2024年01月18日
緑の夜 原題:緑夜 英題:GREEN NIGHT
監督:ハン・シュアイ(韩帅)
出演:ファン・ビンビン(范冰冰)(『ブッダ・マウンテン ~希望と祈りの旅』)、イ・ジュヨン(「梨泰院クラス」『野球少女』『ベイビー・ブローカー』、キム・ヨンホ
韓国、仁川港国際ターミナル。保安検査場で働くジン・シャは、中国での苦難の過去から逃れ、配偶者ビザで韓国で暮らしている。ある日、中国・煙台行きのフェリーに搭乗しようとしている緑の髪の若い女性が怪しいと、靴を脱がせる。上司から、買い付けに行っている常連と聞かされる。
その日、帰りのバスに乗り遅れたジン・シャは、緑の髪の女に声をかけられ、一緒にタクシーに乗る。宿命的に出会った二人は、やがて犯罪に巻き込まれ、逃避行が始まる・・・
中国・山東省煙台市出身の女性監督ハン・シュアイが、対岸の韓国・仁川を舞台に描いた物語。
ファン・ビンビンも監督と同じく中国山東省の海辺の町・青島出身。久しぶりの映画復帰作。美人で派手なイメージのあるファン・ビンビンが、本作では陰のある控えめな女性を演じています。2ヶ月かけて韓国語のセリフを自然に話せるよう努力を重ねたそうです。また、イ・ジュヨンは中国語の発音を学んだ経験があるものの、妥協せず、何度も録音した自分のセリフを聴いていたとのこと。 言葉や文化背景の違う二人の女性の化学反応が本作の魅力です。暴力的で抑圧的な男どもを相手に、二人がどう出るかを見守りました。(咲)
2023年/香港/韓国語、中国語/カラー/92分
配給:ファインフィルムズ
公式サイト:https://midorinoyoru.com/
★2024年1月19日(金)より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町、渋谷シネクイントほか全国順次公開
2024年01月07日
燈火(ネオン)は消えず 原題:燈火闌珊 英題:A Light Never Goes Out
2024年1月12日(金)よりBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下、シネマート新宿他
全国順次公開 その他の劇場情報
第59回金馬奨最優秀主演女優賞(シルヴィア・チャン)
第96回米アカデミー賞国際長編映画賞香港代表作品
2022年の東京国際映画祭では『消えゆく燈火』のタイトルで上映され、中華圏映画ファンの観客の大きな話題になった作品。
台湾金馬奨で、主演のシルヴィア・チャンが『最愛』(1986年)以来36年ぶり3度目の主演女優賞に輝いた他、数々の賞を受賞。第 96 回アメリカのアカデミー賞国際長編映画賞の香港代表作品に選出された。その際、シルヴィア・チャンが語った「香港のネオンをふたたび灯しましょう!」という言葉と、香港ネオン職人たちの思いに共感し、邦題を『燈火(ネオン)は消えず』にした。
監督・脚本:曾憲寧(アナスタシア・ツァン)
製作:張艾嘉(シルヴィア・チャン
プロデユーサー:陳心遙(サヴィル・チャン)
撮影:梁銘佳(リョン・ミンカイ)
美術:莫少宗(アレックス・モク)
編集:陳序慶(ノーズ・チャン)
音楽:黃艾倫(アラン・ウォン)、翁瑋盈 (ジャネット・ユン)
出演
メイヒョン:張艾嘉(シルヴィア・チャン)
ビル:任達華 (サイモン・ヤム)
レオ:周漢寧(チャウ・ホンネン)ヘニック・チャウ
チョイホン(娘):蔡思韵(セシリア・チョイ)
香港では2010年の建築法等の改正以来、2020年までに9割ものネオンサインが姿を消したと言われる。香港独自の文化が少しづつ消えてゆく今、その灯を消すまいと奮闘する香港人の心意気と、ネオン職人たちによる映画のラストサプライズが大きな感動を呼んだ。
メイヒョン(シルヴィア・チャン)は、腕ききのネオンサイン職人だった夫のビル(サイモン・ヤム)の死後、夫のネオン制作工房の鍵をみつけた。工房に行ってみると見知らぬ青年レオ(ヘニック・チャウ)がいた。ビルの弟子だという。そしてビルがやり残した仕事があるという。最初は取り合わず、工房を閉めようとするが、レオに教わって自分もガラスでネオン細工をやってみる。そして、この技術を残すことと、夫が残した仕事とは何だったのかを調べ始める。夫がやり残したものがわかり、レオとともに最後のネオンを完成させようと決意する。香港の夜景の象徴だったネオンサインがほとんど消えた中で、CGで表現したり、職人が新たに作り直すなどしてネオンサインを再現。
妻役のシルヴィア・チャンは台湾出身、台湾・香港映画界で活躍してきた。『過ぎゆく時の中で』『妻の愛、娘の時』『レッド・バイオリン』などの作品に出演。監督作も8作あり、『妻の愛、娘の時』は、2017年台湾金馬奨監督賞を受賞している。夫役のサイモン・ヤムはモデル出身の俳優。『ワイルド・ブリット』『夜と霧(天水圍的夜與霧)』『ザ・ミッション 非情の掟』などに出演。娘役のセシリア・チョイは『返校 言葉が消えた日』で注目され、現在公開中の『香港の流れ者たち』にも出演。ヘニック・チャウは『アニタ』に出演。
私が初めて香港に行ったのは1994年。その時は、香港のメインストリートである彌敦道(ネイザンロード)にも、その他の道路にも、道にはみ出した看板(ネオンサインも含む)がずっと続いていて、その光景にびっくりした。夜になると光り輝き、きらびやかなネオンが派手さを競っていた。2階建てバスに乗り、それらの道を行くと、まるで頭にぶつかりそうになるくらいの感じだった。その後、3、4年に1回くらい行っていた。この30年のあいだに計13回香港に行っているが、この派手なネオンサインが2020年までの間に90%も無くなっていたということは、この映画を観るまで認識していなかった。2010年以降には3回くらい行っているが、道路にせり出した看板(ネオンサイン)はいつのまにかなくなっていたんですね。もっとも観光主体で行ったことはなく、コンサートや香港アカデミー賞の授賞式取材、香港映画祭などで行っているので、あまり街中を歩きまわったり、走り回ったりしてはいなかったので気がつかなかったというのもあるかもしれない。13回目、2018年に行った時、初めて観光らしきことをした。初めて銅鑼湾(コーズウェイベイ)ー 堅尼地城(ケネディタウン)間を2階建てトラム(電車)に乗って、トラム沿いの街の景色を楽しんだ。道路脇にはたくさんの店が続いていたけど、昔あった道路に飛び出た看板やネオンサインはなかった。こういうものは気にしていなければ、気がつかないものだとつくづく思った。
そういえば、1月4日に『いますぐ抱きしめたい』(1991年日本公開)のデジタルリマスター版を観に行った時に、この映画の中でいくつものネオンサインが出ていた。思えば、香港映画の中でたくさんのネオンサインを観てきた。今は映画の中でしか観ることができなくなってしまったネオンサイン。100万ドルの夜景とも言われる香港の夜景だが、象徴でありながら廃れゆくネオンサインそのものを題材にした映画はなかった。この作品は、とても良い題材であり、家族の物語だった(暁)。
公式HP https://moviola.jp/neonwakiezu/#modal
2022年/香港映画/103分
配給:ムヴィオラ
全国順次公開 その他の劇場情報
第59回金馬奨最優秀主演女優賞(シルヴィア・チャン)
第96回米アカデミー賞国際長編映画賞香港代表作品
2022年の東京国際映画祭では『消えゆく燈火』のタイトルで上映され、中華圏映画ファンの観客の大きな話題になった作品。
台湾金馬奨で、主演のシルヴィア・チャンが『最愛』(1986年)以来36年ぶり3度目の主演女優賞に輝いた他、数々の賞を受賞。第 96 回アメリカのアカデミー賞国際長編映画賞の香港代表作品に選出された。その際、シルヴィア・チャンが語った「香港のネオンをふたたび灯しましょう!」という言葉と、香港ネオン職人たちの思いに共感し、邦題を『燈火(ネオン)は消えず』にした。
監督・脚本:曾憲寧(アナスタシア・ツァン)
製作:張艾嘉(シルヴィア・チャン
プロデユーサー:陳心遙(サヴィル・チャン)
撮影:梁銘佳(リョン・ミンカイ)
美術:莫少宗(アレックス・モク)
編集:陳序慶(ノーズ・チャン)
音楽:黃艾倫(アラン・ウォン)、翁瑋盈 (ジャネット・ユン)
出演
メイヒョン:張艾嘉(シルヴィア・チャン)
ビル:任達華 (サイモン・ヤム)
レオ:周漢寧(チャウ・ホンネン)ヘニック・チャウ
チョイホン(娘):蔡思韵(セシリア・チョイ)
香港では2010年の建築法等の改正以来、2020年までに9割ものネオンサインが姿を消したと言われる。香港独自の文化が少しづつ消えてゆく今、その灯を消すまいと奮闘する香港人の心意気と、ネオン職人たちによる映画のラストサプライズが大きな感動を呼んだ。
メイヒョン(シルヴィア・チャン)は、腕ききのネオンサイン職人だった夫のビル(サイモン・ヤム)の死後、夫のネオン制作工房の鍵をみつけた。工房に行ってみると見知らぬ青年レオ(ヘニック・チャウ)がいた。ビルの弟子だという。そしてビルがやり残した仕事があるという。最初は取り合わず、工房を閉めようとするが、レオに教わって自分もガラスでネオン細工をやってみる。そして、この技術を残すことと、夫が残した仕事とは何だったのかを調べ始める。夫がやり残したものがわかり、レオとともに最後のネオンを完成させようと決意する。香港の夜景の象徴だったネオンサインがほとんど消えた中で、CGで表現したり、職人が新たに作り直すなどしてネオンサインを再現。
妻役のシルヴィア・チャンは台湾出身、台湾・香港映画界で活躍してきた。『過ぎゆく時の中で』『妻の愛、娘の時』『レッド・バイオリン』などの作品に出演。監督作も8作あり、『妻の愛、娘の時』は、2017年台湾金馬奨監督賞を受賞している。夫役のサイモン・ヤムはモデル出身の俳優。『ワイルド・ブリット』『夜と霧(天水圍的夜與霧)』『ザ・ミッション 非情の掟』などに出演。娘役のセシリア・チョイは『返校 言葉が消えた日』で注目され、現在公開中の『香港の流れ者たち』にも出演。ヘニック・チャウは『アニタ』に出演。
私が初めて香港に行ったのは1994年。その時は、香港のメインストリートである彌敦道(ネイザンロード)にも、その他の道路にも、道にはみ出した看板(ネオンサインも含む)がずっと続いていて、その光景にびっくりした。夜になると光り輝き、きらびやかなネオンが派手さを競っていた。2階建てバスに乗り、それらの道を行くと、まるで頭にぶつかりそうになるくらいの感じだった。その後、3、4年に1回くらい行っていた。この30年のあいだに計13回香港に行っているが、この派手なネオンサインが2020年までの間に90%も無くなっていたということは、この映画を観るまで認識していなかった。2010年以降には3回くらい行っているが、道路にせり出した看板(ネオンサイン)はいつのまにかなくなっていたんですね。もっとも観光主体で行ったことはなく、コンサートや香港アカデミー賞の授賞式取材、香港映画祭などで行っているので、あまり街中を歩きまわったり、走り回ったりしてはいなかったので気がつかなかったというのもあるかもしれない。13回目、2018年に行った時、初めて観光らしきことをした。初めて銅鑼湾(コーズウェイベイ)ー 堅尼地城(ケネディタウン)間を2階建てトラム(電車)に乗って、トラム沿いの街の景色を楽しんだ。道路脇にはたくさんの店が続いていたけど、昔あった道路に飛び出た看板やネオンサインはなかった。こういうものは気にしていなければ、気がつかないものだとつくづく思った。
そういえば、1月4日に『いますぐ抱きしめたい』(1991年日本公開)のデジタルリマスター版を観に行った時に、この映画の中でいくつものネオンサインが出ていた。思えば、香港映画の中でたくさんのネオンサインを観てきた。今は映画の中でしか観ることができなくなってしまったネオンサイン。100万ドルの夜景とも言われる香港の夜景だが、象徴でありながら廃れゆくネオンサインそのものを題材にした映画はなかった。この作品は、とても良い題材であり、家族の物語だった(暁)。
公式HP https://moviola.jp/neonwakiezu/#modal
2022年/香港映画/103分
配給:ムヴィオラ
2024年01月06日
シャクラ(原題:天龍八部之喬峰傳 Sakra)
監督・製作:ドニー・イェン
原作:金庸「天龍八部」
アクション監督:谷垣健治
出演:ドニー・イェン(喬峰)、チェン・ユーチー(阿朱)、リウ・ヤースー(阿紫)、ウー・ユエ(慕容復)、カラ・ワイ(阮星竹)、チョン・シウファイ(段正淳)、グレース・ウォン(馬夫人)、ドー・ユーミン(白世鏡)、レイ・ロイ(慕容博)、チョイ・シウミン(鳩摩智)
11世紀末、宋代の中国。丐幇(かいほう)の幇主・喬峯(きょうほう)は義に厚く、腕が立ち、誰からも慕われる英雄的な存在だった。だがある日、副幇の馬大元が殺され、馬の妻・康敏(こうびん)の証言により犯人の濡れ衣を着せられてしまう。しかも漢民族ではなく、契丹人であるという出自まで明かされ、丐幇を追放されることになった。
喬峯は抗弁することなく、自らを陥れた人間を探し出し、父母に会って出生の真実をただすため旅に出る。行く手には更なる罠が仕掛けられ、途切れることのない闘いが待ち受けていた!
金庸(きんよう)が自ら創刊した香港の新聞に連載執筆した武俠小説「書剣恩仇録」(1955)から「鹿鼎記」(1972)まで15作。「天龍八部」は8番目に発表されました。原作は大理の王子段誉、丐幇の喬峯、少林寺の僧虚竹、大燕国復興を悲願とする慕容復の4人が主に活躍し、書籍は8巻。テレビドラマでは50話もありますが、この作品はドニー・イェンが大好き!な喬峯にフォーカスしています。続編ができそうな予感。
喬峯は生まれ育ちからして悲劇が始まっているのですが、言葉少なく行動で見せる英雄好漢。数多の敵をものともぜず、バッタバッタとなぎ倒し痛快この上ありません。武俠アクションに慣れない方は「ありえねぇ~~~」と思うかもしれませんが、半分仙人というかスーパーヒーローでもあるので、なんでもありなのです。そこへもってきて、われらがドニー様の美しい決めわざ!大きな画面でお楽しみください。
香港に通い始めた90年代、当地で新作映画を観てはドラマのVCD(!)を買いあさっていました。東京で香港のテレビ番組のビデオが借りられるようになって、どんなに喜んだことか!ドラマには、人気スターが出演していて中国語字幕を頼りに観続けました。漢字の国で良かったと思ったものです。(白)
★谷垣アクション監督のメッセージはこちら
ドニー・イェンを初めて認識したのは、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ 天地大乱』でした。(1993年に日本公開されていますが、その前に映画祭で観た記憶が・・・) 李連杰(リー・リンチェイ)の敵役で、役柄から悪者のイメージで顔も怖かったのですが、格闘シーンが見事で凄いなと思ったのでした。なにより足さばきが綺麗! その後、イップ・マンを演じて、いい人のイメージが定着しました。本作のドニー様も、女性への気遣いもできる素敵な人物。金庸の武俠小説の真髄をたっぷり味わえる一作です。(咲)
2023年/香港・中国合作/カラー/シネスコ/130分
配給:ツイン
(C)2023 Wishart Interactive Entertainment Co., Ltd. All Rights Reserved
https://sakramovie.com/
★2024年1月5日(金)TOHOシネマズ渋谷ほか全国ロードショー
2023年12月16日
香港の流れ者たち(原題:濁水漂流 英題:Drifting)
監督・脚本:ジュン・リー(李駿碩)
プロデューサー:マニー・マン
撮影:レオン・ミンカイ
音楽:ウォン・ヒンヤン
出演:フランシス・ン(呉鎮宇)、ツェー・クワンホウ(謝君豪) ロレッタ・リー(李麗珍)
セシリア・チョイ(蔡思韵) 、チュー・パクホン(朱栢康)、 ベイビー・ボウ(寶珮如) 、ウィル・オー
刑務所を出たファイは、もといた街・深水埗(シャムスイポー)へ戻った。ラムじいが出所祝いにくれたクスリでシャバに戻ったのを実感する。ホームレス仲間たちの居場所は高架下。たびたびやってきていた食物環境衛生署が、ある日事前通告なしにファイたちの家財を全てゴミとして処分してしまう。彼らがゴミとみなしたものの中には、身分証明書や家族の思い出の品もあった。
ソーシャルワーカーの若い女性、ホーは新人だからか、熱心にホームレスのサポートをしてくれる。なくなったものは取り戻せないが、賠償と謝罪を求めて裁判をすることになった。ファイに病院に行くよう勧め、ラムじいの家族を探す。
ファイはハーモニカを吹く青年と仲良くなるが、彼は記憶も言葉も忘れていた。名前も思い出せない彼を「モク」と呼ぶことにした。二人は夜中に無人の建築中のビルに上って深水埗の街を見下ろす。ファイはモクに語りかける。
「深水埗は貧乏人が住む町だ。高級マンションを建てて、貧乏人はどこへ行く? 」
久々のフランシス・ン(香港映画ファンはジャンユーと広東語読み)の主演作が公開されます。2016年の東京国際映画祭で『シェッド・スキン・パパ』が上映され、渋谷の会場にW主演のルイス・クー(息子役)と舞台挨拶&トークをしたのを思い出します。フリルのついたシャツでお洒落でした。
この作品で演じるのは、うらぶれたホームレスのファイ、過酷な暮らしからか薬物中毒にもなっています。これまで見たことのないジャンユーにこういう役にもなりきれるんだと、ファンたちは驚くと同時に嬉しいのではないでしょうか。役の幅が拡がれば長く活躍できますから。
香港ノワールと呼ばれた犯罪もの、アクションものが人気だった香港映画界ですが、最近は市井の人々の暮らしを丁寧に描いた作品が目につきます。香港の薬師丸ひろ子と言われていたロレッタ・リーも出演。年齢を重ねても可愛らしいです。(白)
(白)さんが紹介している『シェッド・スキン・パパ』舞台挨拶でのフリルのついたシャツのフラさま。(ジャンユーを私は「さま」を付けてお呼びしています。)

東京国際映画祭 香港の名優フランシス・ンが脱皮して7変化!? 『シェッド・スキン・パパ』にほろり(咲)
深水埗といえば、電気街があって香港の秋葉原ともいわれ、安い洋服屋さんも並ぶいかにもの下町。啓徳空港があった頃は、深水埗の町の上を舐めるようにして飛行機が降りてくるので、よく飛行機のお腹を眺めにいったものです。1990年代、目立つ建物といえば、最上階に屋内ジェットコースター(今は休止)のある西九龍中心(ドラゴン・センター)位だったでしょうか。 フラさま演じるファイの「高級マンションを建てて、貧乏人はどこへ行く? 」の言葉に、変わりゆく深水埗を思いました。
フラさまはじめ、香港のスターたちがホームレスに徹するあまり、「街中の撮影でも彼らに気付く人はほぼいませんでした。そのおかげで撮影はやりやすかったです(笑)。おかげで撮影はトータル22日間で終わりました!彼らの熱演には感謝しかありません。」と、ジュン・リー監督が初日12月16日のオンライントークイベントで語ったそうです。私もその場に出くわしても、きっと気がつかなったと思うほど、皆なりきってました。(咲)
この映画は、実際の事件を元に作られたという。「和解金か?謝罪/尊厳か─!?」という選択をせまられたホームレスの人々。それぞれの思い、こだわり、人間としての尊厳を描いていた。
日本でも香港でも、ホームレス排除が進んでいる。開発という名の貧乏人排除。「貧乏人はどこへ行かされる?」である。深水埗には行ったことがないけど、香港の繁華街、尖沙咀(チムサッチョイ)でも新宿でも、以前に比べたらホームレスの姿を見なくなった。私の印象では1994年に初めて香港に行った時には、尖沙咀の裏街でも空き缶を積んだ大八車のような台車を押している人を見たが、数年後には見かけなくなった。それらの人たちが住むところを得たのならよかったと言えるけど、単に外国人が来るような街から排除されてしまったのか。この映画を観たら、実際のホームレスたちは減ったのではなく、やはり追い出されて「流れ者」として、あちこち散らばっただけなのかもしれないと思った。そして九龍城に住んでいたたくさんの人たちは、どこへ散らばって行ったんだろうと思いを馳せた。
それにしても呉鎮宇(ン・ジャンユー)のいっちゃっている演技すごい! 謝君豪(ツェー・クワンホウ)も、「どこ?」状態だった(笑)。(暁)
2021年/香港/カラー/DCP/112分/日本語字幕:小木曽三希子
配給:cinema drifters
(C)mm2 Studios Hong Kong
https://hknagaremono.wixsite.com/official
★2023年12月16日(土)よりユーロスペースほか全国ロードショー
2023年12月02日
香港怪奇物語 歪んだ三つの空間(原題:失衡凶間 Tales from the Occult)
「暗い隙間」
監督:ホイ・イップサン
出演:チェリー・ガン(ヤウガー)、ン・ウィンシー(アリス)
女子中学生のヤウガーは、親友のアリスと別れて帰る道で猫に出会う。後を追っていくと暗い隙間に入ってしまった。のぞき込んでぞっとする。人間の形のものが倒れていて、ヤウガーは見開かれた”眼”を見てしまう。男性の遺体だった。
数年後、シンガーになったヤウガーは、不倫相手の音楽プロデューサーと過ごすために新居に引っ越した。直後からあの”眼”が自分を見ている気がしてならない。
「デッドモール」
監督:フルーツ・チャン
出演:ジェリー・ラム(ヨン・ワイ)、シシリア・ソー(ガルーダ)
ヨン・ワイはライブで投資情報を配信している人気ライバー。新装オープンした「リードモール」で、配信中にガスマスクをつけている女性を目にした。このモールは、14年前大火災で、多くの死傷者を出した「ラッキーモール」の跡地に建設されたため、幽霊が出るという噂がある。巷の噂の真相を暴く女性ライバーのガルーダは、その怪奇現象の調査にやって来た。
「アパート」
監督:フォン・チーチャン
出演:リッチー・レン(ホー)、ソフィー・ン(アチー)
ネット小説家のアチーは、アパートの1階で幽霊に遭遇する。全身ずぶ濡れで顔面蒼白、溺死した人間に違いない。ほかの階に住む住人たちも目撃していた。住人と交わろうとしない謎の男、ホーが怪しいと意見が一致する。伝説のヤクザで何人も殺していると専らの噂なのだ。思い切って訪ねていくと、ホーも幽霊退治の仲間に入るという。しかし、一人、二人と命を落としていく。
香港の気鋭の監督3人が競作したオムニバスホラー。ホイ・イップサン監督が書いていた脚本から生まれた短編3本です。映像業界で長く活躍してきたホイ監督ですが、劇場公開作品の監督はこれが初だそうです。
「暗い隙間」でヤウガーが頼りにしていた叔父さんは、ローレンス・チェン。長くテレビ番組の司会をしていたので「香港の久米宏」と勝手に呼んでいたのを思い出します。
「デッドモール」のフルーツ・チャン監督は”香港返還三部作『メイド・イン・ホンコン』(1997)『花火降る夏』(1998)『リトル・チュン』(1999)で知られています。近年はプロデューサー業でも活躍。本作主演のジェリー・ラムが2002年11月イベントで来日したときの記事がシネジャのウェブにあります。みんな若々しいです。
「アパート」で住人ホー役のリッチー・レンは台湾の歌手・俳優。『星願 あなたにもういちど』(1999)では、想いを伝えるために現生に蘇ったオニオン役の好演で泣かせました。その後ジョニー・トー監督映画の常連になってからは強面な役も多くなり、すっかりベテランの風格です。こちらに日中カラオケ大会のゲストで来日したときの記事あり。2006年には単独でコンサートも開いています。とってもフレンドリーでチャーミングな人でした。
冬にホラーなのはちょっと残念ですが、香港ホラーも健在ですという3本。(白)
2021年/香港/カラー/シネスコ/112分
配給:武蔵野エンタテイメント株式会社
(C)2021 Media Asia Film Production Limited, Movie Addict Productions Limited All Rights Reserved
https://hk-kaiki-movie.musashino-k.jp/
X:@hk_kaiki_movie
メイキング映像はこちら
★2023年12月1日(金)よりシネマカリテにて公開中。他全国順次ロードショー