2021年02月27日

特集上映<映画で見る現代チベット> 『ラモとガベ(原題)』日本初上映

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この度、ムヴィオラ主催でチベット映画の特集上映「映画で見る現代チベット」が岩波ホールで開催されます。
『草原の河』『巡礼の約束』のソンタルジャ監督最新作でサンセバスチャン映画祭で上映された『ラモとガベ(原題)』が、今回特別に日本プレミア上映。また、ソンタルジャ監督とともにチベット映画人を代表する存在であり、昨年の第20回東京フィルメックスで3度目のグランプリを受賞した最新作『羊飼いと風船』が1月22日より初の劇場公開となったペマ・ツェテン監督の劇場未公開の傑作『オールド・ドッグ』『タルロ』も上映されます。

日本初上映の『ラモとガベ(原題)』以外の6作品は、かつて映画祭や劇場公開時に観ていますが、どれもチベットの雄大な景色を背景にした素晴らしい作品です。この機会に、ぜひご覧ください。(景山咲子)

◆日程:2021年3月13日(土)~4月2日(金)

◆会場:岩波ホール 
〒101-0051 東京都千代田区神田神保町2-1 岩波神保町ビル10F
◆上映作品(7作品)
ソンタルジャ監督作を見る:
『ラモとガベ(原題)』『巡礼の約束』『草原の河』『陽に灼けた道』
ペマ・ツェテン監督作を見る:
『タルロ』『オールド・ドッグ』
チャン・ヤン監督の “外の目”:
『ラサへの歩き方~祈りの2400km』

◆タイムテーブル:特集上映公式サイトに掲載 http://moviola.jp/tibet2021/

◆トークイベント(各回30分程度)
3/13(土)10:00~『ラモとガベ(原題)』上映後 ソンタルジャ監督ティーチイン
3/13(土)16:00~『オールド・ドッグ』上映後 星泉さん(チベット語研究者)トークショー
3/20(土)13:00~『草原の河』上映後 松尾みゆきさん(字幕翻訳者、映画プロデューサー)トークショー

☆チベット文学と映画制作の現在
http://tibetanliterature.blogspot.com/


◆上映作品 詳細

ソンタルジャ監督作を見る:

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中国映画祭「電影2019」でのソンタルジャ 監督 (撮影:宮崎暁美)

『ラモとガベ(原題)』 ★日本プレミア上映
原題:拉姆与嘎贝 英語題:Lhamo and Skalbe
監督:ソンタルジャ
出演: ソナム・ニマ(ガベ)、デキ(ラモ)、スィチョクジャ(ジャシ)
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ラモとガベは婚姻届を出しに行ったところ、ガベが以前結婚しており、まだ離婚が成立していないことを知る。元妻とは4年前に結婚の約束をしたものの、間際で破談となり、ガベは自分が結婚していたことを知らなかったのだ。ガベは離婚するために元妻を探し始め、元妻が世俗を捨て、出家していたことを知る。尼僧となった元妻を寺院に訪ねるが、会うことさえままならず、ガベの離婚話は一向に進まない。一方ラモは、正月に行われる歌舞劇「ケサル王物語」で、罪のために地獄に落ちた女性の役で稽古に取り組んでいたが、その役にわだかまりを感じ、次第に結婚への恐れを感じ始める。ラモは、人に言えない秘密を抱えていた…。
2019年/110分/カラー
2019年サンセバスチャン映画祭公式出品
詳細:https://note.com/moviola/n/ne5414579373d


『巡礼の約束』  原題 阿拉姜色 英語題:Ala Changso
監督:ソンタルジャ
出演:ロルジェ:ヨンジョンジャ、ウォマ:ニマソンソン、ノルウ:スィチョクジャ、ダンダル:ジンパ
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ラサへの巡礼の旅に出た妻を追って、血のつながらぬ父と息子が一頭の仔ロバとともに歩き続ける・・・
2015年、第28回東京国際映画祭ワールド・フォーカス部門で『河』のタイトルで上映
日本公開:2020年2月8日(土)
公式サイト:http://moviola.jp/junrei_yakusoku/
シネジャ作品紹介 http://cinejour2019ikoufilm.seesaa.net/article/473232151.html


『草原の河』 原題:河  英題:River
監督・脚本:ソンタルジャ
出演:ヤンチェン・ラモ、ルンゼン・ドルマ、グル・ツェテン
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広大なチベット高原で暮らす6歳の少女ヤンチェン・ラモ。春のはじめ、父グルのバイクの後ろに乗って、祖父に会いに行く・・・
2015年/中国/チベット語/98分/DCP/ヴィスタサイズ
日本公開:2017年4月29日(土)
*チベット人監督作品として、日本で初めて劇場公開された映画。
公式サイト:http://moviola.jp/kawa/
シネジャ作品紹介http://cinemajournal-review.seesaa.net/article/449065980.html


『陽に灼けた道』原題:太陽総在左辺 英語題:The Sun Beaten Path
監督:ソンタルジャ 
出演:イシェ・ルンドゥプ、ロチ、カルザン・リンチェン
ソンタルジャ監督の長編デビュー作
2011年アジア・フォーカス福岡国際映画祭で上映
★劇場未公開 
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結婚式を控えた青年ニマと彼の兄は、母を迎えに四つ辻でバスを待っていた。母親は街にいる娘を訪ねた帰りだった。兄はバイクの後部座席に母親を乗せて、その後からニマがトラクターで走っていた。だが、母の帯がバイクの車輪に絡まって母親は落ちてしまう。後ろから来たニマは、バイクから落ちた母親をトラクターで轢いて死なせてしまう。このことで、ニマは悲しみと自責の念にとらわれ、母親の血の混じった一握りの土とともに故郷と恋人を残し、ラサに巡礼の旅に出るのだった。(2011年9月第4週 シネジャ スタッフ日記 白井美紀子記) 
私もアジアフォーカスで拝見。バイクから落ちた母親を轢いてしまった場面が、不謹慎なのですが、なんとも可笑しかったのを思い出します。(咲)

2011年/89分/カラー
詳細:https://note.com/moviola/n/nfb850b89e4d9


ペマ・ツェテン監督作を見る:
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ペマツェテン監督2015年東京フィルメックス 『タルロ』上映時(撮影 宮崎暁美)


『タルロ』  原題:塔洛 英語題:Tharlo
監督・脚本:ペマ・ツェテン
出演:シデ・ニマ、ヤンシクツォ
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幼い時に親を亡くし、羊飼いとして暮らしてきたタルロ。役所で、身分証明書を作るために長髪を切れと言われ理髪店に行く。そこで出会う理髪店の若い女性。今まで女性に縁のなかったタルロ。やがて、彼女とカラオケに行くことになる・・・
ユーモアたっぷりにチベット族のタルロの人生、そして恋の顛末を語った物語。

2015年/123分/モノクロ
★劇場未公開 

詳細:https://note.com/moviola/n/n2b2c24fdfddf
2015年 東京フィルメックス チベット族の孤独な男をユーモアたっぷりに描いた『タルロ』 (咲)
http://cinemajournal.seesaa.net/article/430268035.html


『オールド・ドッグ』 原題:老狗  英語題:Old Dog
監督・脚本:ペマ・ツェテン
出演:ロチ、ドルマキャプ、タムディンツォ  
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老マスチフ犬を飼っている牧畜民の老人。中国の富裕層のマスチフ犬ブームで、犬泥棒や、しつこい仲買人が現れる。老人の息子も犬を高値で売り飛ばそうとするが、老人は「犬は民族の誇り」と手放すことを頑なに拒む…
2011年/88分/カラー
★劇場未公開
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2011年の東京フィルメックスで最優秀作品賞受賞の喜びを語るペマツェテン監督(撮影:景山咲子) 
詳細:https://note.com/moviola/n/n95c0d61f96ab


チャン・ヤン監督の “外の目”:
『ラサへの歩き方~祈りの2400km』
監督・脚本:張楊(チャン・ヤン)(『こころの湯』『胡同のひまわり』『グォさんの仮装大賞』) 
出演:チベット巡礼の旅をする11人の村人たち
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ドキュメンタリーのようなのに、本作は張楊監督が細部まで書き込んだフィクション。監督が思い描いていた登場人物を、老人から若者、さらに妊婦まで、奇跡的に一つの村の3家族で構成。五体投地でラサ、さらにカイラスをめざして巡礼する人々の姿を描いた物語。

日本公開:2016年7月23日
公式サイト:http://www.moviola.jp/lhasa/#pagetop
シネジャ作品紹介http://cinemajournal-review.seesaa.net/article/440326183.html


posted by sakiko at 19:50| Comment(0) | 中国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年02月21日

ナタ 転生(原題:新神榜:哪吒重生 英題:New Gods: Nezha Reborn)

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監督:ZHAO Ji(趙霽)
脚本:MU Chuan(沐川)
プロデューサー:LU Xi(路晞)
出演:YANG Tianxiang(楊天翔)、ZHANG He(張赫)、XUAN Xiaoming(宣暁鳴)、LI Shimeng(李詩萌)

3000年以上前。7歳の《ナタ》は幼いながら強い魔力を持っている少年神。世界で絶大な権力を持つ一族・東海龍王の息子・三太子に歯向かい、死闘を繰り広げた末に勝利した。息子を殺され激怒した東海龍王は、町民たちの命を盾にナタに脅しをかける。ナタは罪のない彼らを死なせまいと自ら命を絶ったのだった。
そして現代。ナタはバイク好きな青年、李雲祥(リ・ウンショウ)として生まれ変わっていた。東海龍王は町の水を一手に握る徳興グループの会長として、三太子も同じく息子の三公子として生まれ変わっていた。長い間転生を繰り返し同じ運命を背負っていたが、李雲祥だけは自分が何者かまだ気づいていなかった。

これまでの中国アニメーション興行成績1位は『西遊記 ヒーロー・イズ・バック』でした。2016年の東京アニメアワードで観て、田暁鵬監督の取材もできました(本誌記事)。こんなにクオリティの高いアニメができるようになっていたんだ!と驚いたのですが、さらに進化していました。
最近の中国映画のCGには目を見張っていますが、このフルCGアニメーションもすごいです。登場人物は顔こそアニメキャラですが、台詞に合った唇の動き、表情や衣裳の質感、髭や髪の毛の1本1本、動きにつれて揺れる様の繊細なこと。緻密に描き分けられた背景、そこで繰り広げられるダイナミックかつスピーディなアクションなどなど、あげればきりがありません。この舞台になる町は水不足ですが、水を統べる龍が登場して水がふんだんに出てきます。水の表現が難しいと聞いていましたが、どれだけの資金と手間暇をつぎ込んだのでしょう。大ヒット中なのも納得で、すぐ回収できそうです。
土台は多分中国人なら知らない人はいない、古典の「封神演義」です。文庫2巻組が出ています。スケールの大きなストーリーは、これ1本では到底終わりそうもありません。続編も楽しみです。大きなスクリーンで主人公のつもりになって観たい作品。気になったのが過去も現在も父と息子だけで、母はどこに?(白)


『ナタ転生』場面写真①.jpg


2020年/中国/カラー/117分
配給:チームジョイ
(C)Light Chaser Animation Studios
https://www.nezha.jp/
★2021年2月26日(土)TOHOシネマズ池袋、TOHOシネマズ上野 ほか順次追加予定
posted by shiraishi at 17:19| Comment(0) | 中国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年02月07日

春江水暖〜しゅんこうすいだん 原題:春江水暖

2021年2月11日(木・祝)Bunkamuraル・シネマほか全国順次公開!
劇場情報
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©2019 Factory Gate Films All Rights Reserved

監督・脚本:顧暁剛(グー・シャオガン)
撮影:ユー・ニンフイ、ドン・シュー
音楽:竇唯(ドウ・ウェイ)
芸術コンサルタント:梅芳(メイ・フォン)
出演:
長男・有富ヨウフー:銭有法(チエン・ヨウファー)
次男・有路ヨウルー:章仁良(ジャン・レンリアン)
三男・有金ヨウジン:孫章建(スン・ジャンジェン)
四男・有宏ヨウホン:(スン・ジャンウェイ)
長男の妻フォンジュエン:王風娟(ワン・フォンジュエン)
四兄弟の母:杜紅軍(ドゥ・ホンジュン)
 
浙江省杭州市富陽。大河・富春江が流れる。美しい自然を背景に、町の近代化や四季折々の風景とともに、一つの家族の出来事、変遷を描いた顧暁剛監督のデビュー作。老いた母と4人の息子、孫娘の恋。ある大家族の四季と変わりゆく世界。
富陽地区は再開発の只中にある。顧(グー)家の家長である母の誕生日の祝宴の夜。四人兄弟の長男がやっているレストランで、母の誕生祝いの宴が開かれ、そこに集まった息子たち。老いた母のもとに4人の兄弟や親戚たちが集う。その祝宴の最中に、母が脳卒中で倒れてしまう。認知症が進み、介護が必要になった母。長男夫婦と同居することに。そこから夫婦の介護に関する葛藤が始まった。二人の娘グーシーは同僚のジャン先生と恋愛中で結婚したいのに、両親がその結婚に反対なのでこの町を出ようと考える。
漁師の次男夫婦は、30年暮らした家を立ち退くことになり、持ち船に仮住まい中。その息子に結婚話が来て、急遽見合いすることになる。
三男は離婚してダウン症の息子を育てているが、あちこちに借金があり、てっとり早く返すためなのか、違法な賭場を開いている。そのせいで借金取りが来たり、警察に捕まらないかと兄弟たちはやきもきしている。四男は何をしているのかわからないが未婚で、高齢な母の指令で?見合いさせられ、決断を迫られる。賭博がバレて三男が警察に捕まる以外は、ごく一般的な家族の出来事が水辺の街で営まれる。

登場人物は、監督自身の親戚・知人を、脚本を書く段階から考えて、アテ書きをしたそう。「製作費を節約できるという事情に加え、時代の風景を切り取ること、市井の人々の雰囲気を伝えることを大切にする思いがあったから」と、顧暁剛監督はフィルメックス2019のQ&Aで答えていた。老練な映画構想を持った映像だったので、ベテランの監督かなと思ったら、まだ若い監督だった。影響を受けた監督は、侯孝賢監督(ホウ・シャオシェン)監督と楊德昌(エドワード・ヤン)監督と言っていたけど、それを連想するような映像詩だと思った。
「現代の街の変化をいかにとらえるか考えるうちに、山水画の傑作『富春山居図』という絵巻物からヒントを得て、映画を絵巻物のように描くことを思いつきました」と振り返りながら、「侯孝賢監督の作品は、詩や散文など中国の伝統的な文人の視点で物語が組み立てられていると考えています。私自身は、文人的な視点と絵画を融合した映画を撮りたいと思いました」と語った。
劇中の音楽は中国のロック歌手、竇唯(ドウ・ウェイ。元、黒豹楽隊のボーカリスト)で、最近は伝統的な古典と現代文化を融合した新たな音楽を生み出している。顧監督がどのようにして古典を現代に落とし込もうかと苦慮していた時に大きな示唆を与えてくれたという。
「巻1終り」と出て、続編を想像させるような終わり方に監督は「この続編は必ず撮りたいと思っています」と語り、「最初からそういう構想だったわけではなく、撮影が進むうちに映画に対する考え方に変化が生まれ、このスタッフと一緒にこれからも映画と芸術を探求していきたいと考えるようになった。10年でひとつの作品として杭州の町の変化を描く構想もあり、名画『清明上河図』のように一つの長い絵巻物として見せることができればと思います」と語っていた。次の作品も楽しみな若手の登場である(暁)


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顧暁剛監督 東京フィルメックス2019にて(撮影 宮崎暁美)

母親の誕生日に血縁関係者を集めて祝宴を開く。テーブルに並ぶ料理はどれも華やかで、豊穣を意味するすずきを蒸した料理は繊細な味なのだろう。食べてみたくなる。日本ではここまでゴージャスに母親の誕生日を祝うことは珍しい(と思う)。冒頭から文化の違いを感じるが、4人兄弟それぞれの実情が浮かび上がってくると日本と変わらないものを感じる。しっかり者に見えるけれど情が薄い、母親思いだけれど生活がだらしない、婚家よりも自分の実家が大事。自分の胸に手を当てると思い当たる節がある人はいるのではないだろうか。さらに親の介護、その費用の負担、家の購入、不況下で困窮する生活、娘の結婚など家族が抱える問題はどこの国も同じ。しかし、悠久のときを流れてきた富春江と生い茂る木々を映した長回しの映像を見ていると抱えている問題の小ささを感じずにはいられない。(堀)

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©2019 Factory Gate Films All Rights Reserved


2019年の東京フィルメックスで、ちょうど上映の真っ最中にイランの女優さんにインタビュー。どうしても観たくて、40分中抜けながらも拝見。(寝たと思えば同じ♪)まさに絵巻物のような素敵な作品です。公開されるのが、ほんとに嬉しいです。
東京フィルメックスで審査員特別賞を受賞しましたが、授賞式の時には監督は既に帰国されていて、ビデオメッセージで喜びを語ってくださいました。
ここにその時のメッセージをお届けしておきます。(咲)

皆さーん、こんにちは。私は『春江水暖』の監督のグー・シャオガンです。あのすみません(と、ここまで日本語で)スケジュールの都合で会場で賞を受け取れずごめんなさい。審査員の人たちが『春江水暖』を選んでくださったと知って、とても光栄で嬉しく思いました。まずは出資会社に感謝します。プロデューサー、製作チーム、私の家族、サポートしてくださったすべての方々に感謝します。撮影スタッフの一人一人にはとびっきりの感謝を伝えたいです。春夏秋冬の季節を一緒に歩んでくれてありがとう。私たちは力をあわせて映画を完成させました。みんながいなかったらこの映画は存在しなかったでしょう。だからみんなに感謝します。代表して審査員の皆さんに感謝申しあげます。認めてくれてありがとうございます。最後に市山さんにも感謝します。この映画を日本に連れてきてくださってありがとうございます。
アリガトウゴザイマス。ハイ。


★東京フィルメックス授賞式の模様はこちらでご覧ください。受賞理由なども掲載しています。


☆公開直前(2/9)に、グー・シャオガン監督より日本観客へのメッセージ動画到着! 
https://youtu.be/f43FKHTjWLE
各界著名人からの絶賛コメントと共に、ぜひyoutubeでご覧ください。


2019年カンヌ国際映画祭批評家週間クロージング作品
2019年東京フィルメックス審査員特別賞

予告編動画 :https://www.youtube.com/watch?v=6X84szEDkRE
YouTube: https://youtu.be/3nDt9yrBaKo 

中国映画 | 2019 年 |150 分|
字幕:市山尚三、武井みゆき|字幕監修:新田理恵|
配給:ムヴィオラ 
公式サイト:http://www.moviola.jp/shunkosuidan/
 
posted by akemi at 10:55| Comment(0) | 中国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年01月17日

羊飼いと風船(原題:気球/英題:BALLOON)

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監督・脚本:ペマ・ツェテン
出演:ソナム・ワンモ(ドルカル)、ジンバ(タルギェ)、ヤンシクツォ(シャンチュ・ドルマ)

神秘の地・チベットの大草原。牧畜を生業に暮らす祖父、ジンバとドルカル夫婦、3人の息子の三世代の家族。昔ながらの素朴で穏やかな生活を続けてきたが、地方にも近代化の波は静かに押し寄せてきていた。長男は寄宿学校に進み、長い休みのときだけ戻ってくる。働き手の一人だった祖父が亡くなってすぐ、ドルカルの妊娠がわかった。すでに3人子どもがいるうえ、ドルカルの負担が増すばかりと女医は中絶を薦める。しかし、ジンバは祖父が転生してくると高僧に告げられて、それを頑なに信じている。

草原を細長い風船を持って走り回る兄弟。お父さんに叱られています。実は風船でなく、お母さんが寝床に隠してあった避妊具で、これがずっと後々まで大事なアイテムになります。慎み深いお母さんは最後まで名前を口に出しません。
一人っ子政策の中でも、牧畜民は3人まで子どもを持つことが認められているそうです。労働力ということなんでしょう。4人目からは罰金です。子どもたちは学齢期になると街の寄宿学校に入るので、手伝いを期待できず学費もかかります。ちょうど新旧世代の真ん中のジンバとドルカル夫婦は、両方の習慣と時代の流れに挟まって悩みも多くなります。男女分業の家では、たった一人の女性であるドルカルが全ての家事と子育てを引き受けるので、女医さんの説得も最もです。それで結局どうなったかは、映画を観てのお楽しみに。これも受け取り方がそれぞれで、自分の生き方を問われそうです。(白)


まずは兄弟が膨らませて遊んでいる風船の正体に思わず笑ってしまいます。でも3人の子持ちの母親ドルカルにとっては笑いごとではありません。
母親ドルカルの控え目ながらも力強い姿が素敵ですが、出家したドルカルの妹シャンチュ・ドルマのことも印象的です。深く被った独特の帽子で目元を隠していて、神秘的な雰囲気。過去の恋愛沙汰で出家することになったらしく、その相手である先生との再会が本作のもう一つの大事なエピソードになっていて、いったい何があったのか?と興味を惹かれます。
また、音楽をイランのペイマン・ヤズダニアンが担当していることにも注目しました。イラン映画のみならず、ロウ・イエ監督の『天安門、恋人たち』『二重生活』『スプリング・フィーバー』、リー・ユー(李玉)監督の『ブッダ・マウンテン~希望と祈りの旅』『ロスト・イン・北京』など、中国映画界でもお気に入りの音楽家です。

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2019年の第20回東京フィルメックスでは『気球』のタイトルで上映され、最優秀作品賞を受賞。授賞式では、父親役のジンバさんがトロフィーを受け取り、来日出来なかったペマツェテン監督のメッセージをスマホを見ながら読み上げました。
ジンバさんは、11月27日上映後のQ&Aにも登壇しましたが、映画での役柄と違って、とてもシャイな方でした。(咲)


食べていくのがやっとの牧畜生活。3人もの子供がいて、まだ小さく学費もかかる。それなのに避妊に協力的でない夫。妻との思いの差が描かれる。妻の妹はかつて恋人との交際の中で中絶をし(はっきりとは描かれていないがそういうことだと思う)、それを機に尼僧になった? その元恋人が姉の息子の学校の教師になって偶然再会するが、彼は彼女との経験を元に、彼女に断りもなく小説を書いていた。出版した本を渡されるが、ここにも男と女の思いの違いがある。
夫の父が亡くなり、僧が転生を予言する。亡くなった人が転生することを信じる宗教文化が生きている地域。まもなく妊娠がわかるが貧しい生活の中、子供を育てていけるか悩む妻。夫は子の誕生は父の転生と喜ぶが、妻は現実に直面し中絶を決断する。手術台にいる妻のもとに夫と長男が駆けつけ中絶を止めようとする? やめたのかどうかは描かれないが、妻は尼僧の妹とともにお寺参りに行き、街に出かけた夫は子たちとの約束の大きな赤い風船をふたつ買って帰る。しかし、風船は息子たちに渡した途端にひとつは割れ、もうひとつは青空のかなたに飛んで行ってしまう。家族はその行方を追う。問題に直面しながら解決されないこの問題を暗示しているよう。淡々とした草原の暮らしの中で、この夫婦や家族の将来はどうなっていくのだろうと思わせる(暁)。

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ジンバさん 第20回東京フィルメックス2019『気球』Q&Aで(撮影 宮崎暁美)

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ペマ・ツェテン監督 2015年第16回東京フィルメックス『タルロ』最優秀作品賞受賞 (撮影 宮崎暁美)


受賞歴
第76回ヴェネチア国際映画祭Sfera 1932 Award スペシャルメンション
第20回 東京フィルメックス 最優秀作品賞
第23回上海国際映画祭 最優秀監督賞/最優秀脚本賞

2019年/中国/102分/チベット語/ビスタ
配給:ビターズ・エンド
©︎2019 Factory Gate Films. All Rights Reserved.
http://www.bitters.co.jp/hitsujikai/
★2021年 1 月 22 日(金)よりシネスイッチ銀座ほか全国順次公開

◎「WORLD BREAKFAST ALLDAY」とのコラボドリンクメニュー
「WORLD BREAKFAST ALLDAY」外苑前店・吉祥寺店にて映画公開期間中販売
バター茶 580 円(税別)
温かいお茶にバターとヒマラヤ岩塩を混ぜて飲むチベットでは定番の伝統的なお茶
posted by shiraishi at 15:05| Comment(0) | 中国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年11月22日

THE CROSSING 香港と大陸をまたぐ少女  原題:過春天

劇場公開日 2020年11月20日
公開情報 
公式HP 
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(C)Wanda Media Co., Ltd

スタッフ・キャスト
監督:白雪(バイ・シュエ)
製作:孫陶(スン・タオ)、賀斌(ハー・ビン)
製作総指揮:田壮壮(ティエン・チュアンチュアン)
脚本:白雪(バイ・シュエ)、林美如(リン・メイルー)
撮影:朴松日(プー・ソンリー)
美術:張兆康(チャン・ジャオカン)
編集:Matthieu Laclau(マシュー・ラクロワ)、林欣民(リン・シンミン)
   蔡晏珊(ツァイ・イエンシャン)
音楽:高小陽(カオ・シャオヤン)、李繽(リー・ビン)
出演
ペイ:黄堯(ホアン・ヤオ)
ハオ:孫陽(スン・ヤン)  
ジョー:湯加文(カルメン・タン)
ラン:倪虹潔(ニー・ホンジエ)
ホア:江美儀(エレン・コン)

通り過ぎたら、また春が来る

香港出身の父と中国大陸出身の母を持つ16歳の高校生ペイは深圳に住み、毎日香港の高校に通っている。父ヨンは香港で家庭を持ちトラック運転手をしていて、母ランは愛人として深圳で暮らし、麻雀で生計を立てている。
家族がバラバラで孤独なペイにとって、心の拠り所は親友ジョーと過ごす時間。2人は北海道旅行を夢見て、学校で小遣い稼ぎをしていた。ある日家に帰る途中、香港と深圳の行き来の途中、スマートフォンの密輸グループに巻き込まれるが、これでお金を稼ぐことができると知ると、ペイはお金欲しさに親友ジョーの彼氏ハオと交渉して、密輸団の仲間に入り、危険な裏の仕事に踏み入れる。
密輸団での仕事をこなしていく内に、ペイは自然とハオと密接な関係になり、ハオは密輸団のリーダーに内緒で、ペイに大きな仕事を持ちかける。ペイとハオが密接な関係にあると気づいたジョーはペイを問い詰める。そこで、ペイはジョーとの友情が試される。
家族との生活と友情、上層階級と下層階級の生活、そして日常生活と犯罪間を行き来する彼女は、命の危険と生計を維持する苦労。直面する道徳的な問題に立ち向かう様子が描かれる。
2年間の入念なインタビューやリサーチを重ねたうえで脚本を執筆した白雪監督は、香港と中国大陸の現状をリアルに描き、青春の輝きと脆さを描いた。

香港の市民権を持っている子供は中国本土で暮らしていても、香港との間をたやすく越えて越境通学ができる。主人公はそのことを利用して密輸に手をそめてしまうのだが、それは長くは続かない。密輸で越境する時の臨場感、緊張感、それが観るものにも伝わり、なんともいえない悲しさ、寂しさを感じた。香港映画でも、中国本土と香港の間の密輸についてはずいぶん描かれてきたが、それほど密輸は多いのか。日本にいるとそういう国境間の緊張ということはないので、そう感じることはないが、国境というのが身近にある国、地域では、やはり、日々、緊張関係があるのだろう。香港に初めて行ったとき、空港や街中に銃を持った警官や兵士がいてものものしいと思ったが、こういう密輸が横行しているからだろうか。おかげで関係なくても銃を持っている人のそばを通る時は緊張する。そして、今の香港の状況も気にかかる(暁)。

女子高生ペイは自宅で行う賭けマージャンで生計を立てる母親と深圳で暮らし、香港の高校に通う。父親は香港で別の家庭を持っている。自分が大陸の人間なのか、香港の人間なのかわからない。学校には親友ジョーがいるが、彼女の家は格段に裕福で心のどこかに引け目を感じてしまう。心の底から落ち着ける居場所がないのが伝わってきた。
そんなペイがスマートフォンの密輸の現場に遭遇。制服を着た自分が疑われないことを知り、自ら仲間に入る。きっかけはジョーとの北海道旅行の費用を貯めるためだった。ところが、期待されることに喜びを感じるようになり、犯罪を重ねていく。必要としてくれる人がいる居場所を見つけてしまったのだ。
犯罪を題材にしているように見えるけれど、描いているのは主人公のアイデンティティの模索。そこにジョーとの友情や、ジョーの恋人で密輸グループの仲間でもあるハオとの恋愛が絡んでくる。ちょっとビターな青春物語といえるだろう。
1つ気になったのが、香港と深圳の違いがよくわからず、映っている街がどちらなのかわかりにくいこと。分からなくても本筋は問題なく理解できるが、わかったらもっと理解が深まった気がしなくもない。(堀)


2018年製作/99分/PG12/中国
原題:過春天 The Crossing
配給:チームジョイ
posted by akemi at 21:06| Comment(0) | 中国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする