2021年09月18日

MINAMATA―ミナマタ―  原題:MINAMATA

9月23日(木・祝)TOHOシネマズ 日比谷他全国公開
劇場情報
●『MINAMATAーミナマター』チラシ_R_R.jpg
© Larry Horricks

監督:アンドリュー・レヴィタス 脚本:デヴィッド・ケスラー
原案:写真集「MINAMATA」W.ユージン・スミス、アイリーンM.スミス(著)
出演:ジョニー・デップ、真田広之、國村隼、美波、加瀬亮、浅野忠信、岩瀬晶子、ビル・ナイ
音楽:坂本龍一
製作:ジョニー・デップ
日本語字幕:髙内朝子

写真家ユージン・スミスと水俣の実話から生まれたハリウッド映画

水俣病は日本での「公害の原点」ともいわれ、1956年5月に公式発見された。熊本県水俣市の新日本窒素肥料(現・チッソ)水俣工場の工場排水にメチル水銀が混じって海に排出され、これを取り込んだ魚や貝を人が摂取したことで多くの方が水俣病に罹患した。第二水俣病、四日市喘息、イタイイタイ病と並び日本における4大公害病のひとつといわれている。しかしメチル水銀が原因と判明し、環境に配慮した対策がとられたのは1968年。
水俣病について日本では、桑原史成などの写真家、土本典昭監督のドキュメンタリー映画によって記録されてきたし、石牟礼道子の「苦海浄土」などの本によっても描かれてきたが、世界に発信したのが、写真雑誌「ライフ」などで活躍していたアメリカ人写真家のユージン・スミスと言われている。1971年~74年の3年間水俣に滞在、水俣病の患者たち、胎児性水俣病患者と家族、抗議運動などを撮影した。この作品は水俣病の存在を世界に知らしめようと、ジョニー・デップが製作。写真家ユージン・スミスを演じ、妻アイリーン・美緒子・スミスととともに水俣に生活し、撮影の日々が描かれる。
1971年、ニューヨーク。ユージン・スミスは第二次世界大戦や、戦後は労働運動など、人の命、ケア、人権などの社会問題を描く「フォト・エッセイ」などで、かつてはアメリカを代表する写真家として称えられていたが、酒に溺れる日々を送っていた。そんなある日、アイリーン・美緒子という日系人の女性から、水俣病に苦しんでいる人たちの写真を撮ってほしいと頼まれる。最初は断ったが、有機水銀に侵された人々の姿や、抗議運動の人たちとそれを弾圧するチッソの姿を見て、日本に来る決心をする。そしてアイリーンと共に水俣病と向き合った。人々の暮らしに寄り添ったユージンの瞳とカメラを通して私たちが見るのは、闇に包まれた苦難の瞬間にも、光として浮かび上がる人間の命の輝きと美しい絆。それらを捉えた写真に警告と希望を焼き付けた。写真集は1975年に完成し、世界に「MINAMATA」を知らしめた。
ユージン・スミスを演じたジョニー・デップ。「ライフ」の編集長役を演じたビル・ナイ。日本からは真田広之、國村隼、美波、加瀬亮、浅野忠信らが参加。また坂本龍一が音楽を手がけた。ジョニーは今もまだ続く水俣病にスポットをあて、各国で同じ環境被害に苦しむ多くの人々をも照らし出そうと、主演し、自らプロデューサーにも名乗り出た。

ユージン・スミスの写真展は何度か行ったことがあるし、水俣をテーマにしたドキュメンタリー映画もけっこう観てきましたが、ユージン・スミスが日本に来るまでの栄光は知っていても苦悩は知りませんでした。この映画ではそれが描かれていて、あらためてユージン・スミスの人生、生き方を考えました。
あの当時(1970年初め)、報道写真に興味があり、ユージン・スミスやロバート・キャパ、日本人では桑原史成などの影響を受け、私も報道写真を目指しベトナムやカンボジアなどに写真を撮りに行きたいと考えていました。
そういう思いを持って生きてきたので、ハリウッド映画は、水俣の公害問題、日本でのユージン・スミスをどのように描くのかとても興味がありました。とてもまじめにユージン・スミスを描いていたと思うし、水俣のこともこれまでいろいろな作品に出てきたエピソードをおおむね参考にしているのではないかと思いました。なによりもジョニー・デップが、ほんとにユージン・スミスの風貌そっくりになっていたことが驚きでした。そしてあの有名な「母親が胎児性水俣疾患者の娘を抱いて入浴している姿」は歴史に残る写真だと思うけど、その撮影シーンが出てきた時には、心臓がバクバクするほど心が揺り動かされました。また、患者の会の活動家を演じた真田広之さんが机の上に座りこみチッソの社長に迫るシーンは、患者の会の会長だった川本輝夫さんが実際にした行動でしたが、それも描かれていてびっくりしました。
もうひとつびっくりしたのは、写真をプリントするとき、この映画では手を現像液や停止液、定着液に浸していましたが、ほんとにそのようにやっていたのだとしたらと驚きでした。私は化学薬品に手をつけたくないので、水洗まではトングを使ってプリントする紙をつかんでいましたが、この映画に描かれていたように、この暗室では実際そうやっていたんだろうか?とも思いました。このチッソの抗議運動は水銀中毒に対する被害を訴える運動だったわけだから、現像に使う化学薬品に手を浸すというのは、ちょっと考えられないとも思いました(暁)。


私が水俣病を知ったのは、小学生5~6年生の頃。少女漫画雑誌の「少女フレンド」か「マーガレット」に掲載されていた1枚の写真。寝たきりの少女の目はキラリと光っているのに、動くことができず、母親が食べさせてあげている写真でした。そこには、水俣で水銀の混じった工場排水で育った魚を食べたのが原因と書かれていて、体温計を割ったら大変と頭に叩き込んだのでした。今でも覚えているほど写真から受けた衝撃は大きかったです。
その水俣病が何年経っても損害賠償がきちんとされないことを知ったのは、大人になってからです。ユージン・スミスの写真によって、水俣病は世界に知らしめられましたが、それでも訴訟がすんなりとは進まない歯がゆさ。
ユージン・スミスを水俣に誘ったアイリーン・美緒子さんは、ユージン・スミスが1978年に亡くなられた後も、1983年にはコロンビア大学で環境科学の博士号取得、1991年には環境市民団体グリーン・アクションを設立し活動を続けています。アイリーンさんのその後の物語をもっと知りたいと思いました。
公式サイトの「ORIJINAL]のコーナーにアイリーンさんとユージン・スミスご本人の写真があります。素敵なアイリーンさんと、いかにジョニデがユージンそっくりに扮しているかをご確認ください。(咲)



『MINAMATA ―ミナマタ―』公式サイト 
提供:ニューセレクト株式会社、カルチュア・パブリッシャーズ、ロングライド
配給:ロングライド、アルバトロス・フィルム
2020年/アメリカ/英語・日本語/115分/1.85ビスタ/カラー/5.1ch/


posted by akemi at 14:55| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年09月17日

ディナー・イン・アメリカ(原題:Dinner in America)

dinner.jpg

監督・脚本・編集:アダム・レーマイヤー
撮影:ジャン=フィリップ・ベルニエ
音楽:ジョン・スウィハート
出演:エミリー・スケッグス(パティ)、カイル・ガルナー(サイモン)、グリフィン・グラック(弟ケビン)、パット・ヒーリー(父)、メアリー・リン・ライスカブ(母)、リー・トンプソン(ベティ)

孤独な少女が家に匿ったのは、覆面バンドの推しメンだった…!?
過保護な両親に育てられた臆病な少女パティは、孤独で単調な毎日を送っていた。そんな彼女にとって、パンクロックを聴くことだけが、平凡な人生から逃避できる唯一の楽しみだった。ある日、パティはひょんなことから、警察に追われる男サイモンを家に匿うことに。なんと彼の正体は、パティが大好きなバンド「サイオプス」の覆面リーダーであるジョンQだった。

アメリカ国旗柄の服を着ているパティは確かに地味、学校でも小さくなって目立たない。でも(だから?)パンクロックが大好き。この落差に笑えて共感もします。ライブに行けなくて落ち込んでいるところに、当のバンドのリーダーが現れるという漫画のようなサプライズ。なにせ覆面リーダーなので、パティは長いこと彼だと気づきません。そのズレがまたおかしいのと、サイモンの意外に繊細(?)なところにグッときます。
エミリー・スケッグスは舞台女優、カイル・ガルナーはスリラー映画に出演しているそうで、お初でした。ほかの出演者を見ても、娘の彼氏に色目を使う(笑)リー・トンプソン以外知った俳優さんはいませんでした。低予算映画ながらパンク精神が隅々まで詰め込まれたラブ・ストーリー。若者とパンクロックのファンにおおいに受けたそうです。俳優ベン・スティラーがプロデューサーに名を連ねていて、そこかしこからにじみ出るユーモアは彼からでしょうか?(白)


2020年/アメリカ/カラー/シネスコ/106分
原題:Dinner in America
配給:ハーク
(C)2020 Dinner in America, LLC. All Rights Reserved
https://hark3.com/dinner/
★2021年9月24日(金)より全国順次公開

posted by shiraishi at 21:17| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

素晴らしき、きのこの世界(原題:Fantastic Fungi)

konoko.jpg

監督:撮影:ルイ・シュワルツバーグ
脚本:マーク・モンロー
音楽:アダム・ピーターズ
ナレーション:ブリー・ラーソン
出演:ポール・スタメッツ(菌類学者)、マイケル・ポーラン(ジャーナリスト)、ユージニア・ボーン(フードライター)ほか

菌類は150万種。植物の6倍以上。菌類の中の2万種がキノコを作る。地下に張り巡らされた菌糸網の実のようなもの。カビや麹も菌類。動物や植物が死ぬと、菌類が分解し、養分に変え土に返していく。油も吸収し分解するので、原油が流出した海も救うことができる。菌類は45億年前に地球に現れ、地球上の生き物が死に絶えたときも生き延び、あらゆる生命体の母となった。70億の人間は菌類なくしては存在しえない。

ポール・スタメッツは子どものころ吃音がひどくて人と話せず、いつも下を向いて歩き、見つけたのが化石とキノコだったそうです。キノコに魅せられ興味は尽きず、現在も菌類を研究し、実験、栽培を続けています。
原生林のあちこちに生息しているキノコが成長するようすが高速度カメラで撮影され、一つ一つが愛らしく、美しく不思議です。原生林は菌類の宝庫なので、そこを守ることは人間を守ることに繋がると映画は知らせています。菌類のアオカビからペニシリンが発見されたように、菌類からは様々な病気、感染症に効果のある薬が作られています。そしてまだまだ未発見の物質があるのだとか。また学習して、そのネットワークで知識を共有する生物なのだそうで、学習しても今後に生かせない人間よりずっと賢くないですか?人間は菌類に学ぶべき。キノコ愛好家が多いのも納得でした。(白)


◆予告編(1分30秒) https://www.youtube.com/watch?v=z_ncBhl3qS4

2019年/アメリカ/カラー/アメリカンビスタ/81分
配給・宣伝:アンプラグド
(C)2018, Fantastic Fungi, LLC
https://kinoko-movie.com/
★2021年9月24日(金)より新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開

posted by shiraishi at 15:02| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年09月03日

ミッドナイト・トラベラー  原題:Midnight Traveler

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監督:ハッサン・ファジリ
出演:ナルギス・ファジリ、ザフラ・ファジリ、ファティマ・フサイニ、ハッサン・ファジリ
プロデューサー:エムリー・マフダヴィアン、スー・キム
共同プロデューサー:ファティマ・フサイニ、アフマド・イマミ
脚本・編集:エムリー・マフダヴィアン
撮影:ナルギス・ファジリ、ザフラ・ファジリ、ファティマ・フサイニ、ハッサン・ファジリ
音楽:グレッチェン・ジュード

アフガニスタンから逃れて5600km
タリバンに死刑宣告を受けた監督一家の長い旅


ハサン・ファジリ監督は、2015年に国営放送のために元タリバンで武器を捨てた平和主義者の男のドキュメンタリー「Peace in Afghanistan」を制作。タリバンの怒りを買い、出演者が殺される。監督も命を狙われていると知り、亡命を決意。妻と二人の娘を連れ、国境を越え、イランへ。そこからトルコ、ブルガリア、セルビア、ハンガリーと、アフガニスタンを出て3年目、ようやくEUに入ることを認められる・・・

冒頭、本作は携帯電話3台で撮影したと掲げられます。国を出る決意をした時には、安住の地を見つけられるまで、どれ程の時間がかかるか全くの未知数。密航斡旋業者に騙されることは日常茶飯事。娘を見失って暗澹たる思いになった日々もあります。一家のリアルな記録からは、国や場所による難民への対応の違いも見て取れます。

映画のタイトル『ミッドナイト・トラベラー』は、映画の冒頭で長女のナルギスが読んでいる本「エゴ・モンスター」の巻の名前から取ったもの。著者サイード・バホダイン・マジローは、政治家、民族誌学者、作家であり、暗殺されるまでの晩年を難民として暮らしたアフガニスタンの知識人です。
監督一家は、ダリ語、それもペルシア語に近い訛りのない綺麗なダリ語を話していて、知識人だとわかります。パシュトゥン族が主のタリバンとは民族も言葉も違います。国境を越える時に、ほかの男たちの中に溶け込むようにシャルワール・カミーズを着た監督に、娘たちが「パパの服、タリバンみたいで嫌い」という場面があります。その娘たちもまた、目立たないようにブルカですっぽり全身を覆うことになるのですが。

本作の製作をプロデューサー・脚本・編集として支えたエムリー・マフダヴィアンは、ペルシア語話者で、中央アジアの映画とメディアに関する博士号を持つ方。パソコンを持ち出せなかったファジリ監督から、撮影映像を記録したSDカードを各国協力者経由、アメリカにいるエムリーに届いたのを確認し、メモリーを消去して撮影を続けるという綱渡りで本作は出来あがりました。

ジャパンプレミアとして上映されたSKIPシティ国際Dシネマ映画祭2019で、審査員特別賞を受賞しましたが、ハサン・ファジリ監督はドイツで難民申請が受理され手続き中で出国できず、来日が叶いませんでした。その後、ドイツの永住許可を得たとのこと。
一家そろってドイツに到達し、永住権まで得ることができたのは、ほんとうに幸運なケースだと思います。移動途中で命を落としたり、家族が離散したりすることも多々あるでしょう。危険を冒してまで、故国を離れなければいけない人たちが世界の各地で後を絶たないことに胸が痛みます。誰しも、難民などと呼ばれたくないはずです。日本での公開を前にハッサン・ファジリ監督から届いたメッセージが、心に響きます。

★ハッサン・ファジリ監督から届いたメッセージ★
「私たちも母国を出たいわけでも、捨てたいわけでもない。
私たち、難民はいつも厄介者のような目でみられてしまう。しかし、私たちも人間です。
悲しみも、喜びも、希望もある。
私たちは食事のため、水のために、難民になっているわけではない。
望んで今の状態にあるわけではなく、私たちは仕方がなく、難民になってしまった。
本来は私たちも、アナタたちと同じような普通の人間なんです。
難民もひとりの人間。私たちの痛みも苦しみも理解をしてほしい。」


本作の公開日は、2001年9月11日の同時多発テロから20年に当たる日であり、アメリカ軍完全撤退の期限である日と、かなり以前に決められたのですが、アメリカ軍撤退に伴うタリバン勢力の拡大は予想以上に早く、8月16日に首都カーブルを制圧してしまいました。武力で民主主義を植え付けようとしたアメリカが出ていくことは歓迎ですが、今回もまた、土足でよその国に上がり込んで、後のことを考えず撤退することに憤りを感じます。部族社会の根強いアフガニスタン。女性隔離の慣習を持つパシュトゥンが国家権力を握ると、女性にとって、また暗黒の時代が訪れるのではないかと懸念します。さらなる難民が増えないことを願うばかりです。(咲)


この作品を初めて観たのは2019年の山形国際ドキュメンタリー映画祭。そしてこの作品は「優秀賞」を受賞した。しかし、映画祭へのハッサン・ファジリ監督の参加はなかった。監督と家族はまだ、ドイツの永住許可を獲得できてなくて、海外への移動はまだできなかったのだ。
しかし、この映画を2年前に観た時と今はアフガニスタンの状況が変わってしまった。2年前はタリバンがまさか復権するとは思ってもみなかったのに、この8月にアフガニスタンはまたタリバンに支配されてしまった。この国はイスラムの教義とか聖戦とかいう前に、男たちの権力争い、勢力争いに振り回され、力による支配が続いている。これまでの政権はアメリカの傀儡政権だったのだろうし、世界からの支援も、結局利権を獲得した層だけが得をしていたのだろうけど、それでも女性にとっては、タリバンの時代より暮らしやすかっただろう。しかし、またタリバンが支配することになってどうなってしまうのだろう。以前のタリバンの時代よりは女性の人権を考えると言っているらしいが、それにしたってたかが知れていると思う。
監督の家族たちは、約3年の月日を経てドイツの永住権を得た。しかし、ハッサン監督が「母国を出たいわけでも、捨てたいわけでもない。望んで今の状態にあるわけではなく、私たちは仕方がなく難民になってしまった」というように好き好んで難民になったわけではない。いつか祖国に帰りたいという気持ちはあるのだろうけど、この状態ではさらに帰りにくくなってしまった。こういう作品を観ると、私たちにできることはと思ってしまう(暁)。


参照
山形国際ドキュメンタリー映画祭2019 授賞式レポート
http://cineja3filmfestival.seesaa.net/article/470947183.html

2019 年/87 分/アメリカ・カタール・カナダ・イギリス/ドキュメンタリー
配給:ユナイテッドピープル
公式サイト:https://unitedpeople.jp/midnight/
★2021年9月11日(土)シアター・イメージフォーラム他全国順次ロードショー


◆【緊急開催】アフガニスタンの今とこれから。
REALs理事長 瀬谷ルミ子さんに聞く。
日時:2021年9月7日(火) 19時から20時
場所:オンライン(Zoomミーティング)
主催:ユナイテッドピープル
協力:認定NPO法人REALs
料金:1000円/人
▼詳細・チケット https://peatix.com/event/2894439/view


◆トークイベント
9月11日(土)13:00-上映後、安田純平さん/ジャーナリスト
9月12日(日)13:00-上映後、綿井健陽さん/ジャーナリスト・映画監督
※聞き手、ユナイテッドピープル代表関根健次


posted by sakiko at 03:49| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年08月22日

沈黙のレジスタンス ユダヤ孤児を救った芸術家   原題:Resistance

resisutance.jpg

監督・脚本・製作:ジョナタン・ヤクボウィッツ
出演:ジェシー・アイゼンバーグ、クレマンス・ポエジー、マティアス・シュヴァイクホファー、フェリックス・モアティ、ゲーザ・ルーリグ、カール・マルコヴィクス、ヴィカ・ケレケシュ、ベラ・ラムジー、エド・ハリス、エドガー・ラミレス

1938年、フランス、ドイツ国境に近いストラスブール。アーティストを夢見る青年マルセルは、昼間は精肉店で働き、夜はキャバレーでチャップリンに似せた姿でパントマイムを披露していた。戦争が激化し、親をナチに殺されたユダヤ人の孤児たち123人がストラスブールに疎開してくる。マルセルは、兄アランや従兄弟のジョルジュ、思いを寄せるエマと共に、子どもたちの世話にあたる。悲しみに暮れる子どもたちをパントマイムで和ませるマルセル。
そんな中、フランスでもユダヤ人迫害が激化。マルセルはフランス風にマルソー名乗る。
“リヨンの虐殺者”と恐れられたナチのクラウス・バルビー親衛隊中尉がユダヤ人やその協力者たちを拷問し射殺。それに対し武力で復讐しようという恋人エマに、マルソーは一人でも多くの命を救おうと、ユダヤ人孤児たちをフランスからスイスへと逃がすことを提案する・・・

<パントマイムの神様>と称えられたマルセル・マルソーですが、2007年9月22日にパリで亡くなるまで、第二次世界大戦中にナチスに加担したフランスのヴィシー政権に対するレジスタンス運動に身を投じていた活動内容を自ら語ることはなかったとのこと。没後10年以上の時を経て、マルセルたちがユダヤ人の孤児たちを助けた実話が映画化されました。ジョナタン・ヤクボウィッツ監督は、1978年、ベネズエラ、カラカス生まれのポーランド系ユダヤ人。
マルセルの家族も食事の前のお祈りのあとの「ポーランドでのユダヤ人差別から逃げてきたのに、ヒトラーはいずれフランスにも侵攻してくる」という言葉からポーランド系ユダヤ人だとわかります。
ナチスの侵攻を察知して、ストラスブールのフランス人の多くが南部に疎開する中、マルセルたちは逃げることなく、ユダヤ人の孤児たちを助けたのです。
父に、「芸術に何の意味が?」と尋ねられたマルセルが、「なぜトイレに?」と問い、「体が求めるから」と答える父に、「僕の答えも同じ」という場面があります。そんな父も、歌手になることが夢だったのです。「戦争が終わったら一緒に舞台に立とう」と父はマルセルに語るのですが、父はホロコーストの犠牲になり、夢が叶うことはありませんでした。
戦後、マルセルがどんな思いを抱えて、パントマイムで皆を笑わせていたのかと思うと涙が出ます。人種や宗教で人を差別する風潮は、今また激化しています。差別することなく共生できる世界の実現を願うばかりです。
本作はユダヤ人を救った美談ですが、同じ8月27日公開の『ホロコーストの罪人』は、ノルウェーで警察と市民がホロコーストに加担していたことを暴いた物語です。人は状況次第で善にも悪にもなりえることをずっしり感じます。(咲)


2020 年/アメリカ・イギリス・ドイツ/英語・ドイツ語/120 分/カラー/スコープ/5.1ch
日本語字幕:高内朝子
配給:キノフィルムズ
公式サイト:http://resistance-movie.jp/
©2019 Resistance Pictures Limited.
★2021年8月27日(金)TOHOシネマズ シャンテほかにて全国ロードショー




posted by sakiko at 12:55| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする