2025年11月29日

アフター・オール・ディーズ・イヤーズ デジタル・リマスター版 英題:After All These Years

2025年11月29日(土)よりシアター・イメージフォーラム他、全国順次公開
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(C)cinemadrifters

リム・カーワイ幻のデビュー作が15年の時を経て蘇る

監督・脚本:リム・カーワイ(林家威)
撮影:メイキン・フォン・ビンフェイ(馮炳輝)
録音:山下彩
編集:奥原浩志、Phillip Lin
美術:Amanda Weiss
音楽:Albert Yu
出演:大塚匡将、ゴウジー(狗子)、ホー・ウェンチャオ(何文超)

マレーシア出身で、大阪を拠点に、香港、中国、バルカン半島などで映画を製作、どこにも属さず彷徨う「シネマドリフター(映画流れ者)」と自称する映画監督リム・カーワイ。デビュー作の『アフター・オール・ディーズ・イヤーズ』がデジタル・リマスター版として蘇る。
2000年代、自由で混沌とした中国で、ボーダレスなインディペンデント映画人たちの情熱が凝縮した『アフター・オール・ディーズ・イヤーズ』が作られた。国境と言葉を超えて映画を作り続ける、旅する映画監督「cinema drifter」リム・カーワイの原点が劇場公開される。

≪STORY≫
10年ぶりに故郷に帰ってきたア・ジェ。しかし、彼の存在は家族でさえ知る者がいない。唯一、ア・ジェを覚えていたのは、レストランの店主ラオ・ファンだけ。ラオ・ファンに連れられ、秘密の鍵を握る男に会いに行くが、その男が殺されてしまい、ア・ジェは殺人の濡れ衣をきせられ処刑されてしまった。
ところが、死んだはずのア・ジェが、再び街に戻ってきた。空虚な日常を生きるラオ・フアンは、過ぎし日々に思いを寄せる。過去と現在が複雑に交錯し、町に起こる奇怪な事件をきっかけに、彼らは新しい人生を手に入れられるのか。第一部で自己の存在についての恐怖と疑いを、第二部で退屈な日常生活からの逃避を。空想と幻想だったり、過去と現実、平行世界的状況を描く。

ア・ジェを演じたのは、中国でも活躍する日本人の俳優、大塚匡将。中国、日本、アメリカ、香港、ボリビアなど多国籍のキャスト・スタッフによって自主制作された作品。どこにも属さず、世界を彷徨い映画を製作する「シネマドリフター(映画流れ者)」を自称するリム・カーワイ監督の原点となった作品。

HPより
■リム・カーワイ(林家威)
1973年7月28日生まれ、マレーシア出身。大阪大学基礎工学部電気工学科卒業後、通信業界を経て北京電影学院監督コース卒業。卒業後、北京にて『アフター・オール・ディーズ・イヤーズ』(10)を自主制作し、長編デビュー。監督作品に『マジック&ロス』(10)、『新世界の夜明け』(11)、『Fly Me To Minami恋するミナミ』(13)、中国全土で一般公開された商業映画『愛在深秋』(16) 、バルカン半島三部作『どこでもない、ここしかない』(18)、『いつか、どこかで』(19)、『すべて、至るところにある』(23)など。大阪三部作の3作目となる『COME & GO カム・アンド・ゴー』(20)は、東京国際映画祭でも上映され大きな話題になった。実在の映画監督渡辺紘文を主人公に、全国のミニシアターを行脚するロードムービー『あなたの微笑み』(22)は、日本に続き香港でも劇場公開し話題となった。日本全国のミニシアター22館をインタビューした映画『ディス・マジック・モーメント』(2023年11月25日公開)など、近年はドキュメンタリー映画も手掛けている。
香港、大阪、中国、バルカン半島などで映画を製作、国籍や国境にとらわれない創作活動を続け、東京、大阪、台湾、ニューヨークのアート系劇場で特集を組まれるなど、その活動は国内外から注目されている。「2021香港インディペンデント映画祭」主催者、「香港映画祭2021/2022」、2024年より「台湾文化センター台湾映画上映会」キュレーター、香港映画『星くずの片隅で』(22/ラム・サム監督)、『香港の流れ者たち』(21/ジュン・リー監督)の配給を手掛けるなど、映画監督以外でも活動の場を広げている。

フィルモグラフィー
2010『アフター・オール・ディーズ・イヤーズ』 脚本・監督・製作
2010『マジック&ロス』 脚本・監督・編集
2011『新世界の夜明け』 脚本・監督・製作・編集
2013『Fly Me To Minami 恋するミナミ』 脚本・監督
2016『深秋の愛』 監督
2018『どこでもない、ここしかない』 監督・製作
2019『いつか、どこかで』 脚本・監督・製作・編集
2020『COME & GO カム・アンド・ゴー』 脚本・監督・製作・編集
2022『あなたの微笑み』 脚本・監督・製作・編集
2023『ディス・マジック・モーメント』 脚本・監督・製作・編集・ナレーション
2024『すべて、至るところにある』 脚本・監督・製作・編集

公式HPはこちら
2012年10月13日(日本初公開)
2025/2010|マレーシア・中国・日本|モノクロ+カラー|DCP|ステレオ|98分
配給:Cinema Drifters

◆公開記念トークイベントスケジュール @イメージフォーラム◆
第1週(11/29-12/5)11:00の回 終了後
11月29日(土) 大塚匡将さん(主演)×リム・カーワイ監督
11月30日(日) ヴィヴィアン佐藤さん(アーティスト、ドラァグクイーン)×リム・カーワイ監督
12月1日(月)三島有紀子さん(映画監督)×リム・カーワイ監督
12月2日(火)斉藤陽一郎さん(俳優)×リム・カーワイ監督
12月3日(水)筒井武文さん(映画監督)×リム・カーワイ監督
12月4日(木)田中泰延さん(出版社・ひろのぶと株式会社代表/ラジオ大阪パーソナリティ)×リム・カーワイ監督
12月5日(金)藤元明緒さん(映画監督)×リム・カーワイ監督
12月6日(土)深田晃司さん(映画監督)×リム・カーワイ監督 ※
12月7日(日)樋口泰人さん(映画批評家)×リム・カーワイ監督 ※
posted by akemi at 10:45| Comment(0) | マレーシア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年07月17日

夕霧花園  原題:夕霧花園 The Garden of Evening Mists

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監督:トム・リン(林書宇)(『九月に降る風』)
脚本:リチャード・スミス
原作:タン・トゥアンエン(陳團英)
出演:リー・シンジエ(李心潔)、阿部寛、シルヴィア・チャン(張艾嘉)、ジョン・ハナー、ジュリアン・サンズ、デビッド・オークス、タン・ケン・ファ、セレーヌ・リム

1980年代、マレーシアで史上二人目の女性裁判官ユンリン(シルヴィア・チャン)は連邦裁判所事を目指していた。かつて愛した男、謎多き日本皇室庭師の中村(阿部寛)が、とある財宝にまつわるスパイとして指弾されているのを知り、彼の潔白を証明できる証拠を探すことを決意する。
ユンリンにとって、忘れることのできない約30年前の記憶を手繰り寄せる。
1950年代。イギリスの統治が再開されたマレーシア。ユンリン(リー・シンジエ)は戦犯法廷のアシスタントとして働いていた。戦時中、収容所で亡くなった妹の夢であった日本庭園を造りたいと、キャメロンハイランドで活躍する日本人庭師の中村の元を訪ねる。中村は、現在造っている庭園“夕霧花園”で見習いしながら庭造りを学ぶことを提案する。ユンリンは、第二次世界大戦中のことを思い起こす。イギリスの植民地のマラヤ(現在のマレーシア)でユンリンは妹のユンホンと共に日本軍によって強制労働に駆り出されていた。日本は敗戦し、現地人捕虜を収容所ごと焼き払う。ユンリンはただ一人助かり、妹を見殺しにしてしまった自責の念に苛まれ続けていた。日本人に対しても悲しみと憎しみを抱えていたのだが、造園を手伝いながら、どこかミステリアスで孤独な中村に惹かれていく・・・

台湾のトム・リン(林書宇)監督が、マレーシアの作家タン・トゥアンエン(陳團英)の英文小説でブッカー賞ノミネートの「The Garden of Evening Mist」を映画化。
裁判官として活躍するユンリンが、かつて愛した日本人の皇室庭師である中村のスパイ容疑を晴らそうとする中で、時代をさかのぼって過去の出来事が明かされていきます。最後に、ユンリンが日本占領下のマラヤで妹と共に受けた辛い出来事にたどり着き、胸を締め付けられる思いがしました。中村が造る夕霧花園に秘められた謎にもぞくぞくさせられました。中村を演じた阿部寛、はつらつとした裁判官を演じたシルヴィア・チャン、どちらもとても素敵です。(咲)


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トム・リン監督(2020.3大阪アジアン映画祭リモート挨拶 オープニングにて)

昨年の大阪アジアン映画祭オープニング作品。昨年3月はすでにコロナの影響で、海外からのゲストは来日できず、トム・リン監督はリモートで登場。東京や名古屋からいつもこの映画祭に参加するメンバーも私の周りでも数人来ませんでした。でもこの作品、けっこう人が入っていました。
作品の内容的には、いろいろなことが入り込み、人間関係とか登場人物の関係性とか複雑で、もう一度見ないと消化不足という感じで終わっていたので、それから2年余り、再度見て、関係性、マラヤの当時の状況、今日の状況とか、いろいろなことが繋がってきて、胸の中にあったモヤモヤを解消することができた。それにしても、時代背景、マラヤでの日本軍のこと(太平洋戦争時の日本による支配)、イギリス植民地時代の影響など、いろいろなことが絡まっていて、人間関係の前に、そういう時代背景を理解して、日本人、イギリス人とのかかわりなども含めて、物語は語られている。それにしても日本人庭師というのがマラヤで活躍していたという背景、やはり不思議だなと思う。現在のマレーシアは、マレー系、インド系、中華系の民族からなる国になっているが、その融和というのが一番の課題なのだろう。
私が1990年、初めての外国、オーストラリアに行った時、マレーシア航空で行ったので、最初に降り立ったのがマレーシア・クアラルンプールだった。そこで1日街中を歩きまわった時、インド人街、マレー人街、中国人街と、はっきりと住む街が分かれているのに驚いたが、それはマレーシアの歴史から来たものだった。その時は知らなかったけど、ヤスミン・アフマド監督の『細い目』でマレーシアの人種構成、人種間の距離というのを知った。この映画はさらに、台湾のトム・リン監督が製作した作品ということで、また、マレーシア在住の華人とは思いが違うかもしれない(暁)。

台湾・金馬奨最優秀スタイリングデザイン賞
2020年大阪アジアン映画祭オープニング作品

2020年/マレーシア/120分/カラー/ビスタ/5.1ch
字幕:川喜多綾子/字幕監修:山本博之
配給:太秦
公式サイト:http://yuugiri-kaen.com/
★2021年7月24日(土)より渋谷ユーロスペースほか全国順次公開


posted by sakiko at 19:18| Comment(0) | マレーシア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年10月06日

細い目  原題:Sepet 英題 Chinese Eyes

劇場公開 2019年10月11日 アップリンク渋谷&吉祥寺

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監督:ヤスミン・アフマド
製作:ロスナ・モハマド・カシム エリナ・シュクリ
脚本:ヤスミン・アフマド
撮影:ロウ・スン・キョン
編集:アファンディ・ジャマルデン
出演  シャリファ・アマニ、ン・チューセン、ライナス・チャン、タン・メイ・リン、ハリス・イスカンダル、アイダ・ネリナ、アディバ・ヌール

2004年製作/107分/マレーシア
配給:ムヴィオラ
公式HP 

ヤスミン・アフマド没後10周年記念 

『細い目』 

2019.7.20~8.23にヤスミン・アフマド監督特集があったけど、その中から『細い目』が、とうとう日本公開されることになった。2005年 第18回東京国際映画祭で上映されて以来、14年の時を経ての日本公開である。製作されたのは2004年だから、映画ができてから15年もたっている。東京国際映画祭で上映されたあと、マレーシア映画特集やヤスミン特集などで上映されては来たので、何回か観る機会はあったけど、まさかの日本での劇場公開。感無量である。
2009年に51歳の若さで他界したマレーシアのヤスミン・アフマド監督が04年に手がけた長編第2作目ではあるけど、ヤスミン監督の名を日本に知らしめたのは、この『細い目』である。ヤスミン監督作品でおなじみのオーキッドという名の少女がこの作品で登場する。“オーキッド3部作”の第1作目。マレーシアの多民族社会を背景に、マレー系の少女オーキッドと中国系の少年ジェイソンの初恋とマレーシアの多民族社会の状況を描き、マレーシア・アカデミー賞でグランプリをはじめ6部門(監督賞、脚本賞、新人男優&女優賞)、東京国際映画祭で最優秀アジア映画賞を受賞した。「細い目」とはマレーシアで中国人を指していう言葉とのこと。
香港映画界で活躍する金城武(台湾)が大好きな裕福な家のマレー系の少女オーキッドは、露店で海賊版のCDやDVDを売る中国系の少年ジェイソンと出会い恋に落ちた。民族も宗教も異なる2人、戸惑いもあったが、家族に見守られ初恋を育んでいく。しかし、民族的出自が原因で大学進学の道が閉ざされているジェイソンは、裏稼業の元締めであるジミーや、その妹マギーとの関係を断ち切ることができない。一方、オーキッドにはイギリス留学の日が近づいてくる。二人の恋の行方は…。衝撃的な最後はマレーシアの現実を考えさせる。
主演はヤスミン監督映画の常連となった、当時17歳のシャリファ・アマニと映画初出演のン・チューセン(本職は俳優ではない)。ヤスミン・ファミリーといえる役者たちが若いふたりを支えている。マレーシアでは多民族社会ゆえに境界線があって、それぞれの民族が分断され、他の民族との交流があまりない状態の中で、ヤスミン監督はこの作品を引っさげて映画界に登場した。日本とは違う、そういうマレーシアの社会背景を日本に知らしめた。

私が初めて訪れた外国は実はマレーシア・クアラルンプールで1990年。街中を歩いた時に、完全にマレー人街、インド人街、中華人街と分かれていて、街を歩く人たちも他の民族はいない感じで、私たち3人(日本人)は、それぞれの街を歩いていくと、ジロジロ見られてとても居心地悪かった。その記憶を思い出し、それから思うと、やはりこの映画は画期的な作品なんだと2005年に初めて観た時に思った。
『細い目』は、普遍的なラブストーリーだし、家族の愛情や友情を描く人間ドラマではあるけど、民族や宗教が異なる男女の恋というのが考えられなかったマレーシアで(2005年東京国際映画祭での上映後のQ&Aでヤスミン監督が言っていた)、民族の融和という思いがあって作った作品だった。そして、その後の作品にも、その精神は生かされていた。また、マレー語映画が主流であった時代(2004年頃)に、英語、マレー語、広東語などが飛び交う多言語の映画として作られ、マレーシア映画界の新しい波を作っていった作品とも言えるのでは。民族が分断されている中で寛容な世界をと望み、それを作品に反映させた強さと優しさが頼もしい作品になりました。
オーキッドの家族はかわっていて、母親(アイダ・ネリナ)も父親(ハリス・イスカンダル)もお手伝いのヤムさん(アディバ・ヌール)とまるで友人のように話すし、ジェイソンが華人であることも気に留めず、二人の交際を優しく見守るというように描かれていたけど、これはヤスミン監督の家族が反映されていると、東京国際映画祭で上映された時にヤスミンさんは語っていた。これを書いているうちに14年前の映画祭での上映会でのヤスミン監督のこと、言っていたことが蘇ってきた。あのとき、初めて観たマレーシアの映画と家族関係にびっくりしたけど、これはあくまでヤスミンさんの家族の姿で、マレーシアのマレー系の家族の姿が反映されているわけではないとも言っていた。
そういえば、この時、私のカメラは壊れていたか、電池が切れていたかでヤスミン監督を撮影できなかった。その後、監督にお会いすることがなく、ヤスミン監督の写真は撮ることができなかったし、ヤスミン監督に心酔していたUさんも、監督にインタビューする予定がキャンセルになってしまってかなわなかったし、Uさん自身も亡くなってしまった。今思い出してもヤスミン監督に関しては残念なこと続き。せめて、没後10年での日本公開を喜びましょう。もう4回は観ていますが、公開されたらまた観に行きます(暁)


ヤスミン・アフマド監督 フィルモグラフィ
長編映画
ラブン(2003年)
細い目(2004年)
グブラ(2006年)
ムクシン(2006年)
ムアラフ 改心(2008年)
タレンタイム~優しい歌(2009年)



posted by akemi at 20:32| Comment(0) | マレーシア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする