2019年04月13日

ハロウィン 原題:Halloween

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監督:デヴィッド・ゴードン・グリーン 
脚本:ダニー・マクブライド、デヴィッド・ゴードン・グリーン 
製作:ジェイソン・ブラム 
音楽:ジョン・カーペンター、コーディ・カーペンター
出演:ジェイミー・リー・カーティス、ジュディ・グリア、アンディ・マティチャック、ニック・キャッスルほか

ジャーナリストのデイナとアーロンは、40年前のハロウィンに起きた凄惨な殺害事件の真相を追っていた。殺人鬼の名前はマイケル・マイヤーズ。彼は40年間、一言も話すことなく動機や感情は一切不明。あまりの恐怖に人々は彼を“ブギーマン”と名付けた。事件の被害者で唯一の生き残りローリー・ストロードにインタビューするも収穫はなかった。しかし、ローリーは再びマイケルが目の前に現れることを恐れ、いつ起きるか分からない非常事態に一人備えていたのだ。その予感は最悪の形で現実となる。ハロウィン前夜、精神病棟から患者を輸送する車が横転し、マイケルが脱走してしまう。娘のカレンはローリーの言うことを信じず、孫娘アリソンもパーティに出かけてしまっている。ローリーは再び街に解き放たれた“ブギーマン”と対峙することを決意。恐怖に満ちたハロウィンの夜が始まる―。

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© 2018 UNIVERSAL STUDIOS
ホラーを苦手とする女子は、シネマジャーナル読者にも多いはず…。でも本作なら受け入れられる要素は十分ではなかろうか。なぜなら本作のテーマは「フェミニズムと母性愛」だからだ。
40年前にはハイスクールガールだったヒロインのローリーことジェイミー・リー・カーティスは、今や娘と孫もいる貫禄を備えた「おばあちゃん」! だが、力強く鋭い眼差し、他者を寄せ付けない凛とした佇まいは、本作の空気感を支配している。
映画の決定権がヒロインに委ねられた、という意味では『エイリアン』におけるリプリー、『ターミネーター』のサラ・コナーと同様の存在なのだ。
ローリーは狂気にも似た執念を以て、自らの棲家を堅牢な“要塞”に造形した。全ては因縁のブギーマンと対峙するためだ。孫には暖かな居場所に見えた“おばあちゃんち”が、対ブギーマン仕様と化しているのも可笑しい。
親子三代の女たちが優れたチーム力を発揮するのと対象的に、ブギーマンは40年前と同じく黙して語らない。不気味さは健在だ。しかも数場面ではあるが、あのニック・キャッスルが40年ぶりにブギーマンを演じているのもファンには嬉しい。

外連味ある演出、音楽、街の風景…、全てがジョン・カーペンター(今回は製作総指揮と音楽)監督版のオリジナルを踏襲し、リスペクトしたスタッフの力が結集した映画であると感じられた。(幸)


2018年/アメリカ/カラー/デジタル/英語/106分/R-15
配給:パルコ 宣伝:スキップ
公式サイト:http://halloween-movie.jp/
★2019年4月12日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開
posted by yukie at 12:32| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年04月08日

希望の灯り(原題:In den Gängen/英題:In the Aisles)

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監督・脚本:トーマス・ステューバー
原作・脚本・出演:クレメンス・マイヤー(「通路にて」新潮クレスト・ブックス『夜と灯りと』所収<品切>)
撮影:ペーター・マティアスコ
音楽:ミレナ・フェスマン
出演:フランツ・ロゴフスキ、ザンドラ・ヒュラー、ペーター・クルト、アンドレアス・レオポルト、ミヒャエル・シュペヒト、ラモナ・クンツェ=リブノウ

内気で引きこもりがちなクリスティアン(フランツ・ロゴフスキ)は27歳。ある騒動の後に建設現場での仕事をクビになり、在庫管理担当としてスーパーマーケットで働き始め、レジでの雑踏やフォークリフトなど、自分にとって全く未知の世界に放り込まれる。そこで飲料セクションのブルーノ(ペーター・クルト)、ルディ(アンドレアス・レオポルト)、職場で唯一ハンドパレットトラックの操縦を許可されているクラウス(ミヒャエル・シュペヒト)、ユルゲンと出会う。ブルーノは、クリスティアンに仕事のいろはやフォークリフトの操縦の仕方を教え、クリスティアンにとって父親のような存在になる。通路で、クリスティアンはスイーツセクションの年上の同僚のマリオン(ザンドラ・ヒュラー)と出会い、彼女の謎めいた魅力に一瞬で惹かれる。コーヒーマシーンのある休憩所が彼らのおきまりの場所となり、二人は親密になっていく。


郊外の大型スーパー。2階分くらいはあるような高い棚に商品が積まれている。担当するブロックの品物が手に届くところにあるよう、商品を管理するのが主な仕事。ずっとそこにいると、大きな空間に押し潰されそうだ。棚の向こうに仕事仲間の姿が見えるとホッとして、表情が和らぐ。人間関係も同じ。適度な距離感を保ち、深入りしない。東西の統合を経た人々だからこその配慮か。
タトゥーを入れ、ちょっとワケありそうな主人公クリスティアンにもとやかく言わない。ただ、指導係のブルーノはクリスティアンに仕事を教えることで親密さを増す。またクリスティアンは他セクションの同僚に恋心を抱くようになり、踏み込んだ行動を取ってしまう。静かな均衡に変化が見える。
しばらくして起こった悲しい出来事。距離感のある人間関係が原因かなのか。親密さを持ったことで孤独が浮かび上がってしまったからか。監督ははっきりとは描かず、見る者に委ねる。しかし、すべてを受け止めて、前に進もうとするクリスティアンに希望を感じた。(堀)


2018年/ドイツ/ドイツ語/カラー/ヨーロピアンビスタ/5.1ch/125分
(C) 2018 Sommerhaus Filmproduktion GmbH
公式サイト:http://kibou-akari.ayapro.ne.jp/
★2019年4月5日(金)Bunkamuraル・シネマほか全国順次公開
posted by ほりきみき at 00:00| Comment(0) | ドイツ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年04月07日

『芳華-Youth-』 原題 芳華

劇場公開日 2019年4月12日

監督・製作:馮小剛(フォン・シャオガン)
脚本・原作:厳歌苓(ゲリン・ヤン)
製作:王中軍(ワン・チョンジュン)&王中磊(ワン・チョンレイ)
音楽:音楽:趙麟(チャオ・リン)
出演:黄軒(ホアン・シュエン):リウ・フォン
苗苗(ミャオ・ミャオ):ホー・シャオピン
鐘楚曦(チョン・チューシー):シャオ・スイツ
楊采鈺(ヤン・ツァイユー):リン・ディンディン
王天辰(ワン・ティエンチェン):チェン・ツァン
蘇岩(ヤン・スー):文工団分隊長
趙立新(チャオ・リーシン):文工団の政治委員

『狙った恋の落とし方』『戦場のレクイエム』『女帝エンペラー』『唐山大地震』『わたしは潘金蓮じゃない』など、ヒット作を監督し、映画出演作も多い馮小剛(フォン・シャオガン)監督の最新作。軍の歌劇団である文芸工作団(=文工団)に所属した監督自らの若き日の経験を、同じく若き日に文工団に所属したゲリン・ヤンの原作(『シュウシュウの季節』『妻への家路』)をもとに描いた作品。

1970年代~80年代の中国。軍所属で歌や踊りを披露し、兵士たちを時に慰め、鼓舞する役割をになう歌劇団・文工団に所属する若者たちの激動の時代に翻弄されながらもたくましく生きる青春の日々をつづった物語。
1976年、17歳のシャオピン(ミャオ・ミャオ)はダンスの才能を認められ、夢と希望に溢れ入団するが周囲となじめないでいた。そんな彼女にとって唯一の支えは、模範兵のリウ・フォン(ホアン・シュエン)だった。しかし、ある事件をきっかけにリウ・フォンは転属させられてしまい離れ離れになってしまった。
文革、毛沢東の死、中越戦争など、国を揺るがす事件が立て続けに起こり、時代の変化の中で文工団も解散に。激動の70~80 年代に、その時代の波に翻弄されながらも懸命に生きた若者たちを描く。そして何十年もたって、シャオピンとリウ・フォンは再びめぐり合う。
シャオピンを演じるのは苗苗(ミャオ・ミャオ)。彼女が想いを寄せるリウ・フォンを演じるのは『ブラインド・マッサージ』『空海-KU-KAI -美しき王妃の謎』の黄軒(ホアン・シュエン)。

今までいくつもの文工団を描いた中国映画を観てきたが、ここまで文工団の内部や生活を描いた作品はなかったような気がする。それにしてもダンス、歌、演奏、演劇など芸能に関係することに、こんなにたくさんの軍に所属する文工団団員がいるというのが驚きだった。それに入団したとたんに軍服(しかも自分の軍服ではなく、同室の人から黙って借りてしまった)を着た写真を撮って、その写真を親に送るという行為が最初に出てきて軍に所属するということがステイタスという、そういう文化もあるのだと知った。
主人公のシャオピンは、結局、文工団の中でダンスで生きていくことはできず、看護部門に移動し軍には所属を続けた。そういう中で中越戦争のシーンも出てきたのだろう。軍の娯楽部門に所属していたメンバーもそういう場から逃れられなかった。文工団に所属していたメンバーも、解散後、成功して金持ちになった人や、生活が苦しい人、時間の流れの中での変化が出てくるが、リウ・フォンも中越戦争で片手を失ってしまい傷害者として生き、生活が苦しい様子が描かれる。こういう中で二人は再び出会い、その後は一緒に生活してったのだろう。おだやかな日々を送れたのだろうか(暁)。

★第12回アジア・フィルム・アワード最優秀作品賞 受賞
2017年 製作国中国 配給アットエンタテインメント
posted by akemi at 20:32| Comment(0) | 中国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

アレッポ 最後の男たち   原題:LAST MEN IN ALEPPO

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監督: フェラス・ファヤード 共同監督:スティン・ヨハネセン

2016年、シリア北部、歴史ある町アレッポ。
「アサドのせいで空ばかり見上げている」と嘆く自衛団「ホワイト・ヘルメット」の男たち。爆撃機が行く方向を見定め、急行する。一人でも多くの人を救おうと。

2011年の民衆による平和的デモを、シリア政府は軍事的手段で応酬。もう5年も続き、各地で町は瓦礫と化し、アレッポも例外でない。
爆撃を免れた公園ですべり台やブランコを楽しむ大勢の親子たち。
退避命令が出る。ドローンで偵察し、一般市民も無差別に攻撃してくるのだ。

ここで人が暮らすのは無理、トルコかどこかに逃げようと思うが、逃げ場のない人たちを救おうと、アレッポで自衛団の一員として日々空を見上げる男たち。彼ら自身、死と隣り合わせの毎日だ。
親にはトルコで仕事をしていると嘘をついている者もいる。
「権力の横暴を同胞のはずのアラブ諸国は黙殺している」と嘆く男性。
絶望的な姿を映画は見せつける・・・

私がシリアを訪れたのは、昭和63年9月。旅行中に昭和天皇が病に倒れられたので、元号で時期をはっきりと記憶している旅だ。アレッポ城の上から眺めた町は、旧市街にもびっしりと衛星テレビのパラボラアンテナが林立していて、実はちょっと興ざめだった。(思えば、それだけ豊かということなのだけど!)
でも、スーク(市場)は中世さながらの雰囲気で、わくわくする空間だった。ツアーで45分しか時間を取ってくれなくて、この市場のためだけにも、ぜひまたゆっくり訪れたいと思った町。その市場も、木っ端微塵に破壊されてしまった。

各国が介入しても解決せず、救いようのない内戦と思っていたら、実は大国の思惑が背景にあるらしい。
『アレッポ最後の男たち』を試写で観たと、友人に伝えたら、こんな情報をいただいた。

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アレッポのスークのことを書かれた黒田美代子先生の著書「商人たちの共和国」…ご本人が亡くなられた後絶版されていたのを、新装復刊された中にご主人の黒田壽郎先生が書かれております。
“支援国イスラエル擁護のためのアラブ勢力の徹底的破壊こそが米国の戦略の根幹であり、イラクの撹乱のすぐ後で新たにターゲットとされたのが、まさにシリアに他ならない。現在のシリアにおける騒乱は内戦ではなく外圧によって惹起されたものなのである…”と。まさしくおっしゃる通りです。黒田美代子先生がご存命でしたら、今のアレッポをシリアを見たら、絶句、言葉を失ってしまうでしょうね。
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映画の中で、足をひきずった猫ちゃんが出てきたことも、この友人(猫好き!)に伝えたところ、「アレッポで沢山のお猫さんの世話をされている方のことがテレビで流れたらことがあります。沢山の人がアレッポを離れてトルコの方に逃げて行った。が、飼っていたお猫さん残して…。みんなが帰ってくるまで、お猫さんの面倒を何とか見続けたい…と」

さて、私のシリアの旅に戻る。
旅の最後にツアーバスの運転手さんのご自宅を皆で訪ねた。一行20名ほどが全員集える大広間のある家だった。5~6人のお子さんのいる大家族。シリアでは、平均的な家族構成のようだった。急な客を温かくもてなしてくれたご一家。今はどうしていることか。
安住の地を求めて国を出た人も、シリアを離れられない人々も、どちらも故国を思う気持ちは同じだろう。シリアの人々が、心穏やかに暮らせる日の来ることを祈るばかりだ。(咲)

【トークイベント】

4月13日(土)11:00~上映後 太田 昌興さん / (株)アレッポの石鹸 共同代表取締役
4月13日(土)15:45~上映後 春日 芳晃さん / 朝日新聞国際報道部次長
4月14日(日)13:20~上映後 安田 純平さん / ジャーナリスト

第90回アカデミー賞長編ドキュメンタリー部門ノミネート作品
2017年サンダンス映画祭ワールド・シネマ ドキュメンタリー・
コンペティション部門グランプリ他 世界中で23の映画賞受賞した作品

2017年/デンマーク・シリア/104分/ドキュメンタリー
制作:アレッポ・メディア・センター、ラーム・フィルム
制作協力:DR TV、SWR/ARTE、SVT、RTS、NRK、YLE
配給:ユナイテッドピープル  
公式サイト:http://unitedpeople.jp/aleppo/
★2019年4月13日(土)シアター・イメージフォーラムほか全国順次ロードショー

posted by sakiko at 14:15| Comment(0) | 中東 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年04月06日

12か月の未来図   原題:Les grands esprits  英題:The Teacher

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監督・脚本:オリヴィエ・アヤシュ=ヴィダル
出演:ドゥニ・ポダリデス、レア・ドリュッケール

パリ。フランス最難関の名門アンリ4世高校の国語教師フランソワ・フーコー(ドゥニ・ポダリデス)。国民的作家である父の新刊サイン会の場で、美人がいるのを意識しながら、教育改革論を熱く語る。パリ郊外の問題校の生徒たちの学力を上げるには、ベテラン教師を派遣して新米教師を支援するのが解決策だと。彼が気に留めていた美人は、実は国民教育省で教育困難校を担当している女性だった。フランソワは、国民教育省からパリ郊外のバルバラ中学校で1年間教鞭をとってほしいと依頼される。断るわけにもいかず、しぶしぶ荒れ果てた場所にある学校に赴く。そこでは、貧困層や移民の子どもたちが学んでいて、フランス語がおぼつかない生徒もいた・・・

身から出た錆で、自身が教育困難校に派遣される羽目になったエリート教師フランソワ。勉強する気のない生徒たちに、問題児は退学させればいいという教師たち。途方に暮れる中、フランソワは生徒たちに「レ・ミゼラブル」を全編読ませたいと思い立ちます。もちろん、すんなりと子どもたちが学ぶ気になるはずもなく、問題山積み。それでも、徐々に勉強に興味を持ち始めます。
思春期の子どもたちにとって、資質の良い教師がいかに必要かを感じさせてくれます。
私自身、小学校から大学までの間に出会えた数名の先生が、今の私を作ってくれたと確信しています。
家庭環境や子ども自身に問題があっても、教師次第で解決できることを、本作は教えてくれます。そして、良き教師を育てるのは?? (咲)


2017年/フランス/107分/シネマスコープ/カラー
配給:アルバトロス・フィルム
公式サイト:http://12months-miraizu.com/
★2019年4月6日(土)より岩波ホールほか全国順次ロードショー!




posted by sakiko at 11:07| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする