2026年04月28日
特集上映 ル・コルビュジエとドーシ インドのモダニズム『ユートピアの力』『誓い 建築家B・V・ドーシ』
インドに刻まれた、巨匠たちの対話
ル・コルビュジエとB・V・ドーシ。インドの地に2人の建築家が遺した建築と思想。
西洋のモダニズムとインドの精神性や風土が融合し実現した“奇跡”を、2つのドキュメンタリーで紐解く。
『ユートピアの力』
『誓い 建築家B・V・ドーシ』
企画・配給:トレノバ
公式サイト: https://trenova.jp/coranddosh
★2026年5月1日(金)より、ユーロスペースほか全国順次公開
ユートピアの力 原題:THE POWER OF UTOPIA - Living with Le Corbusier in Chandigarh
監督・撮影:カリン・ブッハー、トーマス・カラー
編集:トーマス・カラー、ミリアム・クラーケンベルガー、ファビアン・カイザー
音楽:アトゥール・シャルマ
出演:グルチャラン・シン・チャンニ、ディーピカー・カンディー、シッダールタ・ウィグ、ディワーン・マーンナー
2023年/スイス/85分/カラー/5.1ch/英語、ドイツ語
1947年、イギリス領インド帝国はイギリスからの支配を脱し、インドとパキスタンとして分離独立を果たす。パンジャーブ州は両国に分割され、州都ラホールはパキスタンに帰属した。インドは早急な州都建設を迫られ、初代首相のネルーは、過去の伝統に縛られない、未来への信条と民主主義を象徴する都市の建設を望んだ。1950年、こうしてル・コルビュジエ(1887-1965)が計画都市チャンディーガル(チャンディガール)の設計を担うことになった。彼は自然の秩序と近代技術が完全に調和した、人間中心のユートピアを造り出そうとした。都市設計も人体をイメージし、圧倒的な存在感を放つ州議会議事堂、高等裁判所、合同庁舎が鎮座するキャピトル・コンプレックスを頭に、商業の中心部を心臓に、緑地帯や公園を肺に、道路を循環器系に見立てた。また、都市をグリッドで区切ってセクターという単位を設け、道路システムを7つの階層に分け、人と自動車の交通を分離し、緑地を整備し湖を造り、建築の規則を細かく定めた。そしてその実現には彼の従兄弟である建築家ピエール・ジャンヌレが大きな役割を果たした。
ヒマラヤの麓の荒野にゼロから誕生した、ル・コルビュジエの“輝く都市”チャンディーガル(チャンディガール)。コルビュジエが唯一実現できた計画都市は、新生インドを象徴する都市として、人を中心に置き、「より良く、より公正で、より調和のとれた世界」を目指した。70年を経て、このユートピアはどのように変容したか。建築物と歴史を追いながら、住民である建築家、都市活動家、芸術家などがチャンディーガルの直面している課題や揺るがない魅力について語る。
荒野に新しく作られた都市には、劇場、大学、美術館などが数多く作られ、古い歴史を持つ他のインドの都市よりも文化的施設に恵まれ、芸術家も多く集まりました。
オープンで自由な町で、恋人や妻と手を繋いで歩けるのは、ほかの町では出来ないことと語る男性。一方、階級の烙印や不名誉は深く刻み込まれていて、公正な行政や万人の平等な扱いを実現するには、法律が存在しているにもかかわらず、何世紀もかかると憂います。歴史のない新しい町でも、インドに根付いたカーストに基づく社会は、なかなか変わらないのだと教えてくれました。
チャンディーガルの町に、もう40年程前に、予定外に宿泊したことがあります。その時には、町の成り立ちを知らなかったのですが、明らかにほかのインドの町と作りが違うのを感じました。北のマナリの町から飛行機でデリーに戻る時、上空から見たチャンディーガルは、碁盤の目の様に区画がはっきりしていて、計画的に新しく作られた都市だと知りました。さらに、ル・コルビュジエが手掛けたと知り、彼のモダニズム建築が実はあまり好きでない私は、どうりであまり居心地のいい町と感じなかったのだと納得したのでした。(咲)
誓い 建築家B・V・ドーシ 原題:THE PROMISE. ARCHITECT BV DOSHI
監督:ヤン・シュミット=ガレ
撮影:ディートハルト・プレンゲル
編集:サラ・J・レヴィン
音楽:バルトーク・ベーラ
出演:バルクリシュナ・ドーシ、スフリド・サラバイ、スーリヤ・カカニ
2023年/ドイツ/90分/カラー/5.1ch/英語、グジャラート語、ヒンディー語
チャンディーガルの計画が始まるころ、パリのコルビュジエのもとで一人のインド人建築家がキャリアを歩み始める。その名はバルクリシュナ・ヴィタルダス・ドーシ(1927-2023)。のちに建築界のノーベル賞とされるプリツカー賞に輝く建築家である。彼はインド西部の都市アーメダバードのコルビュジエのプロジェクト(サラバイ邸、ショーダン邸、繊維業会館など)の実施を担った。その後、アーメダバードで独立し、巨匠ルイス・カーンとも協働した(インド経営大学)。コルビュジエやカーンに薫陶を受けたドーシは、インド学研究所や自身の設計事務所サンガトなどで早くからサステナブルやエコの思想を建築に取り入れ、アランヤ低コスト住宅プロジェクトやCEPT大学の創設など、社会課題の解決や教育にも尽力した。
2018年にインド人初のプリツカー賞に輝き、2023年に95歳で死去した世界的建築家バルクリシュナ・ドーシが、師匠であるル・コルビュジエやルイス・カーンと協働した建築物や自身が手掛けた建築物を訪れ、建築哲学や制作過程、そして70年におよぶキャリアについて語る姿を追う。モダニズムとインドの伝統、風土、精神性を融合した独自のスタイルを確立し、社会や環境に貢献する建築や、生活に根差した“人々のための建築”を志向した彼の最晩年の内面に迫る。
西欧でモダニズム建築を学びながら、インドの伝統も大事にした、インドの風土に合った建築物の数々。ドーシ自身の自宅も、実に居心地が良さそうでした。インドの偉大な建築家を知ることのできる1作。(咲)
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