2020年11月21日

君の誕生日(原題:Birthday)

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監督・脚本:イ・ジョンオン
撮影:チョ・ヨンギュ
音楽:イ・ジェジン
出演:ソル・ギョング(ジョンイル)、チョン・ドヨン(スンナム)、キム・ボミン(イェソル)、ユン・チャニョン、キム・スジン、イ・ボンリョン

2014年4月16日、仁川港から済州島へ向かっていたセウォル号が沈没し、修学旅行中の高校生ら300人以上もが亡くなった。ジョンイルとスンナムの息子のスホも亡くなった。ジョンイルは父としての役目を果たせず、家族に負い目を感じて生きてきた。母のスンナムは近づいてくるスホの誕生日を前に、今だにスホの死を受け入れられない。妹のイェソルは不安定な母を気遣いながら父のいない家で暮らしている。巷ではセウォル号の引き上げを求める署名活動が行われている。そこへ2年ぶりに父のジョンイルが戻ってきた。

親しい人の突然の別れはどうやって受け入れていけばいいのでしょう?ましてや我が子なら?大きなニュースとなった韓国の「セウォル号沈没事故」。この作品は我が子を亡くした一つの家族を中心に描いています。イ・ジョンオン監督は遺族の方々と誕生会を開催するボランティアの経験があり、そこでの活動で出会った人たち、見聞きしたことが小さなエピソードの積み重ねとして生きているようです。
演技に定評のあるソル・ギョングとチョン・ドヨンが悲しみに沈む夫婦を演じて涙せずにはいられません。もういない兄の存在があまりにも大きくて、母に甘えられない娘のイェソルが不憫でした。小さかった彼女も傷ついています。寄り添ってくれる人たちに支えられて、遺族たちが心穏やかに生きて行かれるよう願うばかり。(白)


この事故で息子スホを亡くし、息子への思いを胸に収め、日々の暮らしに追われる母スンナム(チョン・ドヨン)。謎の男のように登場する父親のジョンイル(ソル・ギョング)。長く家を留守にしていて、どこからか帰ってくるが居留守を使われ家に入れてもらえない。娘のイェソルは父の姿を見ても始めは誰だかわからない。ジョンイルは少しづつ通い、イェソルに寄りそいながら妻の心を癒してゆく。長く不在で息子が死んだ時にいなかったらしい。仕事でベトナムに行っていたり、そこでの事故が原因で刑務所に入ることになってしまい、彼も心に傷を負っていた。しかし「必要な時にいなかった」と、妻からいきなり離婚届けを突きつけられる。息子が亡くなった時に父親の役目を果たせなかったジョンイルは、家族に対して罪悪感を抱える。
息子の死を受け入れられないスンナムは遺族会が主催する息子の誕生会に難色を示すが、OKするジョンイル。しかたなく一緒に出かけるスンナム。息子の子供の頃しか知らないジョンイルにとって成長した息子の姿が想像できず、すべてが見慣れない現実の中、家族と一緒に息子の誕生会を迎える。皆の話の中から息子の思い出が浮かび上がってきた。スンナムも受け入れられなかった息子の死と向き合う。家族だけでなく、故人を知る人々が共に記憶し悲しみを分かち合うことがそれぞれの遺族にとってどれだけ生きていく上での励みになるかが描かれる(暁)。


セウォル号沈没事故のように、大きく報道された事故ともなると、息子を亡くしたことをニュースで知った知人友人が慰めの言葉をかけてくることでしょう。それが善意であっても、愛する家族を亡くした当事者にとって、それによって気持ちが安らぐこともあれば、鬱陶しいと感じる場合もあるのではないでしょうか。
母スンナムは、同じ立場で我が子を失った同級生の母親たちと会うのも、遺族を励ます会の主催する会に出るのも嫌なのです。息子が事故で亡くなった時に居なかった父親が突然帰ってきて、離婚を突き付けるほど心を閉ざしています。
事情があって、ベトナムから帰って来られなかった父親ですが、亡くなる前のままの息子の部屋に入った時によぎる思いが切ないです。遺族を励ます会から息子の誕生日会を開きたいと言われ、父親は妻には黙って写真や思い出の品を託します。そうして開かれた誕生日会。ようやく母スンナムの顔が和らぎます。不慮の事故で息子を亡くした悔しさや悲しみはいつまでも消えないけれど、思い出を抱えて前を向いて生きていかなければならないことを悟るまでにかかる時間は人さまざまだなと思います。
セウォル号沈没事故については、船長はじめ乗組員の対応が悪かったことなど色々と取り沙汰されていますが、イ・ジョンオン監督は、さらっと「早くセウォル号の引き上げを!」という署名運動を見せるに留めています。突然の事故で家族を失った人たちの思いに迫った普遍的な物語として、いろいろと考えさせられました。(咲)


2019年/韓国/カラー/シネスコ/120分
配給:クロックワークス
(C)2019 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & NOWFILM & REDPETER FILM & PINEHOUSEFILM. All Rights Reserved.
http://klockworx-asia.com/birthday/
★2020年11月27日(金)ロードショー
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2020年11月13日

詩人の恋(原題:시인의 사랑)

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監督・脚本:キム・ヤンヒ  
出演:ヤン・イクチュン、チョン・ヘジン、チョン・ガラム  

自然豊かな済州島で生まれ育った詩人のテッキ(ヤン・イクチュン)は、ここ数年スランプだ。稼げない彼を支える妻ガンスン(チョン・ヘジン)が妊活を始めたことから、テッキの人生に波が立ちはじめる。乏精子症と診断され、詩も浮かばず思い悩む彼を救ったのは、港に開店したドーナツ屋で働く美青年セユン(チョン・ガラム)だった。彼のつぶやきが詩の種となり、新しい詩の世界への扉を開いてくれたのだ。もっと彼を知りたい―。30代後半にして初めて芽生えた“守ってあげたい”という感情を隠しながら、テッキは孤独を抱えるセユンと心を通わせていく……。

恥じらいをなくしたガンスンに性的魅力を感じなくなってしまったテッキ。子どもが欲しくてナーバスになってしまうガンスン。未来に希望が持てないセユン。3人の人物造形が深い。そのため、誰か一人に感情移入するのではなく、場面ごとで、「わかる~」と共感する人が違ってきます。「お前はいったい誰の味方なのだ」と怒られてしまいそうですね。
芸術の世界でミューズ(女神)という言葉をよく聞きます。セユンは男性ですが、テッキにとってはミューズだったのでしょうか。ガンスンがテッキにドーナツを買って帰ったのがきっかけでテッキはドーナツの虜になり、お店に出掛けました。もし、ガンスンがドーナツを買って帰っていなければ…。運命とは分からないものです。(堀)


『息もできない』『あゝ、荒野』のヤン・イクチュンが、え? ほんとに彼?という位、ドーナツ屋の美青年に心ときめかせ、ドーナツを買いに走る姿が可愛いのです。あまり稼ぎのない夫を支えてきた妻ガンスンのやるせない思いに同情してしまいます。
本作が長編デビュー作のキム・ヤンヒ監督が紡ぎだした不思議な三角関係。妻のほうが現実的なのは、女性だからこそ描けたことかなと。
映画に出てきた詩人の住む町の風景が、去年の夏、済州島に行った時に訪れた西帰浦の町の高台にあるイ・ジュンソブ美術館の3階から眺めた小さな島が二つ浮かぶ風景にそっくりで、確認してみたら、やはり西帰浦でした。海沿いにまで行かなかったのが、今となっては残念! (咲)

ヤン・イクチョンが出ているということで観た。『あゝ、荒野』は観ていないけど、『息もできない』を東京フィルメックスで観た時、凶暴なヤクザの役を演じたその直後に監督でもあるヤン・イクチョン本人がQ&Aで出てきて、そのあまりに繊細で優しそうな人柄と、役柄との落差にびっくりした。そして、役者、ヤン・イクチョンに興味をもった。
その後ヤン・ヨンヒ監督の『かぞくのくに』では北朝鮮の諜報員役?を演じていたし、『あゝ、荒野』ではボクサーの役を演じていたというので、きっとそれぞれ独特の強調された役柄だったのだろうと思うけど、フィルメックスの時、目の前で本人が話している姿を見た印象では、この『詩人の恋』の詩人の役は本人の姿に近い印象だった。物静かで恥ずかしがりやという感じ。この映画を観ながら、東京フィルメックッス2009の『息もできない』Q&Aで、初めて本人を目の前で見た時のことを思い出していた(暁)。


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『息もできない』Q&Aでのヤン・イクチュン監督(撮影 宮崎暁美)

2017年/韓国/韓国語/アメリカンビスタ/カラー/5.1ch/110分
配給:エスパース・サロウ
©2017 CJ CGV Co., Ltd., JIN PICTURES, MIIN PICTURES All Rights Reserved
公式サイト:https://shijin.espace-sarou.com/
★11月13日(金)より、新宿武蔵野館ほか全国順次公開
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2020年10月03日

82年生まれ、キム・ジヨン(原題:Kim Ji-young: Born 1982)

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監督:キム・ドヨン
原作:チョ・ナムジュ
出演:チョン・ユミ(ジヨン)、コン・ユ(夫 デヒョン)、キム・ミギョン(母 ミスク)、コン・ミンジョン(姉 ウニョン)、キム・ソンチョル(弟 ジソク)、イ・オル(父 ヨンス)、イ・ボンリョン(ヘス)

1982年生まれのジヨンは大学の先輩のデヒョンと結婚し、出産のために会社を辞めた。デヒョンは仕事が忙しく、ジヨンは家事と一人娘のアヨンの育児にかかりきりで疲れがたまっていた。
新年はいつも夫の実家。義姉も帰省し、夫一家が歓談している間嫁は休むひまもない。突然ジヨンが実家の母の口調で「うちの娘も里帰りさせて」と話し始め、みんなはあっけにとられる。ときどきジヨンが他の人間が乗り移ったように変わるのを、夫のデヒョンだけが知っていた。ジヨン本人には全くその記憶がない。デヒョンは精神科医に相談していたが、本人にまだ言えずにいた。

同名の原作は韓国でも日本でも異例の売れ行きだったそうです。日本以上に男性優位の韓国で、時代が進んで目が開かれてきた女性たちが「これはおかしい!」と声をあげ始めました。社会でも家庭の中でも男の子が優遇され、女の子はそれを支える役割を担ってきました。男の子が生まれることばかり期待している親世代に、あなたは父親から生まれたのか?と言いたくなります。日本版の表紙には、観光地の看板のように顔がくりぬかれている女性が描かれています。誰でも顔を当てはめて「これは私のこと」と感じた女性が多かったはず。
ジヨンが”ほかの人間になって自分の心身の危機を訴えた”のは、自分の意見を言えなかったからでしょう。そこまで追い詰められていたことが痛ましいです。チョン・ユミとコン・ユはこれが3度目の共演で初の夫婦役です。繊細な演技の息もぴったり。デヒョンは決して無理解な夫ではありませんが、自分の育ってきた社会の認識から出て想像することができません。夫婦間のことだけでなく、女性が社会で期待される役割分担や、無意識の差別などが織り込まれて、自分や周りのことを振り返るきっかけができます。カップルで観ると認識の違いが明らかになりそうです。それで別れても責任は負えませんが、話し合ってより理解を深められたらいいですよね。
助演の俳優陣の手堅い演技にも支えられ、チョン・ユミは第56回大鐘賞映画祭で主演女優賞受賞、キム・ドヨン監督は第56回百想芸術大賞で新人監督賞を受賞しました。(白)


1人きりで抱える育児は本当に辛い。私もかつて心を病み、大丈夫と思えるまでに6年かかりました。夫はデヒョンのように病んだ私を気遣ってくれましたが、所詮は病に寄り添い、育児に協力するというスタンス。自分の問題としてとらえていませんでした。そこの認識の違いは大きい。作品からも夫婦の意識のずれが伝わってきます。
しかし、同じ経験をしたからこそ、見えてくるものもある。こちらが分かってくれないと思うように、夫もどうすればいいのかわからないことを妻に理解してもらえず辛かったのだと本作を見て、今更ながらに気づきました。
主人公は82年生まれ。韓国と日本では状況が違うかもしれませんが、87年に就職した私は男女雇用機会均等法2年目。年上の女性たちから、羨ましい気持ちからの過剰な期待を押し付けられました。その年上の女性たちの子どもがジヨン世代のはず。過剰な期待は私世代以上に強く押しつけられたのかもしれません。(堀)


1982年に韓国で生まれた女の子の名前の中で一番多かったのが、ジヨン。そして、韓国で一番多い名字がキム。まさにキム・ジヨンはどこにでもいる普通の女性。原作が出版された時に、韓国で100万部を超える大ヒットとなったのも、女性の社会進出が進む中で、育児や家事は女性がするものという考えが根強く、主人公の悩みが普通の女性たちの共感を得たからだといわれています。一方で、韓国では男性からの反発もあって、映画化にあたって反対意見もあったそうです。背景として、男性だけが軍隊に行く義務があることや、家族のために働いて犠牲になってきたという思いがあって、女性たちのほうが優遇されてきたじゃないかという被害者意識があるそうです。兵役の義務もない日本男子はもっと女性に協力すべきと思わず思ってしまいます。
出版のあと、男性も産休や育休などを取りやすくするなどの法案、いわゆる「キム・ジヨン法案」が国会で発議されたなど、韓国社会に大きな影響を与えた小説の映画化。さらに世界へも、男女の役割分担や、男女格差を考えるきっかけを与えてくれるでしょう。
ちなみに独身の私には、キム・ジヨンの思いにあまり感情移入できませんでした。思えば、育児や家庭に縛られるのが嫌で結婚に踏み切れなかったような気がします。もちろん、仕事の上での男女差別はずっしり感じてきましたが・・・ 世の男性にこそ観てほしい映画です。(咲)


2019年/日本/カラー/シネスコ/110分
配給:クロックワークス
© 2020 LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved.
http://klockworx-asia.com/kimjiyoung1982/
★2020年10月9日(金)新宿ピカデリーほか全国ロードショー



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2020年09月18日

ヒットマン エージェント:ジュン(英語題:Hitman: Agent Jun)

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監督・脚本:チェ・ウォンソプ
出演:クォン・サンウ(ジュン)、チョン・ジュノ(ドッキュ)、ファンウ・スルヘ(ミナ)、イ・イギョン(チョル)

両親が事故死して孤児となったジュンは、国家情報院に拾われ冷徹なドッキュ教官に暗殺要員となるべく育てられた。瞬く間に対テロ保安局“猛攻隊”のエースとして命令のまま多くの暗殺に関わっていく。しかしジュンには幼い頃から漫画家になりたいという夢があり、組織から抜け出す決断をする。任務遂行中、死を偽装して行方をくらませ15年が経った…。
ジュンは憧れたウェブ漫画家になったものの、全く人気が出ず妻の収入に頼っている。ついに編集長から打ち切りを宣告されて泥酔し、勢いで暗殺要員時代をネタにした漫画を描き上げ寝落ちしてしまう。ジュンが目覚めるとそのリアルな描写に驚愕した漫画ファンが次々と拡散、まさかの大ヒットとなっていた。妻が良かれと思ってやったことだが、ジュンが生きていると知られてはならない。

暗殺要員の殺伐な話と思いきや、なんと大笑いできるコメディでもありました。死んだはずのジュンが生きていると知った国家情報院と、ジュンに恨みを持つテロリストが執拗に追ってきます。過去を知らない妻と娘まで巻き込んでアクションが再び炸裂。漫画が要所要所に挟み込まれて、面白さを盛り上げます。どうしたらもっと面白くなるかを貪欲に追求したというチェ・ウォンソプ監督、その過酷な要求に応えて振り幅の大きな役を演じたクォン・サンウ、個性豊かなキャストを演じた助演の方々もエライ!
一つ疑問、新しい人生を始めたジュンですが、戸籍やIDはどうしたのでしょう?問題なく一般市民になるには何か裏技があったのか?(白)


チェ・ウォンソプ監督はクォン・サンウがジュンを演じることを想定しながら脚本を書き上げたそう。クォン・サンウも監督の期待に見事に応え、冴えないウェブ漫画家だと思っていたら、いきなり見事なアクションを決めてくるのでびっくり! そして、妻役のファンウ・スルヘもワイヤー・アクションと接近戦にチャレンジ。ここぞとばかりに華麗なアクションを披露しました。
しかし、物語の展開はアクション中心のシリアスタッチではなく、クォン・サンウが得意とするコメディ調。ファンウ・スルヘのアクションのオチには大笑い。大韓民国国家情報院の鬼教官も、敵役のテロリストもどこかドジでおかしなところを見せて笑いを誘います。
一方で反抗期真っ盛りに見えた娘の主人公に対する健気な思いには思わずほろりさせられました。この娘を演じたリー・ジウウォンが見せるラップシーンは軽やかでかわいい~
ところで、本作に挟み込まれるコミックはWEBTOON(ウェブトゥーン)と呼ばれる韓国から始まったコミック形式です。スマートフォンから縦スクロールで読むことを想定して描かれ、オールカラーという特徴があります。コミックは左からページをめくっていくものと思っていましたが、スマートフォンで読む習慣が広がっている今、韓国だけでなく、台湾・タイなどのアジアをはじめ、北米など国際的に人気が高まっているそうです。(堀)


2020年/韓国/カラー/ビスタ/110分
配給:アルバトロス・フィルム
(C)2020 LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved.
https://hitman-movie.jp/
★2020年9月25日(金)よりシネマート新宿、シネマート心斎橋ほか全国にて順次公開。

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2020年09月13日

ブリング・ミー・ホーム 尋ね人(原題:Bring Me Home)

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監督・脚本:キム・スンウ
撮影:イ・モゲ
出演:イ・ヨンエ(ジョンヨン)、パク・ヘジュン(ミョングク)、イ・ングン(スンヒョン)、ユ・ジェミョン(ホン)

看護師のジョンヨンは6年前に一人息子ユンスが公園で遊んでいて、失踪してしまった。以来夫のミョングクと二人で行方を捜している。記憶は7歳の面影のままのユンス、自分たちを忘れていないだろうか。捜索の旅の途中事故が起きて、ジョンヨンはショックで立ち直れない。そこへユンスに似た子がいるとの情報が寄せられる。マンソン釣り場で働く男の子の特徴がユンスと共通していた。一縷の望みをかけて釣り場へ向かうジョンヨン。釣り場を営む家族や従業員、土地の警察のホン警長まで、知らないの一点張り。疑惑がぬぐえないジョンヨンは諦めず、真夜中に忍び込むことにした。

キム・スンウ監督がこの脚本を書き始めたきっかけは、子どもを探す親が書いた横断幕を目にしたことから。子どもが行方不明になる事件は洋の東西を問わず無くなりません。自分も人の子として生まれながらよその子を攫い、いくばくかの金儲けの手段にしたり、快楽の対象にしたりする輩は、なんの痛痒も感じないのでしょうか(天罰を!)。
イ・ヨンエ主演作は2005年公開『親切なクムジャさん』以来です。自らも母になって、それ以前の作品選びや演技とは変化があったと語っています。掌中の珠である一人息子が行方不明になり、わずかな手がかりを求めて探し回るジョンヨンの姿に世の母親は胸をかきむしられるような思いで共感するはずです。疑わしい人間たちに壁やガラス戸に叩きつけられるアクションもあり、その激しさに思わず息を飲みました。
イ・ヨンエの迫真の好演と共に、憎まれ役を演じた助演の方々に最敬礼。行方不明の子どもたちが親元に戻れるよう祈りつつ。(白)


児童労働という社会の闇を描いた作品ですが、その児童は人身売買によって集められたことが推察されます。いったい韓国では年間どのくらいの子どもが失踪しているのか。ネットで調べたところ、3万人という数字が出てきました。とんでもない数字に驚いて、日本の子どもの失踪数も調べたら、平成28年の警察庁のデータによると、平成24~28年の9歳以下の子どもの失踪数は1000人前後と判明。この差はいったい何なんだろう。
しかし、親にとっては人数の問題ではありません。韓国であろうと、日本であろうと自分の子どもがいなくなったら、それはとても辛い。(白)さんも書かれていますが、お金儲けのために誘拐する人には、ほんと、天罰を喰らわせたい!
ただ、悪いのは人身売買に直接、関わっている人だけではないと作品から伝わってきます。周りの人間の無関心さが事件の隠ぺいを助長してしまいました。また、6年もの間、必死に息子を探し続けてきた主人公夫婦に襲い掛かった更なる不幸にも心が痛みます。軽い気持ちで人を騙してはいけません。私たちには関係ないといえる話ではないことを感じました。(堀)


2019年/韓国/カラー/シネスコ/108分
配給:ザジフィルムズ、マクザム
(C)2019 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved
https://www.maxam.jp/bringmehome/
★2020年9月18日(金)新宿武蔵野館ほかにて全国ロードショー
posted by shiraishi at 12:11| Comment(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする