2022年11月01日

パラレル・マザーズ    原題:MADRES PARALELAS

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(C)Remotamente Films AIE & El Deseo DASLU

監督・脚本:ペドロ・アルモドバル(『ペイン・アンド・グローリー』『ボルベール〈帰郷〉』)
出演:ペネロペ・クルス、ミレナ・スミット、イスラエル・エレハルデ、アイタナ・サンチェス=ギヨン、ロッシ・デ・パルマ、フリエタ・セラーノ

2016年、マドリード。フォトグラファーのジャニス(ぺネロペ・クルス)は、法人類学者アルトゥロ(イスラエル・エレハルデ)のポートレート撮影を引き受けた。ジャニスの曽祖父は、スペイン内戦時にフランコ政権に連行され殺されたが、遺骨が見つかっていない。ジャニスは、「歴史記憶を回復する会」のメンバーでもあるアルトゥロに、曽祖父たち行方不明の同郷の人たちの遺骨の発掘を依頼したいという思惑があった。アルトゥロは快く引き受ける。会った時から惹かれ合った二人は、たちまち恋に落ちる。だが、アルトゥロには病弱の妻がいた。
時が経ち、ジャニスは出産を控えて病院にいた。同室の17歳のアナ(ミレナ・スミット)と同じ日に女の子を出産する。共にシングルマザーとなった二人は、連絡先を交換する。
その後、アルトゥロがセシリアと名付けた我が子に会いたいとやってくる。一目見て、自分の子と思えないと言われ、ジャニスはDNA鑑定をする。驚くべきことに、自分が生物的母親である確率は、100%ないと出る。同じ日に生まれたアナの娘と取り間違えられたに違いないと推察する・・・

病院で取り違えられ、血の繋がっていない子を育てていたという話は現実にもあるし、映画にもしばしば取り上げられてきました。本作では、ジャニスが真実を知った時の苦悩、アナと再会し、さらに悩まされる様が丁寧に描かれていました。
それよりも、私の心に響いたのは、内戦時代に行方不明になった人たちの遺骨を、孫や曾孫の世代が探し出そうとしていることでした。劇中、内戦を経験したお年寄りたちが語る言葉は本物。祖母や曽祖母の、いつまでも晴らせない思いを、なんとか叶えてあげたいという若い世代。フランコ政権時代の悲劇を忘れてはいけないという、監督も含めスペインの人たちの思いをずっしり感じた一作でした。(咲)


第78回ヴェネチア国際映画祭 最優秀女優賞受賞(ペネロペ・クルス)

☆ペドロ・アルモドバル監督初の英語劇 『ヒューマン・ボイス』 同時公開


2021年/スペイン・フランス/スペイン語/123分/カラー/5.1ch/ドルビーデジタル/アメリカンビスタ/R15+
字幕翻訳:松浦美奈
配給キノフィルムズ
公式サイト:https://pm-movie.jp/
★2022年11月3日(木・祝)ヒューマントラストシネマ有楽町、Bunkamuraル・シネマ、新宿シネマカリテ他全国公開
posted by sakiko at 02:11| Comment(0) | スペイン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ヒューマン・ボイス   原題:THE HUMAN VOICE

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© El Deseo D.A.

監督・脚本:ペドロ・アルモドバル
原作:ジャン・コクトー「人間の声」
出演:ティルダ・スウィントン アグスティン・アルモドバル ダッシュ(犬)

1人の女が元恋人のスーツケースの横で、ただ時が過ぎるのを待っている。スーツケースを取りに来るはずの恋人は、結局姿を現さない。そばには、主人に捨てられたことをまだ知らない犬がいる。3日間待ち続けた女は、その間にたった1度外出し、斧と缶入りガソリンを買ってくる。女は無力感に苛まれ、絶望を味わい、理性を失う。様々な感情を体験したところで、やっと元恋人からの電話がかかってくるが……

ジャン・コクトーの戯曲「人間の声」をアルモドバルが自由に翻案した、英語での一人芝居。
捨てられた女性と犬の、なんとも不思議な時間でした。(咲)


『パラレル・マザーズ』と同時公開になる30分の短編

2020年/スペイン/英語/30分/カラー/5.1ch/ドルビーデジタル/アメリカンビスタ
字幕翻訳:松浦美奈
配給・宣伝:キノフィルムズ 提供:木下グループ
公式サイト:https://pm-movie.jp/
★2022年11月3日(木・祝)ヒューマントラストシネマ有楽町、Bunkamuraル・シネマ、新宿シネマカリテ他全国公開



posted by sakiko at 02:07| Comment(0) | スペイン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年01月23日

プラットフォーム(原題:El Hoyo/英題:The Platform)

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監督:ガルダー・ガステル=ウルティア
出演:イバン・マサゲ(ゴレン)、『パンズ・ラビリンス』『ミリオネア・ドッグ』「わが家へようこそ」、アントニア・サン・フアン

ゴレンは禁煙するために「穴」と呼ばれる「VSC/垂直自主管理センター」に入った。携帯品は一つだけ、6ヶ月の間に読み終わるように「ドン・キホーテ」の本を持ち込んだ。ガスで眠らされて目覚めると老人が自分を見つめていた。ベッドと洗面、トイレのほか何もない部屋で、床と天井に大きな四角い穴が開いている。詳しいことを知らされなかったゴレンに、老人は決まりごとをいくつか教えてくれた。老人は長い間ここにいて、下層の悲惨さを知りつくしている。自分たちがいる48階は良い階だと言うが、ゴレンは食べ散らかされた残り物を口にできない。
ルール1:一ヶ月ごとに階層が入れ替わる
ルール2:何か一つだけ建物内に持ち込める
ルール3:食事が摂れるのはプラットフォームが自分の階層にある間だけ

1日1度、上の階の残り物が載ったプラットフォームが下りてくる。最下層まで行くと凄いスピードで上がって戻る。食べて生き残ることしかすることがない。知るにつけ、とんでもない場所だとわかるが、途中で出ることはできないしくみだった。

縦構造になった階級社会を描く SF サスペンス・スリラー。よくこんなことを思いつくね、と呆れると同時に感心してしまいました。ガルダー・ガステル=ウルティアの長編初監督作品です。
ホテルの厨房かと見まがうところで、責任者らしい男性が厳しくチェックし、味や見た目はもとより髪の毛1本も見逃しません。それでも0階のプラットフォームに美しく盛られた食事がどうなるのかは、作り手の知るところではなく、知ろうとさえ思わないのかもしれません。
考えてみればわずかな食糧を奪い合っているのは、現実世界でも同じです。現実では階層が産まれながらに決まったり、努力次第で変えられることがあります。「穴」ではどこにいようと、1ヶ月経てば必ず移動するというところが異なります。
「奪い合えば足りず、分け合えば余る」という言葉がありますが、全員に行き渡るだけの食糧があっても下層まで届きません。たとえ下層で苦労しても、上層に移ればこのときとばかり幸運を貪り、分け合うことなど考えません。人間のイヤな部分がこれでもかとばかりにさらされます。そうしないと生き残れないので、ヘタレな私なら早々に脱落です。
豊かな国ではあり余り、廃棄される食品があっても、食べられない人には回っていかないドキュメンタリーを思い出しました。(白)


受賞歴
2019 トロント国際映画祭(ミッドナイトマッドネス部門):観客賞受賞
2019 シッチェス・カタロニア国際映画祭:最優秀作品賞、視覚効果賞、新進監督賞、観客賞受賞
2020 ゴヤ賞:特殊効果賞受賞

階級社会をデフォルメして描いている作品で、窓がなくて暗く汚い部屋、上から下りてくる残飯などが全体的にダークな印象を与えています。時折、目を覆いたくなるシーンも。この作品はホラーなのか、サスペンスなのか。情報が少ないゆえ主人公の先行きが気になって、なぜか目が離せません。
不条理な状況に立ち向かおうとする人も出てきますが、うまくいきません。彼らはヒーローではなく、むしろ人間としての矮小さが際立って感じられてしまいます。彼らに共感するか、どうかで見ている人の社会性が問われているような気がします。(堀)


2019年/スペイン/カラー/シネスコ/94分/R15+
配給:クロックワークス
(C)BASQUE FILMS, MR MIYAGI FILMS, PLATAFORMA LA PELICULA AIE
http://klockworx-v.com/platform/
★2021年1月29日(金)劇場公開
posted by shiraishi at 23:59| Comment(0) | スペイン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年01月08日

43年後のアイ・ラヴ・ユー(原題:Remember Me)

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監督・脚本:マーティン・ロセテ
出演:ブルース・ダーン、カロリーヌ・シロル、ブライアン・コックス

70歳のクロード(ブルース・ダーン)は妻を亡くし、LA郊外に一人で住む元演劇評論家。親友のシェーン(ブライアン・コックス)と老後を謳歌していた。ある日、昔の恋人で人気舞台女優のリリィ(カロリーヌ・シロル)がアルツハイマーを患わせて施設に入った事を知る。もう一度リリィに会いたいと願ったクロードは、アルツハイマーの《フリ》をしてリリィと同じ施設に入居するという一世一代の《嘘》を思いつく。シェーンの協力のもと、遂にリリィと念願の再会を果たしたクロード。だがリリィの記憶からクロードは完全に消し去られていた―。そんなリリィに、クロードは毎日のように二人の想い出を語りかけるのだった。ある日、昔リリィが演じたシェイクスピアの「冬物語」を施設で観る事になり、クロードは孫娘と一緒にある作戦を実行する。

このところシルバー世代を主人公に迎えた作品がぐっと増えてきました。本作もその1つ。かつて愛した女性が認知症になって施設で暮らしていることを知った主人公の涙ぐましい奮闘を描いた純愛ストーリーです。
認知症には特効薬はありません。しかし、何かの拍子にふっと思い出したりすることがあるようです。頭ではなく、体が覚えていることなのでしょう。本作ではクロードを演劇評論家に、リリィを舞台女優に設定することで、リリィが認知症になってもかわいらしさを保っていることやクロードが起こした奇跡にリアリティをもたらしています。
またクロードの奮闘はリリィだけでなく、家族や親友にも影響を及ぼしました。ダメだと諦める前に一歩踏み出してみる。自分の思い込みが明るい未来を阻んでいたことに気づくのです。とはいえ、すべてが思い通りに進むわけじゃない。クロードもそれはわかっていました。立場をわきまえ、引くべきところは潔く引く。男としての矜持に惚れ惚れしてしまいます。それを体現できるのはブルース・ダーンだからこそ! さすがです。
作品にはシェイクスピアの作品がいくつか登場します。私はシェイクスピアに詳しくないのですが、解説的な話を自然な流れで盛り込んであるので問題ありませんでした。ただ詳しい方にはより楽しめるに違いありません。(堀)


冒頭、クロードと悪友シェーンとの会話は薬のことばかりで、この年になるとそうなるよねと実感する年代に私も達しています。かつての恋人の消息を知って色めきだって、認知症のフリまでして施設に入居してしまうクロードは、あっぱれです。人生まだまだ・・・と、私もチャンスを期待して元気になりました♪ 
認知症のリリィは、かつて舞台で演じた時のセリフをにわかに思い出します。年をとっても、昔ひとつ覚えした外国語のフレーズや、語劇で演じたセリフをいつまでも覚えている方を知っているので、あるあると思いました。(咲)



2019年/スペイン・アメリカ・フランス/英語/89分/スコープ/カラー/5.1ch/日本語字幕:星加久実
配給:松竹
(C) 2019 CREATE ENTERTAINMENT, LAZONA, KAMEL FILMS, TORNADO FILMS AIE, FCOMME FILM . All rights reserved.
公式サイト:https://movies.shochiku.co.jp/43love
★2021年1月15日(金)新宿ピカデリー、角川シネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷
posted by ほりきみき at 23:54| Comment(0) | スペイン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年11月17日

サウラ家の人々(原題:Saura(s))

 
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監督:フェリックス・ビスカレット
出演:カルロス・サウラ、カルロス・サウラ・メドラノ、アントニオ・サウラ・メドラノ、アンナ・サウラ・ラモン

スペインが世界に誇る巨匠カルロス・サウラ。今年88歳になる彼と長男アントニオを筆頭にした7人の子どもたちとの交流を撮ったドキュメンタリー映画。サウラが撮った写真に手を加え、子どもたちと率直に語り合う姿をカメラがとらえた。

カルロス・サウラはルイス・ブニュエル、ペドロ・アルモドバルとともにスペインが世界に誇る映画監督。これまでに40本以上映画を撮っており、世界三大映画祭での受賞歴やノミネート作があります。1992年バルセロナオリンピックでは公式映像のディレクターを務めました。
サウラは4人の女性との間に7人の子どもがいます。その1人1人と向き合って語りあうのですが、子どもが幼い頃に父親とどんな風に一緒の時間を過ごしていたか、それについてお互いがどう思っていたかを聞いていると愛情の深さが伝わってきます。子どもたちの何人かはサウラの仕事に関わっていることもあるからか、本作のフェリックス監督は子どもたちに聞き出してほしいテーマを伝えていたよう。しかし、サウラ自身は人生を振り返るようなことは話さないし、気分がそがれると撮影の途中でも「今日はもうお仕舞」と言い出します。しかもフェリックス監督を画面に引き込んでしまいます。サウラの方が一枚も二枚も上手。撮影に行き詰って悩むフェリックス監督の姿まで作品は映し出します。
父と子の語り合いはスタジオ内で作品を映し出しながら行われるので、サウラの作品を見たことがある人にはとても興味深いでしょう。しかし、作品を見たことがなくても大丈夫。また、『カラスの飼育』『ブニュエル~ソロモン王の秘宝~』『フラメンコ・フラメンコ』『J:ビヨンド・フラメンコ』の4作品は同時上映されるので、本作を見て、気になったらぜひご覧ください。(堀)


本作を観る前に、カルロス・サウラというお名前に恥ずかしながら記憶がなかったのですが、『血の婚礼』(日本公開:1985年1月22日)が出てきて、この監督だったのか~と! 公開当時、フランコ独裁の時代に犠牲になった詩人ロルカに興味を持っていたので、そのロルカの舞台の映画化と知って観に行ったのでした。
カルロス・サウラは多くを語らないのですが、7人の子どもたちとの会話の中から、子ども時代に経験したスペイン内戦や、その後のフランコの独裁政治が、彼の人生、そして彼の生み出した写真や映画に大きく影響を与えたことを感じ取れました。
さらに、彼に影響を与えたのが、7人の子どもたちの4人の母親たち! 常に前を向いて歩くカルロス・サウラ。パートナーが代わるたびに作風が変わっていくのです。
チャップリンの娘、ジェラルディン・チャップリンは3番目のパートナー。籍こそ入れませんでしたが、息子を授かっています。
今回、同時上映される『カラスの飼育』(1975年)には、ジェラルディン・チャップリンが出演しています。
やはり同時公開される『フラメンコ・フラメンコ』(日本公開:2012年2月11日)、実は観ていて、「歌や踊り、ギターやピアノの演奏など、フラメンコの真髄を21幕で描き出した重厚な作品でした。ひたすら舞台を写していて、いつしか夢の世界へ・・・」とスタッフ日記に書いていました。トホホです。
★予告編 http://www.youtube.com/watch?v=9HS1e-aD0RQ には、この映画が凝縮されていて、これを観れば本作を観たくなること請け合います♪  (咲)



2017年/スペイン/カラー/85分
配給:パンドラ
© Una producción Pantalla Partida e Imval Madrid. 2017
公式サイト:http://www.pan-dora.co.jp/sauras/
★2020年11月21日(土)〜新宿K's cinemaにてロードショー全国順次公開
posted by ほりきみき at 19:17| Comment(0) | スペイン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする