2025年04月13日

私の親愛なるフーバオ(英題:My Dearest Fu Bao)

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監督:シム・ヒョンジュン、トーマス・コー
フーバオ一家:フーバオ、ルイバオ&フイバオ(フーバオの双子の妹)、アイバオ(母)、ローバオ(父)
飼育員:カン・チョルウォン、ソン・ヨングァン、オ・スンヒ

2016年に韓国にやってきたつがいのジャイアントパンダ、アイバオとローバオの間に2020年待望の赤ちゃんが生まれました。
フーバオ(福宝)と名付けられた男の子は、たくさんの注目と愛情を受けすくすくと成長。双子の妹たちも生まれ、可愛いしぐさで動物園にやってくる人々を魅了しました。野生のパンダは中国の一部の地域にしか生息していない保護動物。飼育や繁殖の研究のために「貸与」という形になっています。生まれた子どもパンダは一定の期間育てた後中国へ返還する決まり。フーバオは4歳になり、別れの日が迫っています。

生まれたときから、大切に見守り育ててきたパンダの子、フーバオ。誕生のそのときから返すことがわかっています。ファンはいなくなるのが寂しいし、悲しいと言うことができますが、飼育員は普段と変わりないように仕事をしています。それでも期日が近づくと心が揺れてきます。愛くるしいパンダの様子と飼育にあたる人たちの仕事を丁寧に見せています。特に中国までフーバオに付き添う飼育員のカン・チョルウォンは預かっていた宝物を無事に届ける責務を全うすることと、孫を手放すような寂しさと両方だったかもしれません。
日本では上野動物園と、和歌山県のアドベンチャーワールドの2ヵ所に4頭ずつのパンダがいます。昨年それぞれ返還もされています。この映画と同じように別れを惜しんだのでしょうね。まだ当分可愛い姿を観ていられそうです。(白)


韓国でもパンダフィーバーがあった! 日本でも何度かパンダフィーバーがあったけど、韓国でもパンダフィーバーがあったんですね。飼育員たちの奮闘記でもあります。かいがしくフーバオに接する飼育員カン・チョルウォンさんの姿を観て、とても胸が熱くなりました。檻の中で暮らしているパンダを見て可哀そうだなと思いつつ、マイペースのフーバオや他のパンダたちに心癒されます。パンダは中国語では熊猫と書きますが、熊の仲間なのに怖さではなく愛くるしさが感じられます。でも怒ったら怖いのかな。いろいろ想像がわいてきます。
私は日本のパンダは見たことがなくて、香港の海洋公園にいるパンダを見たのが唯一の生パンダです。パンダにはとても興味があるのだけど、上野動物園で、たくさん人が並んで見に行くのを見ると行く気になれません。でも、この映画を観たら、1回は日本の動物園でパンダを見てみたいと思いました。和歌山のアドベンチャーワールドに行ってみようかな~。(暁)



2024年/韓国/カラー/94分
配給:ファインフィルムズ
(C)2024 ACOMMZ and EVERLAND RESORT. All rights reserved
https://fubao-movie.com/
★2025年4月18日(金)新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショー


posted by shiraishi at 11:53| Comment(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年04月06日

ベテラン 凶悪犯罪捜査班  原題:베테랑2(ベテラン2) 英題:I,THE EXECUTIONER

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(C)2024 CJ ENM Co., Ltd., Filmmakers R&K ALL RIGHTS RESERVED

監督:リュ・スンワン(『ベルリンファイル』『ベテラン』『モガディシュ 脱出までの14日間』『密輸 1970 』
脚本:リュ・スンワン、イ・ウォンジェ、カン・ヘジョン
出演:ファン・ジョンミン、チョン・へイン、アン・ボヒョン、オ・ダルス、チャン・ユンジュ、オ・デファン、キム・シフ、シン・スンファン

家族のことを気遣う暇もなく昼夜を問わず犯罪と戦うベテラン刑事ソ・ドチョル(ファン・ジョンミン) と強力犯罪捜査隊の刑事たち。
ある日、ある教授が殺される。以前に起こった殺人事件と同様、法では裁かれなかった悪人。不条理な司法制度に憤っていた世論は、私刑を下す犯人を善と悪を裁く伝説上の生き物“ヘチ”と呼び、正義のヒーローともてはやすようになる。
新人刑事パク・ソヌが加わり、追跡を始める捜査陣。だが、殺人犯は、あざわらうように次の殺人対象を指定する予告をインターネットに公開する・・・

スピード感溢れる映像と、あっと驚く物語の展開にくらくら。最後の最後まで、え~ どういうこと?と、頭の中が整理つかないほどでした。
「徹子の部屋」に登場したチョン・ヘインが、これまでに観たドラマ「よくおごってくれる綺麗なお姉さん」や「スノードロップ」と違って、前髪をおろしていて、実に可愛かったのですが、その前髪をおろした姿で登場しているのが本作『ベテラン 凶悪犯罪捜査班』。
前髪をあげたチョン・ヘインには惹かれなかったのですが、前髪おろした可愛い彼が、末っ子刑事ながら沈着冷静で、知性も感じさせてくれて、こんなに魅力的だったの?と驚きました。そして、こんな展開の物語を描いたリュ・スンワン監督の手腕、凄いです。
ファン・ジョンミンはじめ、オ・ダルス、オ・デファン等々、それこそベテラン俳優の活躍にも目を惹かれました。ホ・ジュノの友情出演も嬉しかったです。 (咲)


法では裁かれなかった悪人を標的にした連続殺人事件が発生。そんな司法制度に不満がある人々は、犯人のことを善と悪を裁く「正義のヒーロー」ともてはやす。それにしても目まぐるしく事件や犯罪が起こり、激しいアクションシーンが続く。ファン・ジョンミン演じる熱血ベテラン刑事ソ・ドチョルと凶悪犯罪捜査班に、さらにチョン・ヘイン演じるドチョルに心酔する新人刑事パク・ソヌも捜査に加わり、強力な体制ができ、事件は解決に近づくように見えたんだけど、あっという展開に。リュ・スンワン監督は興味深い物語を作るストーリーテラーだ!(暁)。

2024年/韓国/韓国語/118分/カラー/シネマスコープ/5.1ch
字幕翻訳 根本理恵
提供:KADOKAWA Kプラス MOVIE WALKER PRESS KOREA 
配給:KADOKAWA、KADOKAWA Kプラス 
公式サイト:https://veteran-movie.com/
★2025年4月11日(金)新宿ピカデリーほか全国ロードショー

posted by sakiko at 21:05| Comment(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年03月30日

1980 僕たちの光州事件  原題:1980

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監督・脚本:カン・スンヨン
出演:カン・シニル、キム・ギュリ、ペク・ソンヒョン、ハン・スヨン、ソン・ミンジェ

『ソウルの春』から5ヶ月、 小さな幸せを夢見た家族をのみ込んだ大きな悲劇

1980年5月17日。少年チョルスの祖父は念願だった中国料理の店「和平飯店」をオープンさせ、家族は幸せに包まれていた。開店を祝って盛大に踊りが繰り広げられ、チョルスの大好きな幼馴染のヨンヒや優しい町の人たちも祝福してくれる。なせか、父親はそこにいない。そんな最中、母の妹が髪を振り乱して帰ってきて、駅前で警察が催涙弾を発砲しているという。店の前を、「金大中を解放しろ」と叫びながら、デモ隊が通っていく。
平穏に暮らす人々だったが、後に「光州事件」と呼ばれる歴史的悲劇が待ち受けていた・・・

少年チョルスの目線で描かれる物語。お祖母さんの姿が見えませんが、叔父サンドゥを産んだ時に亡くなったことが語られます。そのサンドゥは、一週間後に結婚式を控えているのですが、警察に連行されてしまいます。婚約者が一人で実家に挨拶に行きます。
大好きな幼馴染のヨンヒの父親は軍人で、サンドゥがどこにいるのか聞いてみたいのですが、それも憚れます。チョルスの父はソウル大学を出たあとも、実は学生運動に身をやつしていて、市役所に立てこもっています。そんな中でも、チョルスの一番の気がかりは、大好きなヨンヒがこの町から引っ越してしまうらしいこと。
市役所立てこもりが続き、チョルスの祖父はたくさんのジャージャー麵を作って差し入れます。祖父を演じたカン・シニルさん、テレビドラマでよく笑わせてくれる方。映画にも名脇役としてたくさん出演していますが、今回は主役。チョルスの母親役のキム・ギュリさんも好演。
映画の最後に、実際の当時の光州の人たちの姿が映し出されます。亡くなった家族の遺体のそばで嘆く人たち・・・ 「国民を殺せと命令した元凶は誰なのか・・・」と語るキム・ソンヨン神父の肉声が、胸にぐさりと響きました。
数多くの美術監督を務めてきたカン・スンヨン監督の長編第一作。忘れられない映画となりました。(咲)


★光州事件、そして光州事件に至る関連作品★
『光州5・18』(2007)
『タクシー運転手〜約束は海を越えて〜』(2018)

『KCIA 南山の部長たち』(2019)
『ソウルの春』(2023)

2024年/韓国/99分/G/5.1ch/シネマスコープ
配給:クロックワークス
公式サイト;https://klockworx.com/movies/1980/
★2025年4月4日(金)よりシネマート新宿ほか全国公開




posted by sakiko at 19:52| Comment(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年03月08日

私たちは天国には行けないけど、愛することはできる  原題:우리는 천국에 갈 순 없지만 사랑은 할 수 있겠지  英題:NO HEAVEN, BUT LOVE

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監督:ハン・ジェイ
出演:パク・スヨン(『はちどり』)、イ・ユミ(「イカゲーム」)、シン・ギファン、キム・ヒョンモク

1999年、世紀末の初恋。
何もかもが容易ではなかったあの時代、どんな夏より熱い少女たちの愛と友情の物語


高校のテコンドー部に所属する少女ジュヨンは、国家代表を目指して練習に励む日々。終わるのを待ち構えていた男友だちのミヌとハンバーガー屋へ。バイトの女の子イェジに告白のメモを渡してほしいと頼まれ、そっとメモを渡すジュヨン。ある日、家へ帰る途中、ジェヨンはテコンドー部の先輩たちから暴行を受ける。 そこへイェジが、店の景品のおもちゃのパトカーのサイレンを鳴らしながらやってきて助けてくれる。偶然か必然か、ジュヨンとイェジは、 ジュヨンの母親が担当する少年院の家庭体験プロジェクトで一緒に暮らすことになる。
国家代表をかけての試合で、コーチから負けろと言われ、ジェヨンはテコンドーをやめる。
母親の提案で、ジュヨンとイェジは、ミヌや友達のソンヒも交えて益山(イクサン)に遊びに行く。「あなたが好きみたい」と告白するジュヨンに、イェジはそっとキスをする。夢のような時間。しかし、ある夜、二人が抱き合って寝ているのを見たジェヨンの母は、体験プログラムから降り、二人を引き離そうとする。お互い好きだという気持ちを大事にしたいだけなのに・・・。一方、国家代表を目指して頑張っていたソンヒがコーチにいたずらされているのを目撃したジェヨンは、警察に通報する・・・

1999年は、ノストラダムスの予言した地球終末論があちこちで聞かれた不安の時代。
階級差別や性差別がまだまだ色濃く残り、男のコーチにもなかなか逆らえない時代でした。理不尽な思いを封印せずに、果敢に闘うジェヨンの姿が眩しいです。
イェジがなぜ少年院に入ることになったのか・・・ 旅に出た益山で、その秘密が少し明かされます。イェジの母親のことも。
ジェヨンは、いつも一緒にいる男友達のミヌには、全然ときめかないのに、ちょっとミステリアスなイェジに恋してしまいます。淡い初恋。紫雨林(ジャウリム)の「恋人発見!!!」、神話(SHINHWA)の「ウッシャ・ウッシャ」、コ・ホギョンの「初めてだったの」など、 映画に出てくる曲の歌詞が、ジェヨンとイェジの気持ちにぴったり。
監督は、1999年の雰囲気を出すのに、ジュヨンの家とソンヒの家の室内の木の装飾を赤茶色に塗り直したとのこと。入手するのに一番苦労した小道具は、テコンドー大会のシーンで使用したヘッドギア。競技用のマットも当時の物を探してきたそうです。こだわりをぜひご覧ください。(咲)


2024年/韓国/112分/ビスタ/DCP5.1ch
字幕翻訳:石井絹香
配給:クロックワークス
公式サイト https://klockworx.com/movies/heaven/
★2025年3月14日 (金.) シネマート新宿ほか全国ロードショー




posted by sakiko at 23:50| Comment(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年03月02日

ケナは韓国が嫌いで  原題:한국이 싫어서  英題:Because I Hate Korea

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(C)2024 NK CONTENTS AND MOCUSHURA INC. ALL RIGHTS RESERVED.

監督・脚本:チャン・ゴンジェ(『ひと夏のファンタジア』)
原作:「韓国が嫌いで」(チャン・ガンミョン著)
出演:コ・アソン(『グエムル-漢江の怪物-』)、チュ・ジョンヒョク(「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」)、キム・ウギョム、イ・サンヒ、オ・ミンエ、パク・スンヒョン

ソウル郊外の小さな団地で両親と妹と共に暮らす28歳のケナ。大学を卒業後、金融会社に就職したが、仕事には興味が持てず、毎日片道2時間かけての通勤にうんざりしている。大学時代から長く付き合っている恋人のジミョンは、外国に行きたいと口にするケナに「自分が就職したら支える」と言うが、ピントのずれた話をしがちなジミョンにケナは苛立つ。ケナの母は裕福な家庭で育ったジミョンとの結婚を待ち望み、さらに老朽化が進み再発が決まっている団地から引っ越すための部屋の購入費用もケナに出してほしいと迫る。
「自分には落ち度がないはずなのに、ここでは幸せになれない!」と、ケナは、韓国を抜け出しニュージーランドに移り住む決意をする・・・

今の暮らしにうんざりと思っても、会社を辞めて、外国に移住するという決意をするのは容易なことではありません。なおかつ、ケナには、一緒にいたい、支えてあげるというけなげな彼までいるのに・・・です。 それを振り切って、自分の夢を叶えようとするケナ。素敵です。 ニュージーランドで大学院に通い、会計士の資格を取得します。韓国に帰ると、恋人ジミョンは無事大学を卒業し、記者になる夢を叶えていました。さて、ケナはその後、どうする? ジミョンと結婚する選択肢もありますが、ニュージーランドの永住権を取得したいという夢もあるようです。
自分で未来を切り開いていくケナがとても素敵でしたが、本作には、韓国の男性たちの苦労するリアルな姿も描かれています。
ケナと同い年の男子で、公務員になるべく何年も勉強を続けてキョンユン。
ニュージーランドの大学院で出会った韓国から来ている男子ジェインは、一見、いい加減な雰囲気ですが、会計士には向かないと見切りをつけて料理人として自立を目指します。
自分の将来をどうすればいいのか迷っている若い人たちに、ぜひご覧いただきたい一作。(咲)


★原作「韓国が嫌いで」の著者チャン・ガンミョンは、元新聞記者で、社会批評からSFまで幅広い作品で知られています。国家情報院の世論操作事件を題材にした小説「コメント部隊」も映画化され、この2月14日より公開されています。映画『コメント部隊』


2024年/韓国/韓国語・英語/107分/カラー
日本語字幕:本田恵子
配給:アニモプロデュース
公式サイト:https://animoproduce.co.jp/bihk/
★2025年3月7日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、シネ・リーブル池袋ほか全国公開




posted by sakiko at 20:02| Comment(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする