2026年06月18日

特集上映 「ミケランジェロ・フランマルティーノの驚くべき世界」『おくりもの 4Kレストア版』『四つ のいのち』『地底への旅』

「ミケランジェロ・フランマルティーノの驚くべき世界」
『おくりもの 4Kレストア版』
『四つのいのち』
『地底への旅』

配給:グッチーズ・フリースクール
公式サイト:https://frammartino.com/
★2026年6月19日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開


イタリア映画史において唯一無二の存在感を放つ映像作家、ミケランジェロ・フランマルティーノ。その作品は、言葉に頼らず、南イタリア・カラブリアの荘厳な風景や、そこに刻まれる時間の神秘を静謐なカメラワークで描き出します。人間、動物、大地、そして闇──すべての存在が等しく尊厳を持ち、調和の中で生きる様子を映し出すその世界には、誰も見たことがない驚きと畏敬が満ちています。情報が溢れ、膨大な映像が消費される現代において、フランマルティーノの映画は「見る」という行為の根源的な意味を問いかけます。消えゆくものへの惜別、生命の循環、そして未知の世界への探求を描く彼の作品は、観る者の心に静かな驚きと深い余韻を残します。それは、現実を超えた世界の奥行きに触れる映画体験であり、私たちを神秘とワンダーの中へと引き込むのです。

本特集では、デビュー作であり日本初公開となる『おくりもの』(4Kレストア版)、カンヌ映画祭で2冠の喝采を浴びた『四つのいのち』、そしてヴェネチア映画祭で3冠に輝いた最新作『地底への旅』の全長編3作品を一挙上映します。フランマルティーノが描き出すのは、言葉を超越した「存在の映画」の極致。目の前に広がる驚きと美しさを、ぜひ映画館で体感してください。


ミケランジェロ・フランマルティーノ
(Michelangelo Frammartino)
1968年ミラノ生まれ。ミラノ工科大学建築科にて、物理空間と視覚イメージの関係を探求し、インスタレーション作品や短編映画を制作。建築家としての視座と現代美術的手法を映画に持ち込み、「スロー・シネマ」の旗手として国際的評価を確立。対話をほとんど持たない映像言語、固定カメラによる長回し、自然音を主体とした音響設計によって、人間中心主義を超えた独自の映画世界を構築する。カンヌ、ヴェネチア、ロカルノをはじめとする世界の主要映画祭でも高く評価される現代映画の最重要作家の一人。


『おくりもの 4Kレストア版』
okurimono.png
(C) Santamira - Coop. CA.RI.NA.
伝統と現代性の対比を鮮烈に描いたデビュー作 
※日本初公開

公開から22年の時を経てフランマルティーノの幻のデビュー作が、ついに日本初公開。
監督の実祖父アンジェロ・フランマルティーノを主演に迎え、人口流出によって廃村寸前のカラブリアの小さな村を舞台に、老いた男の最期の日々を独特のユーモアを持って静かに見つめる。プロの俳優を一切使わず、土地に生きる人々とともに撮影された本作は、「伝統と現代性」「生と死」「共同体と孤独」という普遍的なテーマを、対話をほとんど持たない80分の映像詩として結晶させた。4Kレストアによって甦ったカラブリアの風景の細部、やや翳りを帯びた色調に浮かび上がる光の変化と、時間の経過を感じさせる物質の質感──20年以上前の作品でありながら、現代の映画体験として圧倒的な存在感を放つ。
2000年代初頭の「スロー・シネマ」ムーブメントの重要な一作として、2025年7月にNYのメトログラフ劇場でリバイバル上映が行われるなど、映画史的再評価が進む傑作。

老人のもとに、青年が携帯と1枚の写真を置き忘れていきます。写真には裸の男女。
山の上に建つ家並みが美しいです。 
老人が床屋で髭を剃ってもらう後ろには、ドキッとするような女性の写真・・・
映画を観終わって「おくりもの」というタイトル、意味深だなぁ~と。 (咲)


2003年/イタリア/80分/35mm(上映素材はDCP)/カラー/1.37:1/5.1ch/4K
★字幕なし


『四つのいのち』 原題:LE QUATTRO VOLTE
4tsu.png
(C) 2010 VIVO FILM, ESSENTIAL FILMPRODUKTION, INVISIBILE FILM, VENTURA FILM

カンヌを熱狂させた、生命の循環を描く驚異の映像詩

老いた羊飼い、一匹の子ヤギ、巨大な樅の木、そして炭──カラブリアの山村で静かに営まれる生の循環を、セリフをほとんど用いずに描き出した比類なき傑作。
第63回カンヌ国際映画祭監督週間でスタンディングオベーションを浴び、ヨーロッパ・シネマ・ラベル賞およびパルム・ドッグ賞(子ヤギのヴクに対して)の2冠に輝くなど世界中の批評家を熱狂させた本作は、まさにフランマルティーノの代表作と呼ぶべき一作。
人間を世界の中心に置かない、ラディカルなまでに平等な視点──羊飼いの臨終から子ヤギの誕生へ、樅の木の伐採から炭焼き窯の煙へ。ピタゴラス派の「四つの転生」の思想に基づく構成の中で、人間、動物、植物、鉱物が同じ重みで映し出される。圧巻は、村の犬が巻き起こす約8分間のワンカット──演出と偶然の奇跡的な融合が、「映画とは何か」を問い直す。
物語ではなく、時間そのものを体験する88分。それは映画館という空間でしか成立しない、純粋な映画的悦楽である。

独特の炭焼きの方法に興味津々。
教会の埃を集めたものを薬だと信じて飲む羊飼いの老人。
やがて、老人が亡くなり、狭い入口から棺に入れ運び出し、村を葬列がいきます。
置いてきぼりにされた羊や子ヤギの鳴き声がなんとも悲しい。
雪が降り、季節が変わって、諏訪の御柱のように、倒した大木を皆で運び、村の広場の真ん中に建てる風習が映し出されます。
本作も、茶色い屋根の美しい家並みにため息が出ました。 (咲)


2010年/イタリア/88分/35mm(上映素材はDCP)/カラー/1.85:1/5.1ch/2K
★字幕なし


『地底への旅』 原題:IL BUCO(東京国際映画祭上映時タイトル『洞窟』)
chitei.png
(C) 2021 DOPPIO NODO DOUBLE BIND - ESSENTIAL FILMS - SOCIETE PARISIENNE DE PRODUCTION - ARTE FRANCE CINEMA

ヴェネチア映画祭3冠、「光と闇」を描き出す壮大な時間のシンフォニー 

『四つのいのち』から11年、フランマルティーノが到達した新たな境地──
それは「地上と地下」、「進歩と伝統」、「光と闇」を対位法的に描き出す壮大な時間のシンフォニー。第78回ヴェネチア国際映画祭で審査員特別賞、FEDIC(イタリア映画クラブ連盟)賞、La Pellicola d'Oro Award(ラ・ペリッコラ・ドーロ賞)の3冠に輝いた本作は、イタリアの高度経済成長期という歴史的文脈を背景に、人間が未知の領域へと踏み込む行為の意味を問う。極限まで抑制された音響設計、闇の中で微かに揺れる光、重力と身体の関係──フランマルティーノは「下降」という運動を通して、映画の新たな次元を切り拓いた。
撮影監督は、ゴダール、ロメール、シュミット、オリヴェイラなど、数々の名監督との協業で知られる名手レナート・ベルタ。暗闇を探索する探索家たちの未知への希望と恐怖を美しい陰影によって見事に捉えている。

2021年/イタリア/97分/DCP/カラー/1.85:1/5.1ch/4K

posted by sakiko at 09:11| Comment(0) | イタリア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください