2019年02月09日

女王陛下のお気に入り(原題:The Favourite)

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監督:ヨルゴス・ランティモス
脚本:デボラ・デイヴィス、トニー・マクナマラ
撮影:ロビー・ライアン
衣装:サンディ・パウエル
出演:オリヴィア・コールマン(アン女王)、レイチェル・ワイズ(レディ・サラ/サラ・チャーチル)、エマ・ストーン(アビゲイル・ヒル)、ニコラス・ホルト(ロバート・ハーリー)、ジョー・アルウィン(サミュエル・マシャム)

18世紀初頭、アン女王が統治するイングランド。モールバラ公爵の妻サラはアン女王と幼馴染で、誰よりも王女と親しい。その地位を利用して女王を意のままにしていた。没落した貴族の娘アビゲイルがサラの従姉妹と名乗ってやってくる。召使として雇われたアビゲイルは、女王が痛風で苦しんでいるのを知って、薬草で手当てをする。寝室に入った罰として、鞭打たれるが痛みがひいたことから侍女に取り立てられた。
イングランド議会は、フランスとの戦争を継続推進したいホイッグ党と終結派のトーリー党、二つに割れて争っていた。トーリー党のハーリーは、王女とサラの間近にいるアビゲイルを抱き込んで有利な情報を得ようと接近してくる。

女優3人が火花を散らす宮廷劇。権力に目がくらむのに男女差はないようです。17人も子供を産みながら、孤独なアン女王。そんな女王を手玉に取るサラ、召使からのし上がっていくアビゲイル。女王も無邪気かというとそれだけでもなく、寵愛をえさに楽しんでいるところもあります。男性は少しだけしか絡まず、もっぱらこの3人の駆け引きをスリリングに見せています。射撃でアビゲイルをを脅すサラ、顔は微笑みながらウサギを踏みつけるアビゲイル、しみじみ怖いです。
宮殿の家具調度や衣装は、じっくり観たくなります。くるくるカールの大きな鬘に、白塗りのお化粧をしたハーリーたちの姿は、今観るとヘンですが当時はこれが上流の男性のお姿。文化は変遷します。
第75回ヴェネチア映画祭で銀獅子賞(審査員大賞)、女優賞(オリヴィア・コールマン)受賞しています。(白)


2018年/アイルランド・イギリス・アメリカ合作/カラー/シネスコ/120分
配給:20世紀FOX
(C)2018 Twentieth Century Fox
http://www.foxmovies-jp.com/Joouheika/
★2019年2月15日(金)ロードショー
posted by shiraishi at 13:25| Comment(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ノーザン・ソウル(原題:Northern Soul)

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監督・脚本:エレイン・コンスタンティン
撮影:サイモン・ティンダール
出演:エリオット・ジェームズ・ラングリッジ(ジョン)、ジョシュ・ホワイトハウス(マット)、スティーブ・クーガン(バンクス)、アントニア・トーマス(アンジェラ)

1974年、景気が冷え込んだイングランド北部の町。高校生のジョンは居場所も友達もなく、退屈な毎日に倦んでいた。しぶしぶ行ったユースクラブで一人ステップを踏むマットに出逢った。マットがのめりこんでいる”ノーザン・ソウル”に自分も惹かれていく。マットとジョンはクラブでのDJを目指し、アメリカで自分だけのレコードを探し出すことを夢見る。

”ノーザン・ソウル”はイングランド北部のクラブで流行っていたソウルミュージック。知られていないシングルレコードを探して、自分だけのセットリストを作るのがDJの矜持だったようです。ダンスに興じる若者たちも、その曲が誰のなんという曲なのかあてるのも楽しみの一つ。ジョンが気に入ったDJの“COVER UP(隠蔽)”を見つけるのに躍起になっているシーンがあります。
ダンスのステップもぬきんでてカッコいい子がいれば、さっそく皆がそのステップを真似るシーンもあり、日本でも同じ風景だったわ、とちょっと懐かしくなりました。ジョン役のエリオット・ジェームズ・ラングリッジ、マット役のジョシュ・ホワイトハウスマットもこれが映画デビュー作。ジョシュは主演した『モダンライフ・イズ・ラビッシュ ロンドンの泣き虫ギタリスト』が昨年公開されています。ちょっと斎藤工くんに似ていませんか?(白)


2014年/イギリス/カラー/DCP/102分
配給:SPACE SHOWER FILMS
(C)2014 Stubborn Heart Films (Heart Of Soul Productions) Limited All Rights Reserved.
http://northernsoul-film.com/
★2019年2月9日(土)ロードショー
posted by shiraishi at 12:50| Comment(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年01月20日

ヴィクトリア女王 最期の秘密   原題:Victoria and Abdul

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監督:スティーヴン・フリアーズ
脚本:リー・ホール
原作:シュラバニ・バス
出演:ジュディ・デンチ、アリ・ファザル、エディ・イザード、アディール・アクタル、マイケル・ガンボン

1887年、インドが英領となって29年目。タージ・マハルのある町アグラで、刑務所の記録係をしている青年アブドゥル・カリムは、ヴィクトリア女王の即位50周年記念式典で記念金貨“モハール”を献上する役目に任命される。長身なのが決め手だったが、もう一人の献上役モハメドは代理で行くことになった背の低い男だった。二人は船で英国へ赴く。
ウィンザー城での祝宴を前に、献上する折、決して女王陛下と目を合わせてはいけないと注意を受ける。だが、アブドゥルは思わず女王を見つめてしまう。女王も「のっぽがハンサムだった」と気に入り、祝宴期間中、二人は従僕として女王のそばで働くことになる。女王はアブドゥルからタージ・マハルや絨毯、マンゴーや香辛料などインドの文化や食べ物のことを聞き、行ったことのない自国の領土に興味を示す。女王はアブドゥルを祝宴が終わってからも側近にし、ウルドゥー語の手ほどきを受ける。さらに、亡き夫アルバートが設計した離宮オズボーン・ハウスの1階にインドの装飾をほどこした「ダーバーの間」も作らせる。孔雀の王座の模倣も備え、そこでアブドゥルは古代ペルシアの王様の物語を演じる。
皇太子や王室職員たちは、女王にインドでイスラーム教徒が反乱を起こしたとしてアブドゥルの失脚を図るが、彼の人柄に信頼を置いていた女王は、ヴィクトリア勲章のコマンダー章を授ける。アブドゥルも終身、女王に仕えることを誓う。
だが、やがて女王は崩御。アブドゥルは皇太子から即刻出ていくよう命じられ、家族と共にインドに帰国する・・・

ヴィクトリア女王とアブドゥルの間で交わされた英文の書簡などは、女王が崩御するとすぐに焼かれてしまいましたが、女王のウルドゥー語の練習帳などは読めないこともあって破棄を免れ、王室文書館に保管されていたとのこと。インド出身のジャーナリストであるシュラバニ・バスは、その練習帳を読み解き、2010年に「ヴィクトリアとアブドゥル」を著し、二人の心情にも迫っています。アブドゥルの子孫をたどり、アブドゥル自身のロンドン時代の日記も発見。こうして、女王と彼の物語が世に知られることになりました。

映画では、即位50周年記念式典の為に、インドから来たアブドゥルを女王が気に入って側近にし、インドの文化に目覚めたと描かれていますが、実際には、元々女王は人種や宗教に偏見がなく、インドの文化にも興味を持ち、給仕としてインド人を雇い入れたのだそうです。
異文化や有色人種に対する偏見に満ちた皇太子や王室の側近の人たちと違って、ヴィクトリア女王が心の広い方だったことを知り、感銘を受けました。
何より、私も学んだことのあるウルドゥー語を女王も学んでいたことを嬉しく思いました。もっとも、私は、大学受験当時、東京外国語大学にまだペルシア語科がなく、ウルドゥー科でペルシア語が必修と知り受験し、入学させていただいたので、ウルドゥー語はあまり熱心に学びませんでした。きっとヴィクトリア女王の方が格段にウルドゥー語がお出来になったことと思います。
映画のタイトルも、ウルドゥ―語でも出てきます。どうぞご注目を。(咲)



◆ヴィクトリア女王が学んだウルドゥー語とは:

北インドを支配したムガル王朝の宮廷公用語はペルシア語。ウルドゥー語は、イスラームに改宗した人たちが、ヒンディー語をアラビア文字で書き、語彙にもアラビア語やペルシア語起源のものを取り入れた言葉。
アラビア語は28文字ですが、ペルシア語はアラビア語にない音4文字を加えた32文字。ウルドゥ―語は、ヒンディーのそり舌音を表記するため、さらに3文字加え35文字。デーヴァナーガリー文字で表記されるヒンディー語とは見た目は全く違いますが、文法体系は同じです。
現在、ウルドゥー語は、パキスタン・イスラム共和国の国語。パキスタンでウルドゥー語を母語とするのは、人口の約4分の1ですが、インドの主に北部のイスラーム教徒にも広く使われており、話者は世界で20番目に多い6100万人と言われています。



第90回アカデミー賞 衣装デザイン賞・メイクアップ&ヘアスタイリング賞 ノミネート
第75回ゴールデングローブ賞主演女優賞(ミュージカル/コメディー部門)ノミネート

2017年/イギリス・アメリカ/112分/カラー/シネスコ
配給:ビターズ・エンド、パルコ
公式サイト:http://www.victoria-abdul.jp/
★2019年1月25日(金)よりBunkamura ル・シネマほか全国ロードショー






posted by sakiko at 21:10| Comment(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年01月13日

蜘蛛の巣を払う女(原題The Girl in the Spider's Web)

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監督・脚本:フェデ・アルバレス
原作:ダビド・ラーゲルクランツ
出演:クレア・フォイ(リスベット)、スベリル・グドナソン(ミカエル)、シルビア・フークス(カミラ)、ラキース・スタンフィールドスティーブン・マーチャント

天才ハッカー、リスベットのもとに仕事の依頼があった。AI研究の世界的権威バルデル博士が開発した「核攻撃プログラムをアメリカ国家安全保障局から取り戻して欲しい」と。バルデル博士は自分の犯した過ちを消し去りたいというのだった。簡単にクリアできるはずだったが、リスベットの前に縦横に網を張り巡らして立ちふさがるものがいた。16年前、父のもとから逃げ出したときに生き別れになってしまった双子の妹カミラだった。

大ヒットした「ミレニアム」シリーズの第4弾。ハリウッド版『ドラゴン・タトゥーの女』の製作陣が結集して送り出したサスペンスアクションです。リスベットには『ブレス しあわせの呼吸』で難病の夫を励まし支える妻を演じたクレア・フォイ。笑顔ひとつ見せず、ハードなアクションをこなしています。今年は『ファースト・マン』(2018)でアームストロング船長の妻、ソダーバーグ監督のホラーサスペンス『アンセイン 狂気の真実』ではストーカーに追い詰められるヒロイン。引き出しの多い女優さんです。
冷たい美貌のカミラ役シルヴィア・フークスは『ブレードランナー 2049』(2017)でも冷徹なレプリカント役でしたっけ。今作でも緊張感に溢れた姉妹対決を見せます。この双子という設定ですが、たぶん結びつきの強さを出したかったんでしょう。全く似ていない2人なので、年の近い姉妹でも良かったんじゃない?黒尽くめのリスベットと、真っ赤なコートに金髪をなびかせるカミラの対決は目にも美しいです。
ミカエル役のスベリル・グドナソンは『ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男』(2017)のボルグでした。髪型が違うので、すぐに気づかず。

フェデ・アルバレス監督は『死霊のはらわた』リメイク(2013)で長編デビュー、息を詰めさせられた『ドント・ブリーズ』(2016)でヒットを飛ばしたウルグアイ出身の40歳。厳寒のストックホルムロケは大丈夫だったんでしょうか?(白)


2018年/イギリス、ドイツほか/カラー/シネスコ/115分
配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
http://www.girl-in-spidersweb.jp/
★2019年1月11日(金)ロードショー
posted by shiraishi at 18:16| Comment(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年01月05日

ホイットニー ~オールウェイズ・ラヴ・ユー~ (原題:Whitney)

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監督:ケヴィン・マクドナルド
撮影:ネルソン・ヒューム
出演:ホイットニー・ヒューストン、シシー・ヒューストン、エレン・ホワイト、メアリー・ジョーンズ、パット・ヒューストン

ホイットニー・ヒューストンは1963年8月9日、ニュージャージー州ニューアークで生まれた。母親のシシー・ヒューストンは、ゴスペル・グループ”のメンバーで、ディオンヌ・ワーウィックは従姉妹。ホイットニーは家族からニッピーと呼ばれ、母親はニッピーに、自分が叶えられなかったスターになる夢を描いて厳しく指導していた。教会でゴスペルを歌い、才能を見せていたが10代の頃両親が離婚、18歳でニッピーは家を出ていく。バックコーラスをしていた頃、テレビでその歌声を披露、1985年、初のアルバムをリリース。シングル7曲が連続全米№1の快挙。見事なスタートダッシュを切る。1992年にはボビー・ブラウンと結婚し、映画『ボディ・ガード』に主演。主題歌「オールウェイズ・ラヴ・ユー」も大ヒットする。翌年には娘も誕生し公私とも絶頂期と見えたが、同時に凋落の始まりでもあった。

ホイットニー・ヒューストンをはっきり認識したのは、やっぱり『ボディ・ガード』。映画には初出演だったそうですが、実際のホイットニーをなぞったかのようなトップスター役で、歌う場面もたっぷり。稀代の歌姫は表情豊かで華がありましたが、その20年後、薬物で亡くなってしまうとは(さらに3年後には娘も)。
アーカイブ映像で見る子どものころのホイットニーは、家族に囲まれて幸せそうな可愛い女の子です。歌の才能に恵まれ、長じてスターになり栄光を掴んだ代わりに、同じくらいの不幸にもおそわれてしまいます。多くの証言はこれまで隠されていた部分も明らかにし、ホイットニーが過酷で孤独な日々を過ごしていたことが垣間見えて胸が痛みます。伸びやかな歌声をたくさん遺してくれてありがとう。(白)


640.jpg(C)2018 WH Films Ltd


小さい頃から歌の英才教育で、どんどんスターに成ってゆく綺麗な女の子。そんなホイットニーに実は壮絶なモンダイがあったことをドキュメンタリー映画らしく暴いてゆきます… 私は「とんねるず」で育った世代なので、どちらかと言うとダンナのボビー・ブラウンのほうを強烈に覚えていて(とんねるずの石橋さんがモノマネをしていたので) このヘンなダンスをするひととホイットニーさんは結婚したんだと印象には残ってますが、その後にどんどん悲劇が訪れていようとは… アパルトヘイト後、黒人歌手として初めて南アで歌う姿にも感動、必見です!! (千)


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(c)2018 WH Films Ltd
2018年/イギリス/カラー/アメリカン・ビスタ/120分
配給:ポニーキャニオン、STAR CHANNEL MOVIES
http://whitneymovie.jp/
★2019年1月4日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー

posted by shiraishi at 14:54| Comment(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする