2020年09月16日

マーティン・エデン(原題:Martin Eden)

 
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監督・脚本:ピエトロ・マルチェッロ 
脚本:マルリツィオ・ブラウッチ
原作:「マーティン・イーデン」ジャック・ロンドン(白水社刊)
出演:ルカ・マリネッリ、ジェシカ・クレッシー、デニーズ・サルディスコ、ヴィンチェンツォ・ネモラート、カルロ・チェッキ

貧しい船乗りの青年マーティン(ルカ・マリネッリ)は、上流階級の娘エレナ(ジェシカ・クレッシー)と恋に落ち、教養に目覚める。激動する時代、労働者地区に生まれ育った無学の青年は、運命の出会いに導かれて文学にのめり込んでいく。作家になるという夢に向かい一心不乱に己の道を突き進むが、生活は困窮し恋人の理解も得られない。絶望にかられてすべてを諦めようとした矢先、彼の運命は一変する。果たして彼を待ち受けるのは希望か、絶望か――。

冒険小説「野性の呼び声」で世界的名声を獲得した作家ジャック・ロンドンの自伝的小説を、ピエトロ・マルチェッロ監督が舞台を19世紀のアメリカから20世紀のナポリに変更して映画化した。
監督は20年前に原作を読み、ずっと映画化したいと思ってきたという。本作で2019年トロント国際映画祭審査員プラットフォーム賞、2020年イタリア・アカデミー賞脚色賞を受賞した。
主人公のマーティンを演じるのはルカ・マリネッリ。監督が脚本を書く段階から決まっていたという。トレーニングで船乗りの体を作り上げ、撮影1ヶ月前にはナポリに入り、町の人たちに溶け込んで役作りをした。その甲斐もあって、本作で第76回ヴェネツィア国際映画祭において、『ジョーカー』ホアキン・フェニックスを抑え「男優賞」に輝いた。2020年にはNetflix製作の映画『オールド・ガード』でシャーリーズ・セロンと共演し、ハリウッド進出。今、目が離せない俳優の1人である。
端正な顔立ちにうっとりするような肉体美がプラスされたルカ・マリネッリ。前半はエレナの社会に仲間入りしたいとバイタリティーがあふれ、後半は名声を手にし、仕立てのいいスーツに身を包みながらも、目的を見失って自堕落な姿を見せる。2つのタイプのルカ・マリネッリを堪能できる眼福の129分。女性の心を鷲づかみにするに違いない。(堀)


紛れもなく、ナポリの下町の荒くれた男なのに、名前はマーティン・エデン。上流階級のお嬢様と知り合って、背伸びして文学を語る姿が、なんとも不思議に見えます。アメリカン・ドリームを実現した作家ジャック・ロンドン。原作の舞台であるアメリカ西海岸オークランドを、ピエトロ・マルチェッロ監督の生まれ育ったナポリに移し、時代も20世紀初頭から、1919年~1970年頃に変えて、しっかりイタリアの物語になっているのに、原作に敬意を表して主人公の名前だけは変えなかったことから起こる魔法。マーティン・エデンを演じるルカ・マリネッリが、とにかくイイ男で、階級の壁をなかなか越えられない姿に切なくなりました。(咲)

2019年/イタリア=フランス=ドイツ/イタリア語・フランス語/129分/カラー・モノクロ/ビスタ/5.1ch
配給:ミモザフィルムズ 
©2019 AVVENTUROSA – IBC MOVIE- SHELLAC SUD -BR -ARTE 
公式サイト:http://martineden-movie.com/ 
★2020年9月18日(金)よりシネスイッチ銀座、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開



posted by ほりきみき at 22:05| Comment(0) | イタリア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年09月14日

TENET テネット(原題:Tenet)

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監督・脚本・製作:クリストファー・ノーラン 
製作:エマ・トーマス 
製作総指揮:トーマス・ヘイスリップ
出演:ジョン・デイビッド・ワシントン、ロバート・パティンソン、エリザベス・デビッキ、ディンプル・カパディア、アーロン・テイラー=ジョンソン、クレマンス・ポエジー、マイケル・ケイン、ケネス・ブラナー

満席の観客で賑わうウクライナのオペラハウスで、テロ事件が勃発。罪もない人々の大量虐殺を阻止するべく、特殊部隊が館内に突入する。部隊に参加していた名もなき男(ジョン・デイビッド・ワシントン)は、仲間を救うため身代わりとなって捕えられ、毒薬を飲まされてしまう…しかし、その薬は何故か鎮痛剤にすり替えられていた。昏睡状態から目覚めた名もなき男は、フェイと名乗る男から“あるミッション”を命じられる。それは、未来からやってきた敵と戦い、世界を救うというもの。未来では、“時間の逆行”と呼ばれる装置が開発され、人や物が過去へと移動できるようになっていた。ミッションのキーワードは<TENET(テネット)>。「その言葉の使い方次第で、未来が決まる」。謎のキーワード、TENET(テネット)を使い、第三次世界大戦を防ぐのだ。
突然、巨大な任務に巻き込まれた名もなき男。彼は任務を遂行する事が出来るのか?
そして、彼の名前が明らかになる時、大いなる謎が解き明かされる――。

『ダンケルク』でスタートが違う陸・海・空軍の3つの時間を同時に映し出して、同じ時間に帰着させたノーラン監督。流れの速度の違いに戸惑わされましたが、今回は時間が前に進む“順行”と時間が戻っていく“逆行”が同時に進み、時間を逆行する敵とのアクションも描かれています。具体的には順行で前に進む車と逆行で後ろに進む車が同時に映し出されるのです。これ以外にも「いったいどうやって撮影したんでしょう?」というシーンの連発にノーラン監督の頭の中を見てみたくなります。
しかも、エストニア、スペイン、デンマーク、イタリア、韓国、ノルウェイ、イギリス、ドイツ、ロシア、フランス、オーストラリア&ニュージーランド、日本でロケを行い、本物のジェット飛行機を爆破させ、8キロに及ぶ高速道路を3週間封鎖したカーアクションを繰り広げました。撮影規模の大きさに驚かされます。
見るというよりも体験する作品です。最初は理解しづらくて戸惑うかもしれませんが、とにかく見ていると何となく分かってきます。そして、多くの疑問がラストに一気に氷解。やっぱりノーラン監督ってすごい!!(堀)


冒頭から音!音!!音!!!に包まれます。これでびっくりしていられません。何?何?と考える暇もないほど早い展開の物語にぶち込まれます。これはIMAXでリピート必須の作品。一度目はただただ没入してください。現在のシーンに時間を越えて侵入した人やモノが混在して「???」と驚いたりパチクリしているうちに150分すぎてしまい、よしまた観なくちゃ!となります。
ノーラン監督の頭の中を可視化した俳優陣は、撮影中どんなだったのか知りたいものです。『ブラック・クランズマン』(18)で主演したジョン・デイビッド・ワシントン、この大作でも堂々の主演です。親(デンゼル・ワシントン)の七光りなど不要。公開作はあったけれど、私には久しぶりの相棒ニール役ロバート・パティンソン、髭で王子様顔が見えないアーロン・テイラー=ジョンソン、すっかり大人の男性です。
あまり感情を出さないシーンの中で、セイター(ケネス・ブラナー)と妻キャット(エリザベス・デビッキ)夫婦のやりとりが人間臭い。「もう無理!」の台詞に笑ってしまいました。さて、2度目はどこで観ようかな。(白)


2020年/150分/G/アメリカ
配給:ワーナー・ブラザース映画
© 2020 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.
公式サイト:http://tenet-movie.jp
★2020年9月18日(金)ロードショー
posted by ほりきみき at 17:41| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年09月13日

セノーテ 原題:TS’ONOT 英題:CENOTE

2020年9月19日(土)より 新宿K's cinemaほか全国順次公開 他の公開情報

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(C) Oda Kaori


監督・撮影・編集:小田香
日本・メキシコ/2019/75分

メキシコの泉(セノーテ)をめぐる神秘の旅

メキシコ、ユカタン半島北部に点在するセノーテと呼ばれる洞窟内の泉。そこはかつてマヤ文明の時代の水源であり、雨乞いの儀式のために生け贄が捧げられた場所だった。古代マヤで、現世と黄泉の世界を結ぶと信じられていたセノーテをめぐって交錯する、人々の過去と現在の記憶。カメラは水中と地上を浮遊し、光と闇の魅惑の映像に遠い記憶がこだまする。
現地に住む人々に取材し、現地の人たちの語る「精霊の声」、「マヤ演劇」のセリフなど、マヤの人たちにより伝えられてきた言葉の数々。集団的記憶、原風景を映像に取り入れている。セノーテの水中撮影のため、小田監督自らダイビングのライセンスを取り、iPhoneや8ミリフィルムカメラを駆使し、誰も見たことがない不思議な世界を表現した。
2015年に『鉱 ARAGANE』を完成させ、同作は山形国際ドキュメンタリー映画祭2015のアジア千波万波部門にて特別賞を受賞している。今年、第1回大島渚賞を受賞した。(公式HPより:世界に羽ばたく新たな才能の発掘を目的に大島渚監督が1979年から10年間審査員を務めたぴあフィルムフェスティバルが創設。『戦場のメリークリスマス』に出演した坂本龍一が審査委員長、大島監督が審査員の時に見いだされた黒沢清監督、同映画祭ディレクターの荒木啓子氏が審査員を務めた)


今も泉の底に残る骸骨や遺品の数々。泉の中から真上を見上げた光景などが印象に残る。こんな映像を自らダイビングの資格を取り、撮影した女性がいるというのを心強く思った。海外留学したり、海外での「武者修行」という行動力、勇気にエールを送りたい(暁)。


昨年の第12回恵比寿映像祭で本作に初めて出会った時の衝撃は忘れ難い。鑑賞直後に小田香監督のトークセッションがあり、本人の印象が強かったせいもあるだろう。これほど幻想的な光と水、外の世界との”あわい”を繊細に描く人が、見た目は体育会系、話すと大阪弁の気さくなお姉ちゃん!といったギャップを感じたことに由来しているのかもしれない。

題材、マヤ文明への興味、ユカタン半島への果敢な取材、現地の人さえ脚を運ばないセノーテにまで潜り(水が嫌いなのに!)、カメラを回した勇気…。全てに於いて規格外。近頃の若手監督にはついぞ見られないスケール感に圧倒されたのだ。栄えある「第1回 大島渚賞」受賞の選考理由が、「大器出現の予感」だったのも納得である。

だが、当の小田監督には”芸術ドキュメンタリー作家”という気負いは観られない。
「カメラで撮っていると、カチッとくる瞬間がある。頭で考えない自分だけの感覚」
と言う静かな語り口が新鮮だった。独創性溢れる小田監督の”カチッとくる瞬間”が生み出す作品世界に、今後も期待したい。(幸)


小田香さんの長編第一作『鉱 ARAGANE』を観たときに、無駄のない研ぎ澄まされたような映像に釘付けになったのを思い出す。『セノーテ』もまた、精霊が宿ったような神秘的な映像に驚かされた。
『ニーチェの馬』を最後に引退したタル・ベーラ監督が後進の育成のために設立した映画学校「film.factory」で3年間学んだ小田香さん。気難しいタル・ベーラ監督のお眼鏡に敵ったのも納得の期待の監督である。(咲)




公式HP  http://aragane-film.info/cenote/
2019年/75分/デジタル
製作:cinevɘndaval、FieldRain



posted by akemi at 22:55| Comment(0) | 日本・メキシコ合作 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

アダムスファミリー(原題:The Addams Family)

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監督・原案・製作:コンラッド・ヴァーノン
監督:グレッグ・ティアナン
声の出演:オスカー・アイザック(ゴメズ)、シャーリーズ・セロン(モーティシア)、クロエ・グレース・モレッツ(ウェンズデー)、フィン・ウォルフハード(パグズリー)、ベット・ミドラー(おばあちゃん)

モンスターの一族がひっそりと住む村。ゴメズとモーティシアの結婚式が行われていたその時、モンスターを恐れる人間たちが村を襲ってきた。命からがら逃げだしたゴメズとモーティシア夫婦は、あてのないまま旅をする。途中で出会った大男のラーチを執事として雇い入れ、一行は人里離れた丘の上に荒れ果てた屋敷を発見した。幽霊が住み着いていたので人間はやってこない。彼らには願ってもない物件だった。
時が流れて、夫婦には娘ウェンズデーと息子のパグズリーが生まれてすくすくと大きくなった。パグズリーの成長の儀式を行うために、屋敷には親戚一同が集まることになった。

元々は1937年から雑誌ザ・ニューヨーカーに連載されていた一コマ漫画。テレビドラマやアニメになった後、1991年に実写映画『アダムス・ファミリー』(バリー・ソネンフェルド監督)、1993年に同じスタッフ、キャストで続編『アダムス・ファミリー2』が製作されて大ヒット。3も計画されていたそうですが、ゴメズ役のラウル・ジュリアが亡くなったため作られていません。モーティシアがアンジェリカ・ヒューストン、ウェンズデーがクリスティナ・リッチとあまりにぴったりなキャストで、これ以上の組み合わせはないと思いました。が、このアニメ版の声をあてている俳優陣がすごい。このまま実写版を作ってほしいものです。
ストーリーは現代の人間たちとの関わり、どこにでもあるあるなエピソードが盛り込まれています。カリスマ主婦で実業家、テレビのコメンテーターまでやってる人って、いましたよね。あの人か?ウェンズデーが人間の学校に入学したことで、人間と関わらざるを得なくなるのですが、この知らない者同士が歩みよって行く過程も丁寧に描かれています。アニメ版2もできてほしいなぁ。(白)


何となく知っているけれど、実はよく知らなかったアダムスファミリーについて、本作は家族の成り立ちからしっかり描いているので、初心者にはぴったり。しかもキャラクターがきもかわいいので、ホラーが苦手な人でも大丈夫。
モンスターも人間も変わらない。愛する人と心地よく暮らしたいだけ。ただ、その心地よさが違うのが問題なのよねぇ。嫁姑問題が人間だけではないことには思わず笑ってしまいます。
いくつものドタバタの末、あの人がそんな決断をするのという想定外に驚くけれど、みんなが幸せになる結末に気持ちよく映画館を後にできること間違いなしです。(堀)


2019年/アメリカ/カラー/シネスコ/87分
配給:パルコ、ユニバーサル映画
(C)2020 Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. All Rights Reserved. The Addams Family (TM) Tee and Charles Addams Foundation. All Rights Reserved.
https://addams-movie.com
★2020年9月25日(金)ロードショー
posted by shiraishi at 18:53| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ヴィタリナ   原題:Vitalina Varela

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監督:ペドロ・コスタ 
出演:ヴィタリナ・ヴァレラ、 ヴェントゥーラ マヌエル・タヴァレス・アルメイダ、フランシスコ・ブリト、マリナ・アルヴェス・ドミンゲス、ニルサ・フォルテス

闇の中、一列になって黒人の男たちが歩いていく。十字架の並ぶ墓地。
リスボンの片隅、移民たちが暮らす、フォンタイーニャス地区。
暗く狭い部屋。小さな祭壇の傍らに座る女性ヴィタリア。夫が亡くなった知らせを受けて、カーボ・ヴェルデから駆け付けたが、3日前にすでに葬儀は終わっていた。
弔いにきた男たちに、ぽつりぽつりと語るヴィタリア。
「1982年の12月14日に婚姻届を出し、1983年3月5日に結婚式を挙げた」
「出稼ぎ先のポルトガルからカーボ・ヴェルデに一時帰国して、牝牛1頭売って、45日で10室も部屋のある立派な家をひとりで作ってくれた。別れも告げずにポルトガルに帰ってしまって、ドアや窓は私が作った。完成した家を夫は見ていない」
「リスボン行きの切符が届くのを40年待った」
ヴィタリアは夫が過ごしたリスボンの家で暮らす決意をする・・・

ペドロ・コスタ監督は、『ホース・マネー』を撮影中の2013年秋、カーボ・ヴェルデからやってきたヴィタリアに出会う。まさに、亡き夫の家に着いたばかりだった。連日、家に通って彼女の話を聞きだしたのが、本作の始まり。演じたのも、ヴィタリア本人。2019年ロカルノ国際映画祭でみごと女優賞を受賞。『ヴィタリア』は最高賞である金豹賞も受賞し、まさに作品の力。
ヴィタリアには夫が一時帰国したときにできた子どもが二人。夫は故郷に立派な家も作りながら、なぜ一生を狭いリスボンの暗く狭い家で終えたのか・・・ その狭い家で暮らすことを選んだヴィタリア。夫と長く一緒に暮らせなかったことへのヴィタリアの思いが感じられて切ない。(咲)


「ホース・マネー」ペドロ・コスタ監督.jpg
2015年山形国際ドキュメンタリー映画際『ホース・マネー』上映時のペドロ・コスタ監督 撮影 宮崎暁美


2019年/ポルトガル/ポルトガル語・クレオール語/DCP/130分 
配給:シネマトリックス
公式サイト:http://www.cinematrix.jp/vitalina/
★2020年9月19日(土)ユーロスペースにてロードショー、全国順次公開

posted by sakiko at 13:15| Comment(0) | ポルトガル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする