2026年02月01日
両親が決めたこと 原題:Polvo serán 英題:THEY WILL BE DUST
監督:カルロス・マルセット
脚本:カルロス・マルセット、クララ・ロケ、コーラル・クルス
出演:アンヘラ・モリーナ、アルフレード・カストロ、モニカ・アルミラル・バテット、パトリシア・バルガロ、アルバン・プラド
スペイン、バルセロナ。80歳の舞台女優クラウディア(アンヘラ・モリーナ)は末期がんで錯乱や半身麻痺と自我の喪失が近づくなか、人生の最後は“自分で幕を閉じる”ことを決意する。演出家の夫フラビオ(アルフレード・カストロ)は、愛する妻の願いを知って、自分も一緒に人生を終えることを決める。だが、スペインで安楽死はできるが、デュオ安楽死(★注)はできない。ふたりはデュオ安楽死ができるスイスへ行くことを子供たちに告げる。
舞台女優の母、演出家の父という波乱な人生を送る両親からの最後で最大級のサプライズに3人の子どもたちは戸惑い、反発し、涙する・・・
★デュオ安楽死
夫婦の同時安楽死は"デュオ安楽死" や "ジョイント型"と呼ばれている。
スイス連邦裁判所は〝高齢夫婦のどちらかが終末期に安楽死するとき、そのパートナーは健康であっても共に安楽死することができる。と認めている。
母親の末期がんを機に、同居している末娘のヴィオレッタ。家庭を持ち実家に寄り付かない兄と姉を、母に合わせようと、ヴィオレッタは両親の結婚記念パーティーを企画。やっと3人の子が揃ったところで、両親からの爆弾発言。父親は、まだまだ元気。それが連れ添って旅立つというのですから、子どもとしては納得できません。先立たれるよりは一緒に逝く選択をするほど、妻を愛していることが羨ましくもありました。さて、自分だったら? 独り身ですから、一緒にという選択はできませんが、安楽死が許されるなら、余命宣告を受けた時には、苦しまずに逝くのもいいかなと。(咲)
死ぬまで「女優」だったアンヘラは、この上ない理解者の夫が並走してくれました。夫は妻亡き後の一人の人生など考えられません。これが夫が病を得たのだとしたら、妻は夫を送って一人新しい人生を楽しんだはず。
仕事を続けながら3人の子どもを育てたアンヘラですが、上の二人が寄り付かないのは、彼らには母親の手が十分にかけられなかったからな。子育ては親も慣れがあって、下の子ほど余裕ができたんでしょう。末っ子だけが親身に心配しています。
安楽死を選んで施設に入ってからのやりとりは、なかなか興味深かったです。日本でも『安楽死特区』のような映画ができましたが、欧米の映画と遺族の対応が違います。本作のラストには「ええっ!」とびっくりでした。(白)
2024年/スペイン、イタリア、スイス/英語、スペイン語/106分/16:9
配給:百道浜ピクチャーズ
公式サイト:https://www.m-pictures.net/futarigakimeta/
★2026年2月6日(金)よりシネマート新宿、キネカ大森、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開
2025年12月14日
チャップリン 原題:Chaplin: Spirit of the Tramp
(C)The Caravan Trail, A.I.E, Kwanon Films Limited, and Submarine Sublime 2024
Charlie Chaplin TM (C) Bubbles Incorporated S
監督・脚本:カルメン・チャップリン
出演:マイケル・チャップリン、ジェラルディン・チャップリン、ジョニー・デップ、トニー・ガトリフ、エミール・クストリッツァ、ストーケロ・ローゼンバーグ、リタ・カベルト、ファルキート
ロマの血を引いていることを楽しんでいたチャーリー・チャップリン
家族が語る映画の神様の素顔
ユダヤ人、共産主義者などのレッテルを貼られてきたチャップリンだが、実は自身が「ロマ(ジプシー)」の血を引いていることを誇りに思っていた。笑いや悲しみ、優しさや怒りで世界中の観客の心をつかんだ“放浪紳士チャーリー”はどこから生まれたのか。
チャップリンの足跡を辿るのは息子マイケル・チャップリン。父の名声と親の七光りという重圧に苦しんだマイケルが父子断絶を経て、その関係を見つめ直す。監督を務めたのは、孫カルメン・チャップリン。
チャップリンが、米国を追い出されたことは、知っていましたが、ロマの血を引いていることは、初めて知りました。
イギリスで、ロマの伯母のトレーラハウスで生まれたらしいですが、これは確証なし。チャップリンいわく、8分の1 ロマの血を引いているので、子どもたちは、16分の1と、言われたと、息子のマイケル・チャップリンは語っています。
チャップリン一家が米国を追い出されたのは、マイケルが6歳の時のこと。ロンドンでサヴォイホテルに泊まったのを覚えているそうで、裕福だったことがわかります。
その後、スイスに移り住みますが、両親は米国を追放されたことは何も言わなかったとのこと。家族思いのチャップリンの素顔が垣間見えるマイケルの話に、じ〜んとさせられました。それなのに、16歳の時に家を出て、それきり帰らなかったというマイケル。チャップリンは、どんな思いだったことでしょう。(咲)
2024年/スペイン・ベネルクス・イギリス・フランス/94分/カラー&モノクロ/5.1ch/1.85:1
日本語字幕:渡邉一治
配給:アンプラグド
公式サイトhttps://unpfilm.com/chaplin/
★2025年12月19日(金)から角川シネマ有楽町ほか全国順次公開
2025年09月19日
ムガリッツ(原題:Mugaritz. Sin pan ni postre/英題:MUGARITZ NO BREAD NO DESSERT)
監督:パコ・プラサ
脚本:パコ・プラサ、マパ・パストール
スペイン・バスク地方。ミシュランガイドに「レストランを超えた存在」と評され、2つ星を獲得したガストロノミーの名店<ムガリッツ>がある。もともと<ムガリッツ>の熱心なファンだったパコ・プラサ監督が、ムガリッツの研究開発チームに密着、メニュー開発の舞台裏を追ったドキュメンタリー。
オーナーシェフのアンドニ・L・アドゥリスは、革新的な料理法や「分子ガストロノミー」を先駆けて取り入れ、世界中の料理界に大きな影響を与えた有名な三つ星レストラン<エル・ブジ>など、名だたるレストランで修行後、1998年3月にムガリッツを開店。今や世界中の美食家から羨望の眼差しを受けるムガリッツを育て上げた。
今年のテーマ「目に見えぬ物」にそって、革新的な料理38皿が誕生するまでの舞台裏を追ったドキュメンタリーです。ガストロノミー(食事と文化の関係を考察すること)は、21世紀に入る頃からバスク地方を中心に注目を浴び始めました。
『REC』シリーズなどのホラー作品で知られたパコ・プラサ監督ですが、もともと<ムガリッツ>の熱心なファンだったそうです。厨房やスタッフ会議、試食会にもカメラが入り、その創造の秘密を解き明かすべく迫りました。
オーナーシェフのアンドニ・L・アドゥリスは開発チームと、気になる単語をいくつも書きだします。創造性や意外性に富んでいるかなどの大きなカテゴリーを作り、スタッフたちは思い思いに新しいメニューを考え、みんなで意見を出し合ってヒントにし、さらに研究します。納豆、茶道、昆布茶とか日本の単語が聞こえてきたり、日本から荷物が届いたりしていました。
調理の様子はまるで科学実験のようです。選び抜いた食材にいくつもの手間と時間をかけて、革新的な料理を生み出していきます。試行錯誤の末、新しく決まったメニューは38種類。試食しているのはきっと美食家の面々なのでしょう。一皿ずつサーブされるたびに驚き、ためつすがめつ見て、味わってまた驚き…コメントも「美味しい!」というばかりではありません。困惑する方もいます。私には縁がなさそうだけれど、すべて平らげて楽しかった~と言ってみたいなあ。(白)
2024年/スペイン/カラー/96分/字幕翻訳:比嘉世津子
提供:ティー ワイ リミテッド
配給:ギャガ
https://gaga.ne.jp/mugaritzmovie/
☆第72回サン・セバスティアン国際映画祭カリナリーシネマ部門・ベストフィルムを受賞
★2025 年9月19日(金)よりシネスイッチ銀座ほか全国順次公開
2025年07月27日
入国審査(原題:UPON ENTRY)
監督・脚本:アレハンドロ・ロハス、フアン・セバスティアン・バスケス
撮影:フアン・セバスティアン・バスケス
音楽:ラケル・トラス
出演:アルベルト・アンマン(ディエゴ)、ブルーナ・クシ(エレナ)、ローラ・ゴメス(バスケス審査官)、ベン・テンプル(バレット審査官)
移住のために、バルセロナからNYへと降り立った、ディエゴとエレナ。エレナがグリーンカードの抽選で移民ビザに当選、事実婚のパートナーであるディエゴと共に、憧れの新天地で幸せな暮らしを夢見ていた。ところが入国審査で状況は一転。パスポートを確認した職員になぜか別室へと連れて行かれる。「入国の目的は?」密室ではじまる問答無用の尋問。やがて、ある質問をきっかけにエレナはディエゴに疑念を抱き始める──。
低予算(65万ドル)&短期間(17日間)で撮影した、それも監督デビュー作!!
各地の映画賞を席巻しました。新生活にわくわくするカップルが飛行機で飛び立ったものの、ニューヨークの玄関口で止められてしまいます。なんで!? 77分間、観客は二人と一緒にドキドキとハラハラすることになります。こんな目に遭いたくない・・・
このストーリーテリングの上手さよ、新人監督?と資料を見直しました。お二人とも長編作品監督こそ初ですが、数多の制作に携わり、ロハス監督は映画ジャーナリストでもありました。バスケス監督は撮影分野から脚本、出演へと足場を広げ、シッチェス映画祭の審査員でもあります。観客としての目も肥えているのでしょう。緊張が続いてのあのラストにやられました。濃密な77分間です。お楽しみに!(白)
別室に呼ばれて、あれこれ質問攻めにあう二人。果たして、入国できるの?と、観ている私も緊張。事実婚の仲ながら、へ~そうだったの?と、知らなかった相手の過去も出てきて、あらあらと。
緊張の77分が終わって、観た人と一緒に絶対語りたくなる物語。
ロハス監督自身の故郷ベネズエラからスペインに移住した際に、実際に体験したことからインスピレーションを受けて作ったとのこと。私自身、別室に呼ばれての尋問ではないけれど、イスラエルのエルアル航空のチャーター便で出国前に、しつこく質問攻めにあったのを思い出します。パスポートには中東の国の出入国記録がたくさんあったので、根掘り葉掘り、何しに行った? 知り合いは?と。途中で係官が交代して、また同じような質問をされました。整合性のない人物は怪しまれる??? 移民受け入れに厳しくなったトランプ政権。アメリカに行きたいとは思わないけれど、移住したい人にとっては厳しい入国審査が待ってそうですね。(咲)
2024年/スペイン/カラー/77分
配給:松竹
(C)2022 ZABRISKIE FILMS SL BASQUE FILM SERVICES SL SYGNATIA SL UPON ENTRY AIE
https://movies.shochiku.co.jp/uponentry/
★2025年8月1日(金)全国ロードショー
2025年07月12日
マドリード王立劇場 シネマ・ステージ 『エフゲニ・オネーギン』&『アドリアーナ・ルクヴルール』
マドリード王立劇場 シネマ・ステージ
スペインの首都マドリードにある「マドリード王立劇場(テアトロ・レアル)」。同劇場は荘厳な佇まいと圧倒的な芸術性、最新の舞台設備を有し、文化遺産にも登録されている権威ある歌劇場です。2021年、世界最高のオペラ劇場に贈られる「International Opera Award 2021(国際オペラ賞)」を受賞。そんな由緒ある「テアトロ・レアル」で上演された名作オペラが、日本の映画館で堪能できる特別上映シリーズ。
オペラの美しい歌声、舞台の一瞬一瞬を切り取った臨場感ある演出をどの席からでも余すことなく味わえるのは映画館ならでは。まるで「テアトロ・レアル」で生のオペラを鑑賞しているかのような感覚です。記念すべき第1弾は、報われない愛をテーマにしたピョートル・チャイコフスキーの傑作『エフゲニ・オネーギン』と、実在した女優アドリアーナ・ルクヴルールの華麗で苛烈な愛と人生を描いた悲劇『アドリアーナ・ルクヴルール』。映像の完成度は高く、“舞台芸術と映画の融合”と呼ぶにふさわしい作品です。映画とは異なる“生の芸術”がもたらす、心揺さぶる新たな感動体験。
●『エフゲニ・オネーギン』 原題:EUGUENE ONEGIN
上映期間:2025年7月18日(金)~24日(木)
●『アドリアーナ・ルクヴルール』 原題:ADRIANA LECOUVREUR
上映期間:2025年7月25日(金)~31日(木)
上映劇場:TOHOシネマズ日本橋/TOHOシネマズ流山おおたかの森/TOHOシネマズららぽーと横浜/大阪ステーションシティシネマ/TOHOシネマズ二条
チケット料金:一般2,500円/学生・HC割引2,000円(税込)
企画・提供:ラテンビート
後援:スペイン大使館、インスティトゥト・セルバンテス東京
配給:ラテンビート、ライトフィルム
公式サイト:http://www.lbff.jp
◆上映作品紹介
●『エフゲニ・オネーギン』 原題:EUGUENE ONEGIN
音楽監督:グスタボ・ヒメノ コルニリオス・ミハイリディス
舞台監督:クリストフ・ロイ
原作:アレクサンドル・プーシキン
キャスト:カタリナ・ダライマン、クリスティーナ・ムヒタリアン、ヴィクトリア・カルカチェワ、エレナ・ジリオ、イウリイ・サモイロフ
(C)Javier del Real
若者たちの葛藤を叙情豊かな音楽で綴る
ロシアの田舎と上流社会を舞台に、無垢な少女タチアナと、虚無な青年オネーギンの悲劇的な恋と心の綾を描く。
悲恋をテーマにした、ピョートル・チャイコフスキーの傑作。1879年、モスクワ初演。テアトロ・レアルでは2010年に続き、2025年に原作者アレクサンドル・プーシキンの生誕225周年を記念して上演された。オスロのデン・ノルスケ・オペラ劇場とバルセロナのグラン・テアトロ・デル・リセウ劇場の共同制作。
2025年/スペイン/156分
テアトロ・レアル上演期間:2025年1月22日~2月18日
ロシアの田舎町の大きなお屋敷で、使用人があちこちで働く姿に始まり、邸宅で繰り広げられる宴には大勢の人々が集い、総出演者は果たして何人? 舞台いっぱいの人々に圧倒されました。
一方、青年オネーギンの秘めた恋の行方は、しっとりと描かれていました。
まるで劇場にいるかのような臨場感ですが、この舞台をテアトロ・レアルで実際に観ることができれば!と思わずにはいられませんでした。(咲)
●『アドリアーナ・ルクヴルール』 原題:ADRIANA LECOUVREUR
音楽監督:ニコラ・ルイゾッティ
舞台監督:デビッド・マクヴィカー
原作:エルネスト・ルグーヴェ ウジェーヌ・スクリーブ
キャスト:エルモネラ・ジャホ、マリア・アグレスタ ブライアン・ジャグデ、マシュー・ポレンザニ マウリツィオ・ムラロ エリーナ・ガランチャ、クセニア・ドゥドニコワ、テレサ・ロマーノ
(C)Javier del Real
美しい愛の歌でつむぐ、パリ社交界に生きた女優の生涯
18世紀のパリを舞台に、実在したコメディ・フランセーズの花形女優アドリアーナ・ルクヴルールの華麗で苛烈な愛と人生を綴る。
フランチェスコ・チレアによる抒情的レパートリーで、1902年にミラノで初演。本公演は、テアトロ・レアルでの初上演で、スペイン出身の三大テノール、ホセ・カレラスが1974年に同郷のソプラノ、モンセラート・カバリェと共演し、大きな反響を呼んだ伝説的舞台から50周年を記念して企画された。演出は、オペラと演劇の分野で幅広く活躍するデビッド・マクヴィカーが務めている。
2024年/スペイン/139分
テアトロ・レアル上演期間:2024年9月23日~10月11日
◆マドリード王立劇場(テアトロ・レアル/Teatro Real de Madrid)とは?
イサベル1世の治世下の1850年に、建築家アントニオ・ロペス・アグアドが?がけ開場。その後、一時期は閉鎖されましたが、1966年に王立高等音楽院および演劇芸術学校の音楽ホール兼校舎として使用。数年間にわたる改修工事を経て、1997年にオペラハウスとして再オープンしました。1977年にはスペインの文化遺産に登録されています。同劇場の最大の特徴は、最大1958席を誇るメインホールと、1,472平方メートルのステージ・ボックス。舞台やオーケストラ・ピットに合わせて舞台装置を変更可能で、照明・音響の組み合わせも多様につくり出せます。テアトロ・レアルでは、世界中で評されるさまざまな劇場と共同でオペラを制作しています。2015年には100万ユーロを投資し、同劇場に録音スタジオを設置。著名な映画監督や演出家によるオペラからバレエまで数々の舞台を収録し、世界各国の映画館で上映しています。
公式サイト:https://www.teatroreal.es/es


