2019年06月09日

氷上の王、ジョン・カリー(原題:The Ice King)

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監督・脚本:ジェームズ・エルスキン
ナレーション:フレディ・フォックス
音楽監督:スチュアート・ハンコック
出演:ジョン・カリー、ディック・バトン、ロビン・カズンズ、ジョニー・ウィアー、イアン・ロレッロ

アイススケートをメジャースポーツへと押し上げ、さらに芸術の領域にまで昇華させた伝説の英国人スケーター、ジョン・カリー。彼はバレエのメソッドを取り入れた演技で、1976年インスブルック冬季五輪フィギュアスケート男子シングルの金メダルを獲得する。しかし、マスコミが真っ先に伝えたのは、表に出るはずのなかった彼のセクシュアリティだった。同性愛が公的にも差別されていた時代に、ゲイであることが公表されたメダリストの存在は、世界中を驚かせ論争を巻き起こす。しかし、彼は華麗な滑りで多くの人を魅了し続け、現在の日本人スケーターにも影響を与えている。(公式サイトより)

フィギュアスケートは、次々と登場する美しいアスリートたちのおかげですっかりメジャーになりました。私もかたずをのんで見守っています。ここまでくるには先達の努力があったはず、と思いつつこの映画を観るまでジョン・カリーのことは知らずにいました。
栄光の背後には血のにじむ努力と、孤独な日々があると想像に難くありません。動画でも一枚の写真でも、彼の影を伴った美しさが見て取れます。同性愛が忌むべきもの、病気として治療すべきものとされていたことは、多くの映画でも描かれていますが、ジョン・カリーも父親から「人間として根本的なところがおかしい」と非難され続けたとか。一番味方でいてほしい家族から受け入れられなかった彼の孤独は、どれほど深かったことやら。
彼の完璧なパフォーマンスと、さらに高みを目指し続けた姿勢は、現代のスケーターにも憧れをもって見つめられています。どうぞ大きな画面でご覧ください。(白)


2018年/イギリス/カラー/89分
配給:アップリンク
(C)New Black Films Skating Limited 2018
http://www.uplink.co.jp/iceking/
予告編はこちら
★2019年5月31日(金)新宿ピカデリー、東劇、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開
posted by shiraishi at 09:58| Comment(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年05月25日

イングランド・イズ・マイン モリッシー, はじまりの物語(原題:England Is Mine)

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監督・脚本:マーク・ギル
出演:ジャック・ロウデン、ジェシカ・ブラウン・フィンドレイ、ジョディ・カマー

1976年マンチェスター。学校をドロップアウトしたスティーブン・モリッシー(ジャック・ロウデン)はライブに通っては批評を音楽紙に投稿するだけの毎日。仕事をサボって詩を書くことが唯一の慰めだった。そんな時、美大生のリンダー(ジェシカ・ブラウン・フィンドレイ)と出会い、後押しもあってバンドを組むことになる。
初ライブは成功、スティーブンはミュージシャンになろうと仕事を辞める。しかし順調に思えた彼を待ち受けたのは、別れや挫折だった。1982年、それでもあきらめずに音楽を続けるスティーブンの元に1人のギタリストが訪ねてくる。それは、のちに彼と「ザ・スミス」を結成するジョニー・マーだった。

1980年代に席巻したバンド「ザ・スミス」のモリッシーの若き日を描く。ザ・スミスを知らなくても、青春映画として楽しめるので大丈夫。
モリッシーは高校を中退し、せっかく手に入れた仕事もさぼり気味。音楽誌に辛口の批評を投稿するだけで、自分はなかなか一歩を踏み出さない。ダメダメぶり全開だが、イケメンなジャック・ロウデンが内気な感じで演じているからか、”守ってあげたい”と許せてしまう。94分の短尺で、モリッシーに惚れる女が3人も出てくるのはそのせいか。3人とも好きな男にきっかけをつかませようとせっせと後押しする。しかし、才能を信じる母の愛が息子を変える。親ってすごい。(堀)


2017年/イギリス/94分/カラー/シネスコ/PG-12
配給:パルコ
©2017 ESSOLDO LIMITED ALL RIGHTS RESERVED.
公式サイト:http://eim-movie.jp/
★2019年5月31日(金)よりシネクイントほか全国ロードショー

posted by ほりきみき at 02:21| Comment(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

アナと世界の終わり(原題:Anna and the Apocalypse)

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監督:ジョン・マクフェール
出演:エラ・ハント、マルコム・カミングス

高校生のアナは幼い頃に母を亡くし、父トニーと2人で暮らし。パッとしない生活から抜け出すため、大学に進学せずに世界を旅することを計画する。チケット代を稼ぐため、父に内緒で幼馴染のジョンと一緒にバイトに励んでいた
しかし、父に旅行の計画がバレてしまい、大ゲンカに。翌朝、気持ちを切り替えたアナはジョンと一緒にいつも通り学校へ向かう。その途中、スノーマンの着ぐるみを着た血だらけの男が突如現れ、ジョンに襲いかかる。その瞬間、アナは公園にあったシーソーを使って男の頭を吹き飛ばす!なんと、男の正体はゾンビだった。2人は、学校に取り残された父とクラスメイトを救出に向かう。 果たして、アナはみんなを助け出し、この町を脱出することはできるのか。そして、腐ったように生きてきたこの人生にケリをつけることができるのか。

高校生の巣立ちをテーマにしたゾンビ映画をミュージカル仕立てに。学食でテーブルの上に乗ってみんなが踊るお決まりのシーンは青春映画そのもの。歌って踊りながら登校する主人公の後ろにゾンビが蠢いているシーンは怖さよりギャップに笑ってしまいそう。
高校時代は何かと窮屈に感じるもの。2人きりの家族だからこそ、父は娘の将来を心配し、自宅から通える大学への進学を願う。それが娘には窮屈で、逃げるためだけにやりたいこともないまま世界を旅したいと考える。そんなイライラも手伝って、クラスメイトたちが夢中になっていることをくだらないと思ってしまう。
ゾンビから生き抜くことで今、生きる時間の大切さに気づいていく主人公の未来に明るい希望がありますように。(堀)


『カメラを止めるな!』の大ヒットで、日本のゾンビも息を吹き返した今日この頃(?)、イギリスからあんまり怖くないゾンビ映画がやってきました。予告編でほぼ全貌が見えるのですが、笑える小ネタが仕込まれた青春ミュージカルゾンビ映画。
ゾンビ映画のお約束・・・動作はゆっくり、噛まれると感染、大事な人がゾンビになる、対処は頭を吹き飛ばす・・・はきちんと踏襲しています。
青春映画のお約束・・・親との軋轢、ここでないどこかへ、幼なじみ、ゲスな彼氏、男前な女の子もちゃんと出てきます。わーわーとたくさんの友達と一緒に見るとより楽しいです。イギリスの田舎町でも日本でも、人の思うことにそう変わりはありません。(白)


2017年/イギリス/カラー/PG-12/98分
配給:ポニーキャニオン
(C) 2017 ANNA AND THE APOCALYPSE LTD.
公式サイト:http://anaseka-movie.jp/
★2019年5月31日(金)より新宿武蔵野館ほか全国ロードショー
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2019年05月12日

コレット(原題:Colette) 

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監督:ウォッシュ・ウェストモアランド
脚本:リチャード・グラッツァー、ウォッシュ・ウェストモアランド、レベッカ・レンキェヴィチ
出演:キーラ・ナイトレイ、ドミニク・ウェスト、フィオナ・ショウ、デニース・ゴフ、エレノア・トムリンソンほか

フランスの田舎町サン・ソヴールで生まれ育ったコレット(キーラ・ナイトレイ)。14歳年上の人気作家ウィリー(ドミニク・ウェスト)との結婚を機に、“ベル・エポック”真っ只中の活気にあふれていたパリへと移り住む。やがて、コレットの才能にいち早く気が付いたウィリーは、自身のゴーストライターとして彼女に自伝的な小説を書かせることに。その後、コレットが執筆した「クロディーヌ」シリーズは、社会現象を巻き起こすほどの一大ブームとなった。
こうして世間もうらやむようなセレブ夫婦として注目されるようになるコレットとウィリーだったが、コレットは自分が作者であることを世間に認められない葛藤と夫の度重なる浮気に苦しめられていく。その結果、自らの歩むべき未来を追い求めるようになるのだった。

フランスの片田舎に生まれ育った少女がベストセラー作家と呼ばれるようになり、自分らしい生き方を見つけるまでを描く。
コレットは作家だが、当時のファッションアイコンでもあったらしい。結婚前はどこにでもいそうな雰囲気の少女だったが、セレブとして注目されるようになってからは白、黒、紺、茶といった色合いのパキっとしたデザインの衣装を身にまとい、意志の強さを感じさせる。特にメンズスーツを着用したシーンでは、ウィリーに対する決別の意がびんびんに伝わってきた。次々と登場する衣装も作品の見どころ。キーラ・ナイトレイは何を着てもよく似合っていた。

あらすじを読むと、ウィリーはコレットの作家としての才能を利用しただけの男のように思えるが、ドミニク・ウェストが演じるとウィリーなりにコレットを愛していたことが感じられる。ドミニク・ウェストの為せる業か。
また、「クロディーヌ」シリーズがヒットするとブランドを立ち上げ、書籍だけではなく香水、メイク、石鹸などを売り出すなど、プロデュース力は目を見張るものがあるのだから、プロデューサーに徹することができれば、盟友としてずっとやっていけたのではないか。妻の名前が有名になることが我慢できなかったのだろうが、悔やまれる。

同じ頃、日本では与謝野晶子は自分の名前で作品を発表していた。コレットは1873年生まれで、晶子は1878年に生まれで同世代である。晶子は1912年に鉄幹を追ってパリに行った。コレットと晶子はどこかで会っていたかもしれない。もし、会っていたとしたら、最初から自分の名前で作品を発表していた晶子をコレットはどう思ったのだろうか。(堀)


フランス人女性で初めて国葬されたシドニー=ガブリエル・コレット。
本作は、フランス文学界で最も知られている女性作家コレットの物語。
なのですが、こんなに有名な人物のことを全く知りませんでした。
田舎町で生まれ育ったコレットが、人気作家と結婚することにより、その才能を開花させたのに、夫がその成果を奪う。おまけに堂々と浮気まで。まったくもって男ってけしからん! でも、彼女は屈せず這い上がります。生き様に勇気を貰えます。
イギリスとの合作故、フランス語ではなく英語なのが、ちょっと残念。(咲)



2018年/イギリス・アメリカ/カラー/英語/シネマスコープ/111分/5.1ch/PG12
配給:東北新社
©2017 Colette Film Holdings Ltd / The British Film Institute. All rights reserved.公式サイト:https://colette-movie.jp/
★2019年5月17日(金)より、TOHOシネマズ シャンテ、新宿武蔵野館 ほか全国ロードショー

posted by ほりきみき at 18:20| Comment(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年05月05日

ホワイト・クロウ 伝説のダンサー(原題:The White Crow) 

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監督:レイフ・ファインズ
脚本:デヴィッド・ヘアー
撮影:マイク・エリー
音楽:イラン・エシュケリ
出演:オレグ・イヴェンコ、アデル・エグザルホプロス、セルゲイ・ポルーニン、ラファエル・ペルソナ、ルイス・ホフマン、チュルパン・ハマートヴァ、レイフ・ファインズ

1961年。ルドルフ・ヌレエフ(オレグ・イヴェンコ)はキーロフ・バレエ(現マリインスキーバレエ)の一員として、パリ公演のために生まれて初めて祖国ソ連を出た。傲慢・我儘・反逆児と評される一方で、踊りへの情熱は誰よりも強いルドルフは、異国で得られるものすべてを吸収しようとするが、その行動はKGBに監視され、政府の圧力は強まるばかりだった。 6月16日、次の公演地へ向かおうとするルドルフは、突然帰国を命じられる。それは、収容所に連行され、踊りを続けることすらままならない未来を暗示していた。団員たちが旅立ち、KGBと共に空港に残されたルドルフが、不安と恐怖に襲われる中くだした決断とは一。

バレエの歴史を変えたと言われるロシア人バレエダンサー、ルドルフ・ヌレエフが若くしてフランスに亡命した実話に基づく。
ヌレエフを演じる主演のオレグ・イヴェンコの眼光の鋭さが印象に残る。演技の経験がない、現役のプロバレリーナだというから驚きだ。バレエに対する情熱を一心に注いで踊る姿に見惚れてしまう。しかも超絶イケメン! さらにパリでヌレエフのルームメイトだったユーリ・ソロビヨフをセルゲイ・ポルーニンが演じている。これはもう眼福としかいいようがない。
美しいものを堪能する前半は過去を振り返るシーンもあってゆったりと進むが、後半の亡命シーンはまるでサスペンスのように緊張する。冒頭のシーンからヌレエフが亡命をしたことが分かっているにもかかわらず、失敗するのではないかとハラハラして見入ってしまう。監督の演出のうまさが際立つ。
ところで、ヌレエフはなぜ亡命をしたのか。冒頭、KGBから取り調べを受けた恩師が「彼はただ踊りたかったから西側に渡ったのだ」と答えていた。それを聞いたときには「踊るだけなら亡命しなくてもできるのでは?」と思ったが、より高みを目指すには自由が必要なのだ。作品を見て、その答えに納得した。(堀)


ヌレエフの人物評をみると、同じように反逆児と称されたセルゲイ・ポルーニンのほうがふさわしいような気がしましたが、現役のプリンシパル、オレグ・イヴェンコの目力も半端じゃありませんでした。バレエの場面をたっぷり楽しめるのはもちろん、社交界の花形クララの協力のもと、空港での緊迫したやりとりが出色です。アデル・エグザルホプロスがこんなに大人の女性を演じていたのに驚きました。『アデル、ブルーは熱い色』(2014)では、パスタソースで口の周りを汚していた少女だったのに。
昨年の東京国際映画祭にレイフ・ファインズ監督が招かれましたが、資金調達のためにと口説き落とされて自らもA.I.プーシキン役で出演しています。若いヌレエフを公私ともに支える教師で、慈愛に満ちた表情と悲しげな視線が残ります。ハリー・ポッターシリーズでは「名前の言えないあの人」をずっと務めて、目が怖かったんですけど。(白)


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プロデューサーのガブリエル・タナさんと、レイフ・ファインズ監督

2018年10月27日、東京国際映画祭での記者会見には、さすがに大勢の記者が駆け付けました。
ヌレエフの複雑な内面を表わすことのできる人物を探すのが大変だったそうで、レイフ・ファインズは「監督として、演技のできる俳優を選んでバレエを習わせることにためらいがあったので、演技のできるダンサーを探しました」と語りました。そうして、選ばれたのが、現役ダンサーのオレグ・イベンコ。
レイフ・ファインズ自身は、監督に徹したかったそうですが、プロデューサーのタナさんから、「商業的価値を高めるため、ぜひ出演してほしいとお願いしました」と、資金集めのため、心苦しい依頼だったと明かしました。大のファンというほどでない私でも、やっぱりレイフご本人の姿をスクリーンで観れたのは嬉しかったので、ファンはなおさらでしょう!(咲)



2018年/イギリス=ロシア=フランス/ロシア語・英語・フランス語/127分/ビスタ/カラー・モノクロ/5.1ch
配給:キノフィルムズ/木下グループ
© 2019 British Broadcasting Corporation and Magnolia Mae Films
公式サイト:http://white-crow.jp/
★2019年5月10日(金) TOHOシネマズ シャンテ、シネクイント、新宿武蔵野館ほか全国 公開
posted by ほりきみき at 02:41| Comment(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする