2021年02月16日

愛と闇の物語   原題:A TALE OF LOVE AND DARKNESS

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監督・脚本:ナタリー・ポートマン
原作:アモス・オズ 「A Tale of Love and Darkness」
製作:ラム・バーグマン、 デヴィッド・マンディル、 ニコラス・シャルティエ、 アリソン・シェアマー
出演:ナタリー・ポートマン、ギラッド・カハナ、アミール・テスラー、ヨナタン・シライ

作家になったアモス・オズ(ヨナタン・シライ)は、少年時代を振り返る。今や、母が38歳で亡くなった時の父親の年代だ。1945年、 英国統治下のエルサレム。 幼少期のアモス(アミール・テスラー)は、 父アリー(ギラッド・カハナ)と、 母ファニア(ナタリー・ポートマン)と共に暮らしていた。
ヨーロッパに反ユダヤ主義が広がり、今はウクライナ領となったポーランドの町ロヴノから母は家族と逃れてきた。その後、ユダヤ人の大虐殺で故国の知人親戚のほとんどが殺されてしまった。眠れない夜には、子守歌を歌い、一緒に物語を作ってくれた母。インドの沙漠で無言の修行をする二人の話を思い出す。
1947年11月29日、国連でパレスチナ分譲案がアラブ諸国の反対する中、賛成多数で採択される。ユダヤの国ができることに父はもう差別されなくなると大喜びだ。混乱するだけと否定的だった母の予想通り、アラブとユダヤは衝突する。暴動の中で母の友人が犠牲になり、父の不貞も重なり母の気持ちはふさいでいき、物語も作らなくなる・・・

ナタリー・ポートマンがアモス・オズの自伝的著書『A Tale of Love and Darkness』を読んで映画化したいと思ってから約 7年。 ナタリー・ポートマン自身が監督・脚本を手掛け、アモスの母親ファニアも演じて2015年に完成させた映画『愛と闇の物語』が、ようやく日本で公開されます。
イスラエルの作家でジャーナリストであるアモス・オズ(1939-2018)。 第3次中東戦争(1967年)に従軍。イスラエルのヨルダン川西岸占領でパレスチナ人の受けた悲劇を目の当たりにし、イスラエルが占領地を返還し、パレスチナ独立国家と共存することを訴え平和運動を主唱しました。
印象的だったのが、アモスが子どものいないルドニツキ夫妻に連れられてパレスチナ人の家を訪ねる場面。音楽を聴き、お菓子を食べながら優雅な時を過ごしている人たち。あっちで遊んでなさいと言われ、同年代の少女にアラビア語で話しかけると、彼女はヘブライ語で返してくれます。アイシャと名乗り、ピアノを習い、兄はロンドンで弁護士になる勉強をしていると言います。お互い、アラビア語やヘブライ語の詩人の話で盛り上がります。「この国は広いから両方の民族が住める。仲良く共存できればいいね」と少女に語るアモス。
ロシアや東欧にルーツを持つユダヤ人の両親のもと、エルサレムで生まれたナタリー・ポートマン。3歳の時にアメリカに移住しましたが、心はエルサレムにあると語っています。昨今のパレスチナの状況には心を痛めているようで、本作からも和平への思いを感じます。
原作者のアモス・ボスは、2018年にご逝去。彼の和平への思いも噛みしめながら、本作を多くの方にご覧いただければと願います。(咲)

2015年/イスラエル・アメリカ/98分/ヘブライ語・英語・アラビア語・ロシア語/シネスコ
配給:イオンエンターテイメント
公式サイト:https://www.aitoyamimovie.com/
★2021年2月19日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、イオンシネマ 他 全国公開

posted by sakiko at 15:20| Comment(0) | イスラエル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年12月13日

声優夫婦の甘くない生活    英題:Golden Voices

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監督:エフゲニー・ルーマン
出演:ウラジミール・ フリードマン、マリア・ベルキン

1990年9月、旧ソ連を後にしてイスラエルの空港に降り立ったヴィクトルとラヤ。ソ連時代、欧米映画の吹き替えで活躍してきた仲のいいスター声優夫婦だ。だが、新天地で待っていたのは厳しい現実だった。ロシア語声優の需要はなく、ヘブライ語を学びながら仕事を探す日々。ラヤは甘い声を見込まれ、テレフォンセックスの仕事に就くが夫には内緒だ。ヴィクトルもまた、海賊版レンタルビデオ店でロシア語声優の職を得る。
サッダーム・フセインの化学兵器の脅威に備え、政府から配布されたガスマスクをラヤの職場に届けたヴィクトルは、ラヤの仕事の真実を知ってしまう・・・

私がイスラエルを訪れたのは、1991年の4月末。映画と同じエルアル航空でテルアビブ空港に降り立ったので感慨深いものがありました。エルサレムの旧市街の土産物屋で、マトリョーシカや、中央アジアの帽子を売っていて、なぜ?と思ったら、ソ連崩壊後に多くのユダヤ人が移民してきたと聞かされました。ロシア語の新聞も出していると知りました。「約束の地」に希望を抱いて移住してきたであろう人たちの暮らしが決して甘いものでなかったことを、本作はずっしり感じさせてくれました。
今、世界では紛争や政治的理由等で故国を離れる人たちが後を絶ちません。ちゃんとした職業に就いていた人も、たとえ医師のような資格を持った人であっても、他国では通用しません。それでも国を出ざるをえなかった人たちが直面する悲哀。良好だった夫婦関係に亀裂が入ることもあるでしょう。
本作は、6歳の時にソ連から移民してきたエフゲニー・ルーマン監督の経験をもとに作られたものですが、多くの人の共感を得る普遍的なテーマを内包しています。社会派の映画でありながら、大いに笑えて、ちょっぴり泣ける物語。(咲)


ソ連で洋画のスター声優だった、ロシア系イスラエル人夫婦が鉄のカーテンが崩壊し、イスラエルに移住する。他人事のような気持ちで作品をご覧になる方が多いかもしれません。映画で描かれる主人公夫婦は新しい環境で夫はすることがなく、家計を支えようと働き始めた妻が生き生きとしてくるのですが、そんな2人の姿は定年退職した夫とパートや趣味で活き活きと暮らす妻の間で気持ちのすれ違いが生じてきたという話と似ている気がします。当たり前だった関係に変化が生まれたときにどう向き合うか。すれ違ったまま離れていくのではなく、いかに大事な存在だったかに気づいた2人の行く末はこれから夫婦の後半戦を迎えようとしている方々にはきっと参考になることでしょう。(堀)
主人公が声優夫婦という設定にちなみ、11/ 22 (日)のいい夫婦の日に、リアル声優夫婦のトークイベント付き試写会が実施されました。
ゲストは『愛と哀しみの果て』のロバート・レッドフォードなどの声を担当した古川登志夫さん、「美少女戦士セーラームーン」大阪なるなどの声を担当する柿沼紫乃さんという日本を代表するレジェンド声優ご夫婦です。本作を通じてご夫婦の日常生活が垣間見える、楽しいトークイベントでした。

http://cineja-film-report.seesaa.net/article/seiyu-fufu-event.html


2019年/イスラエル/ロシア語、ヘブライ語/88分/ スコープ/カラー/5.1ch
日本語字幕:石田泰子
後援:イスラエル大使館
配給:ロングライド
公式サイト:https://longride.jp/seiyu-fufu/
★2020年12月18日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次公開
posted by sakiko at 04:56| Comment(0) | イスラエル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年10月11日

靴ひも   原題:Laces

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監督:ヤコブ・ゴールドワッサー
出演:ネボ・キムヒ、ドブ・グリックマン、エベリン・ハゴエル

発達障害のある30代半ばを過ぎたガディ。一緒に暮らしていた母親が急死し、入居先が決まるまで長年疎遠だった父親ルーベンのところに身を寄せることになる。父の経営する自動車整備工場で働き始めるが、何かとこだわりが強く、顧客や周囲の人と摩擦を起こし、父もどう接していいか戸惑う日々だ。そんなある日、父が倒れ、腎不全で人工透析を受けるが、治癒には腎臓移植が必要とわかり、ガディが腎臓提供を決意する。だが、父はガディの後見人で被後見人からの提供は受けられないという・・・

生まれてくる子に障害があるとわかって、母子から逃げた父親。養育費は払っていたものの、バル・ミツバ(13歳の時に行われるユダヤの成人式)と20歳の誕生日にしか会ってなかった息子との暮らし。最初はぎくしゃくしていますが、そこは親子。血の繋がりがなせる技を感じさせてくれます。
障害の程度を調査する面接の日、「今日は芝居をする日」と父と息子は結託。靴ひもを結んでと言われ、ガディはあえて結べない振りをします。より高額の給付金を貰うために! そんなガディも心を乱される出来事があったときには、靴ひもが結べません。
2018年の東京国際映画祭で観た折には、障害を持つ息子と父の思いを描いた普遍的な物語で、いかにもイスラエル映画と感じたのは、病院のシーツの模様がダビデの星だったこと位でした。今回、公開を前にもう一度観てみたら、最初の母親の埋葬のシーンからして、正統派ユダヤのラビが仕切っていて、長男であるガディが一生懸命ガディッシュ(追悼の祈り)を述べていました。
ガディは歌手を自認していて、好きな歌手3人の名前を挙げるのですが、3人目のシュロミ・シャバットのことは、シャバット(安息日)に掛けて、平安なという意味のシャロームを付けて「シュロミ・シャバット・シャローム」と言っています。なかなかお茶目。
また、ガディが食堂で働くアデラという女の子と結婚したいと父親にいうと、「黒人だから不釣り合い」と言われます。黒人といっても、恐らくエチオピアから移住してきたユダヤ人。様々な地からイスラエルにやってきたユダヤ人の中にも差別意識があることを見せてくれました。
障害を持つ息子が父親に腎臓移植をしようとしたけれど却下されたという実話から紡いだ普遍的な物語ですが、イスラエルらしさも感じていただければと思います。(咲)

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2018年の東京国際映画祭の折に来日したヤコブ・ゴールドワッサー監督のQ&Aはこちらで!


息子の障害から逃げた父親と育ててくれた母を亡くしたばかりの息子。疎遠だった2人が一緒に暮らし始める話です。タイトルの靴ひもは(咲)さんが書いているように、特別給付金を得るための認定テストの一つ。息子は靴ひもが結べるのに、結べないフリをします。このシーンを見ていたら、親の介護で大変な思いをしている友人たちの話を思い出しました。介護認定をもらうための判定で認知症の親ががんばってしまい、認定がもらえなかったと、この作品とは真逆な話をよく聞くのです。むしろ、この作品の息子のようにあえてできないふりをしてくれたら、お互いに楽なはずなのにと。友だちの話は近い将来の私の話かもしれないと思って聞いていましたが、この作品で主人公が陥ったジレンマを知り、人生って後で何があるか分からないから、ちゃんとしないといけないんだなと思いました。
ラストは映画としては意外な展開ですが、これが現実なのでしょう。しかし、前向きな気持ちで新しい生活を始めていく息子にエールを送りたくなるに違いありません。(堀)


2018年/イスラエル/103分
配給:マジックアワー
公式サイト:https://www.magichour.co.jp/kutsuhimo/
★2020年10月17日(土)より、シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開






posted by sakiko at 17:29| Comment(0) | イスラエル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする