2021年01月14日

キル・チーム(原題:THE KILL TEAM)

kill.jpg

監督:脚本:ダン・クラウス
出演:ナット・ウルフ(アンドリュー)、アレクサンダー・スカルスガルド(ディークス軍曹)

アンドリュー・ブリグマンは正義感と愛国心に燃え、二等兵としてアフガニスタンに渡る。初めての任務は地元民の調査ばかりで退屈し始めたころ、上官が地雷により吹き飛び戦地であることを肝に銘じた。新しく配属されたのは、歴戦の猛者として名高いディークス軍曹だった。アンドリューたちの士気は高まるが、ディークス軍曹は治安を守るためと称して、民間人を容赦なく撃っていた。しかもアンドリューは彼が証拠を捏造しているのに気づいてしまい、良心の呵責にさいなまれ苦しむ日々。そして事態が悪化していくなか、アンドリューは決断を迫られる。

初々しい新兵が戦地に放り込まれ、砲弾を浴び、死が日常になっていく様子をドキュメンタリーのように見せていきます。それもそのはず2010年のアフガニスタンで実際にあったことをダン・クラウス監督は先にドキュメンタリーで発表していて、それを自ら劇映画として作りました。大麻で恐怖を和らげる、いじめの標的を作って憂さ晴らしをする、自分を正当化するためにウソを重ねていく者などなど、戦場の闇が白日にさらされます。アンドリュー役のナット・ウルフ、ディークス軍曹役のアレクサンダー・スカルスガルド共に好演です。
帰国すれば良き父、息子である彼らが戦場でどんな思いをし、口に出せない経験をしているのか、いくつもの戦争映画やドキュメンタリーが描いてきました。命令に従うことが第一の兵士たちがどれほど心身に傷を負っているのかも、PTSDに苦しみ続ける人々が表わしています。将棋やチェスのコマのように人を簡単に戦場に送らないで。何より戦争を始めないで。そして終わらせる努力を。(白)


治安を守るためと称して、証拠をでっち上げて民間人を殺害し続けていた上官。自らを正当化し殺人に手を染めてゆく。愛国心からアフガニスタンに渡った若い兵士の苦悩はいかばかりか。内勤の父親に電話でこっそり不安を伝えるが、そのことがさらに若い兵士の不安を増幅させることに。辛かったことだろう。
本作は実話に基づいており、監督は俳優陣に軍隊でトレーニングを受けさせたうえで撮影に入ったそう。アメリカ軍の暗部を徹底したリアリズムで描いている。(堀)


2019年/アメリカ/カラー/シネスコ/88分
配給:クロックワークス
(C)2019 Nostromo Pictures SL/ The Kill Team AIE / Nublar Productions LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
http://klockworx-v.com/killteam/
★2021年1月22日(金)ロードショー
posted by shiraishi at 14:48| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年01月10日

聖なる犯罪者   原題: Boże Ciało 英題: Corpus Christi

seinaru hanzaisya.jpg

監督:ヤン・コマサ
出演:バルトシュ・ビィエレニア、エリーザ・リチェムブル、アレクサンドラ・コニェチュナ、トマシュ・ジィェンテク

20歳のダニエルは殺人を犯し少年院で更生を受けている。熱心なカトリック教徒の彼は、厳格なマシュ神父に信頼されミサのまとめ役を任されていた。神父になりたいと夢見るが、前科者は神学校に入れないといわれる。仮出所が認められ、田舎町の製材所で働くことになる。地元の教会で知り合った少女マルタに、自分は司祭だと嘘をついてしまう。マルタからヴォイチェフ神父を紹介されたダニエルは、神父が不在の間、教会を任せたいと依頼される。
ダニエルは村に若者6人の献花台があることが気になっていた。マルタの兄も含め6人が乗っていた車が、飲酒運転をしていた車とぶつかりその運転手も含め7人が亡くなったという。運転をしていたスワヴェクは司祭から埋葬も拒否されたと聞き、ダニエルがスワヴェクの妻に会いにいくと、彼は4年間断酒していたと聞かされる。事故の真相を明かそうとしている矢先、少年院で一緒だったピンチェルが告解室にやってくる・・・

この映画を観て、真っ先に思い出したのが、イラン映画の傑作『ザ・リザード』(2004年、キャマール・タブリーズィー監督)。囚人が刑務所付のイスラーム僧の袈裟を失敬して脱獄し、人々に崇められてしまう物語。これはコメディー仕立てでしたが、「制服」を信じてしまう人々の心理は同じ。実は、「ポーランドでは偽司祭の話は毎年起こるぐらい珍しくない」とプレス資料にありました。
ダニエルは、告解に来た人への答えに困るとスマホで告解の手引きを検索し、ミサも独自のスタイルで説教をして、「神父様」と慕われます。格好から、自分自身、神父になりきり善人になったような陶酔した気持ち。子役時代から舞台で活躍していたバルトシュ・ビィエレニアが罪人なのに聖人にも見える得体の知れない人物を体現していて圧倒されました。(咲)


ダニエルは偽司祭だが、彼がミサを行うようになってから村の人たちは変わっていく。村で1年前に7人もの命を奪う凄惨な事故が起こり、被害者家族も加害者家族も心に深い傷を負っていることを知り、奔走するダニエルの姿に嘘はない。しかし、ダニエルの過去を知る少年が現れたことをきっかけにダニエルの嘘が明らかになっていく。
実際に起きたことに着想を得た作品という。モデルになった少年がどうなったのかはわからない。“犯罪歴があると神学校に入れない”といわれても以前の自分だったら何の違和感もなかっただろう。しかし、本作を見てから「なぜダメなのか。人生をやり直すチャンスを奪っていいのか」という疑問が残るようになった。(堀)


2019年/ポーランド=フランス合作/ポーランド語/115分/R18/5.1chデジタル/スコープサイズ
字幕翻訳:小山美穂 字幕監修:水谷江里 
後援:ポーランド広報文化センター 
配給:ハーク
© 2019 Aurum Film Bodzak Hickinbotham SPJ.- WFSWalter Film Studio Sp.z o.o.- Wojewódzki Dom Kultury W Rzeszowie - ITI Neovision S.A.- Les Contes Modernes
公式サイト:http://hark3.com/seinaru-hanzaisha/
★2021年1月15日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開


posted by sakiko at 12:30| Comment(0) | ポーランド | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

パリの調香師 しあわせの香りを探して  原題:Les parfums

paris parfums.jpg

監督・脚本:グレゴリー・マーニュ
出演:エマニュエル・ドゥヴォス、グレゴリー・モンテル、セルジ・ロペス、ギュスタヴ・ケルヴェン、ゼリー・リクソン、ポリーヌ・ムーレン

パリ。香水調香師の女性と、離婚調停中で親権が欲しい男性が出会う。

離婚調停中のギョームは、パリの高級アパルトマンに住むアンヌ・ヴァルベルグの運転手の職を得る。24平米のワンルームでは隔週娘と暮らすのさえ難しいと指摘され、やっと得た仕事でなんとか広い部屋に引っ越したいと願っている。アンヌは仕事先に車で送迎させるだけでなく、洞窟で匂いの成分のメモをギョームに取らせたりする。そんなある日、送り届けて待機する予定だったパーティに同席することになる。そこでギョームは、アンヌがかつてディオールの香水“ジャドール”をはじめ数々の名作を作った天才調香師だと知る。4年前に突然嗅覚障害に陥り、地位も名声も失い、嗅覚を取り戻すも、今は地味な仕事のみを請け負っているのだ。心を閉ざし、人との関わりを持たずにいるアンヌに、率直にものを言うギョーム。心をほだされ、アンヌは再び香水を作りたいと願うようになるが、また嗅覚を失ってしまう・・・

これまで全く違う世界で暮らしてきたアンヌとギョームの出会い。挫折して、心を閉ざしてきたアンヌが、また挑戦してみようという気持ちになったのは、ギョームのちょっとした言葉でした。ギョームもまた、アンヌから娘との関係のことで良いヒントをもらいます。私たちの人生にも、そんな出会いの積み重ねがあることを思い起こさせてくれます。

それにしても、香水調香師という仕事、嗅覚を失うというのは致命傷ですね。 『パフューム ある人殺しの物語』は、2007年製作のドイツ映画ですが、やはりパリを舞台にした超人的な嗅覚を持つ男が香水調香師に弟子入りするという話でした。香水というとフランスというイメージがあります。日本人はどちらかというと、無臭が好みではないでしょうか。自分の匂い(臭い!)を消してくれるようなものがあればと思うほど! と、余計なことを思ってしまいましたが、本作、エマニュエル・ドゥヴォスとグレゴリー・モンテルのかもし出す匂いがなんとも素敵です。(咲)


大人になり切れない男と女が出会う。互いに相手に欠けているものを補ってあげることで、それぞれが今までの自分の生き方を見つめ直す。そして新しい一歩を踏み出していく。いくつになっても人生はリセットできることを改めて感じさせてくれる作品です。下手に恋愛を絡ませずにハッピーエンドに繋げた監督の演出は幅広い層に共感を呼ぶのではないでしょうか。
ところで、アンヌの仕事が興味深いです。調香師の仕事は香水などの香りを作ることだと思っていましたが、アンヌはさまざまな場面で香りを変えて異臭を消す依頼を受けていました。もしかすると私たちの生活のすぐそばにも、アンヌのようなプロフェッショナルの仕事によって心地いいものに変えられているものがあるのかもしれませんね。(堀)


2019年/フランス/フランス語/101分/シネスコサイズ
配給:アットエンタテインメント
公式サイト:http://parfums-movie.com/
★2021年1月15日(金)よりBunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開


posted by sakiko at 12:19| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年01月09日

恋する遊園地(原題:JUNBO)

koisuru.jpg

監督・脚本:ゾーイ・ウィットック
出演:ノエミ・メルラン(ジャンヌ)、エマニュエル・ベルコ(母マーガレット)、バスティアン・ブイヨン(マルク)

内気なジャンヌは遊園地のミニチュアを作るのが好き。子どもの頃から通っていた遊園地の夜間スタッフとして働き始めた。母マーガレットはジャンヌの父とは別れてしまったが、いつも恋人がいて奥手な娘を心配している。遊園地のアトラクション”ムーブ・イット”に出会ったジャンヌは、煌々とライトに照らされた美しいボディに一目ぼれしてしまった。「ジャンボって呼んでいい?」と思わず語りかけると、それにこたえるかのようにライトが点滅した。心が通い合ったと感じたジャンヌは、毎日ジャンボに会うのが楽しみになる。

遊園地のアトラクションに恋してしまった女性のラブ・ファンタジーって?!と興味しんしん。ジャンヌを演じるのは『燃ゆる女の肖像』でモデルの女性と恋に落ちる女流画家を演じたノエミ・メルラン。ドレス姿からジーンズの内気な娘に変っていて、すぐにはわかりませんでした。なんと不思議なストーリー!と思ったら、エッフェル塔に恋して結婚式まで挙げてしまったアメリカ人女性がいて、その新聞記事に着想を得たのだそうです。現実は映画よりも奇なりでした。
恋愛体質の母親はエマニュエル・ベルコでした。この方は『バハールの涙』(2018)で隻眼の女性ジャーナリストを演じていました。8日に公開の『ハッピー・バースデー 家族のいる時間』では、お騒がせ長女クレール役。今回は「機械に恋するなんて!娘がおかしくなった!」と騒ぎ立てるのですが、それをなだめる彼氏がいいです。ファンタジー+人情劇。ジャンヌとジャンボとの情交?シーンありR15+。(白)


主人公のジャンヌが恋に落ちるアトラクション“ジャンボ”は制作陣がフランスでイメージ通りのアトラクションを見つけて撮影地となるベルギーへ移動させ、1年かけてカスタマイズしました。作品内では人気のないアトラクション扱いを受けますが、ジャンヌとの夜の逢瀬(?)のときは電光が煌びやかで乗ってみたくなります。
ジャンヌはもともと遊園地好きで、自分の部屋を遊園地のように飾り立てていました。仕事も夜の遊園地のアフターケア。母の車で勤務する遊園地に出勤するのですが、冒頭のそのシーンがあり、ジャンヌには父親がおらず、恋愛体質の母親に振り回されてきたことが伝わってきます。親の愛に飢えていたジャンヌが家族連れの多い遊園地に魅かれるというのは渇望する愛情の裏返しでしょうか。
本作の主人公はジャンヌですが、母親がジャンヌのことを受け入れ、愛情を示してあげることの大事さに気づくまでを描いた作品でもあるかもしれません。(堀)


2019年/フランス、ベルギー、ルクセンブルク/カラー/シネスコ/94分/
配給:クロックワークス
(C)2019 Insolence Productions - Les Films Fauves - Kwassa Films
http://klockworx-v.com/jumbo/
★2021年1月15日(金)より新宿バルト9ほかにて公開
posted by shiraishi at 22:43| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

パリ・オペラ座バレエ・シネマ 2作品

operaza_pos.jpg

世界最古の歴史あるパリ・オペラ座バレエ団の公演を収録した映像作品を映画館で鑑賞することができます。大きな画面でアップになるエトワールたちの表情や指先までの細やかな演技も、特等席の気分でご覧いただけます。

「ドン・キホーテ」
有名なセルバンテスの小説「ドン・キホーテ」に基づいていますが、バレエでは脇役。理髪師バジルと宿屋の娘キトリの恋にドン・キホーテとサンチョ・パンサが手助けをします。娘の金持ちとの縁談を進めたい父親に、反発したキトリが狂言自殺を図りますがコメディ仕立てで賑やかです。闘牛士、ドン・キホーテが夢見るドルネシア姫(キトリと二役)ら多彩なキャラクターが色鮮やかな衣装と華麗なステップで舞台を縦横に動き回ります。
operaza_don.jpg
(C)Julien Benhamou / Opera national de Paris

音楽:レオン・ミンクス
編曲:ジョン・ランチベリー
振付/演出:ルドルフ・ヌレエフ(マリウス・プティパの原振付に基づく)
キャスト:ドロテ・ジルベール(キトリ)、カール・パケット(バジル)ほか
パリ・オペラ座での上演日:2012年12月18日(バスティーユ)
上映時間:約136分

「眠れる森の美女」
生まれたばかりのオーロラ姫の洗礼式に国王夫妻が妖精たちを招待し、それぞれから贈り物を受け取っていました。招かれなかった邪悪な妖精カラボスは、姫が成長して糸紡ぎで指をさして死ぬという呪いをかけてしまいます。悲嘆にくれる中、残っていたリラの妖精が呪いを和らげる贈り物をします。オーロラは深い眠りに落ちて、王子のキスで目覚めるというものでした。16歳の誕生日、オーロラは糸紡ぎで指をさしてしまい、城も人々も眠りに落ちていきます。

operaza1.jpg
(C)Christian Leiber / Opera national de Paris

音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
振付:ルドルフ・ヌレエフ
キャスト:マチアス・エイマン(デジレ王子)、ミリアム・ウルド=ブラーム(オーロラ姫)他
パリ・オペラ座での上演日:2013年12月16日
上映時間:2時間45分

配給:カルチャヴィル
https://www.culture-ville.jp/parisoperaballetcinema
© 2016-2020 Cutlure-ville, LLC

【東京】
 1/15(金)〜2作品同日公開!
 東劇、新宿ピカデリー
​【愛知・大阪・兵庫・札幌】
 1/8(金)〜『ドン・キホーテ』(東京より先行して公開!)
 1/15(金)〜『眠れる森の美女』
​ミッドランドスクエアシネマ、なんばパークスシネマ、神戸国際松竹、シネマフロンティア
posted by shiraishi at 22:17| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする