2019年12月15日

サイゴン・クチュール(原題:Co Ba Sai Gon)

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監督:グエン・ケイ
脚本:グエン・ケイ、エー・タイプ・マシン
製作:ゴ・タイン・バン、チャン・ビュー・ロック、トゥイ・グエン
衣裳:トゥイ・グエン
出演:ニン・ズーン・ラン・ゴック(ニュイ)、ゴ・タイン・バン(ニュイの母)、ホン・ヴァン(アン・カイン)、ジェム・ミー 9x(ヘレン)、オアン・キエウ(タン・ロアン)、ジェム・ミー(タン・ロアン)、S.T 365(トアン)

1969年のサイゴン。9代続いたアオザイ仕立て屋の娘ニュイは、60年代の新しいファッションに夢中で、アオザイを仕立てる母と対立していた。自分のスタイルとセンスに自信満々でいたのに、打ち砕かれる経験をする。母が仕立てた美しいアオザイをこっそり身にまとってみたら、なぜか現代にタイムスリップしていた。ニュイはすっかり年取った自分と寂れた店の姿に愕然とする。母が急逝して継ぐ者のいない店は倒産、この家も人手に渡るところまで追い込まれていた。ニュイは自分の《人生》を変えようと奔走する。幸いトアンという青年が協力してくれた。ニュイは、現代のファッション業界に潜り込み、厳しかった母の本当の想いとアオザイの魅力に気づいていく。

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昔懐かしい60年代ファッションとベトナムの最新ファッションが見られます。父親がいない家庭だからか、母と娘の絆は強そう。仕事優先の母に寂しい思いをしてきたニュイの反抗もわかります。わがままで幼い感じのニュイが、タイムスリップしてからいろいろな試練を経て大人になっていく、国も年代も問わない王道ストーリー。タイムスリップして自分に会ってしまい、しかも協力して店の再建に励むというところはこれまでにない展開です。好青年のトアンは、60年代ではまだ生まれてもいないので、ロマンスに発展しないのがちょっと残念。ベトナムの有名女優さんたちが出演してとても華やかです。
ベトナム映画祭2018や第13回大阪アジアン映画祭などでは『仕立て屋 サイゴンを生きる』のタイトルで上映されました。(白)


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家業に反発するアオザイ仕立て屋の娘がタイムスリップで未来に行き、アオザイの良さに気づく。1960年代、現代のファッションをポップに扱い、見ていて楽しい。古いセンスを今に活かし、伝統に今を加える。柔軟な発想が大事と改めて思う。
お嬢様気質の主人公は成し遂げたことが自分だけの力ではないことに気づき、それが周りの気持ちにも影響を及ぼしていく。見る人を元気にするお仕事ムービー。(堀)


1969年は高校3年生でしたがべ平連に参加し、「ベトナムに平和を!」とデモに何回も出かけていた年でした。特に1969年の夏休み以降、毎週のようにあったデモに学生服のまま月3,4回は参加していた記憶があります。そんな経験から、ベトナムは私にとってとても気になる国です。なのでベトナム映画やベトナムのことを描いた映画をたくさん観てきました。ベトナム戦争を描いたものやベトナム戦争関係(枯葉剤など)のものがほとんどだったのですが、この4,5年、日本で上映されるベトナム映画に、少しづづ変化が見られるようになったと感じていました。そんな中、第13回大阪アジアン映画祭2018で『仕立て屋 サイゴンを生きる』を観ました。サイゴンのアオザイの仕立て屋を軸に、1969年から2017年にタイムスリップするという、ポップでキュートでおしゃれなアオザイがたくさん出てくる作品でした。ベトナムにもとうとうこういう作品が出てきたと、この映画祭で一番好きな作品でした。その作品が『サイゴン・クチュール』というタイトルで、日本公開されることになって、「やった~」と思いました。グェン・ケイ監督に取材できるというので、Sさんと一緒に取材に行ってきました。まだ若い監督でした。頼もしい。1作目のこの作品がベトナムでヒットし、すでに3作目まで作る予定があるとのこと(暁)。

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グェン・ケイ監督 インタビュー時 撮影:宮崎暁美
 

2017年/日本/カラー/シネスコ/100分
配給:ムービー・アクト・プロジェクト
(C)STUDIO68
http://saigoncouture.com/
★2019年12月21日(土)より新宿K’sシネマほか全国順次公開


来日イヴェント記事はこちら
http://cineja-film-report.seesaa.net/article/472375942.html

インタビュー記事はこちら
http://cineja-film-report.seesaa.net/article/472376828.html
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2019年11月09日

パパとムスメの 7 日間(原題:Hon Papa Da Con Gai/Daddy Issue)

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監督:落合賢(おちあい・けん/『太秦ライムライト』『サイゴン・ボディガード』)
脚本:マイケル・タイ
原作:五十嵐貴久著「パパとムスメの 7 日間」(幻冬舎文庫)
製作:チャーリー・グエン、落合賢
出演:タイ・ホア(ハイ)、ケイティ・グエン(チャウ)、トラン・ヒー、ギア・グエン、ヴァン・チャン、ホン・ヴァン、フイ・カーン、タン・ロック

化粧品会社に勤めるハイは妻を早く亡くして高校生の一人娘チャウと二人暮らし。ハイは徹夜でゲームをして出勤するようなパパだけれど、チャウはママに似て、美しくしっかりもののムスメに成長した。パパはママを忘れられない気まじめなムスメが気がかり、ムスメは遊んでばかりのパパの面倒を見るのに嫌気がさしている。海外留学の承諾書もまだ見せずにいた。
ある晩事故に遭った二人は自分たちの身体が入れ替わっているのに仰天、どうやっても元に戻らない。次の日から、パパとムスメはそれぞれの会社と学校へ行き役割を演じることになった。パパは大事なプレゼンがあり、ムスメは絶対に受かりたい校内オーディションがある。中身の違う二人は無事切り抜けられるのか?

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五十嵐貴久氏の同名小説が原作。日本で2007年にテレビドラマ化(舘ひろし、新垣結衣)、韓国で2017年に映画化(ユン・ジェムン、チョン・ソミン)されています。
このベトナム版と日本版が違うのは、母が亡くなって父と娘の間に溝ができてしまっていること。独身パパに言い寄る女性も出てきます。
芸達者なタイ・ホア演じるパパは仕事はできるようですが、子どもっぽいところが残ったまま。その分ムスメが大人にならねばならず、不満の種を作っています。そんな二人が入れ替わったことで、お互いの立場や気持ちを理解していく家族の物語になっています。日本版よりコメディ要素が大きく、ふり幅のある役をやりとげたタイ・ホアとケイティ・グエンに拍手♪ 真っ白のアオザイの制服姿がものすごく可愛い!!

男女入れ替わりの話は、大林宣彦監督『転校生』(1982/小林聡美、尾美としのり)、新海誠監督のアニメーション『君の名は。』(2016/声:神木隆之介 上白石萌音)などがあり、いずれも最初の驚愕からドタバタ必至の対処が面白いです。入れ替わりと元に戻るきっかけはそれぞれ違いますが、このベトナム版が一番危険かも。落合賢監督も日本人役で出演していますので、お確かめください。(白)


登場人物の衣装や家の装飾などの色調がポップで、私のベトナム映画に対するイメージがこの作品を見て、がらりと変わった。邦画でも言えるが、実際にこういう生活をしている人は多くはないと思うものの、見ていて楽しい気分になる。
その中で、父の娘への思い、娘の父への不満などはとてもリアルだ。体が入れ替わることで互いの気持ちを知り、自分の間違った思い込みにも気づく。作品を通じて、見ているこちらまで親への不満や子どもへの期待を振り返り、自分の思い込みがあったことを教えてもらった。
しかし、男がいつまで経っても子どもっぽいのは日本だけじゃないのねと苦笑いをしてしまう。(堀)


2018年/ベトナム/カラー/シネスコ/117分
配給:AMG エンタテインメント
(C)チャンフンフィルムス
http://www.cinemart.co.jp/article/blog/20190930002658.html
★2019年11月17日(日)よりシネマート新宿にて公開

~ご注意ください~
『パパとムスメの7日間』のむコレ上映日
シネマート新宿:11/17(日)、21(木)、12/18(水)、23(月)、27(金)~31(火)、1/2(木)
現在確定している上映時間:
● 11/17(日)16:25 ※終了後に監督トーク
● 11/21(木)20:50

シネマート心斎橋:11/20(水)、12/3(火)、12/20(金) 、12/23(月)、1/8(水)、1/17(木) 、1/23(水)
現在確定している上映時間:
● 11/20(水)14:15~上映 
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2019年03月17日

漂うがごとく(原題:Choi voi 英題:Adrift)

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監督:ブイ・タク・チュエン
脚本:ファン・ダン・ジー
撮影:リー・タイ・ズン
音楽:ホアン・ゴク・ダイ
出演:ドー・ハイ・イエン(ズエン)、リン・ダン・ファム(カム)、ジョニー・グエン(トー)、グエン・ズイ・コア(ハイ)

ハノイに住む通訳のズエンは、2歳年下のタクシー運転手ハイと出会って3ヶ月でスピード結婚をした。披露宴でハンは酔いつぶれ、ズエンは初夜に1人で眠るはめになる。義母は息子をズエンに盗られた気がして、なにかと世話を焼きたがる。それから何日も、ハイは仕事に疲れて帰っては子どものように眠るだけだった。ズエンは友だちのカムに頼まれて、彼女のボーイフレンドのトーを訪ねていくが、家に着いたとたん、ズエンはトーに襲われてしまう。

現代のハノイが舞台。じっとりとした空気と街の暑さが感じられる作品。出てくる男たちが皆どこかダメです。支える女たちも決して満足しているわけではなく、愛情を求めて漂っています。すれ違う新婚の夫婦、祖父母の秘められた過去、闘鶏に夢中の父としっかり者の娘、危険な男と引き寄せられる女たち・・・それぞれのカップルがハノイの街で息づいていました。繊細な東洋とハイカラな西洋が混ざり合ったような街です。
薬草の蒸し風呂に入るカムとズエン、布越しのシルエットが官能的。母親が自分のために刺繍した花嫁衣裳をズエンに贈ったカム、彼女が愛したのはトーではなく、ズエン?説明が少ない分想像が拡がりました。第66回ヴェネツィア国際映画祭の国際批評家連盟賞を受賞。(白)


新婚のズエンが、友だちの彼であるトーに最初は襲われる形だったのに、だんだん危険な匂いのするトーに惹かれていきます。(白)さんが書いているように、カムとズエンの関係も不思議。まさに漂うがごとく、思うがまま行動していて、ベトナム女性もなかなか凄い!と唸りました。(咲)

2009年/ベトナム/カラー/106分
配給:ムービー・アクト・プロジェクト
(C)Vietnam Feature Film Studio1,Acrobates Film
http://mapinc.jp/vietnam2films/
★2019年3月23日(土)新宿K'sシネマにてロードショー
posted by shiraishi at 18:15| Comment(0) | ベトナム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ベトナムを懐(おも)う(英題:Hello Vietnam)

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監督:グエン・クアン・ズン
脚本:タイン・ホアン、タイ・ハー、グエン・クワン・ユン
撮影:グエン・チン・ホアン、ジェップ・テー・ビン
美術:ラ・バグズリー、レ・ゴック・クオック・バオ
音楽:ドゥック・チー
出演:ホアイ・リン(トゥー)、チー・タイ(ナム)

1995年のニューヨーク。トゥーはベトナムの農村で生まれ育ち、幼馴染と結婚し、つましく暮らしてきた。妻が亡くなって、アメリカに渡った息子グェンの元にやってくるが、同居は叶わずに老人ホームに入居する。たった一人の孫娘タムはアメリカ生まれで、習慣・価値観の全く違う祖父に懐いてはくれない。妻の命日にホームを抜け出したトゥーは、親友のナムを誘い二人だけで伝統的な供養をする。そして、トゥーを怖がっていたタムの本心を初めて聞くことになった。

ベトナム人家族3世代の故郷への思いを綴った作品。トゥーが思い出すのは、緑深く陽光が降りそそぐ故郷。今は暗い空から雪が舞うニューヨークに住んでいます。この対比に望郷の思いが伝わってきます。トゥーの胸の中にある故郷はいつも美しく輝き、味わったはずの苦労は時間が薄めてくれています。
孫娘のタムにとって、ベトナムは見知らぬ外国に過ぎません。祖父のトゥーがよかれと思って伝える習慣も、押し付けにしか思えず、いやでたまりません。真ん中の世代のグェンが、父と娘タムの間の大きな溝を埋める役割、架け橋にならなければいけないのに、と疑問が浮かびます。グェンには故郷を忘れてしまいたい理由がありました。タムがあまりに頑なに祖父を拒否するのも不思議でしたが、このわけも後でわかります。タムのボーイフレンドがごく普通に接するのが救いでした。
異なる世代の思いが理解されず、すれ違ってしまうのは現代でも起き得ること。まず「何故?」と相手を知ろうとすること、自分の心を開くことですよね。(白)


息子グェンのもとに行った父トゥーはなかなかアメリカの生活に馴染めないのに、母の命日にさえ、グェンは仕事で忙しくて家にいられません。アメリか育ちの孫娘タムからは、家の中で火を使う命日の儀式を拒否されてしまいます。こんな祖父と孫娘のやりとりに、いらっとしてしまいます。
2017年のアジアフォーカス・福岡国際映画祭で上映された折に来日したグエン・クアン・ズン監督が、「間違っているのでなく違うのだと、それぞれの世代に感情移入して観ていただければ」と語っていたのを思い出します。息子グェンは、1975年のベトナム南北統一で、ボートピープルとしてアメリカに渡った人物。物語の最後には、離れなければならなかった故国を思う気持ちがじんわり伝わってきました。(咲)


雪のニューヨークでベトナムを想う家族 ベトナム戦争の影は今も
ボートピープルとしてアメリカに渡ったグエンの思い、アメリカで生まれた娘タムの思い、ベトナムに残ったけどアメリカに呼び寄せられた祖父トゥーの思い、世代や文化のギャップの相容れない状態が最初描かれるけど、そこから彼らがかかえた切ない背景へと迫り、最後はそれぞれが祖国を想う切なさが描かれる。それに感動しました。
本作はベトナムで1990年代から演じられてきた舞台を映画化した作品。劇中で歌われるのは、戦いへ赴いた夫を待つ妻の切なさを歌ったもので、その歌のタイトル「Dạ Cổ Hoài Lang(夜恋夫歌)」がベトナムでの原題だそう。
本作の監督は『超人X』や、韓国映画『サニー 永遠の仲間たち』のベトナムリメイク『輝ける日々に(「サニー」ベトナム版)』のグエン・クアン・ズン監督。いまやベトナムのヒットメーカーです。これらは大阪アジアン、アジアフォーカス、東京国際映画祭で紹介されました。
それにしてもグエンはベトナムから父トゥーを呼び寄せたのに老人ホームに入れてしまうし、母の命日にもその弔いの催しもしない。一緒に暮らす余裕もないのに親を呼び寄せるということがよくわからなかった。父親にこんな思いをさせるくらいなら、ベトナムにいたほうが幸福だったのではとも思う(暁)。


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グエン・クアン・ズン監督(2018年東京国際映画祭にて)


2017年/ベトナム/カラー/シネスコ/88分
配給:ムービー・アクト・プロジェクト
(C)HKFilm
http://mapinc.jp/vietnam2films/
★2019年3月23日(土)新宿K'sシネマにてロードショー

◎公開初日にはスペシャルトークイベントが決定しました。
SPゲストに元「アイドリング!!!」の創設メンバーとして活躍し、現在も女優として活動中のベトナム出身の美人女優・フォンチーさんが登壇します。
posted by shiraishi at 17:54| Comment(0) | ベトナム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする