2024年10月10日

「映画作家 ジャンヌ・モロー」『リュミエール』『思春期』『リリアン・ギッシュの肖像』

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© 1976-1979-1983 FONDS JEANNE MOREAU POUR LE THÉÂTRE, LE CINÉMA ET L’ENFANCE. TOUS DROITS RÉSERVÉS

女が女の映画をつくるということ
映画作家 ジャンヌ・モロー


名優ジャンヌ・モローが監督した知られざる3作品一挙公開!

『リュミエール』1976年 ★国内劇場初公開
『思春期』1979年
『リリアン・ギッシュの肖像』1983年 ★国内劇場初公開

映画史にその名を刻む、フランスを代表する「女優」ジャンヌ・モロー(1928-2017)。
オーソン・ウェルズ、フランソワ・トリュフォー、ルイ・マル、ルイス・ブニュエルら「巨匠」「名匠」たちと共に数々の名作に携わった彼女の映画への情熱と好奇心に満ちた創造力は、「映画監督」としても発揮された。
40歳代で初めて監督を務めたモローは「私は女たちを称賛している。ありのままの姿を彼女たちに示そうと思った。男たちが示す形ではなく」と語った。その言葉通り、彼女の映画には様々な年代の女性たちの率直な言葉や飾り気のない姿が映し出されている。
70年代から80年代にかけて作られた、女性(たち)をめぐる3つの監督作品が一挙公開されます。映画史の影に隠れていたモロー監督作は、女性たちのありままの姿がいきいきと映し出され、今こそ現代的な視点で見返すべき傑作です。

提供:キングレコード/配給:エスパース・サロウ/宣伝:プンクテ
公式サイト: jeannemoreau.espace-sarou.com
公式X:https://x.com/jeannemoreaujp
★2024年10月11日(金)より、新宿シネマカリテ、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開


『リュミエール』 原題:LUMIÈRE  ★国内劇場初公開 
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LUMIÈRE © 1976 FONDS JEANNE MOREAU POUR LE THÉÂTRE, LE CINÉMA ET L’ENFANCE. TOUS DROITS RÉSERVÉS
1976年/フランス/102分
監督・脚本:ジャンヌ・モロー
撮影:リカルド・アロノヴィチ
音楽:アストル・ピアソラ
出演:ジャンヌ・モロー、ルチア・ボゼー、フランシーヌ・ラセット、キャロリーヌ・カルティエ、ブルーノ・ガンツ

監督デビュー作。サラ、ラウラ、ジュリエンヌ、キャロリーヌ。4人の女優たちの欲望、葛藤、そして連帯が鮮やかに描かれる。映画業界を内部から描く作品で、モロー自身の半生を彷彿とさせる。女優の一人サラ役をモローが演じている。ドイツの名優ブルーノ・ガンツが出演し、タンゴを革新した作曲家アストル・ピアソラが音楽を担当。

あ、ピアソラ!という出だし。ですが、途中の物語ではピアソラの音楽は邪魔しません。最後にまたピアソラで終わります。
4人の女優たちの赤裸々な姿が描かれていて、フランス人って、やっぱり愛に生きる人たちなのねと感じさせてくれました。
「フィレンツェに行ったら、日本人だらけ。4000人もいたわ」「パリもよ」という会話があって、1976年といえば、団体で日本人が大挙してヨーロッパに行った時代ですね。
女優たちの会話がとにかく面白かったです。(咲)



『思春期』(旧邦題:ジャンヌ・モローの思春期) 原題:L'ADOLESCENTE
L’ADOLESCENTE © 1979 FONDS JEANNE MOREAU POUR LE THÉÂTRE, LE CINÉMA ET L’ENFANCE. TOUS DROITS RÉSERVÉS
1979年/フランス/94分
監督・脚本:ジャンヌ・モロー
共同脚本:アンリエット・ジェリネク
撮影:ピエール・ゴタール
音楽:フィリップ・サルド
出演:レティシア・ショヴォー、シモーヌ・シニョレ、フランシス・ユステール、ジャック・ヴェベール、エディット・クレヴェール

戦争の影が迫る1939年。12歳のマリーが父の故郷のフランス中部の村で母、祖母と共に過ごした特別な夏休み。マリーは村にやってきた若きユダヤ人の医師に恋をするが・・・
伝説的な女優シモーヌ・シニョレが孫を優しく見守る祖母役で出演。日本では1985年に『ジャンヌ・モローの思春期』のタイトルで劇場公開された。

マリーが自転車に乗ってテレーズの私生児を見に行った帰り、ユダヤ人の医師アレクサンドルの運転する車とぶつかり、家に送ってもらいます。生理が始まったマリーは、すっかり大人になった気分で、アレクサンドルに「愛してる」と打ち明けにいくのですが、30歳の彼にとって「君はまだ子供」。彼はどうやらマリーの母親に惚れているよう。
村人の会話の中に、ヒトラーがオーストリアを併合した話なども出てきて、ユダヤ人のアレクサンドルの行く末はいかに・・・と案じてしまいました。ヴァカンスの終わる頃、村祭りに集う人々。ですが、とうとう戦争が始まり、穏やかな日々には二度と戻れない時代に突入するのです。私生児や、大人の男に興味を持つ思春期の少女を瑞々しく描いた作品。(咲)


『リリアン・ギッシュの肖像』原題:LILLIAN GISH ★国内劇場初公開
LILLIAN GISH © 1983 FONDS JEANNE MOREAU POUR LE THÉÂTRE, LE CINÉMA ET L’ENFANCE. TOUS DROITS RÉSERVÉS
1983年/フランス/59分
監督・脚本:ジャンヌ・モロー
撮影:トーマス・ハーウィッツ、ピエール・ゴタール
出演:リリアン・ギッシュ、ジャンヌ・モロー

1983年の夏、ニューヨーク。サイレント映画期から活躍し、ハリウッドの頂点を極めたリリアン・ギッシュとの邂逅。「歴史的女優」との対話から、その生涯と映画への情熱に迫る至高のドキュメンタリー。

ジャンヌ・モローが、無声映画時代から活躍したリリアン・ギッシュを前に興奮して話しているのが素敵です。
リリアン・ギッシュが、D・W・グリフィス監督から言われたという
「スターになりたいなら、少なくとも10年映画に出て映画に責任を持て」
「一番にスタジオに入って、最後まで残れ」
などの言葉は、私たちの普通の生活にも通じること。
女優として成功したリリアン・ギッシュですが、「幸せな人生とは? 何を手にしたかじゃない。何を与えたか。必ず返ってくる」という言葉が心に響きました。(咲)



ジャンヌ・モロー Jeanne Moreau
1928年1月23日、フランス・パリ生まれ。フランス国立高等演劇学校(コンセルヴァトワール)で学び、演劇活動を開始。劇団「コメディ・フランセーズ」の舞台などの経験を経て、数多くの映画に出演。フランスを代表する俳優として活躍した。その活動は国内外から高く評価され、1995年と2008年に名誉セザール賞、2003年にカンヌ国際映画祭パルム・ドール名誉賞、1992年にヴェネツィア国際映画祭栄誉金獅子賞、1997年にヨーロッパ映画賞生涯貢献賞、2000年にベルリン国際映画祭金熊名誉賞、そして、2007年には芸術文化勲章のコマンドゥールを受勲している。1971年にはシモーヌ・ド・ボーヴォワールやカトリーヌ・ドヌーヴらと共に、中絶の合法化を求める嘆願書「343人のマニフェスト」に署名。その行動は、法律(通称「ヴェイユ法」)成立へと導いた。2017年7月31日、死去。


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2024年09月15日

パリの小さなオーケストラ  原題:Divertimento

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(C) Easy Tiger / Estello Films / France 2 Cinema


監督・脚本:マリー=カスティーユ・マンシヨン=シャール(『奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ』)
出演:ウーヤラ・アマムラ、リナ・エル・アラビ、ニエル・アレストリュプ

<ディヴェルティメント・オーケストラ>を立ち上げたアルジェリア系の少女と仲間たちの物語

パリ近郊の音楽院でヴィオラを学んできたアルジェリア系の少女ザイア・ジウアニ。パリ市内の名門音楽院に最終学年で編入が認められ、指揮者になりたいという夢を持つ。だが、女性で指揮者を目指すのはとても困難な上、クラスには指揮者を目指すエリートのランベールがいる。超高級楽器を持つ名家の生徒たちに囲まれアウェーの中、ランベールの仲間たちには田舎者とやじられ、指揮の練習の授業では指揮台に立っても、真面目に演奏してもらえず、練習にならない。しかし、特別授業に来た世界的指揮者に気に入られ、指導を受けることができるようになり、道がわずかに拓き始める・・・

女性で、アルジェリア系という立場ながら、指揮者になるという夢を叶え、貧富の格差なく誰もが楽しめるよう、パリ市内の上流家庭出身の生徒たちと移民の多いパリ近郊の地元の友人たちによるオーケストラを結成したザイアの物語に勇気づけられました。
本作の2023年フランス公開によって存在が注目され、ザイア・ジウアニは2024年パリ・オリンピックの聖火ランナーを務め、さらに閉会式では大会初の女性指揮者として、ディヴェルティメント・オーケストラによるフランス国歌“ラ・マルセイエーズ”演奏の指揮を務めています。
ジェンダー、人種差別、階級の不平等に立ち向かい夢を叶えたザイアが素敵です。(咲)


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『奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ』
マリー=カスティーユ・マンシオン=シャール監督インタビュー
http://www.cinemajournal.net/special/2016/kiseki/index.html

2022年/フランス/フランス語/114分/PG12/カラー/ビスタサイズ
配給:アットエンタテインメント
公式サイト:https://parisorchemovie.com/
★2024年9月20日(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテほかにて全国公開
posted by sakiko at 03:14| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

画家ボナール ピエールとマルト   原題:BONNARD, Pierre et Marthe

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(C)2023-Les Films du Kiosque-France 3 Cinema-Umedia-Volapuk

監督:マルタン・プロヴォ(『セラフィーヌの庭』)
出演:セシル・ドゥ・フランス、ヴァンサン・マケーニュ、ステイシー・マーティン、アヌーク・グランベール、アンドレ・マルコン

1893年、ピエールとマルトは画家とモデルとしてパリで出会う。ブルジョア出身のピエールは謎めいて型破りなマルトに強く惹かれ、二人はともに暮らし始める。田舎に家を見つけ社交的な世界から遠ざかり、クロード・モネなど限られた友人との交流を除いては半ば隠遁生活の中で絵画制作に励むピエール。マルトをモデルにした赤裸々な絵画は評判となりピエールは展覧会で大成功をおさめる。1914年第一次世界大戦が始まった夏、仕事で毎週パリに赴くピエールに不安がつのるマルト、終戦間近にはパリのアトリエでピエールのモデルになっている美術学校生ルネと出くわす。なぜかマルトはルネを気に入り3人の関係は複雑なものに…。

ピエールが生涯で描いた2000点もの作品の3分の1は、マルトを描いたもの。それほどまでに愛していたはずなのに、若いルネに惹かれ、マルトを裏切ったピエール。まったく~と唸りますが、マルトは思いもかけない3人の関係の構築します。あっぱれです。苦悩を抱えながら、堂々と振る舞うマルトをセシル・ドゥ・フランスが体現しています。
セシルとお会いしたのは、『モンテーニュ通りのカフェ』(06)が横浜フランス映画祭で上映された時のことでした。若くてはつらつとしたセシルでした。本作では、20代から70代までのマルトを演じ切り、円熟した姿を見せてくれました。絵のモデルになるだけでなく、自らも筆をとったマルトを生き生きと演じています。
今後、ピエール・ボナールが描いたマルトを観るときには、セシルの姿が思い浮かびそうです。(咲)


*横浜フランス映画祭2024 観客賞受賞
*第76回カンヌ国際映画祭 カンヌ・プルミエール正式出品

2023 年/123 分/フランス/配給:オンリー・ハーツ
⽇本語字幕:松岡葉⼦
配給:オンリー・ハーツ
後援:在⽇フランス⼤使館、アンスティチュ・フランセ
公式サイト:https://bpm.onlyhearts.co.jp/
★2024年09月20日(金)よりシネスイッチ銀座他にて全国順次公開



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2024年08月18日

ジェーン B.とアニエスV. 〜 二人の時間、二人の映画。『アニエス V.によるジェーン B.』『カンフーマスター!』

ジェーン B.とアニエスV. 〜 二人の時間、二人の映画。
jane b. et agnès v.  Temps pour deux, film pour deux.
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2023年7月16日に急逝したジェーン・バーキンの一周忌を追悼して、ジェーンとヌーヴェルヴァーグの母アニエス・ヴァルダのコラボレーションにより実現した1987年の作品『アニエス V.によるジェーン B.』と『カンフーマスター!』がデジタルレストレーション版で再映されます。日本語字幕も新訳での上映です。

配給: リアリーライクフィルムズ
公式サイト:https://www.reallylikefilms.com/janeetagne
★2024年8月23日(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町 / テアトル梅田 他で全国順次ロードショー


『アニエス V.によるジェーン B.』デジタルレストア版 原題:Jane b. par agnes v. 
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監督・脚本:アニエス・ヴァルダ
出演:ジェーン・バーキン 、ジャン=ピエール・レオー、ラウラ・ベティ、フィリップ・レオタール、アラン・スーション、セルジュ・ゲンズブール、シャルロット・ゲンズブール、マチュー・ドゥミー、フレッド・ショペル
1988年/フランス/フランス語//99分

「ジェーン、いつもカメラのレンズを直視することを躊躇うのはなぜ?」

ジェーンが40歳の誕生日に、自身の30歳の誕生日を回想する間、アニエス・ヴァルダの伝説の女性への尽きることのないイメージがヴィヴィッドに展開する。その空想は、犯罪映画の妖婦、サイレントシネマの凸凹コンビ、モンローのような男たちのファンタジーの対象、よくあるメロドラマの恋人たち、西部劇のカラミティ・ジェーン、ターザンとジェーン、そしてジャンヌ・ダルクへと、ジェーンのイメージを自由自在に拡張させていく。一方で綴られるジェーンの日常のスケッチ。そこにはセルジュ・ゲンズブールや娘たちとの時間も織り込まれる。そのどれもが、シャイで大胆で逞しくて危うくて儚くて美しい、ジェーン・バーキンの魅力が余す事なく詰まっている。

舞台をイメージした衣装で、40歳を迎えるジェーンが幼少期からこれまでのことを語ります。(女性が3人並んでいる真ん中がジェーンなのですが、なんとも奇妙な雰囲気)
成人するまでイギリスで育ったジェーン。愛着のある実家を自分のために買い戻しています。家族がいてこその家。3階まで続く螺旋階段の脇には、アルバム25冊分の写真が貼られています。映画でパリに行き、セルジュ・・ゲンズブールと出会い、結婚。彼に似たスラブ系の子が欲しかったと願って生まれてきたのがシャルロット・ゲンズブール。(でも顔立ちはセルジュに似なくてよかった!) 
「セルジュは巨乳が苦手で、私は彼の美の基準を満たした女だった」と、コンプレックスが消えたことを語るジェーン。確かに、とてもボーイッシュなジェーンですが、フランス語でささやくように語るジェーンは、とても魅力的です。
カフェでアニエス・ヴァルダと語るうちに、映画の物語のアイディアをジェーンが話し出します。娘の同級生と恋をする話。年下の相手役は、アニエス・ヴァルダの15歳の息子に決定! こうして、『カンフーマスター!』が生まれました。息子を差し出したアニエス・ヴァルダも、すごい! (咲)



『カンフーマスター!』デジタルレストア版  原題:Kung-fu Master
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監督・脚本:アニエス・ヴァルダ
出演:ジェーン・バーキン、マチュー・ドゥミ、シャルロット・ゲンズブール、ルー・ドワイヨン、デヴィッド・バーキン、ジュディ・キャンプベル、アンドリュー・バーキン
1988年/フランス/フランス語/88分

ジェーン・バーキンの発案にア二エス・ヴァルダが応じる形で映画化が実現した作品。この作品の制作の延長線上で、『アニエスV.によるジェーンB.』が撮影されている。

娘(シャルロット・ゲンズブール)が自宅の庭で開いたパーティーで、泥酔した同級生の少年ジュリアン(マチュー・ドゥミ)を介抱したマリー・ジェーン(ジェーン・バーキン)は、あろうことか15歳の少年に不思議な感情を抱く。ジュリアンもまた、40歳のマリー・ジェーンに恋愛感情を抱くようになる。微妙な力関係の中、人目を盗んで密会を重ねる二人。そんなある日、二人がキスを交わしているところを、ルシーに目撃されてしまう。パリとロンドンのジェーンの自宅と実家で撮影。シャルロットの他、ルー・ドワイヨン、アンドリュー・バーキン、ジェーンの実の両親などファミリーが総出演している。


え? 中国を舞台にした映画? と思ったら、「カンフーマスター」は、少年ジュリアンが夢中になっているゲームの名前でした。
そしてジュリアンを演じているのは、なんと、アニエス・ヴァルダ監督の実の息子。
まだ大人になりきってない、可愛い少年。そんな可愛い子と恋をしてしまうジェーン・バーキン。素敵です。 
デートする時には、幼い娘のルーも連れていってカモフラージュ。 
夏休み、ジュリアンも連れてイギリスの実家に行くのですが、ジェーンの実際の両親や親戚たちも一堂に会します。 ジェーンのお母さんが、ジュリアンとの関係を見抜いて、「無人島に遊びにいってきなさい」と、送り出します。もちろんルーも一緒ですが、なかなか大胆。 ひと夏の恋が終わって、少し大人になったジュリアンですが、友達には強がりを言って、笑わせてくれます。(咲)


posted by sakiko at 19:26| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年08月15日

助産師たちの夜が明ける  原題:Sages-femmes 英題:MIDWIVES

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監督:レア・フェネール(『愛について、ある土曜日の面会室』)
出演:エロイーズ・ジャンジョー/ミリエム・アケディウ

あるフランスの産科病棟。
5年間の修学を終えたルイーズとソフィアは、念願の助産師として働き始める。
そこは想像を超える壮絶な仕事場だった。何人もの担当を抱え走り回る助産師たち。ケアされるための十分な時間がないなか運ばれてくる緊急の産婦たち。患者の前で感傷的になるな、とルイーズがベテラン助産師ベネに厳しく叱責される一方、ソフィアは無事に出産を介助し周囲の信頼を勝ち得ていく。
そんなある日、心拍数モニターの故障から、ソフィアが担当した産婦が緊急帝王切開となり、赤ん坊は命の危険にさらされる。さらには産後行くあてのない移民母、未成年の出産、死産したカップル…
生と死が隣り合わせの現場で、二人は一人前になれるのだろうか・・・

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SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2023の折に来日したレア・フェネール監督(撮影:景山咲子)

日々奔走する助産師たちの姿をフィクションで描きながら、実際の出産シーンを何人もの方から承諾いただいて入れ込み、ドキュメンタリーかと見まごう作品。
ぎりぎりの人数で、無事出産できるよう的確に対応する切迫感溢れる姿を映し出していました。最後に重労働に見合わない低賃金に抗議する助産師たちの姿が出てきて、人の命を預かる重要な仕事に、適切な賃金を支払ってほしいものだと思いました。
また、助産師にも出産する母親にも、肌の色の様々な人たちがいて、現代のフランス社会が描き出されていました。
思えば、監督の初監督作『愛について、ある土曜日の面会室』(2009年、日本公開2012年)も、刑務所の面会日に訪れる様々な人々を描いた群像劇で、やはり移民や移民をルーツに持つ人たちが普通にフランス社会に溶け込んで暮らしているのが見てとれました。(咲)



SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2023『助産師たち』レア・フェネール監督 Q&A


第73回ベルリン国際映画祭パノラマ部門 審査員特別賞
SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2023 観客賞受賞


2023年/フランス/100分/カラー
日本版字幕:松岡葉子
医学用語字幕翻訳協力:田辺けい子
配給:パンドラ
公式サイト:https://pan-dora.co.jp/josanshitachi/
★2024年8月16日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開




posted by sakiko at 09:10| Comment(0) | フランス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする