2019年02月09日

金子文子と朴烈(パクヨル)  英題:Anarchist from the Colony.

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監督:イ・ジュンイク(『王の男』『空と風と星の詩人 尹東柱(ユン・ドンジュ)の生涯』)
出演:イ・ジェフン、チェ・ヒソ、キム・インウ、キム・ジュンハン、山野内扶、金守珍

1923年(大正12年)、東京。有楽町にある通称「社会主義おでん屋」で働く金子文子は、「犬ころ」という詩に心惹かれ、この詩を書いた朝鮮人アナキストの朴烈(パクヨル)に同棲を提案。恋人として、唯一無二の同志として、二人は生きることを決め、日本人や在日朝鮮人による「不逞社」を結成する。日本統治下で従順でない朝鮮人が「不逞鮮人」と呼ばれていたのを逆手に取った名前だった。
9月1日午前11時58分、関東大震災発生。「朝鮮人が暴動を起こしている」という流言が広がり、9月2日、戒厳令が公布される。多くの朝鮮人が虐殺される中、9月3日、朴烈と金子文子は、保護検束される・・・

治安警察法違反容疑で起訴され、一旦は死刑判決が出た後、恩赦で無期懲役となった二人。だが、金子文子は、1926年、23歳の若さで獄死する。「何が私をこうさせたか -獄中手記」(岩波書店)という自伝を遺していて、生き様に触れることができる。
文子は、1903年に両親が籍を入れないままに生まれ、無籍で小学校に行けなかった。親類の家を転々とし、9歳から16歳まで、日本に併合された韓国で過ごし、1919年、独立運動を目の当たりにした直後に帰国。日本の植民地主義に反対し、無政府主義者として朴烈と共に国家権力に対して闘った。
潔い女性 金子文子を体現したのは、韓国の女優チェ・ヒソ。大阪・建国小学校で学んだ彼女は、完璧な日本語を話す。一方、日本人という役柄、日本人には発音出来ない朝鮮語の音を意識して話している。
大正時代に、こんな飛んだ女性がいたのかと驚かされた一作。
朴烈がかすんでしまうほどだったが、当の朴烈は、日本の敗戦で1945年10月に出所。1946年10月に在日本居留民団を結成し、初代団長となる。1949年に韓国に帰国するも、朝鮮戦争中に北朝鮮軍に捉えられ、北朝鮮に連行され、1974年北朝鮮で亡くなる。享年71歳。処刑されたと言われていて、実に彼も激動の人生を送っている。
『建築学概論』で初心な青年を演じたイ・ジェフンが、本作では朴烈に限りなく近づく外見に変貌し、日本語も学んでアナキスト朴烈に成り切っている。
また、当時の内務大臣・水野錬太郎を筆頭とする日本政府を劇団「新宿梁山泊」のメンバーが演じているのも見どころ。
『空と風と星の詩人 尹東柱(ユン・ドンジュ)の生涯』で、日韓併合時代の朝鮮人の運命を描いたイ・ジュンイク監督が再び放ってくれた渾身の映画。当時の人々に思いを馳せたい。(咲)


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函、表紙、カバー

この試写が始まる少し前に、本棚を整理している旧友から「読んでみて」と金子文子の黒色戦線社版(再刷増補決定版)「何が私をかうさせたか」と歌集が送られてきました。旧仮名遣い、ルビ入りです。自分の生まれから朴烈と出逢うまでの記述に加えて、再版には短歌百余、「不逞社」で書かれた記事、また手紙などが収められています。小学校にもろくに通わせてもらえなかった文子が、21,2歳でこれだけの文章を書いていたことに驚きました。幼少期からの苛烈な境遇に屈せず、強い精神と思想を育んでいながら(いや、だからか)自死してしまったのが惜しいです。
聡明な彼女は、たとえ権力が交代してもまた同じ繰り返しになるだろうということも書いています。人の悪意や欲に傷つき、骨身に刻まれていることから出ている虚無感でしょう。朴烈と離れ離れに獄につながれ、死刑判決から無期懲役の恩赦を得て生き永らえることは、魂の死であったはず。ただこの二人に悲壮感は感じられません。文子は被告席でとうとうと持論を展開して、場を得た高揚感さえ覚えたのではないかしらん。
チェ・ヒソとイ・ジェフンの演じる二人(なんだかとても色っぽい)に、本当にこういう人たちだったかも、と想像。ガード下に響いていただろう文子の明るい声を思いました。瀬戸内寂聴「余白の春」にも、文子が書き留められています。(白)


2017年/韓国/129分/DCP
提供:太秦、キノ・シネマ
配給・宣伝:太秦 
公式サイト:http://www.fumiko-yeol.com/
★2019年2月16日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開
posted by sakiko at 21:53| Comment(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

女王陛下のお気に入り(原題:The Favourite)

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監督:ヨルゴス・ランティモス
脚本:デボラ・デイヴィス、トニー・マクナマラ
撮影:ロビー・ライアン
衣装:サンディ・パウエル
出演:オリヴィア・コールマン(アン女王)、レイチェル・ワイズ(レディ・サラ/サラ・チャーチル)、エマ・ストーン(アビゲイル・ヒル)、ニコラス・ホルト(ロバート・ハーリー)、ジョー・アルウィン(サミュエル・マシャム)

18世紀初頭、アン女王が統治するイングランド。モールバラ公爵の妻サラはアン女王と幼馴染で、誰よりも王女と親しい。その地位を利用して女王を意のままにしていた。没落した貴族の娘アビゲイルがサラの従姉妹と名乗ってやってくる。召使として雇われたアビゲイルは、女王が痛風で苦しんでいるのを知って、薬草で手当てをする。寝室に入った罰として、鞭打たれるが痛みがひいたことから侍女に取り立てられた。
イングランド議会は、フランスとの戦争を継続推進したいホイッグ党と終結派のトーリー党、二つに割れて争っていた。トーリー党のハーリーは、王女とサラの間近にいるアビゲイルを抱き込んで有利な情報を得ようと接近してくる。

女優3人が火花を散らす宮廷劇。権力に目がくらむのに男女差はないようです。17人も子供を産みながら、孤独なアン女王。そんな女王を手玉に取るサラ、召使からのし上がっていくアビゲイル。女王も無邪気かというとそれだけでもなく、寵愛をえさに楽しんでいるところもあります。男性は少しだけしか絡まず、もっぱらこの3人の駆け引きをスリリングに見せています。射撃でアビゲイルをを脅すサラ、顔は微笑みながらウサギを踏みつけるアビゲイル、しみじみ怖いです。
宮殿の家具調度や衣装は、じっくり観たくなります。くるくるカールの大きな鬘に、白塗りのお化粧をしたハーリーたちの姿は、今観るとヘンですが当時はこれが上流の男性のお姿。文化は変遷します。
第75回ヴェネチア映画祭で銀獅子賞(審査員大賞)、女優賞(オリヴィア・コールマン)受賞しています。(白)


2018年/アイルランド・イギリス・アメリカ合作/カラー/シネスコ/120分
配給:20世紀FOX
(C)2018 Twentieth Century Fox
http://www.foxmovies-jp.com/Joouheika/
★2019年2月15日(金)ロードショー
posted by shiraishi at 13:25| Comment(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

洗骨

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監督・脚本:照屋年之
音楽:佐原一哉
主題歌:古謝美佐子
出演:奥田瑛二(新城信綱)、筒井道隆(新城 剛)、水崎綾女(新城優子)、大島蓉子(高安信子)、坂本あきら(高安 豊)、山城智二(高安 悟)、前原エリ(高安マキ)、筒井真理子(新城恵美子)

沖縄の離島、粟国島・粟国村に住む新城家。長男の新城剛(筒井道隆)は、母・恵美子(筒井真理子)の“洗骨”のために、4 年ぶりに故郷・粟国島に戻ってきた。実家には、剛の父・信綱(奥田瑛二)が一人で住んでいる。生活は荒れており、恵美子の死をきっかけにやめたはずのお酒も隠れて飲んでいる始末。そこへ、名古屋で美容師として活躍している長女・優子(水崎綾女)も帰って来るが、優子の様子に家族一同驚きを隠せない。様々な人生の苦労とそれぞれの思いを抱え、家族が一つになるはずの“洗骨”の儀式まであと数日、果たして 彼らは家族の絆を取り戻せるのだろうか?

ゴリさんこと照屋年之監督が「ショートショートフィルムフェスティバル&アジア(SSFF&ASIA)2017」で発表し、高い評価を受けた短編映画『born、bone、墓音。』をもとにした長編。映画を作るときはこれからも本名でいくそうで、このお名前を覚えておいてください。
沖縄というとご先祖様を敬い、家族の結びつきも強いイメージを持っています。お墓の前でみんなでご飯を食べるというのを聞いたことがありますが、「洗骨」の風習が残っているところもあるんですね。少しずつ無くなっていくのでしょうから、こういう形で残って良かったです。この世とあの世の境目もあるというのも面白いです。命が繋がる象徴のように出産シーンもあるんですが、ここの台詞の一言がひっかかり、これは男性の脚本だな、と思いました。照屋監督が脚本も書いていたので、ほりきさんがインタビューしたとき、撮影の最中にでも聞いてみてね、と頼みました。で、あの笑顔だったそうです。さて、皆様はどうでしょうか?(白)


(堀)

2018年/日本/カラー/シネスコ/111分
配給:ファントム・フィルム
(C)『洗骨』製作委員会
http://senkotsu-movie.com/
★2019年1月18日(金)から沖縄先行公開、2月9日(土)全国公開
☆照屋年之監督インタビューはこちら
posted by shiraishi at 13:18| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

コードギアス 復活のルルーシュ

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監督:谷口悟朗
脚本:大河内一楼
キャラクターデザイン原案:CLAMP
キャラクターデザイン:木村貴宏
ナイトメアフレームデザイン原案:安田 朗
ナイトメアフレームデザイン:中田栄治
メカニカルデザイン・コンセプトデザイン:寺岡賢司
メインアニメーター:木村貴宏、千羽由利子、中田栄治、中谷誠一
美術監督:菱沼由典
撮影監督:千葉洋之
音楽:中川幸太郎
声の出演:ゆかな(C.C.)、櫻井孝宏(スザク)、名塚佳織(ナナリー)、小清水亜美(カレン)、白鳥哲(ロイド)、新井里美(咲世子)、戸田恵子(シャムナ)、村瀬歩(シャリオ)、大塚明夫(フォーグナー)、島崎信長(シェスタール)、高木渉(ビトゥル)、津田健次郎(クジャパット)

<これまでのストーリー>

神聖ブリタニア帝国の皇子ルルーシュは母を暗殺され、妹ナナリーとともに日本に避難した。ところが、ブリタニアは日本に侵攻。ルルーシュは父である皇帝に見捨てられた思い込み、ナナリーのために平和な世界を作ることを誓う。その後、不老不死の少女C.C.と出会い、対象者に絶対順守の力として働く「ギアス」を手に入れる。それを機に、仮面の男ゼロと名乗り、反ブリタニア勢力「黒の騎士団」を結成。ギアスの力と天才的頭脳でブリタニアに戦いを挑む。激戦の末、ルルーシュは各国と連携し、超合集国を結成。神聖ブリタニア帝国皇帝である父親を倒す。そして、世界の収束を図るため、親友のスザクとゼロレクイエムを開始。それはルルーシュがブリタニア帝国皇帝に就任し、恐怖政治を行うことで憎しみの対象となった上で、仮面の男ゼロに扮したスザクが民衆の前でルルーシュを暗殺し、争いの連鎖を断ち切るというものだった。ルルーシュの犠牲によって世界は1つになり、平和が訪れた。

登場人物の分かりやすく、詳しい説明はこちら

<今回のストーリー>

ルルーシュの死後、世界は再編成された超合集国を中心にまとまり、人々は平和に暮らしていた。ところが、難民キャンプを慰問していたナナリー、仮面の男ゼロとしてナナリーに同行していたスザクの2人が何者かに連れ去られてしまう。カレン、ロイド、咲世子はブリタニア帝国皇族シュナイゼルの密命を受け、ジルクスタン王国に潜入。そこで、各地を放浪していたC.C.と再会する。C.C.はカレンたちと行動をともにし、スザクを助け出した。そして、仮面の男ゼロをリーダーにナナリー奪還に挑む。


「コードギアス 反逆のルルーシュ」(2006年)、「コードギアス 反逆のルルーシュR2」(2008年)は2000年代を代表する人気アニメ。2017年に新規アフレコと新たなカットを加えて再構築され、劇場版三部作として公開された。『コードギアス 復活のルルーシュ』はその後を描いた作品である。現在でもファンが多く、2月9日に日付が変わってすぐに行われた最速上映はチケット発売と同時に完売したという。
TVシリーズが放送されていた頃から10年の月日が経過し、現実でも技術が進歩している。スザクが乗るランスロットの操縦席にもそういった技術が反映されているのが感じられた。一方、TVシリーズで使われていた音楽が場面に応じて流れ、「そうそう、ここはこの音楽よね」と、変わらぬよさをも感じる。また、2時間弱という尺のため、メインキャストはかなり絞っているものの、数多のキャラクターを少しでも登場させた脚本は見事としかいいようがない。
ルルーシュが命を懸けてもたらした平和はその後、どうなったのか。現実にも通じる部分があるような気がする。(堀)


最終試写が重なりどっちに行こうか迷って、この作品を選びました。アニメはビジュアルだけでうう~むと敬遠したくなるものもありますが、試写状で見たキャラクターの造形と色使いがいいなぁと。
前作を観ていなくても、これだけで楽しめました。帰ってすぐ、前作を観る方法を検索したのはいうまでもありません。有料チャンネルや配信でも見られるようですね。図書館にシリーズの文庫本があったので、とりあえずそちらを読んで世界を把握しようと思います。(白)


2018年/日本/カラー/113分
配給:ショウゲート
(c)SUNRISE/PROJECT L-GEASS Character Design(c)2006-2018 CLAMP・ST


★2019年2月9日(土)ロードショー
posted by shiraishi at 13:11| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ノーザン・ソウル(原題:Northern Soul)

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監督・脚本:エレイン・コンスタンティン
撮影:サイモン・ティンダール
出演:エリオット・ジェームズ・ラングリッジ(ジョン)、ジョシュ・ホワイトハウス(マット)、スティーブ・クーガン(バンクス)、アントニア・トーマス(アンジェラ)

1974年、景気が冷え込んだイングランド北部の町。高校生のジョンは居場所も友達もなく、退屈な毎日に倦んでいた。しぶしぶ行ったユースクラブで一人ステップを踏むマットに出逢った。マットがのめりこんでいる”ノーザン・ソウル”に自分も惹かれていく。マットとジョンはクラブでのDJを目指し、アメリカで自分だけのレコードを探し出すことを夢見る。

”ノーザン・ソウル”はイングランド北部のクラブで流行っていたソウルミュージック。知られていないシングルレコードを探して、自分だけのセットリストを作るのがDJの矜持だったようです。ダンスに興じる若者たちも、その曲が誰のなんという曲なのかあてるのも楽しみの一つ。ジョンが気に入ったDJの“COVER UP(隠蔽)”を見つけるのに躍起になっているシーンがあります。
ダンスのステップもぬきんでてカッコいい子がいれば、さっそく皆がそのステップを真似るシーンもあり、日本でも同じ風景だったわ、とちょっと懐かしくなりました。ジョン役のエリオット・ジェームズ・ラングリッジ、マット役のジョシュ・ホワイトハウスマットもこれが映画デビュー作。ジョシュは主演した『モダンライフ・イズ・ラビッシュ ロンドンの泣き虫ギタリスト』が昨年公開されています。ちょっと斎藤工くんに似ていませんか?(白)


2014年/イギリス/カラー/DCP/102分
配給:SPACE SHOWER FILMS
(C)2014 Stubborn Heart Films (Heart Of Soul Productions) Limited All Rights Reserved.
http://northernsoul-film.com/
★2019年2月9日(土)ロードショー
posted by shiraishi at 12:50| Comment(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする