2025年12月21日

星と月は天の穴

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脚本・監督:荒井晴彦
原作:吉行淳之介「星と月は天の穴」(講談社文芸文庫)
撮影:川上皓市、新家子美穂 
音楽:下田逸郎 
主題歌:松井文「いちどだけ」
出演:綾野剛(矢添克二)、咲耶(瀬川紀子)、岬あかり(B子)、吉岡睦雄()、MINAMO(娼館の女)、原一男 / 柄本佑(友人)、宮下順子(娼館の女主人)、田中麗奈(千枝子)

いつの時代も、男は愛をこじらせる――
女を愛することを、恐れながらも求めてしまう、
滑稽で切ない男の恋愛模様

矢添克二 小説家 43歳。10年前妻に出ていかれ、以来一人暮らしを続けている。愛は欲しいが愛するのは怖い…馴染みの娼館へ出かけいつもの千枝子と一時身体を重ねていれば傷つくこともない。画廊で女子大生の紀子と出会い、無邪気に踏み込んでくる彼女と関係を持ってしまう。彼氏がいるというのに安心するが、親子ほど年の違う紀子にしだいに翻弄されていく。

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初日舞台挨拶(公式写真)


吉行淳之介氏の同名小説が原作。つい著者と主人公を重ねてしまいます。小説を書く人が身近にいると、この映画の主人公のようにあれやこれやをネタに書かれてしまうんでしょうか。いないけど。
中年過ぎて色気のこぼれる矢添を綾野剛さん。父と娘に間違えられるほど若い紀子を、咲耶さん。純文学の登場人物になりたかったという彼女は堂々の演技。荒井監督作品は濡れ場やヌードが多めですが、今作は矢添の切なさや物悲しい滑稽さがより印象に残りました。(白)


2025年/日本/カラー/122分/R18+
配給:ハピネットファントム・スタジオ
c2025「星と月は天の穴」製作委員会
https://happinet-phantom.com/hoshitsuki_film/
★2025年12月19日(金)テアトル新宿ほか全国ロードショー

posted by shiraishi at 10:23| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年12月20日

もしも脳梗塞になったなら

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©シンクアンドウィル 青空映画舎

監督・脚本:太田隆文
出演:窪塚俊介(大滝隆太郎)、藤井武美(妹・さくら)、田中美里(母・秋子)、藤田朋子(雀)、佐野史郎(霧山)

『向日葵の丘 1983年夏』『朝日のあたる家』等で知られる太田隆文監督が、「僕の闘病生活が誰かの役に立てば」と自分の脳梗塞経験を映画化した

1人暮らしの映画監督大滝隆太郎は、喘息気味で数カ月前から病院に通っていたが、突然、目がぼんやりしてよく見えなくなり、言葉もうまく出なくなった。病院に行くと、心臓機能が20%まで低下し脳梗塞と診断された。夏の猛暑で外出は危険。買い物にも行けなくなってしまった。友人に電話してもSOSと思われず、「お前が病気?笑わせるなよー」と言われてしまう。SNS に闘病状況を書いても的外れな助言や誹謗中傷ばかり。「俺はこのまま孤独死?」と追い込まれるが、買い物の手伝いをしてくれる人や、自身の経験を伝えてくれたりと、救いの手を差し伸べてくれる人も出てきて、次第に病気への向き合い方や、生活補助を得る方法なども知ってゆく。 本人には悲劇、周りの人たちには喜劇? 病気と医療を暗い難病物語にはせず、笑いと涙で描く社会派現代劇。
主人公・大滝隆太郎役には、太田監督が師事した大林宣彦監督の『花筐/HANAGATAMI』で主演した窪塚俊介。隆太郎の妹役で藤井武美、母役で田中美里、隆太郎をネットで応援する友人役で藤田朋子、佐野史郎らが出演。

実は、私の母が15年くらい前に脳梗塞で倒れ、入院、リハビリなど、ここに出てきた「監督が経験した、脳梗塞への対応」を、私も体験しています。しかも、私自身も心臓弁膜症の手術で2回も入院しているので、この映画を観て「そうそう、あるある」がありました。まず「高額医療費制度」。最初の手術の時、手術代が「〇百万円」と聞き、私は先生に「医療保険に入っていても、そんなに高いのなら手術を受けることができません」と言ったら、「手術代高くても高額医療費制度というのがあり、収入に応じて自己負担額が決まっている」と言われ、年金生活になっていた私は、一番低い負担額で手術をすることができました。こういう制度があるなんて、自分が病気になるまで知らず、これなら高い医療保険に入っている必要はないと気がつきました。訪問介助ヘルパーの派遣などの知識も、必要になってから知りました。でも、こういう制度を活用するには、申請しないとせっかくの制度を利用できないということも知りました。母が入院していた時、「入院費の寡婦控除」というのがあるということを知らず、入院して3年近くなってから知ったのですが、さかのぼって申請ができると言われても、領収書を保存していなかったので、結局、知った時からしか申請ができずでした。私は今、心臓手術の結果、障害者になっているのですが、障害者には医療費の割引制度があるというのを知ったのは2年以上たってからでした。これも、その年と前の年の医療費が違うので、なぜかなと思ったら、税金申告の時に「障害者」であると申告しないと医療費控除にならないというということでした。というように「申請や申告しないと制度は利用できない」ということが多々あります。ほんとに知れば利用できる制度がたくさんありますよ。
脳梗塞について、いろいろ勉強をして知ったつもりになっていましたが、監督のように、倒れもせず、すぐ入院もしなかったという例については知りませんでした。こういう脳梗塞の例もあるんですね。監督は、病気を経験したことで知った「人生の大切なこと」をこの映画で伝えたいと語っています(暁)。


2年前のエイプリルフールに脳梗塞を発症した太田監督が、3回の手術、リハビリを経て復帰。その闘病体験を題材に本作を製作しました。すっかり良くなってからでは忘れてしまうからと、まだ医者の許可もないうちに撮影を開始したというのに恐れ入ります。
自分の友人知人にも脳疾患で倒れた人はいて、これは一分一秒を争う病気なのだと知りました。早く処置ができた幸運な方は軽く済み、そうでない方は後遺症が残って、長くリハビリに励むことになります。それでも一人旅立ってしまうよりは。
太田監督は悲劇を逆手に取り、その体験を映画にしました。当事者ならではの視線に、ほうほうと感心することしきりです。自分事としてとらえて食生活や習慣に留意し、よりよき人生の参考になさってください。もし周りにそういう方がいらしたら、心情を理解する一助になるはず。(白)


2025年/日本/カラー/102分
配給:渋谷プロダクション
https://moshimo-noukousoku.com/
★2025年12月20日(土)より新宿K’sシネマほか全国順次公開

posted by shiraishi at 11:31| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年12月11日

小川のほとりで  原題:수유천  英題:By the Stream 


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©2024Jeonwonsa Film Co. All Rights Reserved.


ホン・サンス監督デビュー30周年記念「月刊ホン・サンス」 第二弾

脚本・監督・製作・撮影・編集・音楽:ホン・サンス
出演:キム・ミニ、クォン・ヘヒョ、チョ・ユニ、ハ・ソングク 

『逃げた女』以来のキム・ミニ単独主演作

演劇祭が10日後に迫るソウルの女子美大。演劇祭まであと10日。講師でテキスタイルアーティストのジョニムは、恋愛スキャンダルでクビになった若手演出家の代わりに、かつて演劇界で名を馳せた叔父のシオンに協力を求める。女子学生4人との寸劇づくりは、徐々に熱気を帯びていく… 


10日間で、10分の寸劇を作り上げていく間に繰り広げられる物語。寸劇の出来はいかに?
それよりも、ホン・サンス作品ならではの、お酒を酌み交わしながらの他愛のないおしゃべりが、本作でも炸裂。
叔父シオンを演じるのは、ホン・サンス作品でお馴染みのクォン・ヘヒョ。実の配偶者であるチョ・ユニが、ジョニムの先輩の大学教授役で、お酒を飲みながら、いい関係になったらしいのも、ホン・サンスの遊び心? (咲) 


第77回ロカルノ国際映画祭最優秀演技賞(キム・ミニ)受賞

2024年/韓国/韓国語/111分/カラー/16:9/ステレオ
字幕:根本理恵 
配給:ミモザフィルムズ
公式サイト:https://mimosafilms.com/gekkan-hongsangsoo/
★2025年12月13日(土)より、ユーロスペースほかにて新作を5カ月連続で順次公開



◆別冊ホン・サンス 『逃げた女』12/13(土)~12/19(金)
公式サイト:https://nigetaonna-movie.com/


posted by sakiko at 13:45| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年12月03日

みらいのうた

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監督・撮影・編集:エリザベス宮地
出演:吉井和哉、ERO

1990年代に「JAM」「バラ色の日々」などのヒットで一世を風靡し、独自のグラマラスな世界観と詩的な歌詞で、今も多くの音楽ファンを、魅了する不屈のロックバンド”THE YELLOW MONKEY”。そのボーカルとして、深く響く歌詞と圧倒的な存在感で世代を超えて愛されている吉井和哉。
彼のミュージシャンとしての人生は、”URGH POLICE”のボーカルEROとの出会いから始まった。当時10代だった吉井は、ベーシストとして加入。しかし、音楽性の違いなどからいつしかバンドは自然消滅。その後、吉井は”URGH POLICE”を通じて出会った仲間達と”THE YELLOW MONKEY”を結成。EROは静岡に残り、地元で働きながらカントリーミュージックに目覚め、それぞれの音楽の道を歩みながらも、二人は交流を続けていた。

90年代は日本の音楽より香港映画にはまっていまして、TYMはお名前しか知りませんでした。このドキュメンタリーを拝見して、長く愛されてきた理由がわかった気がします。お二人とも年齢を重ねても「カッコイイ!」。若い日からの長いお付き合いが、解散や病気にみまわれても今なお続いていることに胸がじーんとしました。吉井さんのさりげない思いやりは、EROさんに大きな励みになっていたはず。リハビリも辛いと投げ出したりあきらめてしまったりの人もいます。EROさんはギターを弾きながら歌うところまで回復、応援してくれた人の前で披露できてどんなに嬉しかったでしょう。身近にいたわけでもないのに泣けてきました。お二人ともすごい!(白)

=PROFILE=
吉井和哉
1966年10月8日、東京生まれ。1971年、5歳のとき事故で父が死去。小学校入学後に母の郷里である静岡に引っ越す。10代でベーシストとして加入したURGH POLICE解散後の1988年、22歳の頃にTHE YELLOW MONKEYを始動。翌1989年から現メンバーのラインナップとなり活動が本格化すると同時にボーカリストへ転向する。1992年のメジャーデビューを経て、1995年にリリースした5thアルバム『FOUR SEASONS』が初のオリコンチャート1位を獲得、ブレイクを果たす。2001年に活動休止(2004年に解散)。2003年よりYOSHII LOVINSON名義でソロ活動を開始し、2006年からは吉井和哉名義に移行。2016年1月8日、THE YELLOW MONKEY再集結の発表。2020年4月に予定されていた東京ドーム2daysが新型コロナウイルスの蔓延のため中止に。翌年のソロツアー中に喉の不具合によりツアーを中断、後に喉頭がんと診断される。治療を経て復活のステージの場に選ばれたのは2024年4月の東京ドーム公演となった。その後10thアルバム『Sparkle X』の発表とそれに伴うツアーも成功させた。現在もソロ、バンド両方での精力的な活動を展開している。

ERO
1960年、静岡生まれ。本名、高林英彦。地元の仲間と組んだバンド「URGH POLICE」でヴォーカルとギターを担当する。のちにベーシストとして吉井和哉が加入し、当時の“ジャパメタ・シーン”の盛り上がりに伴って全国的な人気を獲得していく。メジャーデビューの話もあったが、バンドは解散。以降、地元静岡でカントリーをベースに音楽活動を続ける。脳梗塞の影響で半身不随になったが、地道なリハビリでギターを弾いて歌えるまでに回復、その様子が映画『みらいのうた』に収められている。現在は月に一回のペースでステージでの音楽活動を続けている。

2025年/日本/カラー/137分
配給:murmur
(C)2025「みらいのうた」製作委員会
https://mirainouta-film.jp/
★2025年12月5日(金)より全国ロードショー

posted by shiraishi at 11:40| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ペリリュー 楽園のゲルニカ

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監督:久慈悟郎
原作:武田一義「ペリリュー ー楽園のゲルニカー」(白泉社)
脚本:西村ジュンジ
キャラクターデザイン、総作画監督:中森良治
アニメーション制作:シンエイ動画、冨嶽
音楽:川井憲次
主題歌:上白石萌音「奇跡のようなこと」
声の出演:板垣李光人(田丸均)、中村倫也(吉敷佳助)

太平洋戦争末期の昭和19年。パラオの群島のひとつ、ペリリュー島で軍務にあたっていた、21歳の田丸均一等兵。漫画家志望の田丸はその才を買われて、「功績係」を命じられた。戦死した兵士の家族へその最期の姿を書き送るというものだ。遺族たちは立派な功績があったとしてその死を受け入れるよすがとなる。時には嘘も交えて美談の英霊が誕生する。
田丸は同年齢だが頼りになる上等兵の吉敷と知り合い、過酷な日々の中で大きな支えとなった。南方戦線では圧倒的な戦力を誇る米軍のため、日本軍は追い詰められ次々と玉砕した。軍部はペリリュー島を時間稼ぎのための盾とし、玉砕を禁じた。持久戦を強いられ、田丸たちは米軍の猛攻と、伝染病、飢餓に苦しめられていく。

終戦80年記念作品。ペリリュー島の戦いは米軍にとって、初めの予想を大きく裏切った長期戦となりました。ほんの数日で落とせるだろうと踏んだのが、9月15日から2か月半にも及んだのだそうです。約一万人いた日本兵で生き残ったのはわずか34人。最新・最強の軍備の米軍も1600人以上が死亡。島には今も日本兵の遺骨が収容されないまま眠っているとか。
戦争が題材にも関わらず漫画がヒットして多くの若者に読まれたのは、絵柄と史実に基づいたリアルなストーリーゆえでしょう。読者と同じ年ごろの若者が、戦争が日常だった中で壮絶に戦い、懸命に生きていたと一コマごとに突きつけられます。実写で表現されたならあまりに辛くて観ていられなかったかもしれません。アニメ作品となってより身近に感じられます。
田丸と吉敷の二人を通じて、国にいる家族を守ることだと信じて戦場に赴いた兵士たち、生きて帰りたいと望みながら亡くなった兵士たちに想いを馳せてください。これは80年ほど前の日本の話ですが、現在も戦火の中で暮らす人たちがいることも思い出して。(白)


☆原作コミックの試し読みはこちら

2025年/日本/カラー/106分/PG12
配給:東映
(C)武田一義・白泉社/2025「ペリリュー 楽園のゲルニカ」製作委員会
https://peleliu-movie.jp/
★2025年12月5日(金)より絶賛上映中

posted by shiraishi at 11:39| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする