2022年12月11日

トゥモロー・モーニング   原題:Tomorrow Morning

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(C)Tomorrow Morning UK Ltd. and Visualize Films Ltd.

監督:ニック・ウィンストン
脚本・音楽:ローレンス・マーク・ワイス
出演:サマンサ・バークス、ラミン・カリムルー、ジョーン・コリンズ、ハリエット・ソープ

夕暮れ時のロンドン。淡いピンク色の空に映えるタワーブリッジを背景に、10年前の結婚した時の、熱い気持ちを思い出す二人。明日の朝には、離婚調停を控えている。
小説家を夢見ていたビルは、小説は諦めたが、広告業界でコピーライターとして敏腕を奮い、画家を目指していたキャサリンも現代アートの新星として注目を浴びている。結婚式前夜に妊娠が判明し、二人の喜びのもとに生まれてきた息子のザックも10歳になった。順風満帆だったはずの二人なのに、どこでボタンを掛け違えたのだろうか。結婚前夜に佇んでいたテムズ川沿いの同じ場所で、10年前を振り返る二人・・・

もとは、英国の音楽家ローレンス・マーク・ワイスが脚本・音楽を手掛け2006年にロンドンで生まれたミュージカル。舞台はひとつのセットで、二組の男女が、「結婚前夜」と「離婚前夜」の心情を吐露するものだった。オリジナルの初演も演出したニック・ウィンストン監督が、映画化。息子ザックや、まわりの人物も登場させ、舞台とは違うものに仕立てている。

明日からは違う人生を歩み始める二人。いろいろなことが夕暮れの美しい風景の中で脳裏に蘇ってきます。このまま別れてしまうの?と、見ているこちらも切なくなりました。
ビルを演じたラミン・カリムルーが、イラン人で、おぉ~これは!と。革命直前の1978年にテヘランで生まれ、その後、家族でイタリアに移住。3歳の時にはカナダへ。クルーズ船のパフォーマーとして活動ののち、英国を拠点にミュージカル俳優として活動を始め、2002年「レ・ミゼラブル」のフイイ役でウエストエンド・デビュー。ウエストエンド史上最年少の28歳で「オペラ座の怪人」の主役ファントムに抜擢されています。
キャサリン役のサマンサ・バークスも、2010年ミュージカル「レ・ミゼラブル」のエポニーヌ役でウエストエンド・デビューし、ウエストエンド版「アナと雪の女王」でエルサ役など、有名ミュージカルのヒロインを多数演じています。世界最高峰のミュージカル・スター二人の夢の映画初競演です。
ちなみに、お父さん役のオミード・ジャリリもイラン出身でアメリカなどで活躍するコメディアン。ちゃんと血筋、合わせてました。お父さんの出番は少なくて残念でしたが!(咲)


2022年/イギリス/英語/105分
日本語字幕:石田泰子
後援:ブリティッシュ・カウンシル
配給:セテラ・インターナショナル
公式サイト:http://www.cetera.co.jp/tomorrowmorning/
★2022年12月16日(金)よりYEBISU GARDEN CINEMA、シネスイッチ銀座ほか全国公開



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2022年12月03日

MEN 同じ顔の男たち(原題:MEN)

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監督・脚本:アレックス・ガーランド
撮影:ロブ・ハーディ
音楽:ベン・サリスベリー ジェフ・バロウ
出演:ジェシー・バックリー(ハーパー)、ロリー・キニア(ジェフリー)、パーパ・エッシードゥ(ジェームズ)、ゲイル・ランキン(ライリー)

ハーパーはかつては愛し合った夫が、キレやすく暴力的になったことに恐怖を抱いて別れ話を切り出す。変わるからと懇願するのに耳を貸さず、「別れるなら死ぬ」というのも、ただの脅しと思っていた。ところが死にゆく夫を見てしまい、罪の意識に苛まれる。心の傷をいやすために田舎のカントリーハウスに滞在することにした。
オーナーのジェフリーはハーパーを歓迎し、豊かな自然の中の豪華なハウスにハーパーも重荷を下ろす感覚になる。休みを満喫しようと街や森を散策するが、誰かに後をつけられている気がしてならない。忘れたい夫の死もフラッシュバックし、不穏な空気は次第にハーパーを包み込んでくる。

『ミッドサマー』『ヘレディタリー/継承』を送り出した制作会社A24の新作。アレックス・ガーランド監督は『エクス・マキナ』で第88回アカデミー賞®で脚本賞にノミネート、視覚効果賞を受賞しています。こちらは同じくスリラーではあるものの、CGを駆使した未来都市と真逆のイギリスの緑豊かな田舎が舞台です。
ポスターのリンゴの木は、ハーパーが最初にカントリーハウスに足を踏み入れたときに、手を伸ばしてもぎ取って齧ったもの。アダムとイブの禁断の木の実や、白雪姫の毒リンゴが浮かびます。想像通り何かが始まるんですね、これが。
慣れない家に一人というのは安らげない気がして、一人旅が好きな私でも御免こうむりたいです。ハーパーにはなんでも打ち明けられるライリーという親友がいるので、彼女が一緒だったら心強いのに。
会う人会う人が、オーナーのジェフリーと同じ顔というのも奇妙というより、怖い。ハーパーを追い詰めていったのは妄想なのか、夫の恨みつらみが招いたものなのか、はたまた事実なのか。
正視できないものも登場しますが、撮影は美しく、ここぞというときに流れる音楽がまた多様。(白)


自宅で夫が死ぬ瞬間を見てしまったハーパーは車で4時間かかる田舎のカントリーハウスに逃れるのですが、(白)さんも書いている通り、こんな広いところにたった一人では、かえって怖くて落ち着けません。逃避したつもりが、周りには変な男ばかり現れるし、夫のことがいろいろ蘇ってきます。イングランドの田舎の美しい風景と裏腹に、凄いものをみてしまったという物語でした。

イギリスには行ったことがないのですが、いつかコッツウォルズのマナーハウスに泊まってみたいと思っていました。本作の撮影地は、Gloucestershire(イングランド南西部にある行政区域)とエンドロールにありました。映画の中で、警察に場所を知らせるのに「cotson」村と、ハーパーが叫んでいるのですが、架空の名前。Withingtonというところで2021年4月から5月にかけて,撮影されたらしいです。
かつての荘園の邸宅がマナーハウスだと思っていたのですが、今回、「カントリーハウス」と言っているので、どう違うの?と検索してみました。
貴族が自分たちの領地である「荘園」の中に作らせていた城が、マナーハウス。その後、15世紀頃から貴族がロンドンに別邸(タウンハウス)を建て、荘園の本邸(マナーハウス)がカントリーハウスと呼ばれるようになったそうです。そして、貴族より持っている土地が少ない「ジェントリー」や「スクワイアー」階級の邸宅が、マナーハウスと称されるようになったのだとか。
また、ハーパーの自宅はロンドンのテムズ川に面しているのですが、見えているのはロンドン橋だと思ったら、「タワーブリッジ」(テムズ川に架かる跳開橋)でした。よく名前を間違えられると書いてありました。
怖い場面もありますが、英国の美しい風景を楽しみたい方はぜひご覧ください。(咲)




2022年/イギリス/カラー/シネスコ/100分
配給:ハピネットファントム・スタジオ
(C)2022 MEN FILM RIGHTS LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
https://happinet-phantom.com/men/
★2022年12月9日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開

posted by shiraishi at 13:03| Comment(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ジョン・レノン 音楽で世界を変えた男の真実(原題:Looking for Lennon)

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監督・編集:ロジャー・アプルトン
出演:Gary Mavers (ナレーション/声の出演)
Rod Davis (ザ・クオリーメン)
Bill Smith (ザ・クオリーメン)
Colin Hanton (ザ・クオリーメン)
Len Garry (ザ・クオリーメン)
Chas Newby (ザ・ビートルズ)
David Bedford (ザ・ビートルズ歴史研究家)
Paul Farley (詩人、作家)

世界中で愛されているバンド、ザ・ビートルズが世に出て60年。数多くのドキュメンタリーが作られてきました。この作品はリーダーのジョン・レノンにフォーカス、生まれてからの波乱万丈の日々を関係者や友人のコメント、懐かしい映像や写真をおりこんで紹介しています。
ジョンの生い立ちから始まり、少年から青年へと成長するとき、彼の音楽性が何によって生まれ、育てられたのか?影響をうけたミュージシャンは誰だったのか、いつどうやってメンバーと出会ったのか、順を追って紹介します。案内人はザ・ビートルズの歴史研究家デビッド・ベッドフォードと、詩人・作家のポール・ファーリー教授 。
1956年リヴァプール、ジョンが高校生のときに結成した「ザ・クオリーメン」はビートルズの前身、当時のメンバーがそれぞれの思い出を語っています。家族や友人から聞いたことのないエピソードも飛び出して、へ~とか、ほ~とか思わず声が出てしまいました。それはいくらジョンでもヤダと思ったり、なるほどねと納得したり。
鑑賞後は、曲を聴きたくなること必至です。今や検索すればいくつものライブ映像もヒットします。いい時代ですね。
英国ナショナル・フィルム・アワードでは最優秀ドキュメンタリー映画賞にノミネートされました。(白)


2018年/イギリス/カラー/93分
配給:NEGA
(C)SEIS Productions Limited
https://lookingforlennon.jp/
★2022年12月8日(木)ロードショー
posted by shiraishi at 13:00| Comment(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年11月26日

ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ(原題:The Electrical Life of Louis Wain)

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監督・脚本:ウィル・シャープ
原案・脚本:サイモン・スティーブンソン
撮影:エリック・アレクサンダー・ウィルソン
ナレーション:オリビア・コールマン
出演:ベネディクト・カンバーバッチ(ルイス・ウェイン)、クレア・フォイ(エミリー・ウェイン)、アンドレア・ライズボロー(キャロライン・ウェイン)、トビー・ジョーンズ(ウィリアム・イングラム卿)

19世紀のロンドン。上流階級の家に長男として生まれたルイス・ウェインは20歳のときに父を亡くし、母と5人の妹たちを彼一人が養うことになった。美術学校を出た後、教師の職につくが薄給で食べて行けずフリーの画家となる。妹の家庭教師だったエミリーと恋に落ち、年の差や階級の違いのため周囲に猛反対されるも結婚にこぎつけた。ようやく穏やかな暮らしを手に入れた二人だったが、エミリーに末期がんが見つかる。エミリーは迷いネコのピーターを可愛がり、ルイスは余命少ない妻のためにピーターの絵を描き続けた。ルイスの猫の絵は評判を呼び、多くの注文が舞い込む。

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世の猫好きな方々は作者を知らなくても、ルイス・ウェインの絵をきっとどこかで目にしたことがあるはずです。絵はがきは800種類もあり、かの夏目漱石もそれを手に入れていたのでは?とか。今回映画を見て初めてこういう人が描いていたんだ!と大発見をした気分でした。
ベネディクト・カンバーバッチは、気弱で経済観念に乏しいのに一家を背負わねばならなかった20代から、最盛期、統合失調症を患って精神病院に入院した晩年までを演じています。必死に働き、あれほど売れながら、絵の権利や契約の知識がなく晩年は貧困にあえいだルイスが気の毒です。上流階級の女性が仕事を持つことなどなかった時代、結婚が重要視されていました。そんな時代にルイスの妹たちは一人が精神を病んだことから、ほかの姉妹に結婚話が来なかったというのもルイスの重荷であったでしょう。
彼の人生の中で一番幸せだったに違いない愛妻エミリーとの3年あまりの生活を中心に、生き生きと描かれた猫の絵もふんだんに登場します。当時猫は犬のようにはペットとして飼われず、悪い印象だったというのが意外です。あんなに可愛いのに。
画家の役では筆持つ手元だけはプロの人に代わることもあるようですが、カンバーバッチ氏自らの筆さばきです。絵やイラスト好きな方、猫好きさん必見の作品。ルイスとエミリーの暮らしの背景となる家のたたずまいや外景が、泰西名画のように美しいです。ウィル・シャープ監督は、俳優・監督として注目されている日系英国人。かつて監督作で共演したオリビア・コールマンが落ち着いた声音でナレーションを務めています。(白)


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ルイス・ウェイン・コレクション展が12月21日から。こちら

犬派か猫派か?と聞かれると、犬は飼ったことはあるけれど、猫は飼ったことのない私。友人には猫好きが多くて、それこそ猫可愛がりしています。ルイス・ウェインの生きたヴィクトリア朝の英国では、猫はあくまで鼠退治要員であって、ペットとして飼うものではなかったそうです。そも、西洋では、猫は魔女や悪魔の使いという位置づけだったのです。ルイス・ウェインは、妻の可愛がった迷い猫にピーターという名前も付けたのですが、友人から「まさか猫をペットにする気か?」と言われています。
1907年10月に、ルイス・ウェインはアメリカの新聞王ハーストから、「ニューヨーク・アメリカン」紙に猫の漫画を描いてくれと依頼を受けて渡米します。「日米協定で日本人は道を自由に歩けるようになったのに、猫は自由に道を歩けない」という言葉が出てきました。ルイスは、「猫の為にニューヨークに行く!」という意気込みだったようです。1910年に母が病気との報を受けて帰国しますが、死に目に会えませんでした。3年間アメリカで暮らしましたが、財産は作れなかったとのこと。帰国後、次々に家族が不幸に見舞われ、ルイス本人も精神に異常を来たしていきます。それでも、生涯、好きなだけ猫の絵を描いて過ごしたと知り、少しほっとさせられました。(咲)


2021年/イギリス/カラー/スタンダード/111分
配給:キノフィルムズ
https://louis-wain.jp/
(C)2021 STUDIOCANAL SAS - CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION
★2022年12月1日(木)TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー
posted by shiraishi at 12:40| Comment(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年11月20日

マリー・クワント スウィンギング・ロンドンの伝説  原題:QUANT

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©2021 MQD FILM LIMITED. ALL RIGHTS RESERVED.


監督:サディ・フロスト 
出演:ケイト・モス、ヴィヴィアン・ウェストウッド、デイヴ・デイヴィス(ザ・キンクス)、ピート・タウンゼント(ザ・フー)、ポール・シムノン(ザ・クラッシュ)

ビートルズ、ツイッギー、ローリング・ストーンズと共に1960年代スウィンギング・ロンドンというムーヴメントを起こしたマリー・クワント。その知られざる素顔とデザインの秘密に迫るドキュメンタリー

教育者の家庭で育ったマリー・クワントは、アートスクールで貴族階級出身のアレキサンダーと運命的に出会う。1955年、自分が着たい服をクリエイトし、ロンドン初のブティック《BAZAAR》をチェルシーのキングス・ロードにオープン。開店直後からマリーがデザインした服は奪い合いになり、60年代初めには動きやすくて少女らしさを演出するミニスカートが世界中で大ブームを巻き起こした。マリーが才能を発揮できるように、夫となったアレキサンダーは渉外・後方担当として支えた。
当時の熱狂を知る関係者へのインタビューとアーカイブから、マリーの横顔と生涯を添い遂げた夫婦の知られざるエピソードが明かされる・・・

*注:個人を指す表記は「マリー・クワント」、ブランドを指す表記は「マリークヮント」

マリーは、ミニスカートに合うアンダーウェアやカラフルなタイツも考案。さらに、絵具パレットのような使いやすい化粧品は大人気になりました。
マリー夫妻にブティック開店を勧め、出資もしたのは、友人で弁護士のアーチー・マクネアでした。ライセンス事業という形で世界に広げていったのも、弁護士アーチーの存在があってこそでしょう。ポーチや香水、インテリア・・・ くっきりしたデイジーの花のマークが可愛くて、どれもすぐに「マリークヮント」とわかります。今も街でよく見かける「マリークヮント」ですが、実は、世界最大規模の店舗展開されたのが日本。しかも、日本独自の商品開発でインテリアやキッチン用品など多岐にわたる商品にデイジーの花があしらわれたのです。
映画を見終わって、マリーの「着たい」を生み出した才能はもちろんですが、アレキサンダーという素敵な伴侶を見つけたのも才能だなと思いました。
監督のサディ・フロストは、映画、演劇、テレビで30年以上のキャリアを持ち、プロデューサー、俳優、ファッション・デザイナー、作家の顔も持つ多才な女性。 (咲)


「マリークヮント」の花のマークは、5弁の花びらが日本の梅の花と同じ意匠。蕊でなく丸い花芯となっているところが違いますが、そんな親近感もあって可愛いもの好きの女性の心をつかんだのでしょう。私もいくつか持っていて、ずいぶん前にイギリスのブランドだと知らないまま、イギリス在住の友人へのお土産にお財布をプレゼントしたことがあります(恥)。日本で展開している商品はまた違ったのか、気遣ってくれたのか喜んでもらえました。
そんなことも思い出しながら拝見した本作、(咲)さんが書いているように、才能あふれるマリーがはつらつとして、女性から見ても魅力的です。後を行く女の子たちのあこがれの的であったはず。(白)


☆映画公開と同日の11月26日(土)より、Bunkamuraザ・ミュージアムにて「マリー・クワント展」も開催!

2021年/イギリス/英語/90分/ビスタサイズ/映倫区分G
協力:マリークヮント コスメチックス/後援:ブリティッシュ・カウンシル
配給:アット エンタテインメント
公式サイト:http://www.quantmoviejp.com/
★2022年11月26日(土)よりBunkamuraル・シネマほか全国順次公開

posted by sakiko at 01:12| Comment(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする