2022年04月10日
メイド・イン・バングラデシュ 原題:Made in Bangladesh
監督・脚本・製作:ルバイヤット・ホセイン
撮影:サビーヌ・ランスラン
出演:リキタ・ナンディニ・シム、ノベラ・ラフマン、パルビン・パル、ディパニタ・マーティン
バングラデシュの首都ダッカ。縫製工場で働く23歳の主婦シムは、毎日、せわしなくミシンを踏み続けている。時には、男性ボスから、納期に間に合わせるよう残業し、工場で寝て、朝になったら帰れと言われることもある。扇風機を止められ、抗議するシムたち。朝帰ると、家では、無職の夫がシムの給金をアテにして待っている。
そんなある日、労働者権利団体のナシマ・アパに取材したいと声をかけられる。シムは、13~14歳の時、継母が40男と結婚させようとしたので、村を出てダッカに来たこと、恋愛結婚したけど夫は無職で、劣悪な環境の縫製工場で働いていて、給料の未払いが続いていることなど身の上を語る。協会から工場主と交渉するために労働組合を結成することを勧められる。また、当座の生活費を貸す代わりに、工場の写真を撮ってほしいとスマホを渡される。シムは同僚たちと労働法を学び、署名を集め組合結成に向け奔走するが、工場幹部からの脅し、夫や同僚の反対など、さまざまな困難が待っていた・・・
冒頭、所狭しと女性たちがミシンを踏んでいる縫製工場で火事が起こり、サイレンが鳴り続け、白い煙の中を女性たちが階段を駆け下りていきます。
思い出したのが、数年前に耳にしたダッカで縫製工場がいくつも入ったビルの崩落事故。(2013年、ラナ・プラザビル崩落事故とプレス資料にありました。)ユニクロが縫製の拠点を中国からバングラデシュに移したというニュースを聴いたのは、その事故のさらに数年前のことでした。H&MやGUなども既にバングラデシュを拠点にしていて、中国よりも人件費が安いのかと、バングラデシュの人たちを思い、悲しくなったものです。
でも、本作が映し出すのは、虐げられて可哀そうというだけの女性たちではありません。
ルバイヤット・ホセイン監督は、縫製工場で働く女性の社会状況を描きたいとリサーチを重ねる中で、10代半ばからバングラデシュの労働闘争に関わってきたダリヤ・アクター・ドリと出会いました。夫の虐待を受けながらも、勇気があり、尊厳を求める姿に感銘を受け、彼女をモデルに脚本を執筆。映画の95%はダリヤから聞いた事実に基づいているそうです。
ダリヤは、出演する俳優たちに縫製の技術指導も行い、海外の映画祭で上映の折には、監督とともに参加したことも。2020年3月の大阪アジアン映画祭には単独で来日しています。
撮影を担当したのは、フランスの女性撮影監督の第一世代に属するサビーヌ・ランスラン。
同僚の結婚式でカラフルな民族衣装で踊るシムたちの姿や、早朝、出動前のリキシャ(思い思いの絵が描かれた独特のもの)が通りの脇に一列に並ぶさまなど、伝統的なバングラデシュの風情を鮮やかに映し出しています。
アザーン(お祈りの時間を知らせる声)が流れる中。裏通りを家路につき、部屋で静かにお祈りをするシム。幸せな人生を送ってほしいと願わずにはいられませんでした。そして、いわゆる先進国で暮らす私たちが、安価で丁寧に作られた衣服の恩恵を受けているのは、低賃金で働かされている彼女たちのお陰であることを忘れてはいけないと肝に銘じました。(咲)
監督・脚本・製作:ルバイヤット・ホセイン Rubaiyat Hossain
1981年1月24日、バングラデシュ・ダッカ生まれ。バングラデシュで数少ない女性監督の一人。映画製作者のほか、作家、研究者としても活動。米国スミスカレッジで女性学の学士号を取得し、米国ペンシルベニア大学で南アジア研究の修士号を取得。ニューヨーク大学のTisch芸術学部で映画を学んだ。また、バングラデシュの著名な女性の権利NGOで働いていた。2006年以来、バングラデシュのダッカにあるBRAC大学の経済社会科学部で非常勤講師を務める。バングラデシュ独立戦争下で敵兵と恋に落ちた女性を描いたデビュー作“Meherjaan”(2011)、タゴールの詩を背景に葛藤する女性を描いた“Under Construction”(2015)が各国の映画祭で高く評価される。(公式サイトより)
◆岩波ホールにて 初週末 ダッカとつないでオンライン監督舞台挨拶予定!
4.16(土)&4.17(日)14:30の回上映終了後
◆トークイベントを予定!
※いずれも14:30の回上映終了後
4/20(水) 長田華子さん(茨城大学人文社会科学部准教授)
4/23(土) 南出和余さん(神戸女学院大学文学部英文学科准教授)
4/27(水) 佐々木美佳さん(『タゴール・ソングス』監督/文筆家)
5/3(火・祝) 対談
ジェームズ・ミニーさん(フェアトレード専門ブランドピープルツリー社長)
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胤森なお子さん(グローバル・ヴィレッジ代表)
2019年/フランス=バングラデシュ=デンマーク=ポルトガル/カラー/95分
配給:パンドラ
公式サイト:http://pan-dora.co.jp/bangladesh/
★2022年4月16日(土)より岩波ホールほか全国順次公開