2020年08月14日

シリアにて  原題:Insyriated  英題:In Syria

syria nite.jpg

監督・脚本:フィリップ・ヴァン・レウ
出演:ヒアム・アッバス(『シリアの花嫁』『ガザの美容室』)、ディアマンド・アブ・アブード(『判決、ふたつの希望』)、ジョリエット・ナウィス、モーセン・アッバス、モスタファ・アルカール、アリッサル・カガデュ、ニナル・ハラビ、ムハマッド・ジハド・セレイク

内戦下のシリア。戦地に赴いた夫の留守を預かるオームは、3人の子と義父、そして隣人の若夫婦と共にアパートの一室に身を潜めている。赤ちゃんを抱えた隣人ハリマの夫が、レバノンに脱出する手続きに出かけていくが、外に出た途端、スナイパーに撃たれてしまう。窓辺で目撃したメイドがオームにそのことを伝えるが、ハリマにはとても言えない。やがて、ドアの外に男の気配がする・・・

ドアの内側には、しっかり木が打ち付けられているのですが、押し入られてしまいます。気丈に対峙する主婦オームを演じたのは、イスラエル生まれのパレスチナ人の名女優ヒアム・アッバス。若い娘たちを守るため、押し入った男たちの犠牲になるハリマを、『判決、ふたつの希望』での弁護士役が記憶に新しいディアマンド・アブ・アブードが演じています。
ある一日を描いた本作。この緊迫感の中で、シリアの人たちは暮らしているのだと、ひしひしと感じさせられました。タイトルにシリアとあるので、シリアの話なのだとわかるのですが、政治的なことを語りたい映画ではなく、戦争で犠牲になる庶民を描きたかったのだと思いました。
そも、シリアではいろいろな勢力がはびこっていて、まさに誰が敵かわからない状況。
イスラーム映画祭5で、シリア難民を描いた『ゲスト:アレッポ・トゥ・イスタンブール』上映後のトークで、山崎やよいさん(考古学者/シリア紛争被災者支援プロジェクト)が語っていた言葉を思い出します。
「シリアで起こっているのは戦争ではなくて、大虐殺。政権に従わない者はテロリストとされてしまう」「自由と尊厳を語る有象無象のグループがいます」
昨年のSKIPシティ国際Dシネマ映画祭で上映された『私の影が消えた日』(監督:スダーデ・カダン)でも、内戦下のシリアで、誰が敵かわからない様子が描かれていました。
また、シリアの人たちが、もう何年にもわたって独裁政権に苦しめられてきたことは、『カーキ色の記憶』(2016年/カタール)で語られています。

この数年、シネジャのサイトで紹介したシリアが舞台の映画をリストアップしてみました。どれも、内戦下で苦しむ人たちを描いた映画ばかりです。
『それでも僕は帰る ~シリア 若者たちが求め続けたふるさと~』(シリア/2013年)
『シリア・モナムール』(2014年/シリア・フランス)
『ラジオ・コバニ』(2016年/オランダ)
『ラッカは静かに虐殺されている』2017年/アメリカ
『アレッポ 最後の男たち』(2017年/デンマーク・シリア)
『娘は戦場で生まれた』(2019年/イギリス、シリア)
一刻も早くシリアに平和が訪れて、明るいシリアを描いた映画ができることを願ってやみません。(咲)


シリアを描いた映画としては『娘は戦場で生まれた』が記憶に新しいですが、内戦状態で爆撃が毎日あり、緊張が続く中で暮らす人々の姿を見るたびに、私たちに何かできることはないのか、映画を観ている場合じゃないと、いつも心がざわつきます。この映画はドキュメンタリーではないものの、やはり観ているだけで緊張が伝わってきました。こんな中でも強盗団が出現するというのにも驚きましたが、このコロナ禍で留守になった店舗に泥棒が横行していると聞き、こういう状況だから、人の弱みに付け込む人が出てくるのかとも思う。シリアでの緊張した中での1日を描いた作品ではあるけど、助け合う人々の姿にかすかな希望を忘れてはならないと思った。銃で撃たれたハリマの夫は夜になってやっと搬出されたけど、無事だったのだろうか。『娘は戦場で生まれた』に出てきたような病院はまだ残っているのだろうかと考えてしまった(暁)。

シリアは紛争地域で危険であることは分かっているものの、取り巻く情勢について、恥ずかしながらよくわかっていない。そんな状態でこの作品を見て、理解できるだろうかと少し不安を感じながら見始めたのだが、全く問題なかった。もちろん分かっていれば、より作品を理解できたに違いない。しかし、何の知識がなくても、戦争は絶対にしてはいけないことだという監督の強い思いは伝わってきた。
家族と一緒に穏やかに暮らしたい。ただ、これだけのことをするのに、みな命懸けとは!これはシリアだけでなく、すべての紛争地域で苦しむ人々の物語である。(堀)


第67回ベルリン映画祭パノラマ部門 観客賞
第30回東京国際映画祭(2017年) ワールド・フォーカス部門で上映

2017年/ベルギー・フランス・レバノン/アラビア語/カラー/86分
配給:ブロードウェイ
公式サイト:https://in-syria.net-broadway.com/
★2020年8月22日(土)より岩波ホールほか全国順次公開
posted by sakiko at 10:12
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