2019年03月01日

ウトヤ島、7月22日(原題:Utoya 22. juli)

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監督:エリック・ポッペ

脚本:シブ・ラジェンドラム・エリアセン、アンナ・バッヘ=ビーク

撮影:マルティン・オッテルベック

出演:アンドレア・バーンツェン(カヤ)、エリ・リアノン・ミュラー・オズボーン(エミリエ)、ジェニ・スベネビク(オーダ)、アレクサンデル・ホルメン(マグヌス)、インゲボルグ・エネス(クリスティーネ)


7月22日、ノルウェーの首都オスロ。近郊のウトヤ島では労働党青年部のキャンプが始まっていた。カヤは妹のエミリエと一緒に参加している。心配する母親に「世界一安全な島」と返し、エミリエの面倒を見ることを約束した。テントにエミリエを残して友人たちと談笑していると、突然銃声が聞こえ、血相を変えた男女が逃げてくる。急いでテントに戻るがエミリエはもういなかった。オスロ市内では爆発があったと知ってますますパニックになる。カヤたちは何が起きているのかわからないまま逃げ出し、散り散りに隠れ場所を探す。警察に電話をするが、島まで救援に来るのには時間がかかる。その間にも銃声と悲鳴が聞こえている。


2011年に本当にあった事件をもとに作られたフィクションです。冒頭は集まってきた若者たちのシーンが続き、彼らの夢や希望が語られます。その後、最初の銃声が聞こえてから72分間ワンカットで、実際にこの事件が収束するまでと同じ時間を映しています。この間、観客はカヤと一緒に逃げ惑い、エミリエを探し、助けてやれなかった子どもの死に泣くことになります。犯人の姿ははっきり見えず、音楽もナレーションもありません。カメラがアップで映し出す表情、息遣い、足音などで緊張感が途切れず、テロ事件を体感させます。映画が終わったときには大きく息をつきました。

犯人はたった一人の極右思想の男。周到な準備をして、オスロ市内で市庁舎を爆破した後、ウトヤ島に移動して無差別銃乱射事件を起こしています。オスロでは8名、ウトヤ島では69名もが亡くなっています。

エリック・ポッペ監督はかつて戦場カメラマンとして活躍した人、ジュリエット・ビノシュが報道写真家を演じた『おやすみなさいを言いたくて』にはご自身の体験が反映されているとか。このウトヤ島事件の切迫した臨場感にも色濃く出ています。(白)

キャンプ場に突然鳴り響く銃声。悲鳴とともに走り込んでくる人々。何が起きたのか。事件? 訓練? 状況がつかめないまま逃げ惑う。緊迫感が半端ない。2011年ノルウェーで起きた連続テロ事件を被害者視点で描く。難を逃れた生存者も忌まわしい記憶に苦しんでいるに違いない。(堀)

2018年/ノルウェー/カラー/シネスコ/97分

配給:東京テアトル

Copyright (C) 2018 Paradox


★2019年3月8日(金)ロードショー
posted by shiraishi at 15:09| Comment(0) | 北欧 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年02月15日

THE GUILTY/ギルティ (原題:Den skyldige)

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監督:グスタフ・モーラー
脚本:グスタフ・モーラー、エミール・ナイガード・アルベルトセン
出演:ヤコブ・セーダーグレン(アスガー・ホルム)、イェシカ・ディナウエ(イーベン)、ヨハン・オルセン(ミケル)、オマール・シャガウィーラ(シッド)

警察官のアスガー・ホルムは、ある事件をきっかけに一戦を退き、今は緊急通報司令室のオペレーターを勤めている。交通事故の緊急搬送や、車の手配など瑣末な事件にうんざりしていた。そこへ1本の通報が入った。「誘拐されて車でどこかへ連れて行かれている」という女性からの電話だった。犯人に気づかれることなく、女性の乗っている車を特定しなければならない。事件を解決するための手がかりは、電話を握り締めているだろう女性の声と、かすかに聞こえてくる”音”だけなのだ。

「おお、こう来ましたか!」と思わず拍手しそうになった作品。すぐハリウッドリメイクが決まったというのが納得です。ワンシチュエーション+電話というと、トム・ハーディが一人で演じきった『オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分』が浮かびます。状況は誘拐事件のこちらのほうが切迫しておりますが、グスタフ・モーラー監督も意識していたでしょうか?(白)

映し出されるのは、緊急通報司令室と、主人公のオペレーターの男のみ。緊急事態を告げる女性の声と、その背景の音だけで、オペレーターの男も、映画を観ている私たちも、事態を把握することになります。凄惨な場面は映らないのに、まるで目の前で残酷な事件が繰り広げられているかのよう。主人公の男も、私たちも、電話から聴こえてくる声と音だけで現場を想像してしまいます。
製作費をそれほどかけなくても、これほどの映画が作れると驚かされました。そして、思いもかけない結末にも!(咲)


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◆制作秘話◆ (配給・宣伝のファントム・フィルムさんより)
監督は「新しい形式を試したかった。制限された枠内でクリエイティブに制作したいという欲望を抱いていた」インタビューで答えている。「観る人に挑み、驚かせるようなジャンル映画を作りたい」という思いで作られた本作は、見事に観るものを今までの映画で体験したことない“新感覚”の世界に誘ってくれる傑作に仕上がった。そしてその稀有な体験を生み出すのは徹底的にこだわり抜かれた“音”である。主人公しか映し出されないにも関わらず、電話先の女性の声や事件現場が観る者の頭に鮮明に浮かび上がってくる。その秘訣はキャスティングにあった。本作で誘拐された女性を演じるイェシカ・ディナウエは、声でのみ出演している。そのため、監督はあえて彼女の顔を見ずに、音声ファイルだけを聞いてブラインドオーディションを行ったという。

このオーディションについて、監督はこうインタビューに答えている「観客にそれぞれのイメージを思い浮かべてもらい、一緒に作品を作り上げていくというのがこの映画の主旨だ。どの作品でもそうだが、枠の外側にあるものを(=作品の中で直接語っていない)観客に思い浮かべてもらうというのが最も重要だと思うんだ。だからサウンドデザインや声だけで出演している役者も大事だった。役者に関しては、その人物を語れる独特の声を持った役者を求めていたから、ブラインド・オーディションを行ったんだ。キャスティング会社があるシーンを役者に演じさせ、僕はその音声だけをもらった。彼らの見た目はもちろん、名前も有名な役者なのかも知らされず、声だけで判断したのさ。色々聞いていくうちに、どのような声であれば観客の想像力をかき立てられるかが明確に分かってきた。」さらに、その時を思い出して「彼らはオーディションをした役者の中でも、とても特徴的な声だったのだ。」と監督は振り返る。異例のオーディション方法で見出された彼らは、劇中でも一度聞いたら脳裏から離れない特徴的な声による、見事な熱演を見せている。

 このような一風変わった方法をとった理由を監督は、「主人公と観客の目線を合わせ、距離をできるだけ縮めたかったから」と語っている。キャスティング時点から既に“音と声だけしかない”という本作の設定にこだわったことが伺える。さらに、本作において徹底して追求されたリアリティは、“電話からの音と声”はもちろんのこと、映像にも現れている。監督はあえてロングテイクを多用することで、撮影現場で起こる些細なミスも映画の中に取り込むという手法をとっていた。
加えて、主演のヤコブ・セーダーグレンには、「作品の主旨やリサーチ結果を共有し、キャラクターの背景などを話し合った上で、さらに脚本を一単語ずつ見ていき、なぜそのようなことを言うのか細かく分析していった。また、リハーサルは一切行わなかった。誘拐された女性と初めてセリフを合わせるのは、そのシーンを撮影する時だった。その新鮮さを求めていたから、事前に読み合わせはしなかったんだ。」と監督は答え、首尾一貫した本作のテーマへの徹底ぶりを語っていた。

 これらのこだわりが、サンダンス映画祭で大絶賛され、異例のスピードで主演ジェイク・ギレンホールでハリウッドリメイクまで決定した傑作『THE GUILTY/ギルティ』を生み出したのです。  


2018年/デンマーク/カラー/シネスコ/88分
配給:ファントム・フィルム
(C)2018 NORDISK FILM PRODUCTION A/S
http://guilty-movie.jp/
★2019年2月22日(金)新宿武蔵野館/ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開





posted by shiraishi at 20:46| Comment(0) | 北欧 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする