2026年01月13日
マライコッタイ・ヴァーリバン(原題:Malaikottai Vaaliban)
監督・脚本:リジョー・ジョーズ・ペッリシェーリ
撮影:マドゥ・ニーラカンダン
音楽:プラシャーント・ピッライ
出演:モーハンラール(マライコッタイ・ヴァーリバン)、ソーナーリー・クルカルニ(ランガパッティナム・ランガラニ)、ハリーシュ・ペーラディ(アイヤナール師父)、ダーニシュ・セート(チャマタカン)、マノージ・モーゼス(スチンナッパイヤン)、コタ・ノンディ(ジャマンティ)
砂漠の村に、放浪の武芸者ヴァーリバンと師のアイヤナール、その息子チンナッパイヤンが牛車で現れる。ヴァーリバンは村の豪傑ケル・マランを素手で倒して村の守護者となった。彼の旅は続き、各地で戦いと出会いを重ねる。高貴な女性マタンギや踊り子ランガラニとの短い縁がある。彼女を救ったことでチャマタカンという男の恨みを買い、決闘することになった。その道中、牛車に乗せた娘ジャマンティとチンナッパイヤンが最初は反発しあったものの恋人同士になった。
やがてヴァーリバンは、かつて修行を始めた地アンバットゥールに戻るが、そこは西欧の王に支配され、奴隷制と麻薬、銃で人々が苦しむ国となっていた。王妃の誕生祝いの日、ヴァーリバンは御前試合に現れ、賞金目当てと見せかけて王の暴政を終わらせるために立ち上がるのだった。
タイトルの「マライコッタイ・ヴァーリバン」とは、「山の砦の若者」を意味する言葉。演じるモーハンラールをこの映画で初めて見ましたが、マラヤーラム語映画の至宝と称されています。1960年生まれ。デブゴンに髪と髭を足した風貌のキャリア40年を誇る俳優です。出演作はジャンル問わず400本以上、多数の受賞に加えて勲章も、実業家でもありとても多才な方のようです。
ヴァーリバンは親はなく、師匠とその息子が家族で大切に思っていますが、のちに悲劇に見舞われます。腕比べのたびに繰り広げられるアクションがご覧くださいとばかりにスローモーションです。敵となるのが、とってもわかりやすい悪役でいかにも悪い奴、観客はいけいけ~!!と熱狂することでしょう。楽しませるしかけがたくさんで、2時間半あまりも長くありません。(白)
2024年/インド/カラー/156分
配給:グッチーズ・フリースクール
©2024 Century Max John Mary Production LLP . All Rights Reserved
https://www.malaikottai2026.com/
★2025年1月17日(土)シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開
2025年11月25日
雨が見つけた君 原題:Varsham
監督:ショーバン
出演:プラバース、トリシャー・クリシュナン、ゴーピチャンド、プラカーシュ・ラージ、スニール、アジャイ、サティヤム・ラージェーシュ、ヴェーヌ・マーダヴ、ジャヤプラカーシュ・レッディ
ヴィシャーカパトナムの採石場で働く青年ヴェンカト。育ての親である叔父が倒れ、心臓手術代30万ルピーが必要になる。そんな折、映画プロデューサーから、若く冷酷な大地主バドランナに誘拐された新人女優シャイラジャを取り返してほしいと頼まれる。ヴェンカトは、「もう彼女とは関係ない」とつぶやきながら、金のために引き受ける。
ヴェンカットは、シャイラジャとの出会いを思い出す。
それは、列車が豪雨で立ち往生したテランガーナ地方ワランガル近くの駅のことだった。雨の中で嬉しそうに踊る美少女に一目惚れする。ようやく列車が動き出した時、その美少女から父を探してほしいと頼まれ、列車に乗り損ねてしまう。
その場には、危篤の父のもとへ急ぐ地主の息子バドランナもいて、美少女に惹かれながら声をかけられず、部下に彼女の身元を調べるよう命じる。
美少女シャイラジャの父ランガーラーオは賭け事好きで借金まみれ。金の力で近づいたバドランナに懐柔され、さらに、娘を映画に出演させて一儲けしようとする。
一方、ヴェンカトとシャイラジャは、雨の降るワランガルの市場で再会し、次第に心を寄せていく。シャイラジャはヴェンカトの小指に自分の指輪をはめる。ランガーラーオは、その指輪を見て、ヴェンカトが娘の恋人と知り、二人の仲を裂こうとする・・・
父の画策で、ヴェンカトのことを誤解してしまったシャイラジャ。金の力で強引にシャイラジャを自分のものにしようとするバドランナ。 さて、二人の恋の行方は?
(C)Sumanth Art Productions
『バーフバリ 伝説誕生』(2015年)『バーフバリ 王の凱旋』(2017年)では、勇壮なプラバースですが、本作では、まさに恋する青年。もちろん彼女のためなら、勇敢に闘います。
そして、シャイラジャを演じるのは、まだ少女らしい可憐さもあるトリシャー・クリシュナン。『PS1 黄金の河』『PS2 大いなる船出』では、チョーラ朝のスンダラ・チョーラ王の長女クンダヴァイ姫を貫禄たっぷりに演じていました。
(C)Sumanth Art Productions
20年前のプラバースとトリシャー。雨降る中で芽生える恋。初々しいです。
テランガーナ州ワランガルの千柱寺院でのシーン。雨が降ったら、千柱寺院で会おうと約束する二人。着いたとたんに雨がやんで、その日は会うのをやめるのには笑えます。そして次の雨の日、美しい虹が二人の再会を祝います。
原題Varshamは、テルグ語で雨。 まさに雨が降ると生き生きと輝くシャイラジャ。
楽曲は、テルグ語映画音楽の第一人者デーヴィ・シュリー・プラサードの手がけたもの。お決まりの踊りの場面もたっぷり。ショーバン監督は、本作を放った年にまさかの40歳で早世。存命だったら、その後、どんな映画を作ってくださったことでしょう。(咲)
2004年/インド/159分
配給:インドエイガジャパン
公式サイト:https://varsham-movie.com/
★2025年11月28日(金)シネ・リーブル池袋 ほかにて全国順次公開
2025年11月20日
マーク・アントニー 原題:Mark Antony
監督・脚本:アーディク・ラヴィチャンドラン
撮影:アビナンダン・ラーマーヌジャン
音楽:G・V・プラカーシュ・クマール
編集:ヴィジャイ・ヴェールクッティ
出演:ヴィシャール、S・J・スーリヤー、リトゥ・ヴァルマ、スニール、セルヴァラーガヴァン、アビナヤ、Y・G・マヘーンドラン、ニラルガル・ラヴィ、レディン・キングスリ、カールティ(声の出演)ほか
1975年、マドラス。科学者チランジーウィは、過去の人と話せる電話機を発明し、バーに祝杯をあげにいくが、ギャングの抗争に巻き込まれ、流れ弾に当たって命を落とす。当時、街ではギャングのアントニーとジャッキーの二人が親友ながら、縄張り争いをしていた。
1995年、アントニーはすでに亡くなり、ジャッキーがその街を支配していた。アントニーの息子のマークは、ジャッキーの養子となっていたが、おとなしい性格でギャング稼業を嫌い、自動車修理工として身を立てていた。そのマークが、特殊な性能の電話機を偶然見つけて、使用方法を知る。
マークは、母が父に殺されたことを恨んでいて、過去の母に電話して、父を殺すよう伝えるが、母から「尊敬する人を殺せない」と言われる。いったい、母の死の真相は? そして、その後、父アントニーはなぜ命を落としたのか・・・
事件の起こった前の「過去」に生きる人と電話すると、「現在」が変わっていきます。それも、どんどん変わるので、頭の中の整理が追いつきません。え~ これを阻止すると、今度はどうなるの? もう頭の中がぐちゃぐちゃです。 ありえないけど、そこがこの映画の面白さ。
自動車修理工のマークと、その父親でギャングのアントニーの二役を演じるヴィシャール。マークを養子にしたギャングの親分ジャッキーと、その息子マダンの二役を演じているのは、『ジガルタンダ・ダブルX』や『政党大会 陰謀のタイムループ』のS・Jスーリヤー。
二人の俳優が二役を演じていて、それがまたややこしい・・・
過去が変わるたびに、現在が変わるので、くらくらしながら、抗争の行方を見守りました。(咲)
2023年/インド/タミル語ほか/149分
日本語字幕翻訳:渡辺はな、監修:小尾淳、協力:安宅直子
製作会社:ミニ・スタディオ
配給:SPACEBOX
公式サイト:https://spaceboxjapan.jp/markantony/
★2025年11月21日(金)より新宿ピカデリーほかにて公開
2025年08月31日
銃弾と正義 原題:Vettaiyan
監督:T・J・ニャーナヴェール
出演:ラジニカーント、アミターブ・バッチャン、ファハド・ファーシル、ラーナー・ダッグバーティ、マンジュ・ワーリヤル、リティカー・シン、ドゥシャーラー・ヴィジャヤン、キショールほか
インド最南端のカンニヤクマリ県で勤務するアディヤン警視(ラジニカーント)。彼は、凶悪犯罪の捜査の場で、抵抗し反撃してくる犯罪者をその場で仕留める「エンカウンター」(*注)をしばしば行い、“ハンター(狩人)”の異名をとる血気盛んな名物警察官。
ある日、小学校の女性教師サランニャ(ドゥシャーラー・ヴィジャヤン)から、学校が麻薬の保管庫として使われているという手紙を受け取る。アディヤンは、「バッテリー」と呼んでいる手下のパトリック(ファハド・ファーシル)を学校に忍びこませ、麻薬密売組織の仕業とつきとめ、首謀者を射殺する。通報したサランニャはチェンナイの学校に栄転となるが、ほどなく学内でレイプされ殺されてしまう。チェンナイ警察の警視ハリーシュ・クマール(キショール)と女性の警視補ルーパー(リティカー・シン)が捜査に当たり、グナー(アサル・コラール)というデジタル機材を学校に納入していてサランニャと接点があった男を犯人と目して逮捕する。ところがグナーが逃亡してしまい、警視総監はアディヤンに協力を求め、エンカウンターの許可も与える。アディヤンは、港で船に潜んでいたグナーを射殺する。ところが、このことに対し、人権擁護派の判事サティヤデーヴ(アミターブ・バッチャン)が、グナーは無実だとして、アディヤンのエンカウンターには人権上問題があると指摘する。再捜査の結果、アディヤンは真犯人の背後にナトラージというオンラインの教育システムを運営している男がいることを突き止める・・・
*注
エンカウンターとは何か。英語のencounterは「遭遇・出会い」を表わす単語だが、インド・パキスタンなど南アジアでのみ特殊な意味で使われている。警察官が凶悪犯などに対して逮捕・起訴・裁判などの手続きをすべてまたは一部省略して射殺することを意味する。日本には決まった訳語がなく、厳密には「警察官による超法規的処刑」とでもいうべきものだが、本作の字幕では簡潔に「特例射殺」とした。
エンカウンターには幾つかのパターンがある。一つめは、いわゆる「手入れ」に近いもので、犯罪者のアジトに突入して一網打尽の逮捕を試み、反撃・逃亡する者を射殺するケース。本作ではアディヤンの初登場シーンがそれにあたる。二つめは、凶悪犯罪の現場で反撃・逃亡する犯人を射殺するケース。本作では船上のシーンがそれにあたる。三つめは、武装解除され手錠をかけられるなどして無抵抗状態の被疑者を射殺し、その場にいた警察官全員で口裏を合わせて正当防衛での射殺ということにしてしまうもので、これをフェイク・エンカウンターという。本作中では、冒頭の手入れで取り逃がしたギャングを仕留めるシーンがそれにあたる。偽装銃撃と訳されることもあるフェイク・エンカウンターは余りにもしばしば起きるため、エンカウンターというだけでこのタイプの射殺を意味するまでになってしまっている。
20世紀後半のムンバイで警察がギャングを急襲することをそう呼んだことから定着したとされるエンカウンターだが、これまでに枚挙に暇がないほどに多発しており、幾度ものエンカウンターで華々しい“成果”をあげた警察官は、エンカウンター・スペシャリストとして英雄視されることが多い。サティヤデーヴが警察大学校で講義する際にスライドに映し出す4人の警察官は、ラジニが演じるアディヤン以外は実在の人物。エンカウンターを行う警察官は、娯楽映画の中ではほとんどの場合、英雄的なキャラクターとして描かれる。(公式サイトより)
冒頭、警察学校で「法による人権の保障」についてレクチャーする判事のサティヤデーヴを演じたアミターブ・バッチャンが、渋くて、貫禄があって、とにかく素敵すぎました。講義の内容もまた、記憶に留めたいものでした。「イギリス人は貿易のためにインドへ来たが、支配して富を略奪した。これは真実だ。それより前、君主制の時代、正義は平等なものではなかった。教育を受けられない者も多かった。(中略) ボンベイで30年判事を務めてきた。金や権威やカーストや宗教という外見に偏見は潜んでいる」
続いて、凶悪犯に対して、逮捕・起訴・裁判などの手続きを省略して、警察官が犯罪現場で射殺する特例射殺「エンカウンター」で英雄視されている4人の警官の写真をあげて、「エンカウンター」の是非を問う姿も実にカッコよかったです。
本作では、犯人と信じ込んで射殺してしまったグナーが、実は犯人ではなかったと知ったアディヤンが自責の念で真犯人追及に奔走するのですが、大スターで、ヒーローのイメージのラジニカーントが違う姿を見せていることが意外でした。
後半、真犯人の背後にオンラインの教育システムを運営するナトラージという男が浮上しますが、この男は、塾などにお金をかけられるお金持ちしか良い大学にいけないことに目を付け、比較的、安い値段のオンラインシステムを低所得者層に売りつけています。インドの教育事情にも踏み込んだ監督。ちょっと盛り込み過ぎな感も! (咲)
2024 年/インド/タミル語/161 分
字幕:大西美保・監修:小尾 淳
配給:SPACEBOX
公式サイト:https://spaceboxjapan.jp/vettaiyan/
★2025年9月5日(金)より全国ロードショー
2025年08月10日
何も知らない夜 (原題:A NIGHT OF KNOWING NOTHING)
監督・脚本:パヤル・カパーリヤー
撮影:ラナビル・ダス
学生寮の片隅にひっそりと置かれていた小箱。中にはL(エル)という女子学生が恋人へ書いた手紙が入っていた。書いたまま出されなかった手紙には、叶わなかった恋と劇的に変化していく周囲のようすが垣間見られる。
2016年、インドでは学生による政府への抗議行動が起こっていました。当時映画を学んでいたカパーリヤー監督は自身が撮りためた映像のほかに、友人知人から多くの映像を集めコラージュ。ダンスを楽しむ若者たち、抗議のために集まったところを排除、弾圧される学生たちのモノクロやカラーの映像に、フィクションのラブストーリーをのせて映像詩のようなドキュメンタリーを制作しました。根強いカーストにより、祝福されない恋人の嘆きもつぶやかれます。この作品の3年後に劇映画『私たちが光と想うすべて』が発表されて、カンヌ映画祭グランプリを受賞します。その萌芽がここにありました。(白)
2021年/インド/カラー/103分
配給:セテラ・インターナショナル
(C)Petit Chaos - 2021
https://naniyoru.com/
★2025年8月8日(金)ほか全国ロードショー


