2022年07月10日

Blue Island 憂鬱之島

2022年7月16日 ユーロスペースほか全国順次公開 その他の劇場情報

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©2022Blue Island project

香港 ここで生きていく

監督・編集:陳梓桓(チャン・ジーウン)
プロデューサー:(香港)任硯聰(ピーター・ヤム)、蔡廉明(アンドリュー・チョイ)/(日本)小林三四郎 馬奈木厳太郎 
撮影:ヤッルイ・シートォウ 
音楽:ジャックラム・ホー ガーション・ウォン 美術:ロッイー・チョイ

現在、過去、未来
自由を求め続け、香港が辿った激動の記録
“香港人”としてのアイデンティティ


香港の自由を求める闘いの歴史を描いた香港・日本合作作品。
一国二制度が踏みにじられた香港。
“文化大革命”(1966~1976年)“六七暴動”(1967年)“天安門事件”(1989年)と世界を震撼させた事件に遭遇し、激動の歴史を乗り越えてきた香港の記憶。そして雨傘革命後の現代、香港市民の自由が急速に縮小してゆくなかで、時代を超えて自由を守るために闘う人たちの姿。文化大革命を逃れ恋人と命懸けで海を渡った陳克治、天安門事件を経て香港へとたどり着いた林耀強、六七暴動の抵抗者から経済人へと変遷していった石中英。異なる時代を生きた実在の3人の話から「自由を守るために闘った人々の記憶」を、ドキュメンタリーとドラマを融合させながら描き出す。
若き日の熱狂や情熱は時代の移り変わりとともに深い闇に埋もれていってしまった。しかし、彼らがいかに抵抗したかという記憶は、香港の歴史に残るかけがえのない瞬間の記録と証言として、市民運動に参加する若者たちへ、多くの励みや示唆を与えている。それぞれの世代の葛藤から、今、未曽有の危機に直面している香港の人々は何を受け止め、これからの自分たちの歴史にどう導いていくのか。この映画は、香港だけでなく、自由を求めるすべての人々とあなた自身の物語でもある。
監督は、香港の雨傘運動を記録したドキュメンタリー『乱世備忘 僕らの雨傘運動』のチャン・ジーウン。プロデューサーは『乱世備忘 僕らの雨傘運動』でも組んだピーター・ヤムと、香港の不安と希望を描いた衝撃作『十年』をプロデュースしたアンドリュー・チョイ。日本側プロデューサーは配給元でもある太秦の小林三四郎と弁護士の馬奈木厳太郎。井上淳一監督の『大地を受け継ぐ』『誰がために憲法はある』や、堀潤監督の『わたしは分断を許さない』もプロディースしている。また日本でのクラウドファンディングを行い、たくさんの日本人の賛同者が協力してできあがった。

2014年、香港の若者たちが未来のために立ち上がった“雨傘運動”の79日間を描いた『乱世備忘 僕らの雨傘運動』のチャン・ジーウン監督の2作目の長編。2017年の山形国際ドキュメンタリー映画祭の時にインタビューする機会があり、名刺交換をした時、すでにこの『憂鬱之島』の構想があって、交換した名刺にはこのチラシの写真が使われていた。その作品が、構想から完成まで5年以上の年月を経て完成し、日本公開されることになってとても嬉しい。一時は出来上がるかどうかと不安を持っているようだったけど、クラウドファンディングで日本の映画愛好者、香港に興味を持つ人たちの協力も得て完成した。でも、香港の状況は2017年の時とはガラリと変わってしまって、日本で公開はできても、今は香港では公開できない。いつか香港でも公開できる日が来ることを祈っている(暁)。

公式サイト  blueisland-movie.com
字幕:藤原由希 字幕監修:Miss D 
製作:Blue Island production  配給:太秦 
2022|香港・日本|カラー|DCP|5.1ch|97分

*参照 シネマジャーナルHP記事
スタッフ日記
●香港返還25年  大雨だった1997年7月1日を思う 
http://cinemajournal.seesaa.net/article/489403875.html
 
特別記事
●『乱世備忘 ― 僕らの雨傘運動』
陳梓桓(チャン・ジーウン)監督インタビュー
山形国際ドキュメンタリー映画祭2017にて   2017年10月11日
http://www.cinemajournal.net/special/2017/yellowing/index.html

●『乱世備忘 僕らの雨傘運動』
陳梓桓(チャン・ジーウン)監督インタビュー(日本公開時)2018年07月22日
http://cineja-film-report.seesaa.net/article/460641864.html
posted by akemi at 20:58| Comment(0) | 合作 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年06月05日

スープとイデオロギー   英題:Soup and Ideology

2022年6月11日 [東京]ユーロスペース、ポレポレ東中野
[大阪]シネマート心斎橋、第七藝術劇場ほか全国公開
そのほかの劇場情報
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(C)PLACE TO BE, Yang Yonghi

国家の残酷さと運命に抗う母の生き様を通して愛の力を唯一無二の筆致で描き出す

監督・脚本・ナレーション:ヤン ヨンヒ
撮影監督:加藤孝信
編集・プロデューサー:ベクホ・ジェイジェイ
音楽監督:チョ・ヨンウク『お嬢さん』『タクシー運転手 約束は海を越えて』など
アニメーション原画:こしだミカ
アニメーション 衣装デザイン:美馬佐安子
エグゼクティブ・プロデューサー:荒井カオル

『ディア・ピョンヤン』『愛しきソナ』『かぞくのくに』などで、朝鮮半島と日本の歴史に翻弄され生きる在日朝鮮人である家族を描いてきたヤン ヨンヒ監督が、韓国現代史最大のタブーである「済州島 4・3虐殺事件」を体験した母を主役に撮ったのがこの作品。
朝鮮総連の熱心な活動家だったヤン監督の両親は、1970年代に「帰国事業」で3人の兄たちを北朝鮮へ送り出した。そして何度も北朝鮮へも渡航している。父の他界後も借金をしてまで息子たちへの仕送りを続ける母をヤン監督は理解できないでいた。ある日、年老いた母は心に秘めていた1948年の済州島での壮絶な体験について娘に語り始める。突然打ち明けた「済州島4・3虐殺事件」の壮絶な悲劇。アルツハイマーを患い始めた母。しだいに記憶を失なっていく母の消えゆく記憶をすくいとるべく、ヤン監督は70年ぶりに春の済州島へ母を連れていく。それは母の生きてきた歴史を知る旅だった。なぜ父と母は頑なに“北”を信じ続けてきたのか? 明かされる母の秘密。あたらしい家族の存在。そして、これまで母だけのレシピだったスープのレシピを伝え始める。

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(C)PLACE TO BE, Yang Yonghi

監督のお母さんは日本生まれだけど、空襲を避けるため親の故郷である済州島に避難していて終戦になり、日本に帰ることができなくなってしまった。そんな時、起こったのが「済州島 4・3虐殺事件」(1948年)。監督のお母さんが18歳の時で、幼い弟や妹を連れ、日本に密航でやっと戻ったという。父親も済州島出身と語っていたので、父親もこの事件を経験していたのでしょう。ということで、韓国政府を信じられず、北朝鮮支持になり朝鮮総連に参加していたということが語られる。北朝鮮出身でないのになぜ朝鮮総連?とずっと思ってきたけど、この作品で、そういう人たちがたくさんいるのだということを知った。韓国で1945年から敷かれていた夜間通行禁止令が全面解除されたのは全斗煥政権最末期の1988年。韓国では、この「済州島 4・3虐殺事件」のことを語るのはそれまでタブーだった。
私がこの「済州島 4・3虐殺事件」のことを知ったのは『海女のリャンさん』(2004年原村政樹監督)というドキュメンタリー作品。主人公のリャンさんも済州島出身で、この事件で済州島から命からがら日本にやってきた人だった。そして『焼肉ドラゴン』(2018年鄭義信監督)では、焼き肉屋をやっているお父さんがやはりこの済州島4・3事件で日本に逃れてきた人として描かれていた。韓国の作品では『チスル』(2012年オ・ミヨル監督)が「済州島 4・3虐殺事件」を描いていて日本公開されている。
*シネマジャーナル62号(2004年)に『海女のリャンさん』原村政樹監督インタビュー記事掲載。

映画の中で、お父さんがかつて「誰とでも結婚すればいい。でもアメリカ人や日本人はだめ。朝鮮人がいい」と言い、それに対して監督は「それじゃ誰でもいいといういうことじゃない」というような返答をするシーンがあり、これがこの映画の伏線というのがあとでわかってくる。そして荒井カオルさんの登場。監督より10数歳年下の日本人。この映画のプロデューサーでもある。荒井さんが結婚の挨拶に来る時にお母さんが鶏一羽を使ったスープを作るシーンがある。これは参鶏湯(サムゲタン)でしょう。その後、このスープの作り方を教えるシーンも出てきて、それでこのタイトルになったのかなと思ったけど、ストレートなタイトル(笑)。ちなみに私は参鶏湯が好きで、この数年は参鶏湯のスープの素を買ってきて自分で作っている。でも私は一人暮らしなので、鶏1羽というわけにはいかないので、手羽元を買ってきて、このスープで煮て、さらに白米ともち米を加えて雑炊のようにして作る。そして、この数日前にもそれを作り始めて、これから食べるところ(笑)。これを書くにあたって参鶏湯のことを調べてみたら、韓国では主に夏に食べるものらしい。でも、これを食べると身体がほかほかしてくるので日本では冬場に食べるというイメージ。スーパーでも冬場にこのスープを置いているけど、夏場には置いていない。今日も暑くなる前に作ってしまおうと思って作っていた。
日本人の伴侶を得て、監督はこれから二人三脚で映画を作っていくのでしょう。お母さんも安心ですね(暁)。


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(C)PLACE TO BE, Yang Yonghi

ヤン ヨンヒ監督の作品をずっと観てきました。自分の家族を撮る、またはモデルにした映画を撮るというのは、きっと身を削るようなものだったでしょう。残すこと、発表することで家族や周りへ及ぼす影響を、毎回考えに考えて来られたはずです。私は映画を通じて韓国や北朝鮮の歴史や日本との関わりを少しずつ知りました。離れたところから観るだけですが、今回もお母さんが話せなかった過去、娘としてお母さんを見守る姿に胸がつまりました。
そんな中でホッとした場面が、背広姿でご挨拶に見えた荒井さん。緊張して大汗をかき、着替えたTシャツが可愛くて思わず笑ってしまいました。お母さんにそっと手をそえたり、失礼千万な葬儀会社に凄んだり、直伝の参鶏湯を作ったり…。監督、ほんとに素敵な方に巡り合われました。
「済州島 4・3事件」が戦争時ではなく、政治思想の違いから起きた事件だと詳細を初めて知りました。住民を守るはずの国や警察から手を下されるとはどれだけ恐ろしかったことか。深く胸に沈んでお母さんを苦しめてきたのでしょう。重い荷物をようやく取り出して、楽になられたんですね。(白)


製作:PLACE TO BE 共同制作:navi on air
公式サイト
韓国・日本/2021/カラー/DCP/118分
配給:東風

*参照 
「済州島 4・3事件」 ウィキペディアより
1948年4月3日に在朝鮮アメリカ陸軍司令部軍政庁支配下にある南朝鮮の済州島で起こった島民の蜂起に伴い、南朝鮮国防警備隊、韓国軍、韓国警察、朝鮮半島の李承晩支持者などが1954年9月21日までの期間に引き起こした一連の島民虐殺事件を指す。南朝鮮当局側は事件に南朝鮮労働党が関与しているとして、政府軍・警察及びその支援を受けた反共団体による大弾圧をおこない、少なくとも約1万4200人、武装蜂起と関係のない市民も多く巻き込まれ、2万5千人から3万人超、定義を広くとれば8万人が虐殺されたともいわれる。また、済州島の村々の70%(山の麓の村々に限れば95%とも)が焼き尽くされたという。その後も恐怖から島民の脱出が続き、一時、島の人口は数分の一に激減したともいわれる。

posted by akemi at 19:28| Comment(1) | 合作 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年11月08日

セルゲイ・ロズニツァ「群衆」ドキュメンタリー3選 『国葬』『粛清裁判』『アウステルリッツ』

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カンヌ国際映画祭で二冠、近作10作品すべてが世界三大映画祭に選出されながら、日本では未公開だったセルゲイ・ロズニツァ監督作品。
この度、【セルゲイ・ロズニツァ「群衆」ドキュメンタリー3選】として、『国葬』『粛清裁判』『アウステルリッツ』が一挙公開されます。

セルゲイ・ロズニツァ
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1964年ベラルーシ生まれ、ウクライナの首都キエフ育ち。現在、ベルリン在住。
1991年、ソ連崩壊後、モスクワの全ロシア映画大学で学び、1996年よりソクーロフの製作で有名なサンクトペテルブルク・ドキュメンタリー映画スタジオで映画製作を始める。


◆『国葬』
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(C)ATOMS & VOID
1953年3月5日、スターリンの死。本作は、独裁者スターリンの国葬の記録。
モスクワ郊外クラスノゴルスクでスターリンの国葬を捉えた大量のアーカイヴ・フィルムが発見される。当時、200名弱のカメラマンによりソ連全土で撮影された、幻の未公開映画『偉大なる別れ』のフッテージだった。セルゲイ・ロズニツァは、それを丁寧に紡ぎ、67年前に執り行われた国葬と、スターリンの訃報に触れたソ連各地の人々の姿を蘇らせている。
2019年/オランダ、リトアニア/ロシア語/カラー・モノクロ/135分
作品紹介+感想はこちら

★11/14(土)公開初日、13時〜『国葬』上映後にロズニツァ監督のZoomセッション開催

◆『粛清裁判』
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(C)ATOMS & VOID
1930年、モスクワ。8名の有識者が西側諸国と結託しクーデターを企てた疑いで裁判にかけられる。いわゆる「産業党裁判」と呼ばれるスターリンによる見せしめ裁判だ。90年前のソヴィエト最初期の発声映画『13日(「産業党」事件)』は、発掘されたアーカイヴ・フィルムにより捏造と判明する。スターリンの台頭に熱狂する群衆の映像が加えられ再構成されたアーカイヴ映画は、権力がいかに人を欺き、群衆を扇動し、独裁政権を誕生させるか描き出す。
2018年/オランダ、ロシア/ロシア語/モノクロ/123分
作品紹介+感想はこちら

◆『アウステルリッツ』
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(C)Imperativ Film
真夏のベルリン郊外。スマートフォン片手に大勢の人たちが門を潜っていく。そこは第二次世界大戦中にホロコーストで多くのユダヤ人が虐殺された元強制収容所。戦後75年、記憶を社会で共有し未来へ繋げる試みはツーリズムと化していた・・・
ドイツ人小説家・W.G.ゼーバルト著書「アウステルリッツ」より着想を得て製作した、ダーク・ツーリズムのオブザベーショナル映画。
2016年/ドイツ/ドイツ語、英語、スペイン語/モノクロ/94分
作品紹介+感想はこちら

各作品の紹介を感想と共に掲載しています。あわせてご覧ください。(景山咲子)


配給:サニーフィルム
公式サイト:https://www.sunny-film.com/sergeiloznitsa-films
★2020年11月14日(土)~12月11日(金)シアター・イメージフォーラムにて3作一挙公開 全国順次ロードショー




posted by sakiko at 12:33| Comment(0) | 合作 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする