2026年06月10日

急に具合が悪くなる

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監督:濱口竜介
原作:宮野真生子 磯野真穂
脚本:濱口竜介、ルディムナ玲亜
撮影:アラン・ギシャウア
音楽:サミュエル・アンドレイエフ
出演:ヴィルジニー・エフィラ(マリー=ルー・フォンテーヌ)、岡本多緒(森崎真理)、長塚京三(清宮吾朗)、黒崎煌代(窪寺智樹)

パリ郊外の介護施設「自由の森」。マリー=ルー・フォンテーヌは施設長として、人手や予算の不足に悩みつつも理想の介護を目指している。そんな中たまたま出会った日本人の男の子を通じて、演出家の森崎真理と出会った。偶然同じ名前を持つ二人は、いくら話しても話したりないほど親しくなる。末期がんを抱えているという真理は急に具合が悪くなる。

短い期間ながら深い友情を結んだマリー=ルーと真理。がんを患っていても奇跡のように静かな時間が訪れるときがあります。真理に残された時間は刻々と減っていきますが、できるだけ彼女の心が平穏であるように、マリー=ルーは心を砕きます。
この映画は二人の女性の書簡集を元に、改編したものです。俳優の好演もあって、誰にも大切な人との別れや生きることを考えさせるドラマになっています。いつも気になる黒崎煌代くん、セリフはなくとも存在感たっぷり。
観ていて、やはり闘病後、一人二人と逝ってしまった友人たちを思い出しました。香港迷だったNさん、シネジャの二人のスタッフ、人はほんとにいなくなるのだと、年々身に沁みてきました。2026年・第79回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され、ビルジニー・エフィラと岡本多緒さんの二人がそろって最優秀女優賞を受賞しました。岡本さんの笑顔とすっきりお洒落な佇まいが、先に逝った長年の友人を思い出させて、また胸がしんとしました。(白)


2026年/フランス・日本ほか/カラー/196分
配給:ビターズ・エンド
© 2026 Cinéfrance Studios – Arte France Cinéma – Office Shirous – Bitters End – Heimatfilm – Tarantula – Gapbusters – Same Player – Soudain JPN Partners
https://www.bitters.co.jp/soudain/
★2026年6月19日(金)より全国ロードショー

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2026年06月07日

熱狂をこえて

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監督:松岡弘明
撮影:松岡弘明 オリビエ・ファーブル
手話通訳:高島由美子 
語り:塚本堅一
出演:南定四郎(本名:山内昇)大塚隆史、久里須、砂川秀樹、永野靖、小倉東、根岸昌功、大江千束、ブルボンヌ、小川チガ、大矢晃世、石野さちこ、鈴木賢、山縣真矢、山田なつみ、杉山文野、Bill Schiller

2021年12月、南定四郎(本名:山内昇)さんは90歳の誕生日を迎えた。学生のころ、本を読んで自分がゲイではと気づく。高卒後就職して周りに話す相手もいないことから東京への異動を願い出、初めて他のゲイ青年たちに出逢う。創刊された「薔薇族」に小説を投稿、編集を手伝いながらスキルを蓄える。タブロイド判のミニコミ「アドニスボーイ」、のちに月刊誌「アドン」を創刊する。1984年国際ゲイ協会(IGA)のビル・シュアーと知り合い、2月、IGA日本を設立。ゲイの認知のためさまざまな活動を行う。
南さんはアメリカでレインボーフラッグが翻るプライドパレードにいたく感激。日本でもできると奔走、1994年8月28日、日本で初めてのプライド・パレード「第1回レズビアン・ゲイ・パレード in 東京」がついに開催された。

先行公開には出遅れ、全国公開開始には少し早くて申し訳ありません。7日の朝刊に”今日は東京で性的少数者の権利を訴える「プライドパレード」が行われる”とあり、「あっ!今日は掲載しなくちゃ」と慌てました。虹色の旗がアメリカの空にはためいたのは、1978年の6月、日本でのパレードは遅れること16年。映画には当時参加した人の感想が高揚感とともに語られています。
南定四郎さんは、これと思うと走り出してしまうようなエネルギーにあふれた方で、誰も行かなかったところへぐんぐん分け入って、問題が出てきたらそこで考えるといった風です。若い時代を振り返って独善的だった、と反省しつつも走り続けた日々が懐かしそうです。現在はパートナーと沖縄に住んでいます。(白)


2025年/日本/カラー/105分
配給:アップリンク
(C)カミハグプロダクション
★2026年6月5日(金)シネマート新宿にて先行公開
6月26日(金)アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開

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2026年06月05日

エレノアってグレイト。(原題:Eleanor the Great)

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監督:スカーレット・ヨハンソン
脚本:トリー・ケイメン
出演:ジューン・スキップ(エレノア)、エリン・ケリーマン(ニナ)、ジェシカ・ヘクト(リサ)、リタ・ゾーハー(ベッシー)、キウェテル・イジョフォー(ニナの父、ロジャー)

エレノアは夫亡き後、親友のベッシーと気楽に仲良く過ごしていた。いつまでも続くと思った穏やかな生活は、ベッシーが病気で入院してからほどなく終わりを迎える。一人になったエレノアは喪失感を埋められない。娘の家に移ったものの、毎日することがない。一人で退屈していたところ、娘からサークルへの参加をすすめられた。間違ってホロコースト生存者の集まりに参加してしまい、促されるまま繰り返し聞いてきたベッシ―の物語を自分の体験として話してしまった。ちょうど取材に来ていたジャーナリスト志望の学生ニナは感激し、もっと聞かせてほしいと言われ、断れない。エレノアの嘘は周りを巻き込んで思いがけず大きく広がって行く。

スカーレット・ヨハンソンはこれまでも製作にかかわることはありましたが、これは初の監督作。明るくて憎めないエレノア像は監督の実の祖母がモデルだそうです。悪気なく嘘をついてしまったエレノアは、正直に謝って友人たちに赦してもらえました。ベッシ―役のエレン・ケリーマンは実際にホロコーストを生き延びた一人です。劇中のホロコーストを語るサークルに登場するのは、ベッシーと同じように生き延びた生存者たち。きっと心からの声だったことでしょう。第2次大戦を生き抜いた人たちはみな高齢となりました。世界中に住む当時の記憶を持つ人がだんだんと少なくなります。過去に学ぶことなく、軍拡の道を進んでいる国があります。もう戦争はイヤと思ったはずなのに、喉元過ぎれば熱さ忘れるの言葉どおり・・・。
エレノアを演じるジューン・スキップは1929年生まれ。昨年公開の『テルマがゆく! 93歳のやさしいリベンジ』のヒットを受けてまたもや主演です。身体もしゃんとして、まだまだ活躍できそうです。この先輩に年下の観客はどんなにか励まされるでしょう。 (白)


☆本誌記事でエレン・ケリーマン(ニナ)とリタ・ゾーハー(ベッシー)の役名を取り違えました。申し訳ありません。

2025年/アメリカ/カラー/98分
配給:東映ビデオ
(C)2025 ELEANOR INVISIBLE FILM, LLC AND TRISTAR PRODUCTIONS, INC. ALL RIGHTS RESERVED.
Official HP:https://eleanor2026.com
Official X:@eleanor_film_jp
★2026年6月12日(金)新宿バルト9ほか全国順次公開

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ジェニー・ペンはご機嫌ななめ(英題:The Rule of Jenny Pen)

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監督:ジェームズ・アッシュクロフト
原作:オーウェン・マーシャル
脚本:エリ・ケント ジェームズ・アッシュクロフト
撮影:マット・ヘンリー
出演:ジェフリー・ラッシュ(ステファン・モーテンセン)、ジョン・リスゴー(デイヴ・クリーリー)、ジョージ・ハナレ(トニー・ガーフィールド)

長年裁判官を務めてきたステファンは人権派のベテラン判事だ。病を得て、リハビリのためにケアハウスに短期入所した。やすらぎの場であるはずのそこでは、セラピー用のドールをいつも持ち歩くクリーリーが職員に知られないよう巧妙に入居者を支配していた。声もあげられずにいるのを見かねたステファンは、持ち前の正義感からクリーリーに抗議すると、執拗ないじめの標的はステファンへと代わる。長く入居しているらしいクリーリーは職員たちに信頼され、ステファンの話は届かない。

ジェニー・ペンはクリーリーが肌身離さず持ち歩くセラピードール。目は穴でしかなく不気味な表情で、クリーリーの分身となっています。人形が登場するホラーはいくつもありますが、こちらのジェニーもインパクト大、夢に出てきそうです。
いじめや虐待の加害者は自分が不幸だと思い込んで気まぐれに人に当たり、加虐の喜びを味わうのでしょう。クリーリーにも何か理由があるはずですが、なかなか表に出てきません。こんな施設はイヤダと思ってもどうやって反撃を?主人公を演じたジェフリー・ラッシュとジョン・リスゴー、二人の名優の丁々発止の攻防に背筋の寒い思いをしながらも目を離せなくなります。
二人はシッチェス・カタロニア国際映画祭の最優秀主演男優賞をダブル受賞、ジェームズ・アッシュクロフト監督も大いに注目され、オファーが殺到しているとか。(白)


2024年/ニュージーランド/カラー/104分
配給:エデン
©2024 Hyenas Rule Ltd
https://jennypen.jp/
★2026年6月12日(金)ほか全国ロードショー
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ライフセーバー!

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監督・脚本:児玉宜久
撮影:生野美智信
エンディング曲:「わたしのねがい」関取花
出演:のせりん(大友勇輝)、徳重聡(立石泰彦)、伊礼姫奈(高森加奈)、中山エミリ(立石美咲)、酒井敏也(野上裕次郎)、風間トオル(島崎保男)、西岡德馬(村川会長)

大友勇輝は大学3年になったが、ほかのみんなのように就職活動に身が入らない。将来の自分のビジョンが少しも見えてこない。母親は課外赴任してバリキャリ、電話が来てもうざいだけだ。そんなときに「夏休みをこっちですごさないか」と福井に住む叔父が声をかけてくれた。若狭のビーチに一人いた勇輝は、おぼれている人を見つけて思わず飛び込んだはいいが、自分もおぼれてしまう。助けてくれたのは「若狭和田ライフセービングクラブ」のメンバーだった。

子供のとき、磯船から乗り出し過ぎてポッチャンと海におちた経験があります。自分では覚えていませんが、父親がすぐに助けてくれました。おぼれかけると必死でしがみつくので、危ないんだそうです。
助けられたことで、勇輝は自分もライフセイバーになりたい、という目標ができました。「若狭和田ライフセービングクラブ」の一員になるために、ほかの希望者たちと訓練に参加します。この、普段目にすることのない訓練の様子がなかなか興味深いです。民間のセービングクラブなどが主催する講習会を受講して、必要な技術や知識を身につけたうえで検定に臨みます。誰もが体力も根性もあり心折れそうになる勇輝が心配になります。
リーダーの徳重をはじめ、真剣にスキルアップする加奈たちに囲まれ、ライフセイバーにとっての大切な心構えも吸収していく姿に観ていてほっとします。ドラマの舞台となる福井県嶺南地方の高浜町・若狭和田の美しいビーチも見どころ。(白)


2026年/日本/カラー/104分
配給:日活
©映画「太陽の守護神」製作委員会
https://lifesavermovie.jp/
★2026年6月12日(金)ほか全国ロードショー

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