2024年12月15日

ヘヴィ・トリップⅡ/俺たち崖っぷち北欧メタル!  原題:HEAVIER TRIP

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(C)2024 Making Movies, Heimathafen Film, Mutant Koala Pictures, Umedia, Soul Food

監督・脚本:ユッカ・ヴィドゥグレン、ユーソ・ラーティオ
製作:カイ・ヌールドベリ、カールレ・アホ
出演:ヨハンネス・ホロパイネン、マックス・オヴァスカ、サムリ・ヤスキーオ、チケ・オハンウェ、アナトーレ・タウプマン、ヘレン・ビースベッツ、ダーヴィト・ブレディン、 JUSSI69、SU-METAL (BABYMETAL)、MOAMETAL (BABYMETAL)、MOMOMETAL (BABYMETAL) 他

フィンランドの田舎町のトナカイ粉砕場の地下室で、メタルコピー曲を楽しんでいたトゥロたち仲間4人のバンド。ついにオリジナル曲を引っ提げ、バンド名もインペイルド・レクタム(直腸陥没)と付けて、隣国ノルウェーの巨大フェス、ノーザン・ダムネーションへ殴り込みを図るも、運転していたドラマーがトナカイを避けて事故死。彼の棺を車の上に乗せて国境を越え、問題を起こして、ノルウェーの刑務所に収監されていた。
獄中、超大物レコードプロデューサーのフィストからドイツのメタルフェス、ヴァッケン・オープン・エアへの出演オファーを受けるが、準備不足と収監中を理由に辞退。
そんなある日、ギタリストの実家のトナカイ粉砕場が地上げ屋の乗っ取り危機に瀕していると聞き、彼らは脱獄。出演料で実家を救おうと、オリジナル新曲を携え、フィヨルドの彼方ヴァッケンを目指す。彼らは無事、ヴァッケンのフェスに参加して、実家を救えるのか・・・

2019年12月27日に日本公開された前作『ヘヴィ・トリップ/俺たち崖っぷち北欧メタル!』
ヘヴィメタは苦手な私ですが、とにかく可笑しくて、呆れ果て、深く印象に残る映画でした。 5年の時を経て、まさかの続編! 
「“終末シンフォニック・トナカイ粉砕・反キリスト・戦争推進メタル”バンド=インペイルド・レクタム(直腸陥没)」という、なんともいかれたバンドなのですが、彼らはいたって親思いで、バンドを食いものにする商業主義者にも立ち向かいます。人は見た目で判断しちゃいけない!
一方で、前作でも、彼らを執拗に追い詰めた国境警備の女性が、今回も彼らを追ってきます。
続編も、またまた笑わせていただきました。(咲)


2024年/フィンランド映画/96分/カラー/スコープ/DCP
字幕翻訳:堀田雅子 字幕監修:増田勇一
配給:SPACE SHOWER FILMS後援:フィンランド大使館
共同提供:キングレコード+スペースシャワーネットワーク 宣伝:HaTaKaTa
公式サイト:https://heavytrip-2.com/
★2024年12月20日(金)よりシネマート新宿ほか全国順次公開




posted by sakiko at 11:40| Comment(0) | フィンランド | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年12月13日

キノ・ライカ 小さな町の映画館  原題:CINEMA LAIKA

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(C)43eparalleleproductions

監督・脚本・撮影・編集:ヴェリコ・ヴィダク
脚本:エマニュエル・フェルチェ
出演:アキ・カウリスマキ、ミカ・ラッティ、カルッキラの住人たち、ジム・ジャームッシュ、ヘッラ・ユルッポ、マウステテュトット、ヌップ・コイヴ、サイモン・アル・バズーン、ユホ・クオスマネン、エイミー・トービン

北欧フィンランドの鉄鋼の町カルッキラ。深い森と湖と、今は使われなくなった鋳物工場しかなかった人口9000人の小さなその町に、はじめての映画館“キノ・ライカ”がまもなく誕生する。元工場の一角で自らの手で釘を打ち、椅子を取りつけ、スクリーンを張るのは映画監督のアキ・カウリスマキと仲間たち。キャデラックにバイク、ビールと音楽。まるでカウリスマキの映画から抜けでたようなその町で、住人たちは映画館への期待に胸をふくらませ、口々に映画について話しだす…。

クロアチア出身のアーティスト、ヴェリコ・ヴィダクが、妻と生後8カ月の娘を連れてカルッキラに1年間滞在し、キノ・ライカ開館までの作業を手伝いながら、映画館の誕生にわき立つ人びとの声を拾いあげたドキュメンタリー。

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©43eparalleleproductions

アキ・カウリスマキ監督が仲間たちと楽しそうに理想の映画館を作る姿が微笑ましいです。
元は労働者たちが過酷な環境の中で過ごした製鉄工場が、町の人が集う場に変貌! 
バーも併設された映画館は、映画だけでなく、美味しい食べ物も満喫できる場所。カルッキラの町では、『希望のかなた』や『枯れ葉』のロケも行われていて、ヘルシンキからも気軽に行ける距離とのこと。古い町並みも楽しめそうです。アキ・カウリスマキの世界に浸りに訪れてみたい! 夏に行けば、カウリスマキ監督ご本人に会えるらしいです。(咲)


アキ・カウリスマキの世界に浸りに訪れてみたい!と思っていたら、コラボツアーのお知らせが届きました!(12/18)

旅行会社・北欧旅行フィンツアーによるコラボツアー
【キノ・ライカとアキ・カウリスマキの世界7日間】来年6月に企画!


映画『枯れ葉』の公開記念で催行され満員御礼となった、
「キノ・ライカとアキ・カウリスマキの世界スペシャルツアー」が更にバージョンアップしたものだそうです。
冬の期間はポルトガルで過ごすカウリスマキ監督も春先にはカルッキラに戻ってきて、
キノ・ライカでコーヒーを提供したり、スタッフの一員として働いている為、ツアーで訪れた際にはそんな貴重な姿も見られるかもしれないとのこと。
ツアーの詳細は北欧旅行フィンツアーの公式サイトで発表予定。


2023年/フランス・フィンランド/フィンランド語、英語、フランス語/81分/2.00:1/6.1ch/DCP
配給:ユーロスペース 提供:ユーロスペース、キングレコード
公式サイト:http://eurospace.co.jp/KinoLaika
★2024年12月14日(土)ユーロスペースほか全国順次公開
posted by sakiko at 14:10| Comment(0) | フィンランド | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年12月10日

枯れ葉  原題:KUOLLEET LEHDET  英語題:FALLEN LEAVES

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監督・脚本:アキ・カウリスマキ
撮影:ティモ・サルミネン
出演:アルマ・ポウスティ(『TOVE/トーベ』)、ユッシ・ヴァタネン(『アンノウン・ソルジャー 英雄なき戦場』)、ヤンネ・フーティアイネン、ヌップ・コイヴ

ヘルシンキの街の片隅で孤独を抱えながら生きる女と男。
アンサは理不尽な理由で仕事を失い、ホラッパは酒に溺れながらもどうにか工事現場で働いている。ある夜、二人はカラオケバーで出会い、惹かれ合う。男から、電話したいと言われ、紙に電話番号を書いて渡すも、お互いの名前は名乗らないまま。ホラッパは電話番号を書いた紙をなくしてしまう。そんなこととは知らず、電話を待つアンサ・・・

アキ・カウリスマキ監督自ら、労働者3部作(『パラダイスの夕暮れ』『真夜中の虹』『マッチ工場の少女』)に連なる“第4作目”と位置付ける作品。
仕事にも愛にも恵まれない中年の二人が、寄り添って生きたいと願う気持ちが切ないです。そんな二人が一緒に観に行く映画が、ジム・ジャームッシュ監督の『デッド・ドント・ダイ』。デートにふさわしいかどうか別にして、アキ・カウリスマキ監督のジム・ジャームッシュへの思いを感じます。
映画の中で、ロシアによるウクライナ侵攻のニュースがしばしば流れ、ロシアと国境を接しているフィンランドにとって、決して他人事ではないこととして人々は受け止めているのではと思います。
公式サイトに掲載されている監督メッセージが、いかにもアキ・カウリスマキらしいです。
「取るに足らないバイオレンス映画を作っては自分の評価を怪しくしてきた私ですが、無意味でバカげた犯罪である戦争の全てに嫌気がさして、ついに人類に未来をもたらすかもしれないテーマ、すなわち愛を求める心、連帯、希望、そして他人や自然といった全ての生きるものと死んだものへの敬意、そんなことを物語として描くことにしました。それこそが語るに足るものだという前提で」(一部引用)

これまでのアキ・カウリスマキ監督作品同様、ちょっとした仕草や、会話の間の取り方にも、そこはかとない可笑しみを感じます。
2017年、『希望のかなた』のプロモーション中に監督引退宣言をされたアキ・カウリスマキですが、そんな宣言は忘れたかのように復帰したのも彼らしくて嬉しいです。 最後に流れる「枯れ葉」の懐かしいメロディーにグッときました。(咲)


◎受賞歴
第76回カンヌ国際映画祭審査員賞
2023年国際批評家連盟賞年間グランプリ
第59回シカゴ国際映画祭最優秀監督賞
第40回ミュンヘン映画祭バイエルン2&SZ観客賞
第20回シネフェスト・ミシュコルツ国際映画祭Zukor Adolf賞(グランプリ)

2023年/フィンランド・ドイツ/81分/1.85:1/ドルビー・デジタル5.1ch/DCP/フィンランド語
配給:ユーロスペース 提供:ユーロスペース、キングレコード
公式サイト:https://kareha-movie.com/
★2023年12月15日(金)よりユーロスペースほか全国ロードショー




posted by sakiko at 03:03| Comment(0) | フィンランド | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年10月15日

アアルト(原題:AALTO)

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監督:ヴィルピ・スータリ(Virpi Suutari)
制作:2020年 配給:ドマ 宣伝:VALERIA
後援:フィンランド大使館、フィンランドセンター、公益社団法人日本建築家協会 協力:アルテック、イッタラ

アルヴァ・アアルト(1898-1976年)はフィンランドを代表する建築家・デザイナー。今年は生誕125周年にあたる。今も残る優れたデザインの家具や名建築の数々を送り出した。
ヴィルピ・スータリ監督は子どものころアアルトが設計した図書館で過ごし、彼の建築やデザインの虜になったという。監督は、仕事のパートナーであり、最初の妻であったアイノに注目する。アイノがアアルトとやりとりした手紙から見えてくる二人の歴史、友人や関係者たちのコメントを集めてドキュメンタリーを制作した。

アアルトの名前は、この作品で初めて知りました。出回っている安価な商品ももとのデザインはこの方のものだったか~!
そして妻のアイノも優れたデザイナーであったと知りました。妻と母の役割とデザイナーの仕事とさぞ忙しかったはずなのに、有能な方だったんですね。最も有名なのが水の波紋からインスパイアされたという”ボルゲブリック・グラス”シリーズ。これは見たことがありました!正しい名前や製作者を知らない、特別に凝ったものでなくシンプルで使い勝手のよさそうな家具や日用品。目に留まったデザインの多くがフィンランドで生まれたものでした。
フィンランドのイッタラという小さな村のガラス工場から、機能的で美しく、誰もが入手して生活の中で使える製品が次々と送り出されました。アアルト夫妻、カイ・フランクのデザインによるものです。映画の中には仕事場だけでなく、アアルトがデザインした住宅も紹介されています。居心地の良さそうな明るい空間です。
惜しくもアイノは病を得て50代半ばで亡くなってしまいます。アアルトは入社してきたエリッサと再婚し、エリッサもアイノと同じようにアアルトを支え続けました。素晴らしい業績の陰には聡明な伴侶がいたわけです。こちらももっと注目して。(白)


2020年/フィンランド/カラー/103分
配給:ドマ 
宣伝:VALERIAC
(C)Aalto Family (C)FI 2020-Euphoria Film  
https://aaltofilm.com/
★2023年10月13日(金)より全国ロードショー
posted by shiraishi at 13:31| Comment(0) | フィンランド | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年04月02日

ガール・ピクチャー(原題:Tytot tytot tytot)

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監督:アッリ・ハーパサロ
脚本:イロナ・アハティ、ダニエラ・ハクリネン
出演:アーム・ミロノフ(ミンミ)、エレオノーラ・カウハネン(ロンコ)、リンネア・レイノ(エマ)

ミンミとロンコは同じ学校に通う親友、放課後はスムージーやさんで一緒にアルバイトをしている。なんでもうちあけられる2人は、今日もおしゃべりに花を咲かせている。男性と一緒にいても何も感じないロンコは、自分がほかの人と違うのではと悩んでいる。理想の相手を探してパーティに参加した2人は、フィギュアスケーターのエマと出会った。

アッリ・ハーパサロ監督と2人の脚本家イロナ・アハティ、ダニエラ・ハクリネンは自分たちの少女時代を振り返りながら、この3人の少女たちに訪れる3度の金曜日をストーリーにしました。感受性の強い年頃の3人があれこれ悩み、失敗もしながらちょっとずつ前進します。”Tytot tytot tytot”=”girl.girl,girl"女の子をしかりつけるときに使う言葉。監督はこれをいい意味で使いたかったそうです。応援のエールかな。行け行け女の子!(白)

窓の外に湖が見える部屋、限定版のムーミン・マグ(使い方がユニーク!)など、フィンランドらしいアイテムが出てくる中で描かれる17~18歳の日常生活。その年頃の少女たちの恋や将来への悩みは世界共通でしょう。なんでも打ち明けることのできるミンミとロンコの仲を羨ましく思いました。
フィギュアスケーターのエマは、世界選手権参加を目指していて、プレッシャーに押しつぶされそうです。友達の誕生日パーティに行けないというエマに「息抜きも必要よ」と言うママ、素敵です。エマはスムージーやさんでロンコと知り合うことで、ちょっと羽目を外すことを覚えます。無駄な時間を過ごすことも、心の余裕に繋がるのですね。何より、心の通じ合える友と過ごす時間は大切!
それにしても、スムージーの名前が面白いです。「ライムの情熱」や「緑は最高」は想像がつくとして、「呼吸」「あなたは完璧」って、どんな味? (咲)


2022年・第38回サンダンス映画祭ワールドシネマドラマ部門で観客賞を受賞

2022年/フィンランド/カラー/シネスコ/100分
日本語字幕:松永昌子
配給:アンプラグド
(C)2022 Citizen Jane Productions, all rights reserved
https://unpfilm.com/girlpicture/
★2023年4月7日(金)新宿シネマカリテ、YRBISU GARDEN CINEMAほか全国順次ロードショー




posted by shiraishi at 19:36| Comment(0) | フィンランド | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする