2019年08月09日

サマー・オブ・84(SUMMER OF 84)

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サマー・オブ・84(原題:SUMMER OF 84)
監督:フランソワ・シマール 、アヌーク・ウィッセル、ヨアン=カール・ウィッセル
出演:グレアム・ヴァーシェール(デイビー・アームストロング)、ジュダ・ルイス(トミー・‘イーツ’・イートン)、ケイレブ・エメリー(デール・‘ウッディ’・ウッドワース)、コリー・グルーター=アンドリュー(カーティス・ファラデイ)

1984年夏。オレゴン州のイプスウィッチ。静かな郊外の住宅地に住む15歳の少年デイビーは、幽霊や猟奇的犯罪の記事収集が趣味だった。このところ近隣の町で同年代の子どもたちばかりが犠牲となる連続殺人事件が発生している。デイビーは向いの住人、マッキーが犯人ではないかと思いこむ。マッキーは警官だけれど、怪しすぎるのだ。親友のイーツ、ウッディ、ファラディを呼び出し、自分たちだけで証拠をつかもうと捜査を始めるのだが…。

もしも連続殺人鬼があなたの隣人だったら?「連続殺人鬼も誰かの隣人だ。人は決して本性を見せない。郊外でこそイカれたことが起こる」というデイビーの声で映画が始まります。80年代の名作『E.T.』『グーニーズ』『スタンド・バイ・ミー』『13日の金曜日』『エルム街の悪夢』などに夢中になった青少年が、熱いオマージュをささげて作ったというのが観てとれます。4人組は前述の少年たちやドラえもんを思い出させる組み合わせ。監督を務めたのはROADKILL SUPERSTARS(RKSS)というユニット名の3人。短編が多かったようで、他の作品を観ていません。
インターネットも携帯もない時代、子どもたちはもっと近所を出歩き、大人たちを観察していたはず。創造と想像も今よりももっとたくましく拡げていたはずです。この映画のように。通信手段はウォーキー・トーキー(携帯型トランシーバー)です。我が家にもオモチャがありました。
男の子ばかりのあぶなっかしい冒険譚に、近所の少し年上のお姉さんが加わり、ちょっぴり甘酸っぱい感情も織り交ぜています。好奇心が先走った無茶な行動は観ていてハラハラします。大人としては、得体のしれない殺人犯を追うのは無理~!やめて!と言いたくなるのですが、疑惑の相手が警官では警察署に持ち込むわけにもいきません。ストーリーは容赦なく進んでいき…もう子どもには戻れないことを知るのでした。(白)


2017年/カナダ/カラー/106分
配給:ブロードウェイ
2017(c)Gunpowder & Sky,LLC
https://summer84.net-broadway.com/

★2019年8月3日(土)より、新宿シネマカリテほか全国順次ロードショー
posted by shiraishi at 01:05| Comment(0) | カナダ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年08月08日

永遠に僕のもの 原題:EL ANGEL

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監督:ルイス・オルデガ
プロデュース:ペドロ・アルモドバル、アグスティン・アルモドバル、ハビエル・ブリア
出演:ロレンソ・フェロ、チノ・ダリン、ダニエル・ファネゴ、セシリア・ロス

1971年のアルゼンチン・ブエノスアイレス。美しい少年カルリートス(ロレンソ・フェロ)は幼いころから他人のものを手に入れたがる性分で、思春期を迎え窃盗が自分の天職だと悟る。新しい学校で出会ったラモン(チノ・ダリン)と意気投合したカルリートスは、二人でさまざまな犯罪に手を染め、やがて殺人を犯す。

映画の冒頭、煙草を加えた高校生、主人公カルリートスの窃盗行動を観るだけで、本作の演出意図が分かる。「盗みが天職。世の中の物は全部ぼくの物」と悪びれずにほざく少年は、17歳から数年のうちに12人以上を殺害した人物だ。実在したサイコパスを描くのに、有り触れたクライムストーリー展開では収まりがつかないだろう。
積み重なる犯罪の場面が、今まで観たことのないような感触を呈している。被害者が撃たれて「ウッ」と倒れるのでもない。無言で步いて行く老人。いったい生きているのか…。逆に最初から死んでいる?と思しき不思議な場面もある。常識では考え難い犯罪シーンに出会える時、映画が生まれて100年代の以上経っても、まだ発見すべき表現があるのだと気付かせてくれる。

本作の見どころは、主役ロレンソ・フェロの魅力だとする評価が多い。踊りの場面では、ウォン・カーウァイ監督作『欲望の翼』で踊ったレスリー・チャンを想起させるイノセントな怪しい色気を放っているのは確かだ。製作のアルモドバル好みだったのかもしれない。が、個人的に目が離せなくなってしまったのは、プレスリリースに載った実際のカルロス・エディアルド・ロブレド・プッチの写真である。
正に天使!世の背徳や悪事とは全く無縁の顔をしている。無理に不良(ワル)ぶったような演技を見せるロレンソ・フェロとは対極に位置するようだ。「事実は小説よりも奇なり」という言葉(ここでは”映画より”か)を思い知らされた。

カルリートスの一家はヨーロッパからの移民のため、アルゼンチン的ラテン気質とも異なる。両親は至って真面目な常識人に描かれている。こういった家庭から10代のサイコパスが生まれた背景について考え込んでしまった。何れにしても表現話法といい、とてつもなく魅力的な作品を世界に放った、この若手監督に注目したい。(幸)


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2018年/アルゼンチン、スペイン/カラー/ビスタ/5.1ch/115分
©2018 CAPITAL INTELECTUAL S.A / UNDERGROUND PRODUCCIONES / EL DESEO
配給:ギャガ
公式サイト:https://gaga.ne.jp/eiennibokunomono
8月16日(金)より、渋谷シネクイント、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館他、全国順次ロードショー
posted by yukie at 13:27| Comment(0) | スペイン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年08月04日

カーマイン・ストリート・ギター  原題:Carmine Street Guitars

劇場公開日 2019年8月10日
上映情報 http://www.bitters.co.jp/carminestreetguitars/theater.html

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©MMXVⅢ Sphinx Productions.


監督・製作:ロン・マン
(『ロバート・アルトマン/ハリウッドに最も嫌われ、そして愛された男』)
扇動者:ジム・ジャームッシュ
編集:ロバート・ケネディ
出演:リック・ケリー、シンディ・ヒュレッジ、ドロシー・ケリー
ジム・ジャームッシュ(スクワール)、ネルス・クライン(ウィルコ)、カーク・ダグラス(ザ・ルーツ)、ビル・フリゼール、マーク・リーボウ、チャーリー・セクストン(ボブ・ディラン・バンド)他
音楽:ザ・セイディーズ

伝説のギタリストたちを虜にする職人は、建物のヴィンテージ廃材から、世界でひとつのギターを生み出す

ニューヨーク、グリニッジ・ヴィレッジに位置するギターショップ「カーマイン・ストリート・ギター」を追ったドキュメンタリー作品。
この店ではギター職人のリック・ケリーが、長年愛されてきた街のシンボル、チェルシー・ホテル、ニューヨーク最古のバー・マクソリーズなど、ニューヨークの古い建築物の廃材を使いギターを製作している。世界中のギタリストを魅了する、この店製作のギター。それはニューヨークの建物の廃材から作られている!
古い木材のほうがギターの響きがいいということを発見したリックは、廃材があると聞くと引き取りに行き、ギターとして復活させる。こうして、長年愛されてきた街の歴史がギターの中に生き続ける。何年も前に映画監督ジム・ジャームッシュが、改築中だった自宅の屋根裏の木材をこの店に持ってきて、ギター作りを依頼。そのギターが素晴らしい音を奏でたので、それからリックがニューヨークの古い建物の木材を使うようになったという逸話が語られる。
工事の知らせを聞きつけると、現場へ行きヴィンテージ廃材を持ち帰るリック傷も染みもそのままにギターへ形を変える。そんな店の1週間を追った、極上の愛に満ちたドキュメンタリー。
ルー・リード、ボブ・ディラン、パティ・スミスら、フォーク、ロック界の大御所がリックのギターを愛用。劇中でも、次々と有名なギタリストが来店し、リックが作ったギターを手に、幸せそうに演奏する姿が随所にに収められている。

この店は、ほかに見習いのシンディ、リックの母親が働いている。
リック・ケリーは、ニューヨーク州南東部・ロングアイランド育ち。幼い頃から木材職人の祖父の仕事をそばで見ていた影響から木材に興味をもち、ギター職人の道へ。1970年代後半にグリニッジ・ヴィレッジに店を出し、そして90年に、現在のカーマイン・ストリートに店を。パソコンも携帯も持たない昔気質のギター職人。
それに対してパンキッシュな装いの見習いシンディ・ヒュレッジは、カーマイン・ストリートギターで働いて5年。大工だった父親の影響で物作りに興味を抱き、父親が趣味にしていたギターも彼女には身近なものだった。アートスクールに通ってからこの店に入ったことから細かい作業が得意で、ウッドバーニングやペイティングを施したギター、ストラップも作っている。
そしてリックの母親ドロシー・ケリーの主な仕事は、店番・電話番・店のはたき掃除。ドロシーが壁に飾っている写真の額の曲がりを直すのだけど、直しても直しても斜めになってしまうシーンが面白いのだけど、その写真の方はロバート・クワインという有名なロック・ギタリスト。

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©MMXVⅢ Sphinx Productions.


監督は、カナダとアメリカのポップカルチャーを題材にしたドキュメンタリーを多く手掛ける他、『ロバート・アルトマン ハリウッドに最も嫌われ、そして愛された男』(2014)を製作したロン・マン。この作品は、2018年・第31回東京国際映画祭「ワールド・フォーカス」部門でも上映された。ロン・マン監督は「この映画ができたのはジム・ジャームッシュのおかげです。彼は私にギター職人のリック・ケリーと彼の店「カーマイン・ストリート・ギター」を紹介してくれた人物です。何年も前に、ジムはリックに改築中だった自宅の屋根裏の木材を持っていき、ギター作りを依頼しました。それが、リックがニューヨークの建物の再生木材を使うきっかけ。私は、音のいいかっこいいギターだけではなく、独特な空気が漂うユニークなこの店と、リックの禅のような哲学に魅了されました。そして、そのすべてが静かに消え去ってしまう前に、カメラに収めておかなければならないと感じるに至ったのです」と語っている。

約50年前の1969年、高校2年生だった私はフォークソングのグループをやっていた。その頃、ギターがどうしてもほしくて、初めてバイトをしてギターを手に入れた。この作品に出てくるようなギターではなく、中に空洞のあるガットギター。そういうわけでギターに思い入れがあり、そのギターを弾かなくなって久しいけど、ずっと持ってはいる。でも50年も前のギターだからもう楽器としては使えないかもと思っていた。でも、この作品で古い木材のほうが音の響きがいいと出てきて、ちょっと期待している私です(暁)。


建材の時の傷が味となって甦るオンリーワンのギター。次々と訪れる音楽のプロたちが愛おしむように試し弾きする。コンサートでは見られない素の姿は宝物を手にした子どものよう。リックと弟子のシンディは一見、共通点などなさそうだが、互いにリスペクトしているのが伝わってくる。店番をするリック母の何気ない行動が微笑ましい。
音楽に疎い私は店を訪れたギタリストの中で知っていたのは、ジム・ジャームッシュだけ。それもギタリストとしてではなく、映画監督として知っていたのだから、猫に小判と言われてしまいそう。しかし、物づくりのドキュメンタリー作品と思って見ていたら、最後までワクワク。音楽に疎くても、すっかり引き込まれた。
作品の終わり近くに、ギターにしか見えないケーキが登場する。本物のギターのようにネックの部分がテーブルから浮いていたように見えたのだが、ケーキでそれができるのだろうか。作品を見終わっても、そのことが気になった仕方がない。(堀)


公式HP http://www.bitters.co.jp/carminestreetguitars/
2018 年/カナダ/80 分
配給:ビターズ・エンド
posted by akemi at 21:52| Comment(0) | カナダ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

シークレット・スーパースター   原題:Secret Superstar

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監督・脚本:アドヴェイト・チャンダン
出演:ザイラー・ワシーム(『ダンガル きっと、つよくなる』)、メヘル・ヴィジュ(『バジュランギおじさんと、小さな迷子』)/アーミル・カーン(『PK』『きっと、うまくいく』『ダンガル きっと、つよくなる』)ほか

インド、グジャラート州ヴァドーダラー。
保守的なムスリムの家庭で育った14歳のインスィア(ザーイラー・ワースィム)は、歌が大好きな女の子。ギターで弾き語りしながら、いつか世界に自分の歌を届けたい願っている。そんなインスィアに母のナジマー(メーヘル・ヴィジュ)は、金のアクセサリーを売ってパソコンを買ってあげて、YouTubeで流せばという。サウジアラビアに出張中のパパに見られたら怒られるとすくむインスィア。「ブルカを被れば大丈夫!」と母に励まされて「シークレット・スーパースター」の名前で投稿すると、たちまち評判に。有名人からもコメントが寄せられ、新聞にも写真入りで紹介される。
断食月になって、サウジアラビアに出張していたエンジニアの父ファルーク(ラージ・アルジュン)が帰ってくる。30点という試験の結果を見て、ギターの弦を切ってしまう父。パソコンも捨ててしまえといわれる。
そんな中、動画を見て有名な音楽プロデューサー、シャクティ・クマール(アーミル・カーン)からインスィアの歌をレコーディングしたいと連絡が届く・・・

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(C)AAMIR KHAN PRODUCTIONS PRIVATE LIMITED 2017


アドヴェイト・チャンダンの初監督作品。俳優、脚本、助監督など様々な仕事をしてきたが、アーミル・カーンの元マネージャーでもあり、アーミルが全面バックアップ。出演も快諾して、有能な音楽監督だけど、同時に3人と不倫して、奥さんから離婚を突きつけられているという、ちゃらい男を実に楽しそうに演じている。おそらくアーミルとは間逆のキャラ。
そして、アドヴェイト・チャンダン監督が、「母と母性に捧げる」と掲げているように、本作は保守的なインド社会の中で虐げられながらも闘う女性たちの物語。

インスィアは、友達の男の子チンタンの助けを借りて、学校を抜け出してムンバイのシャクティのスタジオに飛行機で往復。なんとか夢を叶えたいと頑張る一方、権威主義的な父から母を救いたいと、シャクティの奥さんに離婚調停で実績にある有能な弁護士を紹介してもらう。実に痛快。

少女インスィアを演じたザイラー・ワシームは、アーミルの娘役を演じた『ダンガル きっと、つよくなる』がデビュー作。
娘の夢を叶えてあげようと、自分が盾となる母親を演じているのは、『バジュランギおじさんと、小さな迷子』でも少女の母親役のメヘル・ヴィジュ。

そして、本作がムスリムの家庭を描いていることにも注目したい。顔を隠してYouTubeに投稿する時、イスラームの女性が髪の毛や身体を隠すヒジャーブの習慣を利用するための設定だけど、インドの映画でムスリムが主役になることはなかなかないので貴重。
ヒンドゥー至上主義のモディ首相の政権下であることを考えると、さらに興味深い。
グジャラート州のムスリムの状況がどんなものなのか知らないが、父親が「明日呼ばれている結婚式は進歩的な家だからブルカは被るな」と母親に命令する場面があって、ムスリムにも様々な考えがあることを思わせてくれる。

なお、最初に出て来るタイトルも、ヒンディー語とアラビア文字のウルドゥ―語が併記されている。ウルドゥー語は、ムガル王朝の時代、イスラームに改宗した人たちが、ヒンディー語をアラビア文字で書き、語彙にもアラビア語やペルシア語起源のものを取り入れた言葉。ヒンディー語とウルドゥー語は見た目は全く違うが、文法体系は同じ。
それにしても、グジャラート州のムスリムがウルドゥ―語を話しているのかどうか知りたいところ。 (咲)


歌手を夢見る主人公は顔を隠して動画サイトに歌をアップ。一躍、有名になるが、DVな父親は音楽や自由を認めない。良かれと思って手筈を整えた両親の離婚も母から否定される。いろいろと助けてくれる友人にイライラをぶつけ、母が父に隠れてこっそり買ってくれたパソコンを投げ捨ててしまう。不自由な境遇とはいえ、不満の吐き出し方が父親に似ているのはあえてか。演じていたのは『ダンガル きっと、強くなる』で映画デビューしたザイラー・ワシーム。そういえば、あの時は父親にレスリングを無理強いされていたっけ。主人公を助ける友人の彼女への恋心は一目瞭然。それを必死に隠して、彼女の歌手デビューのために奔走する。その純な思いはいじらしく、応援したくなった。
アーミル・カーンは動画サイトから少女を見つけたプロデューサー役。彼女の自由に一役買う。いい役どころのはずだが、俺様感たっぷりの女ったらし。こんな設定は初めてでは? ピタピタの衣装が妙にハマってた。インドの良心と言われる彼とは正反対だが、実はこれが本当の姿ではと思ってしまうくらい楽しそうに演じていた。(堀)


2017年/インド/ヒンディー語/シネマスコープ/5.1ch/150分/映倫G
配給:フィルムランド、カラーバード 
公式サイト:http://secret-superstar.com/
★2019年8月9日(金)8月9日(金)新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国ロードショー




posted by sakiko at 14:56| Comment(0) | インド | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年08月03日

映画『東京裁判』4Kデジタルリマスター版

2019年8月3日(土)ユーロスペースほか全国順次公開!
劇場情報 http://www.tokyosaiban2019.com/theater.php

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(C)講談社2018

監督:小林正樹
総プロデューサー:足澤禎吉、須藤 博  
エグゼクティブプロデューサー:杉山捷三(講談社)
プロデューサー:荒木正也(博報堂)、安武 龍
原案:稲垣 俊  脚本:小林正樹、小笠原 清(CINEA-1)
編集:浦岡敬一(CINEA-1)  編集助手:津本悦子、吉岡 聡、佐藤康雄
録音:西崎英雄(CINEA-1)  録音助手:浦田和治  
音響効果:本間 明  効果助手:安藤邦男
資料撮影:奥村祐治(CINEA-1)  撮影助手:北村徳男、瓜生敏彦  
ネガ編集:南 とめ ネガ編助手:大橋富代
タイトル美術:日映美術  現像:東洋現像所  録音:アオイスタジオ
    協力:博報堂
史実考査:一橋大学教授 細谷千博(現代史)、神戸大学教授 安藤仁介(国際法)
翻訳監修:山崎剛太郎  
監督補佐:小笠原 清  助監督:戸井田克彦  製作進行:光森忠勝
ナレーター:佐藤 慶
音楽:武満 徹  指揮:田中信昭  演奏:東京コンサーツ
公式HP http://www.tokyosaiban2019.com/theater.php

第2次世界大戦。何を裁き、何が裁かれなかったのか

『壁あつき部屋』(BC級戦犯を扱ったもの)、『黒い河』(戦後の米軍基地を舞台としたもの)、『人間の條件』6部作(満州戦線に従軍した五味川純平氏の自伝的ベストセラー小説を映画化。戦争の中で人間がどう変わっていくのかという姿をリアルに描いた)など、これらの作品の中で戦争の「おそろしさ」、「むなしさ」、「おろかさ」を一貫して描いてきた小林正樹監督が、自らの戦争体験をもとに鎮魂の祈りを込めて作った4時間37分の作品が4kデジタルリマスター版で蘇る。

1945年8月に降伏した日本の戦後の運命を決定づけた極東国際軍事裁判(通称 東京裁判)の全貌を描いた映画『東京裁判』は、第2次世界大戦の実態を映像に収めた作品。東京裁判は1946年、東京・市ヶ谷の旧陸軍士官学校大講堂(現在の防衛省の地)で開廷された。裁判官および検事は、日本の降伏文書に署名した9か国とインド、フィリピンの計11カ国の代表で構成。裁判では「平和に対する罪」「人道に対する罪」など55項目に及ぶ罪状が裁かれた。
元々はアメリカ国防総省が撮影していた50万フィートもの膨大な裁判記録のフィルムが1973年に公開され、講談社がこれを基に創立70周年記念事業として記録映画を企画した。監督に要請された小林正樹は、それまで何本もの作品で戦争の非を訴え続けてきたが、この作品では5年の歳月をかけてフィルムを吟味し、国内外のニュース映像なども調査してピックアップ。そこから脚本を作りながら適応するフィルムをあたるという気が遠くなるような作業を繰り返し、「時代の証言者」としての映画を完成させた。
この裁判で28人の被告は全員無罪を主張したが、公判では発狂免訴された大川周明、病死した松岡洋右と永野修身を除く全被告25名のうち東條英機ら7名が絞首刑、他18名は終身刑もしくは有期刑が宣告され、東京裁判は終結した。しかし、天皇は戦争責任を免がれた(アメリカの思惑、マッカーサーの天皇に対するシンパシーもあったかららしい)。真の裁きは終わってない。即ち東京裁判は完結していないことを、本作は示している。
単に裁判の記録ということだけではなく、日本の軍国主義の歩みと激動の世界情勢を照らし合わせながら、人類がもたらす最大の愚行「戦争」の本質を巧みに訴えた本作は1983年に製作、公開された。戦後38年で「戦争を知らない世代」が多くなった頃。
さらに2019年(戦後74年)、戦争を経験した世代が亡くなっていく中、監督補佐・脚本の小笠原清らの監修のもとで修復された4Kデジタルリマスター版が公開される。改憲や戦争の是非をめぐる論議が出てきている今、改めて「平和」について考えさせられる。

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(C)講談社2018


「勝者が敗者を裁いたからね」といわれる「東京裁判」だが、それでも日本人自身の手で何も裁くことがなかった当時のツケが、現代に回ってきているのではないか? 戦後74年経った今、また、戦前の時代のような世相、憲法を改悪し、また戦争ができるように変えようとする動きを感じる。このようなときに、映画『東京裁判』が再上映される意味は大きい。若い人にぜひ観てほしい(暁)。

デジタル修復補訂版2018
デジタルリマスター監修:小笠原 清、杉山捷三
アーカイブコーディネーター:水戸遼平  
フィルムインスペクション:千陽裕美子
デジタルレストレーション:黒木 恒、高橋奈々子、森下甲一  
カラリスト:阿部悦明  音調調整:浦田和治
協力:独立行政法人国立映画アーカイブ 株式会社IMAGICA Lab.
サウンドデザイン ユルタ 豊国印刷 バーミンガム・ブレーンズ・トラスト
特別協力:芸游会
企画・製作・提供:講談社

1983年/日本/モノクロ/DCP/5.0ch/277分
配給 太秦
日本初公開 1983年6月4日

第35回ベルリン国際映画祭国際評論家連盟賞受賞
第26回ブルーリボン賞 最優秀作品賞
第38回毎日映画コンクール 日本映画優秀作品賞
第12回日本映画ペンクラブ賞 日本映画第1位
1985年ロンドン国際映画祭招待作品 作品賞
1985年シドニー国際映画祭招待作品 作品賞
1985年モントリオール映画祭招待作品 批評家協会賞

posted by akemi at 17:47| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする