2023年03月22日

屋根の上のバイオリン弾き物語  原題:Fiddler's Journey to the Big Screen

yanenoueno.jpg
(C)2022 Adama Films, LLC


製作・監督・編集:ダニエル・レイム
出演:ノーマン・ジュイソン、ロバート・ボイル、ジョン・ウィリアムズ、トポル

人気ミュージカル「屋根の上のバイオリン弾き」を映画として再構築したノーマン・ジュイソン監督の思いとは?

ショーレム・アレイヘムのベストセラー小説「牛乳屋テヴィエ」を基にしたミュージカル「屋根の上のバイオリン弾き」は、19世紀末のウクライナ地方に暮らすユダヤ人一家を描いた物語。テヴィエには、5人の娘がいて、政情が悪化するなかでも、それぞれに恋をする。そんな中、ついにユダヤ人の強制退去命令が出て、村人たちが村を離れる日が来る・・・
「カット!」とノーマン・ジュイソン監督が指示する1971年当時の撮影シーンで始まる本作。監督だけでなく、音楽のジョン・ウィリアムズや主人公テヴィエを演じたトポル、3人の娘役たちへのインタビューや、ロケ地を巡る困難、舞台セットや撮影に凝らした数々の工夫などを追って、『屋根の上のバイオリン弾き』の知られざる魅力を明らかにする。

ノーマン・ジュイソン監督が小学生の時に仲間外れにされていたシドニーというユダヤ人の少年と仲良くしていて、一緒にシナゴーグによく行っていたら、ラビに「両親はシナゴーグに来ないね」と言われ、「教会に通ってる」と答えたら、シナゴーグから締め出されてしまったというエピソードが紹介されました。「Jewison」という名字は、Jew(,ユダヤ人)のson(息子)なのに、ユダヤ人でないのが残念だったそうで、ユダヤ人からはユダヤ人になりたがる変人と言われたという話が可笑しかったです。結婚式は女性のラビを招いて、ユダヤ式に天蓋の下で行ったそうで、筋金入りのユダヤ好きです。
そんな ノーマン・ジュイソン監督がミュージカルを映画化する時に、舞台では不可能だった故郷を追われたユダヤ人の歴史を盛り込んで描こうとしたことが、本作の中で語られていました。
 
『屋根の上のバイオリン弾き』が日本で公開されたのは1971年12月4日。私が大学1年生の時のことです。♪サンライズ サンセット~♪の哀愁ある歌と共に、生まれた地を去らなければいけない人たちの悲哀が心に深く残りました。
中学生のころに「アンネの日記」を読んで、第二次世界大戦の時にユダヤ人がナチスドイツに迫害されたことはすでに知っていましたが、『屋根の上のバイオリン弾き』を観て、ユダヤ人を嫌ったのはドイツだけではないことに気づいたのでした。なぜヨーロッパでユダヤ人が嫌われるのかに興味を持ったのは、この映画が原点だったような気がします。
50年以上の時を経て、この映画が出来た背景を知ることができたのは、この上のない喜びでした。 願わくば、1971年の『屋根の上のバイオリン弾き』がリバイバル公開されるといいのですが、今のところ無理とのことで残念です。(咲)


☆公開記念トークイベント☆
アップリンク吉祥寺 いずれも14:00~の回上映終了後
4月1日(土):寺﨑秀臣さん
(ミュージカル「屋根の上のヴァイオリン弾き」演出家)
4月2日(日):渡辺えりさん(女優・演出家・劇作家)


2022年アトランタ・ジューイッシュ映画祭最優秀ドキュメンタリー映画賞
2022年ヒューストン・ジューイッシュ映画祭最優秀作品賞
2022年リバーラン国際映画祭最優秀ドキュメンタリー賞 他

2022年/米国/カラー/英語/88分/ドキュメンタリー
配給:パンドラ
公式サイト:http://www.pan-dora.co.jp/yanenoue/
★2023年3月31日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、アップリンク吉祥寺にて公開




posted by sakiko at 17:53| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

シング・フォー・ミー、ライル  原題:Lyle, Lyle, Crocodile

sing for me.jpg

監督:ウィル・スペック、ジョシュ・ゴードン
脚本:ウィル・デイヴィス
音楽:ベンジ・パセック、ジャスティン・ポール
原作:バーナード・ウェーバー 『ワニのライル』シリーズ
声の出演:ショーン・メンデス
出演:ハビエル・バルデム、コンスタンス・ウー、ウィンズロウ・フェグリー、スクート・マクネイリー、ブレット・ゲルマン
〈日本語吹替版キャスト〉大泉洋、石丸幹二、水樹奈々、関智一、宮岸泰成

ニューヨーク。
何をやってもうまくいかないショーマンのヘクター。ある日、古びたペットショップで、魅惑の歌声を耳にする。歌っていたのはなんとワニ! ヘクターはそのワニを買って帰り、ライルと名付けて相棒に仕立てるが、いざステージに立つとライルは委縮して歌えない。
ヘクターはライルをアパートの屋根裏部屋に残して地方に巡業に出てしまう。
長い月日が経ったある日、ジョシュという少年が家族と共にライルの潜む家に越してくる。
ジョシュもライルと同じく心に深い孤独を抱えていた。屋根裏部屋にあがってきたジョシュを前に、ライルはゆっくりと歌い始める。やがてジョシュとライルは歌を通して友情をはぐくんでいく・・・

ペットショップにいたころのライルは、小さな檻に入った子どものワニでした。飼い主のヘクターが長い間留守にしている間に大きく育って、ジョシュが引っ越してきた頃には、大人の背丈。なんといっても、見た目はグロテスクなワニなので、通報されて捕獲されてしまいそうになります。でも、歌うワニが実際にいたらと考えると、なんだか楽しくなってしまいます。
楽曲を手がけたのは、『ラ・ラ・ランド』や『グレイテスト・ショーマン』のベンジ・パセック&ジャスティン・ポール。ファンタジーの世界に誘ってくれます。 ヘクターが危険なワニを飼っていてOKな理由がまた素敵です。これはぜひ劇場で確認を!(咲)



2022年/106分/PG12/アメリカ
配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
公式サイト:https://www.sing-for-me-lyle.jp/
★2023年3月24日(金)全国の映画館で公開



posted by sakiko at 04:06| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年03月11日

長ぐつをはいたネコと9つの命(原題:Puss in Boots: The Last Wish)

nagagutu.jpg

監督:ジョエル・クロフォード
脚本:ポール・フィッシャー、トミー・スワードロー
音楽:ヘイター・ペレイラ
声の出演:アントニオ・バンデラス/山本耕史(プス)、サルマ・ハエック/土屋アンナ(キティ)、フローレンス・ピュー/中川翔子(ゴルティ)、ハーヴィー・ギレン/小関裕太(ワンコ)、サムソン・ケイオ/木村昴(ベイビー・ベアー)、オリヴィア・コールマン/魏涼子(ママ・ベアー)、レイ・ウィンストン/楠見尚己(パパ・ベアー)、ワグネル・モウラ/津田健次郎(ウルフ)、ジョン・ムレイニー/成河(ジャック・ホーナー)

モフモフでカッコよくて、強くて可愛い茶トラの「長ぐつをはいたネコ」のプス。猫は生まれ変われると、今日も今日とて無茶三昧。いつしかお尋ね者の『賞金首」になっていた。しかし8度死んでいた彼は、今が9つめの最後の命となってしまったことに気がついた。うっかり死んだらはいおしまい。今度こそ「いのちだいじに」しなきゃ、とこれまで見向きもしなかった家猫になって安全安心に暮らすことにした。ところが、賞金稼ぎはほうっておいてはくれない。その代わり、「願い星」を手に入れたらなんでも願いが叶うという耳より情報!!せっかく元カノの美女猫キティとも再会したことだし、なんとしても新しい命を増やしてもらわねば!

大ヒットした『長ぐつをはいたネコ』の続編。11年後の同じ3月17日に公開です。ほんとなら老猫になっているはずのプスですが、そこは8度も生まれ変わっているわけですし、まだまだ剣さばきもアクションもキレッキレです。うるうる瞳も健在。
映像はますます美しく、敵は強力、猫に交じっていた「ワンコ」も仲間に加わりました。プスのただの猫らしい家猫生活場面は珍しいので、だるだるでも観ていてくださいね。大活躍のシーンもすぐ、やってきます。
動きが激しいので、大きい画面ですみずみまでお楽しみくださいませ。(白)


2022年/アメリカ/カラー/シネスコ/104分
配給:東宝東和、ギャガ
(C)2022 DREAMWORKS ANIMATION LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
https://gaga.ne.jp/nagagutsuneko/
★2023年3月17日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー
posted by shiraishi at 20:02| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

The Son 息子 (原題:The Son)

The Son_ポスタービジュアル.jpg

監督・脚本・原作戯曲・製作:フロリアン・ゼレール『ファーザー』
製作総指揮:ヒュー・ジャックマン
共同脚本:クリストファー・ハンプトン
撮影:ベン・スミサード
音楽:ハンス・ジマー
出演:ヒュー・ジャックマン(ピーター)、ローラ・ダーン(ケイト)、バネッサ・カービー(ベス)、ゼン・マクグラス(ニコラス)、アンソニー・ホプキンス(ピーターの父)

弁護士として順風満帆の日々を送っていたピーターに、別れた妻ケイトから連絡があった。17歳の息子ニコラスが登校していないという。「パパと暮らしたい」と望む息子を、再婚相手のベスと赤ん坊のいる家庭に迎え入れることになった。ニコラスは新しい高校に転入したものの、やはり出かけはするが登校できず、ピーターは何度も話し合うが、話は平行線のまま。ニコラスは、自分と母を捨てたピーターと不倫の末結婚したベスに辛辣な言葉をぶつける。

フロリアン・ゼレール監督作『ファーザー』に続く「家族 3 部作」の第 2 部です。第3部も戯曲からでしょうか。今から楽しみです。内容は真実味があればあるほど、楽しくはありませんが。
脚本に惚れ込んだヒュー・ジャックマンが、出演を熱望し、制作にもあたっています。『ファーザー』で 認知症を患う父を演じて2 度目のアカデミー賞受賞の名優アンソニー・ホプキンスが、ピーターのトラウマの元になっている厳格な父親役。親子似てしまうんですね。親子3代の確執の連鎖は、断ち切れるのか、乗り越えられるのか。
新鋭ゼン・マクグラスが演じるニコラスが繊細で傷つきやすく痛々しいです。
親は生れた子どもを抱いたそのときから、すぐに親の役割を果たさねばなりません。初めてでも何でも容赦なく時間が過ぎて、親が親らしくなるより早く子どもは成長していきます。兄弟姉妹がたくさんいて、親類縁者やご近所とのかかわりも密だった昔と違い、親も子もマネしたいモデルもなければ、経験も少ないこのごろです。戸惑うこと、孤立して悩みが深くなるのも無理ありません。学校に無理して行かなくても大丈夫、それでもちゃんと生きていける、と大人が言ってあげたい。どうか同じ轍を踏まないで。(白)


両親の離婚が、いかに子の心に影響を及ぼすかを突き付けられました。
ニコラスは、学校に行かないという形で意思表示していたのが、ついにはっきりと父が母を裏切ったことについて不満をぶちまけます。父の再婚相手にも問いただします。だからといって、大人にもそれぞれの人生があります。親である以上、自分の決断が子どもにどんな影響を与えるのか考えてケアする必要はあるでしょう。
日本でも十代の自殺が増えていますが、社会がどう対応すればいいのかも考えさせられました。本作では、精神科の功罪も見せつけられました。難しいですね・・・ (咲)


2022年/イギリス・フランス合作/カラー/スコープサイズ/123分
配給:キノフィルムズ
(C)THE SON FILMS LIMITED AND CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION 2022 ALL RIGHTS RESERVED.
公式HP:https://www.theson.jp/
公式Twitter:https://twitter.com/TheSon_jp
★2023年3月17日(金)TOHO シネマズ シャンテほか 全国ロードショー
posted by shiraishi at 20:01| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年03月02日

KG200 ナチス爆撃航空団  原題:WOLF HOUND

nachis kg200.jpg
© 2022 Wolf Hound Productions, LLC All Rights Reserved

監督・原案:マイケル·B·チャイト
脚本:ティモシー·リッチー
撮影:ウェストリー・ギャスライト
プロダクションデザイン:ブランドン·F·オッテンバッハー『リアル·スティール』
編集:ヤニナ・マリア
音楽:マイケル・クラマー
サウンドデザイン:ピーター・バヴィーク
VFXスーパーバイザー:ライアン・アーバン『マトリックス レザレクションズ』『パシフィック・リム: アップライジング』
出演:ジェームズ·マズロー、トレヴァー·ドノヴァン、ジョン·ターク、マイケル·ウェイン·フォスター、ジョン·ウェルズ

1944年、ナチス占領下のフランス上空。アメリカ空軍デイビッド・ホールデン大尉らがナチス基地殲滅(せんめつ)の任務を受け飛行中、同行予定を知らされてなかった英国機を見かけ、無線で連絡するも応答がない。突如、味方と思った戦闘機の奇襲を受ける。実はドイツ軍パイロットのロス兄弟の乗る2機の戦闘機が英国機を装っていたのだ。パラシュートで無事森の中に降り立ったホールデン大尉は、ドイツ軍第200爆撃航空団(KG200)に囚われたクルーたちを救出するべく敵陣に向かう。そこで彼が見たのはナチスの恐るべき計画。それはロンドン壊滅を狙い、極秘裏に開発された新型爆弾“超兵器”だった・・・

登場する爆撃機や戦闘機はすべて本物のヴィンテージ機が使用され、空中戦シーンでも約4,000発の空砲を用い、圧倒的なリアリティを追求した空撮を敢行。米国ヴァージニア州のミリタリー・エヴィエーション・ミュージアムや、ミシガン州のヤンキー・エア・ミュージアム等の航空博物館の協力のもと、数々の貴重な飛行可能機が使用されています。

ボーイングB-17Gフライングフォートレス
フライングフォートレス(空飛ぶ要塞)のニックネームを持つ、アメリカ陸軍の四発重爆

ノースアメリカンP-51Dムスタング
航続力と高高度性能を活かして爆撃機の護衛任務などにも就いた、アメリカ陸軍の主力戦闘機。

スーパーマリン・スピットファイアMk.9
ロールスロイス・マーリン搭載のイギリスを代表する流麗なシルエットの戦闘機。

ホーカー・ハリケーンMk.12
スピットファイアともども1940年の英本土防空戦“バトル・オブ・ブリテン”での活躍が語り継がれる。

ノースアメリカンB-25Jミッチェル
1940年に初飛行したアメリカ陸軍の双発爆撃機。

メッサーシュミットBf109G
ドイツのメッサーシュミット社がバイエルン航空機製造時代に設計したドイツ空軍の主力戦闘機。

航空機(戦闘機)好きには、たまらない一作でしょう。
私にとって興味深かったのは、アメリカ空軍デイビッド・ホールデン大尉がユダヤ人というところ。ダビデの星のペンダントをしているので、ドイツ軍の将校たちに、すぐにユダヤ人とわかり、いたぶられます。第一次世界大戦の時には、ドイツ人はユダヤ人を兄弟と呼んで一緒に戦っていたこと、さらにはその頃にはユダヤ人の方が羽振りがよかったエピソードも出てきます。その恨みがユダヤ人狩りに繋がったとも思える話です。
それにしても、なぜ戦争が世界から消えないのでしょう。人が無駄死にするしかない戦争がこの世からなくなることを祈るばかりです。(咲)


2022年/アメリカ/英語/130分/カラー/スコープサイズ
日本語字幕:宇治田智子
提供:ミッドシップ、コムストック·グループ
配給:ミッドシップ 協力:コムストック・グループ 特別協力:文林堂『航空ファン』
公式サイト:http://mid-ship.co.jp/wolfhound/
★2023年3月3日(金)ヒューマントラストシネマ渋谷、シネマート新宿ほか全国順次公開
posted by sakiko at 02:27| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする