2021年08月29日

ミス・マルクス(原題:Miss Marx)

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監督・脚本:スザンナ・ニッキャレッリ
撮影:クリステル・フルニエ
衣装デザイン:マッシモ・カンティーニ・パリーニ
音楽:ガット・チリエージャ・コントロ・イル・グランデ・フレッド
   ダウンタウン・ボーイズ
出演:ロモーラ・ガライ(エリノア・マルクス)、パトリック・ケネディ(エドワード・エイヴリング)、フィリップ・グレーニング(カール・マルクス)、ジョン・ゴードン・シンクレア(フリードリヒ・エンゲルス)、フェリシティ・モンタギュー(ヘレーネ・デムート)、カリーナ・フェルナンデス(オリーヴ・シュライナー)、オリバー・クリス(フレディ)

1883年、イギリス。最愛の父カールを失ったエリノア・マルクスは、劇作家で社会主義者のエドワード・エイヴリングと出会い恋に落ちた。ところがエイヴリングは金銭感覚が普通でなく、浪費家で誰彼問わず借金をしては放置する。中でもエリノアを苦しめたのは、エイヴリングの女性関係だった。不実な男と知りながら、助けずにいられない。エリノアを心配し何かと話相手になっていた親友が国を出て、心のうちを話す相手がいなくなってしまった。父親から受け継いだ社会主義とフェミニズムを結びつけた草分けの一人として時代を先駆けながら、自分の信念と彼への愛情に引き裂かれていく。

カール・マルクスの伝説の3姉妹の末娘であり、女性や子供たち、労働者の権利向上のため生涯を捧げ、43歳の若さでこの世を去った女性活動家エリノアの、知られざる激動の半生を初めて映画化したのが本作。監督・脚本を手掛けたスザンナ・ニッキャレッリは、イタリア出身。前作『Nico, 1988』(17)でヴェネツィア国際映画祭オリゾンティ部門作品賞を受賞しています(未見)。
新しい思想、社会の改革を進めてきた聡明な女性が、なぜこんなに甲斐性のない浪費家でうそつきな浮気男を愛してしまったんでしょうか?「可哀想たぁ惚れたってことよ」という芝居の台詞が浮かんできます(寅さんだったかも)。しっかり者の女にはダメ男が寄ってくる、ということ?
支えようと頑張るあまり、いっぱいいっぱいになってしまったエリノア。誰かに愚痴をこぼして肩の荷を降ろすことができたならと思わずにいられません。ロックに合わせて激しく踊るエリノアの姿は、スザンナ・ニッキャレッリ監督からエリノアへのプレゼントでしょう。こんなにたぎる想いがありながら、十分に発揮できず。こんな風に自分を解放できたら違う結末になったはず。
エリノアという保護者を失ったエイヴリンはどうしたかと思えば、4ヶ月後に亡くなっています。それまでの浪費癖からくる大小の負債、多くの女性との不貞などで嫌われていたそうなので、それなりの最期であったようです。

2020年ヴェネツィア国際映画祭コンペティション部門でFEDIC賞、ベストサウンドトラックSTARS賞の2冠に輝き、2021年ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞11部門ノミネート、3冠受賞を果たしました。公式サイトのTOPで印象的なサウンドトラックのさわりが聞けます。(白)


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Photo by Emanuela Scarpa


マルクスの末娘で、父譲りの政治活動家として労働者や女性の権利向上のために貢献し、「資本論」の英語版の刊行を手掛け、イプセンなどの戯曲を翻訳した演劇人としても知られたエリノア・マルクス。本作では、浪費家で女たらしのエイヴリングに翻弄された負の部分が強調されて、脆い面ばかりが印象に残ってしまいました。エイヴリングは既婚者でしたが、エリノアは「結婚は時代遅れの制度」と公言し、事実上の妻として同棲していました。(それ自体は、私は賛成!) ところが、それをいいことに、エイヴリングは妻とこっそり離婚し、若い女性と再婚! どこまで不実な男なのでしょう。
ところで、父カール・マルクスもまた不実な男だったことが明かされます。冒頭、父カールの埋葬式で、エリノアは父が17歳の時に出会った母イェニーと翌年結婚し、いかに仲睦まじかったかを熱く語ります。その後、父の盟友エンゲルスが亡くなる直前にエリノアに、エンゲルスとマルクス家の使用人ヘレーネとの間に生まれた息子フレディが、実はカール・マルクスとヘレーネの息子だと明かします。父の不実を知った時のエリノアは、どんな思いだったでしょう。ま、世の中、男も女もお互いに騙しあって生きているのだと考えると、スザンナ・ニッキャレッリ監督は、一人の女性の生涯を描きながら、現代にも通じる人間の本質を暴き出しているのだと感じます。(咲)


マルクスとエンゲルス、名前は知っていても、資本論などにどんなことが書かれているのかは知らない。それでも、労働者や搾取されている人たちを擁護する本や活動をしていた思想家ということくらいは知っている。でも、マルクスに3人の娘がいたことや、エンゲルスがマルクス家を援助していたということはこの作品で知った。また、マルクスの3女エリノア・マルクスのことも、彼女の活動のこともこの作品で知った。1970年代から婦人運動やウーマンリブなどの運動に興味を持ち、この運動で知り合った人もたくさんいて、今も励ましあいながら生きている私なのに、あの時代に男性に交じって労働運動、政治活動、女性の地位向上のために戦っていた彼女のことを、これまで全然知らなかったのはなぜだろう。そして、この作品を観ながら、あまり共感できないという思いもあった。せっかく、エリノア・マルクスのことを知らしめる作品なのに、彼女の思いや描き方になんか納得がいかなかった。事実をもとに語っているのだろうけど、正しいこと、目標としていることは良くても、なんだか違うなという思いがあった。それはきっと、上記で(咲)さんが書いていることにつながることかもしれない。いくらりっぱなことを言っている人でも、最低な夫を突き放さず擁護しているところが、私が彼女の生き方に共感できなかった原因かも。それにしても、せっかくエリノア・マルクスのことを知らしめる良い機会なのに残念(暁)

2020年/イタリア・ベルギー/カラー/ビスタ/107分/英語・ドイツ語
配給:ミモザフィルムズ
(c)2020 Vivo film/Tarantula  
https://missmarx-movie.com/
★2021年9月4日(土)よりシアター・イメージフォーラム、新宿シネマカリテほか全国順次公開

posted by shiraishi at 01:15| Comment(0) | イタリア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年03月06日

ワン・モア・ライフ!  原題:Momenti di trascurabile felicità  英題:Ordinary Happiness

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監督・脚本:ダニエーレ・ルケッティ(『ローマ法王になる日まで』)
出演:ピエールフランチェスコ・ディリベルト(ピフ)、トニー・エドゥアルト、レナート・カルペンティエーリ(『ナポリの隣人』)

イタリア、シチリア島のパレルモ。港で技師として働くパオロは、渋滞が大嫌い。仕事を終え、スクーターをぶっ飛ばして家路につく。交差点をいつものように右折が赤信号の数秒のうちにすり抜けようとしたが、一瞬の差でバンに撥ね飛ばされ即死してしまう。
天国の事務所は人でごった返していて、ようやく呼ばれたパオロは、「健康のためにジンジャー入りのスムージーも我慢して飲んでいたのに!」と役人に向かって駄々をこねる。「え? スムージー?」と、情報を追加し計算し直した役人から「寿命があと1時間半あった。2分オマケして92分」と言い渡される。役人に付き添われて、地上に戻ったパオロ。人生最後の92分、どうやって過ごす?

冒頭、パオロがガントリークレーンの上から眺めるパレルモの町の美しいこと! パレルモが低い山に抱かれた町なのを初めて知りました。シチリアは、9 ~11世紀にわたってアラブの支配下にあったところで、一度は行ってみたいと思っていたのですが、故郷・神戸にも似た地形だと知り、ますます訪れてみたくなりました。
その神戸の同級生で、交通事故に遭って瀕死の状態から生還、「三途の川を渡ったとこで、あんた、家族もおるし、まだやり残したことあるやろと言われて戻ってきた」という男性がいるのを思い出しました。
本作では、パオロが生きるチャンスをもう一度もらって、人生を悔い改め、それまでないがしろにしてきた妻や子と最後の時間を過ごそうとする姿がユーモアたっぷりに描かれています。
2017年、『ローマ法王になる日まで』公開の折に、ダニエーレ・ルケッティ監督にインタビュー。その中に、「人生、何度でもやりなおすことができる!」という言葉があって、本作にも通じる?とびっくり!
さて、余命がわかったら、私なら何をする? (咲)


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天国の入り口は大混雑でした。受付係が操作しているパソコンは最新型とはいえず、データの不備や計算ミスもそのせいかも。自分勝手な信号無視は棚に上げて、パオロ(高松英郎さん似)が猛抗議の末もらった92分。リアルタイムで観客も体験します。短い。
合間に今更ながら後悔ばかりのパオロの人生も御開帳。なんていい加減な男なんだ、おまけに妙なところにこだわって細かい。そんな彼の欠点も含めて愛した妻のアガタに拍手。そういう人にはなぜかいい奥さんがついて、苦労させられるんだよね。しっかりした子どもたちが育ったのは母親のおかげです。
パオロはピフことピエールフランチェスコ・ディリベルトのあてがきだそうです。すっごく人気の俳優だそうです。天国の役人は渋くて素敵なレナート・カルペンティエーリ。間違いを認め、温情も併せ持ちます。お役人はこうでなくては。懲りないパオロに笑ったり呆れたりしながら、しんみり家族愛にも浸れる作品でした。(白)


2019年/イタリア/94分/シネスコ/5.1ch/イタリア語
日本語字幕:関口英子
後援:イタリア大使館、イタリア文化会館
提供:ニューセレクト
配給:アルバトロス・フィルム
(C)Copyright 2019 I.B.C. Movie
公式サイト:https://one-more-life.jp/
★2021年3月12日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国公開

posted by sakiko at 03:02| Comment(0) | イタリア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年01月17日

天空の結婚式   原題:Puoi baciare lo sposo、英題: MY BIG GAY ITALIAN WEDDING

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監督・脚本: アレッサンドロ・ジェノヴェージ
出演:ディエゴ・アバタントゥオーノ、モニカ・グェリトーレ、サルヴァトーレ・エスポジト、クリスティアーノ・カッカモ

ベルリン。役者のアントニオは、役者仲間のパオロと一緒に暮らすうちに「人生を共にするなら、この人!」と確信し、遂にプロポーズ。二人の決意は固いが、問題はお互いの親の理解を得ること。パオロはゲイをカミングアウトして以来、ナポリにいる母親と疎遠になっている。まずはアントニオの両親の承諾を得ようと、イタリアの天空の村チヴィタ・ディ・バニョレージョに行くことにする。二人の下宿先の大家の女性ベネデッタや、さらには新しい下宿人のイタリアの中年親爺ドナートまでもが一緒に行くと言い張り、珍道中となる。
アントニオの母アンナは驚きながらも、この村で結婚式を挙げることを条件に認めるが、村長を務める父ロベルトは頑なに拒否する・・・

父ロベルトはよその町の出身だけど、アンナと結婚して村に移り住み、1年前からは村長を務め、積極的に難民を受け入れています。「世界は今、同化に向かっている。どんな人種も受け入れる」と言いながら、我が子の同性婚は受け入れられないのです。
そんな父親に、認めないなら離婚するとまで脅かして、母アンナはウェディング・プランナー(イタリアで今最も人気を集める実在の“カリスマ”ウェディング・プランナー、エンツォ・ミッチョが本人役で登場!)を雇って、最高の結婚式にしようと奮闘します。
ローマの北約120キロに位置する崖の上にそびえる村チヴィタ・ディ・バニョレージョは、『天空の城ラピュタ』(86)のモデルとなったといわれ、映画『ホタルノヒカリ』(12)にも登場した「天空の村」。絶景の地で繰り広げられる抱腹絶倒の物語ですが、寛容とは何かを問い、人権を考えさせてくれる作品になっています。
それにしても、ディエゴ・アバタントゥオーノ演じるアントニオが、実にキュート! 元カノのカミッラならずとも、男に取られたくないっ!! と思ってしまいました。(咲)


*イタリアで、2016年に下院議会で同性カップルの結婚に準ずる権利を認める「シビル・ユニオン」法が可決されたことを受けて、ニューヨークのオフ・ブロードウェイでロングラン上演された大ヒット舞台「My Big Gay Italian Wedding」を、イタリアのコメディ映画界の重鎮アレッサンドロ・ジェノヴェージ監督が映画化。

LGBTのカミングアウトは、友人、社会、会社、学校、仲間などに伝えるのに勇気がいるが、どこの国でも親に伝えるのが一番大変。親にとっては一大事。なかなか理解してくれない親との葛藤が、このところ何本もの映画で描かれている。ここでは父親が絶対受け入れられないと拒否をする。でも母親は最後に受け入れ、さらにはイタリアらしく、ウェディング・プランナーまで雇ってこの絶景の地での結婚式を進める。それにしてもすばらしい景色。まずこのロケーションがあって、それに同性婚を持ってきたといっても過言ではないかも。
私自身は、家制度、結婚制度に疑問があって結婚したいと思ったことがないので、なんで世の中の人はこんなに結婚したがるの?とずっと思ってきたけど、最近は同性婚まで出てきてびっくり。一緒にいたければいれば一緒にいればいいのであって、わざわざ結婚までしたがるということにはちょっと疑問がある。やはり団塊の世代と今の若い世代には、そういう思いに落差があるのかもしれない。ま、結婚したい人はすればとしか言えないけど。
カミングアウトは中国でも深刻なようで、『出櫃(カミングアウト 中国 LGBT の叫び』というドキュメンタリー作品もK's Cinemaなどで1月23日に公開される。これは親にカミングアウトする男性と女性のLGBT二組を追った作品。イタリアより、もっと親との繋がり関係が強く、子供の思いを受け止めがたい親が描かれる。こちらもぜひ観てみてください(暁)。

『出櫃(カミングアウト 中国 LGBT の叫び』公式HP
http://www.pan-dora.co.jp/comingout/

LGBTに関する作品はここ数年ぐっと増え、世間の理解は広まってきました。当然、私も理解ある人間の1人だと自負していました。ところがそんな私自身が最近、身近な人がゲイであると知ってかなりの衝撃を受け、その人を見る目が変わってしまったのです。ゲイであってもなくてもその人はその人であることを頭では分かっているものの、理解と感情は別物でした。この作品で描かれている父親はまさにこの気持ちだったんですね。へぇ~と思って読んでいるあなたも他人事ではないかもしれませんよ!
本作はニューヨークのオフ・ブロードウェイでロングラン上演された大ヒット舞台「My Big Gay Italian Wedding」を原案とし、結婚の自由がテーマですが、美しい風景も大きな見どころ。本作の舞台となったイタリア、ラツィオ州に位置する分離集落「チヴィタ・ディ・バニョレージョ」はイタリア有数の観光地ですが、約300mの狭く急な長い橋を渡る以外アクセス方法はありません。周囲の崖が毎日少しずつ崩れてきているとのことなので、貴重な記録映像の意味もあるといえるでしょう。(堀)


2018年/イタリア/90分/カラー/シネマスコープ/5.1ch /G
配給:ミモザフィルムズ
後援:イタリア大使館、イタリア文化会館
提供:日本イタリア映画社
(C)Copyright 2017 Colorado Film Production C.F.P. Srl
公式サイト :http://tenkuwedding-movie.com/
★2021 年 1 月 22 日(金)より、YEBISU GARDEN CINEMA、新宿シネマカリテ他にて全国順次公開



posted by sakiko at 13:12| Comment(0) | イタリア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年09月16日

マーティン・エデン(原題:Martin Eden)

 
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監督・脚本:ピエトロ・マルチェッロ 
脚本:マルリツィオ・ブラウッチ
原作:「マーティン・イーデン」ジャック・ロンドン(白水社刊)
出演:ルカ・マリネッリ、ジェシカ・クレッシー、デニーズ・サルディスコ、ヴィンチェンツォ・ネモラート、カルロ・チェッキ

貧しい船乗りの青年マーティン(ルカ・マリネッリ)は、上流階級の娘エレナ(ジェシカ・クレッシー)と恋に落ち、教養に目覚める。激動する時代、労働者地区に生まれ育った無学の青年は、運命の出会いに導かれて文学にのめり込んでいく。作家になるという夢に向かい一心不乱に己の道を突き進むが、生活は困窮し恋人の理解も得られない。絶望にかられてすべてを諦めようとした矢先、彼の運命は一変する。果たして彼を待ち受けるのは希望か、絶望か――。

冒険小説「野性の呼び声」で世界的名声を獲得した作家ジャック・ロンドンの自伝的小説を、ピエトロ・マルチェッロ監督が舞台を19世紀のアメリカから20世紀のナポリに変更して映画化した。
監督は20年前に原作を読み、ずっと映画化したいと思ってきたという。本作で2019年トロント国際映画祭審査員プラットフォーム賞、2020年イタリア・アカデミー賞脚色賞を受賞した。
主人公のマーティンを演じるのはルカ・マリネッリ。監督が脚本を書く段階から決まっていたという。トレーニングで船乗りの体を作り上げ、撮影1ヶ月前にはナポリに入り、町の人たちに溶け込んで役作りをした。その甲斐もあって、本作で第76回ヴェネツィア国際映画祭において、『ジョーカー』ホアキン・フェニックスを抑え「男優賞」に輝いた。2020年にはNetflix製作の映画『オールド・ガード』でシャーリーズ・セロンと共演し、ハリウッド進出。今、目が離せない俳優の1人である。
端正な顔立ちにうっとりするような肉体美がプラスされたルカ・マリネッリ。前半はエレナの社会に仲間入りしたいとバイタリティーがあふれ、後半は名声を手にし、仕立てのいいスーツに身を包みながらも、目的を見失って自堕落な姿を見せる。2つのタイプのルカ・マリネッリを堪能できる眼福の129分。女性の心を鷲づかみにするに違いない。(堀)


紛れもなく、ナポリの下町の荒くれた男なのに、名前はマーティン・エデン。上流階級のお嬢様と知り合って、背伸びして文学を語る姿が、なんとも不思議に見えます。アメリカン・ドリームを実現した作家ジャック・ロンドン。原作の舞台であるアメリカ西海岸オークランドを、ピエトロ・マルチェッロ監督の生まれ育ったナポリに移し、時代も20世紀初頭から、1919年~1970年頃に変えて、しっかりイタリアの物語になっているのに、原作に敬意を表して主人公の名前だけは変えなかったことから起こる魔法。マーティン・エデンを演じるルカ・マリネッリが、とにかくイイ男で、階級の壁をなかなか越えられない姿に切なくなりました。(咲)

2019年/イタリア=フランス=ドイツ/イタリア語・フランス語/129分/カラー・モノクロ/ビスタ/5.1ch
配給:ミモザフィルムズ 
©2019 AVVENTUROSA – IBC MOVIE- SHELLAC SUD -BR -ARTE 
公式サイト:http://martineden-movie.com/ 
★2020年9月18日(金)よりシネスイッチ銀座、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開



posted by ほりきみき at 22:05| Comment(0) | イタリア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年08月27日

シチリアーノ 裏切りの美学  原題:IL TRADITORE

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監督:マルコ・ベロッキオ
脚本:マルコ・ベロッキオ、ルドヴィカ・ランポルディ、ヴァリア・サンテッラ、フランチェスコ・ピッコロ
出演:ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ、マリア・フェルナンダ・カンディド、ファヴリツィオ・フェラカーネ

シチリアの巨大犯罪組織「コーザ・ノストラ」を裏切り、政府に寝返った男トンマーゾ・ブシェッタ。本作は彼の数奇な人生の映画化。

1980年代初頭、シチリアでは血で血を争うマフィア同士の抗争が激化していた。パレルモ派の大物トンマーゾ・ブシェッタ(ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ)は、麻薬取引を巡るコルレオーネ派との抗争の仲裁に失敗しブラジルに逃れる。残されたパレルモ派の仲間は次々と抹殺され、二人の息子も行方不明となる。
その後、ブシェッタはブラジルで逮捕されイタリアに送還される。ローマの警察署で対面したファルコーネ判事(ファウスト・ルッソ・アレジ)から、マフィア撲滅への捜査協力を求められる。聴取を受けるうち、ファルコーネ判事に畏敬の念を抱くようになったブシェッタは、組織「コーザ・ノストラ」による犯罪の詳細を供述する。それに基づき、イタリア全土で、366人が逮捕される。コーザ・ノストラは、司法当局に身を売ったブシェッタへの報復として、組織に所属しない親族までも殺害する。
1986年2月、コーザ・ノストラの幹部らを裁く初公判が行われる・・・

検察側証人として堂々と供述するブシェッタに対し、法廷内に設けられた檻の中にいるマフィアの幹部たちが、まさに吠えるように彼をののしる姿が圧巻。
トンマーゾ・ブシェッタは組織を裏切って捜査当局に協力した人物として、マフィアの歴史の中でよく知られているが、これまで映画の脇役として登場したことはあっても主役として取り上げられたことがなかったことに、マルコ・ベロッキオ監督は注目したという。
麻薬ビジネスに手を染め、金儲けと殺人に明け暮れるようになった組織の面々こそ、崇高であるべき組織の理念を裏切ったと語るブシェッタの苦悩を、ピエルフランチェスコ・ファヴィーノが体現している。
勇気ある証言をしたブシェッタも、その証言に基づいて多くの組織の者を裁いたファルコーネ判事も、結局、組織の力には勝てなかった運命に涙。(咲)


2019年/イタリア・フランス・ブラジル・ドイツ/イタリア語・ポルトガル語・英語/145分/ビスタ/デジタル5.1ch
配給:アルバトロス・フィルム、クロックワークス
後援:イタリア大使館、イタリア文化会館
公式サイト:https://siciliano-movie.com
★2020年8月28日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、Bunkamuraル・シネマ他全国公開




posted by sakiko at 03:57| Comment(0) | イタリア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする