2025年02月02日

サラリーマン金太郎【魁】編 

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(C)本宮ひろ志/集英社 (C)2025映画「サラリーマン金太郎」製作委員会

監督:下山 天
脚本:田中眞一
原作:「サラリーマン金太郎」/本宮ひろ志(集英社刊)
出演:鈴木伸之、城⽥優、石田ニコル、文音、影山優佳、竹島由夏、⽶倉れいあ、山口⼤地、斎藤さらら、前田瑞貴、川合智己、佳久創、草川拓弥、水谷果穂、勝矢、⻫藤陽⼀郎、⼋⽊将康、市川知宏、中⽥喜⼦、本田博太郎、尾美としのり、浅野温子、榎⽊孝明

マグロ漁船の漁師からヤマト建設に入社した矢島金太郎(鈴木伸之)。サラリーマン最初の大仕事に地熱発電所建設のプロジェクトを任される。九州の小さな温泉町に赴任すると、工期が3か月遅れていることを知る。工事現場を取り仕切る土木会社の一ツ橋社長(勝矢)が、下請け料とは別に2億円をよこせという。支払われるまで工事はボイコットすると宣言。怒り心頭の金太郎は一ツ橋社長にケンカを挑むが、返り討ちにあって大怪我をしてしまう。怪我の療養中に温泉旅館を手伝うようになった金太郎は、これまで見えてなかったさまざまな事情や、発電所建設を反対する町の人の思いに気づいていく。しかし裏で全てを操る強大な黒幕の存在が浮かび上がり……。

隣接の温泉場では、地熱発電所が町おこしになると最初は賛成していたのに、地熱発電所ができると温泉が出なくなると、誰かから吹き込まれ、温泉組合が工事を阻止しようと座り込みをしています。金太郎があれこれ探ってみると、「石油と原発があるから地熱は阻止!」という、日本の政治を陰であやつる人物が浮かび上がってきます。既得権益を守るため、開発が遅れるということが多々あることに思いが至ります。(それどころか、すでに進んだものが開発されているのに、実用に移すのに順番待ちということも多々)
漁師からサラリーマンになった金太郎。前編【暁】編では、建築会社の業務にも、会社という組織にも疎かった金太郎が、周りの人たちに育てられていく姿が描かれていました。J後編でも、熱血漢を見守る人たちが周りにいて、金太郎が企業の一員、そして人間として成長していく姿を楽しませていただきました。(咲)

前編 サラリーマン金太郎【暁】編
http://cinejour2019ikoufilm.seesaa.net/article/508249532.html

2025年/日本/95分/G
企画・製作:TIME 制作:楽映舎
配給:ライツキューブ  配給協力:ティ・ジョイ
公式サイト:https://salaryman-kintaro.com/
★2025年2月7日(金)より新宿バルト9他にて全国公開

posted by sakiko at 19:48| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ハイパーボリア人  原題:Los Hiperbóreos

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© Leon & Cociña Films, Globo Rojo Films

監督:クリストバル・レオン、ホアキン・コシーニャ
脚本:クリストバル・レオン、ホアキン・コシーニャ、アレハンドラ・モファット
出演:アントーニア・ギーセン

女優で臨床心理学者でもあるアントーニア(アント)・ギーセンは、謎の幻聴に悩まされるゲーム好きの患者の訪問を受ける。彼の話を 友人の映画監督レオン&コシーニャにすると、2人はその幻聴は実在したチリの外交官にして詩人、そしてヒトラーの信奉者でもあったミ ゲル・セラーノの言葉であることに気づき、これを元にアントの主演映画を撮ろうと提案する。2人に言われるがまま、セラーノの人生を振り 返る映画の撮影を始めるアントだったが、いつしか謎の階層に迷い込み、チリの政治家ハイメ・グスマンから、国を揺るがすほどの脅威が記録された映画フィルムを探す指令を受ける。カギとなる名前は”メタルヘッド”。探索を始めるアントだったが、やがて絶対の危機が彼女を 待ち受ける……!

制作に5年を費やした『オオカミの家』の反動で、突如、実写映画に挑んだチリのアーティスト・デュオ、レオン&コシーニャの長編第2作。第77回カンヌ国際映画祭監督週間でお披露目されました。

タイトルの「ハイパーボリア人」とはギリシア神話や H.P.ラヴクラフトらの創作による「クトゥルフ神話」に登場する架空の民族。この映画では、太古の昔に宇宙からやってきて地球を支配していた半神の巨人たちと説明され、チリという国との驚くべき関係も明らかにされる。

実写、影絵、アニメ、人形、ゲーム、16mmフィルム…… 美術館で人々に制作プロセスを見せながら撮影するスタイルで、摩訶不思議な映像が次々に出てきて、くらくら。
アーリア人の神話では、太古の昔、氷河期が来る前の南極に楽園があって、ハイパーボリア人という薔薇色の白人がいたのだそう。ファンタジーのような話が出てくる前には、ヒトラーを信奉していた伯父の話が出てきて、さらにそれがチリの現代史にまでおよびます。つらい時代だったことを、声高に語るわけではないのですが、つい先日も『私の想う国』を観て、チリの軍事政権時代が人々に暗い影を落としたことを思い起こさせてくれたばかりで、本作にもチリの人たちの思いを感じてしまいました。
それにていも、不思議な映像世界! (咲)


世界4大アニメーションフェスティバルである第48回オタワ国際アニメーション映画祭に出品された短編『名前のノート』も同時上映されます。

◆短編『名前のノート』
ピノチェト軍事政権下で行方不明になった未成年者たちを追悼する重厚な「描き」アニメーション。映像、音響(合唱)ともに、こちらも若者たちとのワークショップによって生み出された。


2024 年 / チリ / スペイン語・ドイツ語 / 71 分 / カラー / 1.85:1 / 5.1ch
字幕翻訳:草刈かおり
公式サイト:https://www.zaziefilms.com/loshiperboreos/
★2025年2月8日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次ロードショー




posted by sakiko at 18:53| Comment(0) | チリ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ヒプノシス レコードジャケットの美学(原題:Squaring the Circle: The Story of Hipgnosis)

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監督:アントン・コービン
出演:オーブリー・パウエル、ストーム・トーガソン(ヒプノシス)、ロジャー・ウォーターズ、デヴィッド・ギルモア、ニック・メイスン(ピンク・フロイド)、ジミー・ペイジ、ロバート・プラント(レッド・ツェッペリン)、ポール・マッカートニー、ピーター・ガブリエル、グレアム・グールドマン(10cc)、ノエル・ギャラガー(oasis)


1968年、イギリス。ストーム・トーガソンとオーブリー・“ポー”・パウエルが共同でデザイン・アート集団「ヒプノシス」を創立した。ケンブリッジでピンク・フロイドのメンバーと出会い、ジャケットやツアーポスターの制作を開始。後にピーター・クリストファーソンが加わり、1970年代を中心に、ピンク・フロイド、ジェネシス、レッド・ツェッペリン、ポール・マッカートニーら数々のアーティストのカバーアートを創作した。斬新・奇抜・洗練…あらゆる言葉が相応しいその独創的なデザインは、それまで宣伝用パッケージにすぎなかったアルバム・ジャケットを芸術の域に高めた。

そうそうたるアーティストのカバーアートを製作した2人。現在のようにパソコンを駆使したり、簡単に写真を合成したりはできず、写真撮影は現地で。予算を湯水のように使い、とてつもなく高くついても、出来が良くてアルバムが売れれば問題なし。ヒプノシスは業界の旗手となり、トップにのぼりつめ長く君臨しました。しかし、後にやってきた映像化の潮流に乗り遅れてしまい、倒産の憂き目も見ます。
プロのデザイナーの仕事の様子を見るのはとても面白く、次々とあふれ出すアイディアを形にしていくのに感心しきり。何もないところからモノが生まれていくのは、音楽も美術も同じ。歌った本人たちも自分たちのアルバムが、目に見えるアートとなって力強く発信されていくのは嬉しかったでしょう。
現在のように視聴させてもらえる設備もないころ、レコードジャケットを見て一目ぼれ、「ジャケ買い」をしたファンも多かったはず。音楽を聴くだけでなく、部屋の棚や壁に大切に飾っていたに違いない!かく言う私もそうやっておりました。高校の美術の時間にレコードジャケットをデザインする課題が出たこともありました。写真は使わず、ネイビーブルーの紙にポスターカラーで、曲名を大小様々な字体を使って書いたのを思い出しました。今は昔…。
このドキュメンタリーでは、2人の偉業についての賛美が寄せられています。ただ、この上ない良き相棒だった2人がある時点からかみ合わなくなり、たもとを分かつことになりました。先に逝ったストーム・トーガソンについて語るオーブリー・パウエルの表情が胸に残りました。(白)


1960年代から70年代にかけて、ラジオでよく洋楽を聴いていましたが、ピンク・フロイドやレッド・ツェッペリンの音楽は、なんとなくサイケデリックなイメージで、私の好みでないと思っていました。妹がレコードをよく買っていて、おそらく、ジャケットをみて、そう思ったはずなので、知らないうちに「ヒプノシスの作品」を目にしていたのかもしれません。でも、今回、本作に出てきた彼らの曲は、それほどとんがってなくて、意外と私好みの曲でした。
こだわって作ったジャケットには、肝心のミュージシャンの名前が、すごく小さいものもあって、逆にそれで興味を惹くという効果もあったのかも。それこそ、ジャケットそのものがアート! 「ヒプノシス」の二人の物語に、わくわくしました。
ネットもなくて、ミュージシャンの顔を知る機会も少なかった時代です。
1980年代に、香港のアラン・タムの歌に惹かれ、香港旅行に行く先輩に、「カセットでなく、レコードを買ってきて」とお願いしたのを思い出します。レコードの方が、写真が大きいからという理由でしたが、探すのも大変、持って帰るのも大変だと後から悟って、申し訳ないことをしたと思ったものです。(咲)



2022年/イギリス/カラー/101分
配給:ディスクユニオン
(C) BMG Rights Management (UK) Ltd and Hipgnosis Songs Fund Ltd 2022. All rights reserved.
https://www.hipgnosismovie.com/
★2025年2月7日(金)YEBISU GARDEN CINEMAほか全国ロードショー

posted by shiraishi at 11:02| Comment(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

大きな玉ねぎの下で

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監督:草野翔吾
脚本:高橋泉
ストーリー原案:中村航
撮影:小松高志
音楽:大友良英
主題歌:asmi
出演:神尾楓珠(堤丈流)、桜田ひより(村越美優)、山本美月(篠田沙希)、中川大輔(喜一)、江口洋介(ラジオナビゲーター)、飯島直子(救急救命士)、西田尚美(丈流の母)、原田泰造(丈流の父)/伊藤蒼(今日子)、藤原大祐(虎太郎)、窪塚愛流(大樹)、瀧七海(明日香)

丈流(たける)と美優(みゆう)は、同じ店「Double」で働いているのに、一度もあったことがない。昼はカフェ、夜はバーとして営業していて2人のシフトが違うためだ。連絡用の”バイトノート”が昼と夜に働くバイトをつないでいる。ノートの書き込みの数を重ねるごとに、互いの趣味や悩みも吐露するようになった。そして、「大きな玉ねぎの下(武道館)」で会う約束をした。
そしてもうひとつのドラマがラジオ番組で語られる。30年前、ペンフレンドとやはり「大きな玉ねぎの下」で会う約束をした2人がいた。

アナログな手書きのノートがつなぐ2人。実は互いに顔見知りだったのですが、誤解もあってなかなか気づきません。そして「文通」が育む恋模様。スマホで何でも事足りる今から見れば、時間も手間暇もかかってまだるっこしいやらじれったいやら、でしょうね。仕事の進捗にはあまり役立たなくとも、人と人には待っている時間も必要で、その間さえ楽しいものです。待ち合わせのすれ違いは携帯電話普及のおかげで減りました。急な変更には大助かりですが、その分雑になったり、創造力や想像力を減らしてしまったのではと気になります。

☆爆風スランプが1985年にリリースした「大きな玉ねぎの下で」が、のちに「大きな玉ねぎの下で〜はるかなる想い」とリメイク。15枚目のシングルとしてリリースされた。この曲は今もカバーされ、歌い継がれ、2019年ボーカルのサンプラザ中野くんが「令和元年Ver.」を発表しました。(白)


2025年/日本/カラー/115分
配給:東映
(C)2024映画「大きな玉ねぎの下で」製作委員会
https://tamanegi-movie.jp/
★2025年2月7日(金)丸の内TOEIほか全国ロードショー
posted by shiraishi at 10:57| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

世界征服やめた

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企画・脚本・監督:北村匠海
原案・主題歌:不可思議/wonderboy
出演:萩原利久(彼方)、藤堂日向(星野)、井浦新(友情出演)

サラリーマンの彼方(かなた)は、繰り返される単調な日々に倦み疲れ、自分が誰にも必要とされていないのでは、という無力感に苛まれていた。そんな彼方に話しかけてくれる数少ない同僚が星野だった。明るくて飄々と仕事をこなし、悩みなどないように見えたのはうわべだけだった。

小学生のころにスカウトされて芸能界入りした北村匠海さんは、これまでモデル、俳優、歌手などマルチに活動してきましたが、今作は自ら企画し、脚本、監督を担った作品。”不可思議/wonderboy”さんの楽曲に出逢ったことで「人生が変わった」と、いつかぜひ映画化したいと願い続け、実現したものです。
ポエトリーリーディングのことばが映像となって、揺れ動く彼方と星野の心情をつきつけます。こんなにも生きていくのはしんどいし、辛い。過ぎてしまえばとても短い間なのですが、その渦中にいる若い人にはさぞ響くことでしょう。何度も止まってしまう脚本だったのに、ついてきてくれたという俳優と監督のコラボレーションを見届けてください。
”不可思議/wonderboy”さんは知る人ぞ知る存在から、大きく羽ばたく寸前(2011年6月)に交通事故で亡くなられてしまいました。享年23歳。遺された映像は今も再生され続けています。早口のラップでもよく通る声と、明瞭な発音で聞き取りやすくメッセージがまっすぐに届きます。(白)


2024年/日本/カラー/51分
配給:SPOTTED PRODUCTIONS
(C)「世界征服やめた」製作委員会
https://sekaiseifuku-movie.com/
★2025年2月7日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国ロードショー
posted by shiraishi at 10:56| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする