2024年11月07日
ロボット・ドリームズ(原題:Robot Dreams)
監督・脚本:パブロ・ベルヘル
原作:サラ・バロン
1980年代のニューヨーク。大都会のアパートで一人暮らしのドックは、食事も一人、テレビを見るのも一人の孤独な毎日。窓の向こうも、終える家族だんらんがちょっとうらやましい。テレビで友達ロボットのコマーシャルを見つけてさっそく申し込んでみた。後日、大きな箱が届いてドックはワクワク。説明書にしたがって部品を組み立てると、パチリと目が開き、ロボットが誕生した。その日から二人暮らし、なんでも一緒に楽しめる!
ある日ビーチに出かけて遊んでいるうちに、ロボットが海水のためにさびて動けなくなった。ドックは修理しようと奔走するが、シーズンオフに入ったビーチは閉鎖されてしまった。
パブロ・ベルヘル監督(代表作『ブランカニエベズ』)の初のアニメーション。昨年の第36回東京国際映画祭で上映されています。セリフはなくどこの国でも楽しめる作品です。アメリカのグラフィックノベルが原作で、擬人化された動物たちの暮らしを描いています。友達ロボットはプラモデルのように簡単に作れて高性能。もしも将来実現できたなら爆売れでしょう。
ロボットがビーチで砂に埋もれてしまうので心配になりますが、自分で起き上がれないだけで生きて(?)います。子どもと一緒に観ても大丈夫。離れている間にもいろいろありますが、信頼しあう二人の友情は変わりません。観終わって胸がほっこりします。
ドックになんだか懐かしさを感じましたが、大人向けの漫画やテレビ番組「お笑い漫画道場」で人気を博した富永一朗さんのキャラと体型が似ているんです。親近感があるのはそのせいでした。60年~90年代に活躍した人なので若い方にはなじみがないですね。昭和は遠くなりにけり。(白)
2023年/スペイン・フランス/カラー/102分
配給:クロックワークス
(C)2023 Arcadia Motion Pictures S.L., Lokiz Films A.I.E., Noodles Production SARL, Les Films du Worso SARL
https://klockworx-v.com/robotdreams/
★2024年11月8日(金)より全国ロードショー
2024年05月30日
ユニコーン・ウォーズ(原題:Unicorn Wars)
監督・脚本:アルベルト・バスケス
とあるディストピア。熊とユニコーンがそれぞれのテリトリーに住んでいた。この両者は先祖代々闘いが続いている。テディベアの双子の兄弟、ゴルディとアスリンは軍の新兵訓練所で厳しい特訓を受けていた。
先発の部隊が魔法の森へ行ったまま戻らず、捜索部隊が出動することになった。ほどなくアスリンたちが目にしたのは無残な姿の隊員たちだった。聖書には「最後のユニコーンの血を飲む者は、美しく永遠の存在になる」という言葉がある。部隊はユニコーンを追って深い森へと進軍していくが、その地で巻き起こる悲惨で残酷な出来事の先には、とんでもない結末が待ち受けていた…。
こちらは昨年開催された第一回新潟国際アニメーション映画祭のコンペティション部門で拝見。テディベアを始めとして可愛いキャラたちが勢ぞろいで、お子様向けかと思いきや・・・そのキャラの姿で血みどろの闘い、幻覚からの殺戮、飢餓に襲われと驚愕のシーンが繰り広げられます。
ことに双子で生まれたゴルディとアスリンの兄弟。気弱な兄のゴルディに母の愛情をとられたと思っている節があるアスリンは、何かにつけ意地悪をします。闘いの合間に過去の思い出が挿入され、なぜこうなってしまったかが明らかになります。
ユニコーンと熊の長い闘いを、同道する神父は聖書をもとに此方が正義と意味を説きます。寄せ集めの最弱部隊を死んでも惜しくないと言い放つ上官たち。テディベアの姿だから観続けられましたが、今の人間世界と変わらないではありませんか。戦争の醜悪さ残酷さが詰め込まれています。ラストまで心して観よ。(白)
☆監督フィルモグラフィ
<長編アニメーション>
『ユニコーン・ウォーズ』(2022)※ゴヤ賞 最優秀長編アニメーション映画賞
『サイコノータス
忘れられたこどもたち』(2015) ※ゴヤ賞 最優秀長編アニメーション映画賞
<短編アニメーション>
『Homeless Home』 (2020)※アヌシー国際アニメーション映画祭 審査員賞
『Decorado』 (2016) ※ゴヤ賞 最優秀短編アニメーション賞
『Unicorn Blood』 (2013)
『Birdboy』 (2011) ※ゴヤ賞 最優秀短編アニメーション賞
2022年/スペイン、フランス/カラー/ビスタ/92分
配給:リスキット
©︎2022 Unicorn Wars
公式HP: unicornwars.jp
★2024年5月25日(土)よりシアター・イメージフォーラムにて先行公開中
5月31日(金)よりTジョイPRINCE品川ほか全国順次公開
2024年05月26日
VIVA! SAURAカルロス・サウラ監督追悼『情熱の王国』『壁は語る』
撮った、愛した、生きた!
VIVA! SAURA 未来を生きるシネアスタ
2023年2月10日、スペインの名匠カルロス・サウラ監督が91歳で亡くなられました。
50を超える作品を撮り続け、ゴヤ賞栄誉賞を受賞する前日のことでした。
この度、カルロス・サウラ監督を追悼し、最後の劇映画であるメキシコで撮影された『情熱の王国』(2021)と、遺作となった監督自らが出演するドキュメンタリー『壁は語る』(2022)の2本が同時公開されます。
公式サイトhttp://www.action-inc.co.jp/saura/
配給:Action Inc. 配給協力:インターフィルム
★2024年6月1日(土)より、ユーロスペースほかにて追悼ロードショー
カルロス・サウラ
本名:カルロス・サウラ・アタレス
生年月日:1932年1月4日 ウエスカ生まれ
没:2023年2月10日 マドリード
4歳の時にスペイン内戦(1936-39)がはじまり、共和国派地域のマドリード、バルセロナ、バレンシアを転々とする。ピアニストの母と画家の兄の影響で芸術に興味を示し、高校の頃から写真、1950年から16mmで映像を撮り始める。1952年、IIEC(現在の国立映画学校)に入学。1958年からIIECで映画美術の教鞭に立つがフランコ政権の検閲に反対して1963年に解任。1958年に短編ドキュメンタリー「Cuenca」(クエンカ)でサンセバスチャン映画祭、短編部門特別賞を受賞。長編デビュー作「Los Golfos」(ならず者たち)は1960年のカンヌ映画祭に正式出品され、1965年、「La Caza」(狩り)でベルリン国際映画祭金熊賞を受賞。その後、ほぼ年に1本のペースで作品を発表し、フランコ政権が終わりを迎えた翌年、ビクトル・エリセの『ミツバチのささやき』から2年後のアナ・トレントが主演した『カラスの飼育』(1976)が、カンヌ映画祭審査員グランプリ、ゴールデン・グローブ賞にもノミネート。「Mamá cumple cien años」(ママは百歳|1979)で米国アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされたことで、世界に名が知られた。作品は物語から音楽映画まで多岐に渡るが、日本で初めて劇場公開されたのは1983年、フラメンコのアントニオ・ガデスとタッグを組み、米アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされた『カルメン』。1991年からオペラや舞台の演出も手がけ、2023年「サウラによるロルカ」舞台稽古中に体調を崩し2月10日、呼吸不全で家族に見守られながら息を引き取った。最後に「充実したいい人生だった」とつぶやいたという。 2023年2月11日のゴヤ賞で栄誉賞を受賞。
(公式サイトより)
カルロス・サウラ監督のお名前を、恥ずかしながら『サウラ家の人々』(2017年、監督:フェリックス・ビスカレット)を観るまで、認識していませんでした。
監督の作品『血の婚礼』(日本公開:1985年1月22日)は観ているのですが、フランコ独裁の時代に犠牲になった詩人ロルカに興味を持っていたから観に行ったものでした。
オペラ「サウラによるロルカ」舞台稽古中に体調を崩して亡くなられたとのこと。この舞台にも興味津々です。
Action Inc.比嘉世津子様のご尽力で、この度、公開されることになったカルロス・サウラ監督の最後の2作品。「過去より未来」(過去を反芻するより、次のことを考えることに時間を使いたい)と言い続けてきたカルロス・サウラ監督に思いを馳せながらご覧いただければと思います。(咲)
情熱の王国 原題:El REY DE TODO EL MUNDO
(C)PIPA FILMS&PACHA INVERSIONES Y PRODUCCIONES AUDIOVISUALES
監督・脚本:カルロス・サウラ
出演:アナ・デ・ラ・レゲラ、マヌエル・ガルシア=ルルフォ、グレタ・エリソンド、イサーク・アラトーレ、イサーク・エルナンデス、マノロ・カルドナ、ダミアン・アルカサル
メキシコ第二の都市、グアダラハラ。
演出家のマヌエルが次に考えている舞台は、ミュージカルを作るためのミュージカル。構想からキャスティング、完成までを描くには、振付師が不可欠だった。彼は元妻であり女優で著名な振付師のサラに助けを求める。ただ、マヌエルが書く脚本の中で、サラは交通事故にあい車椅子になった振付師だ。引き受けたサラが主導するキャスティングでは、何とかオーディションに受かろうとする若者たちの緊張感と競争心、そこから頭角を表す男女3人が生き生きと描かれる。その中の一人、イネスは父親と地元ギャングとの対立を心配しながら稽古に励む。メキシコの過去と現在を繋ぐために、独自の舞台を作ろうとする演出陣。数々の力強い伝統音楽がダンスとコラボレーションする中で、悲劇と虚構と現実が交錯する物語が生まれる。
2021年/ スペイン=メキシコ/DCP/99分/カラー
配給:Action Inc. 配給協力:インターフィルム
http://www.action-inc.co.jp/saura/jounetsunookoku.php#j_story_wrapper
壁は語る 英題:Walls Can Talk
(C)MALVALANDA
監督・出演:カルロス・サウラ
出演:ミケル・バルセロ、ペドロ・サウラ、ホセ・ルイス・アルスアガ、ロベルト・オンタニョン、Suso33、Zeta、Musa71、Cuco、アンナ・ディミトロヴァ
洞窟の壁画からグラフィティをたどる、映画監督カルロス・サウラ最後の旅。
芸術の起源についてカルロス・サウラが、監督と主演を務めながら探求するドキュメンタリー映画。先史時代の洞窟における最初のグラフィック革命から、最も前衛的な都市表現まで、創造的なキャンバスとしての「壁」と芸術との関係を描く。
人類進化の偉大な思想家フアン・ルイス・アルスアガや、現代アートを代表するアーティスト、ミケル・バルセロなど、個性的な人々が同行するパーソナルな旅。自らのことは多く語らないが、芸術に関しては饒舌で、まるで子供のようになるサウラ。アルタミラ洞窟の専門家と共にスペインの遺跡や洞窟をめぐり、人類の進化と共に、人はなぜ壁に描いたのか、を探っていく。そして、その視点は現代の若い世代、グラフィティ・アーティストのZeta、グラフィティ・ライターのMusa71、アーバン・クリエイターのSuso33、アーティストのCucoにも注がれる。サウラ監督自身が彼らに迫り、壁に描くようになった経緯を問いながら、現代と太古の壁画アーティストたちが時空を超えて、繋がっていく。カルロス・サウラ監督、生涯最後の作品。
2022年/スペイン/DCP/75 分/カラー
配給:Action Inc. 配給協力:インターフィルム
http://www.action-inc.co.jp/saura/kabewakataru.php#k_intro_wrapper
VIVA! SAURA 未来を生きるシネアスタ
2023年2月10日、スペインの名匠カルロス・サウラ監督が91歳で亡くなられました。
50を超える作品を撮り続け、ゴヤ賞栄誉賞を受賞する前日のことでした。
この度、カルロス・サウラ監督を追悼し、最後の劇映画であるメキシコで撮影された『情熱の王国』(2021)と、遺作となった監督自らが出演するドキュメンタリー『壁は語る』(2022)の2本が同時公開されます。
公式サイトhttp://www.action-inc.co.jp/saura/
配給:Action Inc. 配給協力:インターフィルム
★2024年6月1日(土)より、ユーロスペースほかにて追悼ロードショー
カルロス・サウラ
本名:カルロス・サウラ・アタレス
生年月日:1932年1月4日 ウエスカ生まれ
没:2023年2月10日 マドリード
4歳の時にスペイン内戦(1936-39)がはじまり、共和国派地域のマドリード、バルセロナ、バレンシアを転々とする。ピアニストの母と画家の兄の影響で芸術に興味を示し、高校の頃から写真、1950年から16mmで映像を撮り始める。1952年、IIEC(現在の国立映画学校)に入学。1958年からIIECで映画美術の教鞭に立つがフランコ政権の検閲に反対して1963年に解任。1958年に短編ドキュメンタリー「Cuenca」(クエンカ)でサンセバスチャン映画祭、短編部門特別賞を受賞。長編デビュー作「Los Golfos」(ならず者たち)は1960年のカンヌ映画祭に正式出品され、1965年、「La Caza」(狩り)でベルリン国際映画祭金熊賞を受賞。その後、ほぼ年に1本のペースで作品を発表し、フランコ政権が終わりを迎えた翌年、ビクトル・エリセの『ミツバチのささやき』から2年後のアナ・トレントが主演した『カラスの飼育』(1976)が、カンヌ映画祭審査員グランプリ、ゴールデン・グローブ賞にもノミネート。「Mamá cumple cien años」(ママは百歳|1979)で米国アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされたことで、世界に名が知られた。作品は物語から音楽映画まで多岐に渡るが、日本で初めて劇場公開されたのは1983年、フラメンコのアントニオ・ガデスとタッグを組み、米アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされた『カルメン』。1991年からオペラや舞台の演出も手がけ、2023年「サウラによるロルカ」舞台稽古中に体調を崩し2月10日、呼吸不全で家族に見守られながら息を引き取った。最後に「充実したいい人生だった」とつぶやいたという。 2023年2月11日のゴヤ賞で栄誉賞を受賞。
(公式サイトより)
カルロス・サウラ監督のお名前を、恥ずかしながら『サウラ家の人々』(2017年、監督:フェリックス・ビスカレット)を観るまで、認識していませんでした。
監督の作品『血の婚礼』(日本公開:1985年1月22日)は観ているのですが、フランコ独裁の時代に犠牲になった詩人ロルカに興味を持っていたから観に行ったものでした。
オペラ「サウラによるロルカ」舞台稽古中に体調を崩して亡くなられたとのこと。この舞台にも興味津々です。
Action Inc.比嘉世津子様のご尽力で、この度、公開されることになったカルロス・サウラ監督の最後の2作品。「過去より未来」(過去を反芻するより、次のことを考えることに時間を使いたい)と言い続けてきたカルロス・サウラ監督に思いを馳せながらご覧いただければと思います。(咲)
情熱の王国 原題:El REY DE TODO EL MUNDO
(C)PIPA FILMS&PACHA INVERSIONES Y PRODUCCIONES AUDIOVISUALES
監督・脚本:カルロス・サウラ
出演:アナ・デ・ラ・レゲラ、マヌエル・ガルシア=ルルフォ、グレタ・エリソンド、イサーク・アラトーレ、イサーク・エルナンデス、マノロ・カルドナ、ダミアン・アルカサル
メキシコ第二の都市、グアダラハラ。
演出家のマヌエルが次に考えている舞台は、ミュージカルを作るためのミュージカル。構想からキャスティング、完成までを描くには、振付師が不可欠だった。彼は元妻であり女優で著名な振付師のサラに助けを求める。ただ、マヌエルが書く脚本の中で、サラは交通事故にあい車椅子になった振付師だ。引き受けたサラが主導するキャスティングでは、何とかオーディションに受かろうとする若者たちの緊張感と競争心、そこから頭角を表す男女3人が生き生きと描かれる。その中の一人、イネスは父親と地元ギャングとの対立を心配しながら稽古に励む。メキシコの過去と現在を繋ぐために、独自の舞台を作ろうとする演出陣。数々の力強い伝統音楽がダンスとコラボレーションする中で、悲劇と虚構と現実が交錯する物語が生まれる。
2021年/ スペイン=メキシコ/DCP/99分/カラー
配給:Action Inc. 配給協力:インターフィルム
http://www.action-inc.co.jp/saura/jounetsunookoku.php#j_story_wrapper
壁は語る 英題:Walls Can Talk
(C)MALVALANDA
監督・出演:カルロス・サウラ
出演:ミケル・バルセロ、ペドロ・サウラ、ホセ・ルイス・アルスアガ、ロベルト・オンタニョン、Suso33、Zeta、Musa71、Cuco、アンナ・ディミトロヴァ
洞窟の壁画からグラフィティをたどる、映画監督カルロス・サウラ最後の旅。
芸術の起源についてカルロス・サウラが、監督と主演を務めながら探求するドキュメンタリー映画。先史時代の洞窟における最初のグラフィック革命から、最も前衛的な都市表現まで、創造的なキャンバスとしての「壁」と芸術との関係を描く。
人類進化の偉大な思想家フアン・ルイス・アルスアガや、現代アートを代表するアーティスト、ミケル・バルセロなど、個性的な人々が同行するパーソナルな旅。自らのことは多く語らないが、芸術に関しては饒舌で、まるで子供のようになるサウラ。アルタミラ洞窟の専門家と共にスペインの遺跡や洞窟をめぐり、人類の進化と共に、人はなぜ壁に描いたのか、を探っていく。そして、その視点は現代の若い世代、グラフィティ・アーティストのZeta、グラフィティ・ライターのMusa71、アーバン・クリエイターのSuso33、アーティストのCucoにも注がれる。サウラ監督自身が彼らに迫り、壁に描くようになった経緯を問いながら、現代と太古の壁画アーティストたちが時空を超えて、繋がっていく。カルロス・サウラ監督、生涯最後の作品。
2022年/スペイン/DCP/75 分/カラー
配給:Action Inc. 配給協力:インターフィルム
http://www.action-inc.co.jp/saura/kabewakataru.php#k_intro_wrapper
2023年11月08日
理想郷(原題:As bestas)
監督:ロドリゴ・ソロゴイェン
脚本:ロドリゴ・ソロゴイェン、イサベル・ペーニャ
撮影:アレハンドロ・デ・パブロ
出演:ドゥニ・メノーシェ(アントワーヌ)、マリナ・フォイス(オルガ)、ルイス・サエラ(シャン)、ディエゴ・アニード(ロレンソ)、マリー・コロン(マリー)
フランス人のアントワーヌとオルガ夫婦はスローライフの夢を抱いて、パリからスペイン ガルシア地方の山村に移住してきた。豊かな自然に包まれた村で羊を飼い、野菜を作りと夢は広がる。しかし住んでみると、近隣の住民たちに溶け込むのは容易ではなかった。村は貧しく、風力発電装置の設置に一縷の望みを持っている。隣家の兄弟は自分たちと違う裕福なアントワーヌたちを嫌う。仲良くなるどころか、兄弟のいやがらせは、次第にエスカレートしていく。
本当にあった事件を元にした作品。社会にある分断の見本のように、あらゆるものが揃っています。まだ来たばかりのころ、隣家の兄が歩いているアントワーヌに「車に乗れ」と声をかけます。ドアに手をかけようとすると前進し、とからかいます。ムッとするアントワーヌに「冗談だ」と笑いますが、悪意に満ちていて不穏な進路が見えるようでした。
あちら側とこちら側に分かれてしまうと互いに知りあい、理解するのが難しくなります。前半は男たちの闘い、後半は女性の闘いです。
夫役ドゥニ・メノーシェは、『ジュリアン』での怖い父親が今も目に浮かびます。妻役のマリナ・フォイスは『シャーク・ド・フランス』の警官、つい先日公開の『私はモーリン・カーニー 正義を殺すのは誰』のCEOとジャンル問わず活躍。(白)
●第35回東京国際映画祭でのタイトルは『ザ・ビースト』。
東京グランプリ、最優秀監督賞、最優秀主演男優賞の主要3部門受賞
・シネマジャーナルHP 特別記事
第35回東京国際映画祭(2022) クロージングセレモニー写真集
『ザ・ビースト』が東京グランプリ・最優秀監督賞・主演男優賞の3冠
http://cineja3filmfestival.seesaa.net/article/494956621.html
2022年/スペイン、フランス/カラー/シネスコ/138分
配給:アンプラグド
(C)Arcadia Motion Pictures, S.L., Caballo Films, S.L., Cronos Entertainment, A.I.E,Le pacte S.A.S.
https://unpfilm.com/risokyo/
★2023年11月3日(金)ロードショー
2023年09月17日
PIGGY ピギー(原題:CERDITA)
監督・脚本:カルロタ・ペレダ
出演:ラウラ・ガラン
カルメン・マチ
リチャード・ホームズ
ピラール・カストロ
スペインの田舎町。肉屋の娘で ティーンエイジャーのサラは、豊満な体型からクラスメイトに「Piggy(子ブタ)」と呼ばれ執拗にイジメられていた。幼馴染までそちらに組みしていて、家族にも言えない。一人で閉じこもっていたが、あまりに暑いのでこっそりプールへ出かけていく。見知らぬ男がプールから出てきて、そこへいじめグループが通りかかった。さんざん囃し立てからかったうえ、サラの着替えと携帯の入ったリュックを持ち去ってしまった。
家までビキニ姿で帰らねばならず、人目を避けて脇道に入ったサラはイジメクループが男に拉致されるのを目撃する。
スペイン発のリベンジホラー。元は短編作品だったのが、映画祭などで好評を博し長編に作り直したもの。主演のラウラ・ガランは舞台俳優で、ティーンではありませんが、コンプレックスで閉じこもるボッチ女子高生を演じて、ゴヤ賞で最優秀新人女優賞を受賞しました。
ところ変わってもイジメのやり方は万国共通のようです。本人は毎日傷つけられ、恐怖で縮こまるしかないのに、イジメる方は笑っていて「ただの遊び、ふざけただけ」と言うだけ。家族に打ち明ける勇気もなかなか出ません。長編になったことでリベンジが叶うや否や?(白)
2022年/スペイン/カラー/シネスコ/99分
配給:シノニム、エクストリーム
https://piggy-movie.com/
★2023年9月22日(金)ロードショー