2019年02月01日

ともしび(原題Hannah)

tomosibi.jpg

監督・脚本:アンドレア・パラオロ
撮影:チェイス・アーヴィン
出演:シャーロット・ランプリング(アンナ)、アンドレ・ウィルム(アンナの夫)、ステファニー・バン・ビーブ(エレーヌ)、シモン・ビショップ(二コラ)、ファトゥ・トラオレ(演技の先生)

アンナは夫と二人つつましく暮らしている。毎日食事を作り、演劇クラスと水泳を楽しみ、富裕な家族の家政婦の仕事に出かける。ずっと続くかと思われた平穏な日々が、突然夫が逮捕されたことによって破られてしまう。アンナのこれまでの日常に少しずつ狂いが生じ、楽しみも一つずつ奪われていく。ある日、階上の家の水漏れで、天井を修理することになった。大きな戸棚を移動して、その裏側に夫が隠した写真を見つけてしまった。夫の罪の証拠となるものだった。

『まぼろし』(2001)『さざなみ』(2015)とひらがな4文字の作品が続いたシャーロット・ランプリング。作品はどれも長く連れ添った夫婦についてのドラマです。夫役のアンドレ・ウィルムは『ル・ア-ヴルの靴みがき』(2011)の男優さん。アンドレア・パラオロ監督はこれが長編2作目の方です。若いのに、どうして老夫婦の機微をこんな風にとらえることができるのでしょう?
容赦なくアップになるのに抗わず、年取った身体もさらすシャーロット・ランプリング。カッコよく年を取っていく女優さんだなぁと毎回感じ入っています。入れ歯を外して演技した樹木希林さんが思い出されました。
どのシーンも台詞が少なく、雄弁に物語っているのは彼女の表情。孤独と絶望の中でかすかなともしびを見い出せるのか?この人がいてこその作品でした。落ち着いた色合いの撮影が美しい本作で、ところどころに花や風船の明るいさし色が入ります。シャーロット・ランプリングの着こなしが素敵で、セーターに小さなアクセサリー、地味な色のコートに色とりどりのスカーフが合わせてありました。それも見どころ。(白)


2017年/フランス・イタリア・ベルギー/カラー/シネスコ/93分
配給:彩プロ
2017 (C) Partner Media Investment - Left Field Ventures - Good Fortune Films
http://tomoshibi.ayapro.ne.jp/
★2019年2月2日(土)ロードショー
posted by shiraishi at 09:28| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年01月27日

ジュリアン(原題:Jusqu'a la garde)

julian.jpg

監督・脚本:グザビエ・ルグラン
撮影:ナタリー・デュラン
出演:レア・ドリュッケール(ミリアム・ベッソン)、ドゥニ・メノーシェ(アントワーヌ・ベッソン)、トーマス・ジオリア(ジュリアン・ベッソン)、マティルド・オネブ(ジョゼフィーヌ・ベッソン)

11歳のジュリアンは両親がDVで離婚したため、母ミリアムと姉のジョセフィーヌの3人で暮らしている。離婚調停で共同親権となったため、ジュリアンは毎週末父のアントワーヌと会わなければならない。アントワーヌはミリアムの電話を聞きだそうとするが、母親を守るため、ジュリアンは必死で嘘をつく。短気で激昂しやすい父親が母親にひどいことをしないように。ジュリアンの態度に、アントワーヌはますます妻に執着する。

ジュリアンの苦しげな表情のポスターに悪い予感がしてしまいます。お父さんの目が怖いです。口が優しい台詞を吐いても、目の鋭さは消えません。赤頭巾ちゃんの狼を連想しました。狼は空腹でした。この父親は家族に疎まれて愛情に飢えています。相手を愛する方法と方向が違っていても、気づきません。
ジュリアンがその力をまともに受けてしまってつぶれそうなのに、誰も助けてやれません。どうしたらいいのか、ずっと緊張して観ていて、身体に力が入っていました。姉のジョセフィーヌが歌う場面だけ、ふっと息をつくことができます。このジュリアン役のトーマスくんは初の長編、父親役のドゥニ・メノーシェはいつもはニコニコして明るい人だそうで、俳優さんってすごい!それを引き出す監督もすごい!(白)


別れた妻や子供、あるいは妻の親や姉妹なども殺してしまう元夫が起こす事件が報じられることがあると、なぜこの人はこういう行動に出てしまったんだろうと考える。衝動的な行動に出てしまう人はやけくそになりやすいということなんだろうか、恨みをはらすためそういう行動に出てしまうのだろか。そういう行動に走らないようにするにはどうしたらいいのだろうと頭を抱えてしまった。でも、私にはやっぱり、そこまでしてしまう人の心がわからない。決して元妻にも問題があるとは思えない。やはり本人が制御できないものを持っているのだろう。だってそうじゃない人がほとんどなんだから。自分の行動を制御できない人が増えたら世の中どうなってしまうだろう。この作品は、それほどDVのすさまじさを表している(暁)。

2017年/フランス/カラー/シネスコ/93分
配給:アンプラグド
(C)2016 - KG Productions - France 3 Cinema
https://julien-movie.com/
★2019年1月25日(金)新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開
posted by shiraishi at 12:35| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ナチス第三の男(原題:The Man with the Iron Heart)

no3.jpg


監督:セドリック・ヒメネス

原作:ローラン・ビネ「HHhH プラハ、1942年」(東京創元社刊)

出演:ジェイソン・クラーク(ラインハルト・ハイドリヒ)、ロザムンド・パイ(クリナ・ハイドリヒ)、ジャック・オコンネル(ヤン・クビシュ)、ジャック・レイナー(ヨゼフ・ガブチーク)、ミア・ワシコウスカ(アンナ・ノヴァーク)、スティーブン・グレアム(ハインリヒ・ヒムラー)

海軍の兵士だったラインハルト・ハイドリヒは女性問題によって不名誉除隊を余儀なくされる。自分の拠り所である軍籍をもぎ取られて怒りに震えるが、妻の奨めでナチ党に入党。ナチ運動に怒りのはけ口を見つけ、出世欲にも駆り立てられて、ナチ運動に没頭していく。やがて、諜報活動で頭角を現し、瞬く間に党幹部へとのしあがる。さらに、150万人を超えるユダヤ人虐殺の首謀者として、絶大な権力を手にしていく。その冷徹極まりない手腕から“金髪の野獣”と呼ばれ、ヒトラーさえもが恐れたという。
ハイドリヒの暴走を止めるべく、チェコ亡命政府によって選抜された2人の若き兵士が、闇夜に紛れパラシュートでプラハに潜入。綿密な暗殺計画を立て、1942年5月27日、遂に決行される。

原作はローラン・ビネの大ベストセラー「HHhH プラハ、1942年」。NYタイムズ紙の“注目すべき本”に選出され、映像化オファーが殺到する中、セドリック・ヒメネス監督が映画化権を獲得した。
前半はラインハルト・ハイドリヒがなぜナチ党員になり、ヒトラー、ヒムラーに次ぐ、ナチス第三の男まで上り詰めたのかを、後半は史上唯一成功した、ナチス高官の暗殺計画を実行側から描く。この暗殺計画とその後については、2017年に公開された『ハイドリヒを撃て!「ナチの野獣」暗殺作戦』でじっくり描いているので、既視感が拭えない。しかし、ハイドリヒの半生については、とても興味深かった。ノンポリだったラインハルト・ハイドリヒがナチにのめり込んでいく様は他人事には思えないのだ。そして、残された妻と子のその後をエンドロールで知り、複雑な気持ちになった。(堀)

2017年/フランス・イギリス・ベルギー/カラー/シネスコ/120分
配給:アスミック・エース
(C)LEGENDE FILMS - RED CROW N PRODUCTIONS ? MARS FILMS ? FRANCE 2 CINEMA ? CARMEL ? C2M PRODUCTIONS ? HHHH LIMITED ? NEXUS FACTORY ? BNP PARIBAS FORTIS FILM FINANCE.


★2019年1月26日(土)ロードショー


posted by sakiko at 00:00| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年01月17日

TAXi ダイヤモンド・ミッション(原題:TAXI5) 

taxi.jpg

監督・脚本:フランク・ガスタンビド
製作・脚本:リュック・ベッソン
脚本:ステファーヌ・カザンジャン
撮影:ヴァンサン・リシャール
出演:フランク・ガスタンビド(シルヴァン・マロ)、マリク・ベンタルハ(エディ・マクルー)、ベルナール・ファルシー(ジベール市長)、サルヴァトーレ・エスポジト(トニードッグ)、エドゥアルド・モントート(アラン)、サブリナ・ウアザニ(サミア)

パリ警察で検挙率ナンバー1を誇っている警官マロ、本人は特殊部隊への転属を夢見ていたが、スピード狂のうえ、問題だらけの性格。意に反してマルセイユ警察へ異動が決まってしまった。赴任してみるとマロに勝るとも劣らない個性豊か(過ぎ)なメンバーばかり。
マルセイユではフェラーリを乗り回すイタリアの強盗団に宝石店が襲われ、警察は追跡しては振り切られと連敗続き、手をこまねいていた。敵に勝つにはまず最速の車が必須と、マロは伝説のタクシー“プジョー407”を探す。それは嘘か誠か時速300kmを超えるという。持ち主ダニエルの甥で間抜けなタクシー運転手エディとしぶしぶタッグを組むはめになった。

1997年に第1作が作られた『TAXi』シリーズの5作目。スピード狂と間抜けな相棒コンビのカラーは変えずに、キャストが替わりました。リュック・ベッソン製作・脚本はそのまま、監督がジェラール・クラヴジックからフランク・ガスタンビドに交代、フランク・ガスタンビドは主演もつとめています。ベルナール・ファルシーは前作で署長でしたが、今回はジベール市長に出世(?)。
綺麗なお姉さんもちょっと出てきますが、メインは車。街中を破壊しつつ強盗団とカーチェイス、空まで飛んでしまうという男の子が大好きそうな作品。よいこはまねしてはいけません。(白)


2018年/フランス/カラー/シネスコ/103分
配給:アスミック・エース
(c)2018-T5 PRODUCTION-ARP-TF1 FILMS PRODUCTION-EUROPACORP-TOUS DROITS RESERVES
http://taxi5.asmik-ace.co.jp/
★2019年1月18日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー
posted by shiraishi at 21:03| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年01月13日

バハールの涙   原題:Les filles du soleil  英題:Girls of the Sun

bahar.jpg

監督: エバ・ユッソン
出演: ゴルシフテ・ファラハニ、エマニュエル・ベルコ

2014年8月3日、IS(イスラミックステート)がイラク北西部シンジャル山岳地帯のクルドのヤズディ教の人たちが住む村々に侵攻する。多くの成人男性が殺害され、女性たちは性奴隷に、少年たちは“小さな獅子たちの学校”でIS戦闘員として養成される。
それから3ヵ月後、弁護士だった女性バハールは、腕に夫と息子の名のタトゥーを入れ、銃を手にしていた。奴隷として売られていたが、臨月のラミアと共に脱出し、拉致された息子を取り戻すべく女性戦闘員で結成された「太陽の女たち」に加わったのだ。
そんな女性だけの戦闘部隊を、片目の戦場記者マチルドが取材にくる。最初は、彼女との距離を置こうとしたバハールだが、マチルド自身、ジャーナリストだった夫を戦場で亡くし、娘を置いての取材と知り、次第に心を通わせるようになる。さて、バハールは、無事息子を取り戻すことができるのか・・・

本作は、実際にイラクのクルド人自治区で、2014年8月3日から2015年11月13日に起きた出来事に着想を得た物語。
昨年、ノーベル平和賞を受賞したナディア・ムラドさんによって、イラクのクルド人の中でも少数派のヤズディ教徒の人たちが、ISによって虐殺されたり、性奴隷にされたことが広く知られることになりました。ナディアさんについては、ドキュメンタリー『ナディアの誓い - On Her Shoulders』(2月1日公開予定)で詳しく紹介し、理不尽な扱いを受けたヤズディ教徒の人たちの気持ちに迫っています。
女性だけの戦闘部隊のことは、当時ニュースで知り、その勇気に驚かされました。【女性に殺されたら天国へ行けない】と信じるISの戦闘員たちに、女性戦闘部隊は恐れられたそうです。

bahar golshifte.jpg
(C)2018 - Maneki Films - Wild Bunch - Arches Films - Gapbusters - 20 Steps Productions - RTBF (Television belge)
その先頭に立つ果敢な女性バハールを、イランの女優ゴルシフテ・ファラハニさんが体現しています。2008年、『ワールド・オブ・ライズ』でレオナルド・ディカプリオと共演、翌年、アスガル・ファルハディ監督の『彼女が消えた浜辺』に出演して以降、イラン国外に活動拠点を移し、最近では『パターソン』『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊』に出演。【世界で最も美しい顔100人】トップ10の常連としても名を知られています。
私が彼女に会ったのは、2004年のアジアフォーカス福岡映画祭の時のこと。『冷たい涙』(アズイゾラー・ハミドネジャド監督)で、クルドの女性を演じていたのですが、独学で学んだクルド語を映画の中で駆使していました。
笑顔が素敵なゴルシフテさんですが、戦闘員バハールという役柄、笑顔は封印。拉致された息子を取り戻したい母の思い、そして、無残な扱いを受けたヤズディの人たちの無念な思いを全身で表しています。
バハールとは、春のこと。ヤズディ教徒の人たちに、ほんとうの春が来ることを願ってやみません。(咲)


2018年/フランス・ベルギー・ジョージア・スイス/111分/カラー/スコープ/G
配給: コムストック・グループ/ツイン
公式サイト:http://bahar-movie.com/
★2019年1月19日(土) 新宿ピカデリー&シネスイッチ銀座ほか全国ロードショー!





posted by sakiko at 18:24| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする