2019年09月21日

ハミングバード・プロジェクト 0.001秒の男たち 原題:THE HUMMINGBIRD PROJECT

640.jpg

監督・脚本:キム・グエン
出演:ジェシー・アイゼンバーグ、アレクサンダー・スカルスガルド、サルマ・ハエック、マイケル・マンド

ヴィンセント(ジェシー・アイゼンバーグ)と従兄弟のプログラマー、アントン(アレキサンダー・スカルスガルド)は、高速で株の売買をする高頻度取引で年間500億円以上の利益を得るため、カンザス州のデータセンターからニューヨーク証券取引所まで約1,600キロを直線の光回線でつなぐことを思いつく。0.001 秒の時間短縮を目指して奮闘する彼らの前に、1万件の地主との買収交渉など次々と苦難が立ちはだかる。

"ハミングバード(ハチドリ)"は、ネイティブ・アメリカンが神聖視する鳥。サブタイトルの"0.001秒"とは、そのハチドリが1回羽ばたく時間だそう。ポエトリーなイメージを喚起させるプロジェクト名に似つかわしくなく、本作はハラハラドキドキ、こちらの胃が痛くなってしまうほど迫真力に満ちた内容だ。

『マネー・ショート 華麗なる大逆転』や『マネー・ボール』といったノンフィクション作家の原作を元にしていると知り、合点がいった。
しのぎを削る米国金融市場を常に新鮮な視点から切り取る作家ならではのリアルさを優れたエンターテインメントとして実写化に成功している。

投資、損益、リスク、冷徹な計算...、シビアな金融市場の世界を極めて人間味豊かに、しかも疾走感と熱量、高揚感を色濃く表現しながら、静謐な結末へと導く。

功労者である2人の俳優、ジェシー・アイゼンバーグはマシンガントークを繰り出す行動派、イケメン・キレキレボディのアレクサンダー・スカルスガルドが、まさかのハゲ頭と猫背でアルゴリズム作成に挑戦するプログラマーを演じ、それぞれ役者魂を見せつけて本作に説得力を齎す。2人の名演は必見!(幸)


メイン_画_軽.jpg


株の高頻度取引ではデータ送信が0.001秒でも早いことが大事なのだそう。主人公たちは血眼になって時間短縮を図る。その結果、彼らは何を手に入れたのか。人生で大切なものを失ってはいないか。生き方に正解はないが、経済効率を重視する世の中に一石を投じる。ジェシー・アイゼンバーグはいつも通りの役どころだが、アレクサンダー・スカルスガルドが別人のような姿をさらけ出し、新たな魅力を放っていた。(堀)

2018 年/カナダ・ベルギー/カラー/5.1ch/スコープ/英語/111 分/
配給:ショウゲート
©2018 Earthlings Productions Inc./Belga Productions
公式サイト:http://hummingbirdproject-movie.jp/
★9 月 27 日(金)TOHO シネマズ シャンテほか全国ロードショー★
posted by yukie at 17:54| Comment(0) | カナダ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年08月09日

サマー・オブ・84(SUMMER OF 84)

SUMMER OF 84.jpg

サマー・オブ・84(原題:SUMMER OF 84)
監督:フランソワ・シマール 、アヌーク・ウィッセル、ヨアン=カール・ウィッセル
出演:グレアム・ヴァーシェール(デイビー・アームストロング)、ジュダ・ルイス(トミー・‘イーツ’・イートン)、ケイレブ・エメリー(デール・‘ウッディ’・ウッドワース)、コリー・グルーター=アンドリュー(カーティス・ファラデイ)

1984年夏。オレゴン州のイプスウィッチ。静かな郊外の住宅地に住む15歳の少年デイビーは、幽霊や猟奇的犯罪の記事収集が趣味だった。このところ近隣の町で同年代の子どもたちばかりが犠牲となる連続殺人事件が発生している。デイビーは向いの住人、マッキーが犯人ではないかと思いこむ。マッキーは警官だけれど、怪しすぎるのだ。親友のイーツ、ウッディ、ファラディを呼び出し、自分たちだけで証拠をつかもうと捜査を始めるのだが…。

もしも連続殺人鬼があなたの隣人だったら?「連続殺人鬼も誰かの隣人だ。人は決して本性を見せない。郊外でこそイカれたことが起こる」というデイビーの声で映画が始まります。80年代の名作『E.T.』『グーニーズ』『スタンド・バイ・ミー』『13日の金曜日』『エルム街の悪夢』などに夢中になった青少年が、熱いオマージュをささげて作ったというのが観てとれます。4人組は前述の少年たちやドラえもんを思い出させる組み合わせ。監督を務めたのはROADKILL SUPERSTARS(RKSS)というユニット名の3人。短編が多かったようで、他の作品を観ていません。
インターネットも携帯もない時代、子どもたちはもっと近所を出歩き、大人たちを観察していたはず。創造と想像も今よりももっとたくましく拡げていたはずです。この映画のように。通信手段はウォーキー・トーキー(携帯型トランシーバー)です。我が家にもオモチャがありました。
男の子ばかりのあぶなっかしい冒険譚に、近所の少し年上のお姉さんが加わり、ちょっぴり甘酸っぱい感情も織り交ぜています。好奇心が先走った無茶な行動は観ていてハラハラします。大人としては、得体のしれない殺人犯を追うのは無理~!やめて!と言いたくなるのですが、疑惑の相手が警官では警察署に持ち込むわけにもいきません。ストーリーは容赦なく進んでいき…もう子どもには戻れないことを知るのでした。(白)


2017年/カナダ/カラー/106分
配給:ブロードウェイ
2017(c)Gunpowder & Sky,LLC
https://summer84.net-broadway.com/

★2019年8月3日(土)より、新宿シネマカリテほか全国順次ロードショー
posted by shiraishi at 01:05| Comment(0) | カナダ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年08月04日

カーマイン・ストリート・ギター  原題:Carmine Street Guitars

劇場公開日 2019年8月10日
上映情報 http://www.bitters.co.jp/carminestreetguitars/theater.html

★カーマイン・ストリート・ギター_ヴィジュアル.jpg
©MMXVⅢ Sphinx Productions.


監督・製作:ロン・マン
(『ロバート・アルトマン/ハリウッドに最も嫌われ、そして愛された男』)
扇動者:ジム・ジャームッシュ
編集:ロバート・ケネディ
出演:リック・ケリー、シンディ・ヒュレッジ、ドロシー・ケリー
ジム・ジャームッシュ(スクワール)、ネルス・クライン(ウィルコ)、カーク・ダグラス(ザ・ルーツ)、ビル・フリゼール、マーク・リーボウ、チャーリー・セクストン(ボブ・ディラン・バンド)他
音楽:ザ・セイディーズ

伝説のギタリストたちを虜にする職人は、建物のヴィンテージ廃材から、世界でひとつのギターを生み出す

ニューヨーク、グリニッジ・ヴィレッジに位置するギターショップ「カーマイン・ストリート・ギター」を追ったドキュメンタリー作品。
この店ではギター職人のリック・ケリーが、長年愛されてきた街のシンボル、チェルシー・ホテル、ニューヨーク最古のバー・マクソリーズなど、ニューヨークの古い建築物の廃材を使いギターを製作している。世界中のギタリストを魅了する、この店製作のギター。それはニューヨークの建物の廃材から作られている!
古い木材のほうがギターの響きがいいということを発見したリックは、廃材があると聞くと引き取りに行き、ギターとして復活させる。こうして、長年愛されてきた街の歴史がギターの中に生き続ける。何年も前に映画監督ジム・ジャームッシュが、改築中だった自宅の屋根裏の木材をこの店に持ってきて、ギター作りを依頼。そのギターが素晴らしい音を奏でたので、それからリックがニューヨークの古い建物の木材を使うようになったという逸話が語られる。
工事の知らせを聞きつけると、現場へ行きヴィンテージ廃材を持ち帰るリック傷も染みもそのままにギターへ形を変える。そんな店の1週間を追った、極上の愛に満ちたドキュメンタリー。
ルー・リード、ボブ・ディラン、パティ・スミスら、フォーク、ロック界の大御所がリックのギターを愛用。劇中でも、次々と有名なギタリストが来店し、リックが作ったギターを手に、幸せそうに演奏する姿が随所にに収められている。

この店は、ほかに見習いのシンディ、リックの母親が働いている。
リック・ケリーは、ニューヨーク州南東部・ロングアイランド育ち。幼い頃から木材職人の祖父の仕事をそばで見ていた影響から木材に興味をもち、ギター職人の道へ。1970年代後半にグリニッジ・ヴィレッジに店を出し、そして90年に、現在のカーマイン・ストリートに店を。パソコンも携帯も持たない昔気質のギター職人。
それに対してパンキッシュな装いの見習いシンディ・ヒュレッジは、カーマイン・ストリートギターで働いて5年。大工だった父親の影響で物作りに興味を抱き、父親が趣味にしていたギターも彼女には身近なものだった。アートスクールに通ってからこの店に入ったことから細かい作業が得意で、ウッドバーニングやペイティングを施したギター、ストラップも作っている。
そしてリックの母親ドロシー・ケリーの主な仕事は、店番・電話番・店のはたき掃除。ドロシーが壁に飾っている写真の額の曲がりを直すのだけど、直しても直しても斜めになってしまうシーンが面白いのだけど、その写真の方はロバート・クワインという有名なロック・ギタリスト。

sub1.jpg
©MMXVⅢ Sphinx Productions.


監督は、カナダとアメリカのポップカルチャーを題材にしたドキュメンタリーを多く手掛ける他、『ロバート・アルトマン ハリウッドに最も嫌われ、そして愛された男』(2014)を製作したロン・マン。この作品は、2018年・第31回東京国際映画祭「ワールド・フォーカス」部門でも上映された。ロン・マン監督は「この映画ができたのはジム・ジャームッシュのおかげです。彼は私にギター職人のリック・ケリーと彼の店「カーマイン・ストリート・ギター」を紹介してくれた人物です。何年も前に、ジムはリックに改築中だった自宅の屋根裏の木材を持っていき、ギター作りを依頼しました。それが、リックがニューヨークの建物の再生木材を使うきっかけ。私は、音のいいかっこいいギターだけではなく、独特な空気が漂うユニークなこの店と、リックの禅のような哲学に魅了されました。そして、そのすべてが静かに消え去ってしまう前に、カメラに収めておかなければならないと感じるに至ったのです」と語っている。

約50年前の1969年、高校2年生だった私はフォークソングのグループをやっていた。その頃、ギターがどうしてもほしくて、初めてバイトをしてギターを手に入れた。この作品に出てくるようなギターではなく、中に空洞のあるガットギター。そういうわけでギターに思い入れがあり、そのギターを弾かなくなって久しいけど、ずっと持ってはいる。でも50年も前のギターだからもう楽器としては使えないかもと思っていた。でも、この作品で古い木材のほうが音の響きがいいと出てきて、ちょっと期待している私です(暁)。


建材の時の傷が味となって甦るオンリーワンのギター。次々と訪れる音楽のプロたちが愛おしむように試し弾きする。コンサートでは見られない素の姿は宝物を手にした子どものよう。リックと弟子のシンディは一見、共通点などなさそうだが、互いにリスペクトしているのが伝わってくる。店番をするリック母の何気ない行動が微笑ましい。
音楽に疎い私は店を訪れたギタリストの中で知っていたのは、ジム・ジャームッシュだけ。それもギタリストとしてではなく、映画監督として知っていたのだから、猫に小判と言われてしまいそう。しかし、物づくりのドキュメンタリー作品と思って見ていたら、最後までワクワク。音楽に疎くても、すっかり引き込まれた。
作品の終わり近くに、ギターにしか見えないケーキが登場する。本物のギターのようにネックの部分がテーブルから浮いていたように見えたのだが、ケーキでそれができるのだろうか。作品を見終わっても、そのことが気になった仕方がない。(堀)


公式HP http://www.bitters.co.jp/carminestreetguitars/
2018 年/カナダ/80 分
配給:ビターズ・エンド
posted by akemi at 21:52| Comment(0) | カナダ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年06月08日

さよなら、退屈なレオニー(原題:The Fireflies Are Gone)

sayonara-leonie.jpg
 
監督:セバスチャン・ピロット
出演:カレル・トレンブレイ、ピエール=リュック・ブリラント

カナダ・ケベックの海辺の街で暮らす17歳の少女、レオニー(カレル・トレンブレイ)。高校卒業を一ヶ月後に控えながら、どこかイライラした毎日を送っていた。退屈な街を飛び出したくて仕方ないけれど、自分が何をしたいかわからない。口うるさい母親も気に入らないが、それ以上に母親の再婚相手のことが大嫌い。レオニーが唯一、頼りにしているのは離れて暮らす実の父親だけだった。 そんなある日、レオニーは街のダイナーで年上のミュージシャン、スティーヴ(ピエール=リュック・ブリラント)と出会う。どこか街になじまない雰囲気を纏うスティーヴに興味を持ったレオニーは、なんとなく彼にギターを習うことに…。夏が過ぎていくなか、あいかわらず、口論が絶えない家庭、どこか浮いている学校生活、黙々とこなす野球場のアルバイト、それから、暇つぶしで始めたギター…毎日はつまらないことだらけだが、レオニーのなかで少しずつ何かが変わり始めていた。

主人公は高校卒業を目前に控えた、こじらせ系女子。仲間とつるむのも、親との関係もうざい。「将来は?」と尋ねられても答えられない。決断や責任から逃げてばかり。レオニーを演じるカレル・トレンブレイからイライラする気持ちが手に取るように伝わってきた。
さて、これからどうするのか。人を非難するのは簡単。自ら行動することが大事と気付いてほしい。(堀)


主演のカレル・トレンブレイは第31回東京国際映画祭2018でジェムストーン賞(新人賞)を受賞した。(『さよなら、退屈なレオニー』の映画祭でのタイトルは『蛍はいなくなった』)
参照 第31回東京国際映画祭2018 授賞式レポート

カレル・トレンブレイ.jpg
撮影 宮崎暁美

2019年/カナダ/カラー/96分
配給:ブロードメディア・スタジオ
©CORPORATION ACPAV INC. 2018
公式サイト:http://sayonara-leonie.com/
★2019年6月15日より新宿武蔵野館ほか全国にて公開
posted by ほりきみき at 01:27| Comment(0) | カナダ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年04月20日

リアム16歳、はじめての学校(原題:Adventures in Public School) 

liam-hajimete.jpg


監督・脚本:カイル・ライドアウト
撮影:スターリング・バンクロフト
音楽:マシュー・ロジャーズ:
出演:ジュディ・グリア、ダニエル・ドエニー、シオバーン・ウィリアムズ、アンドリュー・マックニー

リアム(ダニエル・ドエニー)は小さい頃から学校には行かず、シングルマザーのクレア(ジュディ・グリア)から英才教育を受けている。有名大学に入ってホーキング博士のような天文学者になるのが夢。一緒に遊ぶ友達はおらず、勉強が終わると自宅の壁を相手に一人でサッカーをしているが、友達がいないことに寂しさを感じるようになっていた。
ある日、高卒認定試験を受けるためにはじめて足を踏み入れた公立高校で、リアムは人生ではじめて恋に落ちる。一目惚れした義足の美少女アナスタシア(シオバーン・ウィリアムズ)に近づくためわざと試験に落ち、リアムは高校に通学することを決意した。

学校に行かなくても知識を学ぶことはできる。クレアのように親が全部教えなくても、基礎的なことさえ学んでいれば、独学でもできるだろう。専門の先生をつければ、より効果的だ。しかし、人間関係は学校のような集団の場でなければ学べない。同級生との横の繋がり。上級生や下級生との縦の繋がり。どちらも経験することで少しずつ学んでいく。そして、その先にあるのが恋愛か。リアムは人間関係を学ばぬうちに、一気に恋愛に入ってしまった。だからこそ、とんちんかんになってしまうリアムの行動が微笑ましい。
また、子どもの将来を心配すればするほど、管理したくなるもの。私事で恐縮だが、子どもが生まれたときに食べるものに気を使い、安全な食材にこだわり、インスタント食品はおろか冷凍食品さえ一切与えなかった。ところが幼稚園に入って、友だちの家に遊びに行った際、ペヤングソース焼きそばをいただき、子どもがはまってしまったのだ。それまでの6年間を全否定されたようでショックだったことをふと、思い出した。クレアの子離れの苦労もけっして他人ごとではない。(堀)


2017年/カナダ/英語/カラー/ビスタサイズ/86分
配給:エスパース・サロウ
©2017 SCHOOLED FILMS INC., ALL RIGHTS RESERVED
公式サイト:https://liam-hajimete.espace-sarou.com/
★2019年4月27日(土)から新宿シネマカリテほか全国で順次公開
posted by ほりきみき at 00:08| Comment(0) | カナダ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする