2020年11月28日

10万分の1

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監督:三木康一郎
原作:宮坂香帆『10万分の1』(小学館 フラワーコミックス刊) 
脚本:中川千英子
出演:白濱亜嵐(EXILE/GENERATIONS) 平祐奈 優希美青 白洲迅 /奥田瑛二 

「告白して気まずくなるくらいなら友達のままでいい」と、学校中の女子はもちろん、男子からも憧れの存在である桐谷蓮(白濱亜嵐)に密かに想いを寄せる桜木莉乃(平祐奈)だったが、ある日、蓮の方から想いを打ち明けられ、誰もがうらやむ両想いの日々が始まる。2人で過ごす時間が何よりも大切なものに変わる頃、「10万分の1」の確率でしか起こらない、ある運命が降りかかる—。

恋に落ちた女子高生が主人公の人気コミックの実写化と聞くと、いろいろハラハラしながらもラストに恋が成就するというイメージを抱いてしまいますが、本作は割と早い段階で両想いになります。むしろその後の2人の関係が本題。莉乃が難病に罹ってしまうのです。迷惑を掛けたくない莉乃と少しでも支えになりたい蓮。互いに相手を想うがゆえに気持ちがすれ違う。切ないです。そんな2人が一緒に乗り越えていこうと思うきっかけを作ってくれたのは莉乃の親友。友だちってありがたいですね。
莉乃が罹った筋萎縮性側索硬化症(ALS)はこれまでも映画で取り上げられてきましたが、どの作品もかなり進行している状態でした。本作では元気だった莉乃が少しずつ病に侵されていきます。平祐奈がその過程を丁寧に演じていて、演じるにあたってかなりリサーチされたのを感じました。(堀)


2020年/112分/G/日本
配給:ポニーキャニオン 関西テレビ放送
©宮坂香帆・小学館/2020映画「10万分の1」製作委員会
公式サイト:https://100000-1.com/
★2020年11月27日(金)公開
posted by ほりきみき at 22:52| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

サイレント・トーキョー

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監督:波多野貴文
原作:秦建日子「サイレント・トーキョー:And so this is Xmas」(河出文庫刊)
脚本:山浦雅大
撮影:山田康介
美術:黒瀧きみえ
出演:佐藤浩市(朝比奈仁)、西島秀俊(世田志乃夫)、石田ゆり子(山口アイコ)、中村倫也(須永基樹)、広瀬アリス(高梨真奈美)、井之脇海(来栖公太)、勝地涼(泉大輝)、

12月24日、クリスマスイブ。買い物客でにぎわう東京。「恵比寿に爆弾をしかけた」とテレビ局に電話が入った。「どうせガセだろう」という高沢先輩と半信半疑で現地へ向かった来栖公太。青い顔でベンチに座っていた主婦山口アイコは、先輩を座らせるなり「立ち上がったら爆発する」と公太と警備員の元へ走る。どこにいるともしれない犯人の指示通りに実行しなければならない。犯人からの要求が動画サイトに上がった。「標的は渋谷ハチ公前。要求は首相との生対談」18時という刻限が迫る中、渋谷は警備が強化されるが、知らずに来た人や野次馬でごったがえす。

始まりからラストまで、最初に巻き込まれたアイコや公太、朝比奈、来栖、渋谷署や捜査一課の刑事たち、と次々と視点が変わっていきます。クライムサスペンスであり群像劇でもあり、爆破事件と人間関係がこのスピードで語られるので、99分におさまりました。しっかりついて行ってください。
日本でも何度かテロや戦争がありましたが、国境も地続きの欧米と違って最近の危機意識は低いでしょう。そんなところに爆破事件が続いたらどうなるか?自分があの群衆の一人だったら?と想像してみてください。ぞっとしませんか?世界中のあちこちで起きていることでもあります。
秦建日子の原作はジョン・レノンとオノ・ヨーコの「Happy Xmas(War Is Over)」にインスパイアされて執筆されたのだそうです。本当に戦争は終わったの?幸せなクリスマスを祝っていいの?と、胸がキリキリっと痛みます。(白)


この作品の最大の見せ場は渋谷のスクランブル交差点の爆破シーンです。栃木県の足利競馬場跡地に再現されたオープンセットに高速レールを設置してハイスピードカメラを走らせ、一気に撮影しました。エキストラも一般の方々ではなく、アクション部の人たちが参加し、爆風で吹っ飛ぶ様子をみなさん自力で飛んでいます。タイミングを合わせるのが非常に難しく、何度も何度もトライそう。また爆破前はまばゆいほど色とりどりの灯が輝いている渋谷が爆破後は暗くなる。その落差にリアリティを感じさせていますので、ご覧になったら、しっかり体感してください。(堀)

リアル謎解きゲーム!開始
『サイレント・トーキョー:Another X-DAY』12/1(火)~12/14(月)
渋谷の街中に貼られた映画『サイレント・トーキョー』のポスターを探し、
犯人から届く「爆破予告」に記された謎解きに挑戦。
詳細はこちら https://silenttokyo.roadcast109.com/top

2020年/日本/カラー/シネスコ/99分
配給:東映
(C)2020 Silent Tokyo Film Partners
https://silent-tokyo.com/
★2020年12月4日(金)ロードショー

posted by shiraishi at 01:19| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年11月25日

ミセス・ノイズィ

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監督・脚本:天野千尋
撮影:田中一成
出演:篠原ゆき子(吉岡真紀)、大高洋子(若田美和子)、長尾卓磨(吉岡裕一)、宮崎太一(若田茂夫)、米本来輝(多田直哉 )、新津ちせ(吉岡菜子)

スランプ中の小説家吉岡真紀は、引っ越してきた翌朝、騒音で目が覚める。隣家の若田美和子が早朝から、布団を激しく叩いている音だった。真紀の再々の頼みにも関わらず、布団叩きの音は止まない。お互いにベランダで口論するほど、険悪な仲になる。小説が進まないばかりか、夫や娘との関係も悪くなった真紀は、その諍いの一部始終を小説に書いた。それがネットやメディアも巻き込む大騒動を引き起こしてしまった。

今年5月には公開予定だった本作、コロナ禍のため他の数々の作品と同じく公開延期の憂き目に逢いました。その間、ひきこもりざるを得なかった人たちのストレスは増しました。これほど顕著でなくとも、騒音という目に見えないものが元での苦情やいさかいは絶えずあります。生活時間や家族構成の違いによって発する音は様々で、特に集合住宅にいるとそれが問題になること多々。思い当たる節がありませんか?互いの事情を知っていて共感できるならば良し、そうでなければわざとか?と疑心暗鬼にかられてもめてしまうでしょう。
この映画では、スランプから抜け出せず、夫への不満が募りすでにいっぱいいっぱいの真紀が、隣家からの騒音でついに限界を越えて吹きこぼれてしまいます。なぜそんな行動をするのか、相手への想像力も共感力ももう働きません。そこへ無責任な外野とSNSが火に油を注ぎます。
篠原ゆき子さんと大高洋子さんのバトルは、観るほうに「少しは冷静に」と注意を促します。良い演者を得て、面白いストーリーが生き生きと動きました。(白)


主演の篠原ゆき子さんは映画『浅田家!』では難病の子どもを看病するお母さん、映画『罪の声』では鍵になる姉弟の母親を演じ、さらにTVでは相棒season19にレギュラー入りをするなど、注目を集めています。主演作である本作がコロナ禍で公開が延期になったときには心配しましたが、禍を転じて福と為したかもしれません。
初めは篠原ゆき子さんが演じる真紀の視点で描かれますが、後半は一転して隣家の主婦・美和子の視点になります。同じ状況も視点が変わると見え方や感じ方がまったく違う。驚きました。しかし、これは決して他人事ではありません。もしかしたら自分も気がつかないだけで、同じように他人を見て、また他人からそう見られているのかもしれない。たまには自分のことを振り返ってみないといけませんね。(堀)


2019年/日本/カラー/106分
(C)「ミセス・ノイズィ」製作委員会
http://mrsnoisy-movie.com/
★2020年12月4日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国公開
☆天野千尋監督著「ミセス・ノイズィ」ノベライズが映画公開と同時に発売!
実業之日本社文庫 本体価格680円+税
https://www.j-n.co.jp/books/?goods_code=978-4-408-55630-7

◆天野監督インタビューはこちらです。

◆追記12/4
天野監督@TIFFスタジオ (16分過ぎから)
https://www.youtube.com/watch?v=HcP00ym8neM
天野監督@活弁シネマ倶楽部
https://youtu.be/d9FsGvcB2EY
posted by shiraishi at 00:37| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年11月24日

凱歌

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監督・撮影:坂口香津美
プロデューサー:落合篤子
編集:坂口香津美、落合篤子
音響:山下博文
出演:山内きみ江、山内定、中村賢一、斉藤くるみ、中島萌絵、佐川修

差別と偏見は、なぜ繰り返されるのか?
東京都東村山市にある国立療養所多磨全生園を舞台に、国による非人道的な終身隔離政策により、強制的に入所させられたハンセン病の元患者の人々を9年間撮影したドキュメンタリー映画。
入所当初絶望して自殺した人もいれば、自暴自棄になって暴れ懲戒房に入れられる人もいる。施設の中で患者同士が伴侶を見つけて結婚するときは、男性が断種手術をしなければならず、もし女性が妊娠していれば否応なく中絶。患者の人権などなかった時代だった。2020年8月1日現在、同園の入所者数は、139人(男63人、女76人)で、平均年齢86.8歳。(同園入所者自治書記室調べ)

2009年11月から9年後の2019年5月まで、坂口監督は多磨全生園でビデオカメラを回しました。若くして発症して、家族から引き離された後の体験を語る人たち。内容は壮絶で、らい予防法をよりどころに患者の人権など無視したものです。そんな目に遭うのも病気のせい、と自分に言い聞かせて来られたのでしょう。今言っておかねばという悲痛な思いと、静かな気迫が感じられました。
効果的な新薬が開発され、ハンセン病は治る病気だと認知されても、隔離政策は変わらず。ようやく1996年にらい予防法が廃止されましたが、隔離施設からだれもが故郷に帰れるわけではありませんでした。差別と偏見が根強く残る中、社会的復帰は簡単ではなく、大半は施設にとどまり高齢となって最期を施設で迎えています。(白)


国立ハンセン病資料館のQ&A http://www.hansen-dis.jp/kids/qa.html

2020年/日本/カラー/90分
配給:スーパーサウルス
https://supersaurus.jp/gaika/
★2020年11月28日(金)シアター・イメージフォーラム、2021年陽春名古屋シネマテークにて公開
クラウドファンディング実施中(2021年1月14日まで)
https://motion-gallery.net/projects/gaikamovie
posted by shiraishi at 23:35| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年11月23日

空に聞く 

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監督・撮影・編集:小森はるか
撮影・編集・録音・整音:福原悠介
出演:阿部裕美

東日本大震災の後、約三年半にわたり「陸前高田災害FM」のパーソナリティを務めた阿部裕美さん。地域の人びとの記憶や思いに寄り添い、いくつもの声をラジオを通じて届ける日々を、キャメラは親密な距離で記録した。津波で流された町の再建は着々と進み、嵩上げされた台地に新しい町が造成されていく光景が幾重にも折り重なっていく。失われていく何かと、これから出会う何か。時間が流れ、阿部さんは言う————忘れたとかじゃなくて、ちょっと前を見るようになった。

小森はるか監督は震災後のボランティアをきっかけに東京から岩手県住田町(陸前高田の隣町)に移り住み、人々の語り、暮らし、風景の記録をテーマに制作を続けてきました。土地勘もなく知り合いもいなかったため、陸前高田災害 FM の Twitter アカウントを寄り所にしていたことで、「陸前高田災害FM」のパーソナリティを務めた阿部裕美さんと知り合ったそう。それがきっかけで本作が作られたのです。阿部さんの柔らかな口調は自ら主張するのではなく、取材対象者の語りをうまく引き出します。聞き上手なのは、阿部さんが震災前に和食屋さんの女将をしていたからかもしれません。小森監督のカメラは阿部さんを通じて、陸前高田の変化を映し出しました。陸前高田災害 FMは2018年3月16日をもって閉局しましたが、これからは小森監督が陸前高田を記録していくのでしょうね。(堀)

『息の跡』(2017)の小森はるか監督の新作。今回も一人の被災者を丁寧に取材していくスタイルは変わりません。阿部さんのスタジオは簡素で、これだけで間に合うの?と思ってしまいました。一人住まいのお年寄りから亡くなられた奥様とのなれそめを聞いて、一緒にお茶を飲んで笑います。そうやって阿部さんが受け取ったあの人この人のお話がこのスタジオから、聞き手のもとへ飛んでいきます。あの柔らかな声と語り口が、どんなに被災地の方々を慰めたことでしょう。
Google地図の航空写真を見ました。東京から東の海岸にそって北上していくと、まだまだ災害の爪痕が残っていることに気がつきます。陸前髙田のかさ上げした土地も見えるのです。阿部さんが勝手口から見ていた風景でしょうか。なんでもすぐ忘れてしまう私たちに、揺さぶりをかけてくれる作品でした。(白)


2018年/日本/73分/DCP
配給:東風
©KOMORI HARUKA
公式サイト:http://soranikiku.com/
★2020年11月21日(土)より、ポレポレ東中野にてロードショー他全国順次公開
posted by ほりきみき at 16:35| Comment(0) | 日本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする