2024年08月29日

香港、裏切られた約束(原題:因為愛所以革命/英語題:Love in the Time of Revolution)

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監督・撮影:トウィンクル・ンアン(顔志昇)

1997年7月1日、香港はイギリスから中国に返還された。その後50年間(2047年まで)は「一国二制度」のもと、香港市民の自由は保護されるはずだった。しかし、じわじわと中国の姿勢は変わり、2019年6月「逃亡犯条例」改正をきっかけに、民主化を求める香港市民の抗議活動が始まる。
2019年天安門事件の追悼集会の日、トウィンクル・ンアン監督は初めてビデオカメラを手にする。以来、香港の自由と民主主義を守ろうと行動する最前線の若者たち、デモ隊を応援する人々、それぞれの物語を挟みながら貴重な記録を残した。ンアン監督はイギリスに亡命し、映像を編集して作品は完成した。

返還前から香港へ何度も出かけて街歩きや映画、コンサートを楽しんできました。中国返還の日はテレビのニュース映像を見つめ、以来どんな風に変わるのかと期待と不安がありました。その後のニュースやドキュメンタリーで観る香港の現状に胸が痛みました。
この映像は催涙弾を浴びるほど近距離から撮影されています。初めはドキュメンタリーを作るつもりでカメラを構えたのではありませんが、撮り続けるうちに残して知らせなくてはと思われた監督の覚悟が伝わってきます。自分のふるさとが変容し、住みづらくなっていくのは辛い。デモに参加した自分の子供のような年代の若者が警官たちに暴力をふるわれ、「あんたたちも香港人でしょ」と大人が猛烈に抗議しています。声をあげ、身体をはった香港の人々の姿に、沖縄の基地前で機動隊に排除されていく人たちが重なります。
観ていて泣けてきました。日本のデモや抗議運動に向ける取り締まりが厳しくなってきた感じがするこのごろ、決して他人事ではありません。世界中でさまざまな形での闘いがあります。渦中にある人たちのことばで共通しているのは、「関心を持って。忘れないで」ということ。

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ンアン監督

「アップリンク吉祥寺」での劇場試写後にロンドンのンアン監督が画面に登場しました。京都のアップリンクとも繋がって、観客とのQ&Aが行われました。通訳さんの声が聞き取れなくて、書き起こしができていません。本編の冒頭にも監督の挨拶映像がありますので、遅刻しないようにかけつけてください。ンアン監督の最初の挨拶は「この映画に関心を持って見に来てくださってありがとうございます」。(白)


香港の民主化運動で、道路での座り込みが起こったのは2014年9月~12月、この3ヶ月に及ぶ道路占拠行動は、「香港特別区行政長官選挙に親中派のみが立候補できる」という「選挙制度」の通達が2014年8月に中国共産党から出され、これに反発する人たちが行動を起こしたのです。これは単に選挙の問題だけでなく、香港人としてのアイデンティティを取り戻す闘いでもありました。この時、香港の人たちがこんなに長期間道路を占拠する行動に出たことに驚きました。これが雨傘運動の始まりでした。
この時、デモに参加する人たちの数が、あんなに膨れ上がるとは、まったく予想していませんでした。大体、香港の人たちというのはビジネス、お金をメインに考える人が多くて、こういう政治的なことにはあまり関心を持たないというのが、それまで一般的でした。でも2014年の雨傘運動で変わりました。
2019年の「逃亡犯条例」改正案は、香港を中国の権威主義的支配下に置き、香港人の自由を制約するものと、この時にも香港の人々はこの逃亡犯条例改正案に反対して立ち上がり大規模デモが起きました。
いくつかの民主化運動関連のドキュメンタリーやドラマが作られましたが、今では香港で観ることができなくなっているようです。下記に、日本で公開された香港の民主化運動関係の映画を紹介していますが、その作者は皆さん、「このことを自分は撮っておかなくてはいけない。それは未来のために歴史的事実を残すということです」と語っています。
そして、この『香港、裏切られた約束』のトウィンクル・ンアン(顔志昇)監督も、その思いで撮影していました。今は英国に逃れ、難民の形になっているようです。いつの日か本国でも上映される日が来ることを願っています(暁)


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アップリック吉祥寺のロビー

2022年/香港/カラー/116分
配給:アップリンク
c 2024 Dawn Workshop Ltd
https://www.uplink.co.jp/liberate_hong_kong/
★2024年8月30日(金)よりアップリンク吉祥寺、アップリンク京都にて公開中

返還後の香港関連作品、監督インタビュー記事はこちらです。

●作品紹介
『乱世備忘 僕らの雨傘運動』
(原題:乱世備忘)2018年公開
http://cinemajournal-review.seesaa.net/article/460532836.html

『デニス・ホー ビカミング・ザ・ソング』2021年公開
(原題:Denise Ho: Becoming the Song)
http://cinejour2019ikoufilm.seesaa.net/article/481745772.html

『時代革命』2022年公開
(原題:時代革命 /英語題:Revolution of Our Times)
http://cinejour2019ikoufilm.seesaa.net/article/490705719.html

『Blue Island 憂鬱之島』2022年公開
http://cinejour2019ikoufilm.seesaa.net/article/489656264.html

『少年たちの時代革命』2022年公開
 (原題:少年/英語題:May You Stay Forever Young)
http://cinejour2019ikoufilm.seesaa.net/article/494357506.html

『理大囲城』2022年公開
(原題:理大圍城/英語題:Inside the Red Brick Wall)
http://cinejour2019ikoufilm.seesaa.net/article/494714604.html

●監督インタビュー

『革命まで』2015年 
郭達俊(クォック・タッチュン)監督&江瓊珠(コン・キンチュー)監督インタビュー
山形国際ドキュメンタリー映画祭2015にて
http://www.cinemajournal.net/special/2016/kakumeimade/index.html

『乱世備忘 僕らの雨傘運動』 2017年10月11日
陳梓桓(チャン・ジーウン)監督インタビュー
山形国際ドキュメンタリー映画祭2017にて
http://www.cinemajournal.net/special/2017/yellowing/index.html

陳梓桓(チャン・ジーウン)監督インタビュー(公開時) 2018年07月22日
http://cineja-film-report.seesaa.net/article/460641864.html

『時代革命』 キウィ・チョウ監督インタビュー2022年7月22日
http://cineja-film-report.seesaa.net/article/490683730.html


2022年/香港/カラー/116分
配給:アップリンク
(C)2024 Dawn Workshop Ltd
https://www.uplink.co.jp/liberate_hong_kong/

★2024年8月30日(金)よりアップリンク吉祥寺、アップリンク京都にて公開中

posted by shiraishi at 20:26| Comment(0) | 香港 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年07月21日

帰って来たドラゴン 2Kリマスター版(原題:神龍小虎闖江湖 英題:CALL ME DRAGON)

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製作・監督:ウー・シーユエン
(『死亡の塔』監督、『ドランクモンキー/酔拳』製作)
アクション監督:ブルース・リャン
主演:ブルース・リャン、倉田保昭、マン・ホイ、ウォン・ワンシー、ハン・クォツァイ、ディーン・セキ

清朝末期。麻薬や人身売買など、あらゆる犯罪と暴力が渦巻く悪の魔窟、金沙村(ゴールド・サンド・シティ)。悪辣なボス、イム・クンホーが支配するその街を目指す男がいた。巷にはびこる悪を懲らしめながら流浪の旅を続ける正義の好漢、その名もドラゴン。彼にはある目的があった。
旅の途中、ドラゴンは2人組の盗賊リトル・マウスとブラック・キャットに襲われる。鮮やかな機転と華麗なクンフー技でそれを退け、逆に2人の盗賊はドラゴンに弟子入りして旅を共にしていた。3人が金沙村に到着したころ、女格闘家イーグルと、非情な殺人空手の使い手ブラック・ジャガーもやってくる。チベットの寺院から盗まれた秘宝”シルバー・パール”を巡る争いが始まった。

倉田保昭さんが香港映画界に飛び込んで、お得意の空手で大活躍した50年前の作品。ブルース・リャンとの一騎打ちに香港の観客も驚愕したはずです。マスターネガの損傷により再上映やHD化が不可能といわれ、長らく幻の作品となっていましたが、監督のウー・シーユエンが「倉田保昭日本凱旋50周年」のため、現存する最良の99分完全版マスターから2K化して復活!!このたび劇場で公開することになりました。50年前ですから俳優さんみな若い!かっこいい!!
CGもワイヤーもなしのハードなアクションに刮目せよ!!
倉田保昭さんには12年前に取材させていただきました。出演作がちょうど100本になったときです。浦川留さんと一緒に倉田プロへお邪魔してお話を伺いました。2012年夏の85号本誌に3pの記事があります。取材後、いち香港映画ファンに戻ってサインをいただきました(いつもはしません)。今も現役で、新作を送り出すほどお元気なのが嬉しいです。
可愛いリトル・マウス役のマン・ホイ(孟海)は2023年に、今回出演シーンが復元されたディーン・セキ(石天)は2021年にそれぞれ病気で亡くなられていました(合掌)。映画館で若い彼らに再会してくださいませ。(白)


なんとも懐かしい! 
2Kで復活した本作を観て、50年前に観ていたわけじゃないのに、真っ先にそう思いました。1980年代半ばあたりから観るようになった香港のカンフー映画。倉田保昭さんのお名前は、香港で活躍する日本人として轟いていました。今もお元気なのが嬉しいです。
チベットに近い金沙村での、秘宝の大きな真珠を巡る争奪戦。大勢の男たちの中で、女格闘家イーグルの活躍が光ります。ハチャメチャな中にユーモアもあって、あ~これぞかつての香港映画! 堪能しました。(咲)


1974年/香港/カラー/ビスタサイズ/DCP/99分
協賛:アートポートインベスト
提供:倉田プロモーション
配給:エデン
(c)1974SEASONAL FILM CORPORATION All Rights Reser
https://kuratadragon50.jp/

☆舞台挨拶をほぼ書き起こしました。こちらです。

☆最新作の短編も週替わりで併映します
『夢物語』(2023年・15分)
主演・製作総指揮:倉田保昭
出演・監督:中村浩二
田中平蔵は定年退職した元公務員。妻は数年前に旅立ち独り暮らし。最近、平蔵は自分が経験した事のない不思議な夢を見るようになる。ある日、平蔵は夢で大勢の忍者に襲われ・・・間一髪のところで目を覚ます。

『夢物語その2』(2024年・15分)
主演・製作総指揮:倉田保昭
昼寝をしていた老人が夢を見る。老人は孫と庭で遊んでいたが、孫は老人がトイレに行っている間に、何者かに連れ去られてしまう。老人は孫を助けるべく、命がけでアジトを捜し出し、格闘の末、孫を救い出す。

★2024年7月26日(金)新宿武蔵野館ほか全国順次公開

posted by shiraishi at 19:45| Comment(0) | 香港 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年01月27日

白日青春 生きてこそ(原題:白日青春 The Sunny Side of the Street)

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監督・脚本:ラウ・コックルイ(劉國瑞)
プロデューサー:ソイ・チェン(鄭保瑞)
撮影:リョン・ミンカイ
出演:アンソニー・ウォン(チャン・バクヤッ 陳白日)、サハル・ザマン(ハッサン/香港名:モク・チンチョン 莫青春)、エンディ・チョウ(チャン・ホン)、キランジート・ギル(ファティマ)、インダージート・シン(アフメド)

香港のタクシー運転手、チャン・バクヤッは急に知らされた息子の結婚式に間に合うよう急いでいた。70年代に本土から香港に密入国したバクヤッは、妻を亡くし息子とうまくいっていない。交通事故を起こしてしまったバクヤッは、相手方のパキスタン難民のアフメドが死亡したことを知った。彼は10年前から難民申請をして、家族3人でのカナダ移住を待ち望んでいた。母親と残された10歳のハッサンは生活のために、難民のギャンググループに加わってしまう。

いつも不機嫌で誰にでも当たり散らすバクヤッを香港の名優アンソニー・ウォン。粗暴で自分勝手ですが、心底悪い人間ではありません。心深くに悲しみを隠した不器用すぎる人を演じてさすがです。
難民の少年ハッサンを、パキスタン出身で香港在住のサハル・ザマン。アンソニー・ウォンを相手に、少しもひるまずに演じています。この作品が映画デビューとは驚きました!父親を亡くした少年と、ちゃんとした父親になりたいのに、なれずにあがいている男、どちらにも幸あれと願います。
日本より様々な国の人が集まっている香港でも、難民の人たちはこんなに不自由なのだと知って愕然としました。移住の希望がかなえられるまで、正業にもつけません。どうやって食べていけというのでしょう。(白)


息子との葛藤を抱える偏屈なタクシー運転手(陳白日)チャン・バクヤッを演じた黄秋生。バクヤッ自身も大陸から泳いで越境し香港にたどりついた不法入国者なのに、同じようにパキスタンから香港にやってきた難民アフメドにつらくあたる。挙句のはてに事故死までさせてしまう。それなのに相手が不法難民ということで罪を逃れた。とことん自分勝手で無責任な人物だが、アフメドの妻と10歳の息子ハッサンはよけい不利な立場になってしまい、さすがのバクヤッも彼らに手をさしのべる。香港での難民の厳しい状況に、二組の父と息子の関係性を絡めて描いている。
『白日青春』というタイトルは最初わからなかったけど、二人の名前だったということを映画を観た後に知った。学校の授業の中でこの「白日と青春」の二つの言葉が出てくる「苔」(袁枚)という詩が出てくる。この詩の中に監督の思いが込められているような気がする。
白日不到処
青春恰自来
苔花如米小
也学牡丹開
日の当たらないところにも
生命力あふれる春は訪れる
米粒のように小さな苔の花も
高貴な牡丹を学んで咲く

マレーシア出身のコックルイ監督は「この映画は父の愛を渇望する息子と、息子を理解しようともがく父親の物語。自分の移民としての経験や思いを注ぎ込んだ」と語っている。

プロデューサーの任硯聰(ピーター・ヤム)さんの名前に見覚えがあると思ったら、2017年の山形国際ドキュメンタリー映画祭で『乱世備忘 ― 僕らの雨傘運動』の陳梓桓(チャン・ジーウン)監督にインタビューした時に同席していました。インタビューの後も、香港のことで話が弾みましたし、映画祭の打ち上げの時にもお会いしました。その後、やはり陳梓桓監督の『Blue Island 憂鬱之島』もプロデュースしています。秋生ちゃんにインタビューする機会がありましたが、3人のプロデューサーのうち、主にピーターとやり取りしていたと語っていました(暁)。



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 アンソニー・ウォン(黄秋生) インタビュー


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アンソニー・ウォン(黄秋生) 初日舞台挨拶

Facebookアルバム
『白日青春-生きてこそ-』アンソニー・ウォン インタビュー&初日舞台挨拶


●ラウ・コックルイ(劉國瑞)
台湾の第59回金馬賞 最優秀新人監督賞、最優秀オリジナル脚本賞を受賞
●アンソニー・ウォン(黃秋生)
台湾の第59回金馬賞 最優秀主演男優賞を受賞
●サハル・ザマン(林諾/ Sahal Zaman)
第41回香港電影金像奨 最優秀新人俳優賞を受賞

2022年/香港/カラー/シネスコ/111分
配給:武蔵野エンタテインメント
PETRA Films Pte Ltd (C)2022
https://hs-ikite-movie.musashino-k.jp/

★2024年1月26日(金)ロードショー
posted by shiraishi at 00:36| Comment(0) | 香港 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年01月18日

緑の夜  原題:緑夜 英題:GREEN NIGHT

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(C)2023 DEMEI Holdings Limited (Hong Kong). All Rights Reserved

監督:ハン・シュアイ(韩帅)
出演:ファン・ビンビン(范冰冰)(『ブッダ・マウンテン ~希望と祈りの旅』)、イ・ジュヨン(「梨泰院クラス」『野球少女』『ベイビー・ブローカー』、キム・ヨンホ

韓国、仁川港国際ターミナル。保安検査場で働くジン・シャは、中国での苦難の過去から逃れ、配偶者ビザで韓国で暮らしている。ある日、中国・煙台行きのフェリーに搭乗しようとしている緑の髪の若い女性が怪しいと、靴を脱がせる。上司から、買い付けに行っている常連と聞かされる。
その日、帰りのバスに乗り遅れたジン・シャは、緑の髪の女に声をかけられ、一緒にタクシーに乗る。宿命的に出会った二人は、やがて犯罪に巻き込まれ、逃避行が始まる・・・

中国・山東省煙台市出身の女性監督ハン・シュアイが、対岸の韓国・仁川を舞台に描いた物語。
ファン・ビンビンも監督と同じく中国山東省の海辺の町・青島出身。久しぶりの映画復帰作。美人で派手なイメージのあるファン・ビンビンが、本作では陰のある控えめな女性を演じています。2ヶ月かけて韓国語のセリフを自然に話せるよう努力を重ねたそうです。また、イ・ジュヨンは中国語の発音を学んだ経験があるものの、妥協せず、何度も録音した自分のセリフを聴いていたとのこと。 言葉や文化背景の違う二人の女性の化学反応が本作の魅力です。暴力的で抑圧的な男どもを相手に、二人がどう出るかを見守りました。(咲)


2023年/香港/韓国語、中国語/カラー/92分
配給:ファインフィルムズ
公式サイト:https://midorinoyoru.com/
★2024年1月19日(金)より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町、渋谷シネクイントほか全国順次公開


posted by sakiko at 18:45| Comment(0) | 香港 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年01月07日

燈火(ネオン)は消えず 原題:燈火闌珊 英題:A Light Never Goes Out

2024年1月12日(金)よりBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下、シネマート新宿他
全国順次公開 その他の劇場情報

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©2022 A Light Never Goes Out Limited All Rights Reserved


第59回金馬奨最優秀主演女優賞(シルヴィア・チャン)
第96回米アカデミー賞国際長編映画賞香港代表作品

2022年の東京国際映画祭では『消えゆく燈火』のタイトルで上映され、中華圏映画ファンの観客の大きな話題になった作品。
台湾金馬奨で、主演のシルヴィア・チャンが『最愛』(1986年)以来36年ぶり3度目の主演女優賞に輝いた他、数々の賞を受賞。第 96 回アメリカのアカデミー賞国際長編映画賞の香港代表作品に選出された。その際、シルヴィア・チャンが語った「香港のネオンをふたたび灯しましょう!」という言葉と、香港ネオン職人たちの思いに共感し、邦題を『燈火(ネオン)は消えず』にした。

監督・脚本:曾憲寧(アナスタシア・ツァン)
製作:張艾嘉(シルヴィア・チャン
プロデユーサー:陳心遙(サヴィル・チャン)
撮影:梁銘佳(リョン・ミンカイ)
美術:莫少宗(アレックス・モク)
編集:陳序慶(ノーズ・チャン)
音楽:黃艾倫(アラン・ウォン)、翁瑋盈 (ジャネット・ユン)
出演
メイヒョン:張艾嘉(シルヴィア・チャン)
ビル:任達華 (サイモン・ヤム)
レオ:周漢寧(チャウ・ホンネン)ヘニック・チャウ
チョイホン(娘):蔡思韵(セシリア・チョイ)

香港では2010年の建築法等の改正以来、2020年までに9割ものネオンサインが姿を消したと言われる。香港独自の文化が少しづつ消えてゆく今、その灯を消すまいと奮闘する香港人の心意気と、ネオン職人たちによる映画のラストサプライズが大きな感動を呼んだ。

メイヒョン(シルヴィア・チャン)は、腕ききのネオンサイン職人だった夫のビル(サイモン・ヤム)の死後、夫のネオン制作工房の鍵をみつけた。工房に行ってみると見知らぬ青年レオ(ヘニック・チャウ)がいた。ビルの弟子だという。そしてビルがやり残した仕事があるという。最初は取り合わず、工房を閉めようとするが、レオに教わって自分もガラスでネオン細工をやってみる。そして、この技術を残すことと、夫が残した仕事とは何だったのかを調べ始める。夫がやり残したものがわかり、レオとともに最後のネオンを完成させようと決意する。香港の夜景の象徴だったネオンサインがほとんど消えた中で、CGで表現したり、職人が新たに作り直すなどしてネオンサインを再現。
妻役のシルヴィア・チャンは台湾出身、台湾・香港映画界で活躍してきた。『過ぎゆく時の中で』『妻の愛、娘の時』『レッド・バイオリン』などの作品に出演。監督作も8作あり、『妻の愛、娘の時』は、2017年台湾金馬奨監督賞を受賞している。夫役のサイモン・ヤムはモデル出身の俳優。『ワイルド・ブリット』『夜と霧(天水圍的夜與霧)』『ザ・ミッション 非情の掟』などに出演。娘役のセシリア・チョイは『返校 言葉が消えた日』で注目され、現在公開中の『香港の流れ者たち』にも出演。ヘニック・チャウは『アニタ』に出演。

私が初めて香港に行ったのは1994年。その時は、香港のメインストリートである彌敦道(ネイザンロード)にも、その他の道路にも、道にはみ出した看板(ネオンサインも含む)がずっと続いていて、その光景にびっくりした。夜になると光り輝き、きらびやかなネオンが派手さを競っていた。2階建てバスに乗り、それらの道を行くと、まるで頭にぶつかりそうになるくらいの感じだった。その後、3、4年に1回くらい行っていた。この30年のあいだに計13回香港に行っているが、この派手なネオンサインが2020年までの間に90%も無くなっていたということは、この映画を観るまで認識していなかった。2010年以降には3回くらい行っているが、道路にせり出した看板(ネオンサイン)はいつのまにかなくなっていたんですね。もっとも観光主体で行ったことはなく、コンサートや香港アカデミー賞の授賞式取材、香港映画祭などで行っているので、あまり街中を歩きまわったり、走り回ったりしてはいなかったので気がつかなかったというのもあるかもしれない。13回目、2018年に行った時、初めて観光らしきことをした。初めて銅鑼湾(コーズウェイベイ)ー 堅尼地城(ケネディタウン)間を2階建てトラム(電車)に乗って、トラム沿いの街の景色を楽しんだ。道路脇にはたくさんの店が続いていたけど、昔あった道路に飛び出た看板やネオンサインはなかった。こういうものは気にしていなければ、気がつかないものだとつくづく思った。
そういえば、1月4日に『いますぐ抱きしめたい』(1991年日本公開)のデジタルリマスター版を観に行った時に、この映画の中でいくつものネオンサインが出ていた。思えば、香港映画の中でたくさんのネオンサインを観てきた。今は映画の中でしか観ることができなくなってしまったネオンサイン。100万ドルの夜景とも言われる香港の夜景だが、象徴でありながら廃れゆくネオンサインそのものを題材にした映画はなかった。この作品は、とても良い題材であり、家族の物語だった(暁)。


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左 サヴィル・チャンプロデユーサー 右 アナスタシア・ツァン監督
2022年第35回東京国際映画祭にて


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香港トラムからの景色(中環セントラルよりケネディタウン寄り?)
2018年6月
撮影:宮崎暁美


公式HP https://moviola.jp/neonwakiezu/#modal
2022年/香港映画/103分
配給:ムヴィオラ

posted by akemi at 21:03| Comment(0) | 香港 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする