2021年07月04日

走れロム  原題:Rom

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監督:チャン・タン・フイ
プロデューサー:トラン・アン・ユン
出演:チャン・アン・コア、アン・トゥー・ウィルソン

14歳の孤児ロム。今日もサイゴンの路地裏を駆け回って、一攫千金を狙う住民たちから”闇くじ(デー)”の掛け金を集めている。毎日16:30に抽選開始される30分前までに、胴元に掛ける番号とお金を届けるのをフックと競い合っている。ロムにとって、闇くじの手間賃は生き別れた両親を捜すための資金稼ぎ。路地裏の古い集合住宅の住民たちにとっても、地上げ屋から立ち退きを迫られていて、ロムの予想を頼りにしている。住民たちは、いつか大金を手にすることができるのか? そして、ロムは両親と会うことができるのか?

闇くじの締め切りが迫る中、ロムとフックが混沌としたサイゴンの路地裏を疾走する姿が、スタイリッシュに描かれていて、時間に間に合うのかとハラハラしながら、ロムたちの姿を追いました。船で渡っていく川か湾の中州で暮らす胴元の姿は見えません。ベトナム政府公認の”正当な”くじの当選番号の末尾2桁を予想する、ハイリスク/ハイリターンな違法くじ。
サイゴン(ホーチミン市)育ちの監督が、「サイゴンやベトナムの特産品は何か?」と聞かれたら、「間違いなく、宝くじで賭け事をすること=デー(Số đề)と答えるでしょう」というほど、サイゴンの人たちになくてはならない闇くじ。そうはいっても違法。釜山国際映画祭でニューカレンツ部門(新人監督コンペティション部門)最優秀作品賞を受賞しましたが、出品する前に当局の検閲を通してなかったことからお叱りを受けました。当局の要求を受け入れ、一部のシーンをカットして新しいシーンを追加し、釜山でのワールドプレミアと同じ上映時間79分に再編集。これが初長編作と思えない秀作です。(咲)


ベトナムを舞台にした映画をいろいろ観てきました。50作くらいは観ていると思います。でもこの映画に出てくる「くじ」が出てくるものは観たことがありません。なので質素に暮らしてきたこの国には「くじ」があるなんて思ってもみませんでした。この映画を観て、やっぱりベトナムにも「くじ」はあったのだと思いました。やはり一攫千金を夢見る人たちは世界中どこにでもいるいるんだなという思いと、そのせいで生活が破綻してしまう人たちもいる。ベトナムでもそうなんだと思いました。そして、その当たりはずれを左右するために予想屋がいて、しかも孤児の少年たちが、生きるためにそれを仕事にしている。イチかバチかの世界に人々は未了されているのでしょうか。私も「宝くじに当たったらいいのになあ」と思ったことはあるけど、くじ運が悪いので1回しかやったことがない。日本でも宝くじかけている人がいて、毎回けっこう高い金額をかけている人がいる。この映画を通して、「くじ」に賭けるベトナム庶民の生活を垣間見ることができた(暁)。

第24回釜山国際映画祭ニューカレンツ部門(新人監督コンペティション部門)最優秀作品賞
第24回ファンタジア国際映画祭 最優秀新人作品賞

2019年/ベトナム/ベトナム語/カラー/DCP/2.39:1/79分
日本語字幕:秋葉亜子
提供:キングレコード
配給・宣伝:マジックアワー
公式サイト:https://www.rom-movie.jp/
★2021年7月9日(金)、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次ロードショー

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2020年02月16日

ソン・ランの響き(原題:Song Lang)

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監督・脚本:レオン・レ
プロデューサー:ゴ・タイン・バン
出演:リエン・ビン・ファット(ユン)、アイザック(リン・フン)、スアン・ヒエップ

80年代のサイゴン(現・ホーチミン市)。高利貸しのもとで働く取り立て屋のユンは、返済が遅れた者には容赦がなく「雷のユン兄貴」と一目置かれていた。カイルオン(大衆歌舞劇)の劇場に行き、払えないならと衣裳にガソリンをかけていたところ、花形役者リン・フンが止めに入る。借金のかたにと腕時計を差し出すが、ユンは受け取らなかった。
翌日劇場に行ったユンはリン・フンの舞台にすっかり魅せられていた。たまたま食堂で酔客にからまれていたリン・フンを助け、昏倒した彼を自宅に連れ帰る。舞台に穴をあけた上、カギを落として帰れないリン・フンはしかたなくユンの部屋に泊まることになってしまった。ゲームに興じ、屋台で食事をするうち、2人は自分の生い立ちを打ち明けあう。ユンの母はカイルオンの女優、父は伴奏者だった。父の残した楽器、ソン・ランと月琴を大切に持っている。ユンの父の書き残した詩を即興でリン・フンが歌い、ユンが伴奏する。その腕前にカイルオンの劇団に入るようにとリン・フンは薦める。

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違うタイプのハンサムな二人が主演して、歌舞劇カイルオンを背景に「ボーイ・ミーツ・ボーイ」ストーリーが描かれます。ユン役のリエン・ビン・ファットはバラエティ番組のMCとして活躍、これが映画初出演。本作はTIFF2018の「アジアの未来」部門で上映され、リエンは新人俳優に贈られるジェムストーン賞を受賞しました。
リン・フン役のアイザックはダンス・ボーカルグループ(365daband)のリーダーだった人気アイドル。カイルオンの歌唱も踊りも特訓。ベトナム映画祭2018で上映された『フェアリー・オブ・キングダム』では王子役で主演しています。王子様顔ですね。
カイルオンは「改良」のことで、古臭い歌舞劇を改良してもっと観てもらおうと作られて100年ほどになるのだそうです。昔から知られた演目や国内外のものを取り込んだ大衆歌舞劇で南部で盛んになったもの。日本の大衆演劇と共通点があるのではないかしら。
映画の中で演じられる「ミー・チャウとチャン・トゥイー」は、敵対する国の姫と王子の悲恋物語で、まるでロミオとジュリエットです。政略結婚させられた二人ですが、互いに愛し合い親の説得を試みますが、父親たちの欲から引き裂かれてしまいます。この役で情が足りないと言われていたリン・フンがユンに会った後、変わったと褒められます。腐女子のみなさま、萌えますよね。舞台裏のようすなども面白いです。
タイトルの「ソン・ラン」は、月琴を弾く足元で拍子やリズムをとるために使われる楽器。足で踏むカスタネットのような打楽器。ポスターの「響き」のきの字の下にあるのがそうです。作中でも冒頭でユンが手に持っているところが映りますのでよく見てね。(白)


2018年の東京国際映画祭で初めて観た時、ベトナムにもこういう歌舞劇カイルオンというのがあるのだと知った。中華圏にも同じような形態(服装とか使う道具など)の歌舞劇があるから影響はあるのかも。カイルオンの家に育ったユンは、父に反発して家を出て取り立て屋をしていたけど、月琴とソン・ランは持って出ていたので、やはり家業に未練はあったのかも。ユンとリンの二人は最低の出会いをしてしまったけど、通じるものがあって、理解し合えたということなのでしょう。二人が即興で演じるシーンがそれを物語っていた。この映画を観た時、月琴のほうに目が行ってしまって、それがソン・ランだとばかり思っていたら、足元のリズム楽器がソン・ランだそう。歌舞劇の開始を告げる大事な役目をするという。
どこの国でも、伝統的な芸術は、新しい文化に押されてすたれていくものも多い。ベトナムでもそういう傾向があったらしいが、この映画のヒットでカイルオンに興味を持つ若い人も多くなったという。この映画のプロデューサーは『サイゴン・クチュール』と同じゴ・タイン・バンさん。『サイゴン・クチュール』もヒットし、ベトナムの伝統的な服装アオザイも新たな流れがでてきたと聞いたので、映画の影響は大きいと思った。
ユンを演じたリエン・ビン・ファットさんは、この演技でジェムストーン賞を受賞しましたが、今回、日本公開のため来日したレオン・レ監督とリエン・ビン・ファットさんに聞いたら、この作品はベトナムで公開された後、海外での初めての上映が東京国際映画祭だったそうで、海外の映画祭で初めて評価されたのがすごく嬉しかったとリエンさんが言っていた。その時、東京で次回作に通じる出会いがあったよう。次回作も楽しみ(暁


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2018東京国際映画祭オープニングで 左レオン・レ監督、右リエン・ビン・ファットさん

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リエン・ビン・ファットさんがジェムストーン賞を受賞


歌舞劇カイルオンを背景にした物語に、『さらば、わが愛/覇王別姫』(1993年)を思い浮かべ、思いがけない結末に『藍宇 〜情熱の嵐〜』(2001年)を思い出しました。あからさまに二人の関係を描いたものではないのですが、根底に流れるムードが二つの作品に通じるものがありました。切なさが今も蘇ります。(咲)

2018年/ベトナム/カラー/シネスコ/102分
提供:パンドラ
配給協力:ミカタ・エンタテインメント
配給宣伝:ムービー・アクト・プロジェクト
(C)2018 STUDIO68
http://www.pan-dora.co.jp/songlang/
★2020年2月22日(土)より新宿K's cinemaほか全国順次ロードショー




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2019年12月15日

サイゴン・クチュール(原題:Co Ba Sai Gon)

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監督:グエン・ケイ
脚本:グエン・ケイ、エー・タイプ・マシン
製作:ゴ・タイン・バン、チャン・ビュー・ロック、トゥイ・グエン
衣裳:トゥイ・グエン
出演:ニン・ズーン・ラン・ゴック(ニュイ)、ゴ・タイン・バン(ニュイの母)、ホン・ヴァン(アン・カイン)、ジェム・ミー 9x(ヘレン)、オアン・キエウ(タン・ロアン)、ジェム・ミー(タン・ロアン)、S.T 365(トアン)

1969年のサイゴン。9代続いたアオザイ仕立て屋の娘ニュイは、60年代の新しいファッションに夢中で、アオザイを仕立てる母と対立していた。自分のスタイルとセンスに自信満々でいたのに、打ち砕かれる経験をする。母が仕立てた美しいアオザイをこっそり身にまとってみたら、なぜか現代にタイムスリップしていた。ニュイはすっかり年取った自分と寂れた店の姿に愕然とする。母が急逝して継ぐ者のいない店は倒産、この家も人手に渡るところまで追い込まれていた。ニュイは自分の《人生》を変えようと奔走する。幸いトアンという青年が協力してくれた。ニュイは、現代のファッション業界に潜り込み、厳しかった母の本当の想いとアオザイの魅力に気づいていく。

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昔懐かしい60年代ファッションとベトナムの最新ファッションが見られます。父親がいない家庭だからか、母と娘の絆は強そう。仕事優先の母に寂しい思いをしてきたニュイの反抗もわかります。わがままで幼い感じのニュイが、タイムスリップしてからいろいろな試練を経て大人になっていく、国も年代も問わない王道ストーリー。タイムスリップして自分に会ってしまい、しかも協力して店の再建に励むというところはこれまでにない展開です。好青年のトアンは、60年代ではまだ生まれてもいないので、ロマンスに発展しないのがちょっと残念。ベトナムの有名女優さんたちが出演してとても華やかです。
ベトナム映画祭2018や第13回大阪アジアン映画祭などでは『仕立て屋 サイゴンを生きる』のタイトルで上映されました。(白)


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家業に反発するアオザイ仕立て屋の娘がタイムスリップで未来に行き、アオザイの良さに気づく。1960年代、現代のファッションをポップに扱い、見ていて楽しい。古いセンスを今に活かし、伝統に今を加える。柔軟な発想が大事と改めて思う。
お嬢様気質の主人公は成し遂げたことが自分だけの力ではないことに気づき、それが周りの気持ちにも影響を及ぼしていく。見る人を元気にするお仕事ムービー。(堀)


1969年は高校3年生でしたがべ平連に参加し、「ベトナムに平和を!」とデモに何回も出かけていた年でした。特に1969年の夏休み以降、毎週のようにあったデモに学生服のまま月3,4回は参加していた記憶があります。そんな経験から、ベトナムは私にとってとても気になる国です。なのでベトナム映画やベトナムのことを描いた映画をたくさん観てきました。ベトナム戦争を描いたものやベトナム戦争関係(枯葉剤など)のものがほとんどだったのですが、この4,5年、日本で上映されるベトナム映画に、少しづづ変化が見られるようになったと感じていました。そんな中、第13回大阪アジアン映画祭2018で『仕立て屋 サイゴンを生きる』を観ました。サイゴンのアオザイの仕立て屋を軸に、1969年から2017年にタイムスリップするという、ポップでキュートでおしゃれなアオザイがたくさん出てくる作品でした。ベトナムにもとうとうこういう作品が出てきたと、この映画祭で一番好きな作品でした。その作品が『サイゴン・クチュール』というタイトルで、日本公開されることになって、「やった~」と思いました。グェン・ケイ監督に取材できるというので、Sさんと一緒に取材に行ってきました。まだ若い監督でした。頼もしい。1作目のこの作品がベトナムでヒットし、すでに3作目まで作る予定があるとのこと(暁)。

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グェン・ケイ監督 インタビュー時 撮影:宮崎暁美
 

2017年/日本/カラー/シネスコ/100分
配給:ムービー・アクト・プロジェクト
(C)STUDIO68
http://saigoncouture.com/
★2019年12月21日(土)より新宿K’sシネマほか全国順次公開


来日イヴェント記事はこちら
http://cineja-film-report.seesaa.net/article/472375942.html

インタビュー記事はこちら
http://cineja-film-report.seesaa.net/article/472376828.html
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2019年11月09日

パパとムスメの 7 日間(原題:Hon Papa Da Con Gai/Daddy Issue)

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監督:落合賢(おちあい・けん/『太秦ライムライト』『サイゴン・ボディガード』)
脚本:マイケル・タイ
原作:五十嵐貴久著「パパとムスメの 7 日間」(幻冬舎文庫)
製作:チャーリー・グエン、落合賢
出演:タイ・ホア(ハイ)、ケイティ・グエン(チャウ)、トラン・ヒー、ギア・グエン、ヴァン・チャン、ホン・ヴァン、フイ・カーン、タン・ロック

化粧品会社に勤めるハイは妻を早く亡くして高校生の一人娘チャウと二人暮らし。ハイは徹夜でゲームをして出勤するようなパパだけれど、チャウはママに似て、美しくしっかりもののムスメに成長した。パパはママを忘れられない気まじめなムスメが気がかり、ムスメは遊んでばかりのパパの面倒を見るのに嫌気がさしている。海外留学の承諾書もまだ見せずにいた。
ある晩事故に遭った二人は自分たちの身体が入れ替わっているのに仰天、どうやっても元に戻らない。次の日から、パパとムスメはそれぞれの会社と学校へ行き役割を演じることになった。パパは大事なプレゼンがあり、ムスメは絶対に受かりたい校内オーディションがある。中身の違う二人は無事切り抜けられるのか?

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五十嵐貴久氏の同名小説が原作。日本で2007年にテレビドラマ化(舘ひろし、新垣結衣)、韓国で2017年に映画化(ユン・ジェムン、チョン・ソミン)されています。
このベトナム版と日本版が違うのは、母が亡くなって父と娘の間に溝ができてしまっていること。独身パパに言い寄る女性も出てきます。
芸達者なタイ・ホア演じるパパは仕事はできるようですが、子どもっぽいところが残ったまま。その分ムスメが大人にならねばならず、不満の種を作っています。そんな二人が入れ替わったことで、お互いの立場や気持ちを理解していく家族の物語になっています。日本版よりコメディ要素が大きく、ふり幅のある役をやりとげたタイ・ホアとケイティ・グエンに拍手♪ 真っ白のアオザイの制服姿がものすごく可愛い!!

男女入れ替わりの話は、大林宣彦監督『転校生』(1982/小林聡美、尾美としのり)、新海誠監督のアニメーション『君の名は。』(2016/声:神木隆之介 上白石萌音)などがあり、いずれも最初の驚愕からドタバタ必至の対処が面白いです。入れ替わりと元に戻るきっかけはそれぞれ違いますが、このベトナム版が一番危険かも。落合賢監督も日本人役で出演していますので、お確かめください。(白)


登場人物の衣装や家の装飾などの色調がポップで、私のベトナム映画に対するイメージがこの作品を見て、がらりと変わった。邦画でも言えるが、実際にこういう生活をしている人は多くはないと思うものの、見ていて楽しい気分になる。
その中で、父の娘への思い、娘の父への不満などはとてもリアルだ。体が入れ替わることで互いの気持ちを知り、自分の間違った思い込みにも気づく。作品を通じて、見ているこちらまで親への不満や子どもへの期待を振り返り、自分の思い込みがあったことを教えてもらった。
しかし、男がいつまで経っても子どもっぽいのは日本だけじゃないのねと苦笑いをしてしまう。(堀)


2018年/ベトナム/カラー/シネスコ/117分
配給:AMG エンタテインメント
(C)チャンフンフィルムス
http://www.cinemart.co.jp/article/blog/20190930002658.html
★2019年11月17日(日)よりシネマート新宿にて公開

~ご注意ください~
『パパとムスメの7日間』のむコレ上映日
シネマート新宿:11/17(日)、21(木)、12/18(水)、23(月)、27(金)~31(火)、1/2(木)
現在確定している上映時間:
● 11/17(日)16:25 ※終了後に監督トーク
● 11/21(木)20:50

シネマート心斎橋:11/20(水)、12/3(火)、12/20(金) 、12/23(月)、1/8(水)、1/17(木) 、1/23(水)
現在確定している上映時間:
● 11/20(水)14:15~上映 
posted by shiraishi at 10:18| Comment(0) | ベトナム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年03月17日

漂うがごとく(原題:Choi voi 英題:Adrift)

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監督:ブイ・タク・チュエン
脚本:ファン・ダン・ジー
撮影:リー・タイ・ズン
音楽:ホアン・ゴク・ダイ
出演:ドー・ハイ・イエン(ズエン)、リン・ダン・ファム(カム)、ジョニー・グエン(トー)、グエン・ズイ・コア(ハイ)

ハノイに住む通訳のズエンは、2歳年下のタクシー運転手ハイと出会って3ヶ月でスピード結婚をした。披露宴でハンは酔いつぶれ、ズエンは初夜に1人で眠るはめになる。義母は息子をズエンに盗られた気がして、なにかと世話を焼きたがる。それから何日も、ハイは仕事に疲れて帰っては子どものように眠るだけだった。ズエンは友だちのカムに頼まれて、彼女のボーイフレンドのトーを訪ねていくが、家に着いたとたん、ズエンはトーに襲われてしまう。

現代のハノイが舞台。じっとりとした空気と街の暑さが感じられる作品。出てくる男たちが皆どこかダメです。支える女たちも決して満足しているわけではなく、愛情を求めて漂っています。すれ違う新婚の夫婦、祖父母の秘められた過去、闘鶏に夢中の父としっかり者の娘、危険な男と引き寄せられる女たち・・・それぞれのカップルがハノイの街で息づいていました。繊細な東洋とハイカラな西洋が混ざり合ったような街です。
薬草の蒸し風呂に入るカムとズエン、布越しのシルエットが官能的。母親が自分のために刺繍した花嫁衣裳をズエンに贈ったカム、彼女が愛したのはトーではなく、ズエン?説明が少ない分想像が拡がりました。第66回ヴェネツィア国際映画祭の国際批評家連盟賞を受賞。(白)


新婚のズエンが、友だちの彼であるトーに最初は襲われる形だったのに、だんだん危険な匂いのするトーに惹かれていきます。(白)さんが書いているように、カムとズエンの関係も不思議。まさに漂うがごとく、思うがまま行動していて、ベトナム女性もなかなか凄い!と唸りました。(咲)

2009年/ベトナム/カラー/106分
配給:ムービー・アクト・プロジェクト
(C)Vietnam Feature Film Studio1,Acrobates Film
http://mapinc.jp/vietnam2films/
★2019年3月23日(土)新宿K'sシネマにてロードショー
posted by shiraishi at 18:15| Comment(0) | ベトナム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする