2026年01月04日

水の中で 原題:물안에서 英題:In Water

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© 2023 Jeonwonsa Film Co. All Rights Reserved.

脚本・監督・製作・撮影・編集・音楽:ホン・サンス
出演:シン・ソクホ、ハ・ソングク、キム・スンユン

ホン・サンス監督デビュー30周年記念「月刊ホン・サンス」 第3弾

ベルリン国際映画祭で物議を醸した“全編ピンボケ映画”

大学卒業後、俳優業に専念していた青年ソンモは、自主制作で短編映画を監督しようと決意する。かつての同級生ふたりを連れ、リゾート地として知られる済州島へ向かうが、思うようにシナリオは書けず、煩悶しながら海辺を散策していた。そんな折、ひとりの女性との出会いをきっかけに、語るべき物語を見出す。やがて、海辺での撮影が静かに始まる──。

ソンモは、バイトで映画製作の資金を貯めて、同級生ですでに映画を撮っているサングクと、女優として後輩のナミを連れて、済州島に来たものの、実はまだ脚本どころか内容も決まってないのです。予算も限られているのに、のんびり海辺を散策したりするので、観ている側は気が気じゃありません。買ってきたお刺身と焼酎で、3人で他愛のない話をするのは、いつものホン・サンス流。
第73回ベルリン国際映画祭で、上映前に「これからかかる映画は決して映写ミスではない」と事前アナウンスが入るほど、“全編ピンボケ”の映像表現・・・と、公式サイトに書かれていたので、覚悟して拝見したのですが、確かに、また白内障?という感じのかすんだ映像。最後は海の中に入っていくのですが、済州島の抜けるように青いはずの海も、ちょっとどんより。それもまたご愛敬。(咲)


2023年/韓国/韓国語/61分/カラー/16:9/ステレオ
字幕:根本理恵 
配給:ミモザフィルムズ
公式サイト:https://mimosafilms.com/gekkan-hongsangsoo/
★2026年1月10日(土)より、ユーロスペースほかにて公開


◆別冊ホン・サンス 『イントロダクション』1/10(土)~1/16(金)

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ホン・サンス監督『イントロダクション』主演 シン・ソクホ オンライン舞台挨拶

posted by sakiko at 14:03| Comment(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

架空の犬と嘘をつく猫

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監督:森ガキ侑大
原作:寺地はるな
脚本:菅野友恵
撮影:山崎裕
出演:高杉真宙(羽猫山吹)、伊藤万理華(佐藤頼)、深川麻衣(遠山かな子)、安藤裕子(母 雪乃)、向里祐香(姉 紅)、安田顕(父 淳吾)、余貴美子(祖母 澄江)、柄本明(祖父 正吾)

小学生の羽猫山吹(はねこやまぶき)、両親と祖父母、姉と暮らしている。弟は事故死したが、母はその死が受け入れられずいつも弟の帰りを待っている。山吹は弟のフリをして母に手紙を書き続けている。父は空想の中に生きる母に向き合えず愛人の元に逃げている。いつも夢を語る祖父、祖母は“噓”をつきながら仕事をする。姉は“嘘と嘘つき”が大嫌いで早く大人になりたいという。山吹はバラバラな家族の中で成長していく。

小学生、中学生・・・年々大人になっていく山吹とその周りの人々の30年が描かれます。山吹は自分の世界に生きている母を突き放すことができません。「母を甘やかすな」と姉になじられますが、家族から受ける影響は大きくて、そうならざるを得なかったんでしょう。母への手紙はいつ止められるんだろうと思いながら見ました。中ほど、クリスマスに子どもたちに即興でお話をするシーンがあります。山吹と頼(より)の大切なシーンに続き忘れられません。ここでやっと「架空の犬」が登場します。
優しい人は頼られ、断れない人は巻き込まれやすい、あなたの周りにそんな人がいたらあまり荷物を持たせないで、たまには代わってあげてね。それぞれの独白は辛いですが、本人にとっては真実。優しさって何だろう、人はどこまで優しくできるだろうと考えた作品でした。(白)


2025年/日本/カラー/125分
配給:
(C)2025 映画「架空の犬と嘘をつく猫」製作委員会
https://usoneko-movie.com/
★2025年1月9日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー

posted by shiraishi at 13:25| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

SEBASTIAN セバスチャン

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監督・脚本:ミッコ・マケラ
撮影:イッカ・サルミネン
出演:ルーアリ・モルカ(マックス)、ヒフトゥ・カセム(アムナ)、イングヴァル・シーグルズソン(ダニエル)、ジョナサン・ハイド(ニコラス)、リーン・ベスト(ディオンヌ)

ロンドンに住むマックスは、作家志望のフリーライター。まだ若いが将来を嘱望されている。長編小説のデビュー作に男性相手のセックスワーカーの世界を描くつもりだ。よりリアルなものにするために、他人を取材するのではなく自分自身でその世界に足を踏み入れることにした。「セバスチャン」という名前でサイトに登録し、様々な顧客と出会っていく。

フィンランド系イギリス人のミッコ・マケラ監督は、LGBTQ映画作家として注目されている新鋭。主演のルーアリ・モルカはイタリアとスコットランドをルーツにした超美形ですが、監督も端正さで負けていません(HPでお確かめください)。
ロンドンでは若者がセックスワーカーを「職業として選択している」と知ったのがこの映画のきっかけだったそうです。貧困からの最後の手段の悲劇でも恥でもなく、アプリを使えば簡単にその世界にデビューできます。
リアルに描くために「体験」が必須なのか、赤裸々に描くことで他人を傷つけることはないのか?マックスは体験を重ねるうちに、葛藤していきます。この内容を、監督の期待通りポジティブにとらえるのはなかなかに難しい昭和なおばちゃんですが、ホッとする出会いがあったのが救い。マックス役のルーアリ・モルカには、以後オファーが殺到しているようです。(白)


2024年/イギリス/カラー/110分/R-18
配給:リアリーライクフィルムズ
(C)Sebastian Film and The British Film Institute 2024 / ReallyLikeFilms
https://www.reallylikefilms.com/sebastian-film
★2026年1月9日(金)よりシネマート新宿ほか全国ロードショー
posted by shiraishi at 12:56| Comment(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

韓国ミュージカル ON SCREEN「笑う男」

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原作:ヴィクトル・ユゴー
脚本・演出:ロバート・ヨハンソン
歌詞:ジャック・マーフィー
作曲・編曲:フランク・ワイルドホーン
出演:パク・ガンヒョン(グウィンプレン)、ミン・ギョンア(デア)、ヤン・ジュンモ(ウルシュス)、シン・ヨンスク(ジョシアナ公爵)

17世紀の終盤のイングランド。子どものころ見世物として口を裂かれた少年、グウィンプレンは雪の中で死にかけている赤ん坊(のちのデア)を見つけ、近くの小屋で暮らす興行師のウルシュスと出会う。15年後、青年となり、口の傷から“笑う男”と呼ばれるグウィンプレンと盲目のデアはウルシュスのもと自身の生い立ちを芝居で演じ、有名人となっていた。ある日、彼らの興行に興味を持った貴族が訪れたことでグウィンプレンとデアの運命は大きく動き出す。

韓国ミュージカル ON SCREENの第4弾。不幸な生い立ちにも負けず、素直で優しい青年に成長したグウィンプレンと彼に助けられたデア。お涙頂戴ではなく数奇な運命に立ち向かうお芝居にして、やんやの喝采を受けるシーンが楽しいです。二人の恋とグウィンプレンの思いがけない過去がわかっていき、さまざまな感情を歌い分けるパク・ガンヒョンの歌唱力に驚嘆します。『エリザベート』でルキーニ役も担ったそうで(このシリーズではイ・ジフン)それも観てみたいです。盲目のデア役のミン・ギョンアもはなかげで美しく、グウィンプレンをいちずに思う姿がいじらしい。2時間半、少しも長く感じません。音響、画質とも良い環境の劇場でぜひお楽しみください。
第5弾は3月6日~19日『モーツアルト!』です。(白)


ソニンさんの見どころ紹介はこちら

2018年/韓国/カラー/153分
配給:ライブ・ビューイング・ジャパン
(C)2018 EMK Musical Company,All Rights Reserved
https://kmusicalonscreen.com/warauotoko/
★2025年1月9日(金)~ 1月22日(木) 2週間限定上映

posted by shiraishi at 09:33| Comment(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

おくびょう鳥が歌うほうへ(原題:The Outrun)

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監督・脚本:ノラ・フィングシャイト
原作:エイミー・リプトロット「THE OUTRUN」
出演:シアーシャ・ローナン(ロナ)、パーパ・エッシードゥ(デイニン)、スティーヴン・ディレイン(アンドリュー)、サスキア・リーヴス(アニー)

ロンドンの大学院で生物学を学んでいた29歳のロナ(シアーシャ・ローナン)は10年ぶりにスコットランド・オークニー諸島の故郷へと帰ってくる。かつて大都会の喧騒の中で、自分を見失い、お酒に逃げる日々を送っていた彼女は、ようやくその習慣から抜け出した。
しらふの状態で、心を新たに生きるロナ。だが、恋人との関係に亀裂を生み、数々のトラブルも引き起こした記憶の断片が、彼女を悩ませつづける……。

ロナは飲酒後の高揚感を忘れられません。アルコー依存症から何度も立ち直ろうとしては、また逆戻りをくり返します。ロナの父もそうやって家庭を壊し、母は宗教にすがりました。身近で体験していても、抗えないお酒の魅力は下戸の私には理解不能です。ほどほどならば機嫌よく過ごせる人生の楽しみとなるでしょうに。ロナは深く愛し合っていたはずの恋人をも傷つけてしまいました。
タイトルのおくびょう鳥とは「ウズラクイナ」のこと。日本にもいるクイナの仲間です。羽色はウズラに似ていますが、ウズラはキジの仲間、ウズラクイナは首が長めでほっそりしたツルの仲間に分類されています。危険を察するとすぐに藪に逃げ込んで隠れてしまうそうです。
ロナは故郷からさらに北の小島でその調査をします。自然は厳しく、風は吹きすさび、海は荒れ狂います。まるでロナの逃れたい過去が立ち上っているようでした。エイミー・リプトロットが自身の過去を書いた原作はベストセラーになり、シアーシャ・ローナンは製作にも名を連ねました。激しさと静けさが交互に現れるロナを熱演し、観客はロナと共にその軌跡を体験します。(白)


この人が出ているのなら、観てみたい・・・ シアーシャ・ローナンはそういう俳優の一人。アルコー依存症に苦しみ、そこから抜け出した原作者エイミー・リプトロットの思いを細やかに体現しています。その時、その時の気持ちが青や赤に染めた髪にも表れています。ウズラクイナのギィギィという声を聴いた時の、ふっとした笑顔が素敵でした。
ノラ・フィングシャイト監督は、1983年ドイツ、ブラウンシュヴァイク生まれ。
彼女の卒業制作である長編ドキュメンタリー『WITHOUT THIS WORLD(原題:OHNE DIESE WELT)』は、アルゼンチンに暮らす保守的なメノナイト共同体を題材にした作品。長編劇映画デビュー作『システム・クラッシャー』は、制御不能で攻撃的な子供を主人公にした、強烈な映画でした。
『おくびょう鳥が歌うほうへ』では、スコットランド北部のオークニー諸島の神話や方言も取り入れ、詩情豊かな作品に仕上げています。 これからの作品が楽しみな映像作家です。(咲)


2024年/イギリス、ドイツ/カラー/シネスコ/118分
配給:東映ビデオ
(C)2024 The Outrun Film Ltd., WeydemannBros. Film GmbH, British Broadcasting Corporation and StudioCanal Film GmbH. All Rights Reserved.
https://www.outrun2026.com/
★2026年1月9日(金)新宿ピカデリーほか全国順次ロードショー
posted by shiraishi at 09:23| Comment(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする