2024年08月23日

モンキーマン (原題:MONKEY MAN)

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監督・原案:デヴ・パテル
脚本 デヴ・パテル、ポール・アングナウェラ、ジョン・コリー
出演:デヴ・パテル(キッド)、シャルト・コプリー(タイガー)、ピトバッシュ(アルフォンソ)、ビピン・シャルマ(アルファ)、シカンダル・ケール(ラナ)

闇のファイトクラブで夜な夜な戦う悪役モンキーマン。筋書きはオーナーに指示されて、初めは優勢でも結局痛めつけられ負けることになっている。猿のマスクをかぶっているのは、天涯孤独のキッド。幼いころに村ごと焼き払われ最愛の母を失った壮絶な過去がある。母はキッドを隠し、けっして声をたてないよう言い聞かせて自分は殺されてしまった。そのときの悪徳警官ラナの顔は忘れたことがない。
死んだように生きて来たキッドだったが、ラナに近づくチャンスがあった。しかし圧倒的な力の差で倒されてしまう。虐げられた人々からの手厚い介護を受け、キッドは再び復讐のために立ち上がる。

『スラムドッグ$ミリオネア』(2008/ダニー・ボイル監督)のデブ・パテルが構想8年をかけ初監督、主演を務めました。しっかり身体を作り上げ、アクションをこなしています。アクション映画の大ファンとのことで、ずっとこれがやりたかったのでしょう。スタッフにも恵まれたのか、映像もアクションも、わー!という仕上がり。
復讐劇にやりすぎじゃないですか、とは私の感想です。そこがいい!!というファンも多々いるはず。もともとは全世界に配信の予定だったのが、ジョーダン・ピールが気に入って買い取りプロデュース、劇場公開することになったそうです。
母親がキッドにお猿の神様のお話を語り聞かせていました。インドの叙事詩「ラーマーヤナ」に登場するハヌマーンという神様のようです。なんだか孫悟空みたいと思いましたら、孫悟空はこのお話から生まれていたとも言われています。力と勇気の象徴だそうで、キッドは神がいないなら自分が、と敵を追っていきます。高い高いビルの最上階でのアクションは太陽を取りに空へ上ったハヌマーンを表しているのかもしれません。(白)


★福音館から出ている絵本「おひさまを ほしがった ハヌマン」を読むとキッドのお母さんの話の続きがわかります。
☆第31回サウス・バイ・サウスウエスト映画祭で観客賞受賞

2024年/アメリカ・カナダ・シンガポール・インド/カラー/シネスコ/ 121分/R15+
配給:パルコ、ユニバーサル映画
(C)Universal Studios. All Rights Reserved.
https://monkeyman.jp/
★2024年8月23日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほか、全国公開中

posted by shiraishi at 00:31| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年08月18日

至福のレストラン 三つ星トロワグロ 原題:Menus Plaisirs - Les Troisgros

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(C)2023 3 Star LLC – All Rights Reserved

監督・製作・編集:フレデリック・ワイズマン
出演:ミッシェル・トロワグロ、セザール・トロワグロ、レオ・トロワグロ、マリー=ピエール・トロワグロ、トロワグロで働くスタッフ、ほか

親子3代に渡って55年間ミシュランの三つ星を持ちつづけ、
グリーンスターに輝く最高峰のフレンチレストラン<トロワグロ>。
94歳の巨匠フレデリック・ワイズマン監督が、その驚異の秘密に迫る―


朝、ロアンヌ駅前のマルシェで念入りに野菜を選ぶ4代目シェフのセザールと、別のレストランを営む弟のレオ。
トロワグロ家のブラッスリー「ル・サントラル」では、セザールとレオが考案したメニューを口頭で聞いて、3代目シェフである父ミッシェルがあれこれとアドバイスする。

樹々と湖に囲まれたフランス中部の村ウーシュにあるレストラン<トロワグロ>。
建築家パトリック・ブシャンが建てた、自然と解け合うモダンな新しいレストランだ。
開店前、下ごしらえするシェフを夢見る若き料理人たち。
ホールでは、担当スタッフたちがテーブルセッティングに余念がない。
ソムリエにワインの仕入れ状況と在庫を確認するミッシェル。
厨房では、魚と肉の仕入れをシェフと料理人たちが確認する。
ホール長からスタッフにメニューの変更や、予約客のアレルギーや苦手な食材が詳細に伝えられる。
味見をして、盛り付けにも厳しいチェックを入れるミッシェル。

いよいよランチタイム開店。テーブルについた客に、前衛的なメニューをわかりやすく説明するホール係。
厨房では、セザールの指揮のもと、着々と料理が仕上がる。ミッシェルが細かく確認する。その合間にも客席を回り、客に話しかけるミッシェル。

トロワグロがこだわる食材の数々が紹介される。
山羊のチーズ、有機栽培の野菜・・・

そして、ディナータイム。
ランチよりさらに多種多様なメニューとワイン。次々と入るオーダーを、堂々と采配するセザールと、綿密にサポートするミッシェル・・・


家族で始めたレストランが創業以来94年間、なぜ変わらず愛され続けてきたのかの秘密に迫る4時間。あっという間でした。
3代目ミッシェルは、70年代末、祖母マリー=ピエールとともに料理の世界を巡る旅に出て、その中でも気に入ったのが日本。会話の中に、「醤油」「しそ」といった単語も飛び出します。客との会話の中でも日本での思い出話を披露しています。2006年、東京にキュイジーヌ・ミッシェル・トロワグロをオープンさせ、日本への愛着を現実にしています。
思えば、かつて小田急百貨店新宿店8階に「カフェ トロワグロ」がありました。ミッシェル・トロワグロ監修のカフェでした。お高くて入ったことはありませんが、地下の食品売り場にあった「ブティック・トロワグロ」のパンコーナーには時々行きました。それこそ、亡き父は、ここの食パンがお気に入りで、冷凍庫にはいつも在庫を欠かすことはありませんでした。6枚切りがない時には、新着のものをわざわざ切ってもらうほど。有料になってからも、父は手提げの紙袋とプラスチック袋を必ず頼んでいたので、今も家にはトロワグロの紙袋が山のように残っています。お店の名前がTroisgroとしか書いてなくて、どう読んでいいのかと悩んだのも懐かしい思い出です。
ブティック・トロワグロは、小田急百貨店新宿店の閉店・ハルクへの移転に伴い、2022年10月2日に閉店。新しく出来る小田急百貨店に復帰してほしいものです。(咲)



第58回全米映画批評家協会賞 ノンフィクション映画賞 受賞
第89回ニューヨーク映画批評家協会賞 ノンフィクション映画賞受賞
第49回ロサンゼルス映画批評家協会賞 ドキュメンタリー映画賞受賞 他

2023年/アメリカ/フランス語・英語/240分/ビスタ/モノラル
日本語字幕:丸山垂穂
配給・宣伝:セテラ・インターナショナル
公式サイト:https://www.shifuku-troisgros.com/
★2024年8月23日(金)よりBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下、シネスイッチ銀座ほか全国順次公開.



posted by sakiko at 18:55| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年08月11日

ねこのガーフィールド(原題:The Garfield Movie)

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監督:マーク・ディンダル
原作:ジム・デイビス
声の出演:クリス・プラッツ/山里亮太(ガーフィールド)、ハンナ・ワディンガム/MEGUMI (ジンクス)、ニコラス・ホルト/山路和弘(ジョン)、サミュエル・L・ジャクソン/山路和弘(ヴィック)、ヴィング・レイムス/磯部勉(オットー)、ブレット・ゴールドスタイン/立木文彦(ローランド)、ボウエン・ヤン/関智一(ノーラン)、スヌープ・ドッグ/木村昴(モーリス)

飼主のジョンに溺愛されて、“幸せ太り”な家ねこのガーフィールド。食べることが大好きで、月曜日とお風呂は大嫌い!冷蔵庫が空になったら、ジョンのカードでネットショッピング。お取り寄せしたものがすぐ届くなんて便利な時代だ。しかし、そんな平和な日々が乱された!生き別れた父さんねこのヴィックが突然現れて「悪いねこに追われている!助けて!」と言うのだ。ガーフィールドは親友の犬オーディと一緒に居心地のいい家から飛び出すことになってしまった。

原作は1978年から新聞に連載されて今も継続中の漫画です。ジム・デイビス氏は1945年生まれで79歳です。いまだ現役連載中とはシニアの星ですね。原作は日本でも出版されていたようですが、書店で探せず図書館にはなくて見ていません。今回のアニメのガーフィールドの対象はお子様中心らしいので、全体に可愛らしくなっています。飼い主のジョンはカードで爆買いされても怒りません。甘々です。ちゃんと叱ってもらいたいです。
ガーフィールドは子ねこのころから父さんには会っていないので、2匹の間には溝が横たわっています。悪いねこの登場は2匹とどう関係していくのか、2匹の溝は狭まっていくんでしょうか?どたばた追っかけっこもあり、親子のしんみりもあり、初めてガーフィールドに会う子どもたちも満足するのではないかしら。(白)


2024年/アメリカ・イギリス・香港合作/カラー/101分
配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント

https://www.garfield-movie.jp/
★2024年8月16日(金)ほか全国ロードショー

posted by shiraishi at 09:59| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年07月07日

メイ・ディセンバー ゆれる真実(原題:May December)

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監督:トッド・ヘインズ
脚本:サミー・バーチ
撮影:クリストファー・ブロベルト
出演:ナタリー・ポートマン(エリザベス)、ジュリアン・ムーア(グレイシー)、チャールズ・メルトン(ジョー)

1996年、36歳の女性教師・グレイシーが13歳の少年ジョーと関係を持ったというスキャンダルが全米を驚かせた。逮捕されて7年の実刑を受けたグレイシーは、ジョーの子供を獄中出産した。出所後結婚した2人は、3人の子どもに恵まれ、穏やかな家庭を築いている。このスキャンダルを映画化したい女優のエリザベスは、役作りのために彼らの家を訪れた。初めは友好的にエリザベスを受け入れたグレイシーだったが、踏み込んでくるエリザベスに次第に苛立ちが募ってくる。

”メイ・ディセンバー”とは5月と12月ほど(年齢が)離れたカップルのことを言う慣用句。親子ほど離れたカップルはよく聞くけれど、男性が上というのが多い気がします。このカップルのモデルは先生と生徒というのにちょっと驚きました。映画がフォーカスしているのはその発端や過去ではなく、女優が家庭に入ってきたことで波風がたっていくところ。さざ波どころではありません。
初めはエリザベスのように過去の真実が知りたいと思うのですが、進むにつれてバチバチと火花を散らす女性2人にたじたじとなります。あぶりだされるのは、誰の真実かそれとも悪意か。わざと合わなく作っているような音楽もあいまって、興味本位な自分が恥ずかしいしもてあまします。なんだか居心地が悪くなってくる映画なのですが、がっつり競演しているベテラン女優の決着はどうなるのか、2人に負けることなく、ジョーを演じているチャールズ・メルトンも気になりました。彼の別の作品が観たくなりました。(白)


2023年/アメリカ/カラー/117分/R15
配給:ハピネットファントム・スタジオ
(C)2023. May December 2022 Investors LLC, ALL Rights Reserved.
https://happinet-phantom.com/maydecember/
★2024年7月12日(金)ほか全国ロードショー

posted by shiraishi at 13:54| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年06月29日

リッチランド  原題:Richland

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© 2023 KOMSOMOL FILMS LLC

監督:アイリーン・ルスティック

原爆を作ったアメリカの町の過去と現在を描くドキュメンタリー映画

ワシントン州南部にあるリッチランド。ここは、1942年からのマンハッタン計画における核燃料生産拠点「ハンフォード・サイト」で働く人々とその家族が生活するために作られたベッドタウン。1945年8月9日、長崎に落とされた「ファットマン」のプルトニウムはハンフォード・サイトで精製されたものだった。終戦後は冷戦時に数多く作られた核兵器の原料生産も担い、稼働終了した現在はマンハッタン計画に関連する研究施設群として国立歴史公園に指定され、アメリカの栄光の歴史を垣間見ようと多くの観光客が訪れている。
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© 2023 KOMSOMOL FILMS LLC
地元高校のフットボールチームのトレードマークは“キノコ雲”と“B29爆撃機”、チーム名は「リッチランド・ボマーズ」。「原爆は戦争の早期終結を促した」と誇りに思っている人々がいる一方で、多くの人を殺戮した原爆に関わったことに胸を痛める人もいる。
様々な声が行き交う中で、被爆3世であるアーティスト・川野ゆきよがリッチランドを訪れ、町の人々との対話を試みるが...

核燃料生産拠点ハンフォード・サイトやリッチランドは、何もなかった草原にできたわけではなく、先住民が代々暮らしてきた土地でした。米軍がやってきて、「土地を使わせてもらう。長い間じゃない」と先住民は言われ、結局、汚染された土地に戻れずにいるのです。その地には、先住民の生活になくてはならない資源もあったのに。
ハンフォード・サイトで働く人たち自体、放射能汚染の危険をまったく知らされていませんでした。「あの雲は誇り」「この土地を誇れ」と偉業を成したことを教え込まれたのです。偉業の恐ろしさは隠して。 防護服も着ずに家族のために仕事にまい進していた人たちの多くが癌で命を落としています。終戦直後、乳児や新生児が亡くなることも相次ぎ、小さなお墓が並んでいることに言葉を失います。
リッチランドで育ち、ハンフォードで土木技師として働いたキャスリン・フレニケンの詩集「プルーム」より、いくつかの詩が引用されて詠まれます。プルトニウムは安全だとしてきたアメリカ政府の裏切りや、放射能に侵された人々への思いが静かに伝わってきました。(咲)


アイリーン・ルスティック
監督・製作・編集
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フェミニスト映画作家、アーカイブ研究者、アマチュア裁縫家。英国生まれボストン育ちの米国人1世であり、両親はチャウシェスク政権下のルーマニアを政治亡命者として逃れてきた。『リッチランド』以前にも3作の長編を制作。カリフォルニア大学サンタクルーズ校で、映画およびデジタルメディア学教授として映画制作を教える。


2023年/アメリカ/93 分/カラー/5.1ch/DCP
字幕:佐藤まな
製作:コムソモール・フィルムズ
宣伝:テレザ/配給:ノンデライコ
公式サイト:https://richland-movie.com/
★2024年7月6日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開




posted by sakiko at 23:55| Comment(0) | アメリカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする