2024年12月25日

I Like Movies アイ・ライク・ムービーズ(原題:I Like Movies)

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監督・脚本:チャンドラー・レヴァック
撮影:リコ・モラン
美術:クラウディア・ダロルソ
編集:シモーン・スミス
音楽:マレー・ライトバーン
出演:アイザイア・レティネン(ローレンス・クウェラー)、ロミーナ・ドゥーゴ(アラナ)、クリスタ・ブリッジス(テリ)、パーシー・ハインズ・ホワイト(マット・マカーチャック)

2003年。カナダの田舎町で暮らすローレンスは、映画が生きがいの高校生。社交性がなく周囲の人々とうまく付き合えず問題をおこしがちだ。彼はニューヨーク大学に入学して、トッド・ソロンズから映画を学ぶことを夢見ている。たった一人の友達マットと毎日つるみながらも、これは仮の姿、ここから出てニューヨークで全く違う新しい自分になりたいと思っている。母子家庭の彼は高額な学費を自分でも働いて貯めようと、地元のビデオ店「Sequels」でアルバイトを始めた。
かつて女優を目指していた店長のアラナや同僚などさまざまな人と出会い、これまでと違う世界が拡がった。しかし、ローレンスは自分の将来を不安に思うあまり、身近な人を傷つけてしまう。

青春あるある、しかしイタイ、わが身を振り返ってしまう共感度高い作品。ローレンスは映画おたくで、かなりクセの強い作品が好み。お客に薦めたのがトッド・ソロンズ作品。私は『トッド・ソロンズの子犬物語』一本しか観ていませんが、人が描かないことをあえて描き、後味の良くない作品もあり、好みが分かれるところです。一般受けしないけれどローレンスのようなマニアには受けるのでしょう。
ローレンスは好きなことにはとことんハマりますが、自分のことでいっぱいで人の気持ちおかまいなしなところがあります。余計なことを言ったり、しちゃったりのトラブルメーカーです。あっ、なんだか自分を観ているような…。バイト先で大人にもまれて少しずつ成長するローレンスを見守りたくなりました。
バンクーバー映画批評家協会賞で最優秀カナダ映画賞など4部門を受賞(白)


2022年/カナダ/カラー/99分
配給:イーニッド・フィルム
(C)2022 VHS Forever Inc.All Rights Reserved.
https://enidfilms.jp/ilikemovies
★2024年12月27 日(金)より全国ロードショー

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2024年06月03日

プリンス ビューティフル・ストレンジ(原題:Mr Nelson on the North Side)

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監督:ダニエル・ドール エリック・ウィーガンド
ナレーション:キース・デビッド
出演:プリンス、チャカ・カーン、チャックⅮ、ビリー・ギボンズ

1958年ミネソタ州のミネアポリス。プリンスはジャズピアニストの父とジャズシンガーの母の間に生まれた。アメリカ中西部の中でも黒人差別が激しい地域で、くすぶっている青少年たちのために、ミネアポリスに初めてブラック・コミュニティができた。「ザ・ウェイ」と命名され、若者たちが集える場所となった。スポーツができるほか、楽器もそろっている。子どもも音楽に触れ、演奏を学ぶことができた。
プリンスもその一人で、楽器を自在に弾きこなす基盤をここで身につけ音楽の才能が開花する。1978年にデビュー。以来、派手な衣裳やパフォーマンスで舞台に上がる恐怖を乗り越えて、独自の音楽性を持つミュージシャンとなった。頂点を極めながら、2016年ペイズリースタジオで急逝する。彼を惜しむ友人たち、関係者、ファンからのメッセージの花束のようなドキュメンタリー。

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自伝的映画のタイトルにもなった「パープル・レイン」発表から40年。音楽に目覚めた少年時代、バンドを結成、メジャーからのオファーが殺到してデビューし、アルバムがヒット、シャイな少年は確実にスターとなっていきました。いつも故郷のミネアポリスへの愛と恩返しを忘れなかったプリンスの足跡が辿られます。彼に魅了された人々から、当時の思い出がたっぷり披露されます。紫の貴公子プリンスへの愛の花束のような作品です。そんなに才能あふれる人だったのか、と今さらながら知りました。代表曲しかわからなかったので、アルバムをちゃんと聞いてみようと思います。(白)

プリンスの名前しか知らない私が観て、さて、この映画を楽しめるかしら・・・と思いながら拝見。映画の前半では、プリンスが育った、というより、プリンスを生んだミネアポリスという町について、歴史的背景を丁寧に紐解いていきます。1940年代以降、南部から北の工業地域にアフリカ系黒人が大移住。その数、500万人以上。北ミネアポリスも、そうした黒人たちが住む町でしたが、生活費を稼ぐのにも苦労する地域でした。人種差別の激しかった1960年代に育ったことがプリンスに影響を与えたことも。「肌の色でなく、作品の質で判断してもらう」というプリンスの思いが胸に沁みます。プリンスが亡くなってから、彼が医療施設や教会への寄付を何十年も続けてきたことが判明したそうです。地域を変える為に何が出来るかを常に考えていたプリンス。見た目の派手な印象とは違うプリンスのことを知ることのできる秀作です。(咲)

2021年/カナダ/カラー/68分
配給:アルバトロス・フィルム
(C)PRINCE TRIBUTE PRODUCTIONS INC.
https://prince-movie.com/
★2024年6月7日(金)新宿シネマカリテほか全国公開

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2024年03月14日

ピアノ 2 Pianos 4 Hands(原題: Pianos 4 Hands)

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監督:テッド・ダイクストラ、リチャード・グリーンブラッド
出演:テッド・ダイクストラ、リチャード・グリーンブラッド

強引な親に風変わりな教師、何時間にもおよぶ反復練習、舞台恐怖症、ライバルや試験の重圧、そして偉大なピアニストになるという夢――ピアノ漬けの日々を送るなか、テッドとリチャードは“ピアノオタク”になっていく。
成長するにつれ、2人は“とても上手”と“偉大”との差を痛感し、コンサートに引っ張りだこのスターにはなれないのではないかと、身の程を思い知らされることに。とはいえ、2人がこの界隈で1、2を争うピアニストかもしれないこと自体、祝福する価値あり!『ピアノ』(原題:2 Pianos 4 Hands)は、ピアノのレッスンに付き物のユーモラスなあれこれや、いずれ来る夢を手放す瞬間の喪失感を描く。

ニューヨークのオフ・ブロードウェイでも大絶賛!
全世界200都市200万人が熱狂した、音楽ドラマ・エンターテイメント!
舞台には2台のピアノ、テッドとリチャードの二人だけ。
子供の頃から現在までのピアノ人生を軽妙なやりとりとピアノ演奏で語ります。ピアノに全く縁のない人も、息がぴったりな二人のお喋りと自由自在な演奏に引き込まれるはずです。あははと笑ったり、目を丸くしているうちに時間が過ぎて行きました。
予告編はこちらです。
(白)


2013年/カナダ/カラー/シネスコ/114分
配給:松竹
(C)BroadwayHD/松竹
(C)2 Pianos 4 Hands
https://broadwaycinema.jp//2P4H
★2024年3月22日(金)ロードショー
posted by shiraishi at 21:33| Comment(0) | カナダ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年10月01日

リバイバル69~伝説のロックフェス~(原題:Revival69: The Concert That Rocked the World)

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監督:ロン・チャップマン
出演:ジョン・ブラウワー、シェップ・ゴードン、ロビー・クリーガー、ジョン・レノン、オノ・ヨーコほか

1969年9月13日(土)、カナダ トロント大学構内にあるヴァーシティ・スタジアムで音楽フェスティバルが開催された。その構想、準備から始まり、紆余曲折の末開催にこぎつけるまでの舞台裏が明かされる。企画・運営したのは弱冠23歳のケン・ウォーカーと22歳のジョン・ブラウワーだ。フォークソング全盛のときに、ロックン・ロールのレジェンドたちに人気の若手、シカゴやドアーズを加えたこれまでにないフェス「トロント・ロックンロール・リバイバル」!観客は数万人を予定。大評判になるはずが、チケットが売れない。出資者たちが手を引いていくのをなんとか止めなければ!これまでの人脈を駆使して、導かれたアイディアは「ジョン・レノンを呼ぼう!」。なぜならジョン・レノンはチャック・ベリーやリトル・リチャードのファンだから。 
残された1時間弱のドキュメンタリー映像に、当時の関係者のインタビューを加えてドキュメンタリーが完成した。

ドタバタの舞台裏はもう綱渡りの連続、当事者の心中を思って胃が痛くなりそうでした。
トロントをめがけて続々と集まってくる新旧ロックファンたち。大観衆を前にした、大御所たちのステージは圧巻です。全盛期からしばらく経っていますが、かつてのライバルたちとの共演で本気度が伝わってきます。懐かしいヒット曲をたくさん聞けました。この人が歌っていたのか!と嬉しい映像です。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(1985)で、消滅の危険を脱したマーティがギターをかき鳴らし歌っていたのがチャック・ベリーの曲です。
まだ無名のロッカーだったアリス・クーパーほか、バックバンドを担った若いミュージシャンたちの映像が残っています。舞台の上のスターたちも会場もほんとに楽しそうですが、運営側はジョン・レノンの到着を今か今かと冷や汗かきつつ待っています。
鳴り物入りの登場とよくいいますが、この場面も必見。ビートルズの面々と離れてヨーコと穏やかに暮らしていたジョンは、このときまだ28歳。長髪と伸ばした髭でずいぶんと大人と思っていましたが、ヨーコを守り守られる繊細な青年でした。緊張している彼を初めて観ました。
ロック青年たちには超貴重な映像満載、お見逃しなく。(白)


「カナダのウッドストック」とも呼ばれているロック・フェスだそうです。
チケットが売れず、開催直前にジョン・レノンに参加のOKを貰うも、当日の朝、気分が悪いから花を贈って!とは、ジョン・レノンも自分の存在意義を認識していない?? そのジョン・レノンをベッドから飛び起きさせた人物とは?(どうぞ劇場でご確認を!)
このところ60年代の音楽シーンを扱った映画が多くて、中でも大好きだったビートルズ関連は、当時の様々な裏側を知ることができて面白いです。
ジョン・レノン 音楽で世界を変えた男の真実
コンサート・フォー・ジョージ
ミーティング・ザ・ビートルズ・イン・インド
クリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァル トラヴェリン・バンド

戦地で多くの人が死んでいるのに、「ベトナム戦争反対!」とは舞台で言えない時代で、それでもオノ・ヨーコが断末魔のような叫びで平和を訴え、引いた人も多かったとか。
このロックフェスを懐かしく思い出す黒人の女性が、観客はほとんどが白人で、逆に怖かったと語っていました。60年代末のカナダは、そんな状況だったのですね。
いろんな意味で、とても興味深い映画でした。(咲)



2022年/カナダ、フランス/カラー/97分
配給:STAR CHANNEL MOVIES
(C)ROCK N' ROLL DOCUMENTARY PRODUCTIONS INC., TORONTO RNR REVIVAL PRODUCTIONS INC., CAPA PRESSE (LES FILMS A CINQ) 2022
https://revival69-movie.com/
★2023年10月6日(金)ロードショー

posted by shiraishi at 18:38| Comment(0) | カナダ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年08月06日

アウシュヴィッツの生還者  原題:The Survivor

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(C)2022 HEAVYWEIGHT HOLDINGS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

監督:バリー・レヴィンソン(『レインマン』 『グッドモーニング,ベトナム』)
出演:ベン・フォスター(『インフェルノ』)、ヴィッキー・クリープス、ビリー・マグヌッセン、ピーター・サースガード、ダル・ズーゾフスキー、ジョン・レグイザモ、ダニー・デヴィート

1949年、ナチスの収容所から生還したハリー・ハフトは、アメリカに渡り「ポーランドが誇る、アウシュヴィッツの生還者」を宣伝文句にボクサーとして活躍していた。それは、生き別れになった恋人レアに自分の生存を知らせることが目的だった。記者の取材に、「自分が生き延びることができたのは、ナチスが余興のために催した賭けボクシングで、ユダヤ人同士で闘い勝ち続けたからだ」と告白し、「裏切り者」と呼ばれながらも注目をあびる。強豪選手との対戦もレアに気が付いて貰えることを期待して引き受けるが敗退。レアも見つからず、引退を決め、レア探しに尽力してくれた移民サービスに勤めるミリアムと結婚する。それから14年、二人の子供にも恵まれるが、ミリアムにすら打ち明けられない秘密に心をかき乱されていた。そんな中、レアが生きているという報せが届く・・・

アウシュヴィッツからの生還者の息子が、父ハリー・ハフトの半生を書き上げた小説の映画化。
2022年7月22日に日本公開された『アウシュビッツのチャンピオン』は、ボクシングチャンピオンだったために強制収容所に収監されたタデウシュ・ピトロシュコスキを、司令官たちの娯楽としてリングに立たせて闘わせた実話に基づく映画でした。負けた相手には死が待っていました。本作の主人公ハリーも、自分が生きるために同胞を何人も死に追いやったことがいつまでもトラウマになっていたのです。戦争という非常時だったにしても、一生、心の中の傷として残ること、そして、それは誰にも言えないこと。戦争体験者で地獄を見た人ほど口を閉ざしているのは、日本でもほかの国でも同様だと思います。
そして、本作では戦争で愛する人と別れることになってしまったことも大きなテーマになっています。ハリーは恋人レアをナチスに連れ去られ、生き別れ。ニューヨークの政府機関「移民サービス」で、行方不明の家族や友人を再会させる仕事をしているミリアムもまた、戦争で婚約者を亡くしています。戦争さえなければ・・・という思いを、どれほど多くの人が噛みしめていることでしょう・・・ (咲)



2021/カナダ・ハンガリー・アメリカ/英語・ドイツ語・イディッシュ語/129分/ カラー/スコープ/5.1ch/
字幕翻訳:大西公子
提供:木下グループ 
配給:キノフィルムズ
公式サイト:https://sv-movie.jp/
★2023年8月11日(金・祝)新宿武蔵野館ほか公開.



posted by sakiko at 13:32| Comment(0) | カナダ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする