2020年09月09日

ミッドウェイ(原題:Midway) 

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監督・製作:ローランド・エメリッヒ 
脚本:ウェス・トゥーク 
出演:エド・スクライン、パトリック・ウィルソン、ルーク・エヴァンス、アーロン・エッカート、豊川悦司、浅野忠信、國村隼、マンディ・ムーア、デニス・クエイド、ウディ・ハレルソン

1941年の日本軍による奇襲とも言える真珠湾(パールハーバー)攻撃。戦争の早期終結を狙う山本五十六連合艦隊司令官の命により、アメリカ艦隊に攻撃を仕掛けたのだ。大打撃を受けたアメリカ海軍は、新たな指揮官に士気高揚に長けたニミッツ大将を立てた。両国の一歩も引かない攻防が始まる中、日本本土の爆撃に成功したアメリカ軍の脅威に焦る日本軍は、大戦力を投入した次なる戦いを計画する。
一方、真珠湾の反省から、アメリカ軍は日本軍の暗号解読など情報戦に注力し、情報部レイトン少佐が次の目的地をミッドウェイと分析した。限られた全戦力を集中した逆襲に勝負を賭ける。そしてカリスマパイロット、ディック率いる爆撃機が出撃し、総力をあげた激突へのカウントダウンが始まった。

アメリカ側の視点でミッドウェイ海戦を描いた作品だが、日本人に対するリスペクトとともに、日米双方の戦争で亡くなった方々への鎮魂の想いを強く感じる。ローランド・エメリッヒ監督はドイツ人としての責任感から日本人を単なる敵としてではなく、敬意を持って描くことを心掛けたそうだ。山本五十六に豊川悦司、山口多聞に浅野忠信、南雲忠一に國村隼をキャスティングしたことだけでなく、ほかの日本人役の俳優も正しい日本語のイントネーションでセリフを話すことからも伝わってくる。
アメリカ側のメイン人物の1人、ディック・ベストは日本の真珠湾攻撃で親友を失った。仇討ちに燃え、ミッドウェイ海戦では目覚ましい活躍をする。しかし、味方のためなら命を惜しまない戦い方を見ていると、特攻隊を思い出す。また空母と命を共にした山口多聞の描き方に、軍人としての危ない美学を感じてしまった。しかし、この作品を見て、軍人に対する行き過ぎたリスペクトをしないでほしい。ローランド・エメリッヒ監督も「多くの命が失われる戦争には勝者はなく、敗者しかいない」とも言っているのだから。(堀)


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太平洋戦争の勝敗を分けたといわれるミッドウェイ海戦。それに至るまでの日米の兵士たちの思いと葛藤、アメリカ側の作戦を史実に基づいて描いている。日本軍による真珠湾攻撃で大打撃を受けたアメリカは、日本が次はどのような作戦で来るのか、どこが次なる攻撃地になりそうか、日本軍の無線を傍受し暗号解読し冷静に分析し、どこで日本軍に打撃を与えることができそうかがというアメリカ軍の情報分析の様子が描かれ、ミッドウェイ海域での日本軍への攻撃目標をたてる。そして、ミッドウェイ海戦でのアメリカ軍の攻撃が描かれているのだけど、これを観て日本の作戦はアメリカに筒抜けだったんだと改めて思い、これではやはり全然勝ち目はなかったんだと思った。
それにしてもこの映画に限らず、戦争を描いた映画での戦闘シーンが多いのが気になる。戦争の悲惨さ、愚かさを描くのに必要というけど、本当にそうなのかといつも思う。やはり「手に汗握る戦いのシーン」を観たいという男の人が多いことのあらわれなのではないか。どんな風に戦ったのか、どのように飛行機や空母で働く戦闘員たちが動いたのか、そういうところに興味をもち、空中戦とか戦艦の姿とか、攻撃し散っていく飛行機や銃撃を受けて沈んでゆく軍艦の姿、戦った兵士たちの姿にかっこよさを感じたり、ある種の羨望というか、戦争美学のようなものをもっているのではないかとさえ思う。これまで、数々の戦争映画が作られてきたけど、戦闘シーンのない戦争を描いた映画は数少ない。戦いのシーンがない戦争映画なんて考えられないのかもしれないけど、せめて「戦闘シーンはかっこいい」と思わせないような映画が多くなることを願う。戦争は悲惨であるということをけっして忘れてはならない。昨今の寛容性のない世界事情を思うと、第3次世界大戦は絶対あってはならないとつくづく思う(暁)。


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よく父が、「兄さんが次はミッドウェイだぞ!」と言っていたのを思い出したので、父に確認してみたら、昭和17年(1942年)の春に、軍医として駆逐艦に乗っていた兄が南方から帰ってきたときに聞いた言葉とのこと。しばらくして府立高校の同級生が「次はミッドウェイ」というので、自分の方が先に知ってたぞと思いつつ、父は何も言わなかったそうです。その同級生のあだ名は「デマ」。よく戦況のことを得意げに話していたそうで、おそらく軍関係者が近親者にいて耳にしたことを学校で言っていたのでしょう。こんな調子だから、日本軍の情報は簡単に漏れてしまったのではと思ってしまいます。
昭和16年12月6日、父は現在の都立大学駅近くの蕎麦屋の2階で同級生たちと食事をしながらアメリカと開戦するかどうか議論になって、「アメリカと戦争したら負けるに決まってるからするはずない」と豪語。8日に真珠湾攻撃で戦争が始まってしまい、驚いたそうです。その後、父は昭和18年10月に大学に入った途端、学徒出陣が決まり、海軍に入隊。特攻隊で訓練していましたが、無事生き抜き、この9月98歳となりました。映画『ミッドウェイ』をぜひ観てみたいと言っています。私からみて、日本軍のことも公平な目で描いていると思ったので、父がどんな感想を持つのか興味津々です。(咲)


2019年/アメリカ/カラー/138分
配給:キノフィルムズ/木下グループ
Midway ©2019 Midway Island Productions, LLC All Rights Reserved.
公式サイト:https://midway-movie.jp/
★2020年9月11日(金) TOHOシネマズ 日比谷他全国ロードショー

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2020年09月05日

カウントダウン(原題:Countdown)

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監督・脚本:ジャスティン・デック
撮影:ジャスティン・デク
出演:エリザベス・ライル(クイン)、ジョーダン・キャロウェイ(マット)、

パーティで大騒ぎの最中、自分の余命がわかるアプリの話題で盛り上がった。何人もが冗談だからとダウンロードしていて、コートニーも誘われる。なんと余命3時間と表示されて、気分が悪くなり先に帰宅する。恋人のエヴァンが車で送るというが、すでに酒を飲んでいた。断って一人歩いて帰宅するが、エヴァンの車は事故を起こし、アプリが通知した時間にコートニーは自宅で死亡した。入院先でエヴァンも謎の死をとげる。看護師のクインはエヴァンの死に疑問を持ちながら、アプリをダウンロード、彼女の余命は3日だった。

スマホがなければ夜も日も明けない人が多い昨今、この映画はグサグサと刺さるでしょう。誰がどんな目的で作ったかわからないものを、面白そうとダウンロードしたばかりに不安にさいなまれ、挙句余命どおりに次々と命を落とす人たち。悪意のあるものかも、と少しは疑ったらどうなんでしょ?
余命の話で、2015年の『神様メール』を思い出しました。ベルギーのジャコ・ヴァン・ドルマル監督のオリジナルで、横暴な神様に怒った神の一人娘エアが世界中の人々に死期を知らせるメールを送信したというストーリーです。パニックに陥る人々をちゃんとケアするエアが可愛い。
こちらの『カウントダウン』はそうじゃなくてじわじわ怖いので、心してご覧ください。あなたは余命を知りたいですか?小心者の私は、いつその日が来るかわからないままがいいです。毎日大切に生きましょう。(白)


アプリをダウンロードしたらすぐに死ぬわけではありません。余命がわかるだけです。
ただ、メインの登場人物たちの余命があと数日だったということで、話は急展開していきます。
彼らが“運命は自分で切り開く”とばかりに抵抗すると、アプリは「利用規約違反」と表示。本来、死ぬはずだった原因以外で死んでしまう人も。主人公の看護師は職業的知識を駆使して、自分の運命に抗うのですが、かなりドキリとするので覚悟あれ!
しかし、余命が長く表示されるとみんな安心しているのですが、それって若いからだよなぁ。私なんて、今、もし、余命が100歳なんて表示されたら、それはそれで恐怖かも!家族に迷惑を掛けない程度の標準的な寿命であってほしい。(堀)


2018年/アメリカ/カラー/90分
配給:カルチュア・パブリッシャーズ
(C)2020 STX FINANCING, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
https://countdown-movie.jp/
★2020年9月11日(金)ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開
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2020年08月30日

mid90s ミッドナインティーズ ( 原題 : mid90s )


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監督・脚本:ジョナ・ヒル
音楽:トレント・レズナー、アッティカス・ロス
出演:サニー・スリッチ、キャサリン・ウォーターストン、ルーカス・ヘッジズ、ナケル・スミス

1990年代のロサンゼルスで、13歳のスティーヴィー(サニー・スリッチ)は母親のダブニー(キャサリン・ウォーターストン)と兄のイアン(ルーカス・ヘッジズ)と暮らしていた。体格差のある兄にかなわないスティーヴィーは、大きくなったら見返そうと考えていた。そして街のスケートボードショップで知り合った少年たちの自由でかっこいい姿に憧れを抱く。

名カメラマン、ネストール・アルメンドロスの自伝を読んだ時、印象的なフレーズに出会った。
「髪の色と瞳の色にギャップがある人は、カメラ映りが良い」
つまり髪色が漆黒で瞳が青いイザベル・アジャーニやアラン・ドロン、金髪に濃茶の瞳のカトリーヌ・ドヌーヴなどはカメラ映りの良い俳優という訳だ。カメラマンらしい考察である。

この法則に当てはめると、本作の主役サニー・スリッチは確実に「カメラに愛される」。名優ジョナ・ヒル(『マネーボール』やジャド・アパトー監督作などの名演で観客を魅了!)が大切に温めてきた初監督作の主演にサニー・スリッチを選んだのも納得の好演ぶりだ。
ヨルゴス・ランティモス監督作『聖なる鹿殺し』を観た方なら、バリー・コーガン扮する厄災を齎すマーティンの犠牲になる少年役として記憶に残っているだろう。

あのイノセントなイメージそのままに、ジョナ・ヒル監督は’90年代ロサンゼルスのド真ん中に主人公スティーヴィーを置いた。自身の半自伝的な10代の想い出の体現をサニーに託したのだ。狙いは大成功!
本作のもう一つの主役ともいえるスケートボード。サニーは俳優兼プロスケーターでもある。1日の大半を仲間たちと過ごすスケートパーク。ジョナ・ヒル監督は、主人公の友人たちにも職業俳優ではなくプロスケーターをキャスティングした。
グランジな着こなしの少年たちが縦横無尽に滑る様を16mmフィルムのザラつく質感を活かし、時にはハイスピードカメラで、また今どき珍しい魚眼レンズを用い活写する。

流れる楽曲群は、もちろん当時のオルタナティブが中心。ニルヴァーナ、ピクシーズ…などなど、’90年代どストライクの世代には胸アツものに違いない。
当初、全米4館で公開した低予算映画が1200スクリーン超まで拡大したという。日本でも受け入れられること請け合いの快作だ。(幸)


兄の部屋にこっそり入り込み、洋服や帽子、スニーカーを触れて、兄になった気分をちょっと味わっていたスティーブがスケートボードで仲間を見出し、兄を追わずに成長していく。同性の兄弟姉妹がいる人には多かれ少なかれ経験のある話ではないだろうか。ショップに集うグループにするっと入り込んでしまう辺りは弟キャラならでは。夜な夜な1人で練習した上のことだが、長子にはなかなかできない芸当だ。
一方、ルーカス・ヘッジズが演じる兄イアンも登場場面は少ないが、印象に残る。自分なりに必死にクールであろうとしているが、真似るべき存在がいないため、形から入っていこうとしているのだろう。壁には帽子が、棚にはエアジョーダンがいくつも並ぶ。CDやカセットテープがきちんと整理され、雑誌が積み重ねられている。そういえば腕立て伏せでトレーニングもしていたはず。本人がいなくても、部屋の様子からイアンのストイックさが伝わってきた。仲間と呼べる友だちは少ないと思われる。だから、自分とタイプの違う弟にイラッとしてしまうのだろう。
ジョナ・ヒルにとって本作は初監督作品で脚本も書いているが、初めてとは思えない演出力に驚いた。90年代半ばの話だが、兄弟の関係性や成長過程は時代や性別に関係なく、多くの人が共感するに違いない。(堀)


兄に対抗意識を持ち、背伸びをしたがる13歳の少年スティーヴィー。わざと強がってはみるものの、まだ兄にはかなわないと悟っているのか、兄に挑戦はしない。斜めに見ている。そして、地元のスケボーショップにいるかっこいいお兄さんたちの様子伺い。仲間に入るのに、夜、自宅で一人でスケボーの特訓を。シングルマザーの家庭に育ったという設定だけど、スケボーの練習をするようなスペース?があるというのは、日本と違って余裕があるのか。道路や公園のような公共のスペースという感じではなく、自宅のガレージのそばという感じだったけど中流家庭なのか。そして少しスケボーに乗れるようになってから、スケボーショップにたむろするお兄さんたちに近づいていって仲間になってしまう。背伸びはしているけど、無謀といえるほど思い切りがいいことは確か。先に仲間になっていた同じ年代の少年を通り越して、お兄さんたちに認められていく。そんな少年の成長物語だったけど、この世代、時代、アメリカには似通った話がたくさんあるのだろう。『行き止まりの世界に生まれて』も、自分の家庭から離れて、自分の居場所を探す青年たちの話だった。今、アメリカでは黒人やマイノリティへの差別に対する運動が、1960年代のように再び盛り上がっているが、どちらの作品にも出てくるBOYSは、黒人に対する偏見がなく仲間としてつるんでいる。どちらの作品でも「ニガー」という言葉が出てくるが、これは差別用語で使うのではなく、親近感をもつ仲間うちで使われているということを知った(暁)。

2018年 / アメリカ / 英語 / 85分 / スタンダード / カラー / 5.1ch / PG12
提供:トランスフォーマー、Filmarks
配給:トランスフォーマー 
(c)2018 A24 Distribution, LLC. All Rights Reserved.
公式サイト:http://www.transformer.co.jp/m/mid90s/
★9月4日(金)より新宿ピカデリー、渋谷ホワイト シネクイント、グランドシネマサンシャイン他にて全国ロードショー
posted by yukie at 11:44| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

行き止まりの世界に生まれて(原題:MINDING THE GAP)

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監督・製作・撮影・編集:ビン・リュー 
出演:キアー・ジョンソン、ザック・マリガン、ビン・リューほか

「全米で最も惨めな町」イリノイ州ロックフォードに暮らすキアー、ザック、ビンの3人は貧しく暴力的な家庭から逃れるようにスケートボードにのめり込んでいた。スケート仲間は彼らにとっての唯一の居場所で、もう一つの家族だった。そんな彼らも大人になるにつれ、さまざまな現実に直面し段々と道を違えていく。カメラは、明るく見える彼らの暗い過去、葛藤を抱える彼らの思わぬ一面を露わにしていく――。

大統領選挙で注目された”ラストベルト(錆付いた工業地帯)”に住むスケートボーダー3人の日々。この試写の前日に、ジョナ・ヒルの初監督作『mid90s ミッドナインティーズ』を観たばかりでした。あちらは思い出を元にしたロサンゼルスが舞台のフィクション、こちらは仲間の一人ビンが監督になって撮られたドキュメンタリー。それでもスケボー仲間とつるむ彼らはとても似ていました。大きく違うのは今もキアーとザックが貧困と閉塞感の中にあり、それはたぶんラストベルトの多くの住民に共通しているだろうということです。
それでも我が子を見守るザックや、必死で働くキアーの真面目さに希望を感じます。少なくとも彼らは生きていて、生きることを諦めていないから。3人が遮るもののない道路をスケボーで疾走していくシーンが爽快。(白)


仲良くスケボーしながらつるむ3人ですが、キアーはアフリカ系アメリカ人、ザックは白人、カメラを回すビンはアジア系と、肌の色が違います。今でこそ、産業が廃れて”ラストベルト(錆付いた工業地帯)”と呼ばれていますが、20世紀初めから1970年代ごろまでは、「工場ベルト」「鉄鋼ベルト」「産業ベルト」と称され繁栄していた地区。人手不足を補うため、南部からアフリカ系の人たちも多くやってきましたが、南部のような人種差別意識も薄く、皆が中流として友情を育む土壌ができたのだそうです。
10代のビンが、自分たちのスケートを記録する意味で撮り始めたビデオでしたが、やがてカメラはそれぞれの内面にも迫っていきます。12年間にわたる3人の成長の記録ともいえる作品。スケボーは現実逃避だったかもしれないけれど、夢中になれるものがあるって素晴らしい。(咲)


『行き止まりの世界に生まれて』というタイトルにあるように、かつては活気があったけど、今はすっかり産業がさびれ閉塞感のあるロックフォードという街に暮らす少年たち。スケボーを通じて育んだ友情。それを12年に渡って撮り続けたビン・リュー監督。撮り始めた時はそれを映画にするというような目的はなかったのだろうけど、それだからこその少年たちの素顔。撮りためたものを映画にしてみたら、小さな街の少年たちの姿の中に、アメリカが抱えている今日的な問題(地方の不景気、家庭内暴力、崩壊した家庭、貧困、人種問題など)が浮き上がってきた。そんな中で居場所を求めて、もがく少年たち。アメリカの繁栄から取り残されたような地方に住む、同じような家庭の悩みを抱えつつ集う少年たち。そんな中で人種を超えた友情と、小さな居場所をみつけた少年たちの姿に少し希望を感じ、ホロっとする。身近な仲間たちを撮ったドキュメンタリーだけど、アメリカのこの12年をも映し出す(暁)。

舞台となったロックフォードはラストベルトに位置し、産業が斜陽化して寂れた町。住むところ、食べる物もあるけれど、未来に希望が持てない。大人の鬱積した思いが理不尽な家庭内暴力として子どもに向けられている。登場する3人の少年たちは閉塞感が淀む環境から解き放たれようとスケートボードで疾走する。ラストの滑走はカメラを回す監督のビン自身がスケートボードに乗っているのだろう。臨場感あふれ、そのままスクリーンから飛び出してしまいそうだ。
ところで、アメリカの作品にはスケートボードがよく登場する。自己逃避だったり、アイデンティティの発露だったり。スケートボードが象徴することは多分、みんな同じ。では、日本の子どもたちは何でそういうことをしているのだろう? 鬱憤をため込まずに発散できるものがあればいいのだが。。。(堀)


2020年/アメリカ/カラー/93分
配給:ビターズ・エンド
© 2018 Minding the Gap LLC. All Rights Reserved.
公式サイト:http://www.bitters.co.jp/ikidomari/
★2020年9月4日(金)新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次ロードショー!
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2020年08月23日

マイルス・デイヴィス クールの誕生(原題:Miles Davis: Birth of the Cool)

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監督:スタンリー・ネルソン
出演:マイルス・デイヴィス、クインシー・ジョーンズ、ハービー・ハンコック、ウェイン・ショーター、ロン・カーター、ジミー・コブ、マーカス・ミラー、マイク・スターン、ジョシュア・レッドマン、カルロス・サンタナ、ジュリエット・グレコ、クライヴ・デイヴィス、フランシス・テイラーほか

“ジャズの帝王”と称されるトランペット奏者マイルス・デイヴィスのドキュメンタリー映画。貴重なアーカイブ映像や写真に加え、マイルスの家族、友人、多くの音楽関係者のインタビューがびっしりと詰め込まれている。華やかな足跡ばかりではない。人種差別に怒り、酒や麻薬に溺れたダークな面も隠さない。自信家で好き嫌いが激しく、愛した女性に嫉妬し暴力も振るう。病気や事故による痛みと闘っていた空白の5年間。文字通りの闇から完全復活し、力量のある若手を見い出しては次々と新しいことに挑戦し続けた。一人の天才の鮮烈な一生が浮かび上がる。
2019年、第37回サンダンス映画祭をはじめ、世界各国の映画祭に正式出品。第62回グラミー賞では〈最優秀音楽映画部門〉にノミネートされた。
1926年5月26日米国イリノイ州オールトン生まれ。1991年9月28日死去 (享年65)。

マイルス・デイヴィスの独特の声は、喉の手術をした後、喋りすぎたせいだそう。本人のインタビュー音源は残っているものの、背後にある生活音などを除くことができなかった。俳優のカール・ランブリーが、マイルスの自伝などから選ばれた言葉でナレーションを入れている。
パリに数週間滞在したマイルスは、歌姫ジュリエット・グレコほか、多くの文化人や芸術家に出逢い、ルイ・マル監督の『死刑台のエレベーター』(1958)の映画音楽を作っている。登場人物の心のありようを、映像を観ながらトランペットひとつで即興演奏するシーンに見とれた。このサウンドトラックから映画の人気に火がついた様子も紹介される。
眼光鋭い孤高の天才かと思えば、吸引力のある“人たらし”でもあったらしい。友人たち、特に女性たちが彼の魅力を愛し気に語る。試写の後、2枚組のベスト盤を手に入れた。(白)


題名が「クールの誕生」なので、てっきり1950~60年代のマイルスが中心と思いきや、91年に亡くなるまでの人生をしっかり描いてくれた。マイルスに寄り添った女性たちのインタビューは、人間マイルスを知るうえで実に興味深い。若手ミュージシャンの抜擢で知られるだけに、綺羅星のごとく豪華な面々がマイルスの思い出を語るが、これが実に味がある。ハービー・ハンコックはマイルスの音色を“水面を跳ねる石”に喩え、ウェイン・ショーターは人となりを表すエピソードを打ち明け、歳の離れたマーカス・ミラーは共演できた喜びを昨日のことのように語る。
マイルスの後にマイルス無し。偉大な足跡を実感させる2時間である。(堀)


「ソー・ホワット」でポール・チェンバースがつま弾くベースについて言及する場面がある。"そう!同じく!"と心中、叫んでしまった。"帝王マイルス・デイヴィス"の楽曲は、自身が吹くトランペットだけではなく、全ての楽器が共振しているのだ。
振動は聴く者の心を揺るがし、蕩けさせてしまう。ワンノートで魅了されるジャズとはこういうことを言うのだろう。
70年近くを経ても少しも陳腐化しない"帝王"のサウンド。物心付いた時から聴いてきた身には、いつだって音色を、響きを脳内再生することができる。
オールドファンにとって、18歳の"帝王"とチャーリー・パーカー、ディジー・ガレスピーとの共演逸話が楽しい。反面、アート・ブレイキーらの映像がなかったのは残念だったが贅沢は言うまい。ジョン・コルトレーンの生演奏が聴けたのだから…。
名編曲家ギル・エヴァンスへの尊敬が生涯続いた逸話に頬を緩めていたら、NYの路上でタクシー待ちをしていただけで、「退かなかった」ことを理由に白人警官に殴られ逮捕される場面が出る。血だらけの"帝王"の姿は衝撃だ。
白人富裕層が「金を払う価値がある」と認め、ジャズ界の頂点を極めるほど成功を収めた"帝王"でも黒人扱いに変わりはないのだ。
米国の闇は深い。(幸)


「モダンジャズの帝王」マイルス・デイヴィスの素顔に迫るドキュメンタリー映画。
歯科医の父と音楽教師の母を持ち、裕福な家庭に育ったというマイルスだが、彼が生きた時代の人種差別は、並大抵なものではなかったはず。
白人社会が押し付けて来る偏見をすべてぶち壊したように見えるマイルスは、ひたすらクールな男だった。すべてを超越してジャズの可能性の追求に捧げた生涯。
ミュージシャンとして成功し名声を得ても、決して守りに入ることなく、常に最先端、最前線に立ち、若手をリードして行く姿勢に感動した。
人生は一回だけの即興演奏のようなもの。変わり続けることでしか、守れないものもある。
友人やパートナー、ミュージシャンたちのインタビュー映像にグイグイ引き込まれた。
静止画像を多用した超スピードの編集も気持ち良かった。ジャズファンならずとも必見。(千)


2019年/アメリカ/115分
配給:EASTWORLD ENTERTAINMENT
協力:トリプルアップ
https://www.universal-music.co.jp/miles-davis-movie/
★2020年9月4日(金)アップリンク渋谷、池袋HUMAXシネマズほか全国順次ロードショー
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☆特製トートバッグを1名様にプレゼント!!
当選の1名様決定しました。ご応募ありがとうございました。
posted by shiraishi at 12:31| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする