2026年06月18日
プリティ・クレイジー 悪魔が引っ越してきた 原題: 악마가 이사왔다(悪魔が引っ越してきた) 英題:PRETTY CRAZY
監督・脚本:イ・サングン(『EXIT イグジット』)
出演:イム・ユナ、アン・ボヒョン、ソン・ドンイル、チュ・ヒョニョン
その悪魔は、暴君で、嘘つきで、愛おしい。
ある日、階下に引っ越してきたパン屋を営む女性・ソンジ(イム・ユナ)に一目惚れした休職中の青年・ギルグ(アン・ボヒョン)。その晩遅く、再び遭遇したソンジの昼とは違う様子に驚くギルグだったが、彼女の父・ジャンス(ソン・ドンイル)から、昼間は優しく聡明なソンジだが、午前2時になると彼女の中に悪魔が目覚め、別の人間に変貌してしまうと聞かされる。ジャンスに頼まれ、深夜の彼女を見張る奇妙な仕事をすることになったギルグ。毎夜、街に繰り出しわがまま放題にギルグを振りまわす彼女との奇妙でキュートな夜が始まったー。
フランスに留学してパン修行したいと願っている清楚で聡明なソンジと、取りついている悪魔がうごめいて魔女のように変貌するソンジを、見事に演じ分けたユナちゃん。
そして、クレーンゲームが大得意で家には戦利品が山積みになっている求職中の青年ギルグをひょうひょうと演じたアン・ボヒョン。私の印象に残っているドラマ「ユミの細胞」のク・ウン役は長髪で全然違ったイメージで、本作は『猟奇的な彼女』のチャ・テヒョンを彷彿とさせてくれました。
ソンジの父親役ソン・ドンイルは、これまで様々な作品で笑わせてくれましたが、本作でも絶品。父親なのに娘になぜだか丁寧な言葉で話しています。
従姉妹のアラ役のチュ・ヒョニョンは、初めて知りましたが、毒舌なキャラがぴったり。
さて、次第に明かされるソンジに取りついた悪魔の正体は? そして、その悪魔を追い払う方法は? (咲)
2025年/韓国/カラー/113分/ビスタ/5.1chデジタル
字幕翻訳:根本理恵
製作:CJ ENM
制作プロダクション:FILMMAKERS R&K
配給:ギャガ
★2026年6月19日(金)シネマート新宿他 全国順次ロードショー
アイ・ワズ・ア・ストレンジャー 原題:I was a stranger
監督・脚本:ブラント・アンダーセン
出演:
医師 アミラ:ヤスミン・アル・マスリー(『キャラメル』)
シリア軍兵士 ムスタファ:ヤヤ・マヘイニ(『皮膚を売った男』)
密輸業者 マルワン:オマール・シー(『最強のふたり』)
詩人ファティ:ジアド・バクリ
沿岸警備隊 スタヴロス:コンスタンティン・マルクーラキス
独裁政権が続くシリアで、政府軍と反政府組織との内戦が激化。
2015年、シリア、アレッポ。女医アミラは、娘の誕生祝いをしている時、家を爆破され、生き延びた娘と共に安全な国へ逃れるため危険な国境越えを決意する。
国境を守るシリア兵ムスタファは、政府に反抗的な市民を拘束するよう命じられ、残虐な政府軍に不信感を抱くようになる。命令に従う兵士であるべきか、心ある人間でいるべきか苦悩する。
トルコで難民にヨーロッパへの密航を斡旋する業者マルワン。病弱な息子とアメリカで暮らすため、難民をギリシャ行きのボートに乗せて荒稼ぎしようとする。
詩人ファティはマルワンに大金を払い、斡旋されたボートに妻子と共に乗り込むが、死の危機に直面する。そのボートには、娘を連れた女医アミラもいた。
そして、嵐の海を航行する難民を発見したギリシャ沿岸警備隊のスタヴロスは、人命救助に全力を尽くすのだが──。
アメリカ人で、人道支援活動家でもあるブラント・アンダーセンが、シリア難民に焦点をあて、国から逃れる人、それを助ける人など様々な角度から描いた群像劇。政府軍に所属し、庶民に銃を向ける兵士の苦悩が特に胸に刺さりました。難民たちから多額の金を取ってボートを斡旋する男もまた、より良い生活を求めて息子と共にアメリカに行きたいと願っています。
シリアだけでなく、世界に多くの難民がいることに思いを馳せました。自分の意思で外国に行くのと違って、生まれた国で暮らしたいのに、離れざるを得ない事情があるのは、どれほどつらいことでしょう。あまりに難民が増えて、受け入れを好ましく思わない国や人も増えています。
冒頭、映し出されるシカゴのビル群に、TRUMPの文字。なんとも皮肉です。(咲)
2024年ベルリン国際映画祭 アムネスティ国際映画賞受賞
2024年/アメリカ・ヨルダン・パレスチナ/英語・アラビア語/カラー/104分
配給:ハーク 配給協力:フリック
公式サイト:https://hark3.com/stranger/
★2026年6月19日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国公開
冒頭、映し出されるシカゴのビル群に、TRUMPの文字。なんとも皮肉です。(咲)
2024年ベルリン国際映画祭 アムネスティ国際映画賞受賞
2024年/アメリカ・ヨルダン・パレスチナ/英語・アラビア語/カラー/104分
配給:ハーク 配給協力:フリック
公式サイト:https://hark3.com/stranger/
★2026年6月19日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国公開
2026年06月13日
ゆっくり あるく 川村浪子、84歳のダンス
2026年6月13日(土)~ ポレポレ東中野ほか全国順次公開
©HERE&THERE
川村浪子、84歳 ―なぜわたしは踊り、歩き続けるのか
出演:川村浪子
監督・撮影・編集・録音:崟利子たかしとしこ(『じぶん、まる! いっぽのはなし』)
プロデューサー:高橋章代、崟利子 :
整音:ウエヤマトモコ
制作進行:加藤初代、若井真木子
あらゆるものを削ぎ落とし、ただただ、裸体で歩くこと
舞踊家・パフォーマーとして活動を続ける84歳の表現者川村浪子を追ったドキュメンタリー。
幼少期からダンスに親しみ、1970年代以降、自然の中での知覚体験や歩るくことを取り入れた独自の表現を探求してきた川村は、1982年から1986年まで現代舞踏の先駆者アンナ・ハルプリンがカリフォルニアで開催していたサマーワークショップに参加。「からだ」と「知覚」による表現の可能性を確信し、帰国後、自らのダンスでありパフォーマンスでもある「裸体でゆっくりあるく」を確立、実践。
その表現は、舞踊であると同時に生き方そのものでもあり、長く続けていた。
しかし、表現者として絶頂期を迎えた後、活動休止を余儀なくされ、2016年股関節手術のリハビリを経て活動を再開した。齢を重ね老いた肉体を表出することで「より自由になった。いまの自分を見てほしい」と静かに語る。
『じぶん、まる! いっぽのはなし』や、『西天下茶屋・おおいし荘』『Blessed 祝福』などのドキュメンタリー作品で知られる崟利子監督が手がけた。
本作は、川村が以前から訪れたいと願っていた沖縄の地を2021年秋、共に巡り、彼女のパフォーマンスを記録した。糸満市の摩文仁の丘にある県営平和祈念公園やひめゆりの塔での鎮魂のパフォーマンス、
今帰仁村の海岸で行われた川村のパフォーマンスとインタビューを通して、戦争の記憶が残る土地の時間と向き合い、踊り続けてきた表現者の姿、舞踊に人生を捧げてきた一人の女性のあゆみを見つめた。
2025年には、“戦後80年に寄せて「あるく」~さとうきび畑の風音とともに~”を開催。87歳となった現在も公演を続けている。
冒頭、けっこう長い間、砂浜と海岸線の映像と波の音が続き、川村浪子さんが登場、パフォーマンスが始まる。沖縄での「沈魂」鎮魂?と名付けたパフォーマンスである。これは、糸満市の摩文仁の丘にある県営平和祈念公園で、「平和の礎(いしじ)」や、沖縄県平和祈念資料館、沖縄平和祈念堂が見える「平和の広場」でのパフォーマンスだろう。ということは、冒頭の海は今帰仁村ではなく、この「平和の広場」から見える海なのだろう。もしかしたら遠くに見えた崖が、沖縄の人たちが飛び降りたという場所なのか確かめてみたい。この後、ひめゆりの塔で、ガジュマルの下で「ゆっくりあるく」パフォーマンス。そしてモノローグの後、今帰仁の海岸での「はだかでゆっくりあるく」パフォーマンスが続く。この方のことは、これまで知らなかったけど、随分と長い間、パフォーマンスを続けてきた人なんですね。そして87歳の今も続けているってすごい!
こういう体を使った女性表現者を撮った作品は、今年4月(2026)には『XiXi,私を踊る』が公開されたし、2000年にはイトウターリさんを追った『ディア ターリ』(山上千恵子)というドキュメンタリーが公開されている。
公式HP https://opoponax.jp/walkslow/
製作:HERE & THERE
配給:アカリノ映画舎
2022年/日本/91分/カラー
©HERE&THERE
川村浪子、84歳 ―なぜわたしは踊り、歩き続けるのか
出演:川村浪子
監督・撮影・編集・録音:崟利子たかしとしこ(『じぶん、まる! いっぽのはなし』)
プロデューサー:高橋章代、崟利子 :
整音:ウエヤマトモコ
制作進行:加藤初代、若井真木子
あらゆるものを削ぎ落とし、ただただ、裸体で歩くこと
舞踊家・パフォーマーとして活動を続ける84歳の表現者川村浪子を追ったドキュメンタリー。
幼少期からダンスに親しみ、1970年代以降、自然の中での知覚体験や歩るくことを取り入れた独自の表現を探求してきた川村は、1982年から1986年まで現代舞踏の先駆者アンナ・ハルプリンがカリフォルニアで開催していたサマーワークショップに参加。「からだ」と「知覚」による表現の可能性を確信し、帰国後、自らのダンスでありパフォーマンスでもある「裸体でゆっくりあるく」を確立、実践。
その表現は、舞踊であると同時に生き方そのものでもあり、長く続けていた。
しかし、表現者として絶頂期を迎えた後、活動休止を余儀なくされ、2016年股関節手術のリハビリを経て活動を再開した。齢を重ね老いた肉体を表出することで「より自由になった。いまの自分を見てほしい」と静かに語る。
『じぶん、まる! いっぽのはなし』や、『西天下茶屋・おおいし荘』『Blessed 祝福』などのドキュメンタリー作品で知られる崟利子監督が手がけた。
本作は、川村が以前から訪れたいと願っていた沖縄の地を2021年秋、共に巡り、彼女のパフォーマンスを記録した。糸満市の摩文仁の丘にある県営平和祈念公園やひめゆりの塔での鎮魂のパフォーマンス、
今帰仁村の海岸で行われた川村のパフォーマンスとインタビューを通して、戦争の記憶が残る土地の時間と向き合い、踊り続けてきた表現者の姿、舞踊に人生を捧げてきた一人の女性のあゆみを見つめた。
2025年には、“戦後80年に寄せて「あるく」~さとうきび畑の風音とともに~”を開催。87歳となった現在も公演を続けている。
冒頭、けっこう長い間、砂浜と海岸線の映像と波の音が続き、川村浪子さんが登場、パフォーマンスが始まる。沖縄での「沈魂」鎮魂?と名付けたパフォーマンスである。これは、糸満市の摩文仁の丘にある県営平和祈念公園で、「平和の礎(いしじ)」や、沖縄県平和祈念資料館、沖縄平和祈念堂が見える「平和の広場」でのパフォーマンスだろう。ということは、冒頭の海は今帰仁村ではなく、この「平和の広場」から見える海なのだろう。もしかしたら遠くに見えた崖が、沖縄の人たちが飛び降りたという場所なのか確かめてみたい。この後、ひめゆりの塔で、ガジュマルの下で「ゆっくりあるく」パフォーマンス。そしてモノローグの後、今帰仁の海岸での「はだかでゆっくりあるく」パフォーマンスが続く。この方のことは、これまで知らなかったけど、随分と長い間、パフォーマンスを続けてきた人なんですね。そして87歳の今も続けているってすごい!
こういう体を使った女性表現者を撮った作品は、今年4月(2026)には『XiXi,私を踊る』が公開されたし、2000年にはイトウターリさんを追った『ディア ターリ』(山上千恵子)というドキュメンタリーが公開されている。
公式HP https://opoponax.jp/walkslow/
製作:HERE & THERE
配給:アカリノ映画舎
2022年/日本/91分/カラー
2026年06月12日
免許返納!?
監督:河合勇人
脚本:林民夫
撮影:日下誠
音楽:海田庄吾
主題歌:THE ALFEE「Crossroad -愛の免許返納- 」
出演:舘ひろし(南条弘)、宇崎竜童(尾崎誠)、西野七瀬(川奈舞)、黒川想矢(来宮亮)、南野陽子(安田しずえ)、 八嶋智人(安田康太)、大地真央(加藤麗子)、MEGUMI(来宮ありさ)、 真矢ミキ(木村暁子)、 吉田鋼太郎(三宅篤)
デビューから今まで順風満帆な俳優人生を送ってきたスター、南条弘は70歳を迎えて祝いの席にいた。
往年の『ハーレーライダー』で共演したライバル俳優の尾崎誠のの揶揄に、裏では子どものように怒って悪口三昧。「本当は芸術映画じゃなくて、ハレーに乗ってショットガンをぶっぱなしたいんだ!アクションがやりたいんだ!!」。尾崎がバイク事故で入院したことで、マスコミにコメントを求められ「車やバイクより大切なものがある」と本音と裏腹な回答をしたため、「南条弘は免許自主返納」と誤解されてしまった。
ハリウッド映画のオファーや政府広報のCMの仕事が舞い込み、事務所の社長とマネージャーに説得される。しかし、南条には免許のあるうちに果たしたい約束があった。
『免許がない!』(1994)で舘ひろしが演じた南条弘が再登場。さらにコミカルに、共演陣も豪華に蘇りました。こんなに楽しそうな舘さんを見たのは久しぶりです。『港のひかり』では渋い役柄でした。
映画では70歳の設定ですが、実は1950年3月生まれ。「後期高齢者?」と驚きます。こんなにチャーミングでダンディな人はそういません。「免許返納」はよく話題となりますが、これは推進映画なわけではなく、今を楽しみながら「次へ行こう、次」と元気をくれる作品です。
作中でスナックのママ(南野陽子)と舘さんがデュエットする「泣かないで」のシーンは大ファンの河合監督の夢がかなったシーン。1984年のリリース時、中学だった監督はこのEPレコードを買われたそうです。曲はロックグループ「クールス」のボーカルだった舘ひろしさんが作ったもの。画面には登場しないスタッフたちが、カメラの後ろで聞き惚れていたに違いありません。この映画の後カラオケで 「泣かないで」を歌う人が増えそうです。(白)
2025年/日本/カラー/120分?
配給:東映
(C)2026「免許返納!?」製作委員会
https://menkyohenno-movie.com/
★2026年6月19日(金)より全国順次公開
2026年06月10日
急に具合が悪くなる
監督:濱口竜介
原作:宮野真生子 磯野真穂
脚本:濱口竜介、ルディムナ玲亜
撮影:アラン・ギシャウア
音楽:サミュエル・アンドレイエフ
出演:ヴィルジニー・エフィラ(マリー=ルー・フォンテーヌ)、岡本多緒(森崎真理)、長塚京三(清宮吾朗)、黒崎煌代(窪寺智樹)
パリ郊外の介護施設「自由の森」。マリー=ルー・フォンテーヌは施設長として、人手や予算の不足に悩みつつも理想の介護を目指している。そんな中たまたま出会った日本人の男の子を通じて、演出家の森崎真理と出会った。偶然同じ名前を持つ二人は、いくら話しても話したりないほど親しくなる。末期がんを抱えているという真理は急に具合が悪くなる。
短い期間ながら深い友情を結んだマリー=ルーと真理。がんを患っていても奇跡のように静かな時間が訪れるときがあります。真理に残された時間は刻々と減っていきますが、できるだけ彼女の心が平穏であるように、マリー=ルーは心を砕きます。
この映画は二人の女性の書簡集を元に、改編したものです。俳優の好演もあって、誰にも大切な人との別れや生きることを考えさせるドラマになっています。いつも気になる黒崎煌代くん、セリフはなくとも存在感たっぷり。
観ていて、やはり闘病後、一人二人と逝ってしまった友人たちを思い出しました。香港迷だったNさん、シネジャの二人のスタッフ、人はほんとにいなくなるのだと、年々身に沁みてきました。2026年・第79回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され、ビルジニー・エフィラと岡本多緒さんの二人がそろって最優秀女優賞を受賞しました。岡本さんの笑顔とすっきりお洒落な佇まいが、先に逝った長年の友人を思い出させて、また胸がしんとしました。(白)
2026年/フランス・日本ほか/カラー/196分
配給:ビターズ・エンド
© 2026 Cinéfrance Studios – Arte France Cinéma – Office Shirous – Bitters End – Heimatfilm – Tarantula – Gapbusters – Same Player – Soudain JPN Partners
https://www.bitters.co.jp/soudain/
★2026年6月19日(金)より全国ロードショー


