2019年02月15日

ビール・ストリートの恋人たち(原題:If Beale Street Could Talk)

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監督・脚本:バリー・ジェンキンス
原作:ジェームズ・ボールドウィン
撮影:ジェームズ・ラクストン
音楽:ニコラス・ブリテル
出演:キキ・レイン(ティッシュ・リヴァーズ)、ステファン・ジェームス(ファニー)、レジーナ・キング(シャロン・リヴァーズ)、コールマン・ドミンゴ(ジョーゼフ・リヴァーズ)、テヨナ・パリス(アーネスティン・リヴァーズ)、デイブ・フランコ(レヴィー)、ディエゴ・ルナ(ペドロシート)、エド・スクレイン(ベル巡査長)

1970年代のハーレム。ティッシュとファニーは幼馴染の恋人同士で、早く二人で生活することを夢見て部屋を探していた。ようやく貸してくる家主を見つけたその日、二人は結ばれる。帰り道に寄った店でティッシュが白人の男にセクハラを受け、ファニーは腹を立てる。差別意識丸出しの白人警官がファニーを逮捕しようとしたが、見ていた店主や客たちが抗議する。警官は手を引くことになりファニーに目をつける。しばらく経って強姦事件が起き、被害者の女性が犯人は黒人男性と証言した。ファニーは見に覚えのない濡れぎぬを着せられ、容疑者として逮捕されてしまった。

『ムーンライト』でアカデミー賞作品賞などを受賞したバリー・ジェンキンス監督の新作。ステファン・ジェームスは『栄光のランナー 1936ベルリン』で陸上選手ジェシー・オーエンスを演じていました。また良い作品に出会えて何よりです。ティッシュ役のキキ・レインはこれが映画初出演とか。ティッシュはまるで自分のことのようで、どうしても演じたかったそうです。
若い二人が、理不尽な目に会わされてしまうことに愕然としますが、白人弁護士や彼らを支える家族たちは諦めません。ことに証言をとりたい一心で、遠くまで旅しようとする母親(レジーナ・キングが助演女優賞ノミネート)、旅費を稼ぐ父親たちの愛情に胸があつくなります。ストリートのユダヤ人、マイノリティの人たちの応援もありました。ジェームズ・ボールドウィンの時代から半世紀たちました。今はどれだけよくなったのでしょうか。(白)


原作は、キング牧師と共に公民権運動の旗手としても活躍した黒人作家ジェイムズ・ボールドウィンが70年代に書いた小説。長年映画化を夢見ていたというバリー・ジェンキンス監督が、理不尽な状況に置かれている恋人たちの物語を味わい深い作品に仕上げています。無実の罪で収監されている男ファニーにとって、恋人ティッシュや、真相を明かそうと奔走する家族や友人たちの存在が、一縷の希望の光。人と人との繋がりの素晴らしさを感じさせてくれます。
一方、白人警官は、いちゃもんをつけて黒人だというだけでファニーを犯人に仕立ててしまいます。権力を持つ者が、自身の主義主張に合わない者を陥れるという構図は、国家レベルでも横行していることに思いが至ります。(咲)



2018年/アメリカ/カラー/シネスコ/119分
配給:ロングライド
(C)2018 ANNAPURNA PICTURES, LLC. All Rights Reserved.
http://longride.jp/bealestreet/
★2019年2月22日(金)ロードショー
posted by shiraishi at 20:51| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

サタデーナイト・チャーチ 夢を歌う場所(原題:Saturday Church) 

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監督・脚本:デイモン・カーダシス
撮影:ヒラリー・スペラ
音楽:ネイサン・ラーソン
出演:ルカ・カイン(ユリシーズ)、マーゴット・ビンガム(アマラ)、レジーナ・テイラー(ローズ)、マークイス・ロドリゲス(レイモンド)、MJ・ロドリゲス(エボニー)、インドゥヤ・ムーア(ディジョン)、アリシア・ガルシア(ヘヴン)

高校生のユリシーズは、学校でも家庭でも居場所がない。学校では女っぽいとからかわれ、家には夜勤の多い母親に代わって留守を見る厳しいローズ叔母さんがいる。軍人だった父親が亡くなってから、ユリシーズは母の服や靴を身につけて鏡に映していた。弟や叔母に知られて家を飛び出し、心細い思いをしていたとき、トランスジェンダーの女性たちに出会う。LGBTの人々が集う「土曜の夜の教会」に誘われ、初めて自分と同じような葛藤を抱え、孤独に生きている人々がこんなにもいることを知った。

主な舞台となるのは、デイモン・カーダシス監督のお母さんが司祭をされているセント・ピーターズ教会。もともと、監督が「土曜の夜の教会」でボランティアをしていたことが映画を作るきっかけになったのだそうです。
LGBTの中でも有色人種のトランスジェンダーはアメリカのホームレスの大半を占め、最も声を上げられない人々であること、彼らに必要なのは”希望”を持ち続けることだ、と監督は気づきます。言葉にならない溢れる思いが歌になり、光を目指すダンスになりました。歌詞は監督が書いたものです。
ユリシーズ役のルカ・カインが繊細で美しく、見とれました。ユリシーズを受け入れ、応援するエボニー、ディジョン、ヘヴンは実際にトランスジェンダーの女優たちです。なんだか世の中狭苦しく生き辛くなっているこのごろですが、空想すること、希望を持つことは誰にでもできるんだよ、と背中を押してくれる作品。(白)


トランスジェンダーの人たちに誘われて行った「土曜の夜の教会」で、自分らしく生きることを学んだユリシーズ。ハイヒールを買って隠していたのを、叔母が見つけ、罵倒します。でも、母親は違う。ユリシーズの思いを尊重します。
実は私の友人から、数年前、「娘が息子になっちゃったの」と聞かされました。性同一性障がい。名前も男性らしいものに変え、アメリカにしばらく行った後、帰国して男性として就職。そして、昨年、「息子が結婚したの」と友人。戸惑いながらも、我が子をあるがままに受け入れている姿に、これが母親というものなのだと思いました。
今や社会も変化してきて、LGBTの人たちの存在が認識されて偏見の目でみることも以前より減ってきたのではないかと思います。けれども社会によっては、同性愛というだけで処罰の対象になるところもあるのが現実。人間の尊厳が認められる世の中であってほしいと思います。(咲)


2018年/アメリカ/カラー/シネスコ/82分
配給:キノフィルムズ
(C)2016 Saturday Church Holding LLC ALL rights reserved.
http://saturday-church.com/
★2019年2月22日(金)新宿ピカデリー他にて全国ロードショー
posted by shiraishi at 20:49| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年02月09日

アクアマン(原題:Aquaman)

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監督:ジェームズ・ワン
脚本:デビッド・レスリー・ジョンソン、ウィル・ビール
撮影:ドン・バージェス
美術:ビル・ブルゼスキー
音楽:ルパート・グレッグソン=ウィリアムズ
出演:ジェイソン・モモア(アーサー・カリー/アクアマン)、アンバー・ハード(メラ)、ウィレム・デフォー(バルコ)、パトリック・ウィルソン(オーム)、ドルフ・ラングレン(ネレウス)、ヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世(ブラックマンタ)、ニコール・キッドマン(アトランナ)

アーサーは海底王国アトランティスの王女と灯台守の間に生まれたが、母アトランタはアーサーが幼い頃に王国に連れ戻され、父の手で育てられる。逞しい男に成長したある日、赤い髪の美女メラが海からやってきて驚くべきことを告げる。アトランティス帝国の若き王・異父弟のオームが、この地上を侵略してくる。その危機を救うのは、二つの世界を一つにできるアーサーだけだというのだ。アーサーはメラに伴われアトランティスに向かう。高度な文明が発達を遂げた海底では、いくつもの王国が覇を競っていた。

DCコミックスのスーパーヒーロー、アクアマンは『ジャスティス・リーグ』(2017)にも登場していますが、本作は両親の出逢いから子ども時代、そしてアクアマンとして海底と地上で活躍する様を描いています。ハワイ出身のジェイソン・モモアの明るく親しみやすいヒーローと、いかにも若様なパトリック・ウィルソンのオーム、美しくて強いヒロインのアンバー・ハードのメラ、助演の俳優さんも豪華です。
海底王国とキャラクターの造形、衣装、美術が素晴らしくて最初に海底王国に入ったシーンでは、おー!と目を見張ってしまいました。CG満載のアクションもずいぶん観てきましたが、水の中のアクションはまた格別。子ども時代に水族館に行くシーンは、お魚好きな方々は必見です。ご家族そろってお楽しみください。(白)


2018年/アメリカ/カラー/シネスコ/143分
配給:ワーナー・ブラザース映画
(C)2019 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & c DC Comics
http://wwws.warnerbros.co.jp/aquaman/
★2019年2月8日(金)ロードショー
posted by shiraishi at 12:49| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年01月31日

フロントランナー  原題:The Front Runner

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監督:ジェイソン・ライトマン
原作:マット・バイ著「All the Truch is Out」
出演:ヒュー・ジャックマン、ヴェラ・ファーミガ、J.K.シモンズ、アルフレッド・モリーナ

1988年、米国大統領選挙の民主党予備選。ゲイリー・ハート上院議員は、ハンサムでカリスマ性があり、ジョン・F・ケネディの再来と言われ、絶大な支持を集めて最有力候補(フロントランナー)に躍り出る。ところが、3週間後、マイアミ・ヘラルド紙が写真入りで不倫疑惑を報じたことから、大統領選から永久に葬られることになる・・・

米国政治史上、それまで政策重視で、プライベートなことは報道しないという暗黙の了解があったという。政治家とジャーナリズムの関係が大きく変わることになったこのゲイリー・ハートの一件を、様々な立場の人の目から語る形で物語は形成されている。
ゲイリー・ハートの家族、ゲイリー・ハート選挙陣営、ワシントン・ポスト紙、マイアミ・ヘラルド紙など、すべての人物を中立に描き、観る者それぞれにどう受けとめるかをゆだねている。中でも、注目したいのは、5人の女性たちのこと。妻リー・ハート、娘アンドレア・ハート、浮気相手と報じられたドナ・ライス、ハートのスケジュール管理をしていた女性アイリーン・ケリー、ワシントン・ポスト紙の政治部副編集長のアン・デヴロイ。これまでこうした政治の舞台で押さえ込まれてきた女性たちの思いにも焦点を当てている。
今や、瞬時に情報が拡散する時代だが、インターネットのなかった時代の報道の影響の大きさについても考えさせられた。(咲)


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ゲイリー・ハートを演じたヒュー・ジャックマン来日記者会見の模様は、こちらで!

(白)さんのスタッフ日記でもどうぞ!


2018年/アメリカ/1時間53分
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
公式サイト:http://www.frontrunner-movie.jp/
★2019年2月1日(金)より全国ロードショー





posted by sakiko at 21:32| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年01月27日

ナディアの誓い - On Her Shoulders    原題:On Her Shoulders

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監督: アレクサンドリア・ボンバッハ
出演:ナディア・ムラド、ムラド・イスマエル、アマル・クルーニー他

2018年、ノーベル平和賞を受賞したクルド人のヤジディ教徒の女性ナディア・ムラドさんを追ったドキュメンタリー。

1993年、イラク北部の少数派ヤジディ教徒の人たちが暮らすコーチョ村で生まれたナディアさん。将来の夢は、村で美容室を開くこと。2014年8月、ダーイッシュ(イスラム国)がヤジディ教徒を根絶やしにするため、イラク北部シンジャール地区に侵攻。数週間のうちに5千人もの人が虐殺され、7千人以上の若い女性や子供たちが性奴隷や少年兵として連れ去られた。ナディアさんも母親と6人の兄弟を殺され、自身も性暴力を受け続けるが、3ヶ月後、脱出に成功しドイツに逃れる。
2015年、ナディアさんが報道機関に性奴隷の体験を語ったことをきっかけに、英国の弁護士、アマル・クルーニーさん(ジョージ・クルーニーの奥様)と知り合い、二人はダーイッシュの蛮行を国際社会に訴えるため世界を回る・・・

国連から「人身取引被害者の尊厳のための親善大使」に任命される日、「母がいれば・・・」と涙ぐむナディアさん。
ダーイッシュの侵攻さえなければ、今も村で家族と共に平穏に暮らしていたはず。
家族を殺され、性奴隷という忌まわしい経験をしたナディアさん。心に秘めて静かに暮らすこともできたのに、世界にダーイッシュの蛮行を知らしめ、少数民族への迫害を止めてほしいと声をあげた勇気を称えたい。性暴力被害者として好奇の目で見られるのは、さらにつらいこと。それを承知の上での行動なのだ。
まるで女優のような弁護士アマル・クルーニーさんが、ナディアさんの盾になって熱弁を振るう姿も実にカッコいい。
アマルさんはレバノン生まれで、ナディアさんとはアラビア語で話していた。ナディアさんは家族とはクルド語だろうけど、イラクに住んでいたのでアラビア語もできるのだなと。

堂々とスピーチをしたノーベル平和賞授賞式でも悲しげな表情だったナディアさんだが、難民キャンプで彼女を取り囲む子どもたちに見せる笑顔が素敵だ。いつか村に戻り、コミュニティの再建を果たしたいというナディアさんの夢が叶うことを願うばかりだ。(咲)


◆上映後トークショー
2月1日(金)10:30頃上映後 横田徹(報道カメラマン)
2月2日(土) 10:30頃上映後  久保健一(読売新聞元カイロ支局長)
2月3日(日) 10:30頃上映後  安田菜津紀(フォトジャーナリスト)
2月10日(日)夕方頃上映後  東小雪(元タカラジェンヌ/LGBTアクティビスト)
2月11日(月)10:30頃上映後  綿井健陽(ジャーナリスト・映画監督)


2018年/アメリカ/95分/ドキュメンタリー
配給:ユナイテッドピープル 
公式サイト: http://unitedpeople.jp/nadia
★2019年2月1日(金)アップリンク吉祥寺ほか全国順次ロードショー





posted by sakiko at 21:51| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする