2021年11月21日

水俣曼荼羅

劇場公開 2021年11月27日 公開劇場情報

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©疾走プロダクション

監督・撮影:原一男
構成・編集:秦岳志
エグゼクティブプロデューサー:浪越宏治
プロデューサー:小林佐智子 原一男 長岡野亜 島野千尋
整音:小川武

はじまりの海 おわらない世界

日本四大公害病の一つとして知られる水俣病。補償をめぐっていまだ裁判の続く患者たちの闘いを15年に渡って取材し、5年の編集を経て完成したドキュメンタリー。1956年に水俣病が公式確認されて以来65年、今も患者としての認定や救済をめぐって裁判が続く。「水俣はもう、解決済み」そう世間では、思われているかも知れない。でもいまなお和解を拒否して裁判闘争を継続している人たちがいる。映画は3部からなる。
坂本しのぶさん始め、水俣病患者の方の生活や日常、思いを描くだけでなく、これまでの水俣病の医学的研究で得られたもの、現在に至るまで続く裁判闘争の経過や闘争に長くかかわってきた人たちの人間模様が凝縮された一大叙事詩。まさしく「曼荼羅」というのがふさわしい。
かつて水俣は海の幸に恵まれた不知火海の豊かな漁村だったが、化学肥料などを生産する化学工業会社・チッソの城下町になり栄えた。しかし、有機水銀がその海に流され、その発展と引きかえに〝死に至る病″を背負った。それは今なお、暗い陰を落としている。不自由な身体のまま大人になった胎児性、あるいは小児性の患者さんたち。彼らの現在の姿が映される。「末端神経ではなく、有機水銀が大脳皮質神経細胞に損傷を与えることが、原因だ」これまでの常識を覆す、あらたな水俣病像論も提出される。

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©疾走プロダクション

原監督のドキュメンタリーは出てくる人の魅力が最大限引き出され面白い。しつこく迫る原監督に根負けするのだろうか(笑)。坂本しのぶさんの写真や映像はこれまでたくさん見てきたが、この作品ほど彼女の素顔&魅力を見せてくれたものを知らない。50年余りの時がたち、彼女も年を取ったが、この作品ではしのぶさんは「恋多き女」として描かれる(笑)。彼女が恋したという相手も数人、一緒に登場する。その時の彼女がまるで乙女のよう。恥ずかしがる姿が可愛いしのぶさんです。それにしても「恋した相手」まで映画に出演させてしまうとは。
2017年の東京フィルメックスで『ニッポン国vs泉南石綿村』(2017)が観客賞を受賞した時、監督は「この映画は撮影に8年、編集に2年かかりましたが、この映画と並行して水俣病の映画を撮っています。水俣病の方は撮影を始めて12年。未だに形になっていません」と語っていたが、それが完成し映画という形になった。6時間を超える作品だが、15年という取材の年月を思えば長くはない。このくらいの時間が必要だった。そして、国と県を相手取っての裁判はいまなお係争中。しかし、何人もの患者さんが亡くなっている。今年はハリウッド製作の『MINAMATA ―ミナマタ―』も公開され、改めて水俣病に注目が集まっているが、終わりの見えない裁判闘争はそろそろ終わってほしい。
このドキュメンタリーに写真を提供している桑原史成さんの<水俣病を撮り続けて60年 桑原史成写真展「MINAMATA」>に行きました。10月12日にこの作品の試写をを観て、16日に桑原さんの写真展に行ったのですが、坂本しのぶさんの最近の姿を映像で見て、50年前の彼女の姿を写真で見て、彼女なりに生きてきたと感じ、思わず涙してしまいました。ユージン・スミスさんの助手を務めた石川武志さんの写真展にも行きましたが、そのレポートはスタッフ日記に掲載しています。また、現在はユージン・スミスさんの写真展も開催中。この機会に皆さん行ってみませんか。水俣だけでないユージン・スミスさんの写真も見ることができます。詳細は下記に(暁)。


*スタッフ日記参照
『MINAMATA ―ミナマタ―』公開記念 桑原史成・石川武志写真展・ユージン・スミスとアイリーンが写した「MINAMATA」作品展&ユージン・スミス集大成写真展のお知らせ
http://cinemajournal.seesaa.net/article/483705121.html

水俣病をテーマにした桑原史成さんと石川武志さんの写真展に行ってきました。原一男監督の『水俣曼荼羅』も11月28日から公開されます(暁)
http://cinemajournal.seesaa.net/article/484153661.html

桑原史成写真美術館@津和野で「アフガニスタン崩壊」1/19まで開催中 (咲)
http://cinemajournal.seesaa.net/article/484246699.html

原一男監督が、水俣で公害による病に苦しみながら暮らす人々に長年寄り添って撮った渾身の作品。372分という長尺に身構えて観ましたが、水俣の人たちが65年以上、翻弄されてきたことを思うと、この映画の長さは必要な時間軸なのだと思いました。
裁判に勝ったところで身体がよくなるわけじゃないという言葉がずっしり響きました。なぜ水俣の人たちは、こんな思いをして生きることになってしまったのか・・・ 元凶となった企業の無責任、そして、管理すべき行政の無責任にむなしくなりました。そして、それは水俣病に限ったことではないということにも気付かされます。安部のマスクや、go to travelなど、無駄にお金を使うことは得意でも、ほんとに支援の必要な人にお金を出さないのが行政なのだと思うと、ほんとに悲しいです。(咲)


『水俣曼荼羅』公式HP
助成:文化庁文化芸術振興費補助金 (映画創造活動支援事業) 独立行政法人日本芸術文化振興会
製作・配給:疾走プロダクション 配給協力:風狂映画舎
2020年/372分/DCP/16:9/日本/ドキュメンタリー
posted by akemi at 17:08| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ずっと独身でいるつもり?

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監督:ふくだももこ
脚本:坪田文 音楽:池永正二(あらかじめ決められた恋人たちへ)
原作:おかざき真里(原案:雨宮まみ)「ずっと独身でいるつもり?」(祥伝社フィールコミックス)
撮影:中村夏葉
主題歌:にしな「debbie」(WARNER MUSIC JAPAN)
出演:田中みな実(本田まみ)、市川実和子(佐藤由紀乃)、村松沙友理(鈴木美穂)、徳永えり(高橋彩佳)、稲葉友、松澤匠、山口沙弥加、藤井隆、橋爪淳、筒井真理子

10年前に執筆したエッセイ集で有名ライターになった本多まみ36歳、独身。自立した女性の幸せの価値を赤裸々に綴って読者の指示を得たが、その後ヒット作が書けずにいる。恋人はいるものの、結婚は具体的ではない。
まみ出演の配信番組を見ている女性たち3人。由紀乃はまみのエッセイからのファンで、自立した生き方を貫いている。人気のインスタ主婦の彩佳の夫は、なんちゃってイクメン。いいとこどりだけする夫にほんとは言いたいことが山積みだ。沙友理はパパ活で生計を立てているものの、若狭が失われていくのにおびえている。

タイトルの「ずっと独身でいるつもり?」は、まみが周りから言われている言葉。主に母親からです。一人娘らしいので、気になっていつまでも言われるんですよね。他に兄弟姉妹がいて、一人が結婚して孫でもできれば風当りはぐんと減ります。人間も生き物として子孫を残したい本能なんでしょうか?
ほかの3人の年齢と背景はバラバラで、主婦なのは彩佳だけ。まみと3人はそれぞれ生きにくい、と感じていますがものすごく深刻なわけでもありません。ライターの雨宮まみさんが「女子をこじらせて」を書いたのは2011年。こじらせ女子という言葉がはやりましたっけ。おかざき真里さんのコミック「ずっと独身でいるつもり?」は未見でした。世の中も当時とは様変わりしているので、「パパ活」女子が新たに加えられたようです。独身女子にはいろいろと共感するところ大かと思います。どんな選択をしても、そっちじゃないほうがなんだか良かったかも、と思いたくなるときがくるはず。なんにせよ、自分で道を選べば後悔は少ないよ、と先に生まれたおばちゃんより。(白)


2021年/日本/カラー/94分
配給:日活
© 2021日活
https://zuddoku-movie.com/
★2021年11月19日(金)ロードショー
posted by shiraishi at 02:06| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年11月20日

COME & GOカム・アンド・ゴー(英題:COME AND GO)

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プロデューサー・監督・脚本・編集 : リム・カーワイ 
エグゼクティブプロデューサー : 毛利英昭 / リム・カーワイ 
撮影:古屋幸一
録音・整音:松野泉 
美術:藤原達昭
音楽:渡邊崇 
衣裳:碓井章訓
出演: リー・カーション、リエン・ ビン・ファット、J・C・チー、モウサム・グルン、ナン・トレイシー、ゴウジー、イ・グァンス、デイヴィッド・シウ、千原せいじ、渡辺真起子、兎丸愛美、桂雀々、尚玄、望月オーソン

大阪キタの古いアパートで独り暮らしの老女の白骨死体が見つかった。孤独死なのか事件なのか警察は事情聴取を行っている。この狭い地域にも近隣国からの観光客、ビジネスマンがやってくる。刑事は妻とむつまじく暮らしているつもりだったが、妻には妻の生活があった。中国と台湾の観光客は言葉は通じても、政治の話で口論になる。将来を夢見て日本に来た難民や留学生、実習生は日々の仕事に追われ、親が病気でも帰国さえ叶わない。今日も一人いなくなった。それぞれが事情を抱えて行ったり来たりの3日間。

キタに暮らしている人、出没する人たちの群像劇。「ドリフター(漂流者)」と自称するリム・カーワイ監督の交流の広さと人脈が見えてくるようなキャストです。それまで監督が観たり聞いたりしたことがたくさん詰まっているんじゃないかしら。作劇は殆ど即興に近く、俳優たちは自分の台詞のところしか知らないので、作品が出来上がって初めて「こういうストーリーだったのか!」とわかったそうです。
2020年の東京国際映画祭で上映されたときのご挨拶で、俳優の一人として登壇された雀々師匠が「今日は自分(がどこに出ているか)探しに来ました」と言われたのがおかしくて忘れられません。またとってもマメなリム監督が、ロケや俳優の宿泊、移動の手配など自らやってしまうので、渡辺真起子さんからは「そういうのは他の人に任せて監督の仕事をやってください(笑)」。↓の写真はその時のものです。(白)


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林家威(リム・カーワイ)監督とは、あちこちの映画祭で出くわす。山形国際ドキュメンタリー映画祭、大阪アジアン映画祭、東京国際映画祭、東京フィルメックスと各映画祭に行くと必ずいる(笑)。拠点は大阪なのかマレーシアなのか知らないけど、日本中あちこちの映画祭に出没する。ということは私もあちこちの映画祭に出没しているのだけど。もちろんリム監督は私のことは知らないだろうけど、いつも映画祭で会う人として会釈くらいは交わす。そんな監督の国際的な漂流者としての生き方をいつもうらやましく思ってもいる。そんな監督のことを“シネマドリフター(漂流者)”というらしい。今回、そういう呼び方を初めて知った。
そして、監督の作品、半分以上は観ていると思うけど、実は私はリム監督の作品、混沌としすぎて、なかなか理解ができていない。今回のこの作品も、リム監督が出会った、アジア各国の俳優を大阪に呼んでの即興に近く、ストーリーがあるのかないのか、こういう作品を好きな人は好きなのでしょうが、私はちゃんとストーリーがある作品が好きなので、イメージ映画みたいのはあんまり好きじゃない。でも、彼の生き方はすごいと思っている。こういう方が、いろいろな文化の中で、いろいろなコラボレーションを作り出していくのでしょう。それにリム監督だからこそできる映画キューレーターとしての役割。年末の「香港映画祭2021」も楽しみにしています(暁)。


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2017年香港インディペンデント映画祭でのリム・カーワイ監督(右端)

2020年/日本・マレーシア合作/カラー/シネスコ/158分
配給: リアリーラィクフィルムズ / Cinema Drifters 
©️ cinemadrifters
https://www.reallylikefilms.com/comeandgo
★2021年 11月19日(金)より、ヒューマントラストシネマ渋谷絶賛公開中、ほか全国順次公開

posted by shiraishi at 00:00| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年11月14日

JOINT

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監督:小島央大
脚本:HVMR
撮影:寺本慎太朗
出演:山本一賢(石神武司)、キム・ジンチョル(ジュンギ)、キム・チャンバ(イルヨン)、三井啓資(ヤス)、樋口想現(荒木)、尚玄(ジェイ)、平山久能(市川)、鐘ヶ江 佳太(渡辺佑)、林田隆志(今村)

刑務所から出所した半グレの石神(山本一賢)は、個人情報の「名簿」を元手に、特殊詐欺用の名簿ビジネスを再開する。真っ当に生きたいと望む彼はベンチャービジネスに介入し投資家へ転身を図るも、稼業から足を洗うのは至難の技だった。そんな石神の周囲でうごめく、関東最大の暴力団と外国人犯罪組織の影。それぞれの抗争に挟まれた石神。白か黒か曖昧な世界で、“何者か”になろうともがく石神は、いかなる決断を下すのか―――

青味がかった画面に展開していくのは、ドキュメンタリーさながらの緊迫したストーリー。抜き取られた個人情報のゆくえ、作られた名簿を使った振り込め詐欺。その電話に対応する女性と見守る警察官、車で移動しつつ電話をしていた「かけ子」たちが足取りをつかまれて逮捕される…。ハラハラさせられたこの映画は若い新人監督さんが作ったんです。さっそく小島央大監督にお話を伺いました。
こちらです。

半グレとは暴力団に属さない犯罪集団の呼び方で、愚連隊の「グレ」、黒でも白でもないグレーゾーンの「グレ」でもあるようです。ついでに「グレる」はなんなのかと検索したら江戸時代からある言葉だそうで、不良化するということのほか「見込みが外れる」という意味もあるとか。へー!
「悪銭身に付かず」といいます。石神はそれを知ってか、出所後働いて得た綺麗なお金を投資しましたが、半グレから抜けるのも容易ではなく、それこそ見込みが外れてしまいます。犯罪と金儲けの殺伐とした話の中に、石神と人の繋がりを挟み込んで和む場面があり、息がつけました。小島監督うまい!(白)


2020年/日本/カラー/カラー/シネスコ/118分
配給:イーチタイム
(C)小島央大/映画JOINT製作委員会
公式サイト︓ joint-movie.com
公式Twitter︓@JOINT2020
公式Instagram︓ jointmovie
★2021年11月20日(土)渋谷・ユーロスペース他全国順次公開!

posted by shiraishi at 12:04| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年11月12日

シネマハウス大塚特選企画 『日常を「観察」する映画作家・想田和弘の仕事2007‐2020』

なぜ彼はドキュメンタリーを撮るのか?
想田監督のレクチャー付きで最新作『精神0』までの想田監督の軌跡がすべて上映されます。

【期日と期間】11月14日(日)から11月23日(火・祝)

【時間】10:00-22:00帯 シネマハウス大塚ホールにて。

【料金想定】全プログラム:1300円

【上映作品】A―K 上映時間
A選挙120 B精神135分 CPeace75分 D演劇1 172分 E演劇2 170分
F選挙2 149分 G牡蠣工場145分 H港町122分 Iザ・ビッグハウス 119分
J短編特集 計65分 K精神0 128分

【上映スケジュール】
11月14日(日)10:30A「選挙」13:00F「選挙2」 16:00 C「Peace」 18:00H「港町」
11月15日(月)10:30B 「精神」13:30K「精神0」 16:30G「牡蠣工場」
11月16日(火)10:30D 「演劇1」14:00E「演劇2」 17:30F「選挙2」
11月17日(水)10:30A「選挙」13:00F「選挙2」 16:00 H「港町」 18:30J「短編特集」
11月18日(木)10:30B 「精神」13:30K「精神0」16:00G「牡蠣工場」19:00C「Peace」
11月19日(金)10:30I「ザ・ビッグハウス」 13:00B「精神」 16:00K 「精神0」
11月20日(土)10:30D 「演劇1」14:00E「演劇2」 17:30C「Peace」19:00レクチャー
11月21日(日)10:30I「ザ・ビッグハウス」13:00A 「選挙」15:30レクチャー 18:00H「港町」
11月22日(月)10:30D「演劇1」14:00E「演劇2」17:30I「ザ・ビッグハウス」
11月23日(火・祝祭)10:30B 「精神」13:30K「精神0」 16:30G「牡蠣工場」

全プログラム1300円(税込み)。障害者1000円(税込)。
レクチャーは90分予定。

予約・問い合わせ info@cinemahouseotsuka.com


シネジャの作品紹介
選挙 http://www.cinemajournal.net/review/2007/index.html#senkyo

選挙2 http://www.cinemajournal.net/review/2013/index.html#senkyo2

精神 http://www.cinemajournal.net/review/2009/index.html#seishin

posted by sakiko at 16:09| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする