2026年01月15日

モディリアーニ!  原題:Modi:Three Days on the Wing of Madness

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©︎Modi Productions Limited 2024

監督:ジョニー・デップ
脚本:ジャージー・クロモウロウスキ、マリー・オルソン・クロモロウスキ
原作:戯曲「モディリアーニ」(デニス・マッキンタイア)
出演:リッカルド・スカマルチョ、アントニア・デスプラ、ブリュノ・グエリ、ライアン・マクパーランド、スティーヴン・グレアム、ルイーザ・ラニエリ、アル・パチーノ

1916年、戦火のパリ。芸術家モディリアーニの人生を変えた激動の3日間。

カフェのガラス絵を派手な立ち回りで割ってしまったモディリアーニ。警察から逃げて、ミューズであり、裸体画のモデルでもある作家ベアトリス・ヘイスティングスのもとに帰る。絵がなかなか評価されず、3日後にはイタリアのリヴォルノに戻ると宣言するモディリアーニ。ベアトリスも、画家仲間のモーリス・ユトリロ、シャイム・スーティンも、引き留めるが決意は固い。友人であり画商のレオポルド・ズボロフスキに助言を求めると、コレクター、モーリス・ガニャに二日後に会わせるといわれる。ガニャから、絵は3枚で60フランしか出せないが、彫刻には5千フラン出すという・・・

細長い顔と首に細い目の女性は、見ればモディリアーニの絵とわかるものですが、モディリアーニがいつの時代にどんな人生を送った人物なのかは、恥ずかしながらまったく知りませんでした。
冒頭、「ユダヤ人で、名前を覚える価値もない男」と言われる場面がありました。ユダヤ系イタリア人と名乗るモディリアーニ。調べてみたら、両親はともにセファルディ・ユダヤ系のイタリア人とフランス人でした。先祖はイベリア半島にいたユダヤ人。
今でこそ、モディリアーニの絵は、美術史に残り、美術館にも飾られる価値あるものと認められていますが、存命中はほとんど評価されず、35歳という若さで亡くなったことを、本作をきっかけに知りました。
ところで、モディリアーニと親交のあったユトリロが、「入隊する」と発言している場面がありました。ユトリロは、1883年12月生まれ。30代半ばで兵役もありですが、実際には、招集されたものの、精神病によって兵役免除となったようです。
本作は、なんといってもジョニー・デップ監督作品ということで、どんな映画を作ったのかと興味を惹かれました。今、なぜモディリアーニ?と、聞いてみたいところです。(咲)


2024 年/イギリス・ハンガリー/英語・フランス語・イタリア語/108 分/ヨーロピアンビスタ/カラー/5.1ch
日本語字幕:岩辺いずみ
配給:ロングライド、ノッカ  協賛:LANDNEXT、セレモニー
公式サイト:https://longride.jp/lineup/modi/
★2026年1月16日(金)TOHOシネマズ シャンテほか全国公開




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2026年01月11日

ダウントン・アビー/グランドフィナーレ(原題:Downton Abbey: The Grand Finale)

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監督:サイモン・カーティス
原作・脚本:ジュリアン・フェローズ
撮影:アンドリュー・ダン
音楽:
出演:ヒュー・ボネヴィル(ロバート・グローリー)、エリザベス・マクガバン(コーラ・グローリー)、ミシェル・ドッカリー(長女 メアリー・グローリー)、ローラ・カーマイケル(次女 イーディス・ベラム)、ポール・ジアマッティ(ハロルド・レビンソン)、アレッサンドロ・ニヴォ(ガス・サムブルック)、アーティ・フラウスハン(ノエル・カワード)
ジム・カーター(チャールズ・カーソン)、フィリス・ローガン(エルシー・カーソン)、ブエンダン・コイル(ジョン・ベイツ)、ジョアンヌ・フロガット(アンナ・ベイツ)、レスリー・ニコル(ベリル・パットモア)、ラケル・キャシディ(バクスター)、ソフィー・マクシュラ(デイジー)、マイケル・フォックス(アンディ)

1930 年、ロンドン。クローリー家とダウントン・アビーの使用人たちは、きらびやかな夏の社交シーズンを迎えていた。しかし、長女メアリー離婚のニュースが、新聞に掲載され社交界の知るところとなってしまった。離婚した女性に社会の目は厳しく、メアリーは舞踏会の最中にピータースフィールド家から締め出されてしまう。王族と離婚した女性の同席は許されない。
傷ついたメアリーの前に、アメリカから叔父のハロルドが現れる。ニューヨーク出身の財務アドバイザーだというサンブルックが同行していた。ハロルドがアメリカで投資に失敗し、自分と姉の分でもあった亡き母の遺産の大半を失い、彼に世話になったという。再投資の資金の相談に来たのだが、遺産が無くなったためダウントンも財政難に陥り、計画していた改修もできなくなった。ロンドンの別荘を売却する案には父のロバートが猛反対する。魅力的で如才ないサンブルックと親しくなるメアリーだったが。

世界的な大ヒットシリーズ第3弾。イギリス社交界の舞踏会、晩餐会など今やもう観ることのできない贅を尽くしたイベントに集まる人々、その悲喜こもごものドラマ、ファッションや会話を楽しみに観てきました。バイオレット伯爵夫人の人生が幕を下ろした第2弾に続き、本作ではほかの登場人物の人生をより掘り下げています。メアリーの離婚が発覚して社交界から締め出されてしまいますが、双方に理由があるでしょうに当時は女性だけがその責めを負わされたんですね(このころは女性に相続権さえなかった)。姉の窮地を救うべく目を見張るような活躍を見せるのが妹のイーディス。次女は強い!?
ダウントン・アビーの使用人たちも個性豊かで、それぞれが抱える悩みや将来への希望も描かれ、先へと続く道も示唆します。世代交代を前にした先輩たちの葛藤、若者たちの描く夢は貴族・平民に関わらず同等です。バイオレット伯爵夫人の肖像画は、輝かしいダウントン・アビーの歴史を守るように大広間に飾られていました。演じたマギー・スミスは第2作終了後、2024年9月に89歳で亡くなりました。長く愛されたシリーズの終幕を天国から見守っていたでしょうか。(白)


2025年/イギリス/カラー/シネスコ/124分/字幕翻訳:牧野琴子
配給:ギャガ
©2025 FOCUS FEATURES LLC.ALL RIGHTS RESERVEDl
https://gaga.ne.jp/downton_abbey_the_grand_finale/
★2026年1月16日(金)全国公開

posted by shiraishi at 13:50| Comment(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2026年01月04日

ぼくの名前はラワン  原題:Name Me Lawand

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© Lawand Film Limited MMXXII, Pulse Films, ESC Studios, The British Film Institute

監督・脚本:エドワード・ラブレース
撮影監督:ベン・フォーデスマン
音楽:トム・ホッジ
出演:ラワン・ハマダミン

イラクで暮らすクルド人の少年ラワンは、生まれつき耳が聞こえない。ラワンが5歳の時、両親は国外への移住を決断。家族は数カ月を難民キャンプで過ごした後、支援者の協力を得て、ようやくイギリスの都市ダービーに安住する。その後、ラワンはダービー王立ろう学校に通えることになり、少しずつイギリス手話と口話を学び始める。みるみる上達するラワンは、やがて周囲と同じように手話だけで生きていく道を選ぶ。兄もラワンと意思疎通するため手話を学び始めるが、イラクでは手話だけでは人として対等に扱われないため、両親は息子の選択に不安を抱いていた。手話を嫌がる両親にラワンがいら立ちを募らせる中、一家が申請していた難民認定について内務省の審査が始まる・・・

生まれつき耳が聞こえないラワンは、両親とも意思の疎通ができなくて、兄ラワだけが唯一の遊び相手でした。イラクではわが子に将来はないと、危険をおかして国を出る決断をした両親。イギリス手話を学べる王立ろう学校のあるダービーを安住の地に決めたのは大正解でした。学校で、ラワンは音楽を愛するソフィー先生に出会います。やはり、ろう者で孤独な幼少期を過ごしたソフィー先生と心を通わせるようになります。めきめきとイギリス手話を修得し、自分の気持ちを伝えることができる手段を得たことで、ラワンの表情はきらきらと輝いていきます。兄ラウも手話を学び、弟と会話。口話の習得を望んでいた両親もずいぶん後になって、イギリス手話を習い始めます。
エドワード・ラブレース監督は、2019年にラワンたち一家がダービーに到着した際に、ある写真家が撮った写真を偶然観て、身の上を知り、ろう学校に訪ねていったのが、この映画に至るきっかけでした。まず、イギリス手話を習って、ラワンと意思疎通できるようになり、信頼を得てからラワンの日常を撮り始めました。4年にわたる記録には、内務省から国外退去を命じられるというつらい出来事も。さて、一家の運命は? 
両親にとっても母国語が通じないイギリスで、思うようにコミュニケーションが取れないこともあると思います。聴者であれ、ろう者であれ、笑顔で相手に心を開くことが、交流の第一歩でしょうか。ラワンの溢れんばかりの笑顔に、周りの人たちも心を開いたのだと感じました。(咲)


我が子が聞こえないとわかったら、親はなんとかして意志疎通を図るものじゃないの?とまず思ってしまいました。いちばんわかってほしい相手なはずです。いろいろあって、イギリスへ向かいラワンは手話を学べたのだから結果オーライなのですが、寂しい幼児期を過ごしたラワン、お兄ちゃんがいてくれて良かったです。
すぐ思い浮かんだのが『うたのはじまり』(2020年)、プロのカメラマン・エッセイストの齋藤陽道(さいとうはるみち)さんのドキュメンタリーです。家族の中で一人だけろう者で、当時のろう学校では口話。のちに手話を覚えて言葉の世界を手にした喜びが共通していました。(白)


2022年/イギリス/クルド語・英語・イギリス手話(BSL)/90分/16:9/2.0ch
日本語字幕:杉山緑/バリアフリー字幕:戸田紗耶香/日本語字幕及びバリアフリー字幕監修:那須映里、サミュエル・アッシュ
提供:ニューセレクト
配給:スターキャットアルバトロス・フィルム
公式サイト:https://lawand-film.com
★2026年1月9日(金)新宿武蔵野館ほか全国公開

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SEBASTIAN セバスチャン

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監督・脚本:ミッコ・マケラ
撮影:イッカ・サルミネン
出演:ルーアリ・モルカ(マックス)、ヒフトゥ・カセム(アムナ)、イングヴァル・シーグルズソン(ダニエル)、ジョナサン・ハイド(ニコラス)、リーン・ベスト(ディオンヌ)

ロンドンに住むマックスは、作家志望のフリーライター。まだ若いが将来を嘱望されている。長編小説のデビュー作に男性相手のセックスワーカーの世界を描くつもりだ。よりリアルなものにするために、他人を取材するのではなく自分自身でその世界に足を踏み入れることにした。「セバスチャン」という名前でサイトに登録し、様々な顧客と出会っていく。

フィンランド系イギリス人のミッコ・マケラ監督は、LGBTQ映画作家として注目されている新鋭。主演のルーアリ・モルカはイタリアとスコットランドをルーツにした超美形ですが、監督も端正さで負けていません(HPでお確かめください)。
ロンドンでは若者がセックスワーカーを「職業として選択している」と知ったのがこの映画のきっかけだったそうです。貧困からの最後の手段の悲劇でも恥でもなく、アプリを使えば簡単にその世界にデビューできます。
リアルに描くために「体験」が必須なのか、赤裸々に描くことで他人を傷つけることはないのか?マックスは体験を重ねるうちに、葛藤していきます。この内容を、監督の期待通りポジティブにとらえるのはなかなかに難しい昭和なおばちゃんですが、ホッとする出会いがあったのが救い。マックス役のルーアリ・モルカには、以後オファーが殺到しているようです。(白)


2024年/イギリス/カラー/110分/R-18
配給:リアリーライクフィルムズ
(C)Sebastian Film and The British Film Institute 2024 / ReallyLikeFilms
https://www.reallylikefilms.com/sebastian-film
★2026年1月9日(金)よりシネマート新宿ほか全国ロードショー
posted by shiraishi at 12:56| Comment(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

おくびょう鳥が歌うほうへ(原題:The Outrun)

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監督・脚本:ノラ・フィングシャイト
原作:エイミー・リプトロット「THE OUTRUN」
出演:シアーシャ・ローナン(ロナ)、パーパ・エッシードゥ(デイニン)、スティーヴン・ディレイン(アンドリュー)、サスキア・リーヴス(アニー)

ロンドンの大学院で生物学を学んでいた29歳のロナ(シアーシャ・ローナン)は10年ぶりにスコットランド・オークニー諸島の故郷へと帰ってくる。かつて大都会の喧騒の中で、自分を見失い、お酒に逃げる日々を送っていた彼女は、ようやくその習慣から抜け出した。
しらふの状態で、心を新たに生きるロナ。だが、恋人との関係に亀裂を生み、数々のトラブルも引き起こした記憶の断片が、彼女を悩ませつづける……。

ロナは飲酒後の高揚感を忘れられません。アルコー依存症から何度も立ち直ろうとしては、また逆戻りをくり返します。ロナの父もそうやって家庭を壊し、母は宗教にすがりました。身近で体験していても、抗えないお酒の魅力は下戸の私には理解不能です。ほどほどならば機嫌よく過ごせる人生の楽しみとなるでしょうに。ロナは深く愛し合っていたはずの恋人をも傷つけてしまいました。
タイトルのおくびょう鳥とは「ウズラクイナ」のこと。日本にもいるクイナの仲間です。羽色はウズラに似ていますが、ウズラはキジの仲間、ウズラクイナは首が長めでほっそりしたツルの仲間に分類されています。危険を察するとすぐに藪に逃げ込んで隠れてしまうそうです。
ロナは故郷からさらに北の小島でその調査をします。自然は厳しく、風は吹きすさび、海は荒れ狂います。まるでロナの逃れたい過去が立ち上っているようでした。エイミー・リプトロットが自身の過去を書いた原作はベストセラーになり、シアーシャ・ローナンは製作にも名を連ねました。激しさと静けさが交互に現れるロナを熱演し、観客はロナと共にその軌跡を体験します。(白)


この人が出ているのなら、観てみたい・・・ シアーシャ・ローナンはそういう俳優の一人。アルコー依存症に苦しみ、そこから抜け出した原作者エイミー・リプトロットの思いを細やかに体現しています。その時、その時の気持ちが青や赤に染めた髪にも表れています。ウズラクイナのギィギィという声を聴いた時の、ふっとした笑顔が素敵でした。
ノラ・フィングシャイト監督は、1983年ドイツ、ブラウンシュヴァイク生まれ。
彼女の卒業制作である長編ドキュメンタリー『WITHOUT THIS WORLD(原題:OHNE DIESE WELT)』は、アルゼンチンに暮らす保守的なメノナイト共同体を題材にした作品。長編劇映画デビュー作『システム・クラッシャー』は、制御不能で攻撃的な子供を主人公にした、強烈な映画でした。
『おくびょう鳥が歌うほうへ』では、スコットランド北部のオークニー諸島の神話や方言も取り入れ、詩情豊かな作品に仕上げています。 これからの作品が楽しみな映像作家です。(咲)


2024年/イギリス、ドイツ/カラー/シネスコ/118分
配給:東映ビデオ
(C)2024 The Outrun Film Ltd., WeydemannBros. Film GmbH, British Broadcasting Corporation and StudioCanal Film GmbH. All Rights Reserved.
https://www.outrun2026.com/
★2026年1月9日(金)新宿ピカデリーほか全国順次ロードショー
posted by shiraishi at 09:23| Comment(0) | イギリス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする