2019年06月13日

きみと、波にのれたら

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監督:湯浅政明
アニメーション制作:サイエンスSARU
脚本:吉田玲子
総作画監督:小島崇史
音楽:大島ミチル
主題歌:GENERATIONS from EXILE TRIBE「Brand New Story」
声の出演:片寄涼太(雛罌粟港)、川栄李奈(向水ひな子)、松本穂香(雛罌粟洋子)、伊藤健太郎(川村山葵)

向水(むかいみず)ひな子は大学入学を機に海辺の町に引っ越してきた。まだ将来のビジョンも持てないけれど、大好きなサーフィンをしていれば幸せ。ある日火事騒ぎで消防士の雛罌粟港(ひなげしみなと)と知り合い、二人で波を探して出かけるようになった。充実した日々がいつまでも続くと思った矢先、港は海の事故で亡くなってしまう。ひな子はあれほど好きだったサーフィンも海を見ることもできなくなった。二人の思い出の歌を口ずさんだときに、水の中に港が現れる。

湯浅政明監督の『夜明け告げるルーのうた』(2017)は、中学生男子カイと人魚の女の子ルーとの交流を描いたオリジナルのファンタジー作品。国内外で高評価を受けました。本作もそれに近い雰囲気ですが、主人公の年齢が上がり、湯浅監督が気恥ずかしいとおっしゃっていた(TIFF2018のトークショー)ラブシーンもあります。
前作でもルーが操る水の表現に目を見張りましたが、今回はサーフィンで大いに海と戯れます。後半のアクシデントでも大事な港を連れて行ってしまったのも海ですが、ひな子が力をもらうのもまた海でした。この切ないストーリーには前日譚があり、後で明らかになります。それがさらに、生命や生きること、人とのつながりを深く感じさせました。声をあてた片寄涼太さん、川栄李奈さんが口ずさむ歌が観終わってからもずっと残ります。(白)


2018年/日本/カラー/シネスコ/96分
配給:東宝
(C)2019「きみと、波にのれたら」製作委員会
https://kimi-nami.com/
★2019年6月21日(金)ロードショー
posted by shiraishi at 15:36| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

パージ:エクスペリメント(原題:The First Purge)

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監督:ジェラード・マクマリー
脚本:ジェームズ・デモナコ
音楽:ケビン・ラックス
出演:イラン・ノエル(ディミトリ)、レックス・スコット・デイヴィス(ナヤ)、ジョイヴァン・ウェイド( イザヤ)、スティーヴ・ハリス(フレディ)、マリサ・トメイ(アップデール博士)

経済が崩壊した21世紀のアメリカで政権を握っていた新政党NFFA(新しいアメリカ建国の父たち)は犯罪率を抑えるため、1年に一晩だけ殺人を含むあらゆる犯罪が合法となる「パージ法」の採用を決めた。反対デモも無視し、アメリカ全土での適用前に、ニューヨークのスタテン島内のみで実験することになった。島に残る島民に用意された賞金は5000ドル。島の住民たちが不安を抱える中、ついにパージ当日がやってくる。島のギャングのボスであるディミトリーは、愛する人を守るためにスタテン島に残ることを決意する。

2013年に第1作が制作された(日本公開は2015年)「パージ」シリーズの第4作。1年に1晩、12時間だけ全ての犯罪が合法化される法律=「パージ法」。この法律がなぜ施行されることとなったのか?その始まりが描かれています。
最悪の実験の被験者たちは、賞金にひかれて残ることを選んだ貧しい人、どこにも行く場所のない人たち。開発したのは暮らしにあえいだ経験もなさそうな富裕な白人たち。島に通じる道は封鎖され、犯罪を楽しみたい暴徒たちが暴れまわる様子を安全なところから監視しています。実験を成功させたい権力者の傲慢にむかつき、一晩中逃げ続けまたは抵抗する住民たちのサバイバルにハラハラさせられます。これまでの作品をまず見るのもよし、始まりを見てから順に見続けるもよし。私は全部観ておりました。作品紹介は以下。(白)


第1作『パージ』http://cinemajournal-review.seesaa.net/article/422196791.html
第2作『パージ:アナーキー』http://cinemajournal-review.seesaa.net/article/423007382.html
第3作『パージ:大統領令』http://cinemajournal-review.seesaa.net/article/448991725.html

2018年/アメリカ/カラー/シネスコ/98分/R15+
配給:シンカ、パルコ
(C)2018 Universal Pictures
http://purge-exp.jp/
★2019年6月14日(土)ロードショー
posted by shiraishi at 15:19| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ガラスの城の約束 原題The Glass Castle


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監督 デスティン・ダニエル・クレットン
製作 ギル・ネッター ケン・カオ
製作総指揮 マイク・ドレイク
原作 ジャネット・ウォールズ
脚本 デスティン・ダニエル・クレットン アンドリュー・ランハム
撮影 ブレット・ポウラク
美術 シャロン・シーモア
衣装 ミレン・ゴードン=クロージャー ジョイ・ハナエ・ラニ・クレットン
編集 ナット・サンダース
音楽 ジョエル・P・ウェスト

出演 ブリー・ラーソン、ウッディ・ハレルソン、ナオミ・ワッツ、マックス・グリーンフィールド
ニューヨーク・マガジンの人気コラムニスト、ジャネットはある日、ホームレス同然の父レックスと再会する。両親は彼女が幼いころ、定職につかず夢を追い求めて気の向くままに生活していて、仕事がうまくいかない父は酒に溺れ、家で暴れた。成長したジャネットは大学進学を機にニューヨークへ旅立ち、両親と関わらないようにしようと考えていた。

掌のような佳編『ショート・ターム』でブレイクしたブリー・ラーソンは、オスカー女優、そしてアメコミヒーローになってもデスティン・ダニエル・クレットン監督への恩を忘れていなかった…。米国で7年間ベストセラーになった著名な自叙伝が原作とはいえ、本作は地味な低予算映画である。しかも、ラーソンは2020年公開予定の映画で三度クレットン監督と、実在の人権弁護士を描いた作品を撮っているという。
富と名声を追い求めるのが常のハリウッドに於いて、ひと筋の爽やかな逸話を感じさせる、この「いい話」が、実は本作の主題と共振している点が面白い。

主人公は定職に就かず酒浸りの父、「ママのアートは永遠に残るのよ」と絵画制作に没頭し、子どもたちの面倒すら見ない母という富と安定に背を向けた両親に育てられた。その日暮らしを続ける父は、独学の物理や天文学を教え、父なりに子どもたちを愛し、いつか「ガラスの城」を建てる夢を語るのだ。
破天荒な父、聡明な娘をウッディ・ハレルソンと、ブリー・ラーソンが、これほどの適役はいないだろうと納得させる説得力で演じる。

クレットン監督の演出は、あくまでも正攻法。危うい暮らしの家族を柔らかく暖かな光線で包み込む。社会の一般通念から逸脱した家族をそのまま肯定しようとする意思を感じる演出だ。
コラムニストとして成功を収め、親との関係を絶った娘、ゴミを漁る境遇になりながらも尊厳を失わない両親のどちらにも共感し、寄り添う姿勢が主題と通底して観客も暖かな気持ちになるに違いない。(幸)


© 2019 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.
2017/アメリカ/カラー/シネマスコープ/127分
配給:ファントム・フィルム
提供:ファントム・フィルム/カルチュア・パブリッシャーズ
公式サイト:http://www.phantom-film.com/garasunoshiro/
6月14日(金)新宿シネマカリテ、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国公開
posted by yukie at 11:32| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

The Crossing ザ・クロッシング Part II(原題:太平輪 彼岸 The Crossing 2)

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監督・脚本:ジョン・ウー
原案:ワン・ホエリン
出演:チャン・ツィイー、金城武、ソン・ヘギョ、ホアン・シャオミン、トン・ダーウェイ、長澤まさみ

1949年、1,000人近い乗客乗員を乗せて上海から台湾へ向かっていた大型客船「太平輪」。船にはユイ・チェン(チャン・ツィイー)、イェン・ザークン(金城武)、トン・ターチン(トン・ダーウェイ)が、それぞれに違う目的で乗船していた。深夜、付近を航海中の貨物船と衝突した事で船内はパニックに陥り、それまでお互いを知る事の無かった男女の3組の運命が交差する―

1945年国共内戦下の中国が舞台。Ⅰでは戦場の描写が多かったが、Ⅱでは純愛の側面にフォーカス。戦争によって引き裂かれた男女たちの届かない想い、切ない叫びが聞こえてくる。クライマックスは上海から台湾に向かう客船の沈没シーン。非常時とはいえ、とんでもないほどの人と貨物を載せて出発したこともさることながら、乗務員の常軌を逸した気の緩みに絶句。海に投げ出された人々の阿鼻叫喚ぶりに驚くが、それぞれの愛をうまく着地させた脚本に心が安らいだ。
ところで、ジョン・ウーといえば白い鳩と二丁拳銃が必ず出てくることで有名。本作でも、「ここはカモメでは?」という場所に鳩が飛んでいた。しかし、二丁拳銃を見落としてしまった! どなたか、ご覧になったらぜひチェックして、コメントでお知らせいただけると幸いです。(堀)


国共内戦が激しくなり、台湾に逃れようと上海の港に停泊している船に殺到する人たちの姿を観て、にわかに思い出した映画があった。タイトルが思い出せなくて、居心地が悪かったのだが、やっと思い出せた。1991年に日本で公開された『レッドダスト』。監督はイム・ホー。ブリジット・リン演じる女性作家と、日本への協力者として忌み嫌われていた男(シン・ハン)。1938年、日中戦争の時期から、1945年の日本敗戦後の国民党と共産党の内戦、1949年、国民党が台湾脱出するまでの時期を背景にした恋の物語。ラストが人々が船に殺到する場面だった。『レッドダスト』を、今再び観たくなった。

そして、本作で描かれた台湾の部分では、戦前、基隆に住んでいた亡き母のことを思い出した。細い入江が深く入り込んだ基隆港は天然の良港。本作では船が基隆に着く場面が出てきた。
外国航路の船長をしていた母方の祖父は、家族と過ごせる水先案内人の仕事を基隆港に見つけ、昭和6年から終戦まで基隆に住んでいた。高収入の仕事で、北投温泉にも別荘を持っていたそうだ。本作では、日本人が去った後の屋敷が出て来る。母が暮らした基隆の家は戦後もそのままあったのを台湾人の同級生から聞いたという。母たちが去った後、どんな人たちが住んだのだろう。そんなことにも思いを馳せた。
ジョン・ウー監督、壮大な物語を多謝~! (咲)



2015年/中国/カラー/126分
配給:ツイン
©Beijing Galloping Horse ・ All Rights Reserved.
公式サイト:http://thecrossing.jp/
★2019年6月14日(土)シネマート新宿・心斎橋他にてロードショー!
posted by ほりきみき at 00:31| Comment(0) | 中国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年06月09日

慶州(キョンジュ) ヒョンとユニ 原題: Gyeongju

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監督:チャン・リュル
出演:パク・ヘイル、シン・ミナ、ユン・ジンソ

北京の大学で教鞭をとるチェ・ヒョンは、先輩チャンヒが亡くなった知らせを受け、テグ(大邱)に帰ってきた。7年前、一緒に慶州(キョンジュ)に行った時に撮った写真が遺影になっていて、茶屋で観た春画を思い出す。その春画を確認したくて、チェ・ヒョンは慶州に向かう。
中国煙草を手にしていると、黄色いスカートの少女が「吸っちゃ駄目」と声をかけてくる。「匂いを嗅いでいるだけ」とチェ・ヒョン。妙に印象に残る少女。
観光案内所の若い職員の女性が、中国語で話しかけてくる。つい、韓国人と言いそこね、中国語で答えてしまう。職員のたどたどしい中国語が初々しい。
茶屋に行くが、春画があった壁は壁紙で覆われている。一度は立ち去ったが、再び訪れ、美しい茶屋の主人ユニに、春画がなぜこの店にあるのか前のオーナーから聞いてないか尋ねる。「昼間にいらした時には、変態かと思った」というユニ。
ユニの仲間たちとカラオケに行った後、丸いお墓の山に登る。「死んだらここに入りたい」とつぶやくユニ。彼女の夫は数年前に鬱病で自殺していた。「顔は似てないのに、耳がそっくり。さわらせてください」と、チェ・ヒョンの耳をさわる。
一方、チェ・ヒョンは過去の恋人ヨジュンに会いたいと連絡する。今は人妻となったヨジュンが慶州にやってくる・・・

古都・慶州への不思議な1泊2日の旅。
2014年のアジアフォーカス・福岡国際映画祭で上映された折に拝見。なんともいえない余韻が蘇ります。
ゲストルームで他の作品の監督インタビューの為に待機していたら、パク・ヘイルさんが現われました。お昼を食べる時間がなかったらしく、コンビニで買ってきた袋入りのパンを大急ぎで召し上がっていました。すぐに舞台挨拶のために劇場に向かわれたのですが、とても自然体で親しみの持てる素敵な方でした。
映画の中のチェ・ヒョンは、パク・ヘイルさんそのままのような人物。落ち着いた雰囲気の古都・慶州を舞台にした味わい深い一作です。(咲)


2014年/韓国/145分
配給:A PEOPLE CINEMA
公式サイト:http://apeople.world/gyeongju/
★2019年6月8日(土)よりユーロスペース(渋谷)ほか全国順次公開




posted by sakiko at 15:02| Comment(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする