2026年01月11日

アグリーシスター 可愛いあの娘は醜いわたし(原題:Den stygge stesøsteren)

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監督・脚本:エミリア・ブリックフェルト
出演:リア・マイレン(エルヴィラ)、テア・ソフィー・ロック・ネス(アグネス)、アーネ・ダール・トルプ(母レベッカ)、フロー・ファゲーリ(妹アルマ)、イサーク・カムロート(ユリアン王子)

スウェランディア王国のユリアン王子は、淑女たちの憧れの存在。彼と結婚するために、彼女たちは日々努力を重ね、美しさに磨きをかける。
エルヴィラは、母レベッカの再婚のために妹アルマとこの王国へとやってきた。ほかの未婚の女性たち同様ユリアン王子の花嫁になることを夢見ながら・・・。 新しい家族となる義姉妹のアグネスは、家柄に恵まれただけでなくとても美しかった。それに引きかえエルヴィラは口元に矯正器具、こじんまりとした鼻、ふくよかな体形・・・それでも王子への思いは止まらない。
結婚したばかりの義父が急逝してしまい、内実は貧乏だったとわかる。母は遺されたアグネスをこき使い、実の娘のエルヴィラを王子の花嫁にすることに躍起になる。美しくなるためにエルヴィラは手術の痛みに耐え忍ぶ日々が続く。

誰もが知る童話「シンデレラ」を描いたボディホラー。昨年話題となったデミ・ムーアが主演した『サブスタンス』もこのジャンル。身体が苦痛とともに変容していき、自己も破壊されていく恐怖に引きずり込まれます。この作品の時代がいつかは明確ではありません。美容整形がそのころあったのかなかったのか?サド性格と思われる医師が嬉しそうに施す手術はアップです。いかにも痛そうで薄目で観てしまいました。
王子の花嫁になるのは童話の通り、そちらには夢破れた女性たちのその後は書かれていませんでした。エミリア・ブリックフェルト監督のストーリーは異母姉妹の側から描き、母の言いなりの娘の悲惨さも盛り込みました。整形が特別視されないこの頃、美への憧憬や執着はいつの世も変わらないのかもしれません。しかし「過ぎたるは及ばざるがごとし」ほどほどに。(白)


2025年/ノルウェー・デンマーク・ポーランド・スウェーデン合作/カラー/109分/R15+
配給:スターキャットアルバトロス・フィルム
(C)Mer Film / Lava Films / Zentropa Sweden / MOTOR / Film i Väst / Mediefondet Zefyr / EC1 Łódź 2025
https://uglysister.jp/
★2026年1月16日(金)全国ロードショー

posted by shiraishi at 17:00| Comment(0) | 北欧 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

万事快調 オール・グリーンズ

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監督・脚本:児山隆
原作:波木銅「万事快調〈オール・グリーンズ〉」(文春文庫)
主題歌:OCHAN
出演:南沙良(朴秀美)、出口夏希(矢口美流紅)、吉田美月喜(岩隈真子)、羽村仁成(藤木)、黒崎煌代(ジャッキー)、金子大地(佐藤)

田舎の工業高校に通う女子高生朴秀美は家にも学校にも居場所がない。鬱屈から抜け出せるのは、ラップをしている時だけ。矢口美流紅(やぐちみるく)は上位スクールカーストに属しているが、実は家庭に問題を抱えている。地元のラッパーの佐藤の家を訪ねた秀美は、豹変した佐藤から逃げ出すときにあるモノを手に入れた。金儲けにつながると判断した矢口と岩隈真子に声をかけた。一攫千金を狙い、こんな町から出ていくのだ!3人は園芸同好会「オール・グリーンズ」を結成し、岩隈の後輩藤木を仲間に引き込んで課外活動を始めた。

3人の女子高生が手を染める禁断の課外活動が何かは、HPでも伏字ですが、すぐに明らかになります。
原作は2021年の第28回松本清張賞を受賞しました。著者の波木銅氏は大学在学中の受賞で話題になり、作家デビューしました。HPから試し読みができます。社会問題がつまっているのでもっと重い話かと思えば、軽くて明るいスピーディな文章です。児山監督はエピソードや登場人物を整理して、会話を生かして2時間以内にまとめました。最近の子どもたちは話し言葉に男女差ないのね、と娘のいないおばちゃんは驚きました。
メインの個性的な3人は初顔合わせですが、女子高生のくっつき過ぎず、離れすぎず、友情が育っていくさまを生き生きと見せてくれています。(白)


2026年/日本/カラー/119分
配給:カルチュア・パブリッシャーズ
(C)2026「万事快調」製作委員会
https://www.culture-pub.jp/allgreens/
★2026年1月16日(金)全国ロードショー

posted by shiraishi at 15:46| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ダウントン・アビー/グランドフィナーレ(原題:Downton Abbey: The Grand Finale)

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監督:サイモン・カーティス
原作・脚本:ジュリアン・フェローズ
撮影:アンドリュー・ダン
音楽:
出演:ヒュー・ボネヴィル(ロバート・グローリー)、エリザベス・マクガバン(コーラ・グローリー)、ミシェル・ドッカリー(長女 メアリー・グローリー)、ローラ・カーマイケル(次女 イーディス・ベラム)、ポール・ジアマッティ(ハロルド・レビンソン)、アレッサンドロ・ニヴォ(ガス・サムブルック)、アーティ・フラウスハン(ノエル・カワード)
ジム・カーター(チャールズ・カーソン)、フィリス・ローガン(エルシー・カーソン)、ブエンダン・コイル(ジョン・ベイツ)、ジョアンヌ・フロガット(アンナ・ベイツ)、レスリー・ニコル(ベリル・パットモア)、ラケル・キャシディ(バクスター)、ソフィー・マクシュラ(デイジー)、マイケル・フォックス(アンディ)

1930 年、ロンドン。クローリー家とダウントン・アビーの使用人たちは、きらびやかな夏の社交シーズンを迎えていた。しかし、長女メアリー離婚のニュースが、新聞に掲載され社交界の知るところとなってしまった。離婚した女性に社会の目は厳しく、メアリーは舞踏会の最中にピータースフィールド家から締め出されてしまう。王族と離婚した女性の同席は許されない。
傷ついたメアリーの前に、アメリカから叔父のハロルドが現れる。ニューヨーク出身の財務アドバイザーだというサンブルックが同行していた。ハロルドがアメリカで投資に失敗し、自分と姉の分でもあった亡き母の遺産の大半を失い、彼に世話になったという。再投資の資金の相談に来たのだが、遺産が無くなったためダウントンも財政難に陥り、計画していた改修もできなくなった。ロンドンの別荘を売却する案には父のロバートが猛反対する。魅力的で如才ないサンブルックと親しくなるメアリーだったが。

世界的な大ヒットシリーズ第3弾。イギリス社交界の舞踏会、晩餐会など今やもう観ることのできない贅を尽くしたイベントに集まる人々、その悲喜こもごものドラマ、ファッションや会話を楽しみに観てきました。バイオレット伯爵夫人の人生が幕を下ろした第2弾に続き、本作ではほかの登場人物の人生をより掘り下げています。メアリーの離婚が発覚して社交界から締め出されてしまいますが、双方に理由があるでしょうに当時は女性だけがその責めを負わされたんですね(このころは女性に相続権さえなかった)。姉の窮地を救うべく目を見張るような活躍を見せるのが妹のイーディス。次女は強い!?
ダウントン・アビーの使用人たちも個性豊かで、それぞれが抱える悩みや将来への希望も描かれ、先へと続く道も示唆します。世代交代を前にした先輩たちの葛藤、若者たちの描く夢は貴族・平民に関わらず同等です。バイオレット伯爵夫人の肖像画は、輝かしいダウントン・アビーの歴史を守るように大広間に飾られていました。演じたマギー・スミスは第2作終了後、2024年9月に89歳で亡くなりました。長く愛されたシリーズの終幕を天国から見守っていたでしょうか。(白)


2025年/イギリス/カラー/シネスコ/124分/字幕翻訳:牧野琴子
配給:ギャガ
©2025 FOCUS FEATURES LLC.ALL RIGHTS RESERVEDl
https://gaga.ne.jp/downton_abbey_the_grand_finale/
★2026年1月16日(金)全国公開

posted by shiraishi at 13:50| Comment(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2026年01月07日

CROSSING 心の交差点  原題:Crossing

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© 2023 French Quarter Film AB, Adomeit Film ApS, Easy Riders Films, RMV Film AB, Sveriges Television AB

監督・脚本:レヴァン・アキン
出演:ムジア・アラブリ、ルーカス・カンカヴァ、デニズ・ドゥマンリ

静かに交わる、それぞれの道

出会いと別れが交錯する街、イスタンブール。言葉も世代も文化も越えて、心が重なり合う。

ジョージアで暮らす元教師のリアは、亡き姉から託された、長年行方のわからない娘テクラを探してほしいという願いを叶える為、黒海沿いの町バトゥミに手掛かりを探しにやってきた。テクラはトランスジェンダーで、今はトルコのイスタンブールにいるらしいとわかる。テクラを知るという青年アチから、自分の母親がイスタンブールにいるし、トルコ語も少し出来るから一緒に行くと言われる。イスタンブールに着き、偶然、トランスジェンダーの権利のために闘う弁護士エヴリムと出会い、彼女の助けも借りるが、テクラを見つけ出すのは想像以上に困難だった。
なぜテクラはジョージアを離れたのか。東西の文化が溶け合い異国情緒あふれるイスタンブールを舞台に、テクラを探す旅を通して、リア、アチ、エヴリム、3人の心の距離が、少しずつ近づいていく——。
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監督・脚本を手がけたのは、前作『ダンサー そして私たちは踊った』で、第92回アカデミー賞国際長編映画賞のスウェーデン代表に選出されるなど国際的に高い評価を受けた、レヴァン・アキン。言葉も世代も文化的背景も異なる人々が、ときにすれ違いながらも、互いを分かり合おうと寄り添う姿を静かにあたたかく描き出し、第74回ベルリン国際映画祭では、LGBTQ+をテーマにした作品に贈られるテディ賞の審査員特別賞を受賞。映画批評サイトRotten Tomatoesでは、批評家たちから97%という高い支持を得た。詩的な映像美と深い余韻が胸に残るロードムービー。

元教師のリアは、若い時にはそれなりに寄ってくる男もいたけれど独身を貫いたので、亡き姉の娘テクラは唯一の肉親。どうしても探し出したいという思いが胸に迫ります。
リアに通訳も兼ねて同行すると申し出た青年アチは、どうやら現状を変えたいという思いがあったようです。国境を越えトルコに入ったところで、アチがジョージアと変わらないとつぶやきます。同じ黒海沿い、国が変わったからといって、まだがらりと変わるわけではないのがわかります。黒海沿いに西に向かう道は、ジョージアにルーツを持つレヴァン・アキン監督にとって、馴染み深いところだそうです。
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私にとっては、アジアとヨーロッパの両方に位置する大好きなイスタンブールの町をたっぷり味わえる映画でした。なにより、ボスポラス海峡を行き来する様々な船が郷愁をそそります。船に物売りがいたり、伝統楽器サズを弾く少年がいたり、歴史ある町の雄大な景色を楽しみながらの短い船旅。
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冒頭、ジョージア語やトルコ語は、男女の区別のない、つまり性差のない言語だと掲げられます。なのに、どちらの国も、LGBTQの人たちにとっては暮らしにくいというのが皮肉。それでも、トルコではゼキ・ミュレンやビュレント・エルソイなど、男性でありながら女装の歌手が根強い人気を誇っていて、同性愛者がまったく拒否されているわけでもないのが興味深いです。特に、様々な文化が交差するイスタンブールは、いろいろな立場の人にとっての居場所でもあるのかもしれません。そんなことを思わせてくれた映画です。(咲)


2024年/スウェーデン・デンマーク・フランス・トルコ・ジョージア/ジョージア語・トルコ語・英語/106分/カラー/16:9/5.1ch
配給:ミモザフィルムズ
© 2023 French Quarter Film AB, Adomeit Film ApS, Easy Riders Films, RMV Film AB, Sveriges Television AB
公式サイト:https://mimosafilms.com/crossing/
★2026年1月9日(金)よりBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下、アップリンク吉祥寺ほか全国公開




posted by sakiko at 18:47| Comment(0) | トルコ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2026年01月06日

コート・スティーリング(原題:Caught Stealing)

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監督:ダーレン・アロノフスキー
原作・脚本:チャーリー・ヒューストン
キャスト:オースティン・バトラー(ハンク・トンプソン)、レジーナ・キング(ローマン刑事)、ゾーイ・クラヴィッツ(イヴォンヌ)、マット・スミス(ラス)、リーヴ・シュレイバー(リーブ)、ヴィンセント・ドノフリオ(シュムリー)、ベニート・マルティネス・オカシオ(コロラド)

1998年、ニューヨーク。バーテンダーのハンクは、かつてメジャーリーグのドラフト候補になるほどの有望株だったが、事故によって夢は消えてしまった。今は恋人のイヴォンヌにからかわれながら、ひいきの野球チームの応援に甘んじている。隣人のラスから不在の間、飼い猫バドの世話を頼まれ、しぶしぶ引き受けた。ラスが出かけたとたんに、いかにも危険な男たちが次々とやってきて、ハンクはボコボコにされてしまう。入院する羽目になって、ハンクはマフィアの大金がらみ事件に巻き込まれたと知る。恐怖にかられ警察に打ち明け、マフィアから逃げ続けていたが、ハンクの身近な人たちにも危害が及んできた。

主演した『エルヴィス』(2022)でのステージが今も目に浮かぶオースティン・バトラー、本作では不運なハンク役。敵は何者か?探しているのは何なのか?誰を信じたらいいのかわかりません。事件の全容が明らかになるまで、とにかくひどい目に遭い続けニューヨークを走り回ります。オースティン本人のスタントなしアクションにご注目を。ハラハラさせながら、あちこちに張られた伏線も気持ちよく回収されるので、もう一度観たくなります。

生粋のニューヨークっ子の監督は、90年代当時の街にこだわり、すでになくなったスポットをデジタルで復元しています。ドキュメンタリーで観た「キムズビデオ」の看板はハンクが走る背景にあり、すぐに気がつきました。野球選手を目指していたハンクなので、ママとの合言葉も、気になるものも野球がらみ。
タイトルの「コート・スティーリング(Caught Stealing)」とはスチール(盗塁)をキャッチされて失敗するという野球用語。一般的には「チャンスをつかみ損ねる」ことをいうそうです。ハンクは自分の運命を嘆いていましたが、自分がしでかしたこととその結果に遅まきながら気づきます。さて絶体絶命から逆転していけるのか、ハラハラしながら見守ってください。連れまわされる猫のバドは、キーパーソンならぬキーキャットです。幸福・金運を招く猫となるでしょうか。(白)


2025年/アメリカ/カラー/107分
配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
https://caught-stealing.jp/
★2026年1月9日(金)全国ロードショー
posted by shiraishi at 22:43| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする