2019年10月05日

天才たちの頭の中 世界を面白くする107のヒント(原題:Why Are We Creative?) 

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監督・製作:ハーマン・ヴァスケ
出演:デヴィッド・ボウイ、クエンティン・タランティーノ、ジム・ジャームッシュ、ペドロ・アルモドバル、ビョーク、イザベル・ユペール、スティーヴン・ホーキング、マリーナ・アブラモヴィッチ、ヤーセル・アラファト、ボノ、ジョージ・ブッシュ、ウィレム・デフォー、ウンベルト・エーコ、ミハイル・ゴルバチョフ、ミヒャエル・ハネケ、ヴェルナー・ヘルツォーク、サミュエル・L・ジャクソン、アンジェリーナ・ジョリー、北野武、ジェフ・クーンズ、ダイアン・クルーガー、スパイク・リー、ネルソン・マンデラ、オノ・ヨーコ、プッシー・ライオット、その他大勢。

大学時代に“クリエイティビティ”の意味を問い始めたバシュケ監督。ロンドンの名門広告代理店に入社後は“クリエイティブ・ディレクター”の下で“クリエイティブな案件”を産み出す“クリエイティブ部門”で働いたにも関わらず、“クリエイティブ”の謎が深まった。
「自身のアイデアを抽象的なものから実態のあるものに変化させるものは何なのか?」と考え抜いた果てに辿り着いたのが、「Why are you creative?(あなたはなぜクリエイティブなのですか)」というシンプルな質問。
以後、世界で活躍する“クリエイティブ”な人物に会い、「Why are you creative?」というシンプルな質問を投げ掛けてきた。時にアポなし、時にぶら下がり取材でアタックしたのは30年で1000人以上。
2002年にはカンヌ国際映画祭の連動企画として「Why are you creative?」コレクションを開催。2018年には30周年記念として故郷ドイツのベルリンとフランクフルトで大々的にコレクションを発表した。
本作は世界で活躍する“クリエイティブ”な人物がヴァスケ監督から放たれる突然の質問に答えるインタビュー映像から107名を厳選した。

ヴァスケ監督は学生の頃から考え続けたテーマを著名人に次々とぶつけた。その答えは人それぞれ、千差万別で面白いが、私にはむしろ監督の人選が興味深い。今は亡きミュージシャンのデヴィッド・ボウイやスティーヴン・ホーキンス博士やネルソン・マンデラ元大統領に始まり、ダライ・ラマ法王14世やミハイル・ゴルバチョフ元大統領といった世界の超大物にも取材する。日本人としては映画監督でありタレントの北野武、写真家の荒木経惟、パリコレで長年活躍するファッションデザイナーの山本耀司、そしてアーティストのオノ・ヨーコが取り上げられた。デヴィッド・ボウイは時期を変えて3回も取材している。もしかすると本作に取り入れたのが3回分であって、実はもっと何度も取材しているのかもしれない。
30年続けた取材を通して、監督は自らの答えを得ることができたのだろうか。そろそろ監督の答えを聞かせてほしい。(堀)


2018年/ドイツ/英語・ドイツ語・フランス語・ロシア語・日本語/88分/ビスタ/5.1ch
配給:アルバトロス・フィルム
©️2018 Emotional Network
公式サイト:http://tensai-atama.com/
★2019年10月12日(土)より新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー

posted by ほりきみき at 22:14| Comment(0) | ドイツ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年09月05日

サタンタンゴ 原題:Satantango

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監督・脚本:タル・ベーラ
共同監督:フラニツキー・アーグネシュ
原作・脚本:クラスナホルカイ・ラースロー
音楽:ヴィーグ・ミハーイ
撮影:メドビジ・ガーボル
編集:フラニツキー・アーグネシュ
出演:ビーグ・ミハーイ、ホルバート・プチ、デルジ・ヤーノシュ、セーケイ・B・ミクローシュ、ボーク・エリカ、ペーター・ベルリング

ハンガリー、ある田舎町。シュミットはクラーネルと組んで村人達の貯金を持ち逃げする計画を女房に話して聞かせる。盗み聞きしていたフタキは自分も話に乗ることを思いついた。その時、家のドアを叩く音がして、やって来た女は信じがたいことを言う。
「1年半前に死んだはずのイリミアーシュが帰って来た」
イリミアーシュが帰って来ると聞いた村人たちは、酒場で喧々諤々の議論を始めるが、いつの間にか酒宴になって、夜は更けていく。
翌日、イリミアーシュが村に帰って来る。彼は村にとって救世主なのか?
イリミアーシュと相棒のペトリナは警察に行き、警視からこれまでの悪事をとがめられる。

上映時間7時間18分の超長尺に、全編約150カットという驚異的の長回し撮影。準備に9年、撮影期間2年、完成まで4年の歳月‥。全てに規格外の映画が製作から25年を時を経てやってきた!
しかも、35ミリフィルムにこだわり続けたタル・ベーラ監督が初めて許可した4Kデジタルレストア版が日本で初公開されるのだ。”観る””観ない”‥。あなたは何方を選択するか? 本作の降り止まない雨と同じく、一旦”観る”選択を下したら、もうタル・ベーラは逃げ場を与えてくれない。映画に集中せざるを得ないだろう。それ程の吸引力を持つ作品である。

ライティング、アングルなど、全てが計算し尽くされたであろう長回しショットにも関わらず、俳優たちは極めて自然に動いているように見える。尚且つ、決してシアトリカルな設定ではなく、あくまでリアルなセット・ロケに於ける”映像演技”なのだ。

ポピュリズムに背を向けながら、これほど甘美な映画体験を齎せてくれるタル・ベーラのような監督は他に類を見ない。タルコフスキーの継承とする評を目にするが、個人的には決定的に異なると思う。ハンガリーの風土に根付いた、感傷を排し、しかも情熱的な話法はタルコフスキーのような映像詩人より直接的な感情に訴えかけるものがある。

中盤、少女と猫のシークエンスを観れば明らかだ。コンプライアンスに雁字搦めにされた現代のメディア界隈では得られない表現がそこにある。この中性的な少女は、児童養護施設に入所していたところをタル・ベーラに見出され、『ニーチェの馬』『倫敦から来た男』にも娘役として強い印象を残している。本作でもキーパーソンと言える役柄のため、「エシュティケ」の場面には是非ご注目を。メディア擦れしていない瞳の力に釘付けになること請け合いだ。(幸)


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『サタンタンゴ』 タル・ベーラ監督来日記者会見
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『ニーチェの馬』公開の折の2011年11月以来8年ぶりに来日したタル・ベーラ監督。映画に対する持論をたっぷり語ってくださった。
デジタル化に当たっては、7時間18分すべてご自身でチェック。昨今のデジタル映画はフェイクのフィルム映画の様。デジタルにはデジタルの映画言語があるはずと苦言。(咲)

1994年製作/ハンガリー・ドイツ・スイス合作/モノクロ/1:1.66/7時間18分
配給:ビターズ・エンド
公式サイト:http://www.bitters.co.jp/satantango/
9月13日(金)より、シアター・イメージフォーラム、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか、全国順次公開
posted by yukie at 11:52| Comment(0) | ドイツ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年08月15日

ジョアン・ジルベルトを探して 英題:WHERE ARE YOU, JOAO GILBERTO?

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監督:ジョルジュ・ガショ
原作:マーク・フィッシャー
出演:ミウシャ、ジョアン・ドナート、ホベルト・メネスカル、マルコス・ヴァーリ

「イパネマの娘」などの名曲で知られ、日本でライブを行ったこともあるミュージシャンのジョアン・ジルベルトは、2008年夏のボサノヴァ誕生50周年記念コンサートを最後に公の場から姿を消す。彼に会おうとリオデジャネイロに出向いた顛末を綴った本の出版直前に自殺したドイツ人ジャーナリストの旅に共鳴したジョルジュ・ガショ監督が、ジルベルトに会うためにブラジルに向かう。

ジョアン・ジルベルトの歌声は何と心地好いことか!幼い頃から聴き続けてきたにもかかわらず、本作でも流される代表曲の「イパネマの娘」「想いあふれて」といった楽曲は少しも陳腐化せず、新鮮な響きを届けてくれる。桃源郷にいる気持ちにさせる透き通った声質、涼やかな風が吹くようなメロディ…。今年、そんなジルベルトの生の歌声を2度と聴くことが出来なくなった事実に打ちのめされている時、本作が届けられた。
多少、毛色が変わったドキュメンタリーだ。隠遁暮しを続け、私生活は謎に包まれていたジルベルトに相応しいと言えるかもしれない。

ブラジルから遠く離れたドイツ人のジャーナリスト、マーク・フィッシャーは、なぜジルベルトに会うためブラジルへ出向き、その果実である出版本を見る前に命を断ったのか?
フランスとスイス国籍を持つガショ監督は、なぜフィッシャーの本に共鳴し、彼の夢を実現すべくブラジル中を訪ね歩いたのか?2人のクリエイターをそこまで突き動かした原動力は何か?
いちファンだからと出来る行動ではない。このドキュメンタリーは、”追った旅”を”追う旅”として記録された映像を観客が”追って行く旅”なのだ。二重三重構造の映画に相応しく、言語もドイツ語、フランス語、ポルトガル語、英語というように多言語である。だが、テーマはシンプルに、「ジョアン・ジルベルト」。

「デサフィナード」や「オバララ」の楽曲に乗せ、映し出されるイパネマビーチやヂアマンチーナの美しい風景。次々と登場する人々は、ジルベルトとの想い出を語ってくれる。かなりな奇人だったらしいジルベルトについての様々な逸話が楽しい。これは観てのお楽しみだ。
皆、ジルベルトを愛し、ジルベルトに愛された人ばかり。おそらく映画館にもジルベルトに魅せられた観客が詰めかけるに違いない。ジルベルト一色に染まった空間で111分を過ごすのは、ファンにとって至福の時ではないだろうか。(幸)


2018年製作/111分/G/スイス/ドイツ/フランス後援
配給 ミモザフィルムズ
カラー/ビスタサイズ/5.1ch / DCP
©Gachot Films/Idéale Audience/Neos Film 2018
公式サイト:http://joao-movie.com/
8 月 24 日(土)より新宿シネマカリテ、YEBISU GARDEN CINEMA ほか全国順次公開
posted by yukie at 12:30| Comment(0) | ドイツ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年08月11日

命みじかし、恋せよ乙女   原題:Kirschbluten & Damonen

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監督・脚本:ドーリス・デリエ(『フクシナ・モナムール』)
出演:ゴロ・オイラー、入月絢、ハンネローレ・エルスナー、エルマー・ウェッパー、樹木希林

ドイツ、ミュンヘン。妻と別れ、仕事も辞め、生きる希望を失ったカールの前に、ユウと名乗る日本女性が現われる。亡き父ルディと親交があったユウは、ルディが暮らしていた家を見たいという。久しぶりに実家を訪れ、両親の思い出を胸に、ユウと数日過ごす。相続でもめて以来会ってなかった兄や姉とも再会する。そんな中、ユウが忽然と姿を消す。気になり始めていたユウを探しに、カールはユウの故郷、茅ヶ崎へと向かう。老舗の旅館「茅ヶ崎館」の女将が彼を迎える・・・

ドイツの女性監督で、この30年の間に、30回日本を訪れ、『フクシナ・モナムール』など5本の映画を日本で撮影しているドーリス・デリエ。日本文化をこよなく愛するドーリスが、長年憧れていた女優・樹木希林に茅ヶ崎館の女将をあて書きしオファー。
茅ヶ崎館は、小津安二郎が脚本を書くために宿泊したこともある、有形文化財に指定された宿。樹木希林が茅ヶ崎館を訪れたのは、小津監督の遺作『秋刀魚の味』(62)の撮影時に、女優・杉村春子の付き人として参加した時以来とのこと。
本作の、「命みじかし恋せよ少女 朱き唇褪せぬ間に 赤き血潮の冷えぬ間に 明日の月日のないものを」と歌うシーンが、樹木希林の最後の出演シーンとなった。
この歌は、黒澤明監督の『生きる』(52)にも出てくる有名な大正歌謡。

ところで、茅ヶ崎は、私の高校時代の親友が生まれ育った町。何度か訪れたことがあって、映画には茅ヶ崎駅や海岸の風景も出てきて懐かしかった。親友に「茅ヶ崎館」のことを聞いてみたら、家のすぐ近くで、私も前を通っているとのこと。いつか茅ヶ崎を再訪して、茅ヶ崎館にも行ってみたい。
樹木希林さんが、茅ヶ崎館の落ち着いた佇まいの中で歌う姿は、人生の最期が感じられて、涙。(咲)


2019年/117分/G/ドイツ
配給:ギャガ
公式サイト:https://gaga.ne.jp/ino-koi/
★2019年8月16日(金)よりTOHOシネマズ シャンテ他 全国順次公開






posted by sakiko at 16:47| Comment(0) | ドイツ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年06月22日

ニューヨーク 最高の訳あり物件(原題:Forget About Nick)

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監督:マルガレーテ・フォン・トロッタ
出演:イングリッド・ボルゾ・ベルダル、カッチャ・リーマン、ハルク・ビルギナー

マンハッタンの超高級アパートメントで暮らすモデルのジェイド(イングリッド・ボルゾ・ベルダル)は、デザイナーとしての華々しいデビューを企画していた。ところが、スポンサーでもある夫のニック(ハルク・ビルギナー)から一方的に離婚を告げられた。傷心の中、さらに夫の前妻のマリア(カッチャ・リーマン)が転がり込み、部屋の所有権の半分は自分の物だと主張し居座り始める。同じ男と結婚したこと以外は、ファッションもライフスタイルも性格も、すべてが正反対のジェイドとマリアはぶつかり合ってばかり。そんな折、ジェイドのブランド経営が暗礁に乗り上げる。ジェイドは部屋を売って資金に充てようとするが、マリアの返事はもちろんノー。争いはますますヒートアップしていく。だが、積年の想いをぶつけ合う二人は、自分たちの特殊だけれど特別な絆に気付き始めるのだった。

第30回東京国際映画祭(2017年)コンペティション部門上映作品で、映画祭上映時は『さようなら、ニック』と違うタイトルだったので、同じ作品とは思わず、見てしまった。
略奪婚したジェイドが略奪されたところからのスタート。ジェイドは結婚しても体型維持のために努力と我慢を厭わず、仕事も家事も完璧。いろいろな意味での美に対して気を抜くことがない。それは略奪婚した以上、いつかはされる側になるかもしれない不安があったからではないか。東京国際映画祭で見たときは、「自業自得よね」とジェイドに何の共感もできなかったが、不倫の責任は女性ではなく男性が問われることなのかもしれないと思えてくる。もちろん、不倫は絶対に許せないのだが。
しかし、本作は現妻と元妻のどろどろの争いを描くのではなく、元妻のジェイドと元々妻マリアのぶつかり合いをコミカルに取り上げながら、男のクズっぷりを浮かび上がらせる。マルガレーテ・フォン・トロッタ監督の着眼点は興味深い。
ところで、タイトルの「ニューヨーク 最高の訳あり物件」はジェイドが売り出した、自らが住むマンハッタンの超高級アパートメントのことだが、ジェイドもある意味、“ニューヨーク 最高の訳あり物件”かもしれない。(堀)


2017年/ドイツ/カラー/スコープ/5.1ch/110分
配給:ギャガ
© 2017 Heimatfilm GmbH + Co KG
公式サイト:https://gaga.ne.jp/NYwakeari/
★2019年6月29日(土)、シネスイッチ銀座ほか全国順次公開

posted by ほりきみき at 19:13| Comment(0) | ドイツ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする