2023年09月17日
ファッション・リイマジン(原題:Fashion Reimagined)
監督:ベッキー・ハトナー
撮影:ダニエル・ゴッツ
出演:エイミー・パウニー、クロエ・マークス、ペドロ・オテギ
2017年4月、英国ファッション協議会とVOGUEによって、その年の英国最優秀新人デザイナーに選ばれたエイミー・パウニーは、賞金の10万ポンドで《Mother of Pearl》をサステナブル(将来にわたって持続可能)なブランドへと変えることを決意する。
当時ファッション業界は大量消費の真っ只中で、サステナビリティはニッチなトピックだった。
原材料から製造過程まで、すべてにおいてサステナブルなコレクションは、「No Frills(飾りは要らない)」と名づけられる。コレクションの発表は、2018年9月のロンドン・ファッション・ウィーク。準備期間はわずか18ヶ月!一からの原料探しが始まった。
世界の有名デザイナーの映画は数々あれど、個性や斬新なアイディア、生み出す苦労などが注目されてきました。この作品に登場するエイミー・パウニーのように、「地球の限りある資源を大切に地球にも身体にも優しいファッション」というのは初めてです。それもすでに供給されている素材でなく、人任せにせずに自分自身が探し出すとは!!
ウールなら羊の生産者を探し、製品となるまで全ての過程を把握していくのは、長い長い道のりです。これまでのように、たくさん作って売って、捨てて、また購入してもらうというのでなく、長く大事に使ってゴミにしない。「毎年、千億もの服が作られ、その5分の3が購入した年に捨てられる」なんて知りませんでした。自分はゆったり目が好きなのと、体型がほとんど変わっていないのとで、何十年も着ている服があります。超サステナブル!(白)
2022年/イギリス/カラー/ビスタ/100分
配給:フラッグ
(C)2022 Fashion Reimagined Ltd
https://www.flag-pictures.co.jp/fashion-reimagine/
★2023年9月22日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国ロードショー
2023年07月22日
ルードボーイ トロージャン・レコーズの物語 原題:Rudeboy The Story of Trojan Records
監督:ニコラス・ジャック・デイヴィス
撮影:ジョナス・モーテンセン
編集:クリス・デュベーン
出演:ロイ・エリス、リー・スクラッチ・ペリー、デリック・モーガン、ポーリーン・ブラック、ドン・レッツ、ケン・ブース、トゥーツ・ヒバート、ザ・パイオニアーズ、マルシア・グリフィス、バニー・リー、キング・エドワース、ダンディ・リヴィングストン、ロイド・コクソン、ネヴィル・ステイプル、デイヴ・バーカー
レゲエの誕生、そして全世界の音楽シーンに大きな影響を与えた伝説のレーベル「トロージャン・レコーズ」の栄光と転落を描いたドキュメンタリー。
1956年ジャマイカ、西キングストン地区。デューク・リードが開業した酒場トレジャー・アイルの名物は“トロージャン”と名付けられた巨大なサウンド・システム。アメリカ産のR&Bやブギのレコードのリズムにあわせ、人々が集い踊るダンスフロアと化していた。やがてリードは地元のシンガーやバンドを集め、オリジナルのレコードを吹き込む。デリック・モーガンが唄う「Lover Boy」は大ヒットを記録。その後も多くのシンガーを輩出し、ジャマイカ発のR&Bは独特の進化を遂げ、スカやロックステディ、そしてレゲエが誕生した。
一方、ジャマイカ独立を機に多くのジャマイカ人が移住したイギリスに、アジア系(インド系)ジャマイカ人の実業家リー・ゴプサルがいた。ジャマイカで誕生したレゲエに新たなビジネスのチャンスを見出し、1967年に英国初のレゲエ専門の音楽レーベル「トロージャン・レコーズ」を立ち上げる。イギリスに渡った“トロージャン”は多くのジャマイカ人に愛されただけでなく、労働者階級の白人ユースカルチャーとも共鳴。1970年4月26日ウェンブリー・スタジアムで開催されたレゲエ・フェスティバルには一万人を超える黒人と白人の若者で満席となり、レゲエは人種を超えた大きなムーブメントを巻き起こす。しかしやがてトロージャン・レコーズの事業は傾き始め、倒産の危機を迎えてしまうのである・・・。
音楽シーンに詳しくない私は、レゲエというと、ジャマイカ発祥で、そこからアメリカに渡って広がったというイメージでした。本作を観て、ジャマイカ独立後、イギリスに移住したジャマイカの人たちによって、イギリスでさらなる発展を遂げたことを知りました。
当時の映像と再現ドラマが、とても自然に組み合わされていて、再現ドラマも当時の映像が残っていたものなのかと思うほど。1950年代後半から1960年代という時代の色がとてもよく出ていて、郷愁を覚えました。(咲)
2018年/イギリス/英語/85分/カラー/DCP
日本語字幕:上條葉月
配給・宣伝:ダゲレオ出版(イメージフォーラム・フィルム・シリーズ)
公式サイト:http://www.imageforum.co.jp/rudeboy/
★2023年7月29日(土)よりシアター・イメージフォーラム他順次公開
2023年05月21日
aftersun/アフターサン 原題:aftersun

© Turkish Riviera Run Club Limited, British Broadcasting Corporation, The British Film Institute & Tango 2022
監督・脚本:シャーロット・ウェルズ(初長編監督作品)
製作総指揮:エヴァ・イエーツ、リジー・フランク、キーラン・ハニガン、ティム・ヘディントン、リア・ブーマン
出演:ポール・メスカル(ドラマ「ノーマル・ピープル」『ロスト・ドーター』)、フランキー・コリオ、セリア・ロールソン・ホール
11 歳の夏休み、ソフィは、いつもは離れて暮らす父カラムとトルコのひなびたリゾート地にやってきた。滞在中に31歳の誕生日を迎える若い父。兄に間違えられそうだ。工事中のリゾートホテルに着くと、ツインの部屋を予約していたのに、部屋にはダブルベッドが一つ。簡易ベッドを入れてもらう。母親との暮らしや、学校のことを娘に尋ねるも、どこかぎこちないカラム。旅のために購入した家庭用ビデオカメラを娘に向けるカラム。逆にソフィもビデオを父に向け「11歳の時、将来何になりたいと思ってた?」と尋ねる。そんな娘に「なりたい人間になって」というカラム・・・
監督/脚本:シャーロット・ウェルズ

1987年、スコットランド出身、ニューヨークを拠点とするフィルムメーカー。ロンドン大学キングスカレッジの古典学部で学んだ後、オックスフォード大学でMA(文学修士号)を取得。その後、金融関係の仕事をしながら、ロンドンで映画スタッフのエージェンシーを友人と共に経営する。その後、ニューヨーク大学ティッシュ芸術学部でMFA(美術修士号) / MBA(経営学修士)を共に取得する大学院プログラムに入学。在学中は、BAFTAニューヨークおよびロサンゼルスのメディア研究奨学金プログラムの支援を受け、3本の短編映画の脚本・監督を手がける。短編初監督作『Tuesday』(16)は、2016年、エンカウンターズ短編映画祭でプレミア上映され、スコットランドBAFTAのニュータレント賞にノミネートを果たす。2作目『Laps』(17)は、2017年のサンダンス映画祭で編集部門のショートフィルム特別審査員賞を受賞し、サウス・バイ・サウスウエスト映画祭の短編ナラティブ部門の審査員特別賞を受賞。修了制作『Blue Christmas』(17)は、同年9月にTIFFでプレミア上映される。2018年、「フィルムメーカー・マガジン」の“インディペンデント映画の新しい顔25人”に選ばれ、2020年のサンダンス・インスティテュートのスクリーンライター及びディレクター・ラボのフェローとなった。『aftersun/アフターサン』(22)は長編初監督作品である。(公式サイトより)
若い父親とのバカンスを、20年後、その時の父の年齢になって振り返る物語・・・ その後、父とは恐らく会っていない31歳のソフィにいろいろな思いがよぎったことと切なくなりました。
一日バスツアーでギリシャ遺跡や温泉に絨毯屋さんなどエーゲ海沿いのトルコらしい場所で二人は過ごします。これは、実は監督自身が10歳の時に若い父と2週間過ごした時のトルコの思い出。ロケ地はオルデニズ。真向かいにロードス島のある所。
トルコのリゾート地が舞台と知って、トルコが好きな私は大いに期待したのですが、トルコらしいところは、一日のバスツアーの日だけで少ししか出てきませんでした。
ホテルでお茶している場面で、ウェイターにトルコ語で「ありがとう」とカラムが言っていたので、それなりにトルコに行く準備はしてきた設定でしたが。
思えば、地中海沿いのリゾート地を訪れるヨーロッパの人たちにとって、トルコは物価が安いから人気で、目的はあくまでリゾートなのだと思い至りました。到着早々、ガイドの女性が「トレモリノス」と、スペインのアンダルシアのリゾート地の名前を呪文のように出したのは、「ここをトレモリノスと思って~」と解釈していいのかなと。
場所はどこであっても、かげがいのない思い出は人生の宝物。大事な人とたくさんの経験を重ねたいものだと思わせてくれました。(咲)
2022年/イギリス・アメリカ/カラー/ビスタ/5.1ch/101分/G
後援:ブリティッシュ・カウンシル
配給:ハピネットファントム・スタジオ
公式サイト:https://happinet-phantom.com/aftersun/
★2023年5月26日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿ピカデリーほか全国公開
2023年04月16日
グレート・グリーン・ウォール 原題:The Great Green Wall
監督・脚本:ジャレッド・P・スコット
製作総指揮:フェルナンド・メイレレス(『シティ・オブ・ゴッド』) 他
出演:インナ・モジャ、ディディエ・アワディ、ソンゴイ・ブルース、ワジェ他
アフリカに緑を!
マリ出身の女優で歌手のインナ・モジャが気候変動の最前線を旅して、音楽で人々をつなぐドキュメンタリー。
2007年にアフリカ連合(AU)が主導して開始した「グレート・グリーン・ウォール(緑の長城)」プロジェクト。
アフリカの西セネガルから東端のジブチまで、気候変動で沙漠化が加速する8,000kmにわたる地域の壮大な植林計画。完成すれば、人々に生活の糧をもたらすアフリカン・ドリーム。
西アフリカのマリ出身で、パリを拠点に活躍するインナ・モジャがアフリカ横断の旅へ。セネガルからエチオピアまでの道中、セネガルのヒップホップの創始者ディディエ・アワディ、マリのブルース・バンドのソンゴイ・ブルースや、ナイジェリアのワジェなどと楽曲を制作し、各地でライブを重ねる。
「紛争で危険にさらされるのは常に女性」と、特に女性支援に情熱を燃やす。紛争孤児の少女たちと出会い、現実の過酷さに衝撃を受けつつも、「夢は叶えることができる」と、歌で皆を鼓舞していく・・・
地中海をいく溢れるほど人が乗った船が映し出されます。貧困から抜け出そうと、アフリカからヨーロッパに密入国しようとする人たち。命を落とす人も後を絶ちません。
アフリカが緑で豊かになれば、逃げだす必要もありません。このプロジェクトの達成目標は、2030年。命を救うためには、そんなに待てません。
その思いにかられて、アフリカを西から東へと精力的に啓蒙活動をするインナ・モジャの姿が眩しいです。
「夢は叶えることができる。“アフリカの時代”が来ると私は言うけど笑わないで」とインナ・モジャが歌に乗せて語る言葉を皆が信じて努力すれば、沙漠が緑で溢れる日も必ず来るでしょう。これ以上、気候変動が加速しないで!と願うばかりです。(咲)
2019年/イギリス/92分/ドキュメンタリー
配給:ユナイテッドピープル
公開サイト:https://unitedpeople.jp/africa/
★2022年4月22日(土)シアター・イメージフォーラム他全国順次ロードショー!
2023年02月18日
エンパイア・オブ・ライト (原題:Empire of Light)
監督・脚本:サム・メンデス
撮影:ロジャー・ディーキンス
音楽:トレント・レズナー アティカス・ロス
出演:オリヴィア・コールマン(ヒラリー)、マイケル・ウォード(スティーヴン)、コリン・ファース(ドナルド・エリス)、トビー・ジョーンズ(ノーマン)、トム・ブルック(ネイル)、ターニャ・ムーディ(デリア)
1980年イギリス、静かな海辺の町マーゲイトにエンパイア劇場がある。マネージャーとして働くヒラリーは、かつて人間関係で傷ついて今も癒えてはいない。黒人青年のスティーヴンは、建築を学ぶはずが叶わずにスタッフとして働くことになった。明るくて好奇心旺盛な彼はすぐに同僚たちと打ち解け、ヒラリーも少しずつ心を開いていく。
大晦日の夜、一人屋上で新年を迎える予定だったヒラリーのところに、スティーヴンが加わった。前向きなスティーヴンと親しくなるにつれ、支配人との不毛な関係を断ち切る勇気がわいてくる。
サム・メンデス監督がコロナのロックダウン中に、自分の関わった映画と映画館について考えるうちに生まれた脚本。映画愛あふれる脚本に素晴らしいスタッフ、監督の脳内であて書きしていたというオリヴィア・コールマン、新鋭のマイケル・ウォード、名優コリン・ファースやトビー・ジョーンズといったキャストが集まりました。
ヒラリーは傷つきやすく、孤独な女性ですが、そんな彼女を映画館のスタッフたちは暖かく見守っています。若いスティーヴンも屈託なく彼女を受け入れ、彼女に学びます。映写室で映画のあれこれを技師に教わるシーンは、まるでもう一つの『ニュー・シネマ・パラダイス』。壁にはたくさんの名画名優の写真がありました。
初めて恋した少女のようにヒラリーが輝いていくのは、とてもほほえましいのですが、そう簡単には進みません。
失業率が高く、人種問題の暴動も勃発した時代が背景です。古く美しい劇場でささやかな人生の悲喜こもごもが語られています。静謐な撮影、情感に満ちた音楽に彩られたひとときをお楽しみください。(白)
2022年/イギリス・アメリカ合作/カラー/シネスコ/115分
配給:ディズニー
(C)2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.
https://www.searchlightpictures.jp/movies/empireoflight
★2023年2月23日(木・祝)ロードショー