2025年03月27日

ナタ 魔童の大暴れ(原題:ナタ之魔童鬧海 / 英題:Ne Zha 2)

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監督:ジャオズ
プロデュース&製作:可可豆動画 彩条屋影業
出演(声の出演):リュ―・イェンティン【呂艶ティン】 、ジョンセンセフ【ジョン森瑟夫】、ハンモー【瀚墨】 、チェン・ハオ【陳浩】 、リューチー【緑綺】 、チャン・ジャーミン【張珈銘】 、ヤン・ウェイ【楊衛】 、 ワン・デーシュン【王徳順】 ほか

ナタは李夫妻の元に生まれた。成長すれば仙人となるはずであったが、何者かの陰謀で魔王となる宿命を持たされていた。幼いころから妖力が強かったため、ほかの子どもと遊ぶことができなかった。誤解されつまはじきになり、孤独なナタに両親は愛情を注ぎ続けて育てた。
少年のナタは東海竜王の息子である敖丙(ゴウヘイ)と出会い、互角の力を持つ彼とかけがえのない友達となった。しかし大きな闘いに巻き込まれて対立し、肉体が消えて魂だけが残った。ナタの師である太乙真人(タイイツシンジン)はナタとゴウヘイの身体を再生するために奔走。2人は自分たちに課せられた試練を乗り越えていく。

2019年の3DCGアニメーション『ナタ~魔童降臨~』の続編。前作も中国のアニメーション作品で上位の集客数を記録しましたが、本作は2025年の春節に上映され、それを上回る大ヒット。新記録を作りました。映画館数が増えていること老若男女問わず観客を集めたことも大きいですが、目が肥えてきた中国のアニメファンたちの期待を上回るできばえだったのが、一番の理由でしょう。
中国の古典に馴染みがないと、たくさんの登場人物を把握するのが難しいですが、前作よりも奥行も緻密さも向上している背景、多くの登場人物を描き分ける丁寧さに、日々進化しているのを感じました。クリエイターの方々はこれで良いと満足ぜず、「もっともっと」と自分自身でハードルをあげて、良い作品を生みだすんですね。くれぐれも過労になりませんように。
ナタは子供の頃から疎外感を感じていたせいか、「どうせ誰もわかってくれない」感いっぱい。常人にはない力があるために、そればかりが目立って内にある無邪気さや寂しさ、優しさに気づく人はまれです。暴れん坊で怒りっぽくキレやすいのが、見た目に出てしまっている男の子です。仙界も美しいばかりでなく、いろいろな策略や悪意が縦横に張られています。そんな中でナタが敖丙と共に宿命に抗い、自分の未来を切り開いでいくのを手に汗にぎって見守ってください。笑いどころもちゃんとあり、竜王たちが美男美女なのも眼福。超イケメンな敖丙の父を見逃さないでね。(白)


2025年/中国/カラー/シネスコ/144分
配給:面白映画
公式HP:nezha2.jp  
公式X:@nezha2_JP
★2025年4月4日(金)より日本語字幕版全国公開

posted by shiraishi at 13:04| Comment(0) | 中国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

終わりの鳥(原題:Tuesday)

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監督・脚本:ダイナ・O・プスィッチ
出演:ジュリア・ルイス=ドレイファス(ゾラ)、ローラ・ペティクルー(チューズデー)、アリンゼ・ケニ(デス)

15歳の少女チューズデーは、病気のため自宅療養している。母親のゾラは、余命わずかになった一人娘を見るにしのびず、訪問介護の職員がやってくるとそそくさと出かけてしまう。そんな家に大きな鳥「デス」が舞い降りて来た。死を告げる役目を持って世界中を飛び回っている。しかも会話をし、歌ったり踊ったりもできる。チューズデーは彼をジョークで笑わぜ、母が帰るまで自分の命を引き延ばす。やがてゾラが帰宅し、デスを見て恐怖にかられる。娘を守るために母親がやらかしてしまったこととは?

チューズデーは癌の末期のようです。鼻に酸素のチューブが入り、移動は車椅子。聡明でいつも死と向き合っているからか、年齢の割にとても落ち着いています。母親は一人娘が先立つことを受け入れられません。娘のそばにいられず、よそで時間をつぶしています。娘はそんな彼女が心配でなりません。
母親はデスの役目の何たるかを考えず、暴挙に出てしまいそのつけが回ってきました。パニックに陥る母親を励まし、落ち着くように息の仕方を教えるチューズデー。母親がやらかしたせいで、外では命を全うできず苦しむ生き物があふれてきました。死ねない恐怖もあるのをここで気が付きました。
チューズデーの部屋の窓辺に招き猫がありました。訪ねてきたのは「デス」だったけれども。いいこともきっとあったと思いたいです。でなければ来世はぜひ病なしの人生をチューズデーに>デスさま。(白)


2024年イギリス、アメリカ/カラー/110分
配給:ハピネットファントム・スタジオ
(C)DEATH ON A TUESDAYLLC/THE BRITISH FILM INSTITUTE/BRITISH BROADCASTING CORPORATION 2024
https://happinet-phantom.com/tuesday/
★2025年4月4日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショー



posted by shiraishi at 12:56| Comment(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

レイブンズ 英題:Ravens

2025年3月28日 新宿武蔵野館、TOHOシネマズシャンテ、ユーロスペース他全国公開
劇場情報 
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(C)Vestapol, Ark Entertainment, Minded Factory, The Y House Films

破滅的写真家、深瀬昌久の波乱万丈の人生を描く

監督・脚本・プロデューサー:マーク・ギル
撮影:フェルナンド・ルイス
プロダクションデザイナー:金勝浩一
音楽:テオフィル・ムッソーニ ポール・レイ
出演:浅野忠信、瀧内公美、ホセ・ルイス・フェラー、古舘寛治、池松壮亮、高岡早紀

ダークでシュールなラブストーリー
写真家深瀬昌久の最強の被写体は、妻洋子と哲学的な鴉(カラス)の化身だった


1934年、北海道中川郡美深町で生まれた深瀬昌久。父の写真館を継ぐことを拒んで上京し、日本大学芸術学部写真学科を卒業。1968年に写真家として独立。そんな深瀬の最強の被写体は妻の洋子。二人は革新的な作品を作り出していった。しかし、天賦の才の一方で、心を閉ざし、闇を抱えていた。やがて、カラスの写真を撮り始め、暗示的な、少し不気味な写真を撮るようになる。
1974年、森山大道らとアメリカ・MoMAで開催された歴史的な日本写真の展覧会「New Japanese Photography」に出展し、世界にも知られた。一躍時代の寵児となったが、たびたび酒に溺れ、1992年転落事故で脳障害を負い20年の闘病の末、2012年に78歳で亡くなった。北海道(1950年代)、NY(70年代)、1992年の東京まで、疾風怒濤のダークでシュールなラブストーリーを描く。
監督は、英国マンチェスター出身の、作家、監督、写真家である元ミュージシャンのマーク・ギル。2015年、深瀬昌久の作品に衝撃を受け、9年かけて映画化にこぎつけたという。深瀬昌久を演じたのは、昨年(2024)ハリウッド製作のドラマ「SHOGUN 将軍」で、ゴールデングローブ賞助演男優賞(テレビドラマ部門)を受賞した浅野忠信。洋子を演じたのは瀧内公美(『火口のふたり』『由宇子の天秤』『敵』)。

カラスの写真で知られる写真家深瀬正久。1974年、荒木経惟、東松照明、細江英公、横須賀功光、森山大道とともに「ワークショップ写真学校」を開講。ここからは、倉田精二、北島敬三、石川真生らの写真家が輩出された。同じ1974年に「New Japanese Photography」に出展している。この年は深瀬にとって充実した年になったことでしょう。
1970年に会社の写真部に入部した私としては、深瀬正久の名前を知ってはいたけど詳しくは知らなかった。この映画で、こんな破滅的な生き方をした人だったということを知り驚いた。それに、日本デザインセンターや河出書房新社などにも勤務していたことも知った。いつの間にか名前を見なくなったと思ったけど、1992年に転落事故で脳障害を負ってしまったのですね。それでも20年も闘病生活をしていたんだ。ほんとに破滅的な生涯を送った人だったんだ。浅野忠信はそんな深瀬の破天荒な生涯を演じたが、主演男優賞ものの演技だったと思う。
「レイブンズ」の意味を調べてみたら、「ワタリガラス」とあったが、「鴉」の写真展の英語のタイトルが「Ravens(レイブンズ)」ということだった(暁)。

公式HP https://www.ravens-movie.com/#top
2024年製作/116分/PG12/フランス・日本・ベルギー・スペイン合作
配給:アークエンタテインメント
posted by akemi at 10:31| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ミッキー17  原題:Mickey 17

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(C)2025 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

監督・脚本・製作:ポン・ジュノ(『パラサイト 半地下の家族』『吠える犬は噛まない』『母なる証明』
原作:エドワード・アシュトン
出演:ロバート・パティンソン、ナオミ・アッキー、スティーヴン・ユァン、アナマリア・ヴァルトロメイ、トニ・コレット、マーク・ラファロ

一発逆転の夢の仕事・・・のはずが、ブラック企業の使い捨てワーカーだった!

人生失敗だらけの主人公・ミッキーが手に入れたのは、何度でも生まれ変われる夢の仕事、のはずが……⁉ 
それは身勝手な権力者たちの過酷すぎる業務命令で次々と死んでは生き返る任務、まさに究極の“死にゲー”だった!
闇深いブラック企業のどん底で搾取されるミッキーの前にある日、手違いで自分のコピーが現れ事態は一変。
使い捨てワーカー代表、ミッキーの反撃が始まる・・・

『パラサイト 半地下の家族』が、第92回アカデミー賞®で非英語作品史上初の作品賞受賞という快挙を成し遂げたポン・ジュノ監督。ふんだんな資金を得て作り上げた最新作。主演は『ハリーポッター 炎のゴブレット』『THE BATMAN-ザ・バットマン-』のロバート・パティンソン。共演者も人気の実力派が大集結! 

技術がさらに発展した未来。クローンどころか、「人体複製(プリンティング)」という技術で、いとも簡単に「印刷」で作ってしまう人間。消耗品で、激務で使い物にならなくなると、次の複製が作られてしまうという安易さ。本来なら、同じ人間は同時に存在しないはずだったのに、ミッキー17がまだいるのに、手違いでミッキー18をプリントしてしまったというお話。それが見た目は同じなのに、性格が違ってしまったというのが可笑しいです。ロバート・パティンソンが、二役を上手に演じ分けています。
大きなスクリーンでこそ、微妙な表情の違いがはっきりと見れるのですが、本作、もう一つ、ぜひスクリーンで観てほしい理由が、クリーパーという生物体の存在。
脚本に、「奇妙にうねるような動きをする生物で、クロワッサン型の体を持ち、ムカデのように各節から脚が生えていて、不気味なカチカチ、パチパチという音を立てる」と描写されているとのことです。大きさは3つあって、
ベイビー・クリーパー: コアラほどの大きさ
ジュニア・クリーパー:大型の豚ほどの大きさで、直立すると人間の身長と同じくらい。
ママ・クリーパーー: 水平方向で9フィート(約2.7m、直立すると20フィート(約6m)以上の巨体。唯一の存在。 
ミッキーは、このクリーパーたちと意思疎通することができるのです。
未来の話でありながら、今を生きる私たちにも通じる物語です。(咲)


「ミッキー17」というタイトルの意味が最初わからなかったけど、何度でも生まれ変われる夢の仕事のはずが、「身勝手な権力者たちの過酷すぎる業務命令によって、死んでは生き返る任務」で、17回目の再生人間だった。いわば「使い捨て人間」である。監督は「”人間の愚かさ”をより深く掘り下げました。そして、その愚かさが、時に愛すべきものになるという視点で描きました」と語っていますが、「愚かな愛すべき人たち」の物語。「スタジオジブリ作品からの影響を公言しているジュノ監督が、ジブリにオマージュを捧げた謎のモンスターが登場」とありましたが、無数のクリーパーたちが宇宙船に押し寄せる姿に、『風の谷のナウシカ』に出てきたオーム(王蟲)の押し寄せたシーンを思い出し、ハッとしました。生き残りたいと言っていたミッキー18ですが、最後の展開に驚きます。(暁)

2025年/アメリカ/137分/ビスタサイズ/2D/IMAX 2D/ドリビーシネマ 2D/リニア PCM5.1ch+7.1ch;ドルビーアトモス(一部劇場にて)
翻訳(字幕・吹替):松崎広幸
配給︓ワーナー・ブラザース映画
公式サイト:https://wwws.warnerbros.co.jp/mickey17/
★2025年3月28日(金)より全国公開
posted by sakiko at 10:08| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

マリア・モンテッソーリ 愛と創造のメソッド  原題:Maria Montessori (La Nouvelle Femme)

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(C)Geko Films – Tempesta – 2023

監督・脚本:レア・トドロフ
出演:ジャスミン・トリンカ 、レイラ・ベクティ、ラファエル・ソンヌヴィル=キャビー、ラファエレ・エスポジト、ピエトロ・ラグーザ、アガト・ボニゼール、セバスティアン・プドゥル、ラウラ・ボレッリ、ナンシー・ヒューストン

子どもの権利のために闘う それが私の運命
20世紀初頭のイタリア・ローマ。マリア・モンテッソーリ(ジャスミン・トリンカ)は、ある「成功者」と出会う。フランスの有名なクルチザンヌ(高級娼婦)リリ・ダレンジ(レイラ・ベクティ)だ。リリは娘の学習障がいが明るみに出そうになったとき、自分の名声を守るためにパリから逃亡してきたのだった。マリアはこの時期すでに画期的な新しい教育法の基礎を築いていた。リリはマリアを通して、娘はただの障がいのある女の子ではなく、強い意志と才能を持った人として、ありのままの娘を知るようになる。マリアに共鳴したリリは、男性中心社会の中でもがくマリアの野望の実現に手を貸すのだが……。

モンテッソーリ教育の生みの親、マリア・モンテッソーリの劇的な人生。
ブルジョア社会の運命さえも変えた、強く知的なひとりの女性の物語。
Amazon創業者ジェフ・ベゾス、Google創業者ラリー・ペイジとセルゲイ・ブリン、シンガーソングライターのテイラー・スウィフト、将棋の藤井聡太などが受けたことでも注目されるモンテッソーリ教育。本作は、その生みの親であるマリア・モンテッソーリがメソッドを獲得し、1907年に「子どもの家」を開設するまでの苦悩に満ちた7年間を描いた物語。

レア・トドロフ(監督・脚本)
パリ、ウィーン、ベルリンで政治学を学び、その後ドキュメンタリー映画を主に活動してきたレア・トドロフ。2012年初のドキュメンタリー「Saving Humanity during Office Hours」を監督し、14年には「Russian Utopia」を共同監督。15年にジャンナ・グルジンスカ監督のオルタナティブ教育をテーマにしたドキュメンタリー「School Revolution: 1918-1939」の脚本を執筆。そして、遺伝性疾患を持って生まれた娘の誕生が本作制作への決定的な契機となった。本作が長編劇映画、初監督。

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SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2024 国際コンペティション部門で上映された折に登壇したレア・トドロフ監督


モンテッソーリという苗字が、独特の教育メソッドの名前として世界に広まりました。100年以上前の、まだまだ男尊女卑が横行していた時代に、シングルマザーの医師という立場で、後世に残る功績を残した女性の生き様。レア・トドロフ監督は、想像力を駆使して、マリア・モンテッソーリの敵的な人生を描き上げています。そこには、レア・トドロフ監督自身の障がいを持った娘の存在があったとのこと。どんな子どもであっても、生きる喜びを感じることができるような教育であってほしいと願います。(咲)

「シュタイナー教育」という名前は知っていたけど、「モンテッソーリ教育」という言葉は、この映画で初めて知りました。基本的な考え方は「子どもには生来、自立・発達していこうとする力があり、その力が発揮されるためには発達に見合った環境」が必要ということだそうです。そんな教育方法を100年以上前に、提唱したのが女性だったということが驚きでした。しかも、イタリア初の女性医師だったという。とはいえ、19世紀に、彼女の道を築いていった困難は相当だったでしょう。これはシスターフッドの映画でもある。それは今の時代にも女性に必要なこと。それは嬉しいことでもあり、残念なこと。ほんとの意味で女性が活躍できる時代がきてほしい(暁)。

2023年/フランス・イタリア/イタリア語・フランス語/99分/1:1.85/5.1ch
字幕:杉本あり
配給:オンリー・ハーツ
協力:国際モンテッソーリ協会(AMI)
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ
イタリア大使館/イタリア文化会館
公式サイト:http://maria.onlyhearts.co.jp/
★2025年3月28日(金)よりシネスイッチ銀座、シネ・リーブル池袋、UPLINK吉祥寺他にて全国順次公開
posted by sakiko at 09:16| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする