2023年10月19日

毒舌弁護人〜正義への戦い〜  原題:毒舌大狀 英題:A Guilty Conscience

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(C)2022 Edko Films Limited, Irresistible Beta Limited, the Government of the Hong Kong Special Administrative Region. All Rights Reserved.

監督/脚本:呉煒倫(ジャック・ン)
撮影監督 : アンソニー・プン
製作:ビル・コン、アイヴィ・ホー
出演:黄子華(ダヨ・ウォン、ウォン・ジーワー) 、謝君豪(ツェ・クワンホー) 、王丹妮(ルイーズ・ウォン)、廖子妤(フィッシュ・リュウ)、王敏徳(マイケル・ウォン)、栢天男(アダム・パック)、楊偲泳(レンシ・ヨン)、何啟華(ホ・カイ・ワ)

ラム・リョンソイ(ダヨ・ウォン)は治安判事として50代になるまで些細な事件の処理に追われる日々を送ってきたが、新しい上司の気分を害して、職を失ってしまう。そんなラムに、友人が法廷弁護士として復活することを勧めてくれる。弁護士としてはじめて手掛けたのは母子家庭で娘が亡くなり、母親が虐待による過失致死で起訴された事件。ラムは、若い女性法廷弁護士のフォン・カークワンと組み、法廷に立つ。一見、複雑に見えない事件だった。母親ツァン・キッイ(ルイーズ・ウォン)は、娘が重傷を負った夜、愛人であるチュン・キンイ医師(アダム・パック)も現場にいたと供述。ラムはチュン・キンイに母親が無実である証言をするよう求めていたが、証言台に立った彼は異なる証言をし、ツァン・キッイは禁錮17年の刑に処せられてしまう。
2年後、ラムは法廷弁護士を辞め、公共の不正行為を専門とする法律事務所を運営している。何をしていても、ツァン・キッイの裁判での失敗が頭を離れない。そんなある日、ツァン・キッイが不利になる証言をしたチュン・キンイが「ツァン・キッイは真の犯人ではない」という遺書をのこして自殺してしまう。ラムとフォンは、ツァン・キッイの再審請求をする・・・

チュン・キンイの妻、チュン・ニンワー(フィッシュ・リウ)は、香港の経済界を牛耳る名門一族出身。チュン・キンイが証言を翻したのも、一族の権威や利益を守るためだったようです。
若いけれど利発な女性法廷弁護士フォン・カークワン(レンシ・ヨン)が、ラムに証言書面を取っておけと言っていたにもかかわらず、ラムは取ってなかったのです。証言書面があれば、証言を変えられた場合に弁護側も守られるという次第。その失敗を心に引きずったラムが、再審裁判の最後に奮う熱弁が心に残ります。
古くからの香港映画ファンとしては、チュン家の顧問弁護士役で登場した王敏德(マイケル・ウォン)の悪役ぶりに目を見張りました。 『狼たちの絆(縦横四海)』(1991)、 『キラーウルフ 白髪魔女伝(白髪魔女傅)』 (1993)、『月夜の願い(新難兄難弟)』(1993)などでの爽やかなマイケル・ウォンを懐かしく思い出しながら、流れた年月を感じた次第です。 『毒舌弁護人〜正義への戦い〜』は、あの頃の香港映画とは違うタイプの、新しい今時の香港映画といえそうです。2023年の旧正月に公開され、香港映画史上初の1億香港ドルを突破し、歴代興収第1位(※2023年9月1日)に輝いています。(咲)


2023年/香港/カラー/シネスコ/133分/5.1ch
日本語字幕:鈴木真理子
配給:楽天 配給協力:シネメディア
宣伝協力:活弁シネマ倶楽部
公式サイト:https://r10.to/HP_DokuzetsuRmovie
★2023年10月20日(金)よりシネマート新宿ほか全国順次ロードショー
posted by sakiko at 04:27| Comment(0) | 香港 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年07月08日

星くずの片隅で   原題:窄路微塵  英題:The Narrow Road

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(C)mm2 Studios Hong Kong


監督:ラム・サム(林森)(『少年たちの時代革命』共同監督)
脚本:フィアン・チョン(鍾柱鋒)
音楽:ウォン・ヒンヤン(黃衍仁)
出演:ルイス・チョン(張繼聰)、アンジェラ・ユン(袁澧林) (『宵闇真珠』)、パトラ・アウ(區嘉雯)、トン・オンナー(董安娜)

2020年、コロナ禍でシャッターが降り静まり返った香港。清掃会社「ピーターパンクリーニング」を営んでいる中年で独身のザク(ルイス・チョン)は、品薄で高騰する洗剤に頭を悩ませながら、消毒作業に追われる日々を送っている。時折、リウマチを患う母(パトラ・アウ)の様子を見に行くが、悪態をつき口は達者だ。
人手が必要になりアルバイト募集のチラシを貼りだしたところ、派手な格好の若い女性キャンディ(アンジェラ・ユン)がやってくる。未経験の上に、幼い娘ジュー(トン・オンナー)を一人で育てているという。ザクは、家賃滞納で追い出されたキャンディ母娘に、寝場所を提供する。そんなキャンディだったが、慣れない清掃の仕事を頑張ってこなし始める。だが、ある日キャンディがジューのために子供用のマスクを客の家から盗んでしまい、ザクは大事な顧客を失ってしまう。ザクはキャンディを解雇するが、幼い娘を抱えるキャンディを見かねて再雇用する。心を入れ替え仕事に打ち込んでいくキャンディに、ザクは心惹かれていく。そんな折、ザクの母が急死してしまう。葬儀中は休業するというザクに、任せてほしいとキャンディは葬儀にザクを送り出す。娘を連れ、ひとりで仕事に張り切るキャンディ。しかしジューがうっかりこぼしてしまった洗剤をきっかけに、会社は窮地に追いやられることになる・・・

コロナ禍ならではの物語と思ったら、脚本の構想は2018年に始めたものとのこと。当初から主人公の仕事は現代社会に欠かせない清掃業に設定していたそうです。コロナが蔓延し、清掃の仕事はなくてはならない大事な仕事でありながら、さらに嫌がられ、担い手が不足するようになったのではないでしょうか。感染の危険があっても、請け負うしかない人たちの悲哀を思いました。ただただ感謝です。
人と人が接するのも難しいコロナ禍の中で、行き場のない若い母娘を気遣うザクの優しさにほろりとさせられました。コロナ禍の世界の各地で、こうした人と人との心の触れ合いがあったに違いないとも思わせてくれました。(咲)


香港に最後に行ったのはいつだったろう。2017年かな。もう5年も行っていない。2020年にはコロナで行けなくなってしまった。それに中国の締め付けで香港の自由はどうなっていくのか、そんな香港で暮らす庶民の物語。林森監督の前作『少年たちの時代革命』は、民主化運動の中でもがく若者、市民たちのことを画いた作品だったが、この作品もまた、香港の街の片隅で生きている庶民の物語。自身、ただでさえ苦しい清掃業の中、仕事をなくし、幼い娘を抱えた若い女性をやとうことになったザク。問題が次から次へと出てくるが、突き放さずに見守る。いかにも香港らしい人情物語だけど、こういう時期に、この映画が日本で公開されることが嬉しい。もう少ししたら、また香港に行って、この映画に出てくるような街角を訪ねてみたい(暁)。

第18回大阪アジアン映画祭コンペティション部門出品作品

2022年/香港/カラー/DCP/5.1ch/115分
配給:Cinema Drifters、大福、ポレポレ東中野
公式サイト:https://hoshi-kata.com/
★2023年7月14日(金)より TOHO シネマズ シャンテ、 ポレポレ東中野他全国順次公開



posted by sakiko at 20:27| Comment(0) | 香港 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年06月08日

リファッション~アップサイクルでよみがえる服たち~  原題:reFashioned

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監督:ジョアンナ・バウワーズ
プロデューサー:ケイト・フレミング・デイヴィス
音楽:ホー・リン・タン
出演:エドウィン・ケー、サラ・ガーナー、エリック・スウィントン、ヴァネッサ・チョン、ロナ・チャオ、エリック・バン

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世界有数の人口密集都市・香港。膨大な廃棄物の埋め立て地で毎年地形図が変わるほど。もう埋め立てるには限界に達している。そんな香港で、廃棄衣料から新たな服を作り出す技術、高級子供服の古着販売や、ペットボトルのリサイクルなど、持続可能な社会を作ろうとする3人の香港の人びとの挑戦を記録したドキュメンタリー。

「香港繊維アパレル研究所(HKRITA)」CEOエドウィン・ケー
香港政府のイノベーション技術委員会から資金提供を受け、理工大学が組織する研究所。
香港の繊維メーカーNOVETEXと共に廃棄衣料からテクノロジーにより水と薬品を使用せず糸にし、新たな服にアップサイクルする画期的な新技術を開発。

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ファッションバイヤーのサラ・ガーナー。高級子供服の古着を販売するオンライン・プラット・フォーム「Retykle」を創業。

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香港で分別廃棄されていないペットボトルのリサイクルに挑戦するエリック・スウィントン。ごみ回収業の高齢者に公正な賃金を支払い、ペットボトルを回収して織物などにアップサイクルすることで、香港のプラごみ問題と社会問題を同時に解決することを模索。
香港ではペットボトルを糸に変えることができないことに気づき、ペットボトルを輸入してくれる国を見つけるためにアジア中を必死に探す。


本作を通じて、香港ならではの事情を知ることができました。
1960年代、政情不安から、上海から縫製工場の経営者たちが台湾経由香港へ。エドウィン・ケー氏も上海から来た家系。当時30社以上あった縫製工場は、すべて上海出身者の経営。今は本土のほうがコストが安いため、ほとんどが閉鎖したと語っていました。
サラ・ガーナーは、成長の早い子供がすぐに同じ服を着られなくなるという母親としての経験から起業。ところが、中華圏では伝統的に古着は好まれないことを知ります。「Retykle」で働く香港人の女性が、「中国人は、前の持ち主の不運を引き継ぎたくないから」と理由を明かしてくれます。新世代はエコ意識が強く、偏見もなくなってきているとのこと。
成長の止まった私たち大人は、使い捨てにするファストファッションでなく、多少高くても良質の衣服を大切に何年も着たいものだと思いました。
そして、ペットボトル。便利ですが、回収するにも莫大な費用がかかることに驚かされます。日本では少なくとも回収ボックスや地域での回収システムは整備されていますが、香港では高齢者の廃品回収を営む人たちに委ねられているとのこと。さらに香港ではリサイクルできないので、運搬費をかけて外国に持っていかなければならないことに驚きました。
持ってこられた国にも処理しなければいけないペットボトルがあるはず。世界中の膨大なペットボトルの量を思うと、便利だけど作られるべきでなかったと!

なお、本作はジョアンナ・バウワーズ監督はじめ、撮影クルーのほとんどが女性。
作り手の環境問題への意識の高さを感じさせてくれる作品です。(咲)


2021年/香港/84分/英語・北京語・広東語
配給・宣伝:アップリンク
©CHEEKY MONKEY PRODUCTIONS ASIA LTD 2021
公式サイト:https://www.uplink.co.jp/refashioned/

エシカル・ライフ・シネマ特集『ミート・ザ・フューチャー~培養肉で変わる未来の食卓~』『リファッション~アップサイクルでよみがえる服たち~』
★2023年6月9日(金)よりYEBISU GARDEN CINEMA、アップリンク吉祥寺で公開



posted by sakiko at 13:29| Comment(0) | 香港 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年06月07日

エシカル・ライフ・シネマ特集『ミート・ザ・フューチャー~培養肉で変わる未来の食卓~』『リファッション~アップサイクルでよみがえる服たち~』

エシカル・ライフ・シネマ特集
食糧危機や増え続ける廃棄物など、私たち人類を取り巻く様々な問題。
「持続可能な社会にテクノロジーが変える」をテーマに、2作品を上映する特集です。
いずれも女性監督による作品。
配給・宣伝:アップリンク
★2023年6月9日(金)より恵比寿ガーデンシネマ、アップリンク吉祥寺にて公開


『ミート・ザ・フューチャー〜培養肉で変わる未来の食卓〜』  原題:Meat the Future
監督:リズ・マーシャル
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© 2023 LIZMARS PRODUCTIONS INC.

動物の細胞から肉を育てる培養肉を開発した元心臓専門医でインド出身のウマ・ヴァレティ博士を中心に、食糧危機や環境問題を考えるドキュメンタリー。
2020年/カナダ/84分/英語・ヒンディー語
公式サイト:https://www.uplink.co.jp/mtf/
シネジャ作品紹介

『リファッション~アップサイクルでよみがえる服たち~』  原題:reFashioned
監督:ジョアンナ・バウワーズ
スクリーンショット 2023-04-25 12.29.37.png
©CHEEKY MONKEY PRODUCTIONS ASIA LTD 2021

世界有数の人口密集都市・香港。膨大な廃棄物の埋め立て地で毎年地形図が変わるほど。
そんな香港で、高級子供服の古着販売や、ペットボトルのリサイクルなど、持続可能な社会を作ろうとする3人の香港の人びとの挑戦を記録したドキュメンタリー。
2021年/香港/84分/英語・北京語・広東語
公式サイト:https://www.uplink.co.jp/refashioned/
シネジャ作品紹介

posted by sakiko at 04:28| Comment(0) | 香港 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年05月14日

私のプリンス・エドワード(原題:金都/英題:My Prince Edward)

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監督・脚本:ノリス・ウォン
出演:ステフィー・タン(フォン)、ジュー・パクホン(エドワード)、バウ・ヘイジェン、ジン・カイジエ、イーマン・ラム、カーキ・サム

香港のプリンス・エドワード地区の金都商場(ゴールデンプラザ)では、結婚衣装をはじめ結婚に関するものが格安で揃えられる。このモール内のウェディングショップで働くフォンは、写真館のオーナーのエドワードと同棲中。結婚を口にするエドワードだったが、フォンには彼に話していない秘密があった。10年も前に中国大陸の男性と偽装結婚をしていて、その後の離婚手続きが済んでいないことがわかったのだった。フォンは、周りに祝福されてエドワードのプロポーズを受けざるを得ず、離婚の手続きと結婚の準備を同時に進める羽目になってしまった。

「新世代香港映画特集2023」の1本。『縁路はるばる』と共にアラサー女性の結婚にまつわるお話。アメリカでグリーン・カードを手に入れるための苦労やドタバタを描いたアメリカ映画は観たことがありますが、香港映画では初めて見た気がします。それにしても友人と一緒にお金のために偽装結婚して、10年も?相手の居場所が不明だったということもあるけれど、これまで困ることはなかったのかしらん。
あっさり「夫」に再会してから、いつチェックの厳しいエドワードにばれるか観ていてヒヤヒヤしました。フォンを「ベイビー」と呼ぶ彼は、愛情深そうに見えますが、自分の囲いの中から女性が出るのを嫌うタイプです。甘えたい女性にはいいかもしれませんが、過ぎれば「うざい」。母親も息子にべったりで、結婚したらもっと不自由になりそうなフォン。さて、どうします?
2人の結婚観のちがいだけでなく、ビザや移民に憧れる大陸の男性の心情も見せています。『縁路はるばる』主人公のカーキ・サムが写真館の従業員としてこちらにも出演していました。
ノリス・ウォン監督の初長編作品。2020年の香港電影金像奨で新鋭監督賞、音楽賞を受賞しました。(白)



プリンス・エドワードって、どこ?と思ったら、漢字で書けば「太子」。尖沙咀から、彌敦道(ネーザンロード)をまっすぐ行ったどん詰まりが太子で、ちょっと手前の左手のビルのショーウィンドウにウェディングドレスが並んでいたのを思い出しました。そこが、この映画の舞台の金都商場。
プリンス・エドワードの地名は、アメリカ女性ウォリス・シンプソンと結婚するために王位を放棄したエドワード8世にちなんだもの。そこを舞台に繰り広げられる本作、人は、愛のためなら何を諦めることができるか? 逆に、愛していても、これは譲れない・・・ そんなことを考えさせられる物語です。
フォンは、偽装結婚した大陸の夫との離婚手続きをするために、福建省の省都・福州に赴くのですが、ここでの言葉は広東語でも普通話でもない福建語。いろいろな言葉が飛び交います。大陸の夫は、香港のIDが欲しくてフォンと結婚したので、IDが取れれば即、離婚すると応じてくれますが、なかなかスムーズにはいきません。そんな折、大陸の夫の彼女が妊娠したことがわかり、未婚のまま産んだ子は無戸籍になってしまいます。こちらも、さて、どうする?です。
「結婚せずに済む女性は、デキる女とレズビアンだけだと思う?」というフォンの言葉も気になりました。ノリス・ウォン監督は、「結婚は幸せをもたらすか?」を、女性ならではの視線で本作を描いています。もちろん、答えはそれぞれ! 正解はありません。(咲)



2019年/香港/カラー/シネスコ/93分/5.1ch/映倫G
配給:活弁シネマ倶楽部
c2019 MY PRINCE EDWARD PRODUCTION LIMITED. All Rights Reserved.
https://enro.myprince.lespros.co.jp/#modal
★2023年5月19日(金)新宿武蔵野館ほか全国ロードショー
posted by shiraishi at 14:01| Comment(0) | 香港 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする