2020年02月16日

ソン・ランの響き(原題:Song Lang)

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監督・脚本:レオン・レ
プロデューサー:ゴ・タイン・バン
出演:リエン・ビン・ファット(ユン)、アイザック(リン・フン)、スアン・ヒエップ

80年代のサイゴン(現・ホーチミン市)。高利貸しのもとで働く取り立て屋のユンは、返済が遅れた者には容赦がなく「雷のユン兄貴」と一目置かれていた。カイルオン(大衆歌舞劇)の劇場に行き、払えないならと衣裳にガソリンをかけていたところ、花形役者リン・フンが止めに入る。借金のかたにと腕時計を差し出すが、ユンは受け取らなかった。
翌日劇場に行ったユンはリン・フンの舞台にすっかり魅せられていた。たまたま食堂で酔客にからまれていたリン・フンを助け、昏倒した彼を自宅に連れ帰る。舞台に穴をあけた上、カギを落として帰れないリン・フンはしかたなくユンの部屋に泊まることになってしまった。ゲームに興じ、屋台で食事をするうち、2人は自分の生い立ちを打ち明けあう。ユンの母はカイルオンの女優、父は伴奏者だった。父の残した楽器、ソン・ランと月琴を大切に持っている。ユンの父の書き残した詩を即興でリン・フンが歌い、ユンが伴奏する。その腕前にカイルオンの劇団に入るようにとリン・フンは薦める。

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違うタイプのハンサムな二人が主演して、歌舞劇カイルオンを背景に「ボーイ・ミーツ・ボーイ」ストーリーが描かれます。ユン役のリエン・ビン・ファットはバラエティ番組のMCとして活躍、これが映画初出演。本作はTIFF2018の「アジアの未来」部門で上映され、リエンは新人俳優に贈られるジェムストーン賞を受賞しました。
リン・フン役のアイザックはダンス・ボーカルグループ(365daband)のリーダーだった人気アイドル。カイルオンの歌唱も踊りも特訓。ベトナム映画祭2018で上映された『フェアリー・オブ・キングダム』では王子役で主演しています。王子様顔ですね。
カイルオンは「改良」のことで、古臭い歌舞劇を改良してもっと観てもらおうと作られて100年ほどになるのだそうです。昔から知られた演目や国内外のものを取り込んだ大衆歌舞劇で南部で盛んになったもの。日本の大衆演劇と共通点があるのではないかしら。
映画の中で演じられる「ミー・チャウとチャン・トゥイー」は、敵対する国の姫と王子の悲恋物語で、まるでロミオとジュリエットです。政略結婚させられた二人ですが、互いに愛し合い親の説得を試みますが、父親たちの欲から引き裂かれてしまいます。この役で情が足りないと言われていたリン・フンがユンに会った後、変わったと褒められます。腐女子のみなさま、萌えますよね。舞台裏のようすなども面白いです。
タイトルの「ソン・ラン」は、月琴を弾く足元で拍子やリズムをとるために使われる楽器。足で踏むカスタネットのような打楽器。ポスターの「響き」のきの字の下にあるのがそうです。作中でも冒頭でユンが手に持っているところが映りますのでよく見てね。(白)


2018年の東京国際映画祭で初めて観た時、ベトナムにもこういう歌舞劇カイルオンというのがあるのだと知った。中華圏にも同じような形態(服装とか使う道具など)の歌舞劇があるから影響はあるのかも。カイルオンの家に育ったユンは、父に反発して家を出て取り立て屋をしていたけど、月琴とソン・ランは持って出ていたので、やはり家業に未練はあったのかも。ユンとリンの二人は最低の出会いをしてしまったけど、通じるものがあって、理解し合えたということなのでしょう。二人が即興で演じるシーンがそれを物語っていた。この映画を観た時、月琴のほうに目が行ってしまって、それがソン・ランだとばかり思っていたら、足元のリズム楽器がソン・ランだそう。歌舞劇の開始を告げる大事な役目をするという。
どこの国でも、伝統的な芸術は、新しい文化に押されてすたれていくものも多い。ベトナムでもそういう傾向があったらしいが、この映画のヒットでカイルオンに興味を持つ若い人も多くなったという。この映画のプロデューサーは『サイゴン・クチュール』と同じゴ・タイン・バンさん。『サイゴン・クチュール』もヒットし、ベトナムの伝統的な服装アオザイも新たな流れがでてきたと聞いたので、映画の影響は大きいと思った。
ユンを演じたリエン・ビン・ファットさんは、この演技でジェムストーン賞を受賞しましたが、今回、日本公開のため来日したレオン・レ監督とリエン・ビン・ファットさんに聞いたら、この作品はベトナムで公開された後、海外での初めての上映が東京国際映画祭だったそうで、海外の映画祭で初めて評価されたのがすごく嬉しかったとリエンさんが言っていた。その時、東京で次回作に通じる出会いがあったよう。次回作も楽しみ(暁


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2018東京国際映画祭オープニングで 左レオン・レ監督、右リエン・ビン・ファットさん

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リエン・ビン・ファットさんがジェムストーン賞を受賞


歌舞劇カイルオンを背景にした物語に、『さらば、わが愛/覇王別姫』(1993年)を思い浮かべ、思いがけない結末に『藍宇 〜情熱の嵐〜』(2001年)を思い出しました。あからさまに二人の関係を描いたものではないのですが、根底に流れるムードが二つの作品に通じるものがありました。切なさが今も蘇ります。(咲)

2018年/ベトナム/カラー/シネスコ/102分
提供:パンドラ
配給協力:ミカタ・エンタテインメント
配給宣伝:ムービー・アクト・プロジェクト
(C)2018 STUDIO68
http://www.pan-dora.co.jp/songlang/
★2020年2月22日(土)より新宿K's cinemaほか全国順次ロードショー




posted by shiraishi at 13:36
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