2022年05月15日
a-ha THE MOVIE 原題:A-HA: THE MOVIE
監督:トマス・ロブサーム、アスラーグ・ホルム
製作:イングヴィ・セーテル、トマス・ロブサーム
脚本:トマス・ロブサーム
撮影:アスラーグ・ホルム
編集:ヒルデ・ビョルンスタット
出演:モートン・ハルケット、ポール・ワークター=サヴォイ、マグネ・フルホルメン
a-ha。
1982年にポール・ワークター=サヴォイ(ギター)、マグネ・フルホルメン(キーボード)、モートン・ハルケット(ボーカル)の3人によりノルウェー・オスロで結成されたシンセポップバンド。
1985年に革新的なMVが大きな話題を呼んだデビュー曲「テイク・オン・ミー」が米ビルボード1位を獲得。ノルウェーのアーティストとして初めての快挙。
ファーストアルバム「ハンティング・ハイ・アンド・ロウ」が全世界で1,100万枚以上のセールスを記録し、その後もヒット曲が次々に生み出されるが、栄光の影で次第にメンバーの間に溝が生まれていく。
本作は、3人の出会い、バンドの誕生、狂騒の80年代から90年代、解散、そして再結成を経て、いまも進化し続けるa-haの軌跡を追ったドキュメンタリー。
これほどの実績を持つのに、a-haの名前を知りませんでした。さすがに、「テイク・オン・ミー」の印象的な出だしは聴いたことがありました。「売れる曲には必ず耳に残る部分がある」と映画の中で語られていました。確かに! そんなa-haを知らなかった私にとっても、本作は興味深いドキュメンタリーでした。
アニメーションと写真で綴られる少年時代の3人のエピソード。ポールとマグネがボーカルを探していて、声がいい奴がいるとマグネがモートンに最初に会った時のこと。トランペット奏者だったマグネの父は飛行機事故で亡くなっているのですが、その飛行機が落ちるのをモートンが見ていたという偶然。でも、その時には、モートンはマグネとバンドを組むことになるとは思っていなかったそう。
その後、3人でバンドを結成するのですが、曲作りを巡っての意見の違いはしばしば。1985年以来のカメラマンも、3人一緒に撮るのを嫌がられることがあると証言しているほど。解散しても再結成という3人。「音楽を通した絆で一緒に入れた。友情じゃない」と言い切るところがまた凄い。
a-haに親しんできた方たちにとっても、素の彼らの姿をみることができて面白いこと間違いなし! (咲)
a-haの「テイク・オン・ミー」を聞くと今でも学生時代を思い出し、気持ちがアップテンポになってしまう。それなのに、実写とアニメーションが融合した斬新さが話題になったMVのこと、本作を観るまですっかり忘れていた。恥ずかしい…
彼らがメジャーになるまでに経験した辛さ、「テイク・オン・ミー」で爆発的に売れたからこそ始まった苦労。インタビューを交えて丁寧に映し出します。“a-haのこと、実は何も知らなかったんだ”と気づかされつつ、彼らが過ごしてきた40年弱に自分もいろいろ経験してきたことを改めて振り返る。そうして、もう一度聴く「テイク・オン・ミー」は味わいが違っていました。(堀)
1960年代後半から1970年代中頃まではよくラジオを聴いていたのですが、「a-ha」の「テイク・オン・ミー」がヒットした1982年頃にはほとんど聴いていなかったせいなのか「a-ha」の名前は知っていたのに、曲はほとんど聴いたことがありませんでした。でもなんでだろう。「a-ha」という名前はよく聞いたのに。それでもルウェーからイギリスに行き、世界的なグループになったというところで、スージーQがやはり、アメリカからイギリスに行き世界的なロッカーになったというドキュメンタリーを観た後なので、1970年代から80年代に、世界の音楽を引っ張っていたのはイギリスの音楽シーンだったのかもしれないと思った。
それにしても、このところ1960年代から70年代、80年代の音楽シーンを描いたドキュメンタリーが次々と公開され、青春時代によく聴いた音楽の数々を懐かしく聴くことができ、また、当時は映像などほとんどなかったから、その頃の貴重な映像が残っていて、それを観ることができるのが嬉しい。そしてYouTubeでも観ることができるということを知った。40年も50年も前の映像が残っていて、今、観ることができるなんて嬉しすぎる(暁)。
2021 年/ノルウェー・ドイツ/112 分/16:9/ノルウェー語・英語・ドイツ語/5.1ch
日本語字幕:大嶋えいじ、幕監修:勝山かほる
配給:クロックワークス
公式サイト:https://klockworx-v.com/a-ha/
★2022年5月20日(金)新宿武蔵野館ほか全国ロードショー
2021年10月10日
THE MOLE(ザ・モール) 原題:THE MOLE - UNDERCOVER IN NORTH KOREA
監督:マッツ・ブリュガー(『誰がハマーショルドを殺したか』)
出演:ウルリク・ラーセン
10年前、ブリュガー監督のもとに、コペンハーゲン郊外在住の元料理人ウルリク・ラーセンからメールが届く。謎に満ちた独裁国家、北朝鮮の真実を暴くため、自ら潜入捜査するので、それを追ったドキュメンタリーを作ってほしいという。
コペンハーゲンの北朝鮮友好協会に入会したウルリクはたちまち信頼を得て、2012年に協会の一員として北朝鮮を初訪問。文化省の高官カンに迎えられ、北への貢献を称えるメダルを授与される。ウルリクは、現地でKFA(朝鮮親善協会)会長のスペイン人アレハンドロ・カオ・デ・ベノスと出会う。アレハンドロの信頼を得たウルリクは、翌年新設されたKFAデンマーク支部の代表に任命される。2015年、アレハンドロから、北朝鮮に関心がある投資家を探すよう命じられたことをウルリクから報告を受け、監督は、かつてフランス軍の外人部隊に所属していた“ジム”という男を、ミスター・ジェームズという偽の投資家役に起用する。ウルリクとジェームズは、北朝鮮が生産する武器や覚醒剤の違法取引に深く関わり、実態を暴き出していく・・・
マッツ・ブリュガー監督は、映画デビュー作『ザ・レッド・チャペル』(2009)で北朝鮮の怒りを買い、入国禁止になっていて、北朝鮮での撮影は、ウルリク自身の隠しカメラによるもの。よくぞ見つからずに撮影できたと驚きます。怪しまれたら、拘束されるのは必至の北朝鮮。
ウガンダに秘密工場を建設する話が進み、北朝鮮だけでなく、スペイン、ヨルダン、カンボジア・・・と、要人との打合せに飛ぶウルリクたち。2019年、これ以上の潜入は危険との監督の判断により二人は潜入から身を引きます。10年間のスパイ活動を妻に明かすウルリク。「存在が薄くなって、しっかりしてと言いたかった」と、夫がスパイだったとは全く気づいてなかった妻。
『クーリエ 最高機密の運び屋』(9月23日公開)でも、妻たちは夫のスパイ活動に気がついていませんでした。スパイたるもの、まずは家族を欺くことが肝心なのだと、長年、まったく家族に気づかれなかったことに感嘆するばかりです。それにしても、この映画を北朝鮮などの関係者が観て、ウルリクたちに危険が及ぶのではと心配になりました。(咲)
2020年/ノルウェー、デンマーク、イギリス、スウェーデン/135分/DCP/映倫区分G/
協力:NHKエンタープライズ
配給:ツイン
(c)2020 Piraya Film I AS & Wingman Media ApS
公式サイト:https://themole-movie.com/
★2021年10月15日(金)よりシネマート新宿、シネマート心斎橋ほか全国順次公開
2021年08月22日
ホロコーストの罪人 原題:Den største forbrytelsen 英題:Betrayed
監督:エイリーク・スヴェンソン
出演:ヤーコブ・オフテブロ、ピーヤ・ハルヴォルセン、ミカリス・コウトソグイアナキス
ノルウェー警察&市民がホロコーストに加担していた!
1942年10月26日、早朝。まだ薄暗い中、秘密警察を乗せたタクシーが一斉にユダヤ人宅に向かう。その日、ノルウェーに住むユダヤ人全員がオスロ港へと強制連行された。港で待ち構えていたのは、アウシュヴィッツへと向かう船“ドナウ号”だった。
リトアニアからノルウェーに亡命してきたユダヤ人のブラウデ家。次男チャールズは、ノルウェーを代表するボクサーとして活躍し、非ユダヤ人の女性ラグンヒルと結婚し、幸せな日々を送っていた。
1940年4月、ナチス・ドイツがノルウェーに侵攻。ユダヤ人は身分証明書にユダヤ人の印「J」のスタンプが押される。男性はベルグ収容所に連行され、過酷な労働を強制される。ブラウデ家もチャールズと兄イサクに弟ハリー、そして父ヘンツェルの4人が収容所に連行され、家には母サラと、チャールズの妻ラグンヒルが残される。スウェーデンに逃れた姉ヘレーンを追って、母もスウェーデンに逃れることを考えていた矢先、1942年10月26日の朝を迎える・・・
ベルグ収容所にいたチャールズは、「非ユダヤ人の妻に感謝しろ」と、アウシュヴィッツ行きを免れ、生き延びます。本作は、家族を引き離されたブラウデ家に焦点を当てて描いたマルテ・ミシュレのノンフィクションの原作を基に映画化したもの。エイリーク・スヴェンソン監督は、ノルウェー警察や市民がホロコーストに加担していたことを知って、過去のあやまちを知らしめ、今も世界にはびこる人権侵害に目を向けてほしいと警鐘を鳴らしているのです。
なお、事件から70年経った2012年1月、当時のノルウェー・ストルテンベルグ首相は、ホロコーストにノルウェー警察や市民らが関与していたことを認め、政府として初めて公式に謝罪の表明を行っています。
フランスでは、1995年にシラク大統領が、ナチス占領下のヴィシー政権がユダヤ人の強制連行に加担していたことを国家として認めて謝罪しています。
「当時の状況下では仕方なかった」ではなく、二度と過ちを繰り返すことのないよう、映画で描かれた悲劇を胸に刻みたいものです。
もちろん、匿うことで罰せられることも恐れず、ユダヤ人を救った人たちもいて、美談を描いた映画も数多く作られています。本作と同じ8月27日に公開される『沈黙のレジスタンス ユダヤ孤児を救った芸術家』も、後にパントマイムの神様と称えられたマルセル・マルソーが、ナチスに親を殺されたユダヤ人の子どもたちを助けた実話に基づく映画です。併せてご覧ください。(咲)
2020年/ノルウェー/ノルウェー語・ドイツ語/126分/カラー/ビスタ/5.1ch/PG12
日本語字幕:高橋澄
後援:ノルウェー大使館
配給:STAR CHANNEL MOVIES
©2020 FANTEFILM FIKSJON AS. ALL RIGHTS RESERVED.
公式サイト:https://holocaust-zainin.com/
★2021年8月27日より新宿武蔵野館ほか全国順次公開