2022年07月16日

あなたと過ごした日に(原題: El olvido que seremos)

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監督:脚本:フェルナンド・トルエバ
原作:マリオ・バルガス・リョサ『El olvido que seremos(原題)』(05)
撮影:セルヒオ・イバン・カスターニョ
出演:ハビエル・カマラ (エクトル・アバド・ゴメス)、フアン・パブロ・ウレゴ (青年期の息子 エクトル)、パトリシア・タマヨ (セシリア)、ニコラス・レジェス・カノ (キキン/幼少期のエクトル)

70年代のコロンビアの都市、メデジン。エクトルは5人姉妹の中の唯一の男の子として生まれ、父と同じ名前をもらった。父は医師であり、公衆衛生が専門の大学教授であり、貧しい地域で「子どもたちの未来」プロジェクトを立ち上げ、人権の擁護のため活動にも尽力していた。エクトルはそんな父が大好きで心から尊敬している。姉妹の一人が重い病気になり、父は悲しみと怒りから政治活動にのめりこんでいく。平等で自由な社会を目指す父は、度重なるいやがらせや圧力を受けるようになった。

原作のエクトル・アバド・ファシオリンセが、この映画の息子のエクトル。父の応援を得て作家になる夢を叶え、現代のスペイン語文学の代表作家となりました。息子の視線で父親のエクトル・アバド・ゴメス博士の生涯を綴ったこの回想録はベストセラーとなりました。20カ国以上で出版されていますが、日本語訳は残念ながらないようです。
映画は幸せに暮らしていた幼少期から、内戦が激化していた80年代、父がメデジン市長選に立候補、波乱の生涯を閉じるまでが描かれています。
愛情とユーモアあふれる父・ゴメス博士を演じたのは、ハビエル・カマラ。ペドロ・アルモドバル監督『トーク・トゥ・ハー』(2002)の看護師役が強烈に印象に残っています。ほかには『しあわせな人生の選択』(2016)。最近はテレビに出演しているようです。(白)


コロンビア第二の都市メデジンといえば、今年4月29日に公開された『フェルナンド・ボテロ 豊満な人生』をまず思い出しました。ふっくらした独特の画風の画家フェルナンド・ボテロが、メデジン生まれ。誘拐や殺人の蔓延する故郷メデジンの汚名を返上したいと多くの作品を寄贈したものの、1995年、メデジンのサン・アントニオ広場でボテロの鳩の銅像に仕掛けられた爆弾でテロが発生したことが描かれていました。
もう一つ思い出したのが、『エスコバル 楽園の掟』(2016年3月26日公開)。メデジン・カルテルという犯罪組織のことが描かれていました。
父エクトル・アバド・ゴメス博士は、そんなメデジンを政治でよくしようと市長選に挑むのです。崇高な精神の持ちながらも極めて人間的な父の姿を息子の目で描いた物語が心に響きました。
公衆衛生の専門家である父エクトルが幼い息子に感染症予防には手をよく洗うことと教えています。私も小さい時から、母によく言われましたが、コロナ禍の今、あらためて手を洗うことの大切さを思いました。(咲)



●2020年カンヌ国際映画祭オフィシャルセレクション、2020年アカデミー賞国際長編映画賞コロンビア代表

2020年/コロンビア/カラー/シネスコ/136分
配給:2ミーターテインメント
(C)Dago Garcia Producciones S.A.S. 2020
https://www.amped.jp/anatato/
★2022年7月20日(水)東京都写真美術館ホールほか全国順次公開

posted by shiraishi at 22:00| Comment(0) | コロンビア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする