2022年04月17日

インフル病みのペトロフ家  原題:Петровы в гриппе 英語題:Petrov's Flu

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© 2020 – HYPE FILM – KINOPRIME - LOGICAL PICTURES – CHARADES PRODUCTIONS – RAZOR FILM – BORD CADRE FILMS – ARTE FRANCE CINEMA -ZDF


監督:キリル・セレブレンニコフ(『LETO -レト-』)
原作:アレクセイ・サリニコフ著「Петровы в гриппе и вокруг него(インフル病みのペトロフ家とその周囲)」(邦訳未出)
出演:セミョーン・セルジン、チュルパン・ハマートワ、ユリヤ・ペレシリド

2004年のロシア、エカテリンブルク。インフルエンザが流行している。ペトロフは高熱にうなされ、妄想と現実の間を行ったり来たり。やがてその妄想は、まだ国がソヴィエトだった子供時代の記憶へと回帰していく…。

キリル・セレブレンニコフ監督は、2017年、国からの演劇予算の不正流用を疑われて詐欺罪で起訴され、自宅軟禁に。かねてよりロシアのジョージア侵攻やクリミア併合、LGBTへの抑圧を批判するなど、政権に批判的な姿勢を明らかにしていたため、この逮捕を不当な政治弾圧と見る向きもあり、演劇界・映画界からセレブレンニコフを支持する声が上がった。2018年のカンヌ映画祭で『LETO ‒レト‒』が上映された際は、軟禁により参加できず、女優のティルダ・スウィントンなどが「セレブレンニコフに自由を」とアピール。2018年8月にはフランス芸術文化勲章最高位(コマンドゥール)を受章。2020年6月10日有罪判決が下され、 3年の保護観察、執行猶予付き3年の刑及び罰金となる。本作の脚本は自宅軟禁中に執筆された。(公式サイトより抜粋)

父親はユダヤ人の外科医、母親はウクライナ人のロシア語教師というセレブレンニコフ監督。この度の、ロシアのウクライナ侵攻についても複雑な思いでいるのではないでしょうか。
『LETO ‒レト‒』のなんとも不思議な世界が忘れられず、今回も期待して拝見。やっぱりセレブレンニコフ監督らしいテイストでした。このワケのわからなさが癖になりそうです。(咲)


◆『インフル病みのペトロフ家』公開記念・無料オンラインレクチャー 
<ロシア・ウクライナ・ベラルーシ映画の知られざる世界 ―今こそ知りたい現状と今後―> 
2022年5月15(日) 17:30~19:30
要・事前申し込み 詳細は下記で!
http://cineja4bestfilm.seesaa.net/article/487048033.html


第74回カンヌ国際映画祭コンペティション部門正式出品
CST Artist-Technician Prize受賞

2021年/ロシア/146分/DCP/カラー
日本語字幕:守屋愛 
配給:ムヴィオラ
公式サイト:http://www.moviola.jp/petrovsflu/
★2022年4月23日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開



posted by sakiko at 19:20| Comment(0) | ロシア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年04月03日

親愛なる同志たちへ   原題:Дорогие товарищи!  Dorogie Tovarischi 英題:Dear Comrades

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©Produced by Production Center of Andrei Konchalovsky and Andrei Konchalovsky Foundation for support of cinema, scenic and visual arts commissioned by VGTRK, 2020

監督・脚本:アンドレイ・コンチャロフスキー(『暴走機関車』『 パラダイス』) 
出演:ユリア・ビソツカヤ(『くるみ割り人形 3D』『パラダイス』)、ウラジスラフ・コマロフ、アンドレイ・グセフ

1962年、フルシチョフ政権下のソ連で起きたノボチェルカッスクの虐殺。機関車工場のストライキに端を発し、大勢の市民が犠牲になりながら、ソ連が崩壊するまで約30年間隠蔽されていた事件。
本作は、84歳になるロシアの巨匠アンドレイ・コンチャロフスキーが、一人の共産党員の女性を主人公に、事件の真相に迫ったもの。

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©Produced by Production Center of Andrei Konchalovsky and Andrei Konchalovsky Foundation for support of cinema, scenic and visual arts commissioned by VGTRK, 2020


1962年6月1日、ソ連南西部ノボチェルカッスク。
早朝、リューダは共産党市政委員会の同僚で恋人のロギノフの家を後にし食料品店に急ぐ。物不足で、なんとか入手しようと開店を待ち構えている人たちをかき分け、顔見知りの店員から乳製品や煙草を受け取る。家に帰ると、女手ひとつで育てた18歳の娘スヴェッカが工場に出勤する支度に追われている。年老いた元コサック兵の父は煙草を嬉しそうに受け取る。
リューダが美容院で身なりを整えて出勤し会議に参加中、機関車工場でストライキが発生したとの連絡が入る。リューダはモスクワから駆け付けた高官たちを交えた緊急会議に出席する。市外への情報漏洩を防ぐため、軍による封鎖と監視体制を敷いたとの報告を受ける。夜遅く帰宅したリューダは娘に工場に行くなと言い聞かせるが、「抗議するのも民主主義」と家を飛び出していく。

6 月2 日 レーニンの肖像を掲げて行進してくる大勢の労働者たちに、リューダの勤める党地方本部の建物が取り囲まれる。リューダは KGBのスナイパーが屋上に身を潜めているのを目撃する。銃声が鳴り響き、デモ参加者や市民が次々と倒れる。逃げ惑う群衆の中を、リューダは娘を探して遺体安置所や病院を駆けずり回るが、見つからない。

6 月3 日 朝、街は何事もなかったかのように平静を取り戻し、広場では夜に開くダンス・パーティーの準備が行われている。リューダはKGBのヴィクトルから隣町に多数の遺体が埋められていると聞き、彼に付き添ってもらって検問をなんとかすり抜けて隣町に行く・・・

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©Produced by Production Center of Andrei Konchalovsky and Andrei Konchalovsky Foundation for support of cinema, scenic and visual arts commissioned by VGTRK, 2020


スターリンを信奉し、「デモを扇動した者には厳罰を」と強硬手段まで提案したリューダ。群衆が無差別銃撃に倒れる姿を目の当たりにして、それまで信じていたものが崩れ落ちます。さらに、娘が虐殺されたかもしれないと知り、一人の母親として、党の規律を破って探しにいきます。娘の捜索に協力したKGBのヴィクトルもまた、事件の隠蔽を図る国家の実態を知ってしまいます。「軍が市民に向けて発砲するのは憲法違反だからありえない」と言っていたのですが。
この事件は、30年後に真相が明かされましたが、世界には内政にしろ外政にしろ、真実が隠蔽されていることは多々ありそうです。
ノボチェルカッスクは、ウクライナにほど近い町。ロシア軍の通過地として被害を被っているのではないでしょうか。
私たちが耳にする、今ウクライナで起きていることも、西側からの報道だけなので真相はわかりません。そんなことも思い起こさせてくれた映画でした。 そして、犠牲になるのは、罪のない庶民・・・ (咲)


2020年/ロシア/ロシア語/121分/モノクロ/スタンダード/5.1ch
日本語字幕:伊藤美穂
配給:アルバトロス・フィルム  提供:ニューセレクト
公式サイト:https://shinai-doshi.com/
★2022年4月8日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国公開.
posted by sakiko at 21:39| Comment(0) | ロシア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年11月28日

ベロゴリア戦記 第2章:劣等勇者と暗黒の魔術師(原題:The Last Warrior: Root of Evil)

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監督:ドミトリー・ディアチェンコ
脚本:ヴィタリー・シュリャッポ、ドミトリー・ジャン、ワシリー・クツェンコ、パヴェル・ダニロフ、イゴール・トゥドヴァセフ
撮影:パベル・カピノス
音楽:ジョージ・カリス
出演:ヴィクトル・ホリニャック(イワン)、ミラ・シヴァツカヤ(ヴァシリーサ)、エカテリーナ・ヴィルコワ(ヴァルヴァラ)、コンスタンチン・ラヴロネンコ(コシチェイ)、イェーレナ・ヤコブレワ(バーバ・ヤーガ)、セルゲイ・ブルノフ(ヴォジャノーイ)

ベロゴリアにようやく平和が訪れ、イワンはヴァシリーサと共に暮らしていた。たびたび人間界に戻って最新機器を持ち帰り便利さを自慢しているが、ヴァシリーサはそんな文明の利器が好きではない。イワンは結婚して人間界へ行こうと誘うが気が乗らずにいた。一方闇に潜んでいた強大な敵が目覚めるときが近づいていた。そうとは知らず、力比べの大会を前にいまだ戦士の能力が覚醒しないイワンは、恋敵の出現に心穏やかではない。ヴァルヴァラも復活し、イワンの剣を狙っている。そして意外な人物がそこに…。

第1章の続きのこの第2章も本国で大ヒット。前作よりさらにダイナミックなアドベンチャー+アクション色が濃くなっています。イワンは相変わらずお調子者で、バーバ・ヤーガのベリーを盗んだり嘘をついたり懲りない男です。スマイルマーク立体版のようなコロボークや巨人も登場。コロボークとお話に登場するジャガイモ団子(バスケットボール大)が、イワンが優しくしてくれたと旅の友になります。自分で「イワンの馬鹿」と言うやつですが、いいところもありました。テーマがなかなか深いのですよ。
ラストに明かされる過去におおっとびっくりします。第3章も控えているようですが、どんな未来になるのでしょう?お楽しみに。(白)


2021年/ロシア、アメリカ/カラー/シネスコ/121分
配給:アルバトロス・フィルム
(C)Disney 2020 (C)YBW Group 2020
https://belogorie.jp/
★2021年12月3日(金)よりロードショー
posted by shiraishi at 02:22| Comment(0) | ロシア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年11月27日

ナチス・バスターズ 原題:Krasnyy prizrak  英題:The Red Ghost

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© ABC, Ltd. © Russian World Vision, LLC All rights reserved.2020

監督・製作・脚本:アンドレイ・ボガティレフ
出演:アレクセイ・シェフチェンコフ(『セイビング・レニングラード』)、ウラディミール・ゴスチューキン、ユーリー・ボリソフ(『T-34 レジェンド・オブ・ウォー』『ワールドエンド』)、オレグ・バシリコフ、ポリーナ・チェルニショワ、ウォルフガング・セルニー(『T-34 レジェンド・オブ・ウォー』)、ミクハイル・ゴレボイ、パベル・アブラメンコフ、コンスタンティン・シモノフ、ブヤチェスラフ・シクハリフ、ポール・オルリヤンスキー、ミクハイル・メリン

1941年、冬。ドイツ軍はソ連に侵攻したが、モスクワを目前に戦線が膠着していた。一匹狼のロシア狙撃兵が、ドイツ兵を次々と射殺しているらしいという噂が広まり、ドイツ兵はその正体不明の死神を《赤い亡霊》と呼び、いつ狙撃されるか分からない恐怖に怯えていた。
そんな中、頭に袋を被せられたロシア人の男がドイツの大尉の前に連れて来られる。負傷兵を癒すための役者だという。「芝居をして見せろ!」と命じられ、ヒトラーの演説の真似をするが、「笑えない」と怒鳴る大尉が、銃弾に倒れる。《赤い亡霊》が木陰から狙い撃ちしたのだ。《赤い亡霊》に助けられた5人のロシア兵の一行は、部隊とはぐれて味方の戦線に戻ろうと敵地を進んでいたのだった。一行の中には役者のほか、看護師で妊婦のベラもいた・・・

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© ABC, Ltd. © Russian World Vision, LLC All rights reserved.2020

ヒトラー風の格好をしていてもドイツ語は話せないロシア人の役者。そして、ドイツの将校はロシア語を解さないので、多少ロシア語のわかる若いドイツ兵が通訳を務めるのですが、完璧な通訳はできません。人と人とが対面した、かつての戦争では、言葉が通じないことで誤解が生じて、殺しあうことになってしまったことも多々あるのではと思いました。
冗談の通じなさそうな四角四面のドイツ兵に対して、ロシア人の小話(アネクトード)好きを垣間見ることができました。イギリス兵とフランス兵とロシア兵が、ドイツ兵に捕まって、「最後の望みは?」と聞かれた時のお国柄の出た答え。別の話もあるよと、ほんとにロシア人は小話好き。
あと、圧巻は、看護師のベラが産気づいたとき、これまでに3回お産に立ち会っているというロシア兵が、みごと、男の子を取り上げる場面。戦地に臨月の身で参加していたとはと驚きます。
映画は、「名もなき戦士に捧ぐ」と終わりました。80年前、極寒の戦地で、命を落とした人たちを悼む作品でした。(咲)


冒頭からハラハラの連続で、緊張感が続きます。ドイツ軍のブラウン大尉はモデルばりのイケメンですが冷血。兵隊になったばかりのグンターは心優しい若者で、子豚を可愛がったり妊婦のベラをかばったりします。古参の兵はそんな彼にわざわざ辛い役目を押しつけ、戦争は人を歪ませるとつくづく思います。
5人のロシア兵が30人のドイツ兵と闘うときにブラウン大尉は入浴中で素っ裸。いちいち入るボカシが一緒に動き、きりりとした軍服姿と違って無防備で笑わせてくれます。どうしても酒が飲みたいロシア兵もいて、笑ってる場合ではないんですけどところどころにそんなシーンがありました。極寒の地で命がけの闘いを続ける戦争映画ですが、キレキレのエンタメ作品でもありました。(白)


こちらも、あわせてどうぞ!
11/19公開 『1941 モスクワ攻防戦80年目の真実』


2020年/ロシア映画/ロシア語・ドイツ語/99分/シネマスコープ
字幕:仲村渠和香子
提供:ニューセレクト/配給:アルバトロス・フィルム
公式サイトhttps://nazisbusters.com/
★2021年12月3日(金)よりグランドシネマサンシャイン池袋ほか全国順次公開




posted by sakiko at 19:14| Comment(0) | ロシア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ベロゴリア戦記 第1章:異世界の王国と魔法の剣(原題:The Last Warrior: Root of Evil)

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監督:ドミトリー・ディアチェンコ
脚本:ヴィタリー・シュリャッポ、ドミトリー・ジャン、ワシリー・クツェンコ、パヴェル・ダニロフ、イゴール・トゥドヴァセフ
撮影:パベル・カピノス
音楽:ジョージ・カリス
出演:ヴィクトル・ホリニャック(イワン)、ミラ・シヴァツカヤ(ヴァシリーサ)、エカテリーナ・ヴィルコワ(ヴァルヴァラ)、コンスタンチン・ラヴロネンコ(コシチェイ)、イェーレナ・ヤコブレワ(バーバ・ヤーガ)、セルゲイ・ブルノフ(ヴォジャノーイ)

人気TV番組に魔術師として出演するイワン。魔術が使えるわけではなく、孤児院で育ち口先だけで生き抜いてきたペテン師。騙した相手は数知れず、その日も嘘がばれて逃走劇を繰り広げ、プールのウォータースライダーに逃げ込んだ。飛び出したのは全く見覚えのない世界。目の前には魔法使いのようなお爺さん。なぜかイワンを待っていたらしい。ここはベロゴリア王国で、イワンは戦士イリヤの息子に生まれてすぐ人間界に隠されていたのだ。そして今、王国を救う「救世主」として召喚されたんだそうだが…イワンには電波の届かないスマートフォンがあるだけだった―。

ディズニー・ロシアが送り出す異世界ファンタジー。イワンは人間界から異世界に召喚されて、王国を救わねばならないのですが、強大な敵の前になんのスキルもありません。そこに賢くて勇敢な娘ヴァシリーサが現れ、力を合わせて闘うことになります。イワンがまた調子のいい奴で、ペテン師で食べていけたのも納得。
この頼りないイワンを助けてロシアの民話や神話に登場する妖怪たちも活躍します。バーバ・ヤーガはロシア版山姥。鳥の足が生えている小屋に住んで、どこへでも移動する人食い妖怪。「美しいヴァシリーサ」というお話では、ヴァシリーサは継母の使いでバーバ・ヤーガの小屋で働かされますが、亡くなった母が残してくれた人形の知恵で切り抜けるヒロインでした。ヴォジャノーイは沼や川に住む水の精で、大事にすると豊漁となり、粗末にすると人間を引きずり込みます。どちらもロシアのベテラン俳優が演じています。
2017年、ロシアでは大ヒットし、2020年に第2章が作られました。作りこんだ異世界を舞台に、馴染みのあるキャラが活躍するので、大人も子どもも大いに楽しんだはず。悪役がまた迫力あるんですよ。ファンタジー好きな方、ご覧くださいませ。(白)


2017年/ロシア/カラー/シネスコ/114分
配給:アルバトロス・フィルム
(C)Disney 2017 (C)YBW Group 2017
https://belogorie.jp/
★2021年11月26日(金)よりロードショー
posted by shiraishi at 01:59| Comment(0) | ロシア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする