2025年06月01日
We Live in Time この時を生きて 原題:We Live in Time
監督:ジョン・クローリー(『ブルックリン』)
出演:フローレンス・ピュー、アンドリュー・ガーフィールド
新進気鋭の一流シェフであるアルムート(フローレンス・ピュー)と、離婚して失意のどん底にいたシリアス会社に勤めるトビアス(アンドリュー・ガーフィールド)。思いもかけない出会いから、二人は恋に落ちる。自由奔放なアルムートと慎重派のトビアスは何度も危機を迎えながらも、一緒に暮らし娘が生まれ家族になる。そんなある日、アルムートの癌が再発。医師から余命を告げられたアルムートは、トビアスに苦しい治療に耐えるだけの1年間より、最高に楽しくて前向きな半年間を過ごしたいと伝える。3歳の娘エラにも、きちんと病気のことを説明する。そんな中、元上司のサイモンから、世界最高峰の料理コンクール「ボキューズ・ドール」に出ないかとのメールを受け取る。参加を反対するトビアスには内緒で準備を進めるアルムート。一方、トビアスは最高に素敵な結婚式と披露宴を開こうと提案。よりによって、ボキューズ・ドールのイギリス代表選考会の日と結婚式の日がぶつかってしまう・・・
自分のレストランを持てるほど仕事も順調、心惹かれる男性に出会い、娘にも恵まれ、最高に幸せな時に、自分の命があとわずかと知ったアルムート。最後まで諦めず、タイムリミットいっぱい、挑戦し続ける姿が素敵です。さて、自分ならどうする?と考えさせられました。
治療が始まれば髪の毛が抜けるからと、娘に見守れながらトビアスに髪の毛をばっさり切ってもらう場面があります。なのに、また髪の毛が長い場面が・・・
時間軸がいったりきたりして、くらくら。それがまた、この映画の魅力。
卵を割る場面で始まり、卵を割る場面で終わる、切ないけれど生きることの意味を教えてくれる一作。(咲)
2024年/フランス・イギリス/英語/108分/カラー/スコープ/5.1ch
字幕翻訳:岩辺いずみ
配給:キノフィルムズ 提供:木下グループ
公式サイト:https://www.wlit.jp
★2025年6月6日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国公開
2025年05月16日
サブスタンス(原題:The Substance)
監督・脚本:コラリー・ファルジャ
撮影:ベンジャミン・クラカン
特殊メイクアップ・アーティスト:ピエール=オリヴィエ・ペルサン
出演:デミ・ムーア(エリザベス)、マーガレット・クアリー(スー)、デニス・クエイド(ハーヴェイ)
長くトップ女優に君臨していたエリザベスも50歳になって、仕事が少なくなってきた。後進の若い女優たちと比べるとかつての容色も衰えたと自分でも思う。看板番組のフィットネスの仕事を下ろされたとき、禁断の再生医療に手を出してしまう。
「サブスタンス」を摂取すると、エリザベスの背を破って若く美しいスーが現れた。これまでのエリザベスの経験や記憶をそのまま受け継いでいる。外側が変わっても同じ自分なのだ。それぞれの命と状態を維持するためには、一週ごとに交代するという厳重な決まりがあった。スーは熱狂的に受け入れられ、エリザベスと交代するルールを守らなくなる。
50歳のエリザベス役のデミ・ムーアは、1962年11月生まれの62歳で十分に綺麗です。輝くように美しかった『ゴースト/ニューヨークの幻』(1990)のころの美貌を望むのは無理な話。「美人」で知られた人が、整形に走ってしまうのもハリウッドでは珍しくなく、彼女もお直し済のようです。
ところが映画では若返りを可能にする再生医療が登場します。整形どころではない、そのシーンに仰天。うまい話には、ご想像通り難しい条件がつきもの。そしてどんなお話でも、約束は破られちゃうんですよね。デミ・ムーアが快演&怪演。マーガレット・クアリーは若さを謳歌して溌剌としたスーを演じています。
かつての美人女優を年取ったからと冷たくあしらい、若いスーをおだて上げるハーヴェイが世の男性の標準なんでしょうかね?痛い目に遭ってもらいたいですが。
エリザベスとスーのその先をぜひ劇場で。予想を越えますよ。(白)
2024年/イギリス、フランス/カラー/142分
配給:ギャガ
(C)2024 UNIVERSAL STUDIOS
https://gaga.ne.jp/substance/
★2025年5月16日(金)ほか全国ロードショー
2025年05月10日
パディントン 消えた黄金郷の秘密(原題:Paddington in Peru)
監督:ドゥーガル・ウィルソン
制作総指揮・脚本:ポール・キング
出演:パディントン(声:ベン・ウィショー)、ヒュー・ボネヴィル(ブラウンさん)、エミリー・モーティマー(ブラウン夫人)、ジュリー・ウォルター(バードさん)、マデリン・ハリス(ジュディ)、サミュエル・ジョスリン(ジョナサン)、ジム・ブロードベント(グルーバーさんん)、ルーシーおばさん(声:イメルダ・スタウントン)、アントニオ・バンデラス(ハンター・カボット)、カルラ・トウス(ジーナ・カボット)、オリヴィア・コールマン(老クマホーム院長・クラリッサ)
ロンドンでブラウン一家と仲良く、平和に暮らしていたパディントン。故郷のペルーの老クマホームから1通の手紙が届く。育ての親のルーシーおばさんの元気がないという内容だった。おばさんが心配なパディントンとブラウン一家がペルーへ行ってみると、ルーシーおばさんは失踪していた!なぜ?
パディントンの里帰りはルーシーおばさんを探す冒険になってしまった。地元に戻ったはずなのに、都会暮らしが長くなったパディントンの野生の勘は働かず、ピンチに陥ること多々。ルーシーおばさんを見つけることができるのか? そして、「消えた黄金郷の秘密」とは?
紳士クマ、パディントンの3作目。パディントンはイギリスのパスポートを手に入れ(写真は笑えますwこれ通らないでしょう)長い里帰りの旅に出ました。迷子になったパディントンを助けて、育ててくれた大切なルーシーおばさんに会うためです。施設に到着してみればおばさんは行方知れずになっていました。ヒントはおばさんの部屋に残っていた地図一枚。川船の船長ハンターと娘のジーナに出逢い、ブラウン家一行はアマゾンの熱帯雨林を抜け、ペルーの山を目指します。
これまでになく積極的に行動するパディントンと、あたふたしながら助け合う一家の冒険をお楽しみください。パディントンの過去も明かされる?そうそう、黄金郷の謎もね。
ペルーの船着き場や市場などは全て英国のセットで撮影され、ペルー人のエキストラが150人も参加したそうです。美術さんの努力の成果に注目~!(白)
2024年/イギリス/カラー/107分
配給:キノフィルムズ
(C)2024 STUDIOCANAL FILMS LTD. – KINOSHITA GROUP CO., LTD. All Rights Reserved.
https://paddington-movie.jp/
https://x.com/eigapaddington
★2025年5月9日(金)全国ロードショー
2025年05月09日
リー・ミラー 彼女の瞳が映す世界(原題:Lee)
監督:エレン・クラス
脚本:パベウ・エデルマン
原作:アントニー・ペンローズ
撮影:パベウ・エデルマン
音楽:アレクサンドル・デスプラ
出演:ケイト・ウィンスレット(リー・ミラー)、アンディ・サムバーグ(デイヴィッド・E・シャーマン)、アレクサンダー・スカルスガルド(ローランド・ペンローズ)、マリオン・コティヤール(ソランジュ・ダヤン)
1938年フランス。ファッション誌「VOGUE」をはじめ、一流モデルとして人気だったリー・ミラーは、芸術家や詩人の親友たちと休暇を過ごしていた。芸術家でアートディーラーのローランド・ペンローズと出会い、瞬く間に恋に落ちる。そんな完備で華やかな生活は第二次世界大戦の脅威が迫ったことで激変した。リーは「VOGUE」にかけあい、写真家としての仕事を得、ファッション写真やポートレイトを撮る側になる。19戦争が激化する中、戦地へ赴くことを決める。女性カメラマンを受け入れなかった戦場だったがリーの行動力がまさった。アメリカ「LIFE」誌のフォトジャーナリスト兼編集者のデイヴィッド・シャーマンとチームを組み、どこへでも出かけた。1945年にはブーヘンヴァルト強制収容所やダッハウ強制収容所などで多くの凄惨な写真を撮影、「これは現実」と本国へ送り続けた。ヒトラーが惨敗を認めて自死した日、リーはミュンヘンにあるヒトラーのアパートにいた。そこの浴室で自分を撮影し、世界へ戦争の終わりを伝える。
『エターナル・サンシャイン』(2004/ミシェル・ゴンドリー監督)で撮影監督だったエレン・クラスの長編映画初監督作品。ケイト・ウィンスレットは10代で映画デビューし、『タイタニック』(1997/ジェームズ・キャメロン監督)でレオナルド・ディカプリオと共演、この映画は全世界興行収入1位。日本でも大ヒットしています。その後も着実にキャリアを積み、観るたびに貫禄がついてきたと思っていましたが。今年10月には50代になるのでした。
リー本人とケイト・ウィンスレットは、見た目も発せられる存在感の強さも似ています。ケイト・ウィンスレットがリーに感銘を受けて、製作に参加。自身が渾身で演じて説得力もあります。浴室での写真はとても有名になったそうですが、長く屋根裏にしまわれていたという収容所の写真は戦争の記録写真としてとても貴重なもの。何度でも同じあやまちを繰り返す人間への歯止めに、楔ともなるはずです。
従軍記者になってからの凄まじい活躍ぶりに既視感が・・・『シビル・ウォーアメリカ最後の日』のキルスティン・ダンスト演じるリーを思い出しました。このリー・ミラーがモデルのようです。「リー・ミラー写真集」が岩波書店から出ています。お近くの図書館を検索してみて。(白)
2023年/イギリス/カラー/116分
配給:カルチュア・パブリッシャーズ
(C)BROUHAHA LEE LIMITED 2023
https://culture-pub.jp/leemiller_movie/
https://x.com/leemiller_movie
★2025年5月9日(金)より全国ロードショー
2025年04月27日
JOIKA 美と狂気のバレリーナ(原題:Joika)
監督・脚本:ジェームズ・ネイピア・ロバートソン
撮影:トマシュ・ナウミュク
振付:ジョイ・ウーマック
出演:タリア・ライダー(ジョイ・ウーマック)、ダイアン・クルーガー(ヴォルコワ)、オレグ・イヴェンコ(ニコライ)、ナタリア・オシポワ(本人)
15歳のジョイの夢は、ボリショイ・バレエ段のプリマ・バレリーナになること。一人ロシアに渡り、アカデミーの練習生になった。教師のヴォルコワのレッスンは厳しく、取り残されないように必死で頑張るジョイへの風当たりは強い。全員がライバルの研修生同士の足の引っ張り合いも激しい。もっと上達しなければ、とジョイ本人の要求も増すばかりだ。
2012年にアメリカ人女性で初めて「ボリショイ・バレエ団」とソリスト契約を結んだジョイ・ウーマックの実話を元にしたストーリー。『不思議の国のリリアン』で女子高生リリアンを演じたタリア・ライダーが、ジョイ役。夢を抱いて単身ロシアに学びに来た少女がアメリカ人であるという理由で、ほかの研修生の何倍もの苦労を味わいます。小さなときから一心に打ち込んできたジョイのこだわりは、はたからは狂気じみて見えますがどうしても諦めることはできません。どん底のジョイに手を差し伸べたのは厳しかったヴォルコワでした。
演じるダイアン・クルーガーはドイツ人。やはりプリマを志してイギリスのロイヤルバレエスクールに進みましたが、こちらは怪我で断念しました。ドイツに戻ってモデルに、パリで演技を学んで女優になって今に至っていますから、彼女の道は一つではなかったですね。ジョイのパートナー、ニコライ役のオレグ・イヴェンコはウクライナ出身。現役ダンサーのときに『ホワイト・クロウ』(2018/レイフ・ファインズ監督)ではルドルフ・ヌレエフ役に抜擢されています。久しぶりの映画出演。バレエファンはぜひ。(白)
2023年/イギリス 、ニュージーランド/カラー/111分
配給:ショウゲート
(C)Joika NZ Limited / Madants Sp. z o.o. 2023 ALL RIGHTS RESERVED.
https://joika-movie.jp/
★2025年4月25日(金)より絶賛公開中