2020年04月05日

アドリフト 41日間の漂流(原題:Adrift)

adlift.jpg

監督:バルタザール・コルマウクル
脚本:アーロン&ジョーダン・カンデル
撮影:ロバート・リチャードソン
出演:シャイリーン・ウッドリー(タミー・オールダム)
サム・クラフリン(リチャード・シャープ)

1983年、婚約したばかりのタミーとリチャードは、ヨットに乗り込みタヒチからサンディエゴへと旅に出た。ところが出発から2週間後、記録的なハリケーンに遭遇し巨大津波に飲み込まれてしまう。船室にいたタミーはしばらくして目を覚ますが、ヨットは操縦不能で無線も繋がらない。さらに、大怪我を負い波に漂うリチャードを発見する。リチャードを助け出したタミーは、極限状態の中、セーリングの知識を総動員し陸を目指すが…。

実話と知っていても、次々と二人を襲ってくる困難にハラハラ。ことにハリケーンに遭遇して、文字通り木の葉のように浮き沈みするのに怖い思いをしました。ヨット好きのタミーですが、知識も経験も豊富なリチャードが頼りです。その彼が大怪我をし、ヨットも大破、食料も水も充分ではないと来たら…海での遭難は絶対体験したくないです。
孤軍奮闘するタミーを『ダイバージェント』シリーズ、『きっと、星のせいじゃない。』(14)のシャイリーン・ウッドリー。アクションも前作で鍛えられたでしょうが、最初から最後まで出ずっぱり。極限状態の後半はさぞ大変な撮影だったはず。カメラさん凄い!と資料を見ましたら、アカデミー賞撮影賞はじめ多くの受賞を果たしているベテランでした。船に弱い方は覚悟のほど。(白)


2018年/イギリス・アメリカ合作/96分
配給:キノフィルムズ
(C)2018 STX FINANCING, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
https://adrift-movie.jp/
2020年4月10日(金)ロードショー →近日公開
posted by shiraishi at 00:11| Comment(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年03月01日

ジュディ 虹の彼方に(原題:Judy)

judy.jpg

監督:ルパート・グールド
原作:ピーター・キルター
脚本:トム・エッジ
撮影:オーレ・ブラット・バークランド
音楽:ガブリエル・ヤーレ
出演:レニー・ゼルウィガー(ジュディ・ガーランド)、フィン・ウィットロック(ロザリン)、ジェシー・バックリー(ミッキー)、ルーファス・シーウェル(シド)、マイケル・ガンボン(バーナード)

10代でハリウッド・スターの仲間入りを果たし、世界各地でその歌とパフォーマンスを愛されていたジュディ・ガーランド。40代の彼女は結婚・離婚を繰り返し、いまや借金まみれ。マネージャーも雇えず、かつての栄光にすがって子連れでステージをこなしていた。ホテル代もなくなって困窮したジュディは、子どもたちを泣く泣く前夫のシドにあずけることになった。若いときから酷使してきた身体と心はボロボロで、薬とアルコールで辛うじて持ちこたえているようなありさま。しかし熱心なファンの応援と、新しい恋人の出現につかのま元気を取り戻す。

『オズの魔法使い』(39)に主役のドロシーとして出演。一躍スターとなったジュディ・ガーランドの伝記映画です。彼女の才能にぶら下がった家族や映画スタジオ。眠らせずに撮影を続け、太らないようにと飲まされ続けた覚せい剤。そんな少女時代から、寂しさを埋めるためのアルコールとドラッグ、母親としての葛藤、新しい恋人との日々が描かれています。亡くなる半年前の1968年冬、ロンドン公演のシーンは圧巻です。自信と不安の間を揺れ動きながらも舞台を愛し、スポットライトと拍手が原動力のスターの想いがあふれていて、今年の主演女優賞はレニー・ゼルウィガー!と確信しました。
レニー・ゼルウィガーが記憶に刻まれたのは、どこにでもいそうな女の子を演じた「ブリジット・ジョーンズの日記」第1作(01)。16年には3作目が作られました。ベアリトリクス・ポター役も良かったですが、『シカゴ』のように歌唱を披露できる作品を待っていたところ、この作品が公開になりました。ジュディ・ガーランドが亡くなって50年、大先輩と同じ年齢のレニーが渾身で体現したこの作品は、さきごろ発表になったアカデミー賞主演女優賞を受賞。いつまでもレニー・ゼルウィガーの代表作になるはずです。(白)


2018年/イギリス/カラー/シネスコ/118分
配給:ギャガ
(C)Pathe Productions Limited and British Broadcasting Corporation 2019
https://gaga.ne.jp/judy/
★2020年3月6日(金)ロードショー
posted by shiraishi at 11:35| Comment(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年02月25日

シェイクスピアの庭 英題:ALL IS TRUE

15826015491070.jpg

監督・製作:ケネス・ブラナー
脚本:べン・エルトン
製作:テッド・ガリアーノ、タマール・トマス
撮影:ザック・ニコルソン
美術:ジェームズ・メリフィールド
衣装:マイケル・オコナー
出演:ケネス・ブラナー 、ジュディ・デンチ、キャスリン・ワイルダー、リディア・ウィルソン、イアン・マッケラン

1613年6月29日、「ヘンリー八世」上演中の火災でグローブ座が焼失し、気力をなくしたシェイクスピア(ケネス・ブラナー)は、断筆して故郷ストラットフォード・アポン・エイヴォンに戻る。8歳年上の妻アン(ジュディ・デンチ)、独身の次女ジュディス(キャスリン・ワイルダー)らは、20年以上もロンドンで仕事漬けだったあるじの突然の帰郷に困惑していた。

文豪シェイクスピアはなぜ49歳で断筆したのか?なぜ20数年ぶりに故郷ストラットフォード・アポン・エイボンへ戻ったのか?…読者には不可解だったシェイクスピアの謎が、監督・主演を務めたケネス・ブラナーなりの解釈で示される。本作はブラナーというフィルターを通して観る人間シェイクスピア像なのだ。

対象を最後の3年間に絞って描いたことが奏功し、最晩年からシェイクスピアの人生そのものが照射されて行く分かりやすい構成となっている。
そのせいか、場面の多くは「黄昏時」。西から射す陽光は庭の草花を優しく照らし出す。イキイキと咲き誇る生の象徴である草花と、人生の黄昏時を迎えたシェイクスピア。柔らかな光が対照性を際立たせる撮影効果は巧みだ。

また、屋内の光源は蝋燭だけという奥行きの深い自然光映像にも心惹かれた。仄暗い灯から照らされる登場人物のきめ細かな表情、ロケに使用された15世紀来の邸宅の隅々や家具調度品、衣装の質感といった細部のディテールまでが優しく映り込み、17世紀の人々の暮らしぶりが手に取るようなリアルさで伝わってきた。映像美にもご注目願いたい。

シェイクスピアは植物への造詣が深かったという。そういえば、戯曲やソネットにも草花の引用、比喩表現が多く見られる。題名の”庭”は、11歳で夭逝した愛息を悼むつもりでシェイクスピアが庭造りを始めた逸話から採ったもの。上手い邦題だ。
英国式庭園は自然の隆形を活かし、草花や樹木を植える。自然を慈しむことで黄泉の国にいる愛息と通じようとしていたのではないだろうか。

原題は「All is true」。ブラナーが捉えたシェイクスピア像がブラナーにとっての”真実”なら、「貴方は客人。客人には最上のベッドを」と夫婦の寝室を拒む妻から見たシェイクスピアも”真実”。シェイクスピアからの思慕を受け入れないサウサンプトン伯爵の眼に映る芸術家もまた”真実”...。多面的な全ての”真実”が本作には宿っていることを気付かせてくれる映画だ。(幸)


配給:ハーク
シネマスコープ/2018年製作/101分/G/イギリス
(C) 2018 TKBC Limited. All Rights Reserved.
公式サイト:http://hark3.com/allistrue/
★3月6日(金)から、Bunkamura ル・シネマほか全国で順次公開★
posted by yukie at 12:34| Comment(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年02月23日

娘は戦場で生まれた  英題:FOR SAMA 

musumewa.jpg


監督:ワアド・アルカティーブ、エドワード・ワッツ
出演:ワアド・アルカティーブ、サマ・アルカティーブ、ハムザ・アルカティーブほか

2012年3月、シリア、アレッポ。
マーケティングを学ぶ18歳の女子学生ワアドは、デモに参加したことをきっかけに、スマホで動画を撮りはじめる。アラブの春に触発され、民主化を求める平和的な運動だったが、やがてアサド政権をはじめ様々な勢力が台頭し、第二次世界大戦後、最大の人道危機とも言われる内戦状態になる。
そんな中、ワアドは医師を志す青年ハムザと出会い恋に落ちる。ハムザたちが設営した病院でプロポーズされ結婚。2016年1月1日、ワアドはパパの病院で娘を産み「サマ」と名付ける。アラビア語で空という意味だ。
ワアドは、サマのために、どんな街でサマを産み、どれだけ彼女を愛しているかを伝えるために動画を撮り続ける。だが、サマが生まれた時には、2016年がアレッポ陥落の年として記録されることになるとは思いもよらなかった・・・

アサド政権やロシア軍が、病院を爆撃するという蛮行を繰り返していることに憤りを感じます。地図に載っていない建物を探して、病院を設営しても、また破壊されてしまいます。人々の行き場がない絶望的な状況は想像を絶します。
ワアドがトルコに避難している義父のお見舞いに行った折、義父からサマを預るといわれるのですが、ワアドはアレッポにサマを連れ帰ります。例え、危険はあっても家族一緒にいたいという思い。
『アレッポ 最後の男たち』でも、トルコに逃れることもできるのに、アレッポに残って町を救おうと闘う人たちが描かれていました。故郷アレッポを愛する思いに涙です。

2016年12月にワアドが一家でアレッポから避難したとき、映像も無事持ち出し、アレッポの市民が蒙った生々しい様子をこうして世に出すことができたのです。
今はロンドンに住むワアド一家ですが、いつの日か故郷に帰りたいという思いは、やむをえず国を出た多くの人たちも同じでしょう。
美しい町並みは破壊されてしまいましたが、建築家になって町をなおすという少年や、燃えたバスに色を塗る子どもたちの姿に、人々が安心して暮らせる町が再建されることを願うばかりです。(咲)


泥沼化する戦地シリアで、戦争と人間を赤裸々に映しだした緊迫のドキュメンタリー
内戦の続くシリア、アレッポ。2012年から撮り始め、アレッポ陥落の2016年まで、この状況を撮影したのがこの映像。本当の戦争状態の記録である。ジャーナリストを目指す女学生ワアド・アルカティーブは、アサド独裁政権反対デモへの参加をきっかけにスマホでの撮影を始めた。しかし、平和を願う人々の思いはかなわず、内戦は激化するばかり。美しかった都市は破壊されていった。 
そんな中でワアドは、医師を目指し仲間たちと廃墟の中に病院を設けたハムザと出会い結婚。女の子が生まれ、自由と平和への願いを込めて、アラビアで「空」を意味する「サマ」と名付けた。サマはこんな状況の中でも無邪気。それがいっそう涙を誘う。
幸せもつかの間、独裁政権側の攻撃は激しさを増し、ハムザたちの病院は街で最後の医療機関となってしまった。明日をも知れぬ身で母となったワアドは、家族や愛する人々の生きた証を映像として残すことを心に誓い撮影を続けた。これは、若き母親ワアドの目を通して記録された戦争の現実。
脱出成功したワアドが、無差別空爆で無残に失われていく命、祖国を愛する人々の悲しみを死と隣り合わせの中でとらえた映像は、世界中を驚愕させた。ワアドは「私にとってこれは、私の人生そのもの。母親のワアド、活動家のワアド、市民ジャーナリストのワアド、そして映画監督のワアド。これらすべての私が物語を具体化し導いてくれました」と語っている(暁)。


☆シアター・イメージフォーラムでは、初日2月29日(土)14:35の回上映後、ワアド・アルカティーブ監督と、夫のハムザ医師がスカイプで登壇しQ&Aを開催


2019年/イギリス、シリア/アラビア語/100分
日本語字幕:岩辺いずみ/字幕監修:ナジーブ・エルカシュ
© Channel 4 Television Corporation MMXIX
配給:トランスフォーマー
公式サイト:http://www.transformer.co.jp/m/forsama/
★2020年2月29日(土)よりシアターイメージフォーラムほか全国順次公開





posted by sakiko at 19:43| Comment(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年01月31日

グッドライアー 偽りのゲーム 原題:THE GOOD LIAR

15800939920012.jpg

監督:ビル・コンドン 
原作:ニコラス・サール
脚本:ジェフリー・ハッチャー
出演:ヘレン・ミレン、イアン・マッケラン、ラッセル・トベイ、ジム・カーター

ベテラン詐欺師のロイ(イアン・マッケラン)は、出会い系サイトで夫が他界して間もない資産家のベティ(ヘレン・ミレン)をターゲットに定める。ロイが全ての財産をだまし取ろうとひそかに準備を進める一方で、世間知らずのベティは彼に心を許していく。

美し過ぎる74歳(!)と恐るべき80歳!英国を代表する名優同士の競演である。これにジム・カーター(矍鑠とした71歳。「ダウントン・アビー」の執事)も絡み、騙し騙されを繰り広げた後、思わぬ展開が...ネタばれご法度作品のため印象を中心にご紹介したい。

出演者の平均年齢は高いとしても、決して老練な話法の映画ではない。編集のテンポ、リズムとも若々しい躍動に満ちている。
象徴するのはマッケランの闊達なウォーキング!長い手脚、広い歩幅、高齢者の摺り足とは真逆な運び。ビジネスバッグを後ろ手に持ったスーツ姿の何と粋なこと!
マッケランのアクションシーンは流れるように無駄のない一瞬の身体の動きだ。お見逃しなく。

対するヘレン・ミレンのエレガントな物腰。初対面で見せる恥じらんだ初々しい表情。カップを持つ仕草まで気品を滲ませる。高級オーデコロンの薫りが画面から漂ってきそうだ。
知性・教養があることをひけらかさず、お嬢さまのような無防備さも併せ持つ微妙な役柄にグラデーションをつけて演じるのはミレンならではの技量である。

鉄道局が特別許可したというロンドンの地下鉄。ピカデリー街にある書店、老舗帽子店や有名百貨店など、目眩くロンドンロケから某国へと移動するにしたがって映像は緊張感を帯びてゆく。

ビル・コンドン監督とマッケランは『ゴッド・アンド・モンスター』以降、『Mr.ホームズ 名探偵最後の事件』などタッグが多い。オープンゲイ同士ということもあってか、息ピッタリな様子が伝わってきた。
前2作品同様、諦観とブラックユーモア、切なさが幸福な融合を果たすコンドン特有の話法である。


配給:ワーナー・ブラザース映画
2019年製作/109分/G/アメリカ
C)2019 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved
公式HP:http://wwws.warnerbros.co.jp/goodliar/
★2020年2月7日(金)より、全国公開★
posted by yukie at 10:23| Comment(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする