キロ離れた都・長安まで新鮮なライチを届けるという前代未聞の任務に挑む下級官吏の旅路を壮大かつユーモラスに描き出す。
監督:ダーポン(大鵬)
キャスト:ダーポン(大鵬)、バイクー(白客)、チュアン・ダーフェイ(庄達菲)、テレンス・ラウ(劉俊謙)、アンディ・ラウ(劉徳華)、ヤン・ミー(楊幂)、チャン・ユエン(常遠)
唐の都・長安で下級官吏として働く李善徳(リー・シャンデー)にある日、皇帝から、「楊貴妃の誕生日を祝うため、遥か南方・嶺南の新鮮なライチを長安へ届けよ」という運命を左右する命令が下る。ライチはとても傷みやすく、嶺南から数千キロ離れた長安へ無傷で届けることはほぼ不可能。成功すれば出世の道、しかし失敗すれば命の危険が——。.彼の命運は、たった一粒のライチに懸かっていた。
上司の策略により、無理難題な“ライチ使”に任命されてしまった李善徳は嶺南へ向かい、ライチ農園の長の娘、計画に投資する商人、奴隷として虐げられていた青年をはじめ、思いも寄らぬ仲間たちと手を組むことに。
刻一刻と迫る納期、腐りやすい果実、そして宮廷に渦巻く官僚達の泥沼の権力闘争。数々の逆境のなか、歴史を揺るがす前代未聞の“ライチ運送計画”が今、幕を開ける!
ダーポン以外の出演者は、『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』、『鯨が消えた入り江』など話題作への出演で注目を集める香港の俳優テレンス・ラウ。 さらにアンディ・ラウが朝廷の重臣・楊国忠役、ヤン・ミーが李善徳の妻役で出演し、中国・香港を代表するスター俳優たちが集結。“ライチ使”が歩む道中を個性豊かな登場人物たちが鮮やかに彩る。
本国ではハリウッド超大作の『F1(R) エフワン』や『ジュラシック・ワールド 復活の大地』を抑え、興行収入ランキングで第1位を記録。中国でヒットしている最中の2025年8月に、日本でも中文・英文字幕版のみで限定公開され、中国映画週間で日本語字幕版の上映が発表されるや、全上映回が即完売になった。
大鵬が、まさに八面六臂の活躍、大立ち回り。そして、劉俊謙が奴婢の役ながら、アクションの切れの良さを発揮。劉徳華はいかにもな右大臣を演じ、いかにもな役人を演じる。でもさすがに大鵬の映画、クスっと笑えるところが満載。そして最後は泣かせる。これは唐の時代の話だけど、「上の一言で、下は振り回されるが、上はそんなに重要には思っていなかった」という話は、現代の社会でもよくある話。大鵬は、そんな皮肉も込めて、この作品を作ったのだろう。
去年夏、この作品が中国で大ヒットして、日本語字幕はないまま日本で上映されると聞き映画館に。中国語が聞き取れはしなかったけど、映像と中国語字幕で、ある程度の理解はできました。それでも、人間関係がわからなかったり、行動の意味や、やっていることがわからなかったりしたので、中国映画週間で上映された時、チケット争奪戦に参加したのだけど惨敗。日本公開を切望していました。公開されることになってうれしい。映画の中に出てきた、真っ赤に熟れたライチは美味しそうだった。私も真っ赤に熟れたライチを食べてみたい。日本で見るライチは緑色がほとんどで赤味はあまりないからね。それでも美味しいけど、熟れたライチはきっと甘くて、もっと美味しいのでしょう(暁)。
楊貴妃を寵愛したのは玄宗皇帝。元は息子の妃だったのにお父さんが横恋慕。皇帝の言葉は絶対、誰も異議を申し立てられません。そうやって持ち上げるから国も人もダメになるんですっ!!と大きな声で言いたい。理不尽がまかり通る時代に生まれなくてよかった。憤死してしまう・・・。あ、メインストーリーはそれではありません。
上意下達は人の世の常、理不尽な命令をどんどん下へ送り、人の好いリー・シャンデーのところまで。彼は死も覚悟しながら得意な算術で、ライチをどれだけ新鮮なまま運べるか工夫に工夫を重ねます。そこんとこが見どころなのですが、私はなんで木を丸ごと運ばないの?と思ってしまいました。すぐ終わったら映画になりません。
先日トニー・レオンに悪役は似合わない~と思ったのですが、アンディ・ラウに酷薄な右大臣は似合いました。なかなか登場しませんが、怒らせたら怖い!ときっちり印象付けました。このライチ騒動はとても有名な話。どこの国でもわがままなトップが無理難題をいっているはず。お追従をいう取り巻きでなく、諫める賢臣こそいてほしい。トップならそれを聞く耳を持たないとね。国が傾きます。(白)
生のライチを遠路無事運ぶことなど絶対無理と、人の好いリー・シャンデーはまんまと押し付けられてしまったのですが、彼はいたって真面目。真剣に運ぶ方法を考えます。それをまた、チャーミングでしっかり者の妻は、「彼なら絶対やり遂げる」と信じています。失敗して妻に迷惑をかけたら申し訳ないと、出発前に離婚まで考えるリー・シャンデー。本作は、夫婦愛の物語でもありました。
今人気のテレンス・ラウは、幼い頃に戦火で両親を亡くし、奴隷として嶺南地方に連れてこられたという役どころで、ぼろぼろの姿で登場します。リー・シャンデーに初めて人間扱いしてもらって、彼の運ぶライチを必死で守る姿が本作のみどころのひとつ。
出会った杜甫から、左遷を経験してわかったこととして、官僚に必要なことは3つ。目立たない、利益を独占しない、相手を持ち上げることと、聞かされます。まさに処世術。
リー・シャンデーが赴いた嶺南地方には、アラビアやペルシアと思われる人たちもたくさん町を行き交っていました。出会った商人の一人、蘇諒(バイクー)は一見抜け目なさそうですが、人情厚く手助けしてくれます。その後、彼はペルシアとの交易で財産を築いたとの後日談も。
リー・シャンデーが美味しそうにライチを食べる姿に、ライチが好きだった母を思い出しました。戦前、台湾で10年過ごした母にとって、懐かしい果物だったのだと。(咲)
公式HPはこちら
2025年製作/122分/G/中国
配給:Stranger、面白映画
2025©Aim Media Co., Ltd. Tianjin Maoyan Weying Cultural Media Co., Ltd. Shanghai CMC Pictures Co., Ltd.. All rights reserved
楊貴妃の伝説を元に描く、ライチをめぐる壮大な旅路
ワン・イーボー主演作『熱烈』の監督であり、『無名』での出演でも知られるダーポンが監督・脚本・主演を務める。 人気作家馬伯庸(マー・ボーヨン)による同名小説を原作に、唐の天宝年間に実在した“ライチ使”の伝説を題材にした歴史エンタテインメント。楊貴妃の誕生日に合わせて、南方の嶺南から数千キロ離れた都・長安まで新鮮なライチを届けるという前代未聞の任務に挑む下級官吏の旅路を壮大かつユーモラスに描き出す。
監督:ダーポン(大鵬)
キャスト:ダーポン(大鵬)、バイクー(白客)、チュアン・ダーフェイ(庄達菲)、テレンス・ラウ(劉俊謙)、アンディ・ラウ(劉徳華)、ヤン・ミー(楊幂)、チャン・ユエン(常遠)
唐の都・長安で下級官吏として働く李善徳(リー・シャンデー)にある日、皇帝から、「楊貴妃の誕生日を祝うため、遥か南方・嶺南の新鮮なライチを長安へ届けよ」という運命を左右する命令が下る。ライチはとても傷みやすく、嶺南から数千キロ離れた長安へ無傷で届けることはほぼ不可能。成功すれば出世の道、しかし失敗すれば命の危険が——。.彼の命運は、たった一粒のライチに懸かっていた。
上司の策略により、無理難題な“ライチ使”に任命されてしまった李善徳は嶺南へ向かい、ライチ農園の長の娘、計画に投資する商人、奴隷として虐げられていた青年をはじめ、思いも寄らぬ仲間たちと手を組むことに。
刻一刻と迫る納期、腐りやすい果実、そして宮廷に渦巻く官僚達の泥沼の権力闘争。数々の逆境のなか、歴史を揺るがす前代未聞の“ライチ運送計画”が今、幕を開ける!
ダーポン以外の出演者は、『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』、『鯨が消えた入り江』など話題作への出演で注目を集める香港の俳優テレンス・ラウ。 さらにアンディ・ラウが朝廷の重臣・楊国忠役、ヤン・ミーが李善徳の妻役で出演し、中国・香港を代表するスター俳優たちが集結。“ライチ使”が歩む道中を個性豊かな登場人物たちが鮮やかに彩る。
本国ではハリウッド超大作の『F1(R) エフワン』や『ジュラシック・ワールド 復活の大地』を抑え、興行収入ランキングで第1位を記録。中国でヒットしている最中の2025年8月に、日本でも中文・英文字幕版のみで限定公開され、中国映画週間で日本語字幕版の上映が発表されるや、全上映回が即完売になった。
大鵬が、まさに八面六臂の活躍、大立ち回り。そして、劉俊謙が奴婢の役ながら、アクションの切れの良さを発揮。劉徳華はいかにもな右大臣を演じ、いかにもな役人を演じる。でもさすがに大鵬の映画、クスっと笑えるところが満載。そして最後は泣かせる。これは唐の時代の話だけど、「上の一言で、下は振り回されるが、上はそんなに重要には思っていなかった」という話は、現代の社会でもよくある話。大鵬は、そんな皮肉も込めて、この作品を作ったのだろう。
去年夏、この作品が中国で大ヒットして、日本語字幕はないまま日本で上映されると聞き映画館に。中国語が聞き取れはしなかったけど、映像と中国語字幕で、ある程度の理解はできました。それでも、人間関係がわからなかったり、行動の意味や、やっていることがわからなかったりしたので、中国映画週間で上映された時、チケット争奪戦に参加したのだけど惨敗。日本公開を切望していました。公開されることになってうれしい。映画の中に出てきた、真っ赤に熟れたライチは美味しそうだった。私も真っ赤に熟れたライチを食べてみたい。日本で見るライチは緑色がほとんどで赤味はあまりないからね。それでも美味しいけど、熟れたライチはきっと甘くて、もっと美味しいのでしょう(暁)。
楊貴妃を寵愛したのは玄宗皇帝。元は息子の妃だったのにお父さんが横恋慕。皇帝の言葉は絶対、誰も異議を申し立てられません。そうやって持ち上げるから国も人もダメになるんですっ!!と大きな声で言いたい。理不尽がまかり通る時代に生まれなくてよかった。憤死してしまう・・・。あ、メインストーリーはそれではありません。
上意下達は人の世の常、理不尽な命令をどんどん下へ送り、人の好いリー・シャンデーのところまで。彼は死も覚悟しながら得意な算術で、ライチをどれだけ新鮮なまま運べるか工夫に工夫を重ねます。そこんとこが見どころなのですが、私はなんで木を丸ごと運ばないの?と思ってしまいました。すぐ終わったら映画になりません。
先日トニー・レオンに悪役は似合わない~と思ったのですが、アンディ・ラウに酷薄な右大臣は似合いました。なかなか登場しませんが、怒らせたら怖い!ときっちり印象付けました。このライチ騒動はとても有名な話。どこの国でもわがままなトップが無理難題をいっているはず。お追従をいう取り巻きでなく、諫める賢臣こそいてほしい。トップならそれを聞く耳を持たないとね。国が傾きます。(白)
生のライチを遠路無事運ぶことなど絶対無理と、人の好いリー・シャンデーはまんまと押し付けられてしまったのですが、彼はいたって真面目。真剣に運ぶ方法を考えます。それをまた、チャーミングでしっかり者の妻は、「彼なら絶対やり遂げる」と信じています。失敗して妻に迷惑をかけたら申し訳ないと、出発前に離婚まで考えるリー・シャンデー。本作は、夫婦愛の物語でもありました。
今人気のテレンス・ラウは、幼い頃に戦火で両親を亡くし、奴隷として嶺南地方に連れてこられたという役どころで、ぼろぼろの姿で登場します。リー・シャンデーに初めて人間扱いしてもらって、彼の運ぶライチを必死で守る姿が本作のみどころのひとつ。
出会った杜甫から、左遷を経験してわかったこととして、官僚に必要なことは3つ。目立たない、利益を独占しない、相手を持ち上げることと、聞かされます。まさに処世術。
リー・シャンデーが赴いた嶺南地方には、アラビアやペルシアと思われる人たちもたくさん町を行き交っていました。出会った商人の一人、蘇諒(バイクー)は一見抜け目なさそうですが、人情厚く手助けしてくれます。その後、彼はペルシアとの交易で財産を築いたとの後日談も。
リー・シャンデーが美味しそうにライチを食べる姿に、ライチが好きだった母を思い出しました。戦前、台湾で10年過ごした母にとって、懐かしい果物だったのだと。(咲)
公式HPはこちら
2025年製作/122分/G/中国
配給:Stranger、面白映画
2025年12月28日
Fox Hunt フォックス・ハント(原題:猎狐行动)
監督:張立嘉(レオ・チャン)
脚本:夏侯雲姍(エリカ・シアホウ)、レオ・チャン
撮影:チェン・マー
出演:トニー・レオン/梁朝偉 (ダイ・イーチェン)、ドアン・イーホン/段奕宏 (イエ・ジュン)、エリカ・シアホウ/夏侯雲姍(グオ・シャオジア)、チャン・アオユエ/張傲月(チャオ・イー)、オリヴィエ・ラブルダン(刑事ノエル)、オルガ・キュリレンコ(弁護士エルサ)
ダイ・イーチェンはいくつもの顔を持つ国際指名手配犯。上海を拠点に大規模な金融詐欺で得た24億ドルもの不正資金を隠し、7年もの間、警察の目を欺いて逃げ続けている。パリに現れたという情報を手に入れた中国の経済犯罪捜査官イエ・ジュンは、特別チーム「フォックス・ハント」を率いてさっそくパリへと向かった。ダイは富豪の娘の誕生祝いのパーティに出席し、上流階級の人々に近づいては人脈を作っていた。一見柔和で人当たりの良い彼は、やすやすと人の懐に入り込んでいく。騙されたと気づいたときにはすでにいなくなっているのだった。
ジャッキー・チェン主演『ポリス・ストーリー REBORN』(2018)のレオ・チャン(張立嘉)監督の最新作。実際にあった金融詐欺事件を元にしているそうで、首謀者のダイを受賞多数の香港俳優トニー・レオン。香港のテレビドラマに出演しているころから、同世代の香港四天王(アンディ・ラウ、ジャッキー・チュン、アーロン・クオック、レオン・ライ)と活躍しているのを見てきました。あまり悪役を演じることはなく、見た目のとおり優し気な役柄が多い俳優です。
悪役は14年ぶりというので、いったいどの映画のことかと探しました。製作年から『大魔術師“X”のダブル・トリック』(2011)のことのようです。今回のダイの方がより悪人ですが、どうもトニーに限っては、いやいや悪役は似合わない、と思ってしまいます。
キツネ=ダイを追うハンター=捜査官のイエを『迫り来る嵐』(2017)のドアン・イーホン。第30回東京国際映画祭のコンペ作品で、みごと最優秀男優賞を受賞しました(公開は2年後)。今回も力と熱のある役柄です。きりっと知的な美人さんのエリカ・シアホウが脚本にも名を連ねています。(白)
この作品でトニー・レオンは上海で巨額の金融詐欺を働き国外逃亡をしている犯罪者の役。ドアン・イーホンは中国の経済犯罪捜査官を演じ、国を跨いだ巨額の金融詐欺事件の真犯人を追い詰める。今年1月に日本公開された『ゴールドフィンガー 巨大金融詐欺事件(金手指 )』でもトニーは、巨額の金融詐欺を働く役で、アンディ・ラウがその犯人を追う執念の捜査官というように、ほぼ同じシチュエーション。こちらは香港が舞台。『フォックス・ハント』のほうは中国国内でなくフランスが主な舞台。どちらも実話をもとにした作品という。しかし、大金に縁がない私には、実体のない巨額の金のやりとり=金融のことは、どうしてそんなことが可能なのか何回観ても理解ができない(笑)。それに、金融がらみの作品なのに、どうしてこんなにカーチェイスばかり(笑)。トニーは『ゴールドフィンガー 巨大金融詐欺事件』に続き悪役だが、悪い人には思えない。そこがミソなのか…(暁)。
2025年/中国/カラー/105分
配給:ファインフィルムズ
(C)SHANGHAI FILM GROUP All Rights Reserved.
https://foxhunt-movie.com/
★2025年12月26日(金)全国ロードショー


