2024年01月08日
弟は僕のヒーロー 原題:Mio fratello rincorre i dinosauri
監督:ステファノ・チパーニ
出演:アレッサンドロ・ガスマン、イザベラ・ラゴネーゼ、ロッシ・デ・パルマ、フランチェスコ・ゲギ、ロレンツォ・シスト、ロベルト・ノッキ、アリアンナ・ベケローニ
5歳のジャックは、両親から弟が出来ると聞いて大喜び。 姉妹二人にいつも負かされていたから、これで対等だと! 家族皆でジョーという名前(愛称)も決める。ところが生まれてきたジョーはダウン症。両親は子どもたちに弟ジョーは「特別な子」と伝える。幼いジャックは、ジョーがスーパーヒーローだと思っていたが、やがて「特別」の意味を悟り、ジャックはだんだん弟の存在を隠すようになる。高校生になり、好きな女の子もいる場で、弟について取り返しのつかない嘘をついてしまう。さらに、友人が弟のために作ってくれたYouTubeを削除し、ネオナチの仕業だと噂を広める・・・
イタリアに住む高校生のジャコモ・マッツァリオールが、2015年3月21日「世界ダウン症の日」に合わせて、ダウン症の弟ジョーを主人公に一緒に撮影した5分のショートムービー『ザ・シンプル・インタビュー』をYouTubeに公開。瞬く間にイタリア国内外で60万回を超えて再生され、大手出版社の目に留まり、ジャコモは弟との物語を執筆。本作は、2016年に出版された小説「弟は僕のヒーロー(原題:Mio fratello rincorre i dinosauri)」の待望の映画化。ジャコモは、映画の脚本に携わっています。 (ジャコモさん、イケメンです! 下記の動画をご覧ください。)
『弟は僕のヒーロー』主人公のモデル!原作&脚本家ジャコモ・マッツァリオールメッセージ動画
「弟は僕のヒーロー」
著/ジャコモ・マッツァリオール 訳/関口英子
装画:ヨシタケシンスケ
発行:小学館文庫(2023年12月6日発売)
https://www.shogakukan.co.jp/books/09407285
ジャックがついた大きな嘘には脚色もあるけれど、ほとんどが原作者ジャコモ自身の経験に基づく実話。自由奔放で時に問題を起こすジョーに煩わしくなる気持ちも正直に描いています。両親は、ジャックが嘘をついたことを「親だから許す」と言います。両親がいなくなってからのジョーが心配だというジャックに、両親は「あなたたちがいる」と信頼しています。ジャックの心配は、それよりも、ダウン症のジョーが先に死んでしまうのではということに、ほろっとさせられました。こうして家族皆がジョーを支えているのですが、医師は「妊娠中に検査してダウン症とわかれば、別の選択もできたのに」と両親に伝えています。障がいを持つ子を育てるのは大変だけど、「別の選択」をするのも勇気のいること。
本作では、家族や叔母が、ジョーを特別視しないで、いつも明るく見守っている姿に、爽やかな気持ちになりました。(咲)
2019年/イタリア、スペイン/イタリア語/102分/カラー/2.39:1/5.1ch
配給:ミモザフィルムズ
公式サイト:https://mimosafilms.com/hero/
★2024年1月12日(金)シネスイッチ銀座、新宿シネマカリテ、YEBISU GARDEN CINEMA、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開
2023年11月08日
蟻の王(原題:Il signore delle formiche)
監督・脚本:ジャンニ・アメリオ
脚本:エドアルド・ペティ、フェデリコ・ファバ
撮影:ルアン・アメリオ・ウイカイ
美術:マルタ・マッフッチ
編集:シモーナ・パッジ
出演:ルイジ・ロ・カーショ(アルド・フライバンティ)、エリオ・ジェルマーノ(エンニオ)、レオナルド・マルテーゼ(エットレ)、サラ・セラヨッコ(グラツィエラ)
1960年代のイタリア。劇作家で詩人、蟻の研究者のアルド・フライバンティは芸術サークルを主宰している。若いエットレは博識のアルドを尊敬し、足しげく通ってきた。恋に落ちた二人はローマで同棲生活を送るが、当時同性愛は許されなかった。エットレの母親は息子をアルドから引き離し、矯正施設へ入れる。若者相手の警察に通報されたアルドは「教唆罪」で逮捕、罪を問われることになった。イタリア共産党機関紙「ウニタ」の記者エンニオは疑問を感じ、法廷を取材のため傍聴する。
「同性愛はない、したがって法律もない」とされていたムッソリーニの独裁政権時代。「教唆罪」は文字通り「そそのかして」罪を犯させるということ。
根強い偏見・差別はいとも簡単に暴力に変わります。幸せに暮らしていたエットレは、ベッドに縛り付けられ、電気ショックの「治療」を施されます。キラキラした青年だったエットレが、見る影もなく衰えた姿で証言台に立つシーンに胸打たれます。レオナルド・マルテーゼが鮮烈。『輝ける青春』(2003)を始め、名作に出演してきたルイジ・ロ・カーショがアルド。
なぜ『蟻の王』なのか、予告編にもチラッとヒントがありました。(白)
2022年/イタリア/カラー/ビスタ/140分
配給:ザジフィルムズ
© Kavac Srl / Ibc Movie/ Tender Stories/ (2022)
HP:http://www.zaziefilms.com/arinoo/
★2023年11月10日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMA、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開!
2023年10月01日
旅するローマ教皇 原題:In Viaggio
脚本・監督:ジャンフランコ・ロージ(『ローマ環状線、めぐりゆく人生たち』『海は燃えている~イタリア最南端の小さな島~』『国境の夜想曲』)
第266代ローマ教皇フランシスコ
本名:ホルヘ・マリオ・ベルゴリオ
1936年12月17日、イタリアからの移民の子として、アルゼンチンのブエノスアイレスで生まれる。
教皇フランシスコは 9年で37回 旅に出た。
53か国を歴訪し 重要な問題について発言した。
連帯と尊厳 貧困と難民を語り 戦争を非難した。
本作は2013年のイタリア、ランペドゥーサ島から始まり、2022年の新型コロナウイルスのパンデミック下のマルタの訪問で終わる。難民問題、紛争に苦しむ中東やアフリカ、アメリカでは平和について語り、世界で唯一の被爆国である日本では黙とうを捧げる。森林火災、台風など自然災害を受けた土地を訪れ環境問題を語り、イスラム教や正教会の指導者と会見し融和を訴える。カトリック教会で起きた性的虐待については謝罪する・・・。
ローマ教皇と共に世界各地を巡り、様々な問題を知る83分。
印象深い言葉や場面がいくつもあります。イスラエルを訪れた時には、上空から見える分離壁と入植地に圧倒され、パレスチナ側で高く立ちはだかる分離壁に手を置き祈る姿にじ~んとさせられました。アルメニアで、1915年に起きたアルメニア人虐殺について語ったことから、トルコのエルドアン大統領との間に気まずい沈黙の時が流れます。
2019年のアラブ首長国連邦訪問は、ローマ教皇として初めてのイスラーム発祥の地であるアラビア半島入り。2021年のイラクでは、シーア派最高権威シスタニ師を訪問しますが、ここでも沈黙の時。こうした他宗教との対話を積極的にはかる姿を、他者とは融和をはかろうとしない人たちに見てほしいものです。(咲)
世界中を旅するローマ教皇を通して、世界で今何が起きているのかを知り、旅を通して見えてくる世界の痛み、未来への希望。「戦争は狂気です 貪欲と非寛容 そして権力欲は戦争を決断させる動機になります。戦争は貧困しか生みません。兵器は死そのものです。共に未来を築かなければ私たちに未来はないのです。夢を見続けましょう」と語る教皇。フランシスコ教皇の言葉は現在の世界情勢を映し出し、私たちの心を揺さぶる(暁)。
第79回ヴェネチア国際映画祭 アウト・オブ・コンペティション部門 正式出品
2 0 2 2 年/イタリア/カラー/ 1 :1 . 8 5/5.1 c h /8 3 分/イタリア語、スペイン語、英語
日本語字幕:鈴木昭裕
資料監修:土肥秀行
カトリック中央協議会 広報推薦
配給:ビターズ・エンド
公式サイト:https://www.bitters.co.jp/tabisuru/
★2023年10月6日(金)よりBunkamuraル・シネマ渋谷宮下、新宿武蔵野館ほかで全国ロードショー
2023年08月26日
私たちの声 原題:Tell It Like a Woman
非営利映画製作会社【We Do It Together(WDIT)】の企画により、世界の映画業界で活躍する女性監督と女優が集結し製作された、7つのショートストーリー。
We Do It Together(WDIT)とは?
「女性に関する、女性による、みんなのために作られた(about women, by women, created for everyone)」メディア・コンテンツや映画の製作を通して、社会の中でジェンダーの平等を作るという目的を持つ、非営利の映画製作会社。2015年に、監督・プロデューサーであるキアラ・ティレシによって設立され、2016年に国連でスタートを切る。WDITが掲げる目標は、業界内で男女共に働き、メディアや映画で描かれる女性の在り方を変えていくこと。かつて男社会だった業界で難しい立場にある女性たちをサポートするためのプロジェクトを企画、発信している。
1.『ペプシとキム』 原題:Pepcy & Kim
監督:タラジ・P・ヘンソン
出演:ジェニファー・ハドソン
薬物使用で逮捕されたキムは、幼い娘に会いたい一心で、薬物中毒を克服するためのリハビリを受ける。リハビリに取り組むうちに、キムの壮絶な過去とその過程で生まれた”ペプシ”という、もう一人の人格が露わになっていく。
Time for Change Foundationを立ち上げたKim Carterさんの実話をもとにした物語。最後に、現在のキムさんが登場。
2、『無限の思いやり』 原題:Elbows Deep
監督:キャサリン・ハードウィック(『サーティーン あの頃欲しかった愛のこと』)
出演:マーシャ・ゲイ・ハーデン、カーラ・デルヴィーニュ
コロナ禍でロックダウンされたロサンゼルスで、休業に追い込まれたホテルの客室を路上生活者のシェルターにして感染拡大を防ぐ<プロジェクト・ルームキー>が発足。プロジェクトの担当医スーザンは、皆から疎まれている若い女性ホームレス、ヴァルの世話を頼まれる。食べ散らかしたごみを片付け、何枚も重ね着している衣服を脱がしていく。
最後に医師スーザン本人の姿が映し出される。
3.『帰郷』 原題:Lagonegro
監督:ルシア・プエンソ
出演:エヴァ・ロンゴリア
ロンドンで建築家として活躍するアナは、妹が亡くなりイタリアの美しい島に帰郷する。問題を抱えていた家族と疎遠だったアナは、帰郷して初めて妹に幼い娘レナがいることを知る。唯一の血縁であるアナがレナを引き取るべきだと言われる。自分は島を出て、子どもも作らなかったのにと理不尽な思いが募る・・・
4.『私の一週間』 英題:A Week In My Life
監督:呉 美保(『きみはいい子』)
出演:杏
シングルマザーのユキは、アヤとトワの2人を育てるために、毎日休みなく働く。
朝食を作り、洗濯をし、掃除機をかけ、アヤを小学校へ送り出した後にトワを保育園へ送り届け、経営するお弁当屋に。夕方、子どもたちを迎え、習い事に連れて行く。夕食が終わると、子どもたちをお風呂に入れ寝かしつけ、新しいお弁当のメニューを考え、日が変わった頃に眠りにつく・・・
5.『声なきサイン』 原題:Unspoken
監督:マリア・ソーレ・トニャッツィ『はじまりは5つ星ホテルから』
出演:マルゲリータ・ブイ
獣医として忙しい毎日を送るダイアナ。ある夜勤の日、娘と映画を見る約束を忘れて落ち込んでいたダイアナのもとに、若い夫婦が足を怪我した犬を連れてくる。応急処置を施すが、ダイアナは怯えるような目で何かを訴えようとしている妻の姿に気づく。夫から暴力を受けていることがわかり、ダイアナは妻を保護する。
6.『シェアライド』 原題:Sharing A Ride
監督:リーナ・ヤーダヴ
出演:ジャクリーン・フェルナンデス
インドのムンバイで形成外科医として成功を収めている女性ディヴィヤ。ある雨の夜、男を振り切って乗ったオートリキシャは珍しく女性の運転手。この先で予約の客を乗せると言われ、相乗りを了承する。派手な服を着たトランスジェンダーの女性を連れた男が乗ってくる。しばらくして、トランスジェンダーの女性に差別的な視線を向けタクシーを下りてしまう。翌日の昼間、その⼥性が通りの真ん中で婦人警官として交通整理をしている姿を見る・・・
7.『アリア』 原題:.ARIA
監督:ルチア・ブルゲローニ、シルヴィア・カロッビオ
黒くて小さな生物・アリアは狭く暗い部屋の中で毎日女性としての振る舞いを学んでいる。当たり前のように女性として行動するアリアだが、ある日、突然部屋の壁に穴が空き、そこから差し込む暖かな光によって、アリアは自我に目覚めていく・・・
薬物依存、ホームレス、子どもを作らなかった女性、シングルマザー、DVに苦しむ女性、トランスジェンダー、自我に目覚める女性と、テーマは世界の女性たちが抱えている普遍的な問題ばかり。
一番印象に残ったのは、インドのムンバイを舞台にした『シェアライド』。 女医のディヴィヤは男をモノともせず堂々とし、オートリキシャの女性運転手も「SNSでいいね!が何万もついてるのよ」とカッコいい。男性として生を受けたトランスジェンダーも、夜は男の相手をし、昼間は警官。なんという生き様でしょう! (咲)
主題歌「Applause」は、第95回アカデミー賞歌曲賞にノミネート。
アメリカ音楽界のヒットメーカーで、2001年にソングライターの殿堂入りを果たしたダイアン・ウォーレンが作詞・作曲を務め、歌手/女優としてマルチに活躍するソフィア・カーソンが歌唱を担当している。
2022 年/イタリア、インド、アメリカ、日本/英語、イタリア語、日本語、ヒンディー語/112 分/カラー
配給:ショーゲート
公式サイト:http://watashitachinokoe.jp/
★2023年9月1日(金)、新宿ピカデリーほか 全国ロードショー
2023年06月18日
遺灰は語る 原題:Leonora addio
監督・脚本:パオロ・タヴィアーニ
出演:ファブリツィオ・フェッラカーネ、マッテオ・ピッティルーティ、ロベルト・エルリツカ(声)
1936年、ノーベル文学賞受賞作家のピランデッロが亡くなり、「遺灰は故郷シチリアに」と遺言を残すが、時の独裁者ムッソリーニは、その遺灰を自分の名誉に利用しようとローマに留め置いた。戦後、ようやく遺灰は故郷シチリアに帰ることになり、シチリアのアグリジェント市から特使がやって来る。遺灰をギリシア式の壺に移し、木箱に入れしっかり保護する。米軍の飛行機に乗せようとするが、遺灰との同乗は不吉だと拒否され、列車で運ぶことにする・・・
ギリシアの壺に入れられた遺灰が巡る運命はモノクロで描かれ、エピローグの短編「釘」の部分はカラー。味わい深く、ほのかなユーモアもある1作。
これまで兄ヴィットリオとともに〈タヴィアーニ兄弟〉として、『父/パードレ・パドローネ』(1977年)『カオス・シチリア物語』(1984年)など数々の名作を製作。2018年4月、兄ヴィットリオが88歳で死去。本作が、現在91歳の弟パオロが一人で発表した初めての作品。実は、『カオス・シチリア物語』を撮った折、最後に「ピランデッロの灰」のエピソードを入れたかったけれど予算が足りず諦めたとのこと。冒頭に「ヴィットリオに捧ぐ」と掲げられています。
モノクロームで遺灰の旅がしっとりと描かれたあとに、鮮やかなカラーで描かれる短編「釘」は、事情を知らなかったので、ちょっと唐突な感じがしました。ピランデッロが死の20日前に書いた小説をもとに脚色したもの。シチリアからニューヨークのブルックリンに移民した少年が、ある日拾った釘で少女を殺してしまいます。警察の取り調べに「それが定めだから」としか言わない少年。一生、少女のことを忘れないという少年。映画は、少女のお墓の前に佇む白髪の男の姿で終わります。ピランデッロは、どんな思いでこの物語を綴ったのでしょうか・・・ そして、パオロ・タヴィアーニ監督の作家への思いは? (咲)
パオロ・タヴィアーニ Paolo Taviani
2023年5月2日、イタリア映画祭のオープニング作品として『遺灰は語る』が上映され、上映後にオンラインでパオロ・タヴィアーニ監督のトークが予定されていて、楽しみに会場に駆け付けたのですが、風邪を引かれ体調がすぐれないとのことで直前に中止になりました。
公式サイトの監督インタビューを、ぜひお読みください。
https://moviola.jp/ihai/#director_wrapper
◆公開初日にパオロ・タヴィアーニ監督オンラインQ&Aが行われます。
日時:6月23日(金)18:30の回上映後
会場:新宿武蔵野館
座席のオンライン予約
https://www1.musashino-ticket.jp/shinjuku/schedule/index.php
2022年/イタリア/90分/モノクロ&カラー/PG12
字幕:磯尚太郎、字幕監修:関口英子
配給:ムヴィオラ
後援:イタリア大使館 特別協力:イタリア文化会館
公式サイト:https://moviola.jp/ihai/
★2023年6月23日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次公開


