2019年11月08日

象は静かに座っている 原題:大象席地而坐  英題 An Elephant Sitting Still

2019年11月2日~ シアター・イメージフォーラム他にて公開中
その他の公開情報
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© Ms. CHU Yanhua and Mr. HU Yongzhen

監督:胡波(フー・ボー)
脚本:フー・ボー
撮影:ファン・チャオ
美術:シェ・リージャ
編集:フー・ボー
音楽:ホァ・ルン
プロデューサー:王小帥(ワン・シャオシュアイ)
出演
チャン・ユー:ユー・チェン役
ポン・ユーチャン:ウェイ・ブー
ワン・ユーウェン:ファン・リン
リー・ツォンシー:ワン・ジン

中国北部、斜陽の炭鉱都市に暮らす4人の登場人物たちの1日を4時間近い長尺で描き、世界を驚かせた作品。行き場のない悲しみを抱えた孤独な“4人の運命”が交差する。キーフレーズは「満州里のサーカス団にいる象は、ずっとそこに座っている。誰かがフォークで刺そうとも、そこに座っているだろう」。タイトルはここから。
親友の妻との浮気現場を見られ、親友を自殺に追い込んでしまった男、于城。男子高校生韋布は番長のスマホを盗んだ友人をかばおうとして、番長を階段から突き落として大怪我をさせてしまい学校から逃げ出す。韋布が思いを寄せる同級生の黄玲は、学校の主任教師と密かに交際しているが、主任との関係が暴露され町に居場所がなくなってしまう。韋布の家の隣に住む老金は家のベランダで寝起きしているが、娘夫婦は孫娘の進学に備えるため、家を買うのに彼を老人ホームへ入れようとしている。しかし、韋布を追うチンピラたちに目をつけられ怖気づいた娘婿に家を追いだされてしまう。この4人の「喪失」と「逃避」の一日が描かれる。一日の終わり、坐っている象を観るために4人は満州里へと向かうバスに乗り込む。

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© Ms. CHU Yanhua and Mr. HU Yongzhen

監督の胡波は本作を撮り終えた後、自ら命をたってしまったという。作品の長さをめぐってプロデューサーと確執があったらしい。監督の死後、本人希望の4時間バージョンが映画祭で上映され、ベルリン映画祭フォーラム部門で国際批評家連盟賞を受賞したり、台湾の金馬奨で作品賞を受賞した。
そんな話題作だが、作家でもあった監督のこだわりが伝わってくる作品だった。灰色の空の下、居場所を失った人物の苦境をこれでもかと息苦しいくらいに描き、観客にやるせなさや閉塞感を与える。しかし、そんな苦しい中でもひとすじの希望を感じさせる作品だった。そういう意味では監督の才能は感じたが、やはり長ければいいというものではないと私は思う(暁)。

公式HP
2018年製作/234分/中国
原題:大象席地而坐 An Elephant Sitting Still
配給:ビターズ・エンド
posted by akemi at 19:31| Comment(0) | 中国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年11月07日

オーバー・エベレスト 陰謀の氷壁 原題:Wings Over Everest(中国題:冰峰暴)

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監督・脚本:ユー・フェイ プロデューサー:テレンス・チャン
撮影監督:ライ・イウファイ
美術監督:パク・イルヒョン チー・セバク
出演;役所広司 チャン・ジンチュー リン・ボーホン
声の出演:役所広司、沢城みゆき、宮野真守、神尾佑、山野井仁、俊藤光利、高木渉、細貝光司、沖原一生

ヒマラヤ地域の平和のため『ヒマラヤ公約』を締結する会議開催前、一機の飛行機がエベレスト南部、通称デスゾーンに墜落。その飛行機には、平和のカギを握る重要機密文書が載せられていた。墜落から3日後、ヒマラヤ救助隊「チーム・ウィングス」に、特別捜査官を自称する2人の男、ヴィクターとマーカスから、多額の報酬と共に機密文書を探す依頼が入る。チーム・ウィングスは“ヒマラヤの鬼”と呼ばれるジアン(役所広司)隊長中心に、エベレストで遭難した恋人を探し出すために入ったシャオタイズ(チャン・ジンチュー)、若く情熱を持ったヘリパイロット・ハン(リン・ボーホン)らが日々危険なミッションに臨んでいた。またジアンは無謀な行動の多いシャオタイズに亡くした娘の面影を重ねていく。危険なミッションと感じながらも、財政難に悩むチーム・ウィングスは依頼を引き受ける。
残された時間は48時間。酸素ボンベ残量も限られる中、死に至る場所・デスゾーンに向けて決死の登頂を始める。刻一刻と時間は過ぎ、様々な思いと世界規模の陰謀が絡まる中、世界最高峰の頂には、予想もつかない事態が待ち受けていた――。

世界最高峰のエベレストを登山者側から描いた作品は少なくない。本作は救助隊、それも機密文書回収という政治的な使命を帯びた山男&女たちが生命を賭す山岳アクションアドベンチャーという視点が目新しい。

日本・中国・インド・ヒマラヤ周辺国の思惑や陰謀が、標高8,848メートル上で飛び交う。むろん頂上で撮影された訳ではないけれど、高地でのロケは相当な迫力だ。極寒が襲い、落下、滑落、すれすれに空走するゴツいヘリコプターなどなど、ハラハラさせられる場面の連続だ。

ワイヤアクションで27時間(!)も吊るされ続け、身体中あざだらけになったという役所広司。生身を張った表現とアップでの眼力は緊張と慈愛を同時に映し出す。”陸”でのワンチームをまとめる温かな人柄は、国際派名優の境地を見せている。日本人としては、もっと役所広司が活躍する場面が観たかった〜。(幸)


ポスタービジュアルから雪山でのサスペンス・アクション映画と思われるかもしれないが、監督が描きたかったのは「愛がどこまでできるか」ということ。男女の愛だけでなく、親子の愛や仕事仲間を大事に思う気持ちも語られている。監督自身、登山や映画に対する愛が原動力になって、この作品を何年もかけて企画、脚本から作り上げた。
とはいえ、雪山での「もうダメなんじゃないか」と思うようなハラハラする場面はたっぷり。監督がモンブランやヒマラヤ山脈のマナスルを登頂し、その経験を脚本に落とし込んだという。
愛を感じつつ、エンタメ性も楽しめる作品に仕上がった。
ところで、この作品でヘリコプターが6000mまでしか上がれないという話が出てくる。なぜ頂上まで行けないのだろうと思ったら、標高が高くなると空気が薄くなり、プロペラを回しても風が起きないので飛べないからだと教えてもらった。なるほど!(堀)


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東京国際映画祭 『オーバー・エベレスト 陰謀の氷壁』 ワールドプレミアイベント(11/3)
張 静初(チャン・ジンチュー) 撮影:景山咲子

かつて山女だった私は、山を舞台にした作品はいつも注目。だいたい山を登るためのドキュメンタリーがほとんど。でもこの作品は、エベレストを舞台にしたサスペンス・アクション。実際はエベレストの高所で撮影されたのではないとはいえ、こんな高所での撮影は、やはりかなり高度な撮影技術と登山技術が要求される。やはりカメラの技術革新、登山技術の進歩があってのことだろう。
ところでこの作品、役所広司主演ということで日本では宣伝されているが、やはり張 静初(チャン・ジンチュー)の大活躍がみどころ。非常に危険な登山シーンを演じている。でもここまでできるのは彼女だからこそと思い、やっぱりすごい身体能力を持ち、運動神経抜群と確信した。
私が彼女を初めて見たのは、2005年11月の第5回彩の国さいたま中国映画祭で上映された『花嫁大旋風』(日本公開題名『雲南の花嫁』、原題『花腰新娘』)だった。家の鴨居に逆さつり状態で登場。その状態から床に飛び降りるというまるで軽業師のような登場だった。実際はスタントマンが演じたのかと思ったら、本人とのことだった。それがあまり印象的だったので、今でも記憶に残っている。しかもそのあと獅子舞の先頭部分を演じるのだけど、これにしても相当な身体能力が必要だと思うので、この細い身体のどこにこんな力があるのだろうと思った。この作品のことがあったので、今回の彼女の山でのシーンは納得し、彼女のアクションは健在だと思った。
『雲南の花嫁』で彼女のことを知り、その後の出演作はかなり観てきた。アクションものも多いけど、2007年『プロテージ/偽りの絆』(原題『門徒』)での麻薬患者の役は迫真の演技だったし、第22回東京国際映画祭で上映されたアン・ホイ監督の『夜と霧』2009年(原題『天水圍的夜與霧』)での悲壮な演技も印象的。去年日本公開された『グレート・アドベンチャー』2017年 (俠盜聯盟)では流暢な英語を話し、単なるアクション女優ではない面も知った。今回、張 静初のことを書くに当たって、彼女の日本公開・上映作を調べてみたら10数本あった。意外に日本で公開されているのに知られていない。この作品でぜひ注目されてほしい(暁)。

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東京国際映画祭 『オーバー・エベレスト 陰謀の氷壁』 ワールドプレミアイベント(11/3)


提供:バップ/配給:アスミック・エース/
©Mirage Ltd. 
2019/中国・日本/110分/PG-12
公式サイト:http://over-everest.asmik-ace.co.jp/
★11月15日(金)より全国公開★




 





posted by yukie at 10:51| Comment(0) | 中国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年08月31日

帰れない二人(原題:江湖儿女/英題:Ash is Purest White)

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監督・脚本:ジャ・ジャンクー 
撮影:エリック・ゴーティエ 
音楽:リン・チャン 
出演:チャオ・タオ、リャオ・ファン、シュー・ジェン、キャスパー・リャン 

山西省の都市・大同(ダートン)。チャオはヤクザ者の恋人ビンと共に彼女らなりの幸せを夢見ていた。ある日、ビンは路上でチンピラに襲われるが、チャオが発砲し一命をとりとめる。5年後、出所したチャオは長江のほとりの古都・奉節(フォンジェ)へビンを訪ねるが、彼には新たな恋人がいた。チャオは世界で最も内地にある大都市・新疆(シンジャン)ウイグル自治区を目指す。そして2017年がやってくる――。

ヤクザ者を愛した女性の17年を追う。女が罪をかぶっても平気でいられる男は所詮それだけの器と思ったら案の定。男の心変わりにも毅然と対応する女が切ない。落ちぶれた男を引き取る懐の深さは愛の深さか、男に負けを認めさせたかっただけなのか。変わりゆく中国の風景と愛が重なる。(堀)

2018 年/135分/中国=フランス
配給:ビターズ・エンド 
©2018 Xstream Pictures (Beijing) - MK Productions - ARTE France All rights reserved
公式サイト:http://www.bitters.co.jp/kaerenai/
★2019年9月6日(金)より、Bunkamuraル・シネマ、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー!
posted by ほりきみき at 16:48| Comment(0) | 中国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

SHADOW/影武者(原題:SHADOW)

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監督:チャン・イーモウ 
脚本:チャン・イーモウ、リー・ウェイ 
出演:ダン・チャオ、スン・リー、チェン・カイ

20年前、弱小の沛〈ペイ〉国は強大な炎国に領土である境州を奪われた。若き王(チェン・カイ) は炎国と休戦同盟を結び、平和だが屈辱的な日々に甘んじていた。頭脳明晰で武芸の達人である重臣の都督〈トトク〉(ダン・チャオ)はそれを不満に思い、開戦を唱え、従う者も多かった。
しかし、その都督は影武者だった。1年前、都督は刀傷から病になり、影武者と入れ替わったのだ。影武者は都督の命令に従い、炎国の将軍にして最強の戦士・楊蒼〈ヤン・ツァン〉に対決を申し込む。都督は影武者に、自由と引き換えに、敵地での大軍との戦いを命じていたのだ。どんな相手も三太刀で必殺と言われる最強の楊蒼との対決に向けて、影武者は傘を武器にした技を磨くのだが、うまくいかない。都督の妻・小艾〈シャオアイ〉(スン・リー) は女性の身体のように柔らかく傘を使ってみてはどうかと提案し、その技を影武者に叩きこむ。
(影武者の)都督の勝手な行動に怒り狂う王も、実はある作戦を秘めていた。果たして、影武者は楊蒼に勝ち、自由を手に入れられるのか。

影武者が表舞台を全てこなすようになったら? 自分の与えられた仕事に精進する影と猜疑心が膨れ上がる本人。大国に抑えられている小国で様々な思いや政治的駆け引きが交錯する。水墨画のような色合いと降り続ける雨が展開を暗示。傘を使ったしなやかな戦法は奇抜でダンスのよう。敵地に攻め込むさまは亀を彷彿させる。
王の妹は真っ直ぐな心を持ち、国のために犠牲を厭わない。彼女が果たした仕事の大きさこそ、民に伝えるべきではと思う。
ダン・チャオが身を削るようなダイエットをして二役を演じ分けた。妻役は私生活でも夫婦であるスン・リー。琴を合奏するシーンは魂が叫び合うよう。クライマックスのアクションシーンと相まって作品を盛り上げる。(堀)


2018年/中国/カラー/5.1ch/スコープ/中国語/116分/PG12
配給:ショウゲート
©2018 Perfect Village Entertainment HK Limited Le Vision Pictures(Beijing)Co.,LTD Shanghai Tencent Pictures Culture Media Company Limited ALL RIGHTS RESERVED
公式サイト:http://shadow-movie.jp/
★2019年9月6日(金) TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー
posted by ほりきみき at 16:44| Comment(0) | 中国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年06月13日

The Crossing ザ・クロッシング Part II(原題:太平輪 彼岸 The Crossing 2)

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監督・脚本:ジョン・ウー
原案:ワン・ホエリン
出演:チャン・ツィイー、金城武、ソン・ヘギョ、ホアン・シャオミン、トン・ダーウェイ、長澤まさみ

1949年、1,000人近い乗客乗員を乗せて上海から台湾へ向かっていた大型客船「太平輪」。船にはユイ・チェン(チャン・ツィイー)、イェン・ザークン(金城武)、トン・ターチン(トン・ダーウェイ)が、それぞれに違う目的で乗船していた。深夜、付近を航海中の貨物船と衝突した事で船内はパニックに陥り、それまでお互いを知る事の無かった男女の3組の運命が交差する―

1945年国共内戦下の中国が舞台。Ⅰでは戦場の描写が多かったが、Ⅱでは純愛の側面にフォーカス。戦争によって引き裂かれた男女たちの届かない想い、切ない叫びが聞こえてくる。クライマックスは上海から台湾に向かう客船の沈没シーン。非常時とはいえ、とんでもないほどの人と貨物を載せて出発したこともさることながら、乗務員の常軌を逸した気の緩みに絶句。海に投げ出された人々の阿鼻叫喚ぶりに驚くが、それぞれの愛をうまく着地させた脚本に心が安らいだ。
ところで、ジョン・ウーといえば白い鳩と二丁拳銃が必ず出てくることで有名。本作でも、「ここはカモメでは?」という場所に鳩が飛んでいた。しかし、二丁拳銃を見落としてしまった! どなたか、ご覧になったらぜひチェックして、コメントでお知らせいただけると幸いです。(堀)


国共内戦が激しくなり、台湾に逃れようと上海の港に停泊している船に殺到する人たちの姿を観て、にわかに思い出した映画があった。タイトルが思い出せなくて、居心地が悪かったのだが、やっと思い出せた。1991年に日本で公開された『レッドダスト』。監督はイム・ホー。ブリジット・リン演じる女性作家と、日本への協力者として忌み嫌われていた男(シン・ハン)。1938年、日中戦争の時期から、1945年の日本敗戦後の国民党と共産党の内戦、1949年、国民党が台湾脱出するまでの時期を背景にした恋の物語。ラストが人々が船に殺到する場面だった。『レッドダスト』を、今再び観たくなった。

そして、本作で描かれた台湾の部分では、戦前、基隆に住んでいた亡き母のことを思い出した。細い入江が深く入り込んだ基隆港は天然の良港。本作では船が基隆に着く場面が出てきた。
外国航路の船長をしていた母方の祖父は、家族と過ごせる水先案内人の仕事を基隆港に見つけ、昭和6年から終戦まで基隆に住んでいた。高収入の仕事で、北投温泉にも別荘を持っていたそうだ。本作では、日本人が去った後の屋敷が出て来る。母が暮らした基隆の家は戦後もそのままあったのを台湾人の同級生から聞いたという。母たちが去った後、どんな人たちが住んだのだろう。そんなことにも思いを馳せた。
ジョン・ウー監督、壮大な物語を多謝~! (咲)



2015年/中国/カラー/126分
配給:ツイン
©Beijing Galloping Horse ・ All Rights Reserved.
公式サイト:http://thecrossing.jp/
★2019年6月14日(土)シネマート新宿・心斎橋他にてロードショー!
posted by ほりきみき at 00:31| Comment(0) | 中国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする