2025年04月06日
ファレル・ウィリアムス:ピース・バイ・ピース(原題:Piece by Piece)
監督・脚本・編集:モーガン・ネヴィル
出演:ファレル・ウィリアムス、スヌープ・ドッグ、ケンドリック・ラマー、ジャスティン・ティンバーレイク、グウェン・ステファニー
ファレル・ウィリアムスは73年にヴァージニアビーチに生まれ、一歩ずつ音楽の道に進んで行く。10代から音楽プロデューサーとして活動開始、シンガーソングライター、デザイナーなどマルチに活躍する彼の半生をレゴブロックアニメーションで作成した。家族や音楽業界の友人知人たちが彼の人となりや業績について語る。
そんなに活躍していた人だったとは、守備範囲外でまったく知りませんでした。全てがレゴでできているのですが、体型も顔(表情も豊か)も作りこまれています。ファレルは音が色で見えるのだそうで、とてもカラフル。背景の海もグラデーションのレゴで、寄せてくる波もちゃんと動いています。レゴのピースの情報をインプットし、実写で撮影してからレゴアニメーションとしてコンピューターが計算して作りだすのでしょうか?詳しいことを説明されてもきっと意味不明。ただただ、すごーい!と見とれてしまいました。レゴ好きな方必見。
モーガン・ネヴィル監督はカルチャー系のドキュメンタリーを作ってきていて『ヨーヨー・マと旅するシルクロード』も監督しています。ファレル本人のノリノリの歌もたくさん流れます。試写では思わず身体を揺らしてしまう方もいました。HPトップでは挿入歌が試聴できます。(白)
2023年/アメリカ/カラー/93分
配給:パルコ
(C)2024 FOCUS FEATURES LLC
https://pharrell-piecebypiece.jp/
★2025年4月4日(金)より全国ロードショー
シンシン/SING SING 原題:SING SING
監督:グレッグ・クウェダー
出演:コールマン・ドミンゴ、クラレンス・マクリン、ショーン・サン・ホセ、ポール・レイシー
ニューヨークにある最重警備のセキュリティを誇る「シンシン刑務所」。
ディヴァインGは、無実の罪で収監されたことを訴え続けている。刑務所内の収監者更生プログラムである<舞台演劇>グループに所属して、仲間たちと積極的に演劇に取り組み、自分を励ましている。ある日、刑務所いちの悪として知られるクラレンス・マクリン、通称“ディヴァイン・アイ“が演劇グループに参加することになる。新たな演目に向けての準備が始まるが、ディヴァイン・アイは何かと突っかかってくる・・・
収監されている男たちが、舞台演劇を通じて知り合い、胸の内を語り合い、友情をはぐくんでいく姿に、彼らが「そこ」にいる様々な事情を思いました。数人の俳優以外は、かつて収監中に舞台演劇グループに所属していた男たちが本人役を演じています。
ディヴァインGは、減刑聴聞の時に、積極的に構成プログラムとしての舞台演劇の取り組んだことを語るのですが、最後に、「今日のも演技?」と言われてしまいます。さて、ディヴァインGは減刑になるのでしょうか?
舞台の始まる前に、皆で手を高くあげて「RTA」と叫びますが、これは「Rehabilitation Through the Arts(芸術を通した更生プログラム)」の略。
演劇を通じた収監者たちのセラピーを描いた映画として、イスラーム映画祭6で上映された『シェヘラザードの日記』(監督:ゼイナ・ダッカーシュ、2013年、レバノン)を思い出しました。レバノンのバアブダ女性刑務所で演劇を通じたドラマセラピーに参加する女性囚たちを描いたドキュメンタリーでした。出所した女性がかつて演劇を通じて友情をはぐくんだ仲間たちに会いに来る場面もありました。
『シンシン/SING SING』も、収監された人たちの更正に、集団で行う演劇が効果あるプログラムであることを見せてくれました。(咲)
2023年/アメリカ/カラー/ビスタ/5.1ch/107分
字幕翻訳:風間綾平
配給:ギャガ
公式サイト:https://gaga.ne.jp/singsing/
★2025年4月11日(金)TOHOシネマズ シャンテほか全国順次公開
2025年03月30日
HERE 時を越えて 原題:HERE
監督:ロバート・ゼメキス
原作:リチャード・マグワイア
脚本:エリック・ロス&ロバート・ゼメキス
出演:トム・ハンクス、ロビン・ライト、ポール・ベタニー、ケリー・ライリー、ミシェル・ドッカリー
『フォレスト・ガンプ』チーム再結集!!
地球上のある地点にカメラが固定され、その場所に暮らす幾世代もの家族が交差して描かれる愛と喪失、記憶と希望の物語。
恐竜たちが駆け抜け、氷河期を迎え、オークの木が育ち、先住民族の男女が出会う。
悠久の時を越えて、オークの木が伐採され、土地がならされ、1907年に一軒の家が建つ。
最初にこの家を買ったのは、ジョンとポーリーンの夫婦。やがて女の子が生まれるが、予期せぬ運命に見舞われ引っ越してゆく。次にレオとステラというアーティスティックなカップルが入居し、個性的なインテリアで部屋を生まれ変わらせる。約20年間、仲良く暮らした2人は、ある“発明”に成功し、新たな世界を求めて旅立ってゆく。
1945年、戦地から帰還したアル(ポール・ベタニー)と妻のローズ(ケリー・ライリー)がその家を購入し、やがて長男リチャードが生まれ、続いて長女のエリザベス、次男のジミーが誕生する。高校生となったリチャード(トム・ハンクス)は絵が得意でアーティストになることを夢見ていた。そんな中、別の高校に通うマーガレット(ロビン・ライト)と出会い、恋におちる。マーガレットは、高校卒業後は大学に進学し、弁護士になることを目指していた。だが、ここから思いがけない人生が始まる・・・
定点観測の物語。私が今いる場所にも、かつてどんな暮らしがあったのだろうと想像すると楽しいです。とはいえ、一つの家が壊され、新しい家が建っても、さて、前はどんな家だった?と思い出せないのが常。
本作は、トム・ハンクスとロビン・ライトが高校生から70代までを演じているというので、どんな特殊メークを?と思ったら、VFXを使って年を重ねていくという手法。VFXを加えた映像を現場で見ながら、シーンごとの年齢に合うように瞬時に動きを調整したのだそうです。
クリスマスや感謝祭など、家族が集う時も時代を越えて描かれ、「同じこの場所」で、様々な人の喜怒哀楽が繰り返されてきたことを思いました。(咲)
2024年/アメリカ/英語/104分/カラー/5.1ch/ビスタ
字幕翻訳:チオキ真理
提供:木下グループ 配給:キノフィルムズ
公式サイト:https://here-movie.jp/
★2025年4月4日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開
天国の日々 4K 原題:Days of heaven
監督・脚本:テレンス・マリック( 『シン・レッド・ライン』(98)『ツリ ー・オブ・ライフ』(11))
製作:バート・シュナイダー ハロルド・シュナイダー
撮影:ネストール・アルメンドロス ハスケル・ウェクスラー
美術:ジャック・フィクス
音楽:エンニオ・モリコーネ
出演:リチャード・ギア、ブルック・アダムス、リンダ・マンズ、サム・シェパード、 ロバート・J・ウィルク、ステュアート・マーゴリン
20世紀初頭のテキサス。青年ビル(リチャード・ギア)はシカゴの仕事場でトラブルを起こし、妹のリンダ(リンダ・マンズ)、ビルの恋人アビー(ブルック・アダムス)を連れ列車に乗り、広大な麦畑に流れ着く。3人は裕福な地主のチャック(サム・シェパード)のもとで、麦刈りの仕事をすることになった。秋が近づくころ、チャックは不治の病に侵されていることを医師から告げられる。麦刈りの時期が終わると労働者たちはそれぞれの故郷に帰ることになるが、チャックはアビーを見初め、周囲の反対も聞かず結婚を申し込む。自分が身を引いた方がいいと悟ったビルは一人その地を去っていく。しかし翌年彼が再びテキサスに戻ってきたことからビル、チャック、アビーの3人は思わぬ展開を迎えた・・・
冒頭、セピア色の写真が、100年以上前のアメリカに誘ってくれました。鉄橋を渡る列車のシルエットの美しいこと! 大平原を行く列車の屋根の上に座る人々。その中に、若さみなぎるリチャード・ギアの姿。麦畑の広がる地に着き、皆が下りていきます。麦刈りの季節を目指しての出稼ぎ。ビルの妹リンダは、ビルの恋人アビーのことを、姉と地主に紹介します。だからこそアビーを見初めた地主も安心してプロポーズ。自分といるよりも金持ちに嫁いだほうが幸せになると、身を引くビル。切ないです。もちろん、そこで映画は終わりません・・・
ビルの妹リンダは、列車の上で同乗した男から、「善人は天国に行ける」と教えられます。エンニオ・モリコーネによる音楽が、切なくも美しい天国を思わせてくれました。映画音楽の巨匠として知られるエンニオ・モリコーネですが、本作で初めてアカデミー賞作曲賞にノミネートされ、第33回英国アカデミー賞で作曲賞を受賞した記念的な作品。
自然光にこだわった美しい映像、哀愁漂うエンニオ・モリコーネの調べ、そしてリチャード・ギアの若き姿・・・ 大画面でこそ醍醐味が味わえます。(咲)
第32回カンヌ国際映画祭 監督賞
第51回アカデミー賞🄬 撮影賞
第33回英国アカデミー賞 作曲賞
1978年/アメリカ/94分/カラー/5.1ch/1.85:1
配給:アンプラグド
公式サイト:https://unpfilm.com/heaven/
★2025年4月4日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開
2025年03月27日
ミッキー17 原題:Mickey 17
監督・脚本・製作:ポン・ジュノ(『パラサイト 半地下の家族』『吠える犬は噛まない』『母なる証明』)
原作:エドワード・アシュトン
出演:ロバート・パティンソン、ナオミ・アッキー、スティーヴン・ユァン、アナマリア・ヴァルトロメイ、トニ・コレット、マーク・ラファロ
一発逆転の夢の仕事・・・のはずが、ブラック企業の使い捨てワーカーだった!
人生失敗だらけの主人公・ミッキーが手に入れたのは、何度でも生まれ変われる夢の仕事、のはずが……⁉
それは身勝手な権力者たちの過酷すぎる業務命令で次々と死んでは生き返る任務、まさに究極の“死にゲー”だった!
闇深いブラック企業のどん底で搾取されるミッキーの前にある日、手違いで自分のコピーが現れ事態は一変。
使い捨てワーカー代表、ミッキーの反撃が始まる・・・
『パラサイト 半地下の家族』が、第92回アカデミー賞®で非英語作品史上初の作品賞受賞という快挙を成し遂げたポン・ジュノ監督。ふんだんな資金を得て作り上げた最新作。主演は『ハリーポッター 炎のゴブレット』『THE BATMAN-ザ・バットマン-』のロバート・パティンソン。共演者も人気の実力派が大集結!
技術がさらに発展した未来。クローンどころか、「人体複製(プリンティング)」という技術で、いとも簡単に「印刷」で作ってしまう人間。消耗品で、激務で使い物にならなくなると、次の複製が作られてしまうという安易さ。本来なら、同じ人間は同時に存在しないはずだったのに、ミッキー17がまだいるのに、手違いでミッキー18をプリントしてしまったというお話。それが見た目は同じなのに、性格が違ってしまったというのが可笑しいです。ロバート・パティンソンが、二役を上手に演じ分けています。
大きなスクリーンでこそ、微妙な表情の違いがはっきりと見れるのですが、本作、もう一つ、ぜひスクリーンで観てほしい理由が、クリーパーという生物体の存在。
脚本に、「奇妙にうねるような動きをする生物で、クロワッサン型の体を持ち、ムカデのように各節から脚が生えていて、不気味なカチカチ、パチパチという音を立てる」と描写されているとのことです。大きさは3つあって、
ベイビー・クリーパー: コアラほどの大きさ
ジュニア・クリーパー:大型の豚ほどの大きさで、直立すると人間の身長と同じくらい。
ママ・クリーパーー: 水平方向で9フィート(約2.7m、直立すると20フィート(約6m)以上の巨体。唯一の存在。
ミッキーは、このクリーパーたちと意思疎通することができるのです。
未来の話でありながら、今を生きる私たちにも通じる物語です。(咲)
「ミッキー17」というタイトルの意味が最初わからなかったけど、何度でも生まれ変われる夢の仕事のはずが、「身勝手な権力者たちの過酷すぎる業務命令によって、死んでは生き返る任務」で、17回目の再生人間だった。いわば「使い捨て人間」である。監督は「”人間の愚かさ”をより深く掘り下げました。そして、その愚かさが、時に愛すべきものになるという視点で描きました」と語っていますが、「愚かな愛すべき人たち」の物語。「スタジオジブリ作品からの影響を公言しているジュノ監督が、ジブリにオマージュを捧げた謎のモンスターが登場」とありましたが、無数のクリーパーたちが宇宙船に押し寄せる姿に、『風の谷のナウシカ』に出てきたオーム(王蟲)の押し寄せたシーンを思い出し、ハッとしました。生き残りたいと言っていたミッキー18ですが、最後の展開に驚きます。(暁)
2025年/アメリカ/137分/ビスタサイズ/2D/IMAX 2D/ドリビーシネマ 2D/リニア PCM5.1ch+7.1ch;ドルビーアトモス(一部劇場にて)
翻訳(字幕・吹替):松崎広幸
配給︓ワーナー・ブラザース映画
公式サイト:https://wwws.warnerbros.co.jp/mickey17/
★2025年3月28日(金)より全国公開