2019年04月17日

ある少年の告白(原題:BOY ERASED) 

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監督・脚本:ジョエル・エドガートン
原作:ガラルド・コンリー
音楽:ダニー・ベンジー、サウンダー・ジュリアンズ
撮影:エドゥアルド・グラウ
出演:ルーカス・ヘッジズ、ニコール・キッドマン、ラッセル・クロウ、ジョエル・エドガートン、グザヴィエ・ドラン、トロイ・シヴァン

大学生になったジャレッド(ルーカス・ヘッジズ)は思いがけない出来事をきっかけに、自分は男性が好きであることに気づく。意を決して牧師の父(ラッセル・クロウ)と母(ニコール・キッドマン)にその事実を告げるが、父と母は息子の言葉を受け止めきれない。
父は仲間の助言を得て、息子に同性愛を矯正する施設に入ることを勧めた。母が運転する車で、ジャレッドは施設へと向かう。そこで行われていたのは、自らを偽り、別人のように生きることを強いる〈口外禁止〉だというプログラムだった。施設に疑問を抱いたジャレッドは、遂にある行動を起こす。

子どもから同性愛を告白されたとき、にっこり笑って「あら、そうだったのね。で、素敵なお相手はいるの?」と反応できる親は何人いるだろうか。いくつものLGBTの映画作品を見て、同性愛は決して異端なことではないとわかっていても、私はきっと返事に詰まってしまうだろう。ましてや、それがたった1人の子どもならなおのこと。
だから、ラッセル・クロウやニコール・キッドマン演じる両親の戸惑いはすんなり共感できた。声を荒げて否定するのではなく、広くアドバイスを求めた上で対処方法を模索する。父親が牧師を務める理知的な家庭らしい。アメリカの良心を象徴するようなラッセル・クロウにはぴったりの役どころである。ただ、そんな夫に黙って従う貞淑な妻はニコール・キッドマンには似合わない。と、思っていたところ、後半からじわりじわりと彼女らしさを醸し出し、一気にひっくり返す。納得の配役だった。そして、エンドロールに映し出されたモデルになった親子の写真を見て驚いた。ラッセル・クロウとニコール・キッドマンが彼らにそっくりなのである。本作は原作者ガラルド・コンリーの回想録だが、幸せそうな現在の家族写真にほっとした。(堀)


主演のルーカス・ヘッジズ(『マンチェスター・バイ・ザ・シー』『スリービルボード』など)は、約1ヶ月後に公開される『ベン・イズ・バック』でもジュリア・ロバーツの息子役に扮している。本作のニコール・キッドマンに続き、大物女優を母親に迎える心境は如何なるものかと映画内容から意識が離れてしまうほど、ヘッジズの活躍ぶりは目覚しい。本作でも福音派の牧師を父に持ちながらゲイとしての性自認をした葛藤、惑い、悲哀、抵抗、屈折、悲観、信仰、従順、隷属、虚偽、欺き、思慕、恋情、否定、怒り、解放といった内省から激情に至るまで、様々な感情を表現してみせる。それも”汗をかいた熱演”風ではなく、いとも自然に、顔筋さえ動かすことなく、瞳の芝居だけで内心を顕在化する技量は今のハリウッド若手俳優の中では郡を抜くのではないか。両親役の大スター、ラッセル・クロウとニコール・キッドマンも霞んでしまうほどの存在感を示す。
福音派は米国に於いて保守派の白人に多く信者を持つ。極端なキリスト教原理主義ともいうべき教義は、禁酒時代を扇動した宗派とも言われる。所謂、人間の自由な欲望を禁じ諌める傾向を有すのだ。
本作では自由な性的志向を矯正しようとする施設を福音派が運営する様がリアルに描かれる。原作になったノンフィクションが出版されて以降も、未だ施設が存在する事実に驚く。施設内での人格否定・攻撃するプログラムは凄まじい。参加者は「加担」するように仕向けられるのだから、深刻なトラウマを抱えるのは必然だ。この治療法には何ら科学的根拠がなく、自殺率の高さが指摘されたにも関わらず、今までに約17万人が体験したといわれる。虐待を「神の名の下に」と全て神に帰結してしまう偽善性。本作に見え隠れする米国の闇は深い。
重い主題を扱っているようだが、本作に出演もしている名優ジョエル・エドガートンの監督としての差配、演出力。多彩な俳優陣の個性溢れるアンサンブル演技に見入ったり、楽しめるカタルシスは用意されている。力作をお見逃しなく!(幸)


2018 年/アメリカ/115 分/
配給:ビターズ・エンド/パルコ
(C) 2018 UNERASED FILM, INC.
公式サイト:http://www.boy-erased.jp/
★2019年4月19日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー!
posted by ほりきみき at 23:53
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