2020年11月08日

アウステルリッツ  原題:Austerlitz

ausuterits1.jpeg

(C)Imperativ Film

陽光の照りつける中、人々が気楽な恰好で、スマホで自撮りしながら歩いていく。
「ARBEIT MACHT FREI(働けば⾃由になる)」と書かれた門。
そこは第二次世界大戦中のザクセンハウゼン強制収容所の跡地。
収容所の中には監獄があって、刑罰が目的でなく、情報を聞き出すために拷問を行うための監獄。政治犯やナチスの暗殺に関わった者たちが収監されていた。窓も塞がれ、暗闇の中、孤独に襲われた。口を割らなかった囚人は吊るして殺された。
1941年~43年、ここは囚人であふれていた。労働力として必要だったのだ。
絶滅の為の施設では、遺体から飲み込んだ宝石や金歯などを取り出した。ガス室担当の囚人は、4か月働き殺された。次に任務についた囚人の最初の仕事は死体処理。自分の末路がわかる・・・
ドイツ人小説家・W.G.ゼーバルト著書「アウステルリッツ」より着想を得て製作した、ダーク・ツーリズムのオブザベーショナル映画。

人々が見学する姿にあわせ、淡々と綴られる解説に、一時も目が離せませんでした。
ユダヤ人だけでなく、同性愛者、エホバの証人の信者、ロマ、共産主義者なども収監されていたこと、それが、東ドイツ時代に博物館になり、共産主義がファシズムに勝利したとされ、共産主義者以外の囚人の苦しみは無視され、歴史が歪められたという解説がありました。逆に、一般的には、ユダヤ人の虐殺だけがクローズアップされている感があります。歴史をどういう立場で見るかで、事実が歪められることを教えられました。
それにしても、「Travel for Peace」 と書かれたお揃いのTシャツを着た人たちが、次々と門から出てくる様に、過去を学ぶことは大切だけど、なんとも物見遊山な印象が拭えなくて複雑な気持ちになりました。(咲)


ザクセンハウゼン強制収容所の跡地を見学する人たちの姿を淡々と映し出します。施設の音声ガイドが聞こえるのですが、そのガイドが説明する肝心の部分は映し出さないので、「そこも映してほしい!!」と何度も叫んでしまいそうになりました。しかし、この作品はザクセンハウゼン強制収容所そのものの紹介ではなく、あくまでも群衆がテーマだったと気づき、集う人々の様子に目がいくように。いろいろ興味を持って見ている人がいると思えば、ガイドの説明に目もくれず、ただただ人の流れに身を任せているような人も。撮られている(見られている)ことを知らない、無防備な状態だと人間性がはっきりと出てしまうものなのですね。気をつけなきゃと今は思っても、きっと外では知らない人からいろんな風に思われているんだろうなぁ。(堀)

セルゲイ・ロズニツァ「群衆」ドキュメンタリー3選 『国葬』『粛清裁判』『アウステルリッツ』
http://cinejour2019ikoufilm.seesaa.net/article/478352334.html

2016年/ドイツ/ドイツ語、英語、スペイン語/モノクロ/94分
配給:サニーフィルム
公式サイト:https://www.sunny-film.com/sergeiloznitsa-films
★2020年11月14日(土)~12月11日(金)シアター・イメージフォーラムにて公開 全国順次ロードショー



posted by sakiko at 12:43| Comment(0) | ドイツ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年09月30日

ある画家の数奇な運命(原題:WERK OHNE AUTOR/英題:NEVER LOOK AWAY)

neverlookaway.jpg
 
監督・脚本・製作:フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク
撮影: キャレブ・デシャネル
音楽: マックス・リヒター
出演:トム・シリング、セバスチャン・コッホ、 パウラ・ベーア、オリヴァー・マスッチ、ザスキア・ローゼンダール

ナチ政権下のドイツ。少年クルトは叔母エリザベト(ザスキア・ローゼンダール)の影響から、芸術に親しむ日々を送っていた。ところが、精神のバランスを崩した叔母は強制入院の果て、安楽死政策によって命を奪われる。終戦後、クルト(トム・シリング)は東ドイツの美術学校に進学し、そこで出会ったエリー(パウラ・ベーア)と恋におちる。元ナチ高官の彼女の父親(セバスチャン・コッホ)こそが叔母を死へと追い込んだ張本人なのだが、誰もその残酷な運命に気づかぬまま二人は結婚する。
やがて、東のアート界に疑問を抱いたクルトは、ベルリンの壁が築かれる直前に、エリーと西ドイツへと逃亡し、創作に没頭する。美術学校の教授(オリヴァー・マスッチ)から作品を全否定され、もがき苦しみながらも、魂に刻む叔母の言葉「真実はすべて美しい」を信じ続けるクルトだったが―。

モデルとなった現代美術界の巨匠、ゲルハルト・リヒターについて
1932年、ドイツ、ドレスデン(旧東ドイツ)生まれ。ドレスデン芸術大学で絵画を学んだ後、61年に西ドイツに移住し、デュッセルドルフ芸術大学に入学。世界中の主要な美術館が彼の作品をコレクションするなど、名実ともに世界最高峰の評価を受け、最も影響力のある現代アーティストであり、日本では05年に金沢21世紀美術館と川村記念美術館で回顧展を開催。16年には瀬戸内海の豊島に、リヒター作品を恒久展示する日本初の施設がオープンした。(作品の公式サイトより転載)


ナチスがユダヤ人迫害をしていたことは周知の事実ですが、行き過ぎた選民意識が同胞にも刃を向けていたことを本作で初めて知りました。それによってもたらされた悲劇は主人公に大きな影響を与えますが、それを乗り越えた先に新たな希望があったことを描いた作品です。
幼かったころの主人公は叔母から芸術の奥深さとそれを享受できるのは美術館やコンサートホールだけではなく、日々の生活の中でも感じられることを教えられます。運行が終わり、停車場に横並びになったバスの運転手に叔母が頼んで一斉にクラクションを鳴らしてもらうシーンがあるのですが、クラクションが重奏的に鳴り響き、中央に立つ叔母が指揮をとって奏でられたオーケストラのように聴こえました。これはぜひ映画館で聴いてほしいシーンです。
またナチスがもたらした悪夢は戦後もドイツの人々に影を落としていました。主人公の父親はナチ党員ですが、それは家族のために安定した職を得るため。「ハイル、ヒットラー」というのが苦痛で、まるでタモリ倶楽部の空耳アワーのような言い換えで乗り切りました。(言い換えの字幕が見事!ぜひ作品を見て笑ってください。ドイツ語ではどんな意味の言葉で言い換えていたのか知りたい!)しかし、戦後は一転、ナチ党員だったことで苦労します。どちらの選択肢を選んでも困難が待っている点は主人公も同じ。それなりの地位を得た東ドイツに残るか、希望あふれるように思える西ドイツに逃げるか。どちらが正しいのではなく、選んだ道で一生懸命生きることが大事なのだと作品から教えられました。(堀)


189分の長尺が、終わってみればあっという間のクルトの数奇な物語。
いくつか心に残る場面がありました。
まだ小さな少年だったクルトが、大好きなドレスデンの町を去る時、両親と暮らしていた家のすぐ前の広場に並ぶ5台のボンネットバスに一斉にクラクションを鳴らして貰います。鼻ぺちゃバス(鼻ありのボンネットバスに対して!)に一斉にクラクションを鳴らして貰う映画のラストに呼応するエピソード。
西に逃れたクルトが通う美術学校の教授は、どんな時にも帽子を脱がないことで有名。その教授が、クルトの作品を観て、「これは君じゃない」と言い、帽子をとって深々とお辞儀して部屋を後にします。実は作品を観ながら、教授は戦争中に空軍に属していて、2度目の出撃で追撃され、遊牧民のタタール人に助けられた話をするのです。頭を見せたくない理由がわかるエピソード。その教授が頭のてっぺんを見せるのです。作品を全否定されたクルトが、その意図にハッと気づいたのもそれ故とじ~んとさせられました。
本作では叔母が統合失調症と診断され、次世代に病気が移らないようガス室で殺害されます。ユダヤ人迫害はよく知られていますが、ナチスはアーリア人の優秀さを保つために、ロマの人たちや、精神病患者、同性愛者、共産主義者なども抹殺の対象にしていました。そのような人たちが迫害を受けたことを描いた映画は数少なく、本作はそのことを記録した貴重な映画とも言えます。(咲)



2018年/ドイツ/ドイツ語/189分/カラー/アメリカンビスタ/5.1ch/日本語字幕:吉川美奈子/R-15 
配給:キノフィルムズ・木下グループ
©2018 PERGAMON FILM GMBH & CO. KG / WIEDEMANN & BERG FILM GMBH & CO. KG
公式サイト:https://www.neverlookaway-movie.jp/
★2020年10月2日(金)TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー

posted by ほりきみき at 22:55| Comment(0) | ドイツ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年07月09日

バルーン 奇蹟の脱出飛行(原題:BALLOON)

balloon-movie_poster.jpg
 
監督:ミヒャエル・ブリー・ヘルビヒ 
脚本:キット・ホプキンス、ティロ・レーシャイゼン、ミヒャエル・ブリー・ヘルビヒ
出演::フリードリヒ・ミュッケ、カロリーヌ・シュッヘ、デヴィッド・クロス、アリシア・フォン・リットベルク、トーマス・クレッチマン

1979年、東ドイツ・テューリンゲン州。電気技師ペーター(フリードリヒ・ミュッケ)とその家族は、手作りの熱気球で西ドイツをめざすが、国境までわずか数百メートルの地点に不時着してしまう。東ドイツでの抑圧された日常を逃れ、自由な未来を夢見ていたペーターは、準備に2年を費やした計画の失敗に落胆の色を隠せない。しかし妻のドリス(カロリーヌ・シュッヘ)とふたりの息子に背中を押されたペーターは、親友ギュンター(デヴィッド・クロス)の家族も巻き込み、新たな気球による脱出作戦への挑戦を決意する。ギュンターが兵役を控えているため、作戦のリミットはわずか6週間。ふたつの家族は一丸となって不眠不休の気球作りに没頭するが、国家の威信を懸けて捜査する秘密警察の包囲網が間近に迫っていた……。

作品冒頭でフェンスを乗り越えて西側に逃げようとする亡命者を映し出します。フェンスを超えられるのか、逃げ切れるか。いきなりハラハラドキドキのシーンで緊張感が煽られます。そして、主人公一家たちの登場。秘密を抱えた感じが演出からびしびし伝わってきます。
作品では2度、気球に乗って脱出を図るのですが、誰が乗って、誰が乗らないのか。それぞれの辛い選択に見ているこちらまで心が痛みます。
そして、実行。しかし、脱出は容易なことではありませんでした。この失敗がシュタージ(秘密警察)に手がかりを与えてしまうことになります。2回目の実行は危険度がさらにアップ。しかもシュトレルツィク家の長男が向かいの家の娘といい感じになり、そこから秘密が漏れてしまいそうで心配は尽きません。歴史的事実を描いた作品なので、結果はわかっているものの、125分のほとんどが緊張感の連続。だからこそ、ラストの安堵感は大きいものでした。
ちなみに気球による脱出を阻止しようとするシュタージのサイデル大佐を演じたトーマス・クレッチマンは東ドイツ出身で1983年に東ドイツから逃亡し、ユーゴスラビアに逃げたそう。逃亡した経験者が追う立場を演じているので、さらにリアル感が増しているのかもしれません。
そうそう、バルーンが意外にカラフルで、スクリーンいっぱいに大きく膨らんだときは思わず声を上げてしまいそうになるほどです。お楽しみに。(堀)


あんなに大きなバルーンを作ってしまったことに、まず驚きます。見つかったら命はないでしょう。そこまでして国を逃げ出したかったとは! 東ドイツ時代のベルリンの空港にトランジットで降り立ったことがあって、確かに荒んでいて、暗くて、国情を推し量って大変な国だなと思ったことを思い出します。
このバルーンで西に逃れた2家族8人の実話は、1982年にウォルト・ディズニー・カンパニーが『気球の8人』のタイトルで映画化し、日本でも公開されているのですが、知りませんでした。
東ドイツから壁を乗り越えて西に逃げた話は数多く聞いてきました。バルーンで亡命した話は聞いたことがなかったので、ベルリンの壁が崩れる前の東ドイツを何度か訪ねたことのある友人に聞いてみました。
「私が知らないだけかもしれませんが、おそらく当時はそういう脱出成功情報はあまり公に流されていなかったと思います。インターネットもない時代でしたし、隠されていたと思います」とのこと。さもありなんです。
報道されたとしても、バルーンに関して、よほどの知識と忍耐力がなければ、おいそれと真似して脱出するのは難しいのではと思います。
それにしても、実話なので脱出に成功するとわかっていても、ハラハラドキドキ、手に汗握りました。(咲)


東西冷戦下の東ドイツ。東ベルリンから西ベルリンへの脱出というと、ベルリンの壁を乗り越えたり、地下トンネルを掘ってという話は数多く聞いたり映画でも観てきたけど、熱気球で境界線を乗り越えたという話は聞いたこともありませんでした。でも実話を元にした話ということで実現したことがあるのでしょう。知られざる真実です。1989年にベルリンの壁が崩壊されたので、このあとまだ10年は壁がありました。その間にも何人もの人たちがこの境界を乗り越えたことでしょう。どのくらいの人たちが乗り越えられず犠牲になったことかと思います。
熱気球を作るにはかなりの知識(作り方とか気象知識など)と熟練した腕(ミシンで縫ったり)が必要だと思うけど、ペーターは電気技師、ギュンターは同僚という情報しかなかったけど、二人は東ドイツ国内で、仕事で熱気球などを作るような仕事もしていたのかな。素人ではとてもこんな8人も乗れるような熱気球は作れないでしょうね。
どうなるかとドキドキしながら観た作品であり、とても興味深い作品ではあったのですが、なぜ東西ドイツに分かれていたのかとか、東ドイツでの生活はどんなだったのかという視点では描かれてなかったのが残念です。その事情を知らない若い人たちのためにも、そういう部分も入れて描いてほしかったなと思います。
最近、歴史の史実を元にしたという映画が随分作られ、歴史に埋もれた真実が明らかになってきていますが、そこに至った歴史とかが省かれていることが多く、それが残念だなと思うことがあります。そのくらい、今の若い人は歴史を知らないと感じます。私自身も教科書からより、映画でいろいろな歴史や文化を知ったので、ぜひいろいろな視点で映画を観ていけたらと思います(暁)。

2018年/ドイツ/ドイツ語/125分/カラー/シネマスコープ/5.1ch
配給:キノフィルムズ/木下グループ
© 2018 HERBX FILM GMBH, STUDIOCANAL FILM GMBH AND SEVENPICTURES FILM GMBH
公式サイト:http://balloon-movie.jp/
★2020年7月10日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー


posted by ほりきみき at 14:08| Comment(0) | ドイツ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年06月09日

タッチ・ミー・ノット ローラと秘密のカウンセリング 原題:Touch Me Not

15916842827100.jpg

監督・脚本・編集: アディナ・ピンティリエ
出演: ローラ・ベンソン、 トーマス・レマルキス、 クリスティアン・バイヤーライン、 グリット・ウーレマン、 ハンナ・ホフマン、 シーニー・ラブ、 イルメナ・チチコーヴァ、 アディナ・ピンティリエ

寝たきりの父親の介護で病院通いの日々を送るローラ(ローラ・ベンソン)には、人に触れられることに拒否反応を示す精神的障害があった。ある日、彼女は病院で、患者同士がカウンセリングを行う一風変わった療法を見かける。そこでは無毛症のトーマス(トーマス・レマルキス)をはじめ、さまざまな症状の人々が互いの体に触れ合っていた。
アディナ・ピンティリエ監督の初長編作で、第68回ベルリン国際映画祭においてコンペティション部門最高賞の金熊賞に輝いた。

冒頭は修正のない生の身体性や異形の人を観ることへの違和感 、衝撃や畏れ…、率直に言えば或る種の不快感を抱くかもしれない。静謐で透明感に溢れた映像ながら、本作が醸す印象濃度は強烈だ。

人と人との触れ合い、親密さを主題とした監督デビュー作が金熊賞(最高賞)と最優秀新人作品賞をW受賞した2018年のベルリン国際映画祭時、アディナ・ピンティリエ監督は翌年末から始まる真逆の世界新常識”ディスタンス”を想像し得ただろうか?
新型コロナウイルスの時代の渦中から本作を観ると、人々が無防備に晒す身体性、積極的に触れ合う密度、親密性に憧憬を覚えてしまう。

本作に登場する重度障害者、無毛症のアイスランド人、トランスジェンダーであり性カウンセリングも行う男娼、病院の患者たち、秘密クラブに集う人々…。何れも触れ合うことに癒しを求めている。性を通そうと治療であろうと、”接触は是”だと伝える。触れられることに拒否反応を示す主役ローラを除いては…。

そのローラも次第に叫び、感情を吐露し、身体性を晒して踊る姿には既にカウンセリングは必要ないように思えてくる。”自己解放”は本作に於ける一つの解答なのだろう。(幸)


2018年製作/125分/R18+/ルーマニア・ドイツ・チェコ・ブルガリア・フランス合作/ ビスタサイズ/5.1ch / DCP
配給:ニコニコフィルム
公式サイト:http://tmn-movie.com/
「仮設の映画館」にて先行オンライン配信中
★7月4日(土)よりシアター・イメージフォーラム、大阪シネ・ヌーヴォ、アップリンク京都、大分シネマ5 ほか全国順次公開★
posted by yukie at 15:32| Comment(0) | ドイツ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年02月09日

屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ 原題:Der Goldene Handschuh 英題: The Golden Glove

yaneura.jpg

監督・脚本:ファティ・アキン
出演:ヨナス・ダスラー、マルガレーテ・ティーゼル、ハーク・ボーム

1974年、ハンブルク。
留年が決定した美少女ペトラは、冴えない転校生ウリィーに誘われカフェに立ち寄る。
ぺトラが手にしたタバコに、突然、火を差し出す醜い男フリッツ・ホンカ。
ホンカは、立ち去るペトラをじっと見つめていた。

労働者や年増の娼婦が集うバー「ゴールデン・グローブ」。
ホンカは、女に酒を奢ろうと声を掛けても、なかなか相手にされない。そんな中、注文もせずに座る中年女ゲルダにホンカは一杯奢り、ゲルダを家に連れ帰る。ゲルダはホンカの部屋に入るなり、異臭に戸惑う。階下のギリシャ人の料理のせいだというホンカ。ゲルダは30歳になる独身の娘がいると語る。カフェで見かけた美少女を思い浮かべるホンカ。居候するようになったゲルダに「娘を連れて来い」と命じるが、いつまで経っても連れて来ないあげく、ゲルダはいなくなる。
ある日、ホンカは車に突き飛ばされる。それを機に禁酒し、夜間警備員の仕事につく。夫がクビになり掃除婦をしているヘルガに思いを寄せるようになる・・・

ドイツ・ハンブルクで1970年から5年間にわたって4人の娼婦を殺害した実在の連続殺人犯フリッツ・ホンカの物語。
トルコ移民の両親のもと、1973年にハンブルクで生まれたファティ・アキン監督は、子供の頃、「気をつけないと、ホンカに捕まるぞ!」とよく言われたそうです。
殺人鬼フリッツ・ホンカの事件を描いたハインツ・ストランクのベストセラー小説に触発されて、ファティ・アキンは映画を製作。著者ハインツ・ストランクは、本作に退役軍人役でカメオ出演しています。
小説は第二次世界大戦の敗戦から立ち上がりつつある70年代のドイツの社会情勢とともに描かれていて、映画でも、その片鱗が見られます。
ホンカが酒場で声をかけた娼婦の一人には、腕に番号を彫られた跡があって、1937年から終戦まで強制収容所で売春をさせられたと明かします。ホンカも父が共産主義者を理由に収容されていたと語ります。これ以外、ホンカの出自について本作では多くは語られませんが、ナチスがユダヤ人を強制収容する以前から邪魔者を収容していた実態を教えてくれる場面でした。また、ドイツで暮らす人々が、それぞれに戦争の時代をひきずっていることも感じさせられました。
ラストで実際にホンカが住んでいた安アパートの屋根裏部屋の図面や、本人の姿が映し出されます。屋根裏部屋を忠実に再現したのも凄いですが、なんといっても、それなりに美男子のヨナス・ダスラー(『僕たちは希望という名の列車に乗った』)が、実年齢より20歳以上も上の醜いホンカになりきっているのに驚かされます。
映画で語られる最後の日、ホンカが酒場で美少女ぺトラを見かけ、追いかけていきます。彼女も毒牙にかかるのか・・・ 結末はどうぞ劇場で! (咲)


2019年/ドイツ・フランス/110分/R15+
配給:ビターズ・エンド
公式サイト:http://www.bitters.co.jp/yaneura/
★2020年2 月 14 日(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー!






posted by sakiko at 12:31| Comment(0) | ドイツ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする