2023年03月12日

ハンサン 龍の出現   原題:한산 : 용의 출현 (ハンサン(閑山):龍の出現)

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(C)2022 LOTTE ENTERTAINMENT & BIGSTONE PICTURES CO.,LTD.ALL RIGHTS RESERVED.


監督:キム・ハンミン(『神弓-KAMIYUMI-』『バトル・オーシャン 海上決戦』)
出演:パク・ヘイル(『別れる決心』)、ピョン・ヨハン(『声/姿なき犯罪者』)、アン・ソンギ(『ディヴァイン・フューリー/使者』)、ソン・ヒョンジュ、キム・ソンギュ、キム・ソンギュン、オク・テギョン(2PM)、コンミョン

日本と朝鮮、両軍の大きな分岐点となった《閑山(ハンサン)島海戦》
韓国救国の名将軍イ・スンシンはいかに戦ったか?


1592年4月。明国の征服を狙う豊臣秀吉の命で朝鮮に押し寄せた倭軍は、わずか20日で首都・漢陽(現在のソウル)を陥落させる。漢陽を奪還するべく朝鮮勤王軍5万人が光教山に集結するが、日本の武将、脇坂安治はわずか2千人で奇襲をしかけ勤王軍を壊滅させた。朝鮮軍の敗退が続く中、全羅左道水軍の将軍イ・スンシンは、何度も海戦を仕掛ける。卓越した攻撃能力と防御力を持つ「亀船」と呼ばれる特殊な戦艦は、日本兵にとって畏怖の対象となっていた。
日本軍が本陣を置く釜山浦では、最高司令官・脇坂安治が、イ・スンシンの本陣を仕留めるため、朝鮮語を解する脇坂左兵衛を間者として敵陣に送り込む。
夏、脇坂との決戦を決意したイ・スンシンの朝鮮水軍は閑山島の沖に「鶴翼の陣」を張り、海域を熟知した老将オ・ヨンダムの指示のもと、ついに両水軍は対峙する。数で勝る日本軍を撃破するため、味方にすらも秘めていたイ・スンシンの奇策とは?

私たち日本人にとって、豊臣秀吉の朝鮮出兵は負け戦だからか、歴史の授業で詳しく教えてもらった記憶がありません。本作でピョン・ヨハンが熱演した脇坂安治の名前も知りませんでしたが、韓国ではイ・スンシンの最大のライバルとして知られている武将なのだそうです。そして、イ・スンシンに至っては、ソウルの景福宮の正面に広がる大通りの真ん中の光化門広場に、ハングル文字を考案した世宗大王の像と共に、「忠武公李舜臣像」があるという誰もが知る英雄。オファーを受けたパク・ヘイル、光栄と思うと同時に、かなりの重圧を感じたことと思います。むやみに言葉を発せず、思慮深いイ・スンシンを見せてくれました。イ・スンシンが師と崇めるオ・ヨンダムを演じたアン・ソンギは、海域を熟知し落ち着いた判断の出来る老将を体現していて、さすがの存在感です。
鶴が羽を広げたように船を配置した「鶴翼の陣」で、亀が首を隠したような「亀船」が突如現れるという奇襲攻撃に目を見張りました。
本作は、キム・ハンミン監督のイ・スンシン三部作プロジェクトの『バトル・オーシャン 海上決戦』に次ぐ第二弾。50歳を目前にした頃のイ・スンシンの真のリーダーとしての姿を描いています。続く第三弾では、どんなイ・スンシンを見せてくれるのか楽しみです。(咲)


2022年/韓国/韓国語、一部日本語吹替/130分/シネスコ/5.1ch/R-15
字幕翻訳:福留友子
配給:ツイン
公式サイト:https://hansan-movie.com/
★2023年3月17日(金) シネマート新宿ほか全国順次ロードショー



posted by sakiko at 05:04| Comment(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年02月26日

オマージュ 原題:오마주 英題:Hommage

2023年3/10(金)、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館他全国順次公開!
劇場情報 

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©2021 JUNE FILM All Rights Reserved.


映画を愛するすべての人へ。かつて輝きながら消えていったすべての者たちへ

監督・脚本:シン・スウォン『マドンナ』
撮影:ユン・ジウン
出演
ジワン:イ・ジョンウン『パラサイト 半地下の家族』
サンウ:クォン・ヘヒョ『あなたの顔の前に』
ポラム:タン・ジュンサン『愛の不時着』

失われたフィルムをめぐって、夢と現実、現在と過去、映画と人生が交錯する

かつて何作か映画を撮ったものの、ヒット作に恵まれず、新作を撮る目処が立たない映画監督のジワン。監督としてのキャリアも母親としても中途半端で、息子からも「母さんの映画つまんない」と酷評される。夫とも生活費の折半などでいがみ合っている。
そのジワンがバイトで引き受けたのは、60年代に活動した韓国の女性監督、ホン・ジェウォンが製作した映画『女判事』(1962)。これは韓国初の女性判事が毒殺された実話を映画化したものだったが、その欠落した音声を修復するというプロジェクト。作業を進めるうちフィルムの一部が検閲でカットされていることに気づいたジワンは、ホン監督の家族や関係者のもとを訪ねながら真相を探っていく。
現在と過去、その狭間を行きつ戻りつしながら、ホン・ジェォン監督のフィルムの修復をする過程で、ホン・ジェウォン監督始め韓国映画界での女性監督の立場、編集などを担った女性映画人の人生があぶりだされ、ジワンはフィルムの修復とともに、自分自身の人生も見つめ直し、新しい一歩を踏み出していく。
映画のタイトルが示すとおり、これまで生み出されてきたすべての映画や、それに携わってきた人びとへの“オマージュ”が示される感動作。

主人公ジワンを演じるのは、『パラサイト 半地下の家族』(2019)で怪しい家政婦役を演じていた名バイプレイヤーのイ・ジョンウン。今回単独初主演でアジア太平洋映画賞最優秀演技賞を受賞。夫を演じるのは、TVドラマ「冬のソナタ」や『あなたの顔の前に』(2021)をはじめホン・サンス監督作品の常連としても知られるクォン・ヘヒョ。息子役にはドラマ『愛の不時着』(2019)のタン・ジュンサン。韓国映画、ドラマファンにお馴染みの実力派俳優が集結した。
監督は『マドンナ』(2014)、『ガラスの庭園』(2017)のシン・スウォン。悩みながらも映画を撮ることを諦めないジワンに自身を投影させ、女性たちが時を超えて手をつなぎ、連帯する物語に昇華させた。

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©2021 JUNE FILM All Rights Reserved.


2021年の東京国際映画祭で一番印象に残ったのがこの作品。2010年東京国際映画祭最優秀アジア映画賞に輝いた『虹』のシン・スウォン監督の新作で、映画愛に満ちた、映画へのオマージュである。さりげないセリフの中にユーモアがあったり、先輩監督の苦悩の中に韓国だけでなく世界中の女性監督が映画を続ける上での苦難を表現していたり、欠落したフィルムがみつかるシーンの意外性も素晴らしく感動的な作品だった。
欠落したフィルムには女性(判事?)がタバコを吸うシーンが写っていたけど、当時は女性がタバコを吸うシーンでさえ、検閲に引っかかっていたのだろうか。2021年の東京国際映画祭でグランプリをとった『ヴェラは海の夢を見る』では、主人公のヴェラという女性がなにかというとタバコを吸っていて、この主人公タバコ吸いすぎと気になった。
70年代のウーマンリブの人たちは、日本でもわざとタバコを吸う人たちがいた。「女がタバコを吸うなんて」ということに対する抗いのためだった。韓国でもそういうこともあって、ホン・ジェウォン監督は『女判事』で女性がタバコを吸うシーンを入れたのかもと思った。その気持ちはわかるけど、私自身は嫌煙権を主張したい方なので、女性・男性に限らず、映画の中でタバコを吸うシーンが多いのは好きじゃない。
ホームコメディかと思うような冒頭のシーンからは、こういうシリアスなテーマを扱う作品とは全然思わなかった。ミステリアスだったり、厳しい現実も描いていて、映画の作りがとてもうまいと思った。そして、優しさにあふれていた。
シン・スウォン監督は「当時の非常に保守的な環境の中、自分自身や他人からの視線と闘いながら生き残ってきた女性監督たちの姿が、自分自身の苦悩と重なる思いがあったから、いつかこれをモチーフにした映画を撮りたいと思っていた」と語っている(暁)。


東京国際映画祭で観ることができなかったので、待ちに待った公開です。今でこそ、韓国映画界でも女性の活躍が目覚ましいですが、60年代の韓国での女性映画人の置かれた厳しい状況のわかる作品です。
シン・スウォン監督は、2011年、韓国初の女性映画監督パク・ナモクと2人目のホン・ウノンについてのテレビドキュメンタリーを撮っています。『オマージュ』の中で、パク・ナモク監督が、子どもを背負って『未亡人』を撮影していたことに言及されています。
本作で取り上げられている60年代に活動した韓国で二人目の女性監督ホン・ジェウォンは、3本製作しているのですが、3本ともフィルムが紛失。『女判事』(1962)のフィルムがやっと見つかり、修復することがメインの話になっています。欠落した部分が見つかり、切られたフィルムには、女性が煙草を吸っている場面が映っていました。そのほかにどんな部分が検閲に引っかかったのでしょう。
編集技師の女性が、「女が編集室に入ると縁起が悪いと塩をまかれた」と語る場面がありました。60年代の日本も、同じような男尊女卑の状況だったのではないかと思います。

その編集技師の女性を含め3人の女性が映っている写真を頼りに、かつて明洞茶房があった乙支路(ウルチロ)ビルを訪ねる場面があります。そこで一人で囲碁をしていた男性は、かつて映画監督だった人物。その男性のところに、コーヒーと卵が運ばれてきます。てっきり、モーニングサービスのゆで卵と思ったら、その卵をコーヒーに入れて飲むのです。調べてみたら、コーヒーに生卵の黄身を落として飲む、韓国流モーニングコーヒー(韓国語で「モニンコッピ」)で、70~80年代によく飲まれたのだそうです。

本作では、主人公ジワンが自立しようと、家庭内別居すると宣言します。それを聞いた息子、「3食つくから入隊する!」というところが、いかにもの韓国事情。 ジワンは家事から解放されて、生き生きと映画の修復に臨むのですが、息子から「お父さんが夢見る女といると寂しいって。監督やめて」と言われてしまいます。 韓国では、女性の非婚率が増えているとか。さもありなんです。(咲)


公式サイトはこちら
2021年|韓国映画|韓国語|108分|5.1ch|シネスコ|字幕翻訳:江波智子
提供:ニューセレクト 配給:アルバトロス・フィルム


posted by akemi at 08:26| Comment(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年02月12日

別れる決心  原題:헤어질 결심(別れる決心) 英題:Decision To Leave

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© 2022 CJ ENM Co., Ltd., MOHO FILM. ALL RIGHTS RESERVED

監督:パク・チャヌク(『オールド・ボーイ』『渇き』『お嬢さん』)  
脚本:チョン・ソギョン、パク・チャヌク
出演:パク・ヘイル、タン・ウェイ、イ・ジョンヒョン、コ・ギョンピョ

釜山の刑事ヘジュンは、イポ原子力発電所の技師である妻ジョンアンとは週末夫婦。史上最年少で警部になったヘジュンは実直な男だ。ある日、キ・ドスという男が岩山から転落死する。ヘジュンはザイルをかけ、岩山を登って現場を確かめる。ドスは出入国・外国人庁の元職員で退職後は民間面接官をしていた。年の離れた美しい中国人の妻ソン・ソレは、夫が死んだというのに冷静で、ヘジュンは不振に思って張り込みし、ソレの行動を監視する。ドスの爪からソレのDNAが見つかるが、夫が転落した時には、介護の仕事に就いていた。捜査するうちにヘジュンはソレに惹かれ、彼女もまたヘジュンに特別な感情を抱き始める。やがて、ドスが他殺ではないと決着し、ヘジュンはソレへの思いに終止符を打つため、妻のいるイポに転勤する。
月日が経ったある日、イポの市場で妻と魚を選んでいたとき、ソレが“次の旦那”と手を繋いで現れる。「これが私を疑った刑事さん」と紹介される。イポ原発事故のドラマが人気で、中国女性が押し寄せ、ソレは通訳ガイドとしてイポに引っ越して来たという。その後、投資アナリストをしているソレの夫が豪邸のプールで死んでいるのが発見される・・・

ヘジュンは、毎週末、妻のいるイポで夫としての務めを果たす律儀な男。それが、夫殺しの容疑者としてソレに接するうち、心を惹かれ、壊れていく様が静かに描かれています。ソレが「品のある刑事が私の担当でよかった」とつぶやくのですが、ヘジュンを演じたパク・ヘイル、まさに適役でした。
韓国語が不得手なソレは、スマホの翻訳アプリに中国語で激しく語ります。「あなたの心臓がほしい」と直訳されたのが、ほんとは「あなたの心がほしい」だったということも。便利なようで、誤解も招きかねないこともあって面白いです。
タン・ウェイ演じるソレは密航してきたのですが、祖父が朝鮮解放軍だったという誇り高き女性。アイスクリームの残ったスプーンを舐める姿は艶っぽく、ぞくっとする魅力があります。トニー・レオンと共演した『ラスト、コーション』(2007年/監督:アン・リー)を観て、パク・チャヌク監督はいつか起用したいと思っていたとのこと。
ヒョンビンと共演した韓国映画『レイトオータム』(2010年/監督:キム・テヨン)も印象深いです。
パク・チャヌク監督が、本作にもう一つ取り入れたいと思っていたのが、60年代後半に大ヒットした「霧」という 歌。実直な刑事が、夫を殺したのではないかと疑いながらも、ソレに惹かれていき、ソレもまた彼に惹かれていく様が、「霧」の歌と共に情感たっぷりに心に残りました。(咲)



2022年/韓国/シネマスコープ/138分
提供:ハピネットファントム・スタジオ、WOWOW  
配給:ハピネットファントム・スタジオ
公式HP:https://happinet-phantom.com/wakare-movie/  
★2023年2 月 17 日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー




posted by sakiko at 18:24| Comment(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年02月03日

呪呪呪/死者をあやつるもの

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監督:キム・ヨンワン
原作・脚本:ヨン・サンホ
キャスト:オム・ジウォン(イム・ジニ) 、チョン・ジソ (ソジン)、チョン・ムンソン (チョン・ソンジン)、キム・イングォン(キム・ピルソン) 、コ・ギュピル(タク・ジョンフン教授)、クォン・ヘヒョ(イ・サンイン)、オ・ユナ(ビョン・ミヨン)、イ・スル(ジェシー・ジョン)

住宅街で凄惨な殺人事件が起こった。被害者のそばにあった不可解な遺体が容疑者と思われたが、死亡して3ヶ月もたっていた。死体が殺人犯!?独立系ニュースチャンネル「都市探偵」の社長のキム・ピルソンは、この奇妙な事件をいち早く知って、ジャーナリストのイム・ジニらメンバーと独自に調査を始めた。番組あてに男から連絡が入った。自分が死体を操って殺させた、という。調査するうちに大企業がからんでいるうえ、強力な呪いがかけられていることがわかった。ジニは家族同様だった呪術師のソジンがここにいたならと思う。彼女ならこの混迷した状況を解く手がかりを見つけ出せるはず。

監督は『ファイティン!』(2018)のキム・ヨンワン、原作・脚本は、大ヒットした『新感染 ファイナル・エクスプレス』(2016)、『新感染半島 ファイナル・ステージ』(2020)監督のヨン・サンホ。このコンビの「謗法 ~運命を変える方法~」というタイトルのテレビドラマが前年にあったようです。Netflixで1シーズン12話が観られます。
劇場版の本作では、これまでのゾンビ映画とはかなり違ったゾンビが登場します。呪術によってよみがえったゾンビ “在此矣(ジェチャウィ)”は、猛ダッシュ、全力疾走でターゲットを追いかけます。操られるまま話もすれば、車の運転も超絶アクションも可能です。統率された俊足ゾンビに追いかけられるなんて、死ぬほどイヤです。捕まったら即死。
この事件の真相を暴いていく過程と、呪術師と呪いをかけた者との攻防を画面で見守ってください。(白)


呪呪呪(じゅじゅじゅ)という、おどろおどろしいタイトルから、観るのをやめようと思ったほどだったのですが、さすが韓国映画、しっかりした脚本で唸りました! 
観てみようと思ったのは、出演陣の中にクォン・ヘヒョの名前があったからでした。
古くは、『ラスト・プレゼント』「冬のソナタ」「私の名前はキム・サムスン」、ホン・サンス作品には『3人のアンヌ』(2011年)以来、何本も出演している常連。ヨン・サンホ作品には『我は神なり』(2013)『新 感染半島 ファイナル・ステージ』(2020年)に次ぎ3本目の出演。この人が出ているのならという安心感があります。本作では、製薬会社の専務で、生放送で殺人を告白した男に、死の宣告をされるという役どころ。可笑しさをかもしだしながらもぴりりと引き締めてくれます。 
また、「約束のない恋」「一度行ってきました」など、多くのドラマで活躍してきたオ・ユナが、製薬会社社長の娘で、後継者と目されている才女を演じていて光っています。
弱者を踏み台に、金儲けしようとする大手製薬会社をあばく物語。社会的問題を内蔵したゾンビ映画を、ぜひ怖がらずにご覧ください。エンドロールのあとの「その後」も、お見逃しなく!(咲)



2021年/韓国・イギリス/カラー/シネスコ/110分
配給:ハピネットファントム・スタジオ 
ⓒ2021 CJ ENM, CLIMAX STUDIO ALL RIGHTS RESERVED
公式HP:https://happinet-phantom.com/jujuju/  
公式Twitter:@jujuju_movie  #呪呪呪
2023年2月10日(金)新宿バルト9他にて公開

posted by shiraishi at 23:29| Comment(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年01月14日

野獣の血  原題:뜨거운 피 英題:Hot Blooded

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© 2022 KidariStudio, Inc. & WHALE PICTURES. All Rights Reserved.

監督:チョン・ミョングァン
原作:キム・オンス
出演:チョン・ウ(「模範家族」『偽りの隣人 ある諜報員の告白』)、キム・ガプス(『箪笥』)、チェ・ムソン(『悪魔を見た』)、チ・スンヒョン(『偽りの隣人 ある諜報員の告白』)、イ・ホンネ(「悪霊狩猟団:カウンターズ」)

1993年春、釜山。町はずれの小さな入り江クアム。養護施設で育ったヒス(チョン・ウ)は、クアムを牛耳るソン(キム・ガプス)に拾われ、その手足として仕事をしてきた。小さな海水浴場に観光ホテル、屋台に風俗店があるだけの町だが、利権を狙ったヨンド派が、ヒスの施設時代からの親友チョルジン(チ・スンヒョン)を使い、ヒスを懐柔しようとする。しかし、ヤクザ稼業に嫌気がさしていたヒスの望みは、施設時代からの恋人インスク(ユン・ジヘ)と一緒に、巨済島でペンションを営みながら暮らすこと。ヒスはソンの元を訪れ組織を抜けたいと告げるが・・・

ベストセラー作家チョン・ミョングァンの監督デビュー作。原作は、著書「設計者」「キャビネット」翻訳版が日本でも出版されている作家キム・オンスの傑作ノワール小説。

釜山郊外のクアムは、日本統治時代、海水浴場として賑わっていたところだとか。
今はひっそりした町なのですが、ヨンド派がここを手にしたいと狙ったのにはワケがありました。足を洗いたいと育ての親でもあるソンに申し出たとき、ソンからいずれすべて譲るつもりだと言われるのですが、40歳になったヒスにとっては、好きな人とのんびり暮らすことの方が大事だったのです。それなのにヤクザどうしの抗争に巻き込まれてしまいます。そのやるせない思いを、チョン・ウがみごとに体現しています。血で血を争う場面が多いのですが、チョン・ウさんの穏やかな顔に救われました。

ドラマ「最高だ、イ・スンシン」(2013年)で、刑務所を出てパン屋で働く青年を好演しているのをちょうど観ていた時に、東京国際映画祭で出演作『レッド・ファミリー』が上映され来日。記者会見の取材に行って、そばを通った時に、思わず「イ・スンシン!」と声をかけたら、にっこり笑ってくださいました。

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第26回東京国際映画祭(2013年)での『レッド・ファミリー』上映後 
左から女優パク・ソヨン、男優チョン・ウ、女優キム・ユミ、キム・ギドク(脚本・製作)、イ・ジュヒョン監督。この時共演したキム・ユミと2016年にご結婚。
http://www.cinemajournal.net/special/2013/tiff26pics/index.html
すっかり主演をはれる役者になったチョン・ウ。主演作の NETFLIX ドラマ「模範家族」も世界配信中。ますますのご活躍を期待したいです。(咲)


2022 年/韓国映画/韓国語/120 分/シネスコ/5.1ch
字幕:安河内真純
配給:アルバトロス・フィルム
提供:ニューセレクト
公式サイト:https://yajunochi.com/
★2023年1月20日(金)より、全国ロードショー




posted by sakiko at 19:29| Comment(0) | 韓国 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする