2021年07月17日

親愛なる君へ(原題:親愛的房客 )

sinainarukimihe.jpg

© 2020 FiLMOSA Production All rights

監督・脚本:チェン・ヨウチェ
監修:ヤン・ヤーチェ
出演:モー・ズーイー(リン・ジエンイー)、チェン・シューファン(チョウ・シウユー)、バイ・ルンイン(ワン・ヨウユー)、ヤオ・チュエンヤオ(ワン・リーウェイ)、ジェイ・シー(ワン・リーガン)、シエ・チョンシュアン(検察官)、ウー・ポンフォン(警察官)、シェン・ウェイニエン(警察官)、ワン・カーユエン (ネット市民)

ピアノ講師をしているジエンイーは、間借りしている家の老婦・シウユーの介護と、その孫のヨウユーの面倒をひとりで見ている。血のつながりもないけれども、今は亡き同性パートナー、リーウェイの家族だからだ。彼の家に住み、彼の家族を愛することが何より重要なことだった。
しかしある日、痛みに苦しんでいたシウユーが亡くなってしまう。その死因を巡り、ジエンイーは不審の目で見られ警察沙汰になってしまうが、弁解もせず罪を受け入れようとする。それは愛する“家族”を守りたい一心から出たことだった。

シウユーは糖尿病らしく、脚や目に重い症状が出てきます。入院も手術も拒否して、何度も痛みを訴えます。これは在宅で看病する人にも辛い状況です。指先まで優しいジエンイーに「よく頑張っているね」と褒めてあげたいくらいです。母親が亡くなって、リーウェイの弟が戻ってきます。それまで実の息子でありながら、母の世話もせずジエンイーまかせだったのに、母親の財産の行き先を聞いて態度が変わります。ああ、やれやれ。控え目で辛抱強く、リーウェイを心から大切に想っているジエンイーをモー・ズーイーが静かに演じて、切なさが増します。ネットでジエンイーと知り合う男を演じたワン・カーユエンも印象に残りました。
ジエンイーはゲイであることで、常に理不尽な目に遭います。同性でも異性でも、相手を大切に想う気持ちは変わらないでしょうに。検察官がジエンイーに「なぜそこまで他人の世話をするのか」と尋ねたときに、「自分が女性だったら、そう聞くでしょうか?」と逆に質問します。相手は黙ります。
でも、今や女性だからといって夫亡き後、義父母を看取るとは限りませんよ。実の子だってそう、と自分の終活を思わず考えました。性別に関わらず、血のつながりがなくとも「家族になれる」というお話が最近多いです。家族にもいろんな形があっていい、ゆるやかなつながりで心地よく生きられればいいですよね。(白)


_LMT2097.jpg

© 2020 FiLMOSA Production All rights

映画が始まって程なく、背景に低い山に囲まれた港! あ、基隆!と、もう感無量でした。基隆は、私の母が7歳から終戦の年までの10年間を過ごした町。『親愛なる君へ』でジエンイーが間借りしている家は、少し高台に建っていて、時折映し出される港の風情がとてもいいです。
亡くなったパートナーの幼い息子と老いた母親を甲斐甲斐しく世話をするジエンイーの姿が切ないです。“国民のおばあちゃん”と呼ばれる名女優チェン・シューファン(陳淑芳)さん演じるシウユーが「痛い痛い」と苦しむのをなんとかしてあげたいと思うジエンイーや孫。自宅での介護の大変さも胸に迫ります。折に触れて基隆の港が背景に出てきた本作、シウユーの苦しむ姿が10年前に癌に苦しみながら亡くなった母に重なりました。(咲)
★スタッフ日記に、思いをたっぷり書きました。
『親愛なる君へ』 基隆で育った母の最期を想う(咲)

莫子儀(モー・ズーイー)には、『台北に舞う雪~Snowfall in Taipei』( 霍建起監督)が東京国際映画祭で上映された時(2009年)にインタビューしたことがある(シネマジャーナル本誌78号に掲載。HPにも掲載)。その頃はインディペンデントの作品に出ていて、この作品が初めての商業作品出演だった。その話し方から感じたのは、穏やかだけど、芯のある役者というイメージだった。それ以来、ずっと彼の出演作品を気にかけていた。その時からもう11年にもなる。激しさはないけど、穏やかで芯のある役者というイメージは今回の作品でもそう感じられた。

PICT5893補正_R.jpg
2009年東京国際映画祭『台北に舞う雪~』舞台挨拶時の莫子儀(撮影 宮崎暁美)

去年夏頃、莫子儀のインタビュー記事が載っているシネマジャーナル78号(2010年春号)を購入したいという日本滞在中の台湾の方から連絡があり、何冊か購入していただいた。それで久しぶりに彼のことを思いだし、どうしているのかなと思っていたら、その方から11月にメールが来て、「莫子儀が『親愛的房客』で主演男優賞を獲得した」と連絡があり、「この作品、日本で公開されますかね?」と質問もされ、私は「来年あたり公開されるかもしれませんね」と答えたものの、情報はない状態だった。そうこうしているうちに6月頃、この映画の日本公開の情報を知った。

この作品を観て、ジエンイーは間借り人だけど、亡くなってしまった恋人の母親シウユーと子供ヨウユーを見捨てるわけにはいかなかったんだろうなと思い、彼と一緒に登った思い出の山など、情緒的な話の展開に引き寄せられた。そして、ジエンイーが逮捕された時に離れたくなかったヨウユーの行動を見て、血の繋がりを越えた家族の絆を感じた。
また、彼らが住んでいる家(マンション?)のベランダから見えた港の景色を見て驚いた。基隆だ! 基隆には3回行ったことがあり、去年2月にも行ったばかり。新コロナの影響が出始めたころで、行くのをさんざん迷ったけど、もう20年近く前から行ってみたかった十分(シーフェン)の天燈祭り(ランタン祭り)にやっと行けるというチャンスを逃したくなかったので出かけた。天燈上げの前に近くの基隆に行ったのだけど、その時は侯孝賢監督の『ミレニアル・マンボ』の冒頭に出てきた基隆の歩道橋が取り壊されてしまうというのでそれを探しに行った。橋をみつけた後、食堂に入ったけど、その食堂の後方あたりにあるビルのどこかが、この家族が住んでいるという設定の場所だろうと、この作品を観て思った。基隆湾の光景が懐かしかった。
天燈上げに興味を持ったきっかけは『シーディンの夏(石碇的夏天)』で、この作品で初めて天燈上げを観た。その後いろいろな作品で「天燈」が上がるシーンを観て、ますます興味を持った。そしていつかこの十分の「天燈祭り」に行ってみたいと思うようになった。去年、十分に行った時、道路標識で「石碇方向」というのを見て、石碇はこの十分の近くなんだと思った。この『親愛なる君へ』の作品紹介を書くにあたっていろいろ調べるうち、鄭有傑(チェン・ヨウチエ)監督のフィルモグラフィの中に『シーディンの夏』をみつけ、『シーディンの夏』は鄭有傑監督の作品だったんだと改めて思い縁を感じた。「基隆」しかり、「石碇」しかり、鄭有傑監督は、侯孝賢監督同様この台湾北部の地域が好きなのかもしれない。  
* 侯孝賢監督『悲情城市』は基隆、九份が舞台。『恋恋風塵』は十分が舞台。
* 台湾ロケ地めぐり 平渓線沿線『台北に舞う雪』公開記念

台湾金馬奨では、老母を演じた81歳の陳淑芳(チェン・シューファン)がこの作品で助演女優賞を獲得したが、彼女は『孤味(弱くて強い女たち)』では主演女優賞を受賞し、金馬奨史上初めて、主演女優賞と助演女優賞ダブル受賞を果たした。『弱くて強い女たち』は、去年(2020)の東京国際映画祭で上映されたけど、この作品も日本公開されますように(暁)。


◆ジエンイーが恋人や、恋人の子供ヨウユーと登った山は
合歓山(ハーファンシャン Héhuān Shān)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%90%88%E6%AD%93%E5%B1%B1

◆終盤の圏谷の光景は雪山(シュエシャン) 台湾で2番目に高い山 
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9B%AA%E5%B1%B1_(%E5%8F%B0%E6%B9%BE)

2020年/台湾/カラー/シネスコ106分/R18+
原題:親愛的房客 Dear Tenant
配給:エスピーオー、フィルモット
(C)2020 FiLMOSA Production All rights
http://filmott.com/shin-ai/
★2021年7月23日(金・祝)シネマート新宿・心斎橋ほか全国順次公開

*シネマジャーナルHP 特別記事
『台北に舞う雪~Snowfall in Taipei』莫子儀(モー・ズーイー)インタビュー
http://www.cinemajournal.net/special/2010/taipei-snow2/index.html
posted by shiraishi at 00:24| Comment(0) | 台湾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年06月20日

1秒先の彼女(原題:消失的情人節 My Missing Valentine)

1byou.jpg

監督・脚本:チェン・ユーシュン『熱帯魚』『ラブ・ゴーゴー』
エグゼクティブ・プロデューサー:イエ・ルーフェン、リー・リエ
出演:リー・ペイユー(ヤン・シャオチー)、リウ・グァンティン(ウー・グアタイ)、ヘイ・ジャアジャア(ペイ・ウェン)、ダンカン・チョウ(リウ・ウェンセン)

郵便局で働くシャオチーは、仕事も恋も冴えない日々を送っていた。子どものころから何をするのにも人よりワンテンポ早い。写真撮影では必ず目をつむっているし、映画では人より早く笑ってしまい、冷たい視線をあびている。彼女は街で出会ったハンサムなダンス講師ウェンセンと、恋が成就するかもしれない“七夕バレンタイン”にデートの約束をした。準備万端整えて眠りについたシャオチー、しかし目を覚ますと、既にバレンタインの翌日になっていた。大切な一日はどこへ消えてしまったの?

楽しみにしていたデートの日(の記憶)がまるまる消えてしまったシャオチー、それなのに日焼けをしているってどういうこと? カメラに残っていた画像から、出かけた場所を探し出します。記憶に全くないんだけれど、そこに写っているのはまぎれもなく自分なんだもの!! 
「!」と「?」がいっぱいのこのストーリー、シャオチーと原因を作った「彼」グアタイ、それぞれの視線で同じ時を観られるので「こんなところに伏線が!」と気づきがあって面白さ倍増です。初めからもう一度観たくなってしまうラブストーリーでした。二人のキャラがよく描けていて、一歩間違えば「イタイ」人になってしまうところを、可愛さを感じられるところで止めています。
自分を振り返ればせっかちなくせに(いや、だから)抜けていて、やっぱり目をつぶった写真が何枚もありました。今やカメラの性能がよくなってシャッター速度も自在なので、失敗は少ないはず。(白)


少女の頃から、何をしても皆より1秒早かったシャオチー。同級生だったグアタイは、逆にトロい少年でした。大人になっても、グアタイは女性に対しても奥手。ダンス講師ウェンセンがぐいぐいシャオチーにアプローチしているのを後ろで黙ってみている姿を、映画を観ているこちらはいらつきながらも、うぶで可愛いな~と思ってしまいます。
『熱帯魚』(95)『ラブ ゴーゴー』(97)と、初期作品から奇想天外な作風で楽しませてくれたチェン・ユーシュン監督には、『祝宴!シェフ』公開の折にインタビューの機会をいただきました。
http://www.cinemajournal.net/special/2014/shukuen/index.html
その時の記事の最後に「トニー・ヤンとキミ・シアさんという美男美女を起用されましたが、二人共、2枚目半のキャラクターにされたところに、監督らしさを感じました」と書いていました。まさに、今回も同じ! 
郵便局でシャオチーの隣に座っている超モテの可愛い女子を演じているヘイ・ジャアジャアは“美しすぎる囲碁棋士”として有名だそうで、リー・ペイユー演じるシャオチーは、男に縁のなさそうなブスにさえ見えてしまいます。グアタイに海に連れていかれた時のシャオチーの笑顔のなんと素敵なこと! グアタイを演じたリウ・グァンティンも、ほんとはイケメンなのに、のろくてヘタレな青年に見えます。チェン・ユーシュン監督のマジックですね。(咲)

陳玉勲(チェン・ユィシュン)監督が映画界に帰ってきた!
『熱帯魚』(95)、『ラブ ゴーゴー』(97)のあと映画の世界を離れ、以来16年ぶりに撮ったのが『祝宴!シェフ』(13)。その間、CMやミュージックビデオの世界で活動していたらしい。長編映画復帰3作目が、この『1秒先の彼女』。陳玉勲監督の作品が大好きだった私は、映画の世界にいつ戻ってくるのだろう。日本公開されるのだろうと心待ちにしていた。そして、この『1秒先の彼女』が公開される。
以前の作品にもあったユーモア感、ポップなのにノスタルジー感のある不思議な世界。不器用に生きている人にやさしくて観終わった後に心をほんわかさせる映画スタイルは健在だった。思いもよらない展開や、クスッと笑えるシーンの数々。世の中のペースに合わずに生きる人への温かいまなざし。ちょっとずれて生きている人へのエールが嬉しい。
シャオチーが消えた「1日」を探し、訪れたのは美しい海辺の町。見覚えあるような海岸線。公式HPによると『熱帯魚』(95)の舞台になった嘉義県・東石村とのことだけど、『熱帯魚』の撮影が行われたのは、近隣の台南市・大甲というところらしい。今年1月に日本公開された『越年 Lovers』(郭珍弟/グオ・チェンディ監督)の3話目に出てきた彰化という場所もこんな景色だった。地図で調べたら「東石村」「大甲」「彰化」は台中の南部にある場所だった。きっと同じような海岸線の景色が見えるような場所なのでしょう。
下調べをしないまま観たけど、観終わった後、友人から「周群達(ダンカン・チョウ)が出ていたね。久しぶりに観た」と言われ、「え!、どこに?」と思ったら、あのキザなダンス教師役だった。『僕の恋、彼の秘密』(04)、『靴に恋する人魚』(05)では可愛い青年という感じだったのに、ずいぶんと変わってしまっていてわからなかった。李霈瑜(リー・ペイユー)も劉冠廷(リウ・グァンティン)も、他の作品で観た記憶はあるのだけど、どの作品だったのかわからない。出演作をみてみたけど観たことない作品ばかり。劉冠廷に関してはフィルメックスで観た『無聲(むせい)』(20)だったのかも。
陳玉勲監督には、『熱帯魚』、『ラブ ゴーゴー』でインタビューしています。
興味ある方はアクセスしてみてください(暁)。
『熱帯魚』http://cineja-film-report.seesaa.net/article/468743078.html
『ラブ ゴーゴー』http://cineja-film-report.seesaa.net/article/468765261.html

第 57 回台湾アカデミー賞(金馬奨)最多 5 部門受賞
(作品賞、監督賞、脚本賞、編集賞、視覚効果賞)
第 25 回釜山国際映画祭 オープンシネマ部門 正式出品

2020年/台湾/カラー/シネスコ/119分/中国語
配給:ビターズ・エンド
(C)MandarinVision Co, Ltd
https://bitters.co.jp/ichi-kano/
★2021年6月25日(金)新宿ピカデリーほか全国ロードショー
posted by shiraishi at 19:44| Comment(0) | 台湾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年04月18日

風が踊る [デジタルリマスター版](原題:風兒踢踏踩)

thumbnail_「台湾巨匠傑作選2021_侯孝賢監督デビュー40周年記念<ホウ・シャオシェン大特集>.jpg

監督・脚本:ホウ・シャオシェン
出演:フォン・フェイフェイ、ケニー・ビー、アンソニー・チャン、メイ・ファン

CMの撮影で澎湖島を訪れた女性カメラマン・シンホエ(フォン・フェイフェイ)は、事故で視力を失った青年チンタイ(ケニー・ビー)と知り合う。その後ふたりは台北で偶然再会を果たし、シンホエはなにかとチンタイの世話を焼いてしまう。チンタイは角膜移植が決まり、成功すれば目が見えるようになる。シンホエはCM監督のローザイ(アンソニー・チャン)と結婚する予定だったが、チンタイの人柄に惹かれていき、どちらにもはっきり伝えることができない。

「台湾巨匠傑作選2021_侯孝賢監督デビュー40周年記念<ホウ・シャオシェン大特集>」のうちの1本。公開当時はまだ香港のエンタメ作品を観ていて、台湾モノは後回し。このたび初めて観た作品です。香港映画でお馴染みのケニー・ビー、アンソニー・チャンが出演していて、あらまあと懐かしくなりました。当時アイドルだったというフォン・フェイフェイが、ちゃっかりして明るいシンホエに扮して可愛らしいです。服装や笑いをとるところが時代を感じさせますが、澎湖島や台北、シンホエの故郷の鹿谷の暮らしが垣間見られます。親と娘、男性と女性の結婚観など、今も昔も変わらないエピソードが織り込まれています。(白)

『風が踊る』(1981年)は、ホウ・シャオシェン監督のデビュー作『ステキな彼女』(1980年)と同時期に観た記憶がありました。調べてみたら、日本初公開は『風が踊る』1998年2月14日、『ステキな彼女』1998年2月7日でした。
どちらの作品にも、フォン・フェイフェイ、ケニー・ビー、アンソニー・チャンの3人が出ていて、観た当時、話がなんだかごちゃまぜに記憶されたように思います。
はっきり覚えているのは、阿B(ケニー・ビー)が爽やかだったということだけ。

ケニー・ビーも、アンソニー・チャンも、ウィナーズ(温拿)という1970年代に「香港のビートルズ」とも言われて人気だった5人組のメンバー。私がレスリー・チャンに落ちる前にファンだったアラン・タムがウィナーズのボーカルなので、映画を観たときに二人を知っていた次第。
『ステキな彼女』『風が踊る』の2本を1998年に観て、それからしばらくして香港に行った時に、たまたまウィナーズの再結成コンサートを香港コロシアムでやってました。空いていた席が、ステージの真後ろ。彼らの背中を見る位置だったのですが、ちゃんと時々振り返って顔を見せてくれました。

今回、23年ぶりに『風が踊る』を観たわけですが、最初はほんとに観たのかしらと思う位、記憶が蘇りませんでした。絶対観た!と、確信を持てたのが、ケニー・ビー演じるチンタイが、目の見えない人たちの為に読み聞かせを頼んでいる人の都合が悪くて、急遽、シンホエを連れていって、本(カラマーゾフの兄弟!)を読んでもらった場面。目の見えない人たちが一生懸命点字タイプを打ちながら聞いている姿をはっきりと覚えていました。
今回の<ホウ・シャオシェン大特集>の中に、『ステキな彼女』はありませんが、こちらもいつかまた観てみたいです。(咲)


中華圏の監督としては侯孝賢監督の作品が一番好きな時期もありました。特に初期の頃の抒情性のあるノスタルジックな作品が好きでした。なので、日本で観ることができた作品はほとんど観ていたので、この作品も観ていたつもりだったのですが、試写で確認したら観たことがなく、今回のリマスター版で初めて観ました。
この作品は侯孝賢監督の2作目の作品。1981年の作品で、服装や髪形、風俗、村や町の雰囲気、乗り物、建物などに時代を感じますが、侯孝賢の作品に流れる映画の雰囲気、ほっこりさせるものがありました。侯孝賢監督の作品といえば、海辺や山間部の田舎町、いたずら好きな子供たち、その子供たちの失敗、あるいはずっこけ風景、学校、授業風景、緑が多いところを走るローカル線、古い列車、単線の線路、バイクの疾走、そんなシーンを思い浮かべますが、その後の作品につながる片りんもたくさん出てきました。
第一作目の『ステキな彼女』同様、当時人気歌手だった鳳飛飛(フォン・フェイフェイ)と鐘鎭濤(ケニー・ビー)、それに陳友(アンソニー・チェン)が出演していたけど、まだそんなに名を知られていない侯孝賢監督の作品に、そういう人たちが出ていたということが今となっては驚き。あるいはそういう人たちが出てくれたことで、監督の名が知られるようになっていった部分もあるのか? 私は『悲情城市』で侯孝賢監督のことを初めて知ったので、あの頃の台湾や香港の芸能界事情にはうとかったから、そのへんのいきさつとかはわからない。
でも侯孝賢監督には先見の明というか、撮影地を後に有名にさせる何かがあるのかも。撮影クルーがCM 撮影のために訪れた澎湖(ポンフー)島。この島はのちの『風櫃(フンクイ)の少年』の撮影地にもなりました。映画に写っていたのはひなびた島だったけど、今やこの島は観光地として賑わっているらしい。『悲情城市』に出てきた九份も、金山の賑わいが去って、寂れた街だったけど、この映画以降ここも観光地になり、今や観光客がたくさん訪れ、土日は人込みがすごくて歩くのも思うようにいかない状態になっている。『恋恋風塵』に出てきた十分駅や駅のそばの列車が人家すれすれに走っていた十分老街も、今やお土産屋が並ぶ一大観光地になっている。侯孝賢監督作品が好きで、撮影地である九份と十分は、これらの映画以降5回も訪れた私です(笑)。大好きな侯孝賢監督の映画でしたが、残念ながら『好男好女』あたりからあまり好きではなくなりました(暁)。


1981 年/台湾/シネスコ/92 分
原題:風兒踢踏踩
英題:Cheerful Wind ©1982 Kam Sai (H.K.) Company /
© 2018 Taiwan Film Institute. All rights reserved.
配給:オリオフィルムズ
提供:竹書房/オリオフィルムズ
https://taiwan-kyosho2021.com/
★2021年4月17日(土)より~6 月 11 日(金) 新宿 K’s cinema 他順次上映
posted by shiraishi at 01:30| Comment(0) | 台湾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

台湾巨匠傑作選2021 侯孝賢監督40周年記念 ホウ・シャオシェン大特集

2021年 4月17日(土)〜 6月11日(金)
新宿K's cinema他順次上映 上映スケジュール

メインビジュアル_台湾巨匠傑作選2021_侯孝賢40周年記念ホウ・シャオシェン大特集s_R_R.jpg


今年の「台湾巨匠傑作選2021」は、2020年に映画監督生活40周年を迎えた侯孝賢監督(ホウ・シャオシェン)の特集上映が行われる。侯孝賢の、監督、主演、プロデュース作品、オリビエ・アサイヤス監督による貴重なドキュメンタリーを含む全22作品が上映される。今回の特集は、同年11月に中華圏映画のアカデミー賞と称される金馬奨の名誉賞(終身成就賞)を受賞したことを記念したもの。また、ホウ・シャオシェン特集のほか、「隠れた名作台湾映画発掘!貴重な未公開映画上映&解説」も開催される。

侯孝賢が主演した「台北ストーリー」.jpg
侯孝賢が主演した「台北ストーリー」(監督エドワード・ヤン)の劇中衣装を洋服店で物色中のヤンと侯孝賢_写真提供:朱天文

上映されるのは、台湾ニューシネマの誕生と表される『坊やの人形』から、世界の映画人から評価された『風櫃(フンクイ)の少年』『冬冬(トントン)の夏休み』『童年往事 時の流れ』といった初期傑作群。89年にベネチア国際映画祭金獅子賞受賞し、中華圏映画初の世界三大映画祭グランプリ受賞の快挙を成し遂げた大作『悲情城市』は、35ミリフィルムでの上映。

監督デビュー2作目『風が踊る』はデジタルリマスター版での披露となり、『フラワーズ・オブ・シャンハイ』は4Kデジタルリマスター版で劇場初上映。プロデュース作からは、『One Day いつか』(監督:ホウ・チーラン)を日本初上映、今夏劇場公開予定の『日常対話』(監督:ホアン・フイチェン)を特別上映。

『風が踊る』
『風が踊る[デジタルリマスター版]』メイン_R_R.jpg
(C)1982 Kam Sai (H.K.) Company c 2018 Taiwan Film Institute. All rights reserved.

『HHH:侯孝賢』
「HHH:侯孝賢」メイン_R_R.jpg
(C)AMIP-La Sept ARTE-INA-France 1997

「隠れた名作台湾映画発掘!貴重な未公開映画上映&解説」は、台湾映画コーディネーター・江口洋子さんが選んだ5作品を披露。『大仏+』(監督:ホアン・シンヤオ)、『狂徒』(監督:ホン・ズーシュアン)、『よい子の殺人犯』(監督:ジャン・ジンシェン)、『High Flash 引火点』(監督:ジャン・ジンシェン)、『アリフ・ザ・プリン(セ)ス』(監督:ワン・ユーリン)がラインナップされ、各回上映終了後、江口さんの解説映像を上映する。

『よい子の殺人犯』(最乖巧的殺人犯)
よい子の殺人犯_R.jpg
ⓒ 2019 ANZE PICTURES Co. , Ltd. ALL RIGHTS


『High Flash 引火点』(引爆點)
『High Flash〜引火点』.jpeg
Ⓒ闊世電影股份有限公司

台湾巨匠傑作選2021 侯孝賢監督40周年記念 ホウ・シャオシェン大特集
公式HP 
◆You tube URL

「騒豆花 新宿ミロード店」タイアップ
配給:オリオフィルムズ 提供:竹書房/オリオフィルムズ
配給・宣伝協力:トラヴィス 
協力:竹書房|松竹|ぴあ|熱帯美術館ENGAWA|山形 国際ドキュメンタリー映画祭|アクセスエー|A PEOPLE CINEMA|太秦|ディメンション|華文創股份有限公司|
貴金影業傳媒股份有限公司|時光草莓電影有限公司| 安澤映畫有限公司|闊世電影股份有限公司|蔓菲聯爾創 意製作有限公司|東京国際映画祭|アジアンパラダイス| 台湾映画同好会(順不同)
協賛:騒豆花 新宿ミロード店
後援:台北駐日経済文化代表処台湾文化センター

posted by akemi at 01:20| Comment(0) | 台湾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年01月17日

越年 Lovers

劇場公開 2021年1月15日 劇場情報
etsunen_poster_B1_2020.jpg
©2020 映画「越年」パートナーズ

監督・脚本:郭珍弟(グオ・チェンディ)
プロデューサ::片原朋子 吉村和文 饒紫娟 陳世庸
美術:陳炫劭 遠藤雄一郎  VFX:嚴振欽
照明:譚凱富  衣裳指導:黃中觀 宮本まさ江
サウンドデザイン:羅頌策
編集:陳博文
音楽:トマ・フォゲンヌ
原作:岡本かの子「越年 岡本かの子恋愛小説集」(角川文庫)/「老妓抄」(新潮文庫)

出演 役柄(俳優名)
第1部
シャオラン(ヤオ・アイニン)インシューにビンタされた会社員
インシュー(オスカー・チュウ)シャオランをビンタした元同僚
イエナ(レニー・リー)おせっかいなシャオランの同僚
第2部
佐藤寛一(峯田和伸)太郎の幼なじみ
西村碧(橋本マナミ)太郎の恋人
文月(菜葉菜)斎藤先生の娘
太郎(結城貴史)寛一の幼なじみ
第3部
モーリー(ユー・ペイチェン)
チェンナン(ウー・ホインシュウ)

岡本かの子の小説を元に、日本、台湾、マレ ーシアの年越しの風景を舞台に、恋に不器用な3組の男女がが織りなす3つのオムニバス物語。素直になれない風変わりな恋が描かれる。

第1話 台北。会社の帰り、エレベーターに乗ろうとしたら、いきなり同じ会社の男性インシューにビンタされた女性シャオラン(ヤオ・アイニン)。このシーンから始まる。次の日会社に行ったらインシューは前日でやめていた。おせっかいな同僚の女性イエナにあおられ、インシューが住んでいるという迪化街へ二人で探しに行く。なぜ、いきなりビンタをくらったかわからず、会社に訴えるか仕返しするか、二人はインシューを探し歩く。二人はインシューをみつけられるのか。なぜ彼はシャオランをなぐったのか。

第2話 雪の山形が舞台。東京で暮らす寛一の元に親友の太郎から電話があり、故郷の山形に向かう。山形に久しぶりに帰った寛一は幼なじみで初恋相手の碧と数十年ぶりに再会する。斎藤先生の家に幼なじみが集まり新年会。蔵王に行ったり、碧の実家の西村写真館を訪ねたりするが、太郎とは連絡がつかない。山形弁と山形のおいしいものが出てきて、山形県人でなくても郷愁を感じた。太郎は何のために寛一を山形に呼び出したのか。しかし、肝心の太郎はいない。二人の間の進展はあるのか。

第3話 台湾彰化。亡き母が営んでいた食堂を片付けるモーリー。モーリーは片付けながら幼い頃を思い出していた。店には客がいっぱいいて、料理を客に出すのを手伝っていた。彰化は牡蠣の養殖が盛んで、店の自慢料理は牡蠣そうめん。みんなこれを食べていた。チェンナンがやってきて作業を手伝う。水槽には魚がいる。風が強い場所らしい。そして雨まで降ってきた。雨音や雨漏りの中、二人はたわいもない話をする。モーリーは「ここに長くいるつもりはない。この家を売るつもりだから、水槽の魚たちをお願い」と頼む。チェンナンは「本心なのか?」と聞く。そしてトラックで帰っていくのだが…。

恋なのか、そうでないのか、そんな恋心の目覚めのようなものが描かれる。でも、こんな恋があってもいいと思わせてくれる。年越ししたら新しい人生に出会えるかもしれない。
第一話。私にとっては、去年行った台北の迪化街が出てきてびっくり。新型コロナウイルスの影響で海外旅行が制限される直前に台湾に行き、この問屋街にも行った。以前、ここの朝市にも行ったことがある。乾燥海産物がたくさん並んでいた。そして、第一話の伏線に中国の往年の女優・歌手である白光(パイクァン)の映像やマレーシアにある白光の墓地が出てきた。もしかしたら流れていた曲も白光のものだったのかも。調べてみたけど使われた曲の情報はわからずだった。
第二話の舞台は山形で、このところ続けて行っている山形国際ドキュメンタリー映画祭の時に行く場所や食べ物などが出てきてうれしかった。山形駅前、山形交通のバスセンター、霞城公園、蔵王スキー場地蔵岳山頂 樹氷、玉こんにゃくと稲花(いが)餅などなど。しかもこの稲花餅を食べていた喫茶店は、私も入った喫茶店だった。そこで私も稲花餅を食べた(笑)。もっとも、その時期はそこしかやっている店がなかった。それに、渋谷駅のシーンで岡本かの子の息子である岡本太郎の絵が出てきた。そこも、私がいつも通るところ。
第三話に出てくる彰化は行ったことがない場所だったけど、「牡蠣そうめん」がおいしそうだった。食べてみたい。新型コロナ感染の非常事態で、あちこち出かけられないので、旅気分を楽しみながらこの映画を観た。(暁)。


ちなみに2020年最後に観た映画が『越年 Lovers』でした。その時の感想をシネマジャーナルHP スタッフ日記に書いています。
・2020年最後に観た映画『越年 Lovers』と2021年最初に観た映画『きらめく拍手の音』(暁)
http://cinemajournal.seesaa.net/article/479577610.html

台湾、日本、マレーシアの年越しの風景の中で不器用な3組の男女が織りなす恋物語をオムニバスで綴っています。岡本かの子が80年ほど前に書いた小説「越年」と「家霊」に着想を得た台湾の女性監督・郭珍弟が脚本を書きました。
第1話は男性社員が女性社員を帰りしなに平手打ちすることから話がスタート。好きな子に意地悪をしたくなる男の子心理はいくつになってもかわらないもの? 女性には理解できませんね。
第2話は深々と降り積もる雪景色が美しいのですが、見ている方まで寒くて凍ってしまいそう。ともに山形出身の橋本マナミと峯田和伸が互いに想いあっているのに言葉にできないじれったさをじんわりと魅せてくれます。
第3話は(暁)さんも書いているように牡蠣そうめんが美味しいそう。どうやって作るのか、知りたくなります。(堀)


公式サイト:http://etsunen.com
製作:ジェイアンドケイ・エンタテインメント ダイバーシティメディア
花千樹電影有限公司 現代電影沖印股份有限公司 台北市電影委員會
(財)台北市文化基金會 臺北市文化局 臺北市政府
協力:彰化縣 山形県 山形フィルムコミッション
配給・宣伝:ギグリーボックス
後援:台北駐日経済文化代表処
2019年製作/116分/G/台湾・日本合作 中国語 日本語/シネマスコープ


posted by akemi at 11:57| Comment(0) | 台湾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする