2019年10月12日

15 ミニッツ・ウォー(原題:L'intervention 、英題:15 minutes of war)

15minutes.jpg

監督:フレッド・グリヴォワ
出演:アルバン・ルノワール、オルガ・キュリレンコ、ケヴィン・レイン、ヴァンサン・ベレーズ、ジョジアーヌ・バラスコ

フランス最後の植民地ジブチ。軍関係者の子供らを乗せたスクールバスが、独立派武装組織のメンバーに乗っ取られるという事件が発生。テロリストたちは同志である政治犯の即時解放と、フランスからの独立を要求し、応じない場合は人質である子供たちの喉を切り裂くと宣言する。事態を重く見たフランス政府は、事件の早期解決のため極秘裏に特殊制圧チームを編成し現地へ派遣することを決める。チームを指揮するジェルヴァル大尉(アルバン・ルノワール)を始め、集められたのは軍でもトップクラスの実力を持つスナイパーたち。彼らは一斉射撃によるテロリストの同時排除という前代未聞の作戦を立案。しかし現地駐留軍、そして事態を穏便に収束させようと動く外交筋との連携がうまく行かず、膠着状態が続いてしまう。一方生徒たちの身を案じた女性教師・ジェーン(オルガ・キュリレンコ)は軍関係者の静止を振り切り、生徒たちのために、単身テロリストに占拠されたバスに乗り込んでゆくのだが…。

1976 年にフランス最後の植民地であるジブチで発生したバスジャック事件を基に、高い狙撃能力を持つスナイパーたちによって編成された対テロ特殊部隊の活躍を描いた。
スクリーンを縦横斜めなどに2分割、4分割して時間経過や同時に起こっていることなどを見せ、緊迫感を煽る。その一方で本国の判断待ちのじりじりとした焦燥感はじっくりと映す。緩急のバランスが的確で、臨場感たっぷり。ラスト15分は阿鼻叫喚の状況が繰り広げられ、ハラハラが止まらない。
なお、この事件後、世界最高峰と謳われる対テロ特殊部隊:GIGN(フランス国家憲兵隊治安介入部隊)が正式に組織化された。(堀)


2018 年/フランス・ベルギー/フランス・英語/カラー/シネマスコープ/5.1ch /98 分
配給:クロックワークス
© 2019 EMPREINTE CINEMA – SND-GROUPE M6 – VERSUS PRODUCTION – C8 FILMS
公式サイト:http://klockworx-v.com/15minutes/
★2019年10 月 11 日(金)新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷ほかにて公開

posted by ほりきみき at 01:25| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年09月19日

パリに見出されたピアニスト 原題:Au bout des doigts 英題:In Your Hands

IMG_0325.JPG

監督:ルドビク・バーナード
脚本:ルドビク・バーナード ジョアン・ベルナール
出演: ランベール・ウィルソン、クリスティン・スコット・トーマス、ジュール・ベンシェトリ、カリジャ・トゥーレ、エルザ・ルポワーヴル

パリ郊外で家族と裕福ではない暮らしをしているマチュー(ジュール・ベンシェトリ)はピアノが大好きな青年で、表向きはクラシックを否定しながら、ひそかに練習し続けていた。ある日、パリの北駅に置かれたピアノを弾いていると、偶然通りかかったパリ国立高等音楽院のディレクター、ピエール(ランベール・ウィルソン)から声を掛けられる。その後警察に捕まったマチューは実刑を免れるため、公益奉仕を命じられた音楽院でピアノのレッスンを受けることになる。

「ご自由に演奏を!」そう書かれたピアノが駅に設置してある光景は、パリ市民にとって珍しいことではないそうだ。さすがは文化が日常化したお国柄。監督が本作の着想を得たのも、 パリのベルシー駅でピアノを弾く青年を見かけたことがきっかけとなっている。

始まりはバッハの「平均律クラヴィーア曲集」の1曲が流れるパリ、北駅。弾いているのは革ジャンにパーカー、ジーンズ、スニーカーを履いた少年だ。注視する中年の男‥。
少年はある出来事からコンセルヴァトワール(パリ国立高等学院)で、“女伯爵”と呼ばれるピアノ教師の猛特訓を受ける成り行きに‥。そしてクライマックスのコンクール課題曲、ラフマニノフの「ピアノ協奏曲 第2番 ハ短調」に取組むまでに様々なドラマが展開される。

バッハ、ショパン、リスト、 ラフマニノフなどクラシックの名曲が全編を覆う本作は、クラシック音楽好きには堪らない魅力だ。
驚くことに、主役を演じたジュール・ベンシェトリはピアノの経験が全くなかったそう!やはり、名優ジャン=ルイ・トランティニャンを祖父に、父は著名な映画監督兼俳優、母は夭折したマリー・トランティニャンという遺伝子の為せる技か。日本公開作では、イザベル・ユペール主演『アスファルト』での演技が印象に残っている人も多いだろう。いくぶん、生硬さを感じさせるが、思春期の少年特有の反骨心と繊細さを身体で表現している。

彼を支えるのは、仏や英語圏でも活躍するベテラン俳優ランベール・ウィルソンとクリスティン・スコット・トーマスの2人が、映画に安定感を齎せている。

セーヌ川中洲に建設されたラ・セーヌ・ミュージカル、音楽の殿堂サル・ガヴォー 、ノートルダム大聖堂やサン・マルタン運河などパリのロケ地が軽やかにスクリーンを彩って行く。(幸)


IMG_0324.JPG


ストリートピアノは日本国内でも設置しているところが増えているようです。都庁の展望台には草間彌生さん監修の黄色に黒の水玉模様のグランドピアノがあり、動画サイトにいろんな方が弾いているところがアップされています。映画のマチューのように通って弾いている天才少年少女が出てきたら面白いですよね。
映画では家族が生活に追われて、マチューの才能に気づいたり後押ししたりという余裕は全くありません。たまたま演奏を聞いたピエールが音楽関係の人間だったことが、マチューの運と才能を開かせていきます。天賦の才能も努力とチャンスが必要なこと、紆余曲折ありながらも報われる日がくるストーリーはありがちですが、俳優の好演でラストまで引っ張っていきます。(白)


2018年製作/106分/G/フランス・ベルギー合作
配給:東京テアトル
(C)Recifilms - TF1 Droits Audiovisuels - Everest Films - France 2 Cinema - Nexus Factory - Umedia 2018
https://paris-piano.jp/
★2019年9月27日(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテ、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国で順次公開★
posted by yukie at 12:23| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年08月29日

ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん(原題:Tout en haut du monde)

longway.jpg

監督:レミ・シャイエ
脚本:クレール・パオレッティ、パトリシア・バレイクス
作画監督:リアン - チョー・ハン
音楽:ジョナサン・モラリ
声の出演
日本語吹替版:上原あかり(サーシャ)、弦徳(祖父オルキン)、吉田小奈美(サーシャの母 )、中西伶郎(サーシャの父 )、前内孝文(トムスキー王子)、徳森圭輔(ルンド船長)、成澤卓(一等航海士ラルソン)、石原夏織(ナージャ)

19世紀のロシア サンクトペテルブルグ。貴族の娘サーシャは14歳、1年前北極探検に旅立ったきり行方不明になった祖父が心配でならない。政府高官の父は、祖父と家族の名誉が失われることを恐れ、社交界にデビューするサーシャをなんとか皇帝の甥トムスキー王子に近づけようと目論んでいる。サーシャは祖父の部屋で北極への航路を書いたメモを見つけ、これまでの捜索船の航路が間違っていたことを知った。
舞踏会で王子に捜索船を出してほしいと懇願するが聞き入れられず、不興を買ってしまう。父からは厳しく叱責され、サーシャは1人ででも祖父を探し出そうと決意する。誰にも告げずたった一人港へと旅立つのだったが。

孫娘が大好きな祖父に再会したいと北極を目指す物語ですが、娘は14歳で行き先は北極です!祖父の薫陶で海図を見ることはできても、航海どころか働いた経験さえありません。どれほどの苦境や困難が待ち受けていることやら。港にやっと到着したかと思えばアクシデント続き、食堂に住み込みで働くことになります。ここでひとまずホッとしましたが、先は長いのです。
シンプルでありながら美しい画面に繰り広げられるサーシャの冒険にすっかり見とれていました。デジタル技術が格段に進んで、最近のアニメは実写と見まがうような作品があったり、その細かさを競うような感じがしたり。この作品はものすごくシンプル、アウトラインはなく、色紙を切り貼りしたような画風です。それでも心の動きのわかる表情が浮かんでいて、説明不足ではありません。少し抑えた色調も美しく、どこを切り取っても飾っておきたくなるようなシーンばかりです。控え目な音楽も素敵。
アヌシー国際映画祭・観客賞、TAAF2016グランプリ受賞作品。(白)


2015年/フランス、デンマーク/カラー/シネスコ/81分
配給:リスキット、太秦
(c)2015 SACREBLEU PRODUCTIONS / MAYBE MOVIES / 2 MINUTES / FRANCE 3 CINEMA / NORLUM
https://longwaynorth.net/
★2019年9月6日(金)より東京都写真美術館ホールほか全国順次公開

☆彡映画を試食‼️ 冒頭18分無料公開☆彡
期間:2019年8月27日(火)21:00~9月5日(木)24:00
※今回はフランス語・日本語字幕版の冒頭18分間を無料配信致します。
https://riskit.jp/tasting/
デパ地下の“試食”と同じように、映画も“試食”していただいて、その“美味しさ”を実感して、納得の上でフルコース(作品全編)”を劇場で堪能いただく企画です‼️
posted by shiraishi at 11:27| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年08月22日

ガーンジー島の読書会の秘密(原題:The Guernsey Literary and Potato Peel Pie Society) 

dokushokai.jpg

監督:マイク・ニューウェル
原作:メアリー・アン・シェイファー、アニー・バロウズ
脚本:ドン・ルース、ケヴィン・フッド、トーマス・ベズーチャ
出演:リリー・ジェームズ、ミキール・ハースマン、グレン・パウエル、ジェシカ・ブラウン・フィンドレイ、キャサリン・パーキンソン、マシュー・グード、トム・コートネイ、ペネロープ・ウィルトン

1946年、終戦の歓びに沸くロンドンで暮らす作家のジュリエット(リリー・ジェームズ)は、一冊の本をきっかけに、”ガーンジー島の読書会”のメンバーと手紙を交わすようになる。ナチに脅えていた大戦中は、読書会と創設者であるエリザベスという女性の存在が彼らを支えていた。本が人と人の心をつないだことに魅了されたジュリエットは、読書会について記事を書こうと島を訪ねるが、そこにエリザベスの姿はなかった。メンバーと交流するうちに、ジュリエットは彼らが重大な秘密を隠していることに気付く。やがて彼女は、エリザベスが不在の理由にたどり着く。

戦争は様々なものを人から奪ってしまう。主人公にはやりがいのある仕事、支えてくれる編集者、愛してくれる裕福な男性がいるのだが、戦争で両親と家を失ったのか、居場所が見つけられない。
お金も仕事も大事だが、精神的な安心や満足があってこそ。悲しい事実、面倒な現実に向き合い、乗り越えた先に幸せはあると作品は伝えてくれる。
ところで、ジュリエットに手紙を送るドーシー役を演じているミキール・ハースマンがカッコイイ。少々埃っぽいが、左斜め45度の笑顔に心が射抜かれた。米映画サイト・TC Candler が毎年選出する「世界で最もハンサムな顔100人」の2016年版で第1位だったのも納得!(堀)


dokushokaimain.jpg


浅薄にも、第2次世界大戦中にガーンジー島が英国でドイツの占領下にあった事実を知らなかったことを恥じた。ナチスは島の主産業である酪農を禁止し、家畜や農産物も没収してしまう。通信機器やラジオ、ガスの供給さえも止められるという厳しい管理下。もちろん集会の自由すらない。が、唯一、奨励されていたのが文化活動。「読書会」と「家畜(謎)」が、島民たちの機転により育まれ、本作に結実した点が愛おしい。

こうした背景が、戦中戦後のガーンジー島とロンドンに齎した傷痕を映画は鮮明に映しだす。ガーンジー島は深刻な飢餓状態にあったにもかかわらず、そこは英国庶民の逞しさ。苦しい日常でもユーモアを忘れない。名優トム・コートネイ、人気ドラマ「ダウントン・アビー」組のリリー・ジェームズ、ジェシカ・ブラウン・フィンドレイ、マシュー・グード、ペネロープ・ウィルトンら、一人一人の人物造形が鮮やかだ。
一途な島の男に、新鮮なオランダ俳優を配したことも奏功している。有りがちなロマンス逸話に留まらない人間賛歌に昇華させたのは、今も熱狂的ファンを持つ『フォー・ウェディング』などのマイク・ニューウェル監督。

観る人誰もが楽しく幸せになる映画。一冊の本が紡ぐ庶民の物語は戦争にも打ち勝つのだ、という勇気と希望を与えてくれる秀作だ。(幸)


IMG_0305.JPG


2018年/フランス・イギリス/英語/カラー/ビスタ/5.1ch/124分
配給:キノフィルムズ
© 2018 STUDIOCANAL SAS
公式サイト:http://dokushokai-movie.com/
★2019年8月30日(金)より、TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー
posted by ほりきみき at 00:06| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年08月18日

ディリリとパリの時間旅行(原題:Dilili a Paris)

dilli.jpg

監督・脚本:ミッシェル・オスロ
音楽:ガブリエル・ヤーレ
声の出演:プリュネル・シャルル=アンブロン、エンゾ・ラツィト、ナタリー・デセイ

ベル・エポック、黄金時代のパリ。ニューカレドニアから一人でやって来たディリリは、好奇心旺盛な女の子。初めてのパリに目を丸くする。パリは自分の庭という配達人の青年オレルと友だちになり、さまざまな人々と出会っていく。そのころ少女たちばかりを狙った誘拐事件が続いており、犯人は今もつかまっていない。ディリリは少女たちを助けようと、オレルと一緒に事件解決へと乗り出すが。

『キリクと魔女』『アズールとアスマール』のミッシェル・オスロ監督の最新作アニメーション。第44回セザール賞で最優秀アニメ作品賞を受賞。美しいパリの街は監督が撮りためてきた写真をもとにしたもの。こまやかに描かれた広場や劇場や街を背景に、当時のファッションのパリジェンヌたちが闊歩しています。顔の広いオレルがディリリに引き合わせた有名人は、ピカソ、マチス、ロートレックにキュリー夫人にオペラ歌手…。今の時代も郵便屋さんと宅配やさんは誰とでも会える…かも。
なにごとにも臆せず、冒険心に富んだディリリに少しだけハラハラさせられますが、女の子だからと制限されたりしません。活躍を応援したくなるはずです。
日本語吹替版はディリリを新津ちせさん、オレルを斎藤工さん。エンドロールでは二人の歌声も聞けます。
ユニセフの動画もご覧ください。(白)


2018年/フランス、ベルギー、ドイツ/カラー/シネスコ/94分
配給:チャイルド・フィルム
(C)2018 NORD-OUEST FILMS - STUDIO O - ARTE FRANCE CINEMA - MARS FILMS - WILD BUNCH - MAC GUFF LIGNE - ARTEMIS PRODUCTIONS - SENATOR FILM PRODUKTION
https://child-film.com/dilili/
★2019年8月24日(土)よりYEBISU GARDEN CINEMA、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国で順次公開
posted by shiraishi at 19:57| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする