2019年11月29日

気候戦士 クライメート・ウォーリアーズ  原題: Climate Warriors

kikoosensi.jpg

監督:カール-A・フェヒナー(『第4の革命』)
共同監督:ニコライ・ニーマン
制作:フェヒナー・メディア

産業革命以後、温暖化効果ガスの増大で気温が上昇し、地球環境の汚染が続いている。
本作は、気候変動の要因を阻止しようとする気候活動家たちの挑戦に密着したドキュメンタリー。

カリフォルニア州知事時代に温暖化効果ガスは汚染物質だと認めさせるために米国政府機関を提訴したアーノルド・シュワルツェネッガー。
17歳の先住民でヒップホップ・アーティストのシューテスカット・マルティネス。人類の生存を揺るがす喫緊の課題に立ち向かう若手の気候活動リーダーだ。
元イラン難民のアミール・ロガニ。Vispiron社の創業者で、再生可能エネルギーが平和な世界への鍵だとウクライナで活動している。
その他、バーニー・サンダースなどの政治家、グラミン銀行の資金を利用して太陽光エネルギーに挑戦するバングラデシュの女性たちなどが登場する。

自転車で颯爽と登場するシュワちゃん。大きな国際会議で、脱炭素と草の根運動の重要性を語る姿がカッコいい。一方、地球温暖化はないとして、気候変動抑制に関するパリ協定からの脱退を宣言し、石炭復活策を進めるドナルド・トランプ大統領。吠える姿が醜悪だ。
本作は、各地の「気候戦士」の活動する姿を見せながら、一人一人が出来ることを模索すれば大きな力になることを訴えている。
再生可能エネルギーへの転換で、気候変動の危機を回避しようという趣旨は素晴らしいけれど、太陽光にしても風力発電にしても、かさばる器具はいずれ廃棄処分すべきゴミになることも考えないといけない。
電気やガス、様々な交通機関など、普段当たり前のように享受しているものが、気候変動にどれほど影響しているのか、立ち止まって考えてみたくなった。そして、私に出来ることは?(咲)

DSCF2472 kikoo.JPG
カール -A.・フェヒナー監督が公開を前に来日。
11月21日(木)に日比谷図書文化館 日比谷コンベンションホールで行われたジャパン・プレミアに参加してきました。
DSCF2475 kikoo.JPG
上映前後フェヒナー監督が登壇。
10年以上ドイツの軍人を務めた後、平和と環境問題を解決するために活動してきたことを熱く語りました。
「気候変動は確実に起こっている現実。どう力を合わせれば解決できるのか、個人と社会の問題。この映画は、私からの招待状。心と頭をオープンにして考えてほしい」と訴えました。

2018年/ドイツ/86分
配給:ユナイテッドピープル
公式サイト:http://unitedpeople.jp/climate
★2019年11月29日(金) ヒューマントラストシネマ渋谷他全国公開




posted by sakiko at 09:32| Comment(0) | ドイツ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年11月28日

私のちいさなお葬式(原題:Karp otmorozhennyy)

watasino.jpg

監督:ウラジーミル・コット
脚本:ドミトリー・ランチヒン
出演:マリーナ・ネヨーロワ(エレーナ)、アリーサ・フレインドリフ(リューダ)、エヴゲーニー・ミローノフ(オレク)、ナタリア・スルコワ(役所の女性)、セルゲイ・プスケパリス(検死医)

ロシアの小さな村に住む73才のエレーナ。夫に先立たれて息子を育て、教職を定年まで務めあげた。今は年金でつつましくも充実した毎日を送っている。自慢の息子は都会で暮らし、5年に1度しか帰ってこない。エレーナは病院の検査で、もと教え子の医師に心電図を見せられ「いつ心臓が止まってもおかしくない」と言われてしまう。余命はわずか。
あまりに突然で現実味がないエレーナだったが、ある日自宅で倒れてしまった。見舞いに来た息子は忙しそうで、ほんとのことなど言えない。今から自分の葬式の準備をしておこうと心に決める。忙しい息子の手を煩わさないように、死ぬまでにしなければならないことを書き出していく。気に入りのドレスを着て自分で選んだ棺桶に入る。仲の良い友達がお葬式に来たら、大好きな曲をかけ、思い出話をしながら美味しい料理を食べてもらう。それがエレーナの望み。

ロシア発、ベテラン俳優たちがおりなす人情コメディ。主演のマリーナ・ネヨーロワは本作で初めて観ました。日本公開作が全然ないのですが、ロシアでは知らない人がいない名女優だそうです。シミひとつない美しい元先生役。エレーナは完璧かとおもいきや、一人息子を愛するあまり恋路の邪魔をした過去があります。隣人のリューダを演じるアリーサ・フレインドリフは『ボリショイ・バレエ 2人のスワン』(2017)での厳しい講師役でした。エレーナの親友で一人住まいの彼女を支えます。リューダの孫パーシャはいまどきの若者ですが、自分の祖母には悪態をついてもエレーナの買い物を手伝う優しい一面もあります。まさに「遠い親戚より近くの他人です。
エレーナのお気に入り曲は、日本の双子デュオ、ザ・ピーナッツが歌った「恋のバカンス」(1963)でした。ロシアでもヒットしたそうです。誰にもやってくる老いと死を、前向きに受け入れるエレーナと周りの人々を描いて第39回モスクワ国際映画祭観客賞に輝きました。(白)


2017年/ロシア/カラー/シネスコ/100分
配給:エスパース・サロウ
(C)000≪KinoKlaster≫,2017r.
http://osoushiki.espace-sarou.com/
★2019年12月6日(金)シネスイッチ銀座ほか全国順次公開
posted by shiraishi at 23:23| Comment(0) | ロシア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

幸福路のチー  原題:幸福路上 On Happiness Road

koufukuro.jpg

監督・脚本:ソン・シンイン

声の出演:グイ・ルンメイ、ウェイ・ダーション
主題歌:「幸福路上/On Happiness Road」歌:ジョリン・ツァイ

アメリカで暮らすリン・スー・チー。祖母が亡くなったとの知らせを受け、台北郊外の幸福路の実家に帰ってくる。久しぶりの幸福路は、大きく変貌を遂げていた。
チーは、幸福路で過ごした日々を振り返る。
小学生の時に友達になった金髪で青い目のチャン・ベティや、腕白坊主のシュー・シェン・エン。3人は一緒に木登りしたり、屋根の上で歌ったり、毎日が冒険だった。しばらくして、ベティは引っ越してしまう。
やがて、大学受験。医者になってほしいという両親の期待を裏切って文系に進み、卒業後は新聞記者として働く。シェン・エンと再会するが、99年の大地震で彼は亡くなってしまう。チーはいとこを頼ってアメリカに渡り、そこで出会ったトニーと結婚。幸せな日々を送っていたけれど、故郷に帰ってきた今、離婚を考え始めている・・・

ソン・シンイン監督は、2008年、アメリカで通っていた映画学校コロンビア・カレッジ・シカゴで、先生から「自分の体験を書いてみなさい」と言われる。当時、流行っていたイランのマルジャン・サトラピ監督の『ペルセポリス』に触発され、政治と社会情勢の変化の影響を受けた物語なら私にもあると綴ったのが本作。物語の半分に自身が投影されているという。
1974年生まれの監督は、蒋介石の教育政策で育ち、台湾語の使用を禁止され、「(台湾にいる)中国人」であるという意識を植え付けられた。
監督の祖母はアミ族。学校で原住民族は野蛮人と教えられ、祖母のことが嫌いだったそうだ。劇中の「チーには、アミ族の血が4分の1流れている」という言葉は、亡き祖母に伝えたいお詫びの気持ち。
少女の頃は、独裁政権下で多くの台湾人が政治犯として投獄された白色テロが続いていた時代。1987年に、38年にも及ぶ戒厳令がようやく解除され、その後は高度成長時代を迎える。

実写よりアニメーションで描こうと決めた監督は、台湾にアニメーション産業が育ってないことから、自身でスタジオを立ちあげている。
台湾の現代史を背景に一人の女性の成長を描いた、どこか懐かしい香りのするアニメーション。
高校の同級生に、当時台北市長に当選したばかりの陳水扁(後の台湾総統)の娘がいて、医学部志望でいかにもがり勉タイプなのに、「アンディ・ラウのドラマが好き」という場面があって、思わず笑ってしまった。監督のほんとの同級生のほんとの話? (咲)


東京アニメアワードフェスティバル2018 長編グランプリ
第55回電影金馬奨 最優秀アニメーション映画賞

2017年/台湾/111分/中国語/1.85:1
協力:台北駐日経済文化代表処 台湾文化センター
配給:クレストインターナショナル
公式サイト:http://onhappinessroad.net/
★2019年11月29日(金)より新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開





posted by sakiko at 22:09| Comment(0) | 台湾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ジョン・デロリアン 原題:Driven

IMG_0349.JPG

監督:ニック・ハム
脚本:コリン・ベイトマン
撮影:カール・ウォルター・リンデンローブ
出演:リー・ペイス、ジェイソン・サダイキス、ジュディ・グリア、コリー・ストール

1977年のアメリカ・南カリフォルニア。麻薬密売に手を出してFBIに拘束されたパイロットのジム・ホフマン(ジェイソン・サダイキス)は、無罪にしてもらう代わりに情報提供者になる。彼は引っ越し先の隣人がゼネラルモーターズでポンティアック・GTOの開発に関わった自動車エンジニアのジョン・デロリアン(リー・ペイス)だと知る。ジムは、大きな家で家族と暮らし、自ら会社を設立してデロリアンを開発するジョンに憧れていた。

『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を観た人であれば忘れ難きタイムマシン車「デロリアン」!あの威容を誇るデザイン、目に焼き付いて離れない強烈な存在感を放つDMCー12という車は、誰が、いつ、どのように創造したのか…。
開発者であるジョン・デロリアンの半生を描くと思いきや、映画は1977年・米国南カリフォルニアの滑走路から始まる。この麻薬密売パイロットとFBIが、ジョン・デロリアンの人生に深く関わりを持つことになる。

陽光燦々たるカリフォルニアの高級住宅街、プール付きの豪壮な邸宅、連夜繰り広げられる派手なパーティに集うセレブな人々、家々にはガソリンを喰い、撒き散らす大型高級車が居並ぶ。ジョン・デロリアンが開発し、大ヒットしたポンティアックなどの高級車は’70年代米国を象徴する存在だったのだ。

40歳の若さでGMのゼネラルマネージャーとなり、天才的な発想と先見性に基く技術的知見、企画プレゼン力に優れ、成功者として時代の寵児となったジョン・デロリアン。独立した彼には経営者としての才覚に欠けたため、危うい資金調達に依存するようになる…。

撮影には本物のデロリアンが30台以上使われたという。排ガス規制の厳しい現代では二度と得られない創造物。ビンテージカーの美しさ。アメ車好きには堪らない垂涎場面の連続だろう。(幸)


2018年製作/113分/PG12/アメリカ
配給:ツイン
(C) Driven Film Productions 2018
公式サイト:http://delorean-movie.jp/
★2019年12月7日(土)より全国公開★
posted by yukie at 13:32| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年11月24日

「東京ドキュメンタリー映画祭」コンペ3作品

11月30日(土)~12月6日(金)新宿ケイズシネマにて「東京ドキュメンタリー映画祭」が開催されます。
シネジャブログでの告知はこちら
公式HP http://tdff-neoneo.com/

先に観ることのできた3本をご紹介します。各作品1回のみの上映です。(白)

◆長編
『空と、木の実と。』 常井美幸 2019年/84分
11月30日(土)14:00〜上映

sora.jpg

小林空雅(たかまさ)さんは女性の身体に違和感があり、思春期には嫌悪するまでになった。20才の誕生日を迎えてすぐ、国内では最年少で性別適合手術を受けた。女性から男性になって、名前も変えた。
世界最高齢で、男性から女性へ性別変更した90歳のチェリストの八代みゆきさんは、元妻と養子縁組をして、今も仲良く暮らしている。
小林さんは手術後、無性のXジェンダーの人と出会い、男性か女性か選ばなくてもいいのだと気付く。

これまでいろいろな立場の方々の映画を観てきましたが、この映画を観て性別というのは思っていたより、ずっとあいまいなものだと知りました。身体と心が一致していないことがとても苦しいこと、手術をしても揺らぐものだということも。手術後、はればれとして将来の夢を語っていた小林さんが、さまざまな出会いを通して迷いながら、ほんとの自分と向き合い続ける姿にうるうるしました。タイトルは小林さんの名前から。(白)

『戦後中国残留婦人考 問縁・愛縁』王乃真 /2019年/135分
12月3日(火)10:00〜上映

zanryu.jpg

1930年代から国策として満州(現在の中国東北部)に多くの開拓民が送られた。広大な満州へ夢を求めて日本各地から約27万人が渡っていく。しかし、終戦後引き揚げもかなわず、中国に残って生き続けた人々がいた。「中国残留婦人」(13歳以上で自分の意志で中国に残ったとされる)と呼ばれる女性たちを、北京電影学院の留学生小林知恵さんが訪ねていく。長い交流のうち「おばあちゃん」と孫のような間柄になる。制作に6年以上を費やし、国策に翻弄された彼女たちの記憶と思いを丁寧に綴る。

高齢の残留婦人たちの元気な姿を映像に残して下さったことに、まず感謝しました。自分の意志で残ったとされていますが、関東軍は開拓民を見捨てて帰国、ソ連軍が侵攻して逃げ惑った人たちです。親とはぐれたり、死別したり、帰国の手立ても費用もなかった人たちです。幼い子はもらわれて行き、ある程度大きい女子は結婚するより生きるすべがありませんでした。
どの方も辛い時代を乗り越えてきましたが、現地の男性の第2夫人として嫁ぎ「中国の人は優しかった、恩人です」と懐かしみ、子どもや孫に囲まれているきみさんが印象に残りました。
中国との国交が回復したのは1972年、日本に帰国する目途がなくても日本語を忘れなかった方々。その心持ちを想像すると切ないです。
今戦後74年、日本が戦争していたことも知らない若い人や子どもたちがいるそうです。古代の歴史より近代・現代史を教えるのをぜひ先に。歴史の生き証人だった私の親たちの世代は少しずつ彼岸へ行き、もっと話を聞いておくのだったと後悔しきりです。(白)


◆短編4 21世紀の難民たち
12月2日(月)16:00〜上映
『ビニールハウスは家じゃない(This is not a house)』
セ・アル・マムン、ジョン・ソヒ/2018年/53分

biniru (2).jpg

2018年現在、韓国で働く外国からの移住労働者は約100万人。若者が嫌う3K職業を担い、今や韓国の基幹産業を支えている彼ら。にもかかわらず、家賃を給与から天引きされたうえ、その居住空間は劣悪。コンテナやビニールハウス、倉庫など、冬は寒く夏は暑い。移住労働者の声を聞き、彼らを支援する移住労働者支援センターの活動家、弁護士のインタビューなどを通して、社会がどうやって彼らを搾取し、人間以下の扱いをしているのか、実態を探る。

これは日本に先んじて外国人労働者を積極的に受け入れ、今社会問題となっている韓国の実態です。韓国語を勉強し、渡航費用を工面してやっと仕事にありついた人たちを待っていたのは、家などと呼べないビニールハウスや倉庫の寮でした。トイレは外、浴室はなく、お湯の出ないシャワーだけ。バケツの水にヒーターを入れて感電におびえながら温めています。
セクハラ、パワハラも横行して、写真の女性たちは支援センターに「転職したい」と助けを求め、”社長に見つからないように”荷物を取りに来たところです。不払いの給料を請求してものらりくらりとかわされ、泣き寝入りしている人はどれほどいることか。
なぜか改悪されてしまった法律に憤懣やる方ない弁護士、「力になれなくてできるのは慰めることだけ」と涙ぐむ支援センターの係員。唖然としつつ、日本は果たしてどうなっているのか、すでに同じ轍を踏んでいないか、答えられない自分に気づきました。(白)


併映『かぞくの証明』岩崎祐/2019年/34分
posted by shiraishi at 18:51| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする