2025年06月01日

マリリン・モンロー 私の愛しかた(原題:Dream Girl: The Making of Marilyn Monroe)

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監督・脚本・編集:イアン・エアーズ
出演:マリリン・モンロー

1926年6月1日ノーマ・ジーン誕生。母親が望まない子どもだったため、すぐに里子に出された。8歳で母の元に戻ったが、下宿人の英国俳優から性的虐待を受ける。16歳で結婚し、軍のカメラマンに見出されモデルの仕事を始める。女優になりたい夢を夫は理解せずラスベガスへ移住後、20歳で離婚する。裏社会の大物バグジーに気に入られ、芸名をマリリン・モンローとした。
端役で芸能界にデビュー後、少しずつ俳優の階段を上がる。ブロンドのおバカな娘のイメージから抜け出すため、演技の勉強を始める。野球選手のジョー・ディマジオと結婚、ジョーは家庭に入ってほしかったが、彼女は映画出演を続け結婚生活は破綻した。アクターズスタジオで演技の勉強を続け、当時では珍しい自分のプロダクションを持った。スターの地位は確固としたものになったが、華やかな恋愛を繰り返したイメージと裏腹に、マリリンは薬物に手を出し、1962年8月4日ただ一人で亡くなった。

享年36歳のマリリンは誰もが知る往年の大スターです。映画に出て活躍し華やかなスター生活を送ったのは10年ほどだそうですが、多くの映画ファンにその後も忘れられない印象を残しています。膨大な映像や写真、関係者の話からはセルフプロデュースにたけた頭の良い女性の姿が浮かび上がってきます。期待される姿で登場し、屈託ない笑顔をふりまいていた彼女はプロの女優でした。
仕事に打ち込み、演技を追求して良い結果が生まれ、充実した時間だったはず。ただ愛情に恵まれなかった子ども時代を取り戻すように、良い家庭も持ちたかったのではと思いますが、淋しい最期に「ほんとはどうだったの?」と聞きたくなります。元夫のジョー・ディマジオが葬儀を取り仕切ったと知って「大切に思っていたんだ」とちょっと嬉しい気持ちになりました。(白)


『マリリン・モンロー 瞳の中の秘密』(2012年、監督:リズ・ガーバス)も、マリリン・モンローの実像に迫る映画でした。
今回公開されるのは、2022年に没後60年を迎える際に立ち上がったドキュメンタリー映画。監督を務めたイアン・エアーズは、4歳の時にTVで「ハッピーバースデー」を歌うマリリンの姿に魅了され、その後に出版された彼女の伝記本を読み、マリリンの人生に大きな興味を持っていたそうです。
のちに大統領となったジョン・F・ケネディはじめ、多くの大物男性を魅了したマリリン・モンロー。 中でも、アーサー・ミラーと出会い、「演技派俳優になれる」と言われたことは、セックスシンボルのように思われていたマリリンにとって、どれほど嬉しかったことでしょう。
小さい時に教会で「映画を観にいくような人間は地獄に落ちる」と教えられたマリリンが、それをものともせず、映画の世界に邁進したことに、あらためて信念を持った人だなぁ~と思いました。(咲)



2022年/フランス/カラー/120分
配給:彩プロ
(C)2023-FRENCH CONNECTION FILMS
https://marilynmonroe.ayapro.ne.jp/
★2025年5月30日(金)より全国ロードショー

posted by shiraishi at 15:27| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年05月24日

秋が来るとき   原題:Quand vient l'automne

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© 2024 – FOZ – FRANCE 2 CINEMA – PLAYTIME

監督・脚本:フランソワ・オゾン(『8 人の女たち』、『ふたりの 5 つの分かれ路』、『苦い涙』)
共同脚本:フィリップ・ピアッツォ
出演:エレーヌ・ヴァンサン、ジョジアーヌ・バラスコ、リュディヴィーヌ・サニエ、ピエール・ロタン

80歳のミシェル。パリのアパートを娘に譲り、今は、自然豊かなブルゴーニュの田舎で一人暮らしをしている。家庭菜園で採れた野菜で料理を作り、日曜日には教会へ。近くに住む親友のマリー=クロードとは姉妹のように仲がよく、収監されている彼女の息子ヴァンサンとの面会の為に、車で送っていくのもミシェルの役目だ。
パリに住む娘ヴァレリーから、秋の休暇を利用して孫ルカを連れていくと連絡をもらい、マリー=クロードと森にキノコを採りにいく。キノコ料理を振舞うが、唯一それを口にしたヴァレリーが食中毒を起こし、ヴァレリーはルカを連れてパリに帰ってしまう。孫ルカと過ごすのを楽しみにしていたミシェルは、パリに行くが・・・

母親がキノコで毒殺しようとしたと言うほど、ヴァレリーはミシェルのことを信用せず嫌っている理由が明かされた時、はっとさせられます。一方、マリー=クロードは息子が道をはずしたのは、自分のせいと悔やみ、それが身体にも出てしまいます。成人したら、もう本人の責任と思いますが、母親にとっては、いつまでも子どもなのですね。
登場人物のそれぞれが秘密を抱え、自分の人生のため、そして近しい人たちの幸せのため、秘密を封印します。これもまた処世術。

美しい撮影地は、ブルゴーニュ地方コーヌ=シュル=ロワール近郊のドンジー。監督が子供の頃、毎年休暇を過ごした場所だそうです。
そして、キノコ料理で中毒を起こしたエピソードは、子供の頃、叔母が自ら摘んできたキノコを料理して振る舞った時に、叔母以外の家族全員が中毒を起こしたという経験から着想。叔母だけがキノコ料理を口にしなかったのだとか。
1943年生まれのエレーヌ・ヴァンサンが、これまでの人生への複雑な思いを抱えたミシェルを気丈に演じて、素敵です。(咲)


第72回サン・セバスティアン映画祭 脚本賞&助演俳優賞受賞!

2024年/フランス/フランス語/103分/ビスタ/カラー/5.1ch
日本語字幕:丸山垂穂
配給:ロングライド、マーチ
公式サイト:https://longride.jp/lineup/akikuru/
★2025年5月30日(金)新宿ピカデリー、TOHOシネマズ シャンテほか全国公開





posted by sakiko at 21:06| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年05月11日

季節はこのまま   原題:Hors du temps 英題:Suspended Time

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(C)Crole Bethuel

監督・脚本:オリヴィエ・アサイヤス(『夏時間の庭』『冬時間のパリ』「イルマ・ヴェップ」)
出演:ヴァンサン・マケーニュ(『女っ気なし』)、ミシャ・レスコー(『SAINT LAURENT/サ ンローラン』)、ナイン・ドゥルソ、ノラ・アムザウィ(『オークション 〜盗まれたエゴン・シ ーレ』)、モード・ワイラー(『ライオンは今夜死ぬ』)、ドミニク・レイモン(『感傷的な運 命』)、マグダレナ・ラフォン

5年前のロックダウンの「あの日々」を描いたロマンス・コメディ・・・

2020年4月、新型コロナウイルスのパンデミックにより世界中で外出が制限された春。
映画監督のポールと音楽ジャーナリストで弟のエティエンヌは、子どもの頃に暮らした郊外の家に閉じこもって生活することになる。二人とも、本格的な交際を始めたばかりの彼女であるモルガン、そしてキャロルがそばにいる。
母が1947年にハンガリーを逃れてきて初めて植えた木、父が使っていたドイツ製のタイプライター・・・ 懐かしい風景の中での暮らしなのに、勝手が違って、外出禁止で世界から切り離されたよう。一緒に住んで初めて知る互いのこと… すべてが「止まってしまった」時間のなかで、不安を抱えながらもゆっくりと、たしかにそこにある光、愛と人生の新たな側面を発見していく・・・

オリヴィエ・アサイヤス監督による「自伝的コメディ」。風貌のまったく違うヴァンサン・マケーニュがアサイヤス監督の分身であるポールを演じているのですが、周りから、性格がまさにアサイヤス監督だと指摘されたとか。
毎日のようにAmazonで何か買ってしまうポール。弟から「悲惨な労働条件の会社から購入して」と皮肉られ、さらに毎日のように来る「配達人から感染するかも」と言われてしまいます。
兄も弟も、離婚したり前の彼女と別れたりで、新しい彼女と付き合い始めたばかり。それが、ロックダウンで濃密な暮らしをすることになったのですから、いろいろ目にもついてしまうでしょう。兄弟も、小さい頃、無邪気に一緒に遊んでいた頃とは違います。
あれから5年も経って、そういえば、閉じ込められたあの日々は、自由に友達にも会えなくて大変だったと思い出します。一方で、家族と濃密な暮らしをおくった貴重な日々だったという方もいることでしょう。そんな日々を思い出させてくれる物語。(咲)


第 74 回ベルリン国際映画祭 コンペティション部門正式出品

2024 年/フランス/105 分/1.85:1/5.1ch
字幕翻訳:手束紀子
配給:Bunkamura
公式サイト:https://kisetsufilm.com/
★2025年5月9日(金)より Bunkamura ル・シネマ 渋谷宮下ほか全国順次ロードショー




posted by sakiko at 19:42| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年03月27日

マリア・モンテッソーリ 愛と創造のメソッド  原題:Maria Montessori (La Nouvelle Femme)

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(C)Geko Films – Tempesta – 2023

監督・脚本:レア・トドロフ
出演:ジャスミン・トリンカ 、レイラ・ベクティ、ラファエル・ソンヌヴィル=キャビー、ラファエレ・エスポジト、ピエトロ・ラグーザ、アガト・ボニゼール、セバスティアン・プドゥル、ラウラ・ボレッリ、ナンシー・ヒューストン

子どもの権利のために闘う それが私の運命
20世紀初頭のイタリア・ローマ。マリア・モンテッソーリ(ジャスミン・トリンカ)は、ある「成功者」と出会う。フランスの有名なクルチザンヌ(高級娼婦)リリ・ダレンジ(レイラ・ベクティ)だ。リリは娘の学習障がいが明るみに出そうになったとき、自分の名声を守るためにパリから逃亡してきたのだった。マリアはこの時期すでに画期的な新しい教育法の基礎を築いていた。リリはマリアを通して、娘はただの障がいのある女の子ではなく、強い意志と才能を持った人として、ありのままの娘を知るようになる。マリアに共鳴したリリは、男性中心社会の中でもがくマリアの野望の実現に手を貸すのだが……。

モンテッソーリ教育の生みの親、マリア・モンテッソーリの劇的な人生。
ブルジョア社会の運命さえも変えた、強く知的なひとりの女性の物語。
Amazon創業者ジェフ・ベゾス、Google創業者ラリー・ペイジとセルゲイ・ブリン、シンガーソングライターのテイラー・スウィフト、将棋の藤井聡太などが受けたことでも注目されるモンテッソーリ教育。本作は、その生みの親であるマリア・モンテッソーリがメソッドを獲得し、1907年に「子どもの家」を開設するまでの苦悩に満ちた7年間を描いた物語。

レア・トドロフ(監督・脚本)
パリ、ウィーン、ベルリンで政治学を学び、その後ドキュメンタリー映画を主に活動してきたレア・トドロフ。2012年初のドキュメンタリー「Saving Humanity during Office Hours」を監督し、14年には「Russian Utopia」を共同監督。15年にジャンナ・グルジンスカ監督のオルタナティブ教育をテーマにしたドキュメンタリー「School Revolution: 1918-1939」の脚本を執筆。そして、遺伝性疾患を持って生まれた娘の誕生が本作制作への決定的な契機となった。本作が長編劇映画、初監督。

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SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2024 国際コンペティション部門で上映された折に登壇したレア・トドロフ監督


モンテッソーリという苗字が、独特の教育メソッドの名前として世界に広まりました。100年以上前の、まだまだ男尊女卑が横行していた時代に、シングルマザーの医師という立場で、後世に残る功績を残した女性の生き様。レア・トドロフ監督は、想像力を駆使して、マリア・モンテッソーリの敵的な人生を描き上げています。そこには、レア・トドロフ監督自身の障がいを持った娘の存在があったとのこと。どんな子どもであっても、生きる喜びを感じることができるような教育であってほしいと願います。(咲)

「シュタイナー教育」という名前は知っていたけど、「モンテッソーリ教育」という言葉は、この映画で初めて知りました。基本的な考え方は「子どもには生来、自立・発達していこうとする力があり、その力が発揮されるためには発達に見合った環境」が必要ということだそうです。そんな教育方法を100年以上前に、提唱したのが女性だったということが驚きでした。しかも、イタリア初の女性医師だったという。とはいえ、19世紀に、彼女の道を築いていった困難は相当だったでしょう。これはシスターフッドの映画でもある。それは今の時代にも女性に必要なこと。それは嬉しいことでもあり、残念なこと。ほんとの意味で女性が活躍できる時代がきてほしい(暁)。

2023年/フランス・イタリア/イタリア語・フランス語/99分/1:1.85/5.1ch
字幕:杉本あり
配給:オンリー・ハーツ
協力:国際モンテッソーリ協会(AMI)
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ
イタリア大使館/イタリア文化会館
公式サイト:http://maria.onlyhearts.co.jp/
★2025年3月28日(金)よりシネスイッチ銀座、シネ・リーブル池袋、UPLINK吉祥寺他にて全国順次公開
posted by sakiko at 09:16| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年03月15日

湖の見知らぬ男   原題:L'inconnu du lac

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©️ 2013 Les Films du WorsoArte / France Cinéma / M141 Productions / Films de Force Majeure


監督・脚本:アラン・ギロディ 
出演:ピエール・ドゥラドンシャン、クリストフ・パウ、パトリック・ダスマサオ、ジェローム・シャパット、マチュー・ヴェルヴィッシュ 他

青年フランクは車を降りて森を抜け、その先に広がる美しい湖の畔にいく。
そこには裸で寝そべる男たち。顔見知りの男に声をかけ、服を脱いで湖で泳いでいると、離れたところに服を着た男が座っているのが目のとまり、話しかける。アンリと名乗る男は木こりで、かつては対岸に家族と来ていたが、離婚したという。フランクはといえば、市場で野菜売りをしていたが、今は次の仕事を模索中。
湖から小麦色に焼けた、鍛え上げられた体の男があがってきて、フランクは彼を追って森の茂みに入っていく。その男ミシェルとフランクは恋に落ちる。
ある夕方、フランクは湖で喧嘩する2人を目撃する。その数日後、ミシェルの恋人だった男性が溺死体で発見される・・・

解説を何も読まずに映画を観たのですが、まず、湖畔に男が点々と一人で過ごしていて、あ~ そういう場所なのだと! それにしても、ほとんどの男が裸なのに、あまりにあっけんからんとして卑猥な感じはしません。そんな彼らも事件が起きて、刑事がやってくると、さすがに下を隠します。
フランクもミシェルも、そして、ここに来る男たちは皆、自分と相性のいい男を探し求めて、彷徨います。離婚したアンリもまた、心地よく会話できる相手を求めて、湖畔に通っているらしいと感じます。そんな中で、ひたすら自分の仕事を全うしようとする刑事・・・

フランクがアンリに声をかけた時に話題にした、「湖に10メートルのナマズがいる」「いや、5メートル」「4メートルはある」という会話が可笑しかったです。初対面の人と何を話すのか・・・ 天気の話や、どこから来た?というのは、ありきたり。巨大ナマズか・・・! 
これもまたアラン・ギロディ監督の独特の世界でした。(咲)


2013年カンヌ国際映画祭「ある視点」部門 監督賞&クィア・パルム賞受賞

2013年/フランス/97分/カラー/スコープ/ドルビーSRD
日本語字幕:今井祥子
配給 サニーフィルム
公式サイト:https://www.sunny-film.com/alain-guiraudie
★2025年3月22日(土) シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開



posted by sakiko at 16:55| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする