監督:
監督:クラウディオ・ファエ
脚本:アンディ・メイソン
撮影:アンドリュー・ロジャー
出演:ソフィー・マッキントッシュ(エヴァ)、ウィル・アッテンボロー(カイル)、ジェレミアス・アムーア(ジェド)、マヌエル・パシフィック(ダニーロ)、グレース・ネトル(ローザ)、ジェームズ・キャロル・ジョーダン(ハンク)、フィリス・ローガン(マーディ)、コルム・ミーニイ(ブランドン)
大型旅客機は南国メキシコのリゾート地・カボへと向かっている。州知事の娘・エヴァは恋人ジェドと友人カイルとの卒業旅行、お目付け役のブランドンもついてきたが彼がいると安心できる。10歳のローザは大好きな祖父ハンクと祖母マーディとの3人旅行、お気に入りのテディベアも一緒だ。CAのダニーロの夢は彼氏との同性婚、いじってきた乗客のカイルに一矢報いてやった。
それぞれの夢を乗せての飛行中、エンジンに鳥が激突して機体は高度2万フィートから、海へと墜落する。機体は大破したが、海底の岩場にとどまった。生き残ったのはエヴァとローザを含む僅か7名のみ。生き延びられる場所は機内のエア・ロックただ一カ所、この空間で救助を待つことしかできない。
鳥が原因の航空機事故だけでもパニックを起こすには十分なのに、海中に墜落してしまいます。そこにはサメがうようよ。生き残った人間たちは、今は呼吸のできる空間にいますがそのうち酸素がつきてしまうでしょう。壊れて浸水した機内にいつまでも電気がつくのはなぜ?と素朴な疑問がわきますが、明るくないと見えないので無視しましょう。
事故の信号が届いて捜索が始まりますが、沈没した機体を探すのは容易ではありません。機内と外の状態を交互に観せられる観客は休む暇などなく、ハラハラと気をもむことになります。航空機と鳥の事故は実際多いようで、大半は目的地まで無事に飛行できるようですが、まれに大事故につながることも。こればかりは当たることのないように願っています。
これまでの映画と違って、女性の役割が多いんです。ここぞというときに大切なセリフを言ったり、率先して行動したり。それなりの背景は持っているものの、ちょっと嬉しいストーリーでした。(白)
2023年/イギリス/カラー/91分
配給:ギャガ
(C)NWUP Limited 2023
https://gaga.ne.jp/airlock/
★2024年8月16日(金)新宿ピカデリーほか全国ロードショー
2024年08月11日
ねこのガーフィールド(原題:The Garfield Movie)
監督:マーク・ディンダル
原作:ジム・デイビス
声の出演:クリス・プラッツ/山里亮太(ガーフィールド)、ハンナ・ワディンガム/MEGUMI (ジンクス)、ニコラス・ホルト/山路和弘(ジョン)、サミュエル・L・ジャクソン/山路和弘(ヴィック)、ヴィング・レイムス/磯部勉(オットー)、ブレット・ゴールドスタイン/立木文彦(ローランド)、ボウエン・ヤン/関智一(ノーラン)、スヌープ・ドッグ/木村昴(モーリス)
飼主のジョンに溺愛されて、“幸せ太り”な家ねこのガーフィールド。食べることが大好きで、月曜日とお風呂は大嫌い!冷蔵庫が空になったら、ジョンのカードでネットショッピング。お取り寄せしたものがすぐ届くなんて便利な時代だ。しかし、そんな平和な日々が乱された!生き別れた父さんねこのヴィックが突然現れて「悪いねこに追われている!助けて!」と言うのだ。ガーフィールドは親友の犬オーディと一緒に居心地のいい家から飛び出すことになってしまった。
原作は1978年から新聞に連載されて今も継続中の漫画です。ジム・デイビス氏は1945年生まれで79歳です。いまだ現役連載中とはシニアの星ですね。原作は日本でも出版されていたようですが、書店で探せず図書館にはなくて見ていません。今回のアニメのガーフィールドの対象はお子様中心らしいので、全体に可愛らしくなっています。飼い主のジョンはカードで爆買いされても怒りません。甘々です。ちゃんと叱ってもらいたいです。
ガーフィールドは子ねこのころから父さんには会っていないので、2匹の間には溝が横たわっています。悪いねこの登場は2匹とどう関係していくのか、2匹の溝は狭まっていくんでしょうか?どたばた追っかけっこもあり、親子のしんみりもあり、初めてガーフィールドに会う子どもたちも満足するのではないかしら。(白)
2024年/アメリカ・イギリス・香港合作/カラー/101分
配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
https://www.garfield-movie.jp/
★2024年8月16日(金)ほか全国ロードショー
2024年08月10日
ニューノーマル(原題:英語題:NEW NORMAL)
監督・脚本:チョン・ボムシク
撮影:キム・ヨンミン
音楽:ユンサン
出演:チェ・ジウ(ヒョンジョン)、イ・ユミ(ヒョンス)、チェ・ミンホ(SHINee)(フン)、ピョ・ジフン(Block B)(ギジン)、ハ・ダイン(ヨンジン)、チョン・ドンウォン(スンジン)
マンションで一人住まいのヒョンジュンの部屋に、火災報知器の点検だと男がやってくる。ずかずかと入り込み、なめ回すようにヒョンジュンを見てなかなか帰らない。デートアプリで待ち合わせをしているヒョンス。顔を知らないままやりとりをしていると、現れたのは思いがけない相手だった。
テイストの違う6話からなるオムニバス。韓国ホラーには血みどろのシーンや、いきなりの音や叫び声に驚かされてきましたが、これはありえない非日常ではなく、自分がその中にいても違和感のない日常。だから余計にじんわり怖いです。
オムニバスのトップバッターはなんとお久しぶりのチェ・ジウ。2002年のテレビドラマ「冬のソナタ」にヨン様ことペ・ヨンジュンと主演。日本に韓国ドラマブームを巻き起こしました。あの笑顔や涙目が記憶にある人には、とても意外に見えるかもしれません。
お年寄りに親切な言葉をかけた高校生、マッチングアプリで彼や彼女を探す、縁を信じてみる、隣人にほれ込みすぎてストーカー化、ストレス満タンのコンビニ店員、登場人物が少しずつ関わりあっているのがわかる編集です。音楽がまた絶妙です。
ラストに登場人物が一人で食事をしている「一人飯」シーンがあります。コロナ禍でそうせざるを得なかった日を思い出します。いまやマスクも一人飯も普通になってしまいました。どうかストレスをため過ぎないように。(白)
2023年/日本/カラー/113分
配給:AMGエンタテインメント
(C)2023 UNPA STUDIOS.ALL RIGHTS RESERVED.
https://newnormal-movie.jp/
★2024年8月16日(金)より全国ロードショー
2024年08月07日
デビルクイーン 原題:A RAINHA DIABA
監督・脚本:アントニオ・カルロス・ダ・フォントウラ
出演:ミルトン・ゴンサルヴェス、オデッチ・ララ、ステパン・ネルセシアン、ネルソン・シャヴィエル ほか
1973年ブラジル、軍事独裁政権下に誕生した伝説のクィア・ギャング映画
リオデジャネイロの裏社会を牛耳るデビルクイーン。ピンクのバスローブを羽織り、ヴィヴィッドな色のアイシャドウで彩った目で売春宿の奥の部屋から部下のギャングたちを監視し、裏切り者は容赦なく切り裂き、恐怖を植え付けている。ある日ハンサムなお気に入りが警察に追われていることを知ると、右腕であるカチトゥに、キャバレーシンガーのイザのヒモで、世間知らずのべレコをスケープゴートとして警察に差し出すよう指示する。一方で、オカマのデビルクイーンがボスとして君臨するのを良しとしない者たちが手を組んでデビルの恐怖政治を終わらせようとしていた・・・
デビルクイーンを演じたブラジルの伝説的俳優ミルトン・ゴンサルヴェスの迫力が半端ないです。まさに裏社会に君臨する悪魔のような女王。一方で、ブラジルにおける黒人解放運動の活動家でもあった方。2022年にご逝去されています。
歌手のヒモでデビルクイーンを密かに倒そうとするベレコを演じたステパン・ネルセシアンはとても美男。『オルフェ』(1998 年、カルロス・ディエギス監督)にも出ていたそうです。
そして、ベレコを愛するキャバレーシンガーのイザを演じたオデッチ・ララは、映画製作当時、フォントウラ監督の奥様だった方。
1964 年にクーデタで政権を握った軍部が、文化活動にも介入し、厳しい検閲を行なった中で、ギャング、同性愛者、ドラァグクイーン、娼婦など、軍事独裁政権下のブラジルで最も阻害された人々を扱った本作が、よく検閲を潜り抜けたと驚きます。強烈なサウンドやサイケデリックな色が、物語をさらにぶっ飛んだものにしていて、しばらく忘れられそうにないです。(咲)
リオデジャネイロの裏社会を描いた50年前(1973)の作品のデジタルリマスター版とのこと。クィア・ギャング映画なるジャンル名まで。ここはリオデジャネイロのファベーラの一角なのだろうか。混沌とした社会が出てくるけど、最後はこうなるの?みたいな終わり方だった。救いのある世界ではない。
私がブラジルのノワール映画を初めて観たのは20年くらい前だったが、あまりに暴力的で冷酷な仕打ちの連続でびっくりした記憶がある。その後、いくつかのブラジルのノワール映画を観てもそういう印象を受けたけど、50年も前のこの映画ですでにそういう要素があったんだ。ブラジルの現実社会が反映されているのだろう。それにしても同性愛者や、ドラァグクイーンが、このように出てくる映画が50年も前にブラジルに存在していたとは。ブラジルでは1964年から1985年まで軍事政権下、その間に作られた映画で、しかも公開されてヒット作だったというのに、もっとびっくり。今のブラジルは、このころよりは暴力に支配されない社会になっているのだろうか。かつてブラジルに移住したいと思っていた私としては、とても気になる(暁)。
◆製作から50年の節目となる2023年に制作された4Kレストア版で日本初公開
1973年/ブラジル/100分/カラー
字幕翻訳:原田りえ
配給:ALFAZBET
公式サイト:https://alfazbetmovie.com/devilqueen
★2024年8月10日(土)より渋谷シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開
2024年08月04日
夜の外側 イタリアを震撼させた55日間 原題:Esterno note 英題:Exterior, Night
監督・原案・脚本:マルコ・ベロッキオ
原案:ジョヴァンニ・ビアンコーニ、ニコラ・ルズアルディ
原案・脚本:ステファノ・ビセス
脚本:ルドヴィカ・ランポルディ、ダヴィデ・セリーノ
出演:ファブリツィオ・ジフーニ、マルゲリータ・ブイ、トニ・セルヴィッロ、ファウスト・ルッソ・アレジ、ダニエーラ・マッラ
赤い旅団によるアルド・モーロ元首相誘拐事件を6つの視点で描いた55日間
相次ぐテロリズムにより、イタリアが社会的、政治的混乱にあった「鉛の時代」。
1978年3月のある朝、戦後30年間にわたってイタリアの政権を握ってきたキリスト教民主党の党首で、元首相のアルド・モーロが、極左武装グループ「赤い旅団」に襲撃、誘拐される。
世界が注目し、イタリア中が恐怖に包まれたその日から、55日間の事件の真相を、アルド・モーロ自身、救出の陣頭指揮を執った内務大臣フランチェスコ・コッシーガ、モーロと旧知の仲である教皇パウロ6世、赤い旅団のメンバーであるアドリアーナ・ファランダ、そして妻であるエレオノーラ・モーロの視点から描く。
『夜よ、こんにちは』(03)で同事件を「赤い旅団」側から描いたマルコ・ベロッキオ監督が、「すでに語られた物語には戻らない」という自身のルールを破り、外側〈政府、法王、神父、警察、教授、妻、子供たち…、様々な立場で事件に関与した人々〉の視点を交えて、6エピソードで描いた一大巨編。
赤い旅団の視点で描いた『夜よ、こんにちは』では、ほとんどの場面が監禁された室内でした。 外側から描いた本作では、様々な場所で、様々な人たちが、アルド・モーロ元首相救出に動いたことが描かれます。前編(Ⅰ~Ⅲ)と後編(Ⅳ~Ⅵ)、各170分、休憩を挟みましたが、息を殺して一気に見入りました。
事件が結末を迎えるまでの55日間、イタリア全土がニュースを見守ったのを同じような思いで映画に入り込みました。当時の家族のお気持ちを思うとやるせないです。(咲)
2022年/イタリア/イタリア語・英語/340分(前編:170分/後編:170分/カラー/1.85:1/5.1ch
字幕翻訳:岡本太郎
配給:ザジフィルムズ
公式サイト:https://www.zaziefilms.com/yorusoto/
★2024年8月9日(金)よりBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほか全国順次ロードショー