2023年11月26日

ポッド・ジェネレーション(原題:The Pod Generation)

pod.jpg

監督・脚本:ソフィー・バーセス
撮影:アンドリー・パレーク
編集:ロン・パテイン
音楽:エフゲニー・ガルペリン&サーシャ・ガルペリン
出演:エミリア・クラーク(レイチェル)、キウェテル・イジョフォー(アルヴィー)、ロザリー・クレイグ(リンダ)

近未来のニューヨーク。AI(人口知能)が発達し、日常生活が劇的に変わっている時代。レイチェルはハイテク企業に勤務、有能な彼女は出産のために最新テクノロジーを使うことを考える。希望者が多いために早めに《ポッド妊娠》を予約した。受精卵を卵型のポッドで育て、女性に妊娠出産の負担がないようにできる装置だ。植物学者で何事も自然のままを好む夫アルヴィーには言えないままだったが。
そしてある日「空き」ができたと連絡が入る。レイチェルはアルヴィーにやっと打ち明けるが、案の定大反対される。しかしセラピーを一緒に受けたり、ポッドの大企業ペガサス社に出かけたりするうち、折れてくれた。受精の瞬間をスクリーンで観た二人は、ポッドで育つわが子に心奪われていく。

主演のエミリア・クラークが制作にもあたっています。女性が担ってきた妊娠・出産を身体から離して実行できる世界、そう遠くないのかもしれません。人間とAI、自然と人工、生命が生まれることなど、いろいろ考える種の多い作品でした、
レイチェルが働く会社では、個人個人がデスクに向かい、足元は動くベルト(お散歩マシーン)です。デスクには目玉型のアシスタントとコンピュータ、レイチェルは画面を見つめてキーボードを操作しています。帰りには自然を満喫できるスペース(なぜか螺旋階段を上る)に立ち寄って人工の自然の中でリラックスします。ほんとの自然は限られた場所に残されているだけのようです。
効率を重んじる世界で、夫アルヴィーは非効率でも本物の自然を体感することを、学生に伝えようと心を砕きます。ポッド妊娠に反対していた彼が、胎児のシルエットを見てから俄然育児に熱心になるのが、ほほえましいです。二人がポッドで育成中にあちこち持って歩くので、「落としたら大変、もっと安全におけるところはないの」とまさに老婆心を起こしました。
*AIのカウンセラーが大きな目玉なので、いくら周りが花々で飾られていようが、向き合うのは遠慮したいです。信頼できそうな風貌の人間型がいいのに、なぜAIが目玉型なのか監督に聞いてみたいものです。アシスタントの形で「ゲゲゲの鬼太郎」ファン?と思っちゃいました。(白)


2022年/ルギー・フランス・イギリス合作/カラー/シネスコ/110分
配給:パルコ
(C)2023 YZE – SCOPE PICTURES – POD GENERATION
https://pod-generation.jp/
★2023年12月1日(金)ロードショー

posted by shiraishi at 13:50| Comment(0) | ベルギー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

スイッチ 人生最高の贈り物(原題:Switch 스위치)

swich.jpg

監督:マ・デユン
出演:クォン・サンウ(パク・ガン)、オ・ジョンセ(チョ・ユン)、イ・ミンジョン(スヒョン)、パク・ソイ(ロヒ)、キム・ジュン(ロハ)

トップスター俳優のパク・ガンは出演オファーが絶えず、主演映画も大ヒット。若手女優と一夜限りの情事を楽しみスキャンダルにも物おじしない、セレブなシングルライフを満喫する彼だが、実はクリスマスイブの予定は年末の授賞式だけ。イブの夜、唯一の友でマネージャーのチョ・ユンと飲んでタクシーに乗り込んだ。運転手に「もし人生を選び直せるならどうするか?」と奇妙な事を尋ねられた。
翌朝、見慣れぬ家で目が覚めた。ここはどこ?パパ~とやってきた子どもたちに驚くと、ママは元恋人だったスヒョン!ガンが成功するために彼女とは別れたはず。なぜ?があふれ出してくるが二日酔いの頭が回らない。自分は落ち目の劇団俳優で、スヒョンと結婚しこの双子の父らしい。そしてマネージャーだったチョ・ユンが実力派俳優になっていた!入れ替わってしまったのか!?

タイムスリップものと同じくらい入れ替わりものも面白いですよね。こちらご期待を。すっかりベテラン俳優になった元祖モムチャン(肉体美)のクォン・サンウ。若いころに多かったアクション映画ばかりでなく、ロマンス、ファミリー、バディものとなんでもできるスターになりました。この作品では、成功して何もかも手にしたトップスターの前半と、思いがけずスイッチ(入れ替わり)して裏方のマネージャーになった後半、二つの役をオ・ジョンセと共に演じています。
お互いに知っているようでよく知らなかった相手を、入れ替わったことでよ~く知ることになります。そして自分が何かを得たかわりに失ったもの、上を目指しているうちに捨ててきたものに気づいていきます。その微妙な変化にご注目を。奥さんのスヒョンと可愛い子どもたちとの家庭はいったいどうなるの~?!(白)


誰しも、人生を振り返って、あの時、別の選択をしていたら、今どんな暮らしをしているのだろう・・・と思うことがあると思います。この映画のように、別の人生を覗いてみることが出来たなら? 人生、やり直しがきかないのが残念です。タクシー運転手が、寂しいクリスマスイブを過ごしているパク・ガンにくれた人生を考え直しさせてくれる素敵なプレゼント。 タクシー運転手を演じているユ・ジェミョン、よくお顔をみるベテラン俳優。憂いを感じさせてくれる運転手自身の人生も気になります。 
パク・ガンと入れ替わり、トップスターになっているチョ・ユンを演じたオ・ジョンセは、現在アジアドラマティックチャンネルで放映中のドラマ「アンクル ~僕の最高のおじさん~」で主役を務めていて、どこかで見た顔と思っていたのですが、今回調べてみたらずいぶん前から脇役で活躍していた芸達者な方でした。 
パク・ガンとチョ・ユンの会話の中で、「いい作品があるが、イ・ビョンホンが狙ってる」とありました。パク・ガンの初恋の人スヒョンを演じたイ・ミンジョンがイ・ビョンホンの奥様なのを意識した台詞?と思わず笑ってしまいました。
クリスマスに大事な人と一緒に観るのにお薦めの映画です。(咲)



2023年/韓国/カラー/ビスタ/112分
配給:ツイン
© 2023 LOTTE ENTERTAINMENT & HIVE MEDIA CORP. All Rights Reserved.
Twitter: @movietwin2
公式サイト:sangwoo-movie.com
★2023年12月1日(金)シネマート新宿、心斎橋ほか全国順次ロードショー
posted by shiraishi at 13:45| Comment(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

バッド・デイ・ドライブ(原題:Retribution)

bad day.jpg

監督:ニムロッド・アーントル
脚本:クリストファー・サルマンプール
出演:リーアム・ニーソン(マット・ターナー)、ノーマ・ドゥメズウェニ、リリー・アスペル、ジャック・チャンピオン、エンベス・デイヴィッツ。マシュー・モディーン

ベルリンのある朝。金融関係のビジネスマンのマットは仕事人間。それでも子どもたちを学校に送り届けるために車のドアを開けた。子どもたちと乗り込んで走り始めたとたん、携帯に着信がある。知らない男の声が「車に爆弾をしかけた。降りると作動する。これから指示に従わないと爆破する」と告げられる。驚いて座席の下を確認すると爆破装置のようなものが見えた。犯人は何者で、何が狙いなのかわからないままマットは車を止めることなく走り続ける。マットの様子に子どもたちもおびえ、犯人はマットに確認させるかのように、同僚の乗った車を予告のうえ、爆破した。

子ども2人と爆弾をのせたまま、ベルリンの街を走り続けるマット。愛がは事件とリアルタイムで進行します。リーアム・ニーソンは子どもを守って戦う父親役が多かった気がしますが、今回は車から降りられずなかなかアクションを起こせません。
その上、妻が離婚の相談に出かけていることを知らされます。
オリジナル脚本はアルベルト・マリーニ。2015年のスペイン映画『暴走車 ランナウェイ・カー』をリメイクしています。ほかにドイツ版『タイムリミット 見知らぬ影』、韓国版『ハード・ヒット 発信制限』がありますが、特にサスペンスものはストーリーがわかると面白さが減ってしまうので、極力情報を入れずに観るのをおすすめします。私は韓国版を観ていますので、ドキドキするより同じところや違うところを探したり比べたりをしていました。それもまた一つの楽しみ方ではあります。(白)


2023年/イギリス・アメリカ・フランス合作/カラー/91分G
配給:キノフィルムズ
(C)2022 STUDIOCANAL SAS - TF1 FILMS PRODUCTION SAS, ALL RIGHTS RESERVED.
https://bdd-movie.jp/
★2023年12月1日(金)絶・対・着席
posted by shiraishi at 13:27| Comment(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

父は憶えている   原題:Esimde  英題:This is What I Remember

chichiwa.jpg
(C)Kyrgyzfilm, Oy Art, Bitters End, Volya Films, Mandra Films

監督・脚本:アクタン・アリム・クバト
出演:アクタン・アリム・クバト、ミルラン・アブディカリコフ、タアライカン・アバゾヴァ

キルギスの村。クバトは、ロシアに出稼ぎに行き20年間行方不明になっていた父ザールクを見つけて連れ帰る。父はロシアにいる間に記憶を失っていた。母ウムスナイは夫が亡くなったと思って、村の有力者の男と再婚している。同級生たちが歓迎の宴を開くが、クバトはその座につかず掃除ばかりしている。クバトは父を村のあちこちに連れていくが、記憶は戻らない・・・

同級生たちは、自分たちのことを忘れてるのを寂しく思いながらも、クバトのお蔭で村が綺麗になっていいな等と話していて、思わず笑ってしまいます。それでも皆、妻が再婚していることを心配しています。
ウムスナイの再婚相手ジャイチは離婚に応じる気は全くありません。モスクの導師に相談にいくと、夫が「タラーク(離婚)」を3回言わないと離婚は成立しないと言われます。悩むウムスナイに、モスクの管理人のナジムバイは、「自分の心のままにした方がいい」と優しく声をかけます。
アクタン・アリム・クバト監督は、以前の作品でも、イスラームの教義を厳しく守る人たちを登場させていて、地域の伝統を守りながら信仰心を持つ人との対比を描いています。

2022年の東京国際映画祭で『This Is What I Remember(英題)』のタイトルで上映された折のQ&Aで、クバト監督は、「私の経験したイスラームは、地元の伝統に結び付いていました。現代のイスラームは暴力的になって、伝統と食い違うことが多いように感じます。伝統を大事にしたい人たちは、イスラームを信じているのですが、心の一部には、伝統的なテングクの気持ちが残っています。私自身、信仰に反対ではなくて、アラビア風のイスラームには抵抗を感じています。その考えを主人公の一人である女性を通じて表そうと思いました」と語っています。
DSCF5112.jpg
東京国際映画祭 キルギス『This Is What I Remember(英題)』アクタン・アリム・クバト監督Q&A報告 (咲)

イスラームでは、女性からも離婚するkhulu'(フルウ、本作の字幕ではクル)という方法がありますが、妻側が夫から貰っている婚資相当額を返還する必要があるとのこと。ウムスナイが何度か「私からクルするしかない」と口にしています。
ザールクが、林の木の幹に一生懸命白いペンキを塗っているのですが、この林はウムスナイと若い頃によく一緒に歩いていたところ。二人はまた仲良くこの林を歩くことができるのでしょうか・・・ (咲)


クバトはロシアに出稼ぎに行ったまま23年も行方不明になっていた父ザールクをみつけて連れ帰たものの、父はロシアにいる間に記憶を失ない自分のこともわからない。ザールクの妻ウムスナイは夫が亡くなったと思って村の有力者と再婚してしまっている。クバトは父を村のあちこちに連れていくが記憶は戻らない。どこの国でも起こりうる事を描いているが、妻の混乱と迷い、決断が一番印象に思った。イスラム圏では妻からの離婚申し出が認められないのかと思っていたけど、この映画では妻からも可能ということも描かれていた。それはやはりキルギスだから?
でも、道師はウムスナイが相談に行った時、彼女に対して、女性からも離婚を言い出せるとは言っていない。門番?の方がそれを伝える。
最後、ザールクとウムスナイがよく歩いていたというところに、ウムスナイの歌が流れ、一瞬、顔を向けるザールク。
監督自身がザールクを演じ、息子役は監督の実の息子だという。クバト監督は一言も言葉を発しないけど、ゴミをひろい歩いたりして、とぼけた演技が見もの(暁)。


2022年/キルギス・日本・オランダ・フランス/カラー/1:1.85/105分/キルギス語・アラビア語・英語
配給:ビターズ・エンド
公式サイト:https://www.bitters.co.jp/oboeteiru/
★2023年12月1日(金)より、新宿武蔵野館ほか全国順次公開
posted by sakiko at 13:02| Comment(0) | キルギス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年11月24日

マイ・ファミリー 自閉症の僕のひとり立ち(原題:Kees vliegt uit)

my family.jpg

監督・脚本:モニーク・ノルテ
出演:ケース・モンマ、ヘンリエッテ・モンマ、ヴィレム・モンマ、ヤスパー・モンマ

42歳のケース・モンマは自閉症。これまで実家の庭に建てた離れに住み、両親のサポートの元で暮らしてきました。”半分自立”している彼ですが、高齢になった両親はいつかは先に逝ってしまう。ケースは”本当に自立”するために、一人暮らしをすることにしました。ケースは緻密な絵を描いたり、模型を作ったりするのが得意で、生業としています。
ケースがいやなことをあげている場面があります。音に敏感なこと、コントロールできない天候にいらだつこと、イエスかノーかをはっきりしてほしいこと。「フムフム」というあいまいな相槌に困ること。とても繊細なので常に不安の種があります。
母がいることでなりたってきたケースの暮らし、ケースを最優先に生きてきた母、この二人が分かれて暮らすことはできるのでしょうか。

8年間の日々を切り取ったドキュメンタリーです。モニーク・ノルテ監督は1997年にケースに出会って以来、26年間にわたって交友関係を続け、ケースと両親を撮影してきました。前作『ケースのためにできること』(2014)は、本国オランダではのべ450万人が見て、自閉症を知ることに貢献しています。日本では”EUフィルムデーズ2020”で上映されました。今年の”EUフィルムデーズ2023”では本作が『ケースのはばたく日』というタイトルで上映されています。
50代の子どもが80代の親を看るのでなく、モンマ家では逆です。経済的に余裕のあるお宅なのが何よりですが、両親の老いは進んでいきますし先に何があるかは予想もつきません。子どもを残していく親の気持ちになってしまいました。(白)


2022年/オランダ/カラー/83分/ドキュメンタリー
配給:パンドラ
(C)Doclines
http://www.pan-dora.co.jp/myfamily/
★2023年11月25日(土)~12月8日(金)新宿 K’s cinemaにて公開
posted by shiraishi at 17:05| Comment(0) | オランダ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする