2025年07月06日
マーヴィーラン 伝説の勇者 原題:Maaveeran
監督:マドーン・アシュヴィン
出演:シヴァカールティケーヤン、アディティ・シャンカル、ミシュキン、スニール、ヨーギ・バーブ
新聞の長期連載漫画「マーヴィーラン」の作者であるサティヤ。新聞社に原稿を持ち込むたび、署名を書き換えられても気弱な彼は文句もいえない。家では、負けん気の強い母イーシュワリの起こす騒動を収めるのに必死の毎日。そんなある日、自宅のある地域一帯が開発対象となり、立ち退きを迫られ、用意された新築の高層マンションに入居する。海が見えると妹ラージも喜ぶが、そこは手抜き工事で建てられたおぞましい欠陥住宅だった。父の遺影をかけようと釘を打つと壁にひびが入り、ドアを開けようとするとノブが取れる。その一帯の開発を仕切るのは、人を人とも思わない悪徳政治家ジェヤコディ一。やがてエレベーターも使えなくなってしまうが、欠陥は北インド人のせいにして選挙まではおとなしくしていろと口を封じられる。彼ら一味の魔の手が妹ラージに迫り、彼は意を決して立ち向かうが、返り討ちに遭ってしまう。自身が描き続けている“マーヴィーラン=偉大なる勇者”との姿のギャップに、サティヤは屋上から飛び降り自殺しようとするが、携帯に電話がかかってきて思いとどまる。が、誤って足を踏み外して落ちてしまう。奇跡的に生還したサティヤの耳元に、その後、勇壮な「声」が鳴り響くようになる。その声はサティヤを「勇者」と呼び、ジェヤコディを「死神」と呼ぶのだった。「声」に従って行動すると、ジェヤコディの悪辣な顔が暴かれていくが、波風を立てたくないサティヤは「勇者」の立場を捨てて、必死に抵抗する。果たしてサティヤは、真の「マーヴィーラン」として、民衆を苦しめる巨悪を倒すことはできるのか・・・
気弱で、争いごとをしたくない主人公サティヤを演じるのは、タミル語映画界のスター、シヴァカールティケーヤン。イケメンには美女の相手役も付き物。バスで隣り合わせた女性に、自分は漫画家と原稿を見せるのですが、「サティヤ」の署名を彼女はちゃんと見ていました。その美女ニラーは、掲載している新聞「デイリー・ファイヤー」の副編集長だったのです。どんな展開になるかは、ぜひ劇場で!
サティヤに語り掛ける勇壮な声は、『ヴィクラム』『JAWAN/ジャワーン』のヴィジャイ・セードゥパティが担当しています。姿が見えないのが残念です。
悪徳政治家ジェヤコディを演じるミシュキンは、監督、脚本家、作詞家、プレイバックシンガー、俳優ほか様々な肩書を持つインド映画界でもユニークな存在の人物。迫力あります。
そして、本作の中で、散々笑わせてくれたのが、ヨーギ・バーブ演じるクマール。日雇いの仕事にいつもあぶれるのです。雇い主から「タミル人!」と声がかかった時に、手を上げたら、「タミル人以外は車に乗れ」と言われ、次には北インド人を装います。知ってる限りのヒンディー語を使う姿が可笑しいです。やっと欠陥マンションの修理人の仕事を得るという次第。
サティヤの母イーシュワリは、息子にもいつも怒鳴っているのですが、死神ジェヤコディにも、容赦なく歯向かう姿が凄いです。映画の最初に「母へ」とありました。マドーン・アシュヴィン監督のお母さまがもしかしたらモデルでしょうか・・・ (咲)
2023年/インド/タミル語/161分
日本語字幕:藤井美佳・字幕監修:小尾淳
配給:ファインフィルムズ
公式サイト:https://maaveeran-movie.com/
★2025年7月11日(金)より新宿ピカデリー他全国ロードショー
2025年07月04日
この夏の星を見る
監督:山元環
原作:辻村深月
脚本:森野マッシュ
撮影:菅祐輔
音楽:haruka nakamura
出演:桜田ひより(溪本亜紗)、水沢林太郎(飯塚凛久)、中野有紗(佐々野円華)、早瀬憩(福田小春)、黒川想矢(安藤真宙)、星乃あんな(中井天音)、朝倉あき(市野はるか)、堀田茜(花井うみか)、川村花(山崎春菜)、近藤芳正(才津勇作)、岡部たかし(綿引邦弘)
2020年、あの時を生きた僕たちへ
コロナ禍で休校、行事の中止や自粛を余儀なくされ、貴重な時間をマスク姿で過ごさねばならなかった学生や子どもたち。
そんな中で、茨城県砂浦第三高校天文部の溪本亜紗は[スターキャッチコンテスト]を開催しようと仲間に提案する。さらにネットで全国に呼び掛けた。東京では中学生の真宙が天音に誘われ、長崎の五島では、観光客が激減して苦慮する宿の娘、円華が新たな出会いに期待した。参加申し込みが集まり、彼らはオンラインでつながった。
全国に天文台やプラネタリウムがあり、星を見るのが好きな人は多いことでしょう。地球のよしなしごとを一時おいといて、宇宙に想いを馳せ、夜空の星の美しさに感嘆する楽しみは格別。
この原作小説にはモデルがあり、全国で”同じ規格の手作り望遠鏡”を使って、同時に「星を見つける競争」をしたのだそうです。こんなふうに競争も楽しめるなんてこれまで知りませんでした。目からウロコです。映画では、参加者の様々な動機から望遠鏡づくり、素早く星をキャッチするための特訓のようすが紹介されます。各地の生徒役の俳優さんたちもなんだか本気で楽しんでいる感じです。
もちろん綺麗な星空もたっぷり。ナイトカメラマン竹本宗一郎さんが監修ではりついて、山元監督が見せたかったリアルな星空を見せてくれています。この映画を観た後はただ「綺麗~★」と見上げていた星空のことをもっと知りたくなります。
↓のリンクで詳しい話を読んだり、聞いたりできますので、ぜひそちらも。(白)
2025年/日本/カラー/126分
配給:東映
(C)2025「この夏の星を見る」製作委員会
https://www.konohoshi-movie.jp/
https://x.com/konohoshi_movie
ポッドキャストはこちら
★2025年7月4日(金)ほか全国ロードショー
2025年07月03日
映画 おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!
監督:二宮崇
原作:練馬ジム
脚本:藤井清美
撮影:中島敬
出演:原田泰造(沖田誠)、中島颯太[FANTASTICS](五十嵐大地)、富田靖子(沖田美香)、城桧吏(沖田翔)、大原梓(沖田萌)、東啓介(砂川円)、松下由樹(五十嵐美穂子)、曽田陵介(佐藤周大)、山崎紘菜(堀田)
沖田誠は古い常識と偏見に凝り固まった52歳。会社ではかつての上司と同じくパワハラを繰り返し、部下から疎まれていた。我が家では一国一城の主のはず…だった。妻はボーイズグループの推し活中。大学生の娘・萌はBLの同人誌を作るのに夢中。高校生の息子・翔は可愛い物やメイクが好きな乙女男子。男らしくスポーツ少年にという誠の夢は叶わず、不登校で引きこもり「お父さんみたいになりたくない!」と拒絶されてしまった。
誠が変わったのは、ゲイを公言している大学生の大地と知り合ってから。目からうろこの誠は、それまでの自分を深く反省する。以来少しずつアップデートされて、ぎくしゃくしていた家族それぞれの「好き」を認めることができた。今は愛犬カルロスとも良い関係を保っている。誠の変化に困惑していた部下たちも、歓迎してくれた。大地はパートナーの円と結婚。全て順風満帆に見えた矢先、誠は新しい取引先の責任者に会う。なんと彼は、誠とは因縁のある元部下の佐藤だった。
原作は毎日読めるLINE漫画。2024年1月から東海テレビ・フジテレビ系の土曜ドラマで放送されて大好評!このほど劇場版としてスクリーンに登場しました。テレビドラマでのスタッフ、使ったセットが映画でも使われたそうで集合した俳優さんたち、ただいまって感じだったでしょうね。俳優・原田泰造さんは2018年の主演映画『ミッドナイト・バス』で初めて観ましたが、いろんな映画に顔を見せているのに気づきました。今やお笑いの「ネプチューン」より、ピンで活躍する俳優さんとしての方がなじみがあります。この誠お父さんは、アップデートのおかげで好感度あがり、自分の親に見てほしいと思われたとか。LGBTsや推し活、BL2次創作など新し目の話題が詰まったホームドラマです。観ているうちにこちらの意識もアップデートできそうです。
テレビではめでたいラストで安心させてくれた誠や家族に、劇場版では新しい難題がふりかかります。しかーし誠は以前とは違っています。以前傷つけてしまった佐藤にどう向き合うのか、劇場でご覧ください。(白)
2025年/日本/カラー/114分
配給:ギャガ
(C)練馬ジム | LINEマンガ・2025 映画「おっパン」製作委員会
https://gaga.ne.jp/oppan-movie/
★2025年7月4日(金)より全国ロードショー
愛されなくても別に
監督:井樫彩
原作:武田綾乃「愛されなくても別に」(講談社文庫)
脚本:井樫彩/イ・ナウォン
撮影:福本淳
音楽:松本淳一
主題歌:hockrockb
出演:南沙良(宮田陽彩)、馬場ふみか(江永雅)、本田望結(木村水宝石)、基俊介(堀口順平)、池津祥子(木村美佐子)、河井青葉(宮田愛)
大学生の宮田陽彩(みやたひいろ)は奨学金を受けて毎日大学に通う。それ以外の時間はほとんどバイトに費やしている。母と二人暮らしの陽彩は浪費家で怠惰な母の代わりに家事をこなし、学費と生活費を稼ぐためのバイトの毎日だ。親にも自分にさえも何も期待していなかった。それが同級生の江永雅(えながみやび)と関わったことで、変化していく。「江永のお父さんは殺人犯なんだって」と陽彩に耳打ちしたのは、ノートを貸してくれた木村水宝石(きむらあくあ)だった。木村は過干渉の母親にうんざりしている。陽彩は雅に直接聞いてみた。
外見も性格も真逆のような陽彩と雅ですが、親ガチャで外れてしまったのが共通点。背負ってしまった不幸せは、誰とも比べられませんが、こちら側から見ると、3人のうち木村だけは生活の心配がありません。それでも彼女には不幸極まりないのです。俳優さんたちの演技に見とれ、ちょっとでも好転してほしいなと願いながら観ました。原作は読んでいたのですが、生身の人がそこにいるのを観るとなかなかにきつい物語です。
「愛している」という言葉の呪縛にとらわれていた陽彩が、雅のおかげで一歩踏み出すことができたのに安堵しました。一人で生き抜いてきた雅ですが、陽彩が親友となりつつあります。「愛されなくても別に」と思っていた二人、血縁はサイテーだったけれど心地良い家を作れそうです。それにしても河井青葉さん『あんのこと』に続いて、娘に依存する毒親です。似たような役は続きがちですが、次は違うのがいいなぁ。(白)
2025年/日本/カラー/109分
配給:カルチュア・パブリッシャーズ
(C)武田綾乃/講談社 (C)2025 映画「愛されなくても別に」製作委員会
公式HP:https://aisare-betsuni.com/
公式X&Instagram:@aisare_betsuni
★2025年7月4日(金)全国公開
『オルエットの方へ』4Kリマスター版 原題: Du côté d’Orouët
監督・脚本・台詞:ジャック・ロジエ
助監督:ジャン゠フランソワ・ステヴナン
撮影:コラン・ムニエ
音楽:ゴング
出演:ベルナール・メネズ、ダニエル・クロワジ、フランソワーズ・ゲガン、キャロリーヌ・カルティエ
パリでタイピストとして働くジョエルは、9月初め、友人のカリーンに誘われて、キャロリーヌの持つ大西洋に面した田舎町の別荘でヴァカンスを過ごすことにする。それぞれの部屋を決め、階下のお店でワッフルを食べたり、海で海老をとったり、気ままに過ごす日々。そんなある日、偶然を装ってジョエルの上司ジルベールが現れる。テントに泊まっていて、嵐で外はつらいから泊めてくれと言われるが、庭先の壁際にテントを張るのならと許す。
翌朝、さっそく3人はジルベールをからかって遊ぶ。近くのオルエットの農場に行き、たくさんのウナギをもらってくる。
ある日、海辺で凧をあげていたら、凧がヨットのマストに引っかかってしまう。ヨットの主パトリックも交え、5人で過ごす日々。ジョエルは彼に惹かれていくが・・・
ジョエルは会社で交代で取るヴァカンスの番が、やっと9月にまわってきました。カリーンがヴァカンスのプランを話に来た時に、ジョエルに気のある上司のジルベールがそばにいて聞いていて、追いかけてきた次第。ジョエルは、もう1年くらいジルベールが気のある素振りをしているのに気がついていたのですが、ジョエルにはその気がないようです。別荘で、毎日、何をしようかとちょうど退屈していた時にジルベールが現れたので、3人はいいように彼を巻き込んだ感じ。 ジルベールは彼女たちを喜ばせようと、大きなアナゴを手に入れた時には、張り切って調理するのですが、時間がかかりすぎて、出来上がった時には、女の子たちはもうお眠の時間。なんだかジルベールの努力が空回りで気の毒になってしまいます。それでも、「気のいいジルベールがいなかったら最低のヴァカンスだった」という女の子たちの言葉をジルベールに聞かせたかった!
3週間ちょっとのヴァカンスは、日本人の私たちにはうらやましい長さですが、日本でフランス系の会社に勤めていた友人は、「5週間連続休暇を取れと会社は言うけど、長すぎて無理」と嘆いてました。
本作からは、フランス流ヴァカンスの過ごし方を垣間見ることができました。
タイトルのオルエットは、別荘のある大西洋に面したフランス中西部の田舎町、サン=ジル=クロワ=ド=ヴィの近くにある村。Orouëtの oの後に rが続く発音は、フランス人にとっても難しいようで、皆で何度も発音していて可笑しかったです。 フランス語科の友人が、rの発音練習を、水を含まずにうがいをする感じと言っていたのを思い出しました。(咲)
1971年/フランス/フランス語/カラー/162分/1.37 :1/モノラル/DCP
日本語字幕:寺尾次郎
配給:エタンチェ、ユーロスペース
公式サイト:https://www.jacquesrozier-films.com
★2025年7月5日(土)よりユーロスペースほか全国順次公開
◆同時開催:ジャック・ロジエ監督特集
7月5日(土)~18日(金) 渋谷・ユーロスペース
※全て2K上映。
『アデュー・フィリピーヌ』2Kレストア版(1962年/110分)
『トルテュ島の遭難者たち』4Kレストア版(1976年/146分)
『メーヌ・オセアン』4Kレストア版(1985年/136分)
『フィフィ・マルタンガル』デジタルレストア版(2001年/120分)
短篇集(合計54分)
『ブルー・ジーンズ』2Kレストア版(1958年/24分)
『バルドー/ゴダール』2Kレストア版(1963年/10分)
『パパラッツィ』2Kレストア版(1963年/20分)
詳細はこちらで!
http://eurospace.co.jp/works/detail.php?w_id=000889