2024年07月28日

ロイヤルホテル(原題:The Royal Hotel)

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監督・脚本:キティ・グリーン
撮影:マイケル・レイサム
出演:ジュリア・ガーナー(ハンナ)、ジェシカ・ヘンウィック(リブ)、ヒューゴ・ウィーヴィング(ビリー)、トビー・ウォレス(マティ)

ハンナとリブの親友2人。旅行で訪れたオーストラリアで所持金が底をつき、ワーキング・ホリデーで紹介された田舎のパブで働くことになった。迎えの車で行っててみると、炭鉱以外なにもない田舎の荒れた土地。古いパブだけがポツンと建っていた。ちょうど彼女たちと入れ違いに出て行く従業員たちが乱痴気騒ぎ中で2人は仰天。お客は近くの炭鉱作業員の男たち。多少想像はしていたものの、パワハラ、セクハラものともしない荒くれ男たちばかりだった。集客のため、女の子は6~8週間で入れ替わる。それまでやっていけるのだろうか?
楽観的なリブは次第に店に溶け込んでいくが、ハンナは耐えられなくなる。

アシスタント』(19)での監督・主演女優コンビが、再び職場におけるハラスメント問題を描きました。モデルとなった店は実際にあるそうですが、結末はフィクションで物議をかもしたそうです。そりゃそうでしょ。
おばちゃん目線で見ると、女の子2人でそんなところに行く方が間違ってる、と言いたくなります。行ってしまったから映画になったんですが。
オーナーは祖父や父が経営した店を継いだ三代目で、今やアル中。しっかり者のベテラン従業員で持っているような店です。やってくる様々なお客たちは描き分けられていると思うものの、ハラスメントの見本のようです。けれどもそこを変えたいとか、長く留まりたいとか思うほど魅力のある仕事でもありません。ぎりぎりまで頑張った2人を観る作品なのかしらん。
アシスタント』は面白く観ましたが、これはなんだかモヤモヤしてしまいました。(白)


2023年/オーストラリア/カラー/91分
配給:アンプラグド
(C)2022 Hanna and Liv Holdings Pty. Ltd., Screen Australia, and Create NSW
https://unpfilm.com/royalhotel/
★2024年7月26日(金)より全国ロードショー

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2023年12月26日

ブルーバック あの海を見ていた(原題:Blueback)

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監督・脚本:ロバート・コノリー(『渇きと偽り』
原作・脚本協力:ティム・ウィントン「ブルーバック」(さ・え・ら書房刊)
出演:ミア・ワシコウスカ(アビー)、アリエル・ドノヒュー(アビー/幼少期)、イルサ・フォグ(アビー役/青年期)、ラダ・ミッチェル(ドラ)、リズ・アレクサンダー(ドラ役/晩年期)、ペドレア・ジャクソン(ブリッグス役/青年期)、クラレンス・ライアン(ブリッグス)、エリック・トムソン(コステロ)、エリック・バナ(マッカ)

海洋生物学者のアビーは、母のドラが脳卒中で倒れたと知らせを受け、急遽故郷のオーストラリアに戻った。美しいターコイズブルーの海は昔のままだが、開発の波が少しずつ押し寄せていた。アビーは口がきけなくなった母の世話をしながら、少女時代を思い起こす。
ドラは若いころから熱心な環境活動家で、アビーは母から海のすばらしさを学び、今の道を選んだのだった。8歳の誕生日に初めて潜った入江で、大きな青い魚に出会い、”ブルーバック”と名前をつけた。。

ロケ地は西オーストラリア州のブレマー・ベイ(Bremer Bay)。ブレマー川の河口にあり、州都のパースから車で5時間半。オルカ(シャチ)、シードラゴン(タツノオトシゴ)の観察ツアーで有名なのだとか。この映画にもザトウクジラの群れが出てきました。
あの人懐こい青い魚はベラ科の「ウエスタン・ブルーグローバー」。長命な個体は70年も生きるそうです。雌雄同体が一般的で、オス1匹、メス1,2匹と幼魚たちが暮らし、オスが群れからいなくなると、メスの1匹がオスに変化するとか。なんと面白い生態なんでしょう。
美しい海を観ていて、基地のために埋め立てられる沖縄の海が浮かびました。戦争で痛めつけられた後、土地を米軍に明け渡さなければならなかった沖縄の人たちを思いました。(白)


耳石とよばれる魚の耳の骨は平衡感覚をつかさどる組織で、樹木の年輪のように1年に1本の輪紋が刻まれるそうです。巨大な青い魚の“ブルーバック”は、耳石の輪紋から約70年生きられることがわかっているとのこと。乱獲してしまっては、長生きの魚も絶えてしまいます。
本作は、美しい海と生態系を守ろうと日々活動する母親を見て育った少女が海洋生物学者となり、母と故郷を思う物語。海洋保護区となった故郷の美しい湾は、母の努力がなければとっくに開発が進んでいたかもしれません。
97年に出版されたティム・ウィントンの原作小説に魅了されたロバート・コノリー監督が、映画化の夢を叶えて作り上げました。コノリー監督が2020年に製作し、オーストラリア映画史上、大ヒットを記録した『渇きと偽り』は、干ばつの続くオーストラリアの大地を舞台にしたサスペンスフルな一作でした。本作は母と娘の情も描いた環境保護を考えさせられる心温まる物語です。(咲)

2022年/オーストラリア/カラー/スコープ/102分
配給:エスパース・サロウ
(C)2022 ARENAMEDIA PTY LTD, SCREENWEST (AUSTRALIA) LTD AND SCREEN AUSTRALIA
https://blueback.espace-sarou.com/
★2023年12月29日(金)シネスイッチ銀座ロードショー
posted by shiraishi at 20:06| Comment(0) | オーストラリア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年02月19日

アラビアンナイト 三千年の願い   原題:Three Thousand Years of Longing

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(C)2022 KENNEDY MILLER MITCHELL TTYOL PTY LTD.

監督・脚本:ジョージ・ミラー
共同脚本:オーガスタ・ゴア
原作:A・S・バイアット「The Djinn in the Nightingale's Eye」
製作:ダグ・ミッチェル、ジョージ・ミラー
出演:イドリス・エルバ、ティルダ・スウィントン

物語論(ナラトロジー)の専門家、アリシア・ビニー博士は、学会での講演のためトルコのイスタンブールを訪れる。 バザールで青と白の螺旋模様の入った「ナイチンゲールの目」というガラスの小瓶を買い、ホテルの部屋で瓶を洗っていると、蓋が外れて、中から巨大な黒い魔人〈ジン〉が現れる。「解放してくれたお礼に3つの願いを叶えてあげよう」と言われる。そうすれば呪いが解けて自分も自由の身になれるというのだ。 だが物語の専門家アリシアは、その誘いに疑念を抱く。 願い事の物語はどれも危険でハッピーエンドがないことを知っていた。 魔人は彼女の考えを変えさせようと、 紀元前からの3000年に及ぶ自身の物語を語り始める。
最初は、旧約聖書にあるソロモン王とシバの女王の物語。全身全霊で女王に尽くしていた魔人は、魔術師でもあったソロモン王によって真鍮の瓶に幽閉され紅海に捨てられ、2500年もの間、漂い続けた。
16世紀中頃、真鍮の瓶は漁師に引き揚げられ、オスマン帝国のスレイマン大帝の愛妾グルタンの手に渡る。瓶の中から現れた魔人に、大帝の長男ムスタファ皇子の心をつかみたいと願い、愛し合うようになる。だが、スレイマンのお気に入りの側室ヒュッレムは自分の息子を王位に就かせたいと陰謀を企て、結果、ムスタファは大帝に殺されてしまう。グルテンも大帝の命で殺されてしまい、魔人は再び小瓶の中に幽閉される。
100年後、1620年、故アフメト1世の皇子で11歳にして皇位を継いだムラト4世の時代。亡きアフメト1世の妃キョセムはムラトの弟イブラヒムを皇位継承者として守るため、檻に入れ豊満な巨女たちをあてがう。ムラト4世が酒浸りで亡くなり、皇位についたイブラヒムのお気に入りの巨女“砂糖姫”が、グルテンが隠していた小瓶を発見。魔人は、何か願いをと懇願するが、姫の怒りを買って瓶ごとボスポラス海峡に沈められてしまう。
そして次なる魔人の運命は・・・・

「アラジンと魔法のランプ」のような物語を想像していたのですが、かなり違いました。魔人が語る身の上話に出てくるオスマン帝国の妃ヒュッレムやキョセムは、トルコのドラマ「オスマン帝国外伝」で馴染み深い女性たち。皇位の後継ぎを巡る陰謀が渦巻いていた時代でした。シバの女王から始まる壮大な歴史絵巻かと思いきや、いつしか、魔人とアリシアの大人の恋物語に。それが、イスタンブールのベラパレスホテルのアガサ・クリスティーの部屋で繰り広げられるという次第。そこで話は終わりませんので、結末をどうぞお楽しみに! (咲)

2022年/オーストラリア・アメリカ/英語・トルコ語/カラー/スコープサイズ/5.1ch/108分/PG12
字幕翻訳:松浦美奈
配給:キノフィルムズ
公式サイト:https://www.3wishes.jp/
★2023年2月23日(木・祝) TOHOシネマズ 日比谷ほか 全国ロードショー



posted by sakiko at 03:02| Comment(0) | オーストラリア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ペーパーシティ 東京大空襲の記憶   原題:Paper City

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(C)2021 Feather Films Pty Ltd, Filmfest Limited

監督:エイドリアン・フランシス
出演:清岡美知子、星野弘、築山実

東京を拠点にするオーストラリア人映画監督エイドリアン・フランシスが語り継ぐ東京大空襲

1945年3月10日午前0時過ぎ、アメリカ軍の爆撃機が東京を襲撃。木造の家屋が密集する下町を中心に東京の4分の1が焼失。日の出までに10万人以上の死者を出すという、史上最大の空襲だった。
エイドリアン・フランシス監督は、東京で暮らして数年経って初めて東京大空襲のことを知り、これほどの大惨事だったのに、痕跡がほとんどないことに驚く。広島の原爆ドームのような、東京大空襲を象徴するものは遺されていないし、公的な慰霊碑も建てられていないのだ。
生存者は生きているのだろうか。
東京大空襲を語り継ぎたくなかったのだろうか・・・
監督は、生き証人を探し出す。 
浅草寺近くで生まれ育った清岡美知子さん。言問橋の下で冷たい水の中、木の棒にしがみついて助かる。数日後、姉と父の傷一つない遺体を見つける。戦後、戦争を経験していない世代の人々に空襲の恐ろしさを伝えるため活動している。
押上で生まれ育った星野弘さん。空襲の翌朝、死体で埋まった水路を目にする。憲兵隊に遺体を水の中から引きあげる作業を命じられる。元兵士には日本政府のサポートがあるのに、民間人は忘れ去られていると嘆く。
江東区森下で暮らしていた築山実さん。近くに軍の標的になるものはなかったので安全だと思い込んでいた。空襲で3人の兄弟をはじめ多くの知人を失う。亡くなった人の名前を記した巻物を作り保管してきたが、この先受け継いでもらえるのか心配している・・・

映画の冒頭、米軍機が爆弾投下に向かう映像が映されました。「東京を焼いちゃおう」と、まるでゲーム感覚。火の海になり、深夜の東京の町を彷徨った人たちの姿は、語ってくださった方たちの言葉から想像するしかありません。

私の知人に昭和3年生まれで、東京大空襲を墨田区の本所吾妻橋付近で経験した方がいました。「3月10日の東京大空襲って言われるけど、僕の感覚では3月9日の深夜」と、あの町を隅田川に向かって逃げまどった日のことをよく話してくださいました。その方も、10年程前に他界。エイドリアン・フランシス監督が、かろうじてご存命の方たちにご体験を聞き、こうして1本の映画に残してくださったことに感謝です。

私は戦後生まれですが、それでも戦争中や戦前について、子供の頃から両親をはじめ多くの方から聞く機会がありました。今の若い人たちは、日本がアメリカと戦争をし、負けた故に今の日本社会の様々な仕組みがあることを認識していない方が多いのではないでしょうか。憲法しかり、教育制度しかり。
戦争で失ったものは多くの人命をはじめたくさんあります。本作のタイトルになっている「ペーパーシティ」。木と紙で出来た伝統的な日本家屋の美しい家並みの多くが、米軍の空襲で焼かれてしまったことも忘れてはなりません。空襲を免れた京都をはじめ、日本各地に点在する伝統的街並みが郷愁をそそる観光地にもなっていますが、かつての日本は、どこの町にも瓦屋根の美しい家並みがあったことに思いがいたります。戦後、焼け跡の町を復興するときに、なぜ美しい町並みを復元しなかったところが多いのでしょう・・・ 
そして、今、戦争の時代を経験していない人たちが政治の中心にいて、日本がまた戦争に加担しかねない状況に進んでいるのではと危惧します。空襲で家族を失うという無念な思いを抱えて生きてきた人たちの言葉に、政治を担う人たちこそ耳を傾けてほしいものです。(咲)


東京ドキュメンタリー映画祭2022 観客賞受賞

2021年/オーストラリア/80分
配給:フェザーフィルムス
公式サイト:https://papercityfilm.com/
★2023年2月25日よりシアター・イメージフォーラムにて公開




posted by sakiko at 00:27| Comment(0) | オーストラリア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年12月11日

チーム・ジンバブエのソムリエたち 原題:Blind Ambition

2022年12月16日(金)~よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテほか全国順次ロードショー! その他の劇場情報 

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©2020 Third Man Films Pty Ltd


監督・製作:ワーウィック・ロス、ロバート・コー
製作総指揮:ロス・グラント、ニール・ハーベイ、エイドリアン・マッケンジー、キャメロン・オライリー、マデリーン・ロス、ポール・ウィーガンド、ジョージ・ハミルトン、イザベル・スチュアート
脚本:ワーウィック・ロス、ロバート・コー、ポール・マーフィ、マデリーン・ロス
撮影:スコット・ムンロ、マーティン・マクグラス
編集:ポール・マーフィ
音楽:ヘレナ・チャイカ
出演:ジョゼフ、ティナシェ、パードン、マールヴィン

ワインのない国からやってきた難民たちが、世界最高峰のブラインドテイスティング大会に挑む

“ワイン真空地帯”のジンバブエ共和国から南アフリカに難民として逃れ、ソムリエとなり「世界ブラインドワインテイスティング選手権」に挑戦する姿を追った。南アフリカのレストランで働くジンバブエから来た彼らは、ソムリエになった。この大会に挑戦する南アフリカチームの4人を選ぶ大会で、上位にジンバブエ出身のジョゼフ、ティナシェ、パードン、マールヴィンの4人が入り、南アフリカの選抜者は、ジンバブエチームを作った。
“チーム・ジンバブエ”を迎え撃つのは、“神の舌を持つ”23カ国の一流ソムリエたち。先進国の白人が多数を占める世界に、故郷ジンバブエの威信をかけて乗り込んだ4人は、クラウドファンディングの支援を受けてワインの聖地フランスのブルゴーニュにたどり着いたものの、限られた経費で雇ったコーチは久し振りの晴れ舞台で大暴走。“チーム・ジンバブエ”の波乱に満ちたスリリングなワインバトルの結末はいかに!?

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©2020 Third Man Films Pty Ltd

公式HPより
私たちは、彼らの旅路と原動力をもっと知りたくなりました。そして、それは難民の暮らしや、彼らが新たな社会で直面する問題、そして生まれた国から追い出された人々にとって「家(ホーム)」とは何かということに光を当てる物語を作るチャンスでもあったのです。彼らのストーリーは、文化や人種の壁を取り除き、橋渡しをするための、より深い探求に繋がるのだと強く感じました。
彼らが南アフリカで認められ成功することが出来たのは、自分自身と家族のために、より良い暮らしを実現しようという、非常に強いポジティブ思考の賜物。そして、彼らのジンバブエへの強い愛にも心動かされました。選手権出場を通して、母国ジンバブエの未知なる可能性を世界に示すことが出来たし、そしてこのスポットライトで、抑圧的な政権の下で生きてきたジンバブエの若者たちに勇気を与えたい、と彼らは強く願っていました。この映画は単なる大会への挑戦だけでなく、希望と変革の物語なのです。難民の暮らしや、新たな社会で直面する様々な問題。生まれた国から追い出された人々にとって「家(ホーム)」とは何かということに光を当てるチャンスに巡り合った。
『世界一美しいボルドーの秘密』の監督ワーウィック・ロスと製作総指揮ロバート・コーが共同監督を務め、チーム・ジンバブエのワイナリーツアーの様子や選手権の舞台裏に密着。トライベッカ映画祭とシドニー映画祭で観客賞を受賞。
トップソムリエが火花を散らす選手権会場にカメラが潜入し、大会への挑戦を描く。

ジンバブエは、ワインの生産も消費もほとんどない国。残忍なロバート・ムガベの政権から逃れるまで、ワインを味わったこともなかった4人は、ケープタウンの4大レストランのヘッドソムリエになった。
4人の明るいキャラクターは、ドキュメンタリーなのに笑いあり涙ありでエンターティメント色、大。彼らのジンバブエへの強い愛も描かれ、選手権出場を通して、母国ジンバブエの抑圧的な政権の下で生きている若者たちに勇気を与えられたらと彼らは願う。貧困、難民など、今日的な問いを投げ掛ける社会派作品でもある。
今年は11月、12月に日本、フランス、レバノン、そしてこの南アフリカとジンバブエ、フランスを舞台にしたドキュメンタリーと、5本ものワイン映画が公開されている。ワインに人生をかけている人々の姿が描かれ、伝統の継承や、新しいことへの挑戦のすばらしさを描きつつ、気候変動、戦争、貧困の問題をも観る人に問いかける。ワインを通じて世界のワイン文化を楽しみ、考えてみませんか(暁)。


ジンバブエと聞いて思い浮かんだのは、かつて南ローデシアと呼ばれていたアフリカ大陸南部の国であることと、大きなヴィクトリアの滝があることくらいでした。 『チーム・ジンバブエのソムリエたち』というタイトルを見て、え?ソムリエ?と、ぐっと興味を惹かれました。ジンバブエとソムリエがあまりにもかけ離れたものに感じたからです。
冒頭、「クムシャ」という言葉が、ショナ語で“ルーツ”や“故郷”という意味だけど、単なる場所じゃない、祖先の魂が宿んでいる心のよりどころと出てきました。ショナ語という言語があることを初めて知りました。ジンバブエ共和国の公用語の一つで、国の70%以上を占めるショナ族の言葉とのこと。
チーム・ジンバブエの4人のソムリエは、それぞれが大変な思いをして南アフリカに逃れてきた難民。ジョゼフは密入国業者にお金を払ったものの貨物列車に詰め込まれ蒸し焼き状態に。死を覚悟しましたが運よく南アフリカに。1995年以降、300万人以上のジンバブエの人たちが難民として出国しているそうです。国境で警官に撃たれたり、ワニに食われて命を落とす危険もあるのに! そういえばムガベ大統領という独裁者がいたという程度の記憶でしたので、本作を通じて、ジンバブエの独立後の状況の一端を知ることができました。
ワインを知らなかった4人が、南アフリカでソムリエとなり、旅費をクラウドファンディングで集めて、ワインテイスティング選手権に挑む姿に、夢を持てば叶うと勇気づけられました。そして何より、4人の故国ジンバブエへの愛と誇りに感銘を受けました。(咲)


『チーム・ジンバブエのソムリエたち』公式HP
日本語字幕:横井和子
2021年製作/ビスタ/5.1ch/96分
オーストラリア/英語・ショナ語・仏語
後援:ジンバブエ共和国大使館、一般社団法人日本ソムリエ協会
提供:ニューセレクト 配給:アルバトロス・フィルム

*参照 シネマジャーナルHP スタッフ日記
「11月、12月にワイン映画が5本も公開!」
http://cinemajournal.seesaa.net/article/494033795.html

今年、5本ものワイン映画を観て、ワインに興味を持ち、さっそく12月初めに3、4か所のワイナリーやワイン関係施設を訪ねてみました。そのレポートをまたスタッフ日記にも書きたいと思います。



posted by akemi at 21:05| Comment(0) | オーストラリア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする