2020年08月29日

映画 きかんしゃトーマス チャオ!とんでうたってディスカバリー!!    原題:Thomas & Friends: Digs & Discoveries

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監督:ジョーイ・ソー
脚本:デイビー・ムーア、ベッキー・オーバートン
声の出演:比嘉久美子、田中完 ほか
特別出演:山口もえ、田村裕(麒麟)、川島明(麒麟)

青いボディのトーマスは、小型タンク式蒸気機関車の頑張り屋さん。車体番号は1番。
ソドー島ではトラブル続きで、トーマスたち蒸気機関車は大忙し。港で事故が発生。ティドマス機関庫の蒸気機関車たちは「スチーム・チーム」を結成し、なんとかピンチを切り抜ける。そのあと、イタリアで仕事をすることになったトーマス。イタリアで「消えた機関車」の伝説を耳にして興味を抱く。イタリアでは、女の子の機関車ジーナ(声:山口もえ)が、トーマスにいろいろなことを教えてくれる。果たして、消えた機関車の真相は?

2020年で原作誕生75周年を迎える、イギリス生まれの児童向けアニメ「きかんしゃトーマス」の劇場版。
2019年、国連が「きかんしゃトーマス」シリーズを通じて、世界の子どもたちに地球を守る為のメッセージを伝えていくことを発表。2015年9月に国連で採決されたSDGs(17の持続可能な開発目標)にちなんだエピソードをテレビシリーズや映画で展開しています。前作『映画 きかんしゃトーマス Go!Go!地球まるごとアドベンチャー』では、トーマスが世界を巡り、見知らぬ文化や歴史を伝える役目を果たしました。本作でもソドー島を飛び出し、イタリアへ。女の子の機関車も大活躍していて、ジェンダー平等も根底に流れています。
友達の素晴らしさ、人と助け合うことや、自ら積極的に動くことの大切さを子どもたちに自然に教えてくれる物語です。(咲)


2019年/イギリス/デジタル/70分/ヴィスタ/カラー/5.1ch
提供:ソニー・クリエイティブプロダクツ
配給:東京テアトル
配給協力:イオンエンターテイメント
公式サイト:https://movie2020.thomasandfriends.jp/
★2020年9月4日(金)全国ロードショー




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2020年08月23日

オフィシャル・シークレット  原題:OFFICIAL SECRETS

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監督:ギャヴィン・フッド
出演:キーラ・ナイトレイ、マット・スミス、マシュー・グード、レイフ・ファインズ

2003年初頭、イラク打倒を目論む米国に同調する英国の諜報機関で働くキャサリン・ガンが違法な工作活動をリークし、世間を騒がした。本作は、勇気ある告発をした実話に基づく物語。

2003年1月。英国の諜報機関GCHQ(政府通信本部)で翻訳分析官として勤務するキャサリン・ガン(キーラ・ナイトレイ)はある日、米国の諜報機関NSA(国家安全保障局)から送られたメールを見て驚愕する。イラク侵攻を強行するため、国連安全保障理事会のメンバーの動向を探るスパイ活動を指示するものだった。キャサリンは、元同僚で反戦運動家の友人を訪ね、マスコミにリークしたいと相談する。
2週間後、メールの内容が英国「オブザーバー紙」の一面を飾る。マーティン・ブライト記者(マット・スミス)の勇気ある告発記事だった。
英国GCHQでは、リークした犯人探しが始まる。キャサリンは、仕事仲間に執拗な尋問が及ぶ状況に耐えきれず、告発したのは自分だと名乗り出る。
しかし、キャサリンの告発も虚しく、3月20日、米英によりイラク侵攻は強行される。
起訴されたキャサリンを救おうと人権派弁護士ベン・エマーソン(レイフ・ファインズ)らが立ち上がった・・・

2001年9月11日の同時多発テロ事件以降、テロへの報復に躍起になっている米国政府の態度を腹立たしく見ていたのを思い出します。そして、ついに2003年3月20日、米英により強行されたイラク侵攻。今では、イラクが大量破壊兵器を開発しているというのは米国のでっち上げだったことが明らかになり、サッダーム・フセインを倒してもイラクに平和は訪れず、米英のイラク侵攻のツケはイラクの庶民にまわっています。
キャサリン・ガンは、そのような状況になることを見越して、理不尽なスパイ指示をリークしたに違いありません。
キャサリン・ガンは、台湾で育ち、日本に留学し、広島で英語を教えていたことがあり、反戦の思いを強くしたのだと思います。また、パートナーがトルコ出身のクルド人。強制送還されないために結婚したのかとまで言われたようです。映画の最後に映されるご本人の姿は、とても清楚で誠実な雰囲気でした。「私は政府じゃなくて国民に仕える」という言葉が心に残りました。キャサリン・ガンは無罪になりますが、それ以上追及すると、証拠を開示することになり、政府が違法に戦争に介入したことが明らかになるからという事情でした。世の中には不都合な真実がまだまだありそうです。 (咲)


ギャヴィン・フッド監督の前作『アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場』(2015年)は、幼い少女が巻き込まれる可能性がある中でのドローンによる自爆テログループ攻撃の是非を問う作品でした。今回はイラク侵攻の正当性をでっち上げたいアメリカをイギリスの諜報機関である政府通信本部(GCHQ)が手助けするよう職員に指示を出したことに危険を感じた職員がリークした実話を基にしています。ギャヴィン・フッド監督はイギリス国家に強い疑問を感じているのかもしれません。
裁判の結果は唖然とするものでした。だからこそ国家の闇の深さを感じます。この事件は忘れちゃいけない!(堀)


2018年/イギリス/カラー/英語/112分/シネマスコープ/5.1ch/G
配給:東北新社 STARCHANNEL MOVIES
©2018 OFFICIAL SECRETS HOLDINGS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
公式サイト:http://officialsecret-movie.com/
★2020年8月28日(金) TOHO シネマズ シャンテほか全国公開




posted by sakiko at 04:22| Comment(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年07月28日

ジョーンの秘密 ( 原題:Red Joan)

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監督:トレバー・ナン
製作: デビッド・パーフィット
出演:ジュディ・デンチ、スティーヴン・キャンベル・ムーア、ソフィー・クックソン、トム・ヒューズ、ベン・マイルズ

夫亡き後、イギリス郊外で穏やかな余生を送っていたジョーン・スタンリー(ジュディ・デンチ)は、2000年5月、突然家を訪ねてきたMI5のエージェントに逮捕される。50年以上も昔、ロシアのKGBに核開発の機密情報を流したスパイ容疑だという。無罪を主張するジョーンだったが、彼女の息子で弁護士として立ち会うニック(ベン・マイルズ)も知らない過去が次々と明かされていく。

英国とソ連、ナチスドイツの政治力学を背景としたスパイ映画は少なくない。が、そのスパイが80代の老女だとしたら?今から20年前の2000年、英諜報機関MI5が、KGBに核開発の機密を流していた“核時代最後のスパイ”を逮捕した実話を基にしている。
不起訴にはなったものの、英国民から” グラニースパイ”と呼ばれたジョーン・スタンリーを演じるのは、『007』シリーズの“M”でもあるJ・デンチ。典型的な住宅街で庭木の手入れをする老女が公務秘密法での逮捕を境に、映画はケンブリッジ大学時代のジョーンに戻る。

宿舎の窓から忍び込んできた酔いどれ女子学生ソニアと出会ったことから、ジョーンの数奇な運命が始まるのだ。物理を学ぶジョーンは、ソニアの従兄弟と称すレオの演説に夢中になる。川辺での逢瀬、ディケンズや政治の話、2人の秘密の場所!ケンブリッジ大学でロケしただけあって、若かりし頃の回想シーンは臨場感と躍動に満ちている。

場面は現在のジョーンに戻る。逮捕を聞きつけた弁護士の息子が駆けつけ、
「スパイだって?母さんが?!」
足枷を見せるジョーン。失望した顔の息子…。現在〜回想と時系を繰り返すことによって生じる緩急は、本作にリズミカルなテンポを編み出す。

政治と縁遠い場所にいた市井の娘が、スパイになるきっかけには意外にも日本が関与しているのだ。劇中、ジョーンをお茶汲みとして軽く見る場面が度々出てくる。個人的にはジョーンの持つ”母性”が主題の肝になっていると感じた。

若かりし頃のジョーン役ソフィー・クックソン(『キングスマン』)はデンチを凌ぐ熱演。恋人レオのトム・ヒューズ、息子役のベン・マイルズ、ジョーンにとって運命の人となるマックス・デイヴィス教授、スティーヴン・キャンベル・ムーア( 『ダウントンアビー』のチェトウッド少佐)ら、”世界一俳優の層が厚い国”英国の演者陣を堪能する映画でもある。
また、核開発という今日にも通ずる主題は十分な普遍性を持ち得るだろう。(幸)


ケンブリッジ大学で熱心に物理学を学ぶジョーンがなぜKGBのスパイになったのか。そのキーになるのが、若きジョーンが魅かれた2人の男性。まずは友人のいとことして紹介されるユダヤ系ロシア人レオ。トム・ヒューズが危険な香りを漂わせる。もう一人が大学を卒業したジョーンが働く研究機関で原爆開発を率いるマックス・デイヴィス教授。スティーヴン・キャンベル・ムーアが大人の落ち着きを醸し出す。しかし、恋愛が真面目な女性の運命を狂わせたわけではない。彼女には一途な信念があった。それは80歳になっても揺らぐことがない。
スパイものと聞くとバリバリのアクションものをイメージするかもしれないが、本作はそれとはだいぶ違う。科学の進歩と政治の危うい関係をきっぱりとはねつけたジョーンに賛否両論あるだろうが、議論のきっかけとして大きな意味を持っていると感じた。(堀)


2018年製作/101分/PG12/イギリス/5.1ch/カラー/シネマスコープ
配給:キノフィルムズ
(C)TRADEMARK (RED JOAN) LIMITED 2018
公式サイト: https://www.red-joan.jp/
★8月7日(金)からTOHOシネマズ シャンテほかにて公開★
posted by yukie at 17:04| Comment(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年07月08日

リトル・ジョー ( 原題:Little Joe)

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監督:ジェシカ・ハウスナー(『ルルドの泉で』)
音楽:伊藤貞司
出演:エミリー・ビーチャム、ベン・ウィショー、ケリー・フォックス、キット・コナー

シングルマザーの研究者アリス(エミリー・ビーチャム)は、幸せになる香りのする新種の植物リトル・ジョーを開発するが、仕事にのめり込むあまり息子のジョーと向き合っていないことに後ろめたさを感じていた。ある日アリスは、リトル・ジョーを植えた鉢を持ち帰り息子にプレゼントする。しかし、花の香りをかいだジョーや、花粉を吸い込んだアリスの助手クリス(ベン・ウィショー)の様子が徐々におかしくなる。

冒頭から響き渡る尺八、箏、笙の音。真上から撮影される化学プラント。植物が居並ぶ無機的な空間。音響、カラフルな絵造りが映画に新鮮な調和を齎らす。"感染"が主題でもある本作は、今まさに鑑賞すべき作品と言える。母性ホルモンを誘発し、放つ香りは人々を幸せにする植物=リトルジョー。「幸せにする」プラントの意匠に温かみがなく、白ベースに青、赤の植物が整然と植えられたデザインはクールな印象である。日本人作曲家、故・伊藤貞司による楽曲は、寧ろ“怪談”を想起させ、時にケチャのようにも聴こえ、不穏な空気を醸し出す。

『ルルドの泉で』で宗教的奇跡と残酷さを演出したオーストリアの女性監督ジェシカ・ハウスナーが初のSFに挑んだ。種子を遺伝子を残せない、生殖させない改良を人工的にほどこした植物。花粉を吸った時に生じる反動を冷徹な話法で描き出す。

家族、同僚、知人、被験者といった集合体で登場する人物に扮する俳優たちは、いたって普通のドラマのように演じているため、事象の異様さが際立つ。エミリー・ビーチャム、ベン・ウィショー、子役のキット・コナーなど英国の演技巧者を集めた中、最も印象深い人物造形を残したのは、ジェーン・カンピオン作『エンジェル・アット・マイ・テーブル』(90)の主演が未だ忘れ難いケリー・フォックスだ。扮する同僚ベラの存在を契機として起こる事件がラストへと繋がる伏線となっており、本作に於ける重要なキーパーソンだろう。
”感染”と立ち向かう現在、多くの示唆を孕んだ問題作だ。(幸)


子どもを産むと女性は誰でも自分の子どもを最優先すると思われています。でも、中にはそれまで築いてきた仕事のキャリアの方が大事だと思ってしまう人もいるでしょう。ただ、それを表に出すと人間失格の烙印を押されてしまう気がして、隠しているのではないでしょうか。

この作品の主人公アリスもその1人、本心は研究に専念したい。正直、息子は研究の足枷。でも息子を見捨てられない。この葛藤を表に出さずに苛まれるアリスをエミリー・ビーチャムが好演。

母親らしさ、女性らしさにとらわれ過ぎず、生きたいように生きることも決して恥ずかしい選択ではないことを作品は伝えてくれます。(堀)


2019/オーストリア・イギリス・ドイツ/105分/カラー/ビスタ/5.1ch/英語
配給:ツイン
(c)COOP99 FILMPRODUKTION GMBH / LITTLE JOE PRODUCTIONS LTD / ESSENTIAL FILMPRODUKTION GMBH / BRITISH BROADCASTING CORPORATION / THE BRITISH FILM INSTITUTE 2019
公式サイト: http://littlejoe.jp
★7月17日(金) アップリンク渋谷、アップリンク吉祥寺他にて全国順次ロードショー★
posted by yukie at 22:58| Comment(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年06月21日

カセットテープ・ダイアリーズ   原題:Blinded by the Light

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監督:グリンダ・チャーダ(『ベッカムに恋して』)
脚本:サルフラズ・マンズール、グリンダ・チャーダ、ポール・マエダ・バージェス
原作:サルフラズ・マンズール「Greetings from Bury Park: Race, Religion and Rock N’Roll」
出演:ヴィヴェイク・カルラ、クルヴィンダー・ギール、ミーラ・ガナトラ、ネル・ウィリアムズ、アーロン・ファグラ、ディーン=チャールズ・チャップマン、ロブ・ブライドン、ヘイリー・アトウェル、デヴィッド・ヘイマン

1987年9月、イギリスのルートン。16歳のパキスタン系の少年ジャベドは高校に入学する。幼なじみの少年マットは恋人ができて忙しい。一人寂しくジャベドがウォークマンで流行のペット・ショップ・ボーイズを聴きながら歩いていると、すれ違いざまにインドにルーツを持つシーク教徒のルーブスからカセットテープを渡される。それは熱烈なファンたちから「ボス」と呼ばれ親しまれているアメリカのブルース・スプリングスティーンの歌。ジャベドは一気に惹きこまれる・・・

イギリスの小さな町で、人種差別や、故国の習慣を守ろうとする父親との確執など、ジャベドの悩みは尽きません。それを吹き飛ばしてくれたのが、スプリングスティーンの音楽でした。人生の価値を見出すほどの衝撃だったのです。カセットをくれたルーブスと親しくするようなったジャベドは、その後、スプリングスティーンの生の歌を聴きにアメリカにも一緒に行くほど意気投合。宗教は違うけど同じインド亜大陸の出身の二人の友情にほろりとさせられます。

原作はパキスタン出身で、イギリスでジャーナリストとして活躍するサルフラズ・マンズールの自伝的な回顧録。監督のグリンダ・チャーダも、スプリングスティーンの大ファンで、サルフラズと一緒に行ったイベントでスプリングスティーン本人に会ったことから、この映画は誕生しました。スプリングスティーン自身が多くの楽曲を本作に提供しています。さらに、アカデミー賞受賞のインドの音楽家A.R.ラフマーンが、オーケストラ編成の曲で映画に彩を添えています。

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グリンダ・チャーダ(写真中央)は、1960年ケニヤ・ナイロビ生まれのインド系。ロンドン育ち。BBCでジャーナリストとしてキャリアをスタートさせ、1989年から監督業に転身。英国映画史の中で、現役の最も多作な女性監督の一人となりました。2006年に大英帝国勲章を叙勲。『ベッカムに恋して』(02)『英国総督 最後の家』(17)等、自身のルーツにゆかりのある作品も数多く手がけています。
また、本作で描かれている80年代の国民戦線などの人種差別主義者の台頭もグリンダ・チャーダ自身が経験したもの。ジャベドの姉の結婚式が行われる日、結婚式場に向かう一行が、頭を剃り上げ、タトゥーで全身を覆った国民戦線の支持者たちのデモ隊に阻まれる場面は圧巻です。街の壁にあふれる人種差別的な国民戦線のスローガンは、実際に当時を経験したグリンダ・チャーダ監督と、父親役のクルヴィンダー・ギールが自ら落書きしたものだとか。
こうした移民排斥や人種差別は、残念ながら今も世界の各地で見られます。この映画で描かれていることは決して過去のことではありません。
そして、出会った音楽が人生を変えてくれるという魔法も、いつの時代にもあることですね。(咲)

2019年/イギリス/117分/カラー/英語/シネマスコープ/5.1ch/G
日本語字幕:風間綾平/字幕監修:五十嵐 正
配給:ポニーキャニオン
© BIF Bruce Limited 2019
公式サイト:http://cassette-diary.jp/
★2020年7月3日(金)TOHOシネマズ シャンテ他全国ロードショー



posted by sakiko at 19:48| Comment(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする