2025年02月09日

愛を耕すひと  原題:Bastarden

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© 2023 ZENTROPA ENTERTAINMENTS4, ZENTROPA BERLIN GMBH and ZENTROPA SWEDEN AB

監督:ニコライ・アーセル 
脚本:アナス・トマス・イェンセン、ニコライ・アーセル
原作:イダ・ジェッセン「The Captain and Ann Barbara(英題)」
出演:マッツ・ミケルセン、アマンダ・コリン、シモン・ベンネビヤーグ

1755年、デンマーク。退役軍人のルドヴィ・ケーレン大尉は、長年不可能とされた荒野の開拓に、ひとり名乗りを上げる。国王に敬意を表し、貴族の称号を得たいという思いからだった。しかし、それを知った有力者フレデリック・デ・シンケルは、自らの勢力が衰退することを怖れ、ありとあらゆる手段でケーレンを阻止しようと立ちはだかる。フレデリックのもとから逃げ出した使用人の女性アン・バーバラが、ケーレンのもとにいることを知ると、さらに逆上して、迫害は残虐なものとなる。
ある日、両親に捨てられたタタール人の少女アンマイ・ムスがケーレンの家に泥棒に入る。ケーレンは彼女を保護し、ともに暮らすようになる。アン・バーバラやアンマイ・ムスと共に土地を耕していくうちに、頑なに心を閉ざしていたケーレンに変化が芽生えてゆく・・・

ユトランド半島が、開拓不可能なほど不毛な地だったとは知りませんでした。マッツ・ミケルセン演じるケーレンは、貧しい出で、ドイツで30年近く従軍して、努力して大尉になった人物。ドイツからじゃがいもを取り寄せ、植え付けようとするのですが、有力者からの横やりが半端じゃなく、大変な苦労をします。
そんな中でのタタールの少女アンマイ・ムスとの出会い。彼女は肌の色が黒いことから“不吉な子”と虐げられているのですが、タタール人は私のイメージでは肌の色は黒くないので、白人から見た偏見かなぁ~と。
それはともかく、アンマイ・ムスの存在はケーレン大尉にだけでなく、私にとっても清涼剤のようでした。(咲)



★“北欧の至宝”マッツ・ミケルセンからのメッセージ★
日本のみなさん、こんにちは。マッツ・ミケルセンです。
『愛を耕すひと』がいよいよ日本でバレンタインデーの2月14日から公開されます。
私が演じたケーレン大尉が、様々な苦難を乗り越え変化していく姿にぜひご注目ください。
これは〈愛についての物語〉です。観てね!


2023年/デンマーク・スウェーデン・ドイツ/127分/G
字幕翻訳:吉川美奈子
配給:スターキャット、ハピネットファントム・スタジオ 
後援:デンマーク王国大使館 
公式サイト:https://happinet-phantom.com/ai-tagayasu 
★2025年2月14日(金)新宿ピカデリーほか全国公開



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2023年04月09日

聖地には蜘蛛が巣を張る  原題:Ankabut-e moqaddas  英題:Holy Spider 

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©Profile Pictures / One Two Films

監督:アリ・アッバシ(『ボーダー 二つの世界』
出演:メフディ・バジェスタニ、ザーラ・アミール・エブラヒミ

2001年、イランの聖地マシュハド。
濃い化粧をほどこし、寝ている幼い娘に声をかけ夜の街に出ていく娼婦。金持ちの家で一仕事した後、バイクの男に誘われる。金を持っているのを確認し男の家にあがるが、「汚れた女は排除する」と殺されてしまう。町の灯りを見晴らす丘に女を埋める男。
街では、この半年の間に娼婦たちが同じ手口で何人も殺され、街の人々は殺人鬼を「スパイダー・キラー」と呼んで恐れているが、捕まっていない。
テヘランに住む女性ジャーナリストのラヒミは、この娼婦連続殺人事件を追うため、故郷でもあるマシュハドに向かう。警察の捜査責任者や、聖職者の判事のもとを訪ねるが、確かな情報は得られない。それどころか、ラヒミがかつてセクハラ被害にあって職を追われた過去を指摘される。
ラヒミを案内してくれている地元紙の記者のもとに、一人殺すたびに「犯罪人じゃない。腐敗に対する聖戦だ」と殺人鬼から電話がかかってくるという。新聞に記事を書いてほしいらしい。
ある夜、ラヒミはサンドウィッチ屋でトイレを貸してほしいという娼婦らしい若い女性に「怪しい男を知らない?」と声をかける。「皆、怪しい」と答えるソグラと名乗る女性。
警察から、また一人殺されたと遺体発見現場に案内される。被害者はソグラだった。ついにラヒミは自ら娼婦の振りをして殺人鬼に接触を図る・・・

本作は、現在、デンマークを拠点に活動するアリ・アッバシ監督が、2000年~2001年にイランの聖地マシュハドで16人の娼婦を殺害し、“スパイダー・キラー”と呼ばれたサイード・ハナイの実話をもとに描いた物語。当時学生だったアリ・アッバシ監督はイランにいて、16人も殺した男になかなか判決が下らず、それどころか一部の市民や保守派メディアがサイードを英雄として称え始め、汚れた女たちを排除するという宗教的な務めを果たしただけだと擁護したことを知り、いつか映画にしたいと決意。本事件を扱ったマジアール・バハリの2002年のドキュメンタリーに出てきた女性ジャーナリストに着想を得て、架空のラヒミという女性記者が事件を追う形で描いたことで、連続殺人事件を取り巻く社会も見ることのできる作品になっています。
時折映し出されるサイードは、信心深い家族思いの男。一方で、イラン・イラク戦争の前線で殉死出来なかった負い目を感じていて、神に生かされた使命として汚れた娼婦を殺すのです。判決の下ったサイードに退役軍人の会が、裏で何とかすると言ったのもあり得る話だと思いました。
けれども、娼婦としてしか生きていけない弱者こそ社会が救うべきで、本作の中で、アッバシ監督は、ラヒミが訪ねた聖職者である判事に「困窮しなければ、体を売ることもない。政府が市民を守るべきだ」と語らせています。
このような内容も盛り込まれているにも関わらず、イランでの撮影許可は下りず、ヨルダンのアンマンで撮影されています。(友人のイラン人から、「ちゃんとイランに見える」とお墨付き)

ラヒミを演じたザーラ・アミール・エブラヒミは、本作でカンヌ国際映画祭女優賞を受賞。
彼女自身、第三者による私的なセックステープ流出によりスキャンダルの被害者となり、2008年、国民的女優として成功を収めていたイランからフランスへの亡命を余儀なくされています。
ラヒミのような女性はイランでは特別ではなく、知的で打たれ強く、様々な分野で活躍する女性が数多くいることも知っていただければと思います。革命後、1990年頃には大学に占める女性の割合は、理科系の学科でも6~8割に達し、大卒の女性が圧倒的に増えているのです。アフマディーネジャードが大統領の時に、大学の定員を男女公平に半々にするべきだと提言しましたが却下されています。
ヘジャーブ(髪の毛や身体の線を隠すこと)を強制されていて、女性蔑視が根強いと思われる一面もありますが、家庭では何より母親が尊敬されるイラン社会です。

ところで、マシュハドには、革命前の1978年5月に一度だけ行ったことがあります。町に着いて、バスの前に男性、後ろに女性と分かれて乗っているのを見て、さすが聖地はテヘランとは違うと思ったものです。(革命後は、テヘランでも大型バスは男女別になりました)
借りたチャードルを被って入ったシーア派8代目イマーム・レザー廟では、棺の周りを皆、涙を流しながらお詣りしていて、私も神聖な気持ちになったものです。一神教のイスラームですが、イランでは各地にシーア派の祖であるアリーの血を引いた子孫の廟があって参詣する人が多く、聖者崇拝が根強いことを感じます。
イマーム・レザー廟のあるマシュハドは、イラン国内で最大の聖地で、革命後、政府は特に力を入れて街を整備。イマーム・レザー廟の周辺に密集していた店舗や家を一掃し、廟を中心に広がった街は上から見ると蜘蛛の巣にも見えるようです。サイードが殺害した女性を埋めた丘から見える街の全景にどうぞご注目を! (とはいえ、あれはどこで撮ったのでしょう?) (咲)



2022年/デンマーク・ドイツ・スウェーデン・フランス/ペルシャ語/シネスコ/5.1chデジタル/118分
字幕翻訳:石田泰子
配給:ギャガ
デンマーク王国大使館後援
公式サイト:https://gaga.ne.jp/seichikumo/
★2023年4月14日(金)新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷、TOHOシネマズシャンテ他全国順次公開




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2023年01月08日

コペンハーゲンに山を  原題:Making a Mountain

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(C)2020 Good Company Pictures


監督:ライケ・セリン・フォクダル、キャスパー・アストラップ・シュローダー
出演:ビャルケ・インゲルス、ウラ・レトガー他

コペンヒル。世界初!スキーが楽しめるゴミ処理発電所の誕生を追ったドキュメンタリー。

2011年、デンマークの首都コペンハーゲンにある老朽化したゴミ処理施設建て替えのコンペ結果発表会が行われた。コンペを満場一致で勝ち抜いたのは、デンマークのスター建築家ビャルケ・インゲルス率いるBIG建築事務所。彼らのアイデアは飛び抜けて奇抜で、巨大なゴミ焼却発電所の屋根にスキー場を併設し、コペンハーゲンに新たなランドマークを作るというもの。しかし、カメラは完成までの過程で、苦難の連続を追うことになる。ゴミ焼却発電所とスキー場はどう建造物として共存出来るのか?次々と疑問や課題が山積みになっていくが、難題を乗り越え2019年10月、コペンハーゲンに新しい“山”が誕生。完成に9年。かかった費用は約5億ユーロ。デンマークの景色を楽しめるこの山「コペンヒル」の標高は85m、全長450mでゲレンデ幅は60m。4つのリフトでスキーが楽しめる。ゴミで再生可能エネルギーを作る最新鋭のゴミ焼却発電所で、年間3万世帯分の電力と7万2000世帯分の暖房用温水を供給する。屋上にはレストランやハイキング・ランニングコース、壁には世界一高い85mのクライミングウォールが設置されている夢のような施設だ。誰もが行きたがらないゴミ処理施設が、誰もが行きたがる夢の施設になったのだ。

ごみ処理施設というと、高い煙突を思い浮かべますが、高くしてもCO2をまき散らすことには変わりないとのこと。ごみ処理施設を覆うようにして、山を作って、その上を娯楽施設にしてしまうというアイディアに、これぞ発想の転換!と唸りました。
建築コンペの審査員たちが満場一致で決めたのも納得です。その建築コンペの発表自体、MCを務める女性CEOが楽しそうに歌って始まるという型破りなものでした。
コペンハーゲンの町というより、デンマーク自体、フラットで山のない国。「皆、同じ高さだと見通しが悪い、映画館などでも傾斜があるのは見やすくする為」と、ごみ処理施設を利用して小高い山を作った理由の一つを語る建築家のビャルケ・インゲルス。
山のなかった町で、ちょっとしたハイキングやスキーもできて、家族ぐるみで楽しめる観光名所にしてしまったのがすごいです。コペンヒルに昇るエレベーターはガラス張りになっていて、ゴミ処理施設の中が見えます。子どもたちは、ゴミがリサイクルされて燃料になる仕組みを目にすることができて社会勉強にもなります。
奇想天外で清掃がしにくそうな建物を設計する建築家もいますが、コペンヒルのような奇抜なアイディアを出せる建築家は歓迎です。(咲)


2020年/デンマーク/51分
制作会社:グッドカンパニーピクチャーズ
配給:ユナイテッドピープル
公式サイト:https://unitedpeople.jp/copenhill/
★2023年1月14日(土)シアター・イメージフォーラム他全国順次ロードショー




posted by sakiko at 14:28| Comment(0) | デンマーク | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年06月05日

FLEE フリー 原題:Flugt 英題:FLEE 

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(C)Final Cut for Real ApS, Sun Creature Studio, Vivement Lundi!, Mostfilm, Mer Film ARTE France, Copenhagen Film Fund, Ryot Films, Vice Studios, VPRO 2021 All rights reserved

監督:ヨナス・ポヘール・ラスムセン 
脚本:ヨナス・ポヘール・ラスムセン、アミン・ナワビ
製作プロダクション:Final Cut for Real『アクト・オブ・キリング』
製作総指揮:リズ・アーメッド、ニコライ・コスター=ワルドー

アフガニスタンで生まれ育ったアミンは10代半ばにデンマークにやってきた。
それから20数年後、アミンは研究者となり、恋人の男性との結婚を目前にしていた。 幸せな人生を手に入れるまで、アミンには恋人にも明かしたことのない過去があった。アミンは絨毯の上に目を瞑って横になり、デンマークに来た頃からの友で映画監督のヨナスに、自らの生い立ちと、故国を逃れてデンマークにたどり着くまでの壮絶な記憶を語り始める・・・

アミンが3~4歳だった1984年頃。姉から父の話を時折聞かされ、父の記憶のないアミンは姉がうらやましかった。1978 年、王政を倒し実権を握った共産主義政府に父は危険分子として検挙され、そのまま行方不明なのだ。1979年12月末、ソ連が侵攻。ソ連に後押しされた政府に対し、ムジャヒディン(イスラーム聖戦士)たちが抵抗運動を起こし内戦状態となる。長兄は兵役を逃れるため、1980年に出国しスウェーデンに行く。ムジャヒディンが政権を取る直前、アミン一家は間一髪で出国し、モスクワに。ソ連崩壊直後のロシアは、物がなく、犯罪が横行する国だった。長兄のいるスウェーデンに向かいたいが、一人3000ドルかかるため、清掃で日銭を稼いでいる長兄には家族全員分を用意するには時間がかかった。ビザが切れ、警官を見かけると逃げる日々。ようやくアミンは密入国業者に大金を払い出国するが、一度は、ロシアに戻され、紆余曲折の末、デンマークのコペンハーゲンにたどり着く。兄のいるストックホルムではなく・・・

ELAHA FAIZの歌う「SARZAMIN-E-MAN(我が祖国よ)」 が心に沁みました。
世界には実に多くのアミンがいることを思い、心が痛みます。生まれ育った国が安住の地であれば、危険をおかしてまで国を逃れる必要はないはずです。
 *原題『FLEE』は、危険や災害、追跡者などから(安全な場所へ)逃げるという意味。
密入国業者たちが、大金をむしり取った上に、コンテナーや船に大勢の人たちを詰め込んで、結果、死なせてしまったニュースも後をたちません。たどり着いた国で、運よく暖かく受け入れてもらえることもあれば、ひどい扱いを受けることも多々聞きます。アフガニスタンから難民として逃れたドキュメンタリーとしては、最近では、『ミッドナイト・トラベラー』(2019 年 監督:ハッサン・ファジリ)を思い出します。

『FLEEフリー』がユニークなのは、アミンがイスラーム社会ではタブーとされるホモセクシュアルであること。家族にとっても「恥」となるので、家族にさえカミングアウトすることができないでいたのです。同性婚が合法のデンマークで、生涯のパートナーと出会えたことは、アミンにとって、ほんとうによかったと祝福をおくりたいです。アミンをゲイクラブに連れて行ってあげたお兄さんにも拍手!
イスラーム社会で同性愛者がいかに生きづらいかは、下記の映画もご参考に。
『チェチェンへようこそ ーゲイの粛清ー』(2020年、監督:デイヴィッド・フランス)
『ジハード・フォー・ラブ』(2007年、監督:パーヴェズ・シャルマ)
アミンが心を開いてヨナス・ポヘール・ラスムセン監督に自身の過去を明かしたのは、長年の友人であったことや、ヨナスもまたゲイであるということもあるのでしょう。
そして、監督にとっては、自身の祖母がユダヤ人で、迫害から逃れるためにロシアを離れ、ドイツ、イギリスと逃げ歩いた経験をしていて、アミンの物語が他人事だと思えず、映画にして世に知らせたいと思ったのでしょう。
アミンの身の安全を守るためアニメという手法が取られていますが、挟み込まれるニュース映像が当時の様子をリアルに伝えてくれます。1984年の映像では、女性たちが髪の毛を出し、西洋的な服装をしています。
また、アニメと映像の両方で時折出てきた凧揚げは、イスラームを極端に解釈する勢力が台頭する度に禁止したもので、象徴的。

もう一つ、しみじみ大変だなぁと思ったのが、国を逃れるということは、たどり着いた地の言語と対峙しなければならないということ。 アミン一家がロシアから出国するまで、じっと家に潜んでメキシコのドラマを観ていたという場面がありました。おそらく、ロシア語吹き替え。ドラマだから、なんとなくわかったのかな~と、ちょっと笑ってしまいました。
そして、アミンはその後落ち着いた先でデンマーク語を習得。本作はアミンの声を本人が担当していますが、ほとんどの部分がおそらくデンマーク語。アフガニスタン時代の思い出もデンマーク語で語っていて、お姉さんたちはダリー語で話しています。
その母国語ダリー語は忘れないまでも、デンマークに着いてすぐに書き留めた難民として認めてもらうための作り話(家族が皆殺しにされて、一人でアフガニスタンを出て、やっとの思いでデンマークにたどり着いた云々)も、20年以上の時が経ち、自分で書いたものなのに読めないところも。
デンマークに着いたときの通訳がイラン人で、よくわからなかったという話も興味深かったです。ペルシア語とダリー語は文法は同じだし、とても似ているのですが、通訳のイラン人がテヘラン方言で話していて、10代のアミンにとっては、難解だったのだなぁ~と。通訳次第で、意思がちゃんと伝わらないことも、難民にとっては多々あるのだと思います。 それが運命を決めることもあるのですから、通訳の役目は大事ですね。 (咲)


実話をベースにしているけれどアニメの手法を取ったのは語ってくれた友人や彼の家族の身に危険が及ぶ可能性があるからとのこと。日本にいると経験しない恐怖を日々感じながら生きている人たちがいることに改めて驚きました。
冒頭にまだ故郷で楽しく暮らしていた頃の実写映像が挟み込まれます。街の中をa-haの「テイク・オン・ミー」が流れていますが、爆発的に流行ったこの曲は主人公にとっても懐かしい曲のはず。今でもこの曲を聴くと、家族みんなで幸せに暮らしていた頃を思い出すことでしょう。
その後の凄まじい体験は実写だったら正視できなかったと思いますが、アニメにしたことで表現が緩和されました。しかし、その結果、特定の場所で起こったことに限定せず、世界のどこかで今も起こっていることに思えてきます。こんなことは絶対にあってはいけません。
大切な人と落ち着いた生活をする。これが当たり前のことだとみんなが思える世界にしなくては。(堀)


2021年/デンマーク・スウェーデン・ノルウェー・フランス/デンマーク語・英語・ダリー語・ロシア語・スウェーデン語/89分
日本語字幕:松浦美奈
後援:デンマーク大使館
配給:トランスフォーマー
公式サイト:https://transformer.co.jp/m/flee/
★2022年6月10日(金) 新宿バルト9、グランドシネマサンシャイン 池袋ほか全国ロードショー




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2021年02月14日

ある人質 生還までの398日   原題:Ser du manen, Daniel

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監督:ニールス・アルデン・オプレヴ( 『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』)、アナス・W・ベアテルセン
原作:プク・ダムスゴー「ISの人質 13カ月の拘束、そして生還」(光文社新書刊)
出演:エスベン・スメド、トビー・ケベル、アナス・W・ベアテルセン、ソフィー・トルプ

ダニエル・リューは、デンマーク代表体操選手として活躍していたが怪我で挫折。写真家への転身を決意し、コペンハーゲンで恋人シーネと暮らし始める。戦場カメラマンの助手としてソマリアを訪れ、サッカーをする子供たちの笑顔をカメラで捉えた時、戦争の中の日常を記録することこそ自分のやりたいことだと確信する。撮影先として選んだのは、内戦中のシリア。戦闘地域へは行かないと恋人や家族に約束して出かけるが、トルコとの国境付近の町アザズで撮影中、ダニエルは突然拉致されてしまう。アレッポから、さらにラッカへと移送される。そこには、様々な国のジャーナリストや支援活動家が拘束されていた。
一方、デンマークの家族たちは、ダニエルが予定の便で帰国しなかったため、彼から聞いていた人質救出の専門家アートゥアに連絡する。アートゥアは誘拐犯を突き止めるが、身代金70万ドルを要求されたという。テロリストと交渉しない方針のデンマーク政府からは支援を期待できない。家族は身代金集めに奔走する・・・

24歳だった2013年5月から翌2014年6月まで、398日間にわたってシリアで過激派組織IS(イスラム国)の人質となり、奇跡的に生還を果たしたデンマーク人の写真家ダニエル・リュー。ジャーナリストのプク・ダムスゴーがダニエル・リューと関係者に取材して書き上げた「ISの人質 13カ月の拘束、そして生還」(光文社新書刊)をもとに映画化したもの。
主演を演じたエスベン・スメドは、ダニエル・リュー本人と何度も会って話を聞いて役作りをしたそうです。拘束されていた398日間にダニエルが味わった壮絶な思いがずっしり伝わってきます。ダニエルを助けるために、マスコミに知られないよう、必死にお金を集めた家族の思いも胸に迫りました。

ISに拘束されている中には、フランス人やアメリカ人など様々な民族の人がいますが、ムスリムと思われるコソボ出身者もいます。方や、ISの監視役の中には、人質たちからビートルズと呼ばれていたイギリス人4人もいて、いかにISという組織が、本来のイスラームの教義とは離れた存在かを感じさせてくれます。
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公開にさきがけ2月7日(日)にユーロライブで行われた一般試写会上映後のトークイベントにジャーナリストの安田純平さんが登壇。2015 年から3年4カ月にわたってシリアで人質となり無事解放されたご経験から、本作を語ってくださいました。安田さんを拘束したのはシリアの反体制派の武装勢力で、ダニエルを拘束したIS(イスラム国)とは別物。有象無象の組織がありますが、人質を取るのは資金集めの為で、シリア人も人質になっているそうです。人質救出のエージェントから、身代金の見積書を提示されたこともあったと聞き、まさにビジネス。
戦争の真実を伝えたいジャーナリストや、戦禍の人々を救いたいと願う支援者たちを人質にするという卑怯な行為はいつまで横行するのでしょう・・・ (咲)



2019年/デンマーク・スウェーデン・ノルウェー/デンマーク語・英語・アラビア語/138分/カラー/シネマスコープ/5.1ch/日本語字幕:小路真由子
配給:ハピネット
後援:デンマーク王国大使館
公式サイト:https://398-movie.jp/
★2021年2月19日よりヒューマントラストシネマ渋谷、角川シネマ有楽町にて公開
posted by sakiko at 17:02| Comment(0) | デンマーク | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする