2023年03月16日

郊外の鳥たち  原題:郊区的鸟 英題:SUBURBAN BIRDS

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監督・脚本:チウ・ション(仇晟)
音楽:シアオ・ホー(小河) 
撮影: シュー・ランジュン(徐燃俊)
編集:ジン・ディー(金鏑)、リアオ・チンスン(廖慶松)
美術監督:ユー・ズーヤン(於子洋)
録音: ロウ・クン(娄堃) 
音響デザイナー:トゥー・ドゥーチー(杜篤之) 
音響編集: ウー・シューヤオ(呉書瑶)
出演:メイソン・リー(李淳)、ホアン・ルー(黄璐)、ゴン・ズーハン(龔子涵)他

都市の郊外で測量をする男たち。この辺りでは地盤沈下が進み、高層ビルが傾きはじめ、その傾斜度も測っている。測量チームの青年ハオは、廃校になった小学校に忍び込む。机の引き出しの中から、自分と同じ名前の男の子の日記を見つける。そこには、開発が進む郊外の町での、少年らしい冒険の日々が綴られていた。一方、測量チームの男たちが昼寝をしている間に、少年たちが測量の双眼鏡を持ち出す。
地盤沈下で傾き、退去命令の出た高層アパートの一室では、いなくなった保護犬を待つ女性。電気も切られ、ろうそくをつけている・・・

ガーンガーンと工事の音が鳴る中で進む物語。
現代と過去、そしてもしかしたら未来が行き来する不思議な体験。
地盤が沈下し、ビルが傾いた場所は、今の杭州の郊外。杭州は、かつて南宋王朝の都で、南宋の皇帝が街を出る時の道は、運気の通り道。そんな場所が舞台。むやみに開発して、運気に見放されたのか?
タイトルの「郊外の鳥」に絡む場面がいくつか出てきます。
廃校で読んだ少年の日記には、森で拾った鳥の卵を大事に持ち帰った話。
ホテルの一室で、男性が女性に「小さい時、よく森で鳥の巣をつついた。全身青い鳥だった」と語る場面。これが日記を書いた少年が大人になった姿でしょうか・・・  女性が、「全身青い鳥なんていないわ」と言うのですが、どうやら「郊外の鳥」は青い鳥。
森を行く青年二人の会話の中には、「この辺りで“全身青い郊外の鳥”を見たと信用できる刑事が言っていた」とありました。青い鳥というと、チルチルミチルの幸せの青い鳥を思い浮かべますが、この青い郊外の鳥は、ちょっと違うようです。
チウ・ション監督が本作に込めた思いについては、公式サイトのインタビューをぜひお読みください。 (咲)


2018年/中国/中国語/114分/|1:1.33/ 5.1ch/DCP・Blu-ray
字幕翻訳 : 奥原智子 
配給:リアリーライクフィルムズ、ムービー・アクト・プロジェクト
公式サイト:https://www.reallylikefilms.com/kogai
★2023年3月18日(土)より、シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開


posted by sakiko at 01:05| Comment(0) | 中国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年02月05日

小さき麦の花  原題:隠入塵煙 英題:Return to Dust

2023年2月10日(金)YEBISU GARDEN CINEMA、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開 劇場情報 
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(C)2022 Qizi Films Limited, Beijing J.Q. Spring Pictures Company Limited. All Rights Reserved.

土から生まれ、土とともに生きる

監督:リー・ルイジュン
製作:チャン・ミン リー・イェン
製作総指揮:シャン・ホー
出演
ウー・レンリン:馬有鉄(マー・ヨウティエ)
ハイ・チン:貴英(ツァオ・クイイン)
ヤン・クアンルイ:チャン・ヨンフーの息子ヤン・クアンルイ
チャオ・トンピン:マー・ヨウトン

2011年、中国西北部の農村。貧しい農民有鉄(ヨウティエ=ウー・レンリン)は兄の家に同居しているが、兄の息子を結婚させるための厄介払いのため、障がいのある内気なクイイン(ハイ・チン)と見合い、結婚させられた。
互いに家族の厄介者だったふたりだが、やがて、互いを慈しみ力を合わせ、作物を育て、質素な家を作り、慎ましくも協力して日々を生きるのだが、自然の猛威や変わりゆく時代の波にさらされる…。
クイインは初めて会ったその日からヨウティエの優しさに気付いていたと話す。
ヨウティエとクイイン、それに心強いロバとの毎日の生活と暮らし。力を合わせ毎日懸命に働き、ついに自分の家をもった。だが、その幸福は長くは続かなかった…。
中国で公開されると、レビューサイトで本年度中国映画ベスト1の評価をされじわじわ広がり、公開2ヶ月経ってからTikTokが火付け役になり、若い世代を中心に興行収入トップに躍り出る大ヒットを記録し、<奇跡の映画>とまで呼ばれたという。

自分たちにのしかかってくる境遇を淡々と受け入れ、貧しくも、農作業から家を作ることまで、自分でできることを黙々と続ける有鉄。障害をもちつつも、そんな夫を手伝う貴英。ふたりの慎ましい生活が淡々と描かれる作品だけど、農村の美しい風景の中、厳しい労働と、お互いを思いやる二人の姿に癒される。そんなところが、中国の人たちにも受けたのだろう。それにしても、こういう地味な映画がヒットするというのは珍しい。そういうこともあるんですね(暁)。

オフィシャルサイト
2022年製作/133分/G/中国
配給:マジックアワー、ムヴィオラ
posted by akemi at 20:58| Comment(0) | 中国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

崖上のスパイ  原題:懸崖之上 英題: Cliff Walkers

2023年2月10日(金)より新宿ピカデリー他全国公開 劇場情報
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1930年代の満州を舞台に、張芸謀が初めて挑むスパイサスペンス

監督:チャン・イーモウ
脚本:チュアン・ヨンシェン チャン・イーモウ
撮影:チャオ・シャオティン
出演
チャン・イー:張憲臣(チャン・シエンチェン)
ユー・ホーフェイ:周乙(ジョウ・イー)
チン・ハイルー:王郁(ワン・ユー)
リウ・ハオツン:小蘭(シャオラン)
朱亜文(チュウ・ヤーウェン):楚良(チュー・リャン)
リー・ナイウェン
ニー・ダーホン
ユー・アイレイ

1934年冬の満州国のハルビン。ソ連で特殊訓練を受けた男女4人の共産党スパイ・チームが、極秘作戦“ウートラ計画”を実行するため現地に潜入。ウートラ計画とは、秘密施設から逃れた同胞を国外に脱出させ、日本軍の蛮行を世界に知らること。だが、仲間の裏切りで、そのミッションは共産党の天敵である特務警察に察知されてしまった。特務の執拗な追跡と罠により、ついにはリーダーの張憲臣(チャン・シエンチェン)が特務の手に落ちてしまう。残された王郁(ワン・ユー)、楚良(チュー・リャン)、小蘭(シャオラン)の3人と、彼らの協力者となった周乙(ジョウ・イー)は、八方塞がりの危機を突破し、命がけのミッションを完遂できるのか…。
*ウートラとは(ロシア語で"夜明け"の意味)

監督は、1987年『紅いコーリャン』でデビュー、ベルリン国際映画祭金獅子賞を受賞し、中国第5世代の才能として世界的な脚光を浴びた張芸謀(チャン・イーモウ)。『紅夢』『上海ルージュ』『初恋のきた道』その後も色彩(特に紅色)の魔術師と呼ばれる作品群を作りだし、高度な芸術性と娯楽性に富んだ作品群を世に送り出してきた。さらに、2008年夏季と2022年冬季の北京オリンピックで開会式、閉会式の総監督を務めるなど活躍をしてきた張芸謀監督が初めてスパイ・サスペンスに挑んだ。
雪のハルビンを舞台に、列車内の攻防、市街地での激烈なチェイス、銃撃戦など息づまる見せ場が満載のスタイリッシュな映像の数々。
スパイたちの信念と特務警察の威信をかけた騙し合いの果てにたどり着いた、崖っぷちの彼らの運命は…。中国のアカデミー賞と言われる2021年金鶏奨で監督賞、主演男優賞(チャン・イー)、撮影賞を受賞。

出演は『山河ノスタルジア』や、張芸謀監督前作の「ワン・セカンド 永遠の24フレーム」に主演のチャン・イー、『わたしは潘金蓮じゃない』のユー・ホーフェイ、『ドリアン ドリアン』のチン・ハイルー、『1950 鋼の第7中隊』のチュー・ヤーウェン、『ワン・セカンド 永遠の24フレーム』のリウ・ハオツン。

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張芸謀監督が手掛けた「スパイ・サスペンス」映画。いかにも張芸謀監督らしいスタイリッシュな映画。雪をうまく使った映像は、張芸謀監督お得意の紅色を使ったものとは違い、白黒の対比という感じで、色彩のシンプルさと、力強さ、闇の世界を表していたように思います。
工作員(スパイ)の任務に対する信念と中国特務警察の威信をかけた戦いが描かれるわけだけど、日中戦争の時代なのに、この映画には日本人は一人も出てこない。共産党の工作員と中国の特務警察とのせめぎ合い。あくまで中国人同士の戦いが描かれる。中国特務警察というのが日本の手先なのか? その辺がよくわからなかった。それはなぜなのか。それによって得られるものはなんなのか。
『ワン・セカンド 永遠の24フレーム』の時は、まだ子供だったリウ・ハオツン。やっぱりスパイとしては幼すぎるでしょ。でも、日本軍も沖縄戦の時、子供がスパイに仕立て上げられたということがあったから、ま、ありか。
最後、これまた張芸謀らしい。スパイ・アクション映画ながら、チャンとワン・ユー夫妻の人情味ある部分が描かれる(暁)。


写真クレジット:©2021 Emperor Film and Entertainment (Beijing) Limited Emperor Film Production Company Limited China Film Co., Ltd. Shanghai Film (Group) Co.,Ltd. All Rights Reserved
2021年製作/120分/PG12/中国
配給:アルバトロス・フィルム
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2023年01月19日

シャドウプレイ【完全版】 原題:風中有朶雨做的雲 & 夢の裏側

2023年1月20日(金)よりK's cinema、池袋シネマ・ロサ、アップリンク吉祥寺他 全国順次公開 劇場案内

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©DREAM FACTORY, Travis Wei


監督:婁燁(ロウ・イエ)
脚本:梅峰(メイ・フォン)、邱玉洁(チウ・ユージエ)、馬英力(マー・インリー)
撮影:ジェイク・ポロック
録音:富康(フー・カン)
オリジナル音楽:ヨハン・ヨハンソン、ヨナス・コルストロプ 
編集:朱琳(チュウ・リン)
美術:鍾誠(ジョン・チョン)
衣装:邁琳琳(マイ・リンリン)
ヘアメイク:折妍(ジョー・イエン)
ライン・プロデューサー:徐楽(シュー・ラー)
プロデューサー:耐安(ナイ・アン)、婁燁(ロウ・イエ)、易佳(イー・ジア)
エグゼクティブ・プロデューサー:張家魯(チャン・ジアルー)、婁燁(ロウ・イエ)
日本語字幕:樋口裕子

出演
井柏然(ジン・ボーラン):楊家棟(ヤン・ジャートン)役
宋佳(ソン・ジア):林慧(リン・ホイ)役
秦昊(チン・ハオ):姜紫成(ジャン・ツーチョン)役
馬思純(マー・スーチュン):唐小諾(ヌオ)役
張頌文(チャン・ソンウェン):唐奕傑(タン・イージエ)役 
陳妍希(ミシェル・チェン):連阿雲(リエン・アユン)役
陳冠希(エディソン・チャン):林辰峰/老A(アレックス)役 

『シャドウプレイ【完全版】』は、中国“第6世代”ロウ・イエ監督の10作目の監督作品。第6世代の映画作家たちは芸術性の高さと個人主義的な視点が特徴。伝統文化や慣習を重んじてきた第5世代以前とは作風も違う。ロウ・イエ監督は、一貫して愛と孤独に揺れる現代中国人を映画の中に描き続けてきた。
第20回東京フィルメックス(2019)で上映された北京市映画関係部署の審査済みバージョンより5分長い、検閲によりカットを余儀なくされた部分を復活させた129分の『シャドウプレイ【完全版】』というタイトルで公開される。

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第20回東京フィルメックスでの婁燁監督(撮影:宮崎暁美)


中国の30年、そして香港、台湾を舞台に加えて描くネオノワール・サスペンス

広州市の都市再開発で取り残された一画の洗(シエン)村というビジネス街に囲まれた“都会の村”で、2010年に実際に起きた暴動をヒントに、80年代の改革開放、90年代の社会主義市場経済推進、2000年代のバブルの時代、人々の欲望渦巻く現代までの30年間という時代に翻弄される7人の登場人物を、中国、香港、台湾を舞台に描く。

ストーリー
2006年、広州市内の河川敷で死体が発見される。
7年後の2013年4月14日。広州市開発区域の“都会の村で、立ち退きの賠償に不満を抱く住民たちによる騒乱が起きる。市当局の責任者であるタンが現場を訪れ住民たちの説得に奔走。しかし、タンはビルの5階から転落し死亡。この開発事業を一手に握っていたのは、ジャン・ツーチョン率いる紫金(ツージン)不動産。この殺人事件を担当する若手刑事のヤン・ジャートンは、タンとジャン、そしてタンの妻・リン・ホイと、タンとリンの娘ヌオの関係を洗い出す。
タンとジャンとリンの3人は24年前の1989年に出会っていた。当時リンはジャンと付き合っていたが、ジャンが既婚者だと知りタンと結婚した。官僚の父親を持つタンは出世の道を約束されていた。
台湾に渡ったジャンはリエン・アユンと知り合い、企業家として成功。2000年にアユンと共に広州に戻り、紫金不動産を創業。紫金不動産は成功しアユンは最高財務責任者の座に就いた。だが2006年にアユンは失踪。そして役人であるタンとのコネでジャンは開発事業を獲得し、タンは開発区の担当主任に昇格した。
2006年当時刑事だったヤンの父親はアユンの失踪事件を調べている最中に交通事故にあい、現在は介護施設に入居している。父は河川敷で発見された死体のDNA鑑定を求めたにもかかわらず、放置され資料も消えてしまったことを知ったヤンは、アユン失踪とタン殺害の両事件にジャンが関わっているのではないかと疑う。
その過程で思わぬ罠を仕掛けられ、免職に追い込まれたヤンは香港に渡り、かつて父と一緒にアユン失踪事件を調べていた探偵のアレックスを訪ね、調査に協力してくれるよう頼む。アレックスからDNA鑑定結果が発見されてジャンのアユン殺害容疑が濃厚になったと知らせを受け、広州に戻った。誤解が解け警察に復帰したヤンは、アユンとタンの殺人事件を解決。と思いきや、そうではなかった。真実をもとめさらに捜査する。

撮影当初のタイトルは『地獄恋人』だったが、完成段階で『一場遊戯、一場夢』(一夜のゲーム、一夜の夢)に。これは劇中とエンドロールで流れる香港出身で台湾活躍する歌手王傑(ワン・チエ)のヒット曲のタイトル。改革開放の初期に流行した。その英題が「The Shadow Play」。しかし、この中国語タイトルが検閲で使用不可になり、同じく改革開放初期の台湾の流行歌である『風中有朵雨做的雲』(雨は雲となり風に漂う)を最終タイトルに。

一場遊戯、一場夢 王傑(ワン・チエ) 
https://www.youtube.com/watch?v=B2S1EngkjQk

風中有朵雨做的雲 孟庭葦(モン・ティンウェイ)
https://www.youtube.com/watch?v=huHJE5ZXQ5Y

2016年にクランクインし2017年春に完成した本作は、北京市の映画関係部署の審査に入ったが、その後約2年、繰り返し修正を迫られ、中国本土での公開日まであとわずか7日というところまで作業は続いたという。2019年4月4日に中国本土で公開されると、3日間で約6.5億円の興行収入を記録し大ヒット。また、中国公開前の、2018年11月に開催された第55回台湾金馬奨で、監督賞、撮影賞、音響賞、アクション設計賞の4部門でノミネートを果たし、2019年2月の第69回ベルリン国際映画祭パノラマ部門で上映された。

『シャドウプレイ【完全版】』公式HP 
英題:The Shadow Play
2019 年/中国/129 分/北京語・広東語・台湾語/DCP/1.85:1/
配給・宣伝:アップリンク

『夢の裏側』 原題:夢的背後
Behind the Dream: A Documentary on the Shadow Play

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©DREAM FACTORY, Travis Wei


監督:馬英力(マー・インリー)

『シャドウプレイ』製作の舞台裏を準備から公開に至るまで追った『夢の裏側』も同時に上映される。メイク、衣装、撮影の状況、カラーリングのことなど、多岐に渡って撮っている。そして、本作が完成してから2年もの期間を経なくては公開できなかった検閲の過程もドキュメントされている。自分の思いを語るロウ・イエ監督。様々な壁を乗り越えて、2019年4月公開にいたるまでの苦労と工夫が描かれる。監督は、ロウ・イエ監督の妻であり本作共同脚本家でもある馬英力(マー・インリー)。

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第20回東京フィルメックスでの馬英力監督(撮影:宮崎暁美)


2018年製作/94分/G/中国

広州で起きた汚職事件をヒントに、都市開発をめぐる殺人事件の真相を追うという複雑な構造。ドキュメンタリータッチで描かれ、粗くて暗い映像ゆえに、時に目を凝らさないと何が写っているのかわからないこともあった。
婁燁監督は、これまでも中国のその時代の姿と、人間の欲望や絶望など感情を混沌とした人間関係に反映した映像で描いてきたと思うが、この作品はさらに複雑な人間関係gあ描かれ、時代を行ったり来たり、中国、香港、台湾も行ったり来たりで、これは1回では複雑すぎて理解ができずだった。基本的な人間関係がわからないと、事件の進展、内容の理解も難しかしい。なので2019年の東京フィルメックスで観たのにすっかり話を忘れていて、最初から見直し。2度目でやっと人間関係が把握できた。
1989年から続く、中国の時代の変遷とともに、台湾、香港との関係も描いている。現在では、もっと変わっているから、次作ではまたそれを取り入れてくるのかもしれない。改革開放の30年の間の中国の変化の中に物語を組み込み、中国と中国人の姿をあぶりだす。
映画題名を『一場遊戯、一場夢』(一夜のゲーム、一夜の夢)にしたかったけど検閲を通らず、この王傑(ワン・チエ)の有名な曲の英題「シャドウプレイ」を英題にしたと婁燁監督は語っていてびっくり。じつは私は王傑のファンで彼のCDを10枚以上持っている。この曲が途中に流れ、最後のタイトルロールにも王傑自身の哀愁のある歌声が聴け嬉しかった。この曲はよく聴いていたけどサビの部分の意味を知らなかった。この作品の字幕で知り、そうだったのかとびっくり(笑)。「喔 為什麼道別離 又說什麼在一起」(別れようといいながら、なぜ一緒にいるの)(暁)。


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2022年12月17日

戦慄のリンク(原題:網路凶鈴 The Perilous Internet Ring)

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監督:鶴田法男
原作:マ・ボヨン「她死在QQ上」
脚本:ヤン・ヤン
撮影:神田創
音楽:小畑貴裕
出演:スン・イハン(ジョウ・シャオノア)、フー・モンポー(マー・ミン)、チャン・チン(ジャン・チォン)、ワン・マンティ(スー・シャオジン)、ニー・ムーシー(タン・ジン)、チャン・ユンイン(ショウ・ナ)、ハン・チウチ(ダイ・ユンツォン)、ワン・ツーイー(シア・ウェイイー)、ジョウ・ハオトン(トン教授)、シャオ・ハン(リー隊長)

大学3年生のジョウ・シャオノアは、深夜に従姉のタン・ジンからの電話を受ける。小説家志望のタン・ジンは、あるネット小説を読んで怖くなり、シャオノアに電話したのだった。シャオノアは遅い時間なので行けず、翌日トン教授の心理学の授業で会う約束をした。時間になっても現れないタン・ジンが気になり、彼女の家に向かうが、タン・ジンはすでに死んでいた。
公安警察のリー隊長から、検視では自殺の可能性が高いと言われたシャオノアだったが、タン・ジンは自殺などしないと否定する。犯罪心理学に詳しい記者志望のマー・ミンに相談し、タン・ジンのパソコンを調べることにした。そこでタン・シンがショウ・ナという女性とチャットしていたことと、貼られていたリンクを発見する。リンク先は「残星楼」という小説で、読み始めたシャオノアは自分の名前を呼ぶ声や、人の気配を感じるようになる。

Jホラーの先駆者、Jホラーの父こと鶴田監督が、中国の映画会社に乞われてメガホンをとった作品。中国のスン・イハン(孫伊涵)と台湾のフー・モンポー(傳孟柏)、若手俳優が主演、ネット小説でつながった男女が次々と不可解な死をとげる謎を追跡します。
中国では、幽霊の存在自体認められていないそうなので、ストーリーと映像に工夫が必要だったようです。シャオノアが見る長い髪の女性は、中国にも知られている「貞子」のスタイルになったのだとか。鶴田監督が気心の知れた日本のスタッフを揃えて臨んだ撮影現場は、勝手の違うことの連続だったそうです。現場での初めての体験の数々は、双方に影響を与えて作品に反映されたのではないでしょうか。
エンターテイメントの需要が大きく、発展も著しい中国でこういう交流が多くあると風通しもよくなるはず。(白)


2020年/中国/カラー/96分
配給・宣伝:フリーマン・オフィス
(C)伊梨大盛傳奇影業有限公司
https://senritsu-link.com/
★2022年12月23日(金)より新宿シネマカリテにてロードショー

posted by shiraishi at 17:55| Comment(0) | 中国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする